【関西けもケット11】だいご『競馬で五千兆円当てる方法』

  俺の財布には五千百円も入っている。何回も熟読して覚えた学術書や自己啓発書をリサイクル店で売ったら、これくらいの金額になったぞ。売る本を持っていったボストンバッグは空っぽになったけど、財布は豊かになった。この金を何に使おうか。久しぶりに外食かな? 大好物のかつ丼や寿司とかもいいけど、食べ終わったら金は減っちゃうなあ。そうだ、これを元手に増やしてから使おう! 一般人は金を等価交換の材量としか考えてないけど、俺は『金が金を産む』という法則を知っている。社会の動向を読み取って株トレードとかもいいけど、手っ取り早く競馬で増やそう。元手は五千円ちょいだから、目標は五千兆円くらいに設定だ!夢はでかくなけりゃつまらないって言われてるからなあ。

  万馬券を買えば一万倍になって返ってくるから、

  5,000 × 10,000 = 50,000,000

  このように五千万円入手できる。だから兆馬券を買えば、

  5,000 × 1,000,000,000,000 = 5,000,000,000,000,000

  このように五千兆円手に入るに違いない! あとは実行に移すだけだ。一般人ならこんなことを考えるだけで実行に移さず、机上の空論止まりだろうけど、俺は違うぞ。夢は見ているだけじゃ夢のままだから、自分で行動に移して叶えなきゃね。そうと決まったら競馬場に行くぞ!

  軍資金が減るのが嫌だったから歩いて競馬場に向かった『NKK』というロゴが建物に刻まれているぞ。『日本競馬協会』の略称だな。中に入ろうとしたら、なんと入り口で百円も入場料を取られた! この調子で百万人から入場料を取れば

  100 × 1,000,000 = 100,000,000

  一億円にもなるに違いない! ギャンブルで儲かるのは胴元だけ、とよく言われるけど、こんなカラクリがあったのか! 癪だからもっと多くの金額をNKKからむしり取ってやるぞ! 馬券売り場のお姉さんに話しかけた。

  「すみません。五千兆円欲しいので、兆馬券を五千円分売ってください」

  「ええと……それでしたら、第七レースの『カナラズドベニナル』の単勝ですね。はい、こちらが兆馬券です。当たるといいですね」

  五千円使って一文無しになっちゃったけど、ついに兆馬券を手に入れたぞ! これが当たれば五千兆円だ! 外れると五千円パーだけど。……あ、しまった! さっき入場ゲートを百円払って通ったんだから、帰る時も百円取られるに違いない! 一文無しならもう帰れなくて、皿洗いや馬糞掃除をやらされるぞ! ギャンブルにはリスクが付きまとうって、本当なんだなあ。しかたない、レースが始まるまでパドックを見てこよう。一般人なら運を天に任せるだろうけど、運は自分の手で引き寄せなくちゃね。

  パドックに第七レースに出る馬がやってきた。本命のケツデモオガンデロ、対抗のアタマハサエテルゾ、単穴のノーキンムッキムキ、そして最後に超絶大穴のカナラズドベニナルが登場した。馬の名前って馬主がつけてるんだろうけど、変なのが多いなあ。変な名前を付けているオーナーって、何を考えているんだろう? 他の競走馬は強くて速そうだったけど、カナラズドベニナルはヨタヨタで明らかに覇気が無い。しかも牝馬のケツデモオガンデロの尻をジロジロ見て、鼻息を荒げている。トップに立つよりも後方で尻を眺めていたいってタイプだな。馬の趣味についてとやかく言うつもりはないが、このままじゃ万に一つ、いや兆に一つも勝機はない。ビリになるのは確実だから、一兆倍のオッズなんだな。なんとかやる気を引き出さないと! いや、なんとしても五千兆円当てようとする、俺の精神を憑依させればいいだけだ!

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