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着信:銀狐
≪……と言うわけで、四人のヒーローを陥落しようとしたが一体のアーマーによって謎のヴィランはとっとと撤退を余儀なくされました、なんてね、いやー、予想外、予想外!
あの素材でもまだ完成には時間がかかると思ってたのにもう一体完成させていたなんてね!君の才能を過小評価していたようだ!
約束通り、素材は追加送付させてもらったよ、君のより一層の活躍を楽しみにさせてもらいます、
それでは≫
小さなウインドウに送られたメール、ソレは数週間前に四人のヒーロー達が撃退した狐からだった、
送付された素材、それは従来の金属と比べても硬く、されど柔らかく、どんなに延ばしたりしても壊れたりしない、正に”超常的な”金属であった、しかしその金属は、彼女の目指した装備の斜め上を突き抜けていた。
「……予想外、ね」
届いたメールを流し読みするのは紅白の毛並みに少しくたびれた白衣を着るイタチ、
トルテ・フェルティアだ、彼女はメールを流し読みしつつも、片手間に新しいアーマーを開発していた。
「正直なところ、貴方の素材の方がよっぽど予想外の塊だっただけよ、未知のテクノロジーの塊なんてね」
トルテが目指した装備は、確かにヒーロー達にとって最優になりえる装備だった、しかしソレはどんな素材でさえ一歩及ばぬ机上の空論でしかなかった、だが狐の送ってきた素材はまさに最適どころの話ではなく、試験機体として開発されたリオンのアーマーでさえ予定より早く、なおかつ予想よりはるかに良い動きを見せた、
その結果は、ウインドウの一つに流れているニュースの中継でも明らかだった、
『ちくしょう!おぼえていやがれっ!!』
そんなありきたりな捨て台詞と共に撤退するサメやトラのヴィラン達、カメラが次に向いたのは艶やかで洗練された鋼のヒーロー四人、ブクブクに肥えていた図体はどこへやら、人々の喝采を浴びながらも四人は気さくに手を振ったりしながら、飛行能力をジェットパックで強化したフォルスは颯爽と飛び去り、クロは相変わらずふらりと雑踏に消え、今までより豪華で、堅牢になったアルマと、立派な装甲のリオンはガシャリ、ガシャン、と身体を駆動させながら帰還していた、
と、メールの末尾に追伸とファイルが一つ、
≪PS.これは貴方が喜ぶと思って撮っておきました、どうぞ≫
そのファイルを開くと、其処には、
だらしなく頬を緩ませながら料理を貪るアルマ、
普段の凛々しい面構えがたっぷりの頬肉を揺らしながら、嘴で咥えた蔦から蜜を飲むフォルス、
冷酷で冷徹な仮面が見る影もなく、口周りを食べ滓でべったり汚しながらケーキを貪るクロ、
そして、まだ研究者としても駆け出しだったトルテが相棒として長年見ていた、
様々な料理を豪快に食べるリオン、動画データもいくつかあるが、ソレを見るのは後にしよう、しておかねば。
「……っ、っあ、いけない、四人もそろそろ戻ってくるから、メンテナンスと体調観察をしないと…」
四人の反応が戻ってくるのを見て、急いでメールとファイルを閉じる、そして白衣を翻して事務所へ向かう、
以前なら研究室に閉じこもって事務所の様子はカメラで見るだけでよかった、しかし、今は四人のアーマーの点検、装備者である四人の体調のチェック等も必要になったから、仕方なく出ることにしたのだ、
本部から申請された新しいアーマーの開発は小型デバイスで容易に設定できる、送られてくる種族、性別、身長、体重、戦闘スタイル等をそれぞれ確認して指定するだけでいい、その上メンテナンスの仕様も全て付属出来るからお手軽と来たものだ、
だけど四人のアーマーはそうはいかない、量産式ではない特別仕様も確かに一因だ、
もう一つの要因がある、それは四人の、体重だ。
「あ、ただいまです、トルテさん…ふぅ、やっぱりこのアーマーは凄いですね…身体の……重さが、気にならない…のは…あはは」
と階段を上り、広くなった扉を開いて来たのは蒼く、更に立派な鎧を着た龍、
バイザーと兜部分が稼動し、翠の鱗と銀の角のアルマの顔が露になる、
その後鎧が手足の先から折りたたまれ、最後にアルマの身体を包んでいた膜が剥がれると、
ぶくんっ!むくっ、ぶるるんっ!と一点に戻る膜から溢れるようにアルマの身体が膨れる、
否、引き締めていた身体が本来の大きさに戻ったのだ、
アルマの胸元に片手で持てるサイズのデバイスが乗る頃には、アルマの全身はでっぷりと肥えていた、
腰回りから太く、少し短くなったように思える尻尾に見合う程の大きさになった尻、
負けじと真ん丸な円を描く腹、その上に乗る胸もまた大きく、整った張りのある胸だ。
「おかえりなさい、アルマ、お疲れ様、アーマーのメンテナンスはさせてもらうわ……それにしても、相変わらず随分と大きなお弁当箱ね?」
どす、どすとトルテのデスクの前に歩み寄ると、デバイスを手渡す、そしてアルマは自分の席に戻ると、どすぅん、とどっしり席に座り込んで、昼食の弁当箱を取り出した、トルテが何の気なしに聞いたのもそのはず、
アルマの弁当箱はさながらお節料理の入った重箱、しかもそれが四段、しかもそれが一般的なサイズではなく、龍族向けのサイズなのだから猶更だろう、ソレを指摘されたアルマは恥ずかしげにトルテに歩み寄る。
「うぐっ、しょ、しょうがないじゃないですか…ついついおなかが空いちゃうんですよ…でも見てくださいトルテさん!栄養バランスとかちゃんと考えて色々入れてるんですよ!それでちゃんと運動すれば痩せる!…………筈です!」
トルテのデスクは体系に見合わない大きさだが、コレは小柄なトルテと同じサイズのデスクでは四人と同じ環境にいられないからと専用の大きさにしたものである、故にアルマが見せてきた弁当箱の中身も確かに見える、
其処には仕切りで混ざらない様に区切られた様々な総菜が入っている、
唐揚げに豚の角煮と牛のしぐれ煮、焼鮭に鰤の照り焼き、レンコンやゴボウの入ったきんぴら、
青々としながらもトマトなども入ったサラダ、ほうれん草の胡麻和え等、確かに栄養価は考えてるのだろう、
しかし量、量が痩せる事を目的にしていない、アルマが見せているのは三段目まで、では一番下の段には何があるのか、トルテには見せていないが、一面に真っ白な米、麦や玄米も入れているから大丈夫、とはアルマの談である。
「せめてこの体系は維持しないといけないし……と言うか、トルテさんはちゃんと食事はしているんですか?もし良ければおかずを分けてあげますよ!ちょっと作りすぎちゃった位ですから!」
若干の嘘が混ざっている、ちょっと、ではなくかなり、だ、龍族は元々より大食漢になりやすく、
ちょっと気を緩めたらすぐブクブクと太ってしまう、その上で自炊なのだから猶更悪循環になりそうだった為、トルテに分ける、という言い訳をつけて食べる量を減らそうとしているのだ、小さな容器にいくつかを盛るが、どうしてもちょっと手が止まりそうになり、それでもある程度を乗せてトルテに渡す。
「あはは、そうだったの、しょうがないね、折角だから頂こうかしら……あむ、んむ…うん、美味しいわね、コレ」
トルテは笑って受け取る、アルマの顔を見ると、うれしさの中に、渡した分を食べられない辛さなのか、ちょっと涎が口元についていた、
貰ったのに食べないのは勿体ないし、今後の事も考えればと、貰った総菜の唐揚げを一つ箸で取り、口に運ぶ、
サクリと衣が牙で裂け、じゅわぁ、と芳醇な肉汁が口の中に広がる、しかし唯濃い味なのではなく、塩、醤油、レモン汁だろうか、さっぱりした味もある、
豚の角煮もじっくり煮込まれ、味が芯まで染み込み、添えられていたさやえんどうで濃い味を落ち着かせる、
美味しい、の一言が嬉しかったのか、アルマが折角だからともっと取ろうとした時、閉まっていた扉がまた開く。
「こらこらアルマ、トルテが困るかもしれないだろう?そのくらいにしなよ?」
コツコツと出てきたのは洗練された鎧をまとう隼、フォルスだ、片手に持っていた大きな籠を自分のデスクに置くと、鎧を解除する、
