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【Remake第6章~】虚構のカジノ、奪われた未来 ―魔法少女スターライト・パステル~星宮エリスになっちゃった!Remake~スピンオフ小説

  [chapter:第6章 実験室 ― 素材としての配置]

  どれほど時間が経ったのか――わからない。

  牢の扉が開く金属音で、和奏は我に返った。

  「起きなさい、和奏。

  次の場所に行きましょう?」

  姿を見せたのは、土の四天王メイカ。淡い紫の髪を揺らし、冷たい笑みを浮かべている。

  「……っ……!」

  和奏は本能的に身を引いたが、封印リングで弱った身体に逃げ場はない。

  メイカは指を軽く弾き、重力を無視して和奏の身体をふわりと浮かせた。

  「安心して。

  逃がしたりしないから」

  そう言いながら、和奏を引きずるように連れていく。

  たどり着いたのは、牢とはまったく雰囲気の異なる部屋――実験室。

  石壁には魔導器具が並び、棚には奇妙な薬品や素材がぎっしり詰まっている。

  部屋の中央には、縦に並べられた三つの実験用カプセル。

  左には、和奏を入れるために開かれている。中央は空。そしてもう一つ右には――青い液体の中でゆったりと動く一匹のカエル。

  [uploadedimage:22971429]

  「……っ……!」

  和奏は思わず目を見張る。

  「ここは……なに……?」

  「説明しても、あまり意味はないけど――“役に立つもの”を作る場所よ」

  メイカは和奏を、左のカプセルに押し込んだ。内部は柔らかな光に満ちているが、それは完全封印の静止領域でもあった。

  和奏は壁に寄りかかるように倒れ込み、息を荒くする。

  中央には、空のカプセル。右には、青い液体の中でじっとこちらを見るカエル。

  その両方が、自分の行く末に関わるものだと、直感が告げていた。

  「あなたは①。カエルは②。

  そして空の③は――結果を受け取る“器”。」

  メイカは三つのカプセルを眺め、満足げに頷く。

  「いい並びね。とても、実験向きだわ」

  [newpage]

  [chapter:第7章 融合 ― ザ・ケロ誕生

  ]

  その少し前――。

  メイカは、大広間で再び“声”と対峙していた。

  「――というわけで、魔法少女一体の捕獲に成功しました」

  『よい。四天王としての初動としては合格とする』

  闇の奥の声が静かに響く。

  『その魔法少女をどう扱うつもりだ、メイカ』

  「素材として扱います。ただ、ひとつ提案がございます」

  『申せ』

  メイカは、足もとにちょこんと座る一匹のカエルを持ち上げた。公園で見つけた、あのカエルだ。

  「このカエル――反応が少し変わっていました。

  魔力の流路が、“改造”に向いている。

  魔法少女と絡めれば、近接戦闘向きの新怪人が作れると判断しました」

  しばしの沈黙。闇が、わずかに揺らぐ。

  『弱い素材ほど、成功すれば価値が高い。

  良い発想だ、メイカ。試すことを許可する』

  メイカの胸に、喜びにも似た震えが広がる。

  「ありがとうございます。

  必ずや、期待に応えてみせます」

  こうして、大魔王の許可は下りた。

  森住和奏と、一匹のカエル。その二つを素材にした、融合実験の計画が――。

  実験室。

  メイカは、和奏のカプセルの側面に青い液体の入った魔導筒を接続した。

  「少しだけ我慢してね、和奏。

  これは、あなたを“良い素材”にするための処理だから」

  ツマミを回すと、青い液体がゆっくりと流れ込む。腰まで、胸まで、やがて首元まで、冷たい液体が満たしていく。

  「……っ……!」

  和奏は苦しそうに泡を吐きながらも、封印のせいで逃げ出すことすらできない。

  [uploadedimage:22971456]

  「大丈夫。すぐに慣れるわ」

  メイカは隣のカプセル――カエルの入った②にも視線を送る。青い液体の中で、カエルはゆっくりと瞬きをした。

  「素材は揃った。あとは――」

  部屋の中央に設置された魔導装置のレバーに、メイカは手を伸ばす。

  「融合装置、起動」

  ガコンッ!

  重い音と共に、床の魔法陣が輝き出す。三つのカプセルが同時に震え、内部で光が弾けた。

  ①のカプセルの中。和奏の意識は光に呑み込まれ、上下左右の感覚が失われていく。

  (どこ……どこに……)

  ②のカプセルの中では、カエルの身体がぐにゃりと伸び、輪郭がぼやけ、影だけが揺らめいた。

  ③のカプセル――空だったはずのそこにも、紫と青と茶色の光が集まり始める。

  メイカは装置から距離を取り、瞳を細めてその光景を見守った。

  やがて、光が収まる。

  「……終わった?」

  メイカは一つずつカプセルを確認していく。

  ①のカプセル――そこには、誰もいなかった。

  ②のカプセルも同様。カエルの姿はどこにもない。

  そして――③。

  カプセル③の中。

  光が晴れると、そこには――ひとりの“人型”が立っていた。

  茶色の滑らかな皮膚。

  頭部は丸みを帯び、瞳は大きく、横に広い虹彩が揺れている。

  手足は細く長いが、節々は両生類のように柔軟に曲がり、足先はカエル特有の吸着形状。

  それでも胴体は人間のように整い、声帯も保たれている。

  人型ではあるが、明らかに――

  カエルの特徴を色濃く宿した怪人だった。

  そして――

  「……わ、わたし……? なんで……こんな……!」

  その口から、震える“人語”がこぼれ落ちた。

  メイカが驚きに目を見開く。

  「人語が……残っている?

