「あれ?君、なんでそんなにちいちゃくなっちゃったの?」
テーブルの上のニャッキくんの食卓の席に置き去りにされたので、案の定ニャッキくんに見つかってしまい、早速ピンチだ。
乱暴に巨大な肉球のついた手のひらでねじ伏せられ、テーブルの平面から掴みとるように顔の前へ持っていかれる。
「あーえっと、うーん、時計は3時前だしい、おやつの時間じゃん?えへ、食べちゃおうかな~
うふふ。そんな悲しい顔しないでよ~僕が悪いみたいじゃん。あっでも忘れてた。綺麗に洗ってから食べよ」
まるで、お菓子の個包装でも剥ぐみたいにびりびりと引きちぎられた服はごみ箱にポイっと捨てられて、水道からの爆弾的水量で溺れそうになる。
「あっごめんごめん。溺れ死んじゃうとこだったね。でもどうせ食べちゃうから死んでてもOKだったけど、生きたままの方が満腹感あるしー
じゃあいただきまーす、あむっ」
びしょ濡れだった体から水気を切るために無造作に揺さぶられてから、ニャッキくんの生臭い口の中に入れられるのには、ほんの数秒ほどしかかからなかった。
ニャッキくんの生臭い呼吸の息が顔にぶつかり、むわっとする。なんだかこれはこれで悪くない。
閉じられる口蓋に押し潰されるより早くに、
唾液に浸った舌に倒れるように覆い被さる。
ざらざらとした猫舌の感触が心地よく、全身が唾液まみれとなってしまう。大の字になって腕を伸ばしながら脱力し、もうこのまま食べられてお腹の中で眠るなり気を失うなりなんなりして、命を捧げたくなってしまう。
熱い口内の中で、舌に乗せられたまま、上顎に押し付けられて、下になったお腹や足を味わうように舌を擦り付けられる。
川のせせらぎのように、ちょろちょろ流れていく唾液が飲み込まれる音に不覚にもどきどきしながら、
沸き上がる眠気に幸福感もめばえてきそうだ。
上顎への挟み込みをやめて、舌に促されるように足がつるりとした岩の表面をした三角の牙に持ってこられた。
太ももにぎりぎりと歯形がつく程度の噛みつきがゆっくりと力強くなり、ざっくりと、尖った先が太ももを刺すと、激痛に涙を流しながら喘いだ。
嬉しくて嬉しくて涙がでてしまった。どくどくと流れる血を見ながら、食べられているんだ…僕は餌なんだ…と嬉しがった。不覚にもかたくなっていた。
そして傷口に擦り付けられる舌に手をのばしながら、ああああ…と血液の味をすすられる痛みと餌の気持ちになって気持ちよくなってしまう。
やがて、舌に押し出されて、喉肉におしこめられた自分の体は食道の中に引きずり込まれ、ごっくんと飲み込まれていく。
全身を包み込む肉の圧迫感と、かぐわしい体液の匂い、ニャッキくんの息の匂いがここには充満していてもう幸せになった。
やがてミチミチとバキュームベッドの中のように隙間のない通り道を下ると、柔らかく分厚い胃袋の中へぼちょんと落ちてしまう。
足元が栄養になるための次の臓器の中につながっていて、僕はニャッキくんの消化液の匂いの充満した肉袋の中で、何重にも巻かれたぐちゃぐちゃの暖かい肉布団の中でもみくちゃにされて、どろどろの消化液のなかでシェイク状になるまで肉を少しずつ溶かされながら過ごすんだなと思うと恐ろしくて涙が出そうだ。でもそれはマゾな嬉し涙で、
いつも僕のそばにいてくれた可愛い猫におやつのように食べられて、唾液まみれにされた体を味わうように肉を噛み噛みされて、ボロボロにされてから、
あの可愛い毛皮の裏にあるえげつない胃袋のなかで消化されて栄養にされる。飼い主でもない、下僕ですらない。状況が違えば餌にされる。かわいい顔をしてなんて残酷な猫ちゃんなんだ。
僕は餌だったんだ…猫、ニャッキくんにとって…
ゾクゾクとしながら、にやけてしまう。
もうダメだ。幸せだ。
肉厚な体内の中で徐々に眠くなっていく…
もう眠ったあとのことを心配する必要もない
生暖かいじいんとした幸せ…
眠くなってゆく…
ニャッキくんはその頃、日向ぼっこをしながら、
すやすやと寝付いていた。