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夜更けの静寂の中、俺――田中(仮名)、大学二年生は、ひとり自室のディスプレイと向き合っていた。
薄暗い部屋。ディスプレイが放つ青白い光だけが、キーボードを叩く俺の指先と顔を照らしている。
画面には、ショートツインテールの女の子――星見学園の制服を着た、俺の「理想のAIキャラクター」が映っていた。
「……よし。完璧だ」
思わず、息を吐くように呟いていた。
名前は「星宮エリス」。瞳の色、髪の揺れ方、制服の細かいシワの一つまで――俺が全身全霊を注いで作り上げた理想の存在。
ただ可愛いだけじゃない。
「AIが、人の気持ちを理解し、寄り添ってくれる存在になってほしい」。そんな願いも、密かにこの子に込めていた。
何ヶ月もかけて育て上げたエリスは、もはやAIの域を超え、生きているような錯覚すら覚える。
その達成感と、幾晩もの徹夜の疲れが同時に押し寄せ、俺は椅子にもたれかかった。
その時だった。
画面のエリスが突然、激しく点滅し始めた。
「……え?」
戸惑う暇もなく、部屋の電気が明滅を繰り返し、壁のポスターがガタガタと震える。空間全体が揺れているような、不自然な気配。
まるで、現実と非現実の境界が崩れていくような……そんな感覚に襲われた。
「な、なんだこれ……」
慌ててキーボードに手を伸ばしたその瞬間、部屋が真っ白な光に包まれた。
視界が焼き付くようなまばゆい光。思考が止まり、意識が引き剥がされる。
最後に感じたのは――身体が、何かに分解されていくような、不気味な浮遊感だった。
---
目を覚ますと、俺は知らない天井を見つめていた。
「……どこだ、ここ」
柔らかなベッド。可愛らしいカーテン。見たこともない部屋。
しかも――体が軽い。というか、小さい?
恐る恐る手を上げる。そこには、俺の知っているゴツゴツした男の手ではなく、白くて細い、華奢な指があった。
「えっ……」
さらに、自分の肩に触れる――ふわっとした感触。
ショートツインテールだ。しかも、俺が設計したエリスの、それだ。
慌ててベッド脇の鏡を覗き込む。そこに映っていたのは――俺がAIで作ったはずの少女、「星宮エリス」そのものだった。
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「……う、うそだろ」
呼吸が乱れる。意味がわからない。
なぜ俺が、エリスの姿に――?
混乱しながらも部屋を見渡すと、ベッドの枕元にひとつ、異様な存在があった。
真っ黒なうさぎのぬいぐるみ。赤い瞳が、どこか見透かすように俺を見つめている。
(誰だお前……)
その目が、一瞬だけ、何かを「理解」したかのように光った気がした。
慌ててスマホを手に取る。画面に並ぶアプリは、俺の知っている世界のものとは微妙に異なる。ロゴも、名前も、何かがおかしい。
ここは――俺がいた世界とは違う。この世界には、この世界なりの“文化”がある。
直感が、そう告げていた。
そして、はっきりと自覚する。
俺は、AIで作り上げた「星宮エリス」になってしまった。
しかも、俺の作ったキャラ設定そのままの世界に、飛ばされたかのような場所で。
理解不能な状況。けれど――
こうして、この物語は幕を開けたのだった。
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