【けもケット16】オツドラ「キミの書く物語を、ボクは読む」【K-34(委託)】
夏の夜の午前二時。大きな身体の白と黒のボーダー地方をルーツとする毛並みが特徴的なオスの犬獣人が、ズボンだけを履いた姿でデスクトップパソコンに向かい一心不乱に文章を打っていた。デスクの傍らには空っぽになったエナジードリンクの缶。この犬獣人の名前は真田マル、会社員である。
彼がパソコンに向かって打っている文章は仕事のものではない。彼が趣味で書いている、いわゆる『同人誌』というものの為の小説の文章だった。彼のデスクの傍らには小さなカレンダー。その日付にはびっしりと赤い文字でスケジュールらしきものが描かれている。しかし、それの殆どが乱暴なバツ印で埋まっていた。
「マル、作業に集中するのはいいが、そんなにエアコンの温度を下げて裸でいると体調を崩してしまうぞ」
「大丈夫だよ、むしろこのくらいの気温でないと汗が噴き出てしまって……ほら、もうタオルがぐっしょり」
マルに声をかけたのは、名前を串田アキラという、白い羽毛と首元に黒い羽毛があるオスの鳥獣人だ。仕事は旅行代理店に勤めている。アキラはマルにタオルを渡すように伝えると、マルは一度作業の手を止めて汗を吸ったそれを手渡す。
「ん。ありがとな。あとで夜食と新しいタオルを、適当な場所に置いておくからな。……大変そうなのはわかるが、あんまり根を詰めるなよ?」
アキラに背を向けたまま、マルは感謝のハンドサインを送った。こうなってくると、きっと徹夜を決め込むつもりだろう……アキラはマルの体調が心配になったが、普段の体調管理の上手さなら大丈夫だと思うことにした。
マルとアキラは大学の頃に出会い、そのまま大学を卒業したあとにシェアハウスを始めた。恋愛感情とかそういうものはなく、ただ生活費の折半が目的だった。通常は同じ部屋で寝ているが、一年のうち夏と冬の一時期のマルはこうして別室で缶詰になって、いつ寝ているのかもわからない生活をしている。
だが、仕事がある日にはしっかりと遅刻することなく出勤するし、帰ってくる時間にブレはあれど寄り道をせず真っすぐに帰宅する。そしてご飯を食べるとすぐに自分の部屋にこもり……という生活を送っていた。正直に言えば、アキラはマルと常に一緒に寝たいと思っている思っているのだが、それは単なるワガママだと認識していた。
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