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「わたしの中の、もうひとりの――私」
魔法少女協会の厳かな祭壇。
紫の光に包まれた魔法陣の中央に、制服姿の月島ミカが立っていた。
その傍らには、黒いエナメルドレスに身を包み、紫色の肌に角と尻尾を持つ存在――
土の四天王、メイカの姿があった。
その直前、ミカの肩にそっと降り立ったのは、小さな妖精・フジリンだった。
「ミカ……覚えてる? あなたが堕ちたあの日のこと」
フジリンの声は優しくも切実で、ミカ――スターライト・モラードは小さく頷いた。
心の奥には、今もあの闇の記憶が残っている。
「大魔王の呪いに飲まれたあなたを、わたしは…メイカの中で、ずっと守ってた。
あなたの“想い”が完全に消えてしまわないように……」
「……ありがとう、フジリン」
「今のあなたなら、もう迷わない。だって、仲間がいて、想いがあって、光を選んだから」
その言葉に、モラードは深く息を吐き、杖と化したフジリンを強く握った。
マスターの声が祭壇の周囲に響き渡る。
「試練を始めます。これは魂と魂の、対話であり戦い。誰も、干渉してはならない」
「来なさい、モラード」
メイカの右手が闇を裂くと、複数の土塊が浮かび上がり、轟音とともに飛来する。
モラードは矢のように跳ねてかわし、杖の先から放たれる光弾で反撃した。
しかし――
「甘い!」
メイカは地面から伸ばした蔦でモラードの足をとらえ、彼女の身体を宙に放った。
「ぐっ……!」
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空中で体勢を立て直しつつも、メイカの次なる影が背後から忍び寄る。
不意を突いた闇の剣が振り下ろされる寸前、モラードは杖でなんとか受け止めた。
「お前は私の一部……私の中にあった諦めと絶望の象徴……」
「そう。だからこそ言える。お前は、光に値しない」
重なり合う言葉と衝突。だがその中で、モラードは次第に力を奪われ、追い詰められていった。
やがて――
衝撃とともにモラードの姿は霧散し、跪いたミカの姿が浮かび上がった。メイカの魔力が炸裂し、モラードは宙を舞うように吹き飛ばされ、地に膝をついた。
モラードの服はすでに消え、全身を紫色の光の残滓が覆っている。息は荒く、身体は限界に近い。
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「……もう、終わりにしよう」
メイカがゆっくりと歩み寄り、静かに右手をかざした。
「あなたには、光を持つ資格などない」
しかし――そのとき。
ふと、風が揺れた。光の粒子が舞い、モラードの肩にそっとフジリンが降り立った。
「……ミカ、覚えてる?」
小さな声が、魂の奥に届く。
「あなたが、心を閉ざしそうになったとき……わたしは、あなたの中の“想い”を、ずっと守ってた」
ミカ――モラードは、静かに目を閉じた。
「私の中にあった闇も、苦しみも、全部……私自身だ」
深呼吸をひとつ。目を開けると、光が再び彼女の身体を包み始めた。
「だから私は、どちらも受け入れる。光も、闇も。私が歩んできた全部を」
その言葉を吐き終えた瞬間、崩れかけていた身体が、ゆっくりと地を踏みしめて立ち上がる。
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ミカ――変身が解けたその姿は、全身を紫色の発光する布がバスタオルのように巻かれており、身体の周囲には紫色の光の粒が星のように舞っていた。
その目は決して消えてはいなかった。強い意志と、光と闇を抱く者としての覚悟が宿っている。
彼女は両手を構える。再び変身するために。その瞬間、モラードの手に現れたのは―― 一本の弓。
透明な弓身がゆらめき、左手からは柔らかな光の魔力、右手にはかつての心の闇の記憶が矢として形を成していく。
「これが、私の想いのすべて!」
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引き絞られた矢が放たれた瞬間、空気が震え、空間が煌めいた。
矢は一直線に飛び、メイカの胸へと突き刺さる。
「う……あ……!」
紫のスーツに亀裂が走り、全身から光が溢れる。メイカの瞳が揺れる。
「なぜ……あなたが……!」
やがて、光の粒となって消えていった。
モラードは静かに弓を降ろした。
「ありがとう、フジリン。私、もう迷わない」
その横顔に、戦いの果ての静けさと、確かな決意が宿っていた。
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