  まさか、和奏の意識も……?」

  カエル怪人となった少女は、ゆらりと視線を動かし、実験室の姿見へ歩み寄る。

  鏡に映る、自分とは思えない異形の姿。

  [uploadedimage:22967489]

  「いや……いや……ちがっ……!

  こんなの……むり……!

  わたし……どうして……!」

  鏡の前で肩を震わせ、後ずさる。

  “和奏”としての意識が、まだ強く残っている証拠だった。

  メイカは息をのむ。

  「……想定以上ね。

  意識を保持したまま怪人化するなんて……」

  しかし、次の瞬間には冷静さを取り戻し、指先に紫の魔力を灯す。

  「でも――従順になってもらわないと困るわ」

  メイカは魔力で形成された 紫色のチョーカー を呼び出し、カエル怪人の首へと取り付ける。

  「やっ……離し……ッ!?」

  チョーカーが首に吸い付いた瞬間、紫の紋様が怪人の喉から胸へと走り、体が震えた。

  「映し出せ、支配式――“服従因子(ドミナント・コード)”。」

  チョーカーが淡く輝き、和奏の瞳から茶色の光がすぅっと抜け落ちる。

  代わりに、紫黒の光が静かに満ちていく。

  「……メ……イカ、さま……?」

  声が変わった。

  苦悶も焦りも消え、そこにあるのはひとつの感情。

  [uploadedimage:22967976]

  ――忠誠。

  メイカは微笑み、カエル怪人の頭に手を置いた。

  「いい子ね。あなたはこれから――私の眷属よ」

  カエル怪人は深々と膝をつき、恭しく頭を垂れる。

  「命じてください……メイカ様……

  わたしは……あなたのしもべです……」

  実験室に、完全なる服従の声が響いた。

  メイカは満足げに目を細める。

  「今日からあなたは――“ザ・ケロ”。

  私の最初の怪人。

  世界を変えるための、大切な駒よ。」

  ザ・ケロは喉を膨らませ、忠誠の証として静かに鳴いた。

  「……ケロ……メイカ様……」

  ザ・ケロが力強く答えた。その魔力は、和奏のものを部分的に継いでいるのか、茶色の残滓を帯びていた。

  (意識の断片くらいは、どこかに残っているのかもしれないわね。

  でももう、“森住和奏”として戻ることはない)

  メイカはカプセルを解放し、ザ・ケロを部屋の中央へ出す。その足もとで、ザ・ワンが尻尾を振った。

  「ワン(つよい)」

  「ええ。

  ザ・ケロ、ザ・ワン。

  あなたたちは、とても頼もしい“手駒”よ」

  数日後。

  ザ・ケロは実地テストに出され、複数の魔法少女をその跳躍力と毒液で次々と打倒していった。

  捕らえられた魔法少女たちは泡封印や光布拘束によってアジトに収容され、実験室のカプセルや保管室は、次第にその数を増していく。

  「素晴らしいわ、ザ・ケロ。

  あなた一体で、協会の戦力分布を大きく崩せる」

  メイカは満足げに魔力データを眺める。

  ザ・ケロは中央に跪き、ザ・ワンは黙々と収容作業を手伝っていた。

  (素材は揃いつつある。

  大魔王さまの“計画”も、順調に進んでいる)

  そして――メイカは再び、地上へ向かう支度を始める。

  姿を変えるのは、かつての自分――月島ミカ。

  [newpage]

  [chapter:第8章 潜入 ― 次の標的は桜井ナギと篠崎ユキ]

  「さぁ、今日も“学園生活”を楽しみましょう」

  星見学園の門をくぐる。クラスメイトに笑いかけ、何事もなかったかのように席につく。

  だが、その瞳は常に“次の獲物”を探していた。

  放課後。

  廊下の向こうで、仲良く並んで歩く二人の少女がいる。

  一人は、明るく快活な雰囲気をまとう少女――桜井ナギ。

  一人は、落ち着いた優しさをまとった少女――篠崎ユキ。

  二人の周囲には、ごく薄いが確かな魔力の気配があった。

  (桜井ナギ。風属性の因子……伸びれば、面白い。

  篠崎ユキ。氷と水の素質……あの水の四天王とも相性が良さそう)

  メイカは廊下の角から、ふたりを静かに見送る。

  「次のターゲットは――あなたたちに決めたわ」

  [uploadedimage:22971475]

  笑みを貼り付けた“月島ミカ”の仮面の下で、土の四天王メイカの瞳が、狩人の光を放つ。

  虚構のカジノで奪われた未来。

  四天王メイカとして歩む道。

  そして、新たな魔法少女たちへの暗い影。

  このスピンオフが描くのは、その“序章”に過ぎなかった。

  [uploadedimage:23071975]

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