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それは、事件が起きる少し前

  「……よしよし、準備は万端、素材の確認も万全……」

  ある山奥、少し前まで誰かが居た様な廃墟にて端末を操作する銀狐、毛先が宝石のように光る八尾を揺らめかせながらも眼下に広がる街を見る。

  「いやぁ、いい街のようで何よりだ……素晴らしい素材、発見伝……なんてね」

  くすくすと笑いながら街を眺め、端末に表示されたそれぞれのプロフィール・データに心を躍らせていた……

  一方その頃…

  「うー……書類仕事は嫌だぁ……めんどくせぇ……」

  と、山積みの書類に頭を抱えながらぐったりとデスクに顔を突っ伏す黄金碧眼の獅子。

  「まぁまぁ、これが終われば休みなんだから頑張ろうよ、リオン、少しは手伝ってあげるからさ」

  傍らにゼリー飲料のパックを置きながら獅子、リオンを応援するのは銀の角と綺麗な翠の鱗に長身の雌龍。

  「アルマ?ダメだよ、リオンは自業自得、自分で突っ走った結果なんだから、自分でケリをつけないとねぇ?」

  龍、アルマに注意しながら悠々と歩き、リオンに挑発的な笑みを向けるのは、白と蒼に黒や黄色の模様が鮮やかな隼。

  「残念だが、フォルスの言う事には同意だな、リオン、お前はちょっと周りに気をつけろよ」

  隼、フォルスの隣をスタスタと通り、自分のデスクに座るのは、気だるげな目付きで黒に銀の毛並みの狼。

  「うるへー…あーあ、早く終わらせて飯にしてぇ…なぁクロよー、後で奢るから手伝ってくれ~」

  リオンが狼、クロに手をふらふらと揺らして手伝いを頼むが、一方のクロは全くといっていいほど聞いてない。

  この四人、会社員のように見えるが、実は街を守るヒーローなのだ。

  今は先日の戦闘においての被害の処理などを行っており、一番暴れた張本人であるリオンは特に書類が多い。

  なんだかんだで仲のいい四人は書類のそれぞれを確認し、残党が居ないかなどをちゃんと確かめていた所で、けたたましい警報が室内に響く。

  「お!仕事だ!よっしゃ行くぞ!!!」

  デスクを強く叩いてリオンが立ちあがり、すぐに出発しようとする、が、フォルスが眼の前に立ちふさがる。

  「おいおいリオン、まだデスクの書類整理が終わってないだろう?キミはソレをさっさと片付けてからじゃないと、給与にも響くかもしれないよ?」

  リオンの鼻先に翼を押し付けながらずいずいとフォルスが詰め寄り、リオンはそのままデスクへ追い込まれる。

  「うぐ…けどさぁ…って!アルマもクロももう準備してるじゃん!!!」

  フォルスに追い込まれ、減給までチラつかされるリオンがアルマとクロをみると、二人は既に書類の整理も終わり、出撃準備を済ませている。

  「俺たちはちゃんとやる事はやってるからな、フォルス、先に行くぞ」

  素っ気無い口調でクロが先に部屋を出る、その後にアルマもリオンに謝りながら出て行き、部屋にはリオンとフォルスの二人だけだ。

  「ほら、リオンは席にさっさと戻って、いいかい?書類が全部整理し終わるまでは出れないように鍵をかけておくからね」

  と言って軽やかに扉の前へ飛んだフォルスはリオンが突っ走るのも余裕にかわして扉を閉める、鍵が閉まる少し前に轟音が響き、

  リオンが扉に突っ込んだのに呆れつつもフォルスもクロたち二人を追って窓から飛び立つ。

  「…いってぇ…ちっくしょう、フォルスの奴ぅ…」

  ぶつくさと不貞腐れながらリオンはふらふらとデスクにかけ、山積みの書類に手を出し始める。

  「よかったのかな…リオンを置いてきちゃって」

  洗練され、美しい蒼い鎧と立派な槍を携えたアルマがクロと、飛んできたフォルスに声をかける、

  三人は街中で暴れている機械をそれぞれ別々に止め、その出所に向かっていた。

  「いいんだよ、アイツは少し痛い目を見て自分のやりすぎてるところを見直すべきさ」

