獣人が住む架空の世界、たぶん日本。
ユウタが転校してきて、そして同居を始めてから、そろそろ半年が経とうとしていた。
「んっ、あふぅ……」
リョウは狼獣人らしい低い唸り声とともに目覚めた。
高等部の2年生になったばかり、すこし低くなった声にも慣れてきた年頃だ。
グシュ……
そして、下腹部にじっとりと濡れた感触を覚える。
「うあ……」
視線を落とすと、かけていた布団がぐっしょりと濡れている。
この歳になって、まさかのおねしょが再発したのだ。
コンコンコン
不意にノックの音が響く。
「リョウくん? 起きてますか?」
一瞬、無視しようかとも考えたが、素直に返事した。
「あ、ああ」
ガチャ
ドアが開くと同級生で同居人、兎の獣人のユウタが部屋に入ってくる。
年相応の体格にすこし細身で、垂れたロップイヤーが穏やかな印象を与える。
「おはようございます」
「おはよう……」
ズカズカとユウタが部屋へと踏み入ってくる。
そして掛け布団が引っ張られ、おもむろに引き剥がされた。
「ああ。おねしょシーツは、役に立ったみたいですね」
「うるせえな! 黙れよ!」
露になったリョウの下半身はしっとりと濡れていた。
認めたくないが、リョウが夜中におもらししたせいだ。
しかも少し漏れ出した様子で、パジャマのズボンまで染みが広がっている。幸いにもおねしょシーツが敷かれていたので、ベッドまでは濡れていない。
「いやぁ、良かったです。昨日買っておいて」
「くっそ……」
ユウタの手が素早く伸び、パジャマのスボンに手をかけられる。
「これはチェックするまでもないですが、とにかく脱がしますよ」
「あ、や……」
ズルっ
返答も聞かず、ズボンが一気に降ろされた。
リョウの下半身を包む、子供らしい柄で彩られた、おねしょ用のトレーニングパンツが目に入る。
「あーあ、大失敗ですね」
おねしょはパンツが吸収できる量を明らかに超え、裾から染み出して掛け布団とおねしょシーツを濡らしていた。
「いいから早く洗濯しろよ! 学校に間に合わねーぞ」
「はいはい。すぐに脱いでくれたら洗濯しておきますよ」
ユウタは濡れた掛け布団とたたみ始めた。
リョウは新しいパンツに履き替えようと、ぐっしょりと濡れたトレーニングパンツに手をかける。
「み、見てんじゃねーよ」
「はいはーい」
ユウタがテキパキと濡れた掛け布団とおねしょシーツを片付けていく様子を横目で見る。
「くっそ……」
リョウは唇をかみながらパンツを脱ぐ
プルン
年頃の少年にしては、かなり可愛らしいおちんちんがあらわになった。
下腹部周りの毛も薄く。そこだけ見ればずっと子供のような風貌だ。
「ふふっ」
ユウタが手を動かしながら、小さく笑いかけてきた。
「うっせ、見んなっつーの!」
「何も言ってませんよー」
「そ、存在がうるせえ」
「はいはい」
ムスッとした顔で、リョウは新しいパンツに手を伸ばす。
ヒュッ
とたんにユウタが手を伸ばし、手に持ったパンツを取り上げられてしまった。
「あっ、おい!」
「まさか、そのままパンツを穿くつもりじゃないでしようね?」
ぐっしょりと濡れた下半身を、ユウタにじろりと見咎められる。
「う、あ……」
リョウの顔はみるみると赤く染まった。
「ほら、先にシャワーですよ」
ユウタが濡れたシーツ、パジャマ、トレーニングパンツと一緒に、さっきのトランクスも片手にまとめて立ち上がった。
「お、おう」
連れられて、リョウもおずおずと歩く。
下半身は素っ裸のままだ。
慌てて股間を隠そうとすると、ペシっと手を叩かれた。
「ベタベタ触るとかぶれちゃうよ」
「あ、ああ」
しぶしぶと両手を横に降ろす。
なんとも情けない格好だ。
「さあ、行きましょう」
「ふん」
一緒に行く必要はないのだが、なんとなく流されるままついて行ってしまう。
リョウが着ている唯一の衣服は、パジャマの上着だけだ。その裾をできるだけ下に引っ張りながら歩いた。
スタスタ
ペタペタ
フローリングの床にスリッパの足音と、続いて裸足の足音が響く。
「いい天気ですねー」
ユウタが窓の外を見て言う。
「あ?ああ」
リョウは俯いたまま答える。
お尻がスースーして落ち着かない。
「これなら、布団もよく乾きますねー」
「そ、そうだな……」
ユウタの声を聞きながら、リョウは目を伏せて廊下を進む。
脱衣所までくると、ユウタが急に歩みを止め向き直ってきた。
「あ、その上着も洗濯しますねー」
「あ?」
「そんなに引っ張って、濡れちゃってるじゃないですか」
「そ、そうか」
言われると下半身を隠そうと引っ張った裾が、まだ濡れた股間についてしまっていたかもしれない。
「脱がしますよ、ほらバンザーイ」
「は!? ぬ、脱ぐくらい自分でできるって……」
「ほら、早く。このままじゃシミになっちゃうでしょう?」
「う、うぅ……」
思わず顔が真っ赤になる。
そんな、子供みたいに。
「ほーら、バンザーイだよ。バーンザーイー」
ユウタは裾を掴んで離そうとしない。
「くっそぉ」
渋々と両腕を上げると、ユウタがするすると上着を脱がせた。
「ふふ……素直で可愛いですよー」
「う、うるせぇよ」
「はいはい」
精一杯すごんで見せるが、全裸ではどうやっても格好がつかない。
リョウは唇を噛み締めて、ぷいっとそっぽを向く。
「パンツはカゴに入れておきますね。あとで制服も持ってきておきます」
「お、おう……」
洗濯物をまとめたユウタが脱衣所を去ると同時に、リョウは急いで浴室に入った。
キュッ
シャワーの前に立ちノズルをひねると、頭上から熱いお湯が降り注いだ。
「ふーっ」
やっと一息つく。
朝から散々な目にあった。
ユウタのやつ、どんどん俺をガキ扱いしやがって。
確かに、おねしょしたのは俺だけどよ。
「制服、置いておきますからねー」
脱衣所からユウタの声が聞こえる。
「あ、おう! ありがとな」
鼻歌交じりに去っていく足音。脱衣所に置かれた洗濯機がゴトゴトと鳴っている。
まあ、こうして世話焼いてもらって、悪い気はしねぇんだよ。
だから余計に腹立つ。
ユウタに甘やかされると、自分が徐々に弱い者扱いされていくみたいだ。
「ちっくしょ……」
シャワーのノズルを捻り、お湯を止める。
鏡の中の自分の顔が映っていた。
年相応に伸びた背丈に、軽く締まったやや筋肉質な身体。
そこに、小さなものが恥ずかしそうにぶら下がっていらる。心なしか以前より小さくなっているようにさえ見える。
「はぁ……」
ため息をつくと、ペタンと尻尾をたれ下げて浴室を出る。
体を拭いて制服を着ると、ユウタが朝食を用意していた。
「あ、ちょうどよかったです。今出来上がったところですよ。」
「おう」
テーブルの上にはトーストとベーコンエッグ、それからパックから出して温めたスープが並べられている。
「ちゃんときれいに、洗えましたか?」
「は!? あ、あたりめーだろ!」
ユウタはエプロンを外して椅子に座った。
「では、いただきましょう」
「おう、いただきます」
二人の何気ない朝の時間は過ぎていった。
「先に学校行くから、時間ずらして来いよ」
リョウが靴の踵を入れながら言った。
「はいはい、分かってますよ。リョウくんがおねしょした布団を、きれいに洗って干してから行きます」
「ばっか……わざわざ言うな!」
「はいはい」
「それと、学校じゃ他人だからな」
「分かってます。でも広い学園ですし、文理でクラスも違いますから、普通にしてたらまず会わないですよ」
「ふん! イメージだよ。こういうのは。ちょっとでもナメられたら負けなんだよ」
「はぁ、そういうものですか……」
つま先を何度か地面にぶつけ、リョウの足がすっぽり靴の中に収まった。
「じゃっ、行ってくる」
「あ、そうそう」
「……んだよ?」
「約束通り、今日から。ですからね」
「は?」
「ほら昨日の」
一呼吸おいてから、リョウの顔が耳まで真っ赤になった。
「えっ……あ、あぁ」
「それじゃ、行ってらっしゃい」
ユウタはパタパタと家の中に戻って行った。
「あ、ああ……」
一人取り残されたリョウは、しばらく玄関先で固まったまま動けなかった。
[newpage]
キャラクター紹介:
左 リョウ
ちょっと大きめの家で一人暮らししている少年
自称不良だが、両親不在でちょっとグレてるだけ
この話の被害者(?)
右 ユウタ
遠くから越して、二人暮らしすることになった少年
リョウとは遠い親戚らしい
たまに怪しいアプリを使っている
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