おおかみ☆いんふれーしょん 第1章 赤ずきんのおおかみ
「ふぅ、助かったわ」
猟師がおおかみのお腹を裂いてくれたおかげで、私ーー赤ずきんはおおかみのお腹から出ることができた。体がおおかみの体液でベトベトする。少し臭い。
「おばあちゃん、大丈夫?」
隣には、私と同じくおおかみに食べられたおばあちゃんがいた。彼女もまた、猟師のおかげで無事脱出できたようだった。
「ええ、私は無事よ」
「よかった!」
私は、おばあちゃんに抱きついた。もう会えないと思っていた人だ。嬉しくて仕方がなかった。
「さて、このおおかみ、どうする?」
ベッドには、お腹を裂かれたおおかみが横たわっている。お腹は裂かれたが、まだ生きているようだ。
「目が覚めたら、また食べられちゃうかもしれないわ。少しこらしめましょう」
そう言うとおばあちゃんは、台所に向かって歩いていった。台所に入ってすぐのところに、きのみがたっぷり入った袋があった。そこから、おばあちゃんはこのきのみを一つひょいっと取り出した。
「それ、何の実?」
「ふうせんの実よ。これを食べると、お腹がふうせんみたいにぷっくり膨れちゃうのよ」
そう言うとおばあちゃんは、それをおおかみの口の中に入れた。おおかみは、その実を飲み込むとすぐにお腹が膨らんできて、まるで風船のようにパンパンになった。
「おお、すごいすごい!本当にふうせんみたいだ!」
私は、思わず感嘆の声を上げた。次第に、おおかみの体は、ふわりと少しずつ浮かんでいった。これもきのみの効果なのだろうか。
「これでもう、襲われることはないわねぇ」
おばあちゃんは、勝ち誇ったような顔で言った。確かに、こんなぷっくりしたふうせんみたいな格好では、私たちを襲ってこられない。私も、ほっと胸をなでおろした。
すると、おおかみが目を覚ました。そして自分のふうせんみたいに膨れた体を見た瞬間、思わず叫びだした。
「ああっ!!俺の体が!?」
おおかみは、動揺しているようだ。私たちを食べようとしたからこんなことになるんだよ。私は、おおかみにあっかんべーをした。すると、意外なことに、おおかみは嬉しそうに遠吠えをした。
「すっげーまんまるだぞ!一度ふうせんみたいに膨らみたかったんだ!」
何と、意外なことに、おおかみはお腹を膨らますことが好きだったのだ。今まで誰も、おおかみの体をここまで膨らませた人はいなかった。おおかみは、私の方を向いて話しかけてきた。
「もっとあるか?ふうせんの実。腹いっぱい食ってやるぜ!」
おおかみは、たぬきさんみたいにお腹をポンっと叩いて威勢良く吠えた。これだけ膨らんでもなお、まだ食べるのか。さすがおおかみの食欲だ。
「ええ、まだまだたくさんあるわよ!」
おばあちゃんが言うのと同時に、きのみをおおかみの口に勢いよく突っ込んだ。
「んぐっ!?」
すると、おおかみのお腹はどんどん大きくなっていった。先ほどよりもさらに丸く膨れて、今にも破裂してしまいそうだ。
「むぐうぅ!!」
苦しそうな表情を見せるも、尻尾はブンブン振っていた。確か、嬉しい時に尻尾を振るんだっけ?おばあちゃんがそう言っていた気がする。
「まだ欲しい?」
「ぶふぅ。。。もっと、くれぇ。。。」
デブ特有のぶっとい声でおおかみは答えた。まだ膨らむのか。ていうか、膨らめるのか?
「そうねぇ、家の中だと狭いから、外に出ましょうか」
そして私たちは、家の外へ出た。おおかみがふわふわと飛ばされないように、近くの木に手足を縛った。
「さぁて、ここからが本番よ?」
おばあちゃんが妖しげに微笑むと、さっきよりも早いペースできのみをおおかみに食べさせた。
「むぐっ!?むぐっ!?」
おおかみの顔が真っ赤に染まっていく。口から泡を吹きながら、必死にきのみを頬張っている。おおかみの体がぶくんぶくんと音をたてながら、どんどん大きくなっていく。家の中で見た時より遥かに大きくなった。一体どこまで大きくなるのだろう。
やがて、袋の中のきのみが全部なくなった時。
「げぇぇっぷ。。。あ、ありがとう。お腹いっぱいだぜ」
おおかみのお腹が、みっともないくらいまんまるに膨れ上がった。森で一番大きい大木よりも遥かに大きいくらいだ。
「どういたしまして。じゃあ、そろそろいいかしら?」
おばあちゃんがそう言うと、手足に結んでいたロープをほどいた。
「ふぇっ!?」
おおかみが驚くのと同時に、おおかみの体はぷかぷかと空へ浮かんでいった。あまりの出来事に、おおかみは手足をバタバタさせていた。
「何だ!?体が言うこと聞かない!?ぐぇっぷ」
しかし、抵抗するも虚しく、おおかみはただ、空高くまで浮かんでいった。
「二度と戻ってくるんじゃないよ!」
おばあちゃんは、空高くに浮かんでいるおおかみに向かって叫んだ。直後、どこからか風が吹いた。ずきんが吹き飛ぶくらいに強い風だ。ふと、上を見上げると、おおかみも風にのってどこかへ飛ばされていくのが見えた。
「おぉー」
私は思わず感嘆の声を上げた。おおかみは、お腹を膨らませながら、遥か遠くへと消えていった。
「これでもう大丈夫ね。狼が来ることもなさそう」
「うん!」
私は元気よく返事をした。