  青地に黄色や翠の華麗な服とスカーフに大弓と矢筒を背負うフォルスはやれやれと言った態度で歩く。

  「全くだ、アルマは鎧だから巻き込まれてもそれほどでもないが、こっちは危険なんだ」

  下顎から全身をすっぽりと包み隠す漆黒のコートを羽織るクロも心底迷惑そうで、一行は山奥の廃墟に辿り着く。

  「ここだよね…あれ?なんだろう、エレベーターかな?」

  アルマたちが廃墟の奥へ進んでゆくと、四台のエレベーターが並んでいる、その隣には四つの端末があり、それぞれに接続できる部分がある。

  「…別々に行け、と言う事か、どうする?」

  クロが端末に所持してる端末を接続すると、隣のエレベーターの扉が開く、外すと扉が閉まってしまう、敵はエレベーターの先に居るだろうが、分担されてしまう危険がある。

  「ま、大丈夫でしょ、さっさと済ませてしまおう、リオンが大人しくしてるとは思えないし、扉を壊されたりしても困るしさぁ」

  フォルスが端末を接続し、エレベーターへ乗り込む、アルマとクロも納得し、エレベーターへ乗り込むと扉が閉まり、三台のエレベーターはそれぞれ音も無く三人を運んでゆく。

  誰もいなくなった室内、アルマの端末が光ると、リオンの名前と連絡先が写り、そのまま通話し始めた。

  どの位の時間が経っただろうか、リオンの眼の前の書類の山はまだ残っているが、リオンは途中でうろついたりしていた、

  そんな中、リオンのデスクに置いてある端末に着信が入る、リオンが手に取り見てみると、其処にはアルマの名前が。

  「ん、アルマか…?」

  端末を通話にすると、最初は無音だったが、ふいに声が聴こえた、しかしその声はリオンの聞いた事のない声だった。

  「やぁ、リオンくん?随分と遅いようだけど、そんなに書類は多いのかな?」

  女性のようだが、何処となく男のようにも聴こえる声、端末の連絡地点を探すと山奥である事、其処にはクロとフォルスの二人の反応もあった。

  「そんな事を誰とも知らない相手に話すような事ではないと思うがな、お前は誰だ?何故アルマの端末を持っている?」

  リオンの答えと問い返しに端末の向こうからはクスクスと軽い笑い声が響く。

  「それもそうだね、簡単に答えるなら、君の仲間は皆捕えた、端末はその時に回収したんだ、君が来ていない事は予想外だったけどね」

  実にあっさりとした答え、しかしリオンには納得がいかない、それはなんだかんだと言っても仲間を信頼している証拠だ。

  「アイツらがそう易々と捕まるような奴らじゃないのはよくわかってるんだ、わかりやすい嘘ならやめておくんだな」

  リオンが問い詰めると、しばしの沈黙の後に呆れたような声が返る。

  「ま、そうだろうねぇ、彼らは作っておいた玩具も皆倒したし、此処まで余裕だったし、けど殆ど捕えたようなものさ、嘘だと思うなら来てごらん?それじゃあね」

  明らかな挑発、通話の切れた端末には三人の反応がある地点、リオンはヒーローとしての装備である立派で豪奢な鎧と大剣を背負うと扉を足で蹴り開け、

  そのまま猛スピードで山奥の廃墟へ突っ走って行く。

  山奥の廃墟に着いたリオンはそのまま奥へ進むと、其処には四台のエレベーター、そのうち三台には三人の端末が接続されており、リオンが乗り込めるのは残っている一台である。

  「…乗れってか、いいだろう、この俺に挑みたいんだったら、本気で相手してやるからな」

  リオンがその一台に端末をつなげると、エレベーターが開く、リオンは颯爽と金色の鬣を揺らしながらエレベーターへ乗り込むと、そのまま下へ降りて行った。

  「ふっふっふ…これで四人揃ったね…いやぁー、コレからが本番だ、実に楽しみだ…」

  動き出したエレベーターを見た狐は愉悦を孕んだ笑みを零す、その後ろには何人もの鋼の人形が静かに並んでいた…

  四人のヒーローに待つ運命はいかに…

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