スラリと締まっていた身体がブクンッ、ムクッと丸みを帯び、引き締まってスマートだった身体が丸々とした贅肉を蓄えた姿に戻る、
アルマに比べると贅肉はどっしりと垂れ、さながら雌のような包容力さえ感じさせそうだ、
頬にもふかふかと肉が付き、整っていた顔立ちに丸みがある。
「うぅ、そうだよね、ごめんね、トルテさん……ところでフォルス、その籠は?」
アルマがバツが悪そうにトルテに謝る、トルテとしては大したことはないのは事実で、気にはしていなかったが、アルマと同じで籠には気になっていた。
「ん?あぁ、これかい?大した物じゃないよ、ちょっとした軽食さ、折角だし、二人も食べるかい?」
籠を開けると、ほのかな香りが鼻をくすぐる、中にはどっさりとリンゴやナシ、ミカンにバナナと言った果物と、ゼリー飲料が入っていた。
「へぇ、軽食というにはちょっと多い気もするけど、色々あるんだ…」
トルテが籠の中のゼリー飲料を手に取る。アルマもそっと果物を取って、ガブリと食べている、
果物もどれも瑞々しく、実に美味しそうだ、普段外出をしないトルテはゼリー飲料の種類の多さに驚いている。
「僕もビックリだったよ、ちょっとクセのある味もあったりするけど、それはそれで…うん、それに少し甘い物に慣らしておかないとこの後大変だろうからね…」
じゅる、と少し口が潤ったのか、ゼリー飲料の一本を咥えてじゅぅ、と吸う、その後籠からイチゴを取るとカプリとほおばる、
フォルスは確かに痩せようという気持ちもあるが、どうしてもあの時飲んだ蜜の味、蜜の食感が忘れられず、それに近い果物やゼリーをついつい飲んでしまう、その為に彼の身体はふかふかの柔らかさにあふれているのだが、女性からもソレはソレでよしと言われてしまっていた。
「たっだいま~、はーつっかれたぁ~」
三人が話していた所に扉が開く、出てきたのは漆黒の鎧、さながら狼をモチーフに取り入れたアイアン・メイデンとでも言われても納得されそうな威圧感さえ感じさせるソレ、
しかしその両手には不釣り合いさを感じさせる袋、デスクの上に置かれたソレは彼方此方の菓子店で買ったのだろう、様々な甘い香りがふわりと広がる、
鎧の仮面から蒸気が噴き出すと、ギヂッ!ミヂヂィッ!!と鎧が内側から膨れだす、
てらてらと光る黒い繊維質が鎧の合間から少し覗き、鎧が足から兜へ畳まれていく、
鎧が兜に畳まれると、繊維質のスーツもほどけて兜に戻り、どぷぅうん、とスーツにも劣らない黒い毛並みの贅肉が重力に従って撓む、
最後に兜が仮面に畳まれ、その最中にはたぷぅうんと身体に見合うたっぷりと肉付いた頬肉が溢れ、
贅肉でパンパンな手で仮面を外すと、其処には黒い狼の顔、仮面をデスクの上に置くと、そのまま袋の中からバームクーヘンを取り出し、バクリとかぶりつきながらソファのような特注椅子にどずぅん、と座り込んだ。
「あむっ…むぐ、やっぱり一仕事終わった後には甘い物だよねぇ…はむっ、あー美味しい……全身に染み渡る快感……皆も食べよう?」
バームクーヘンはもう食べ終わって、シュークリームにラングドシャ、クリームたっぷりのショートケーキにチョコケーキと太い手とワイヤーを器用に使って食べ、更には三人にお菓子を差し出す黒狼、クロ、
以前の彼女は刺すような冷酷な雰囲気と威圧感があったのだが、
今の彼女を見ると別人どころの話ではないだろう、全身に余すところなくたっぷりの贅肉が溢れ、
たぷたぷと柔らかに揺れ、大きな尻でもしっかりと主張する尻尾は幸福に揺れている、
顔も冷たさが無くなりモチモチした頬肉にクリームや食べかすがついているのもお構いなしで、シュっと整ったマズルが無いと狼とも思われない位だ。
「……確かに、甘い物を食べるのは悪くないけれど、相変わらず量が多くないかい、クロ?」
やれやれとフォルスが肩をすくめる、そんな最中でもまるでお構いなしにもっふもっふとカステラにかぶりつく、ぽろぽろとカステラのカスが口周りに落ちるが、べろりと舌で舐め回しながら満足げにジュースをごきゅごきゅと飲んでいる。
「ぐぇふぅ…けぷっ、いいじゃん、今まで我慢してたんだから、思いっきり好きなだけ食べるだけだし、誰に迷惑かけてるわけでもないし、ソレ言うんだったらフォルスだって真ん丸じゃん」
ゆったりとゲップを漏らしながらもどす、どぷぅん、肥えた身体を立ち上がらせ、フォルスにたぷん、と肥えた腹を押し付ける、全身に余すところなく贅肉が付いた身体はどっしりとしているが、やはり女性であるクロに身体を寄せられるフォルスは恥ずかし気に視線を逸らしながらもゼリーを飲んでいる。
「……クロさん、なんだか以前と比べるとすごく、楽しそうですよね、前は凄く……うん、鋭い雰囲気、でしたし」
アルマがポツリとつぶやくのが聞こえる、言われてみれば確かに、以前のクロには冷酷で、暗殺者然とした雰囲気を感じさせていたが、今のクロはゆらゆらと尻尾を揺らしながらエクレアを食べて、ほっこりと幸せそうな顔を見せている。
「んぅ?あぁ、前は色々と我慢してたからねぇ…はむっ、父さんにも実力はしっかり叩きつけたし、トルテのアーマーには感謝だね…むしゃ、お礼の鈴カステラをあげよう」
五本目のエクレアを食べ終わると、あっさり答えた、あの後の事はもちろん記録されている、
クロがああも丸々と肥え太った図体になった事、それはしょうがない、痩せさせればいい、と言うのが彼女の父の考えだった、
しかしクロはその考えを軽々と一蹴した、その上で食べながら実力も損なわれていないのを証明したのだ、
勿論自力では黒大福のような図体はどうしようもないが、トルテのアーマーによって以前の体躯、更に以前より洗練された動きをもって父を打ちのめし、
挙句の果てに簀巻きにし、壁に腹を押し付けながら目の前で隠していた羊羹を一本丸々食べると言うオマケまで付けて勝ったのだ、
だから問題なく今でも食べているわけで、そんな事を思い返すトルテの前に、ガサリと袋いっぱいにコロコロ詰まった鈴カステラが捧げられる、
唯の鈴カステラではなく、一つ一つに様々なフレーバーの味がついており、トルテの体躯でも食べやすい為に片手間でつまめる代物だ。
「えぇ、ありがとう、それじゃあクロのアーマーの伸縮率はもう少し大きめにしておくわね」
勿論本心で答える、食べやすいとは言えども食べ過ぎるわけにはいかないが、それでも研究の為には何とか食べるのが一番だ、クロは「よろしく~」とゆったりした動きで頼んでいるし、その分彼女自身の体重もまたかなり増加していた、
そんな中、ドス、ドスと足音が昇ってきた、ギィ、と扉からでっぷりと張った太鼓腹が姿を現す。
「今戻ったぞー、っと、お前ら、どうせアーマー着ながら帰ってきたんだろ、ちょっとは自分で運動しないと痩せないぞー」
そんな事を言いながら両手には行きつけのジャンクフードショップで買った手提げ袋が二つ、揺れるだけで部屋に振り撒かれる香りは濃厚で、食欲を誘ってくる。
「お疲れ様、リオン、また沢山買って来たのね、ちゃんと連絡は入れたの?」
どっかりと手提げ袋を置いたリオンにトルテが声をかける、リオンはコートのポケットから待機状態のアーマーを取り出すとトルテのテーブルへ置きながら答える、
「あぁ、もちろん仕事終わりに取りに行くって連絡しておいてたからな……『連絡も入れないで大量に注文する奴はたとえ友人だろうが価格六割増しにしておいてやる』とか言われたらこっちもどうしようもないしなぁ」
なんて頭を掻きながら友人に脅された事を笑うリオン、ゴソゴソと袋から紙袋を取り出して中身を並べる、色々なハンバーガーに、黄金色に揚がったフライドポテトやハッシュポテト、ケースに入ったナゲットなどとバリエーションも様々で、濃い香りに誰ともなく、ゴクリと生唾を飲む音が漏れた。
「あ、リオン、そのチキンバーガー一つちょうだい」
クルリとワイヤーが巻き付いたバーガーが一つ、スルリと吊り上げられ、そのままクロのふわふわした手の中で包みが開かれてもしゃり、とクロの口に運ばれる
「ってオイ、答える前にもう食ってんじゃねぇか……それじゃそっちのドーