【けもケット16】岸間夜行「厭世の森」【K-34(委託)】
目を覚まし、顔を上げると、宴もお開きとなったようだった。広場には満腹の動物たち、暗がりで薄赤く照らされる木々、貂が焚いたであろうたき火はとろ火になっていた。
「おはよう、レインさん」
猫のケイトの声がした。僕はというと、動けなかった。ポプラと、貂のアイビーと、それから他の小さな動物たちが、僕のお腹の上で寝ていたからだ。
「おはよう、ケイト。悪いんだけど、手伝ってもらって良いかい」
「ええ、良いですとも」
ケイトはケタケタ笑って寄って来ると、僕にまとわりつく動物たちを起こさないように引き剥がすのを手伝ってくれた。
「おさかな、食べます?焼いてあるし、それも焼きたてじゃないけど」
ケイトの提案に、僕の腹の虫が勝手に答えた。
「はらぺこですね」
「お恥ずかしい」
狼の家にすぐ行きたかったけれど、先に空腹を満たすことにした。ケイトが差し出した焼き魚は、内臓が抜いてあって、それをそのまま焼いただけのものだった。
「わ、ひとくち」
「うん」
よく焼いてあって、いつものようにがぶり付くのとは全然違う味わいがあった。皮が焦げたのは、内臓のえぐみとは別物の苦さがある。ほんのり温かいのは、きっとたき火のそばに置いてあったからだ。身が骨から簡単にほぐれて、舌と口蓋できゅっと潰すとじんわりと肉汁が染み出てくる。せっかくだから、綺麗に口の中で味わい尽くして、骨身だけになった魚を取り出して見せた。
「うわー、器用に食べましたね」
「うん。初めてやった。案外、うまくいくものだね」
「そうなのね。それにしても綺麗な骨身だわ」
ケイトが魚の骨に見とれていると、僕は身体を起こし、歩き出した。
「あら、もう帰るんです?魚はまだありますけど」
「ありがとう。ちょっと寄っていきたい場所があって」
「そう……」
僕は僕の家と反対方向の、狼の家に向かって歩いた。僕が広場を抜けて森に潜ろうというところで、ケイトが呼び止めた。
「あの、レイン」
「うん?」
「おさかな、ありがとうございます。また明日からも、よろしくね」
そう言ってケイトは、前足を振っていた。僕はそれに、鼻を鳴らし一声鳴いて、返事をした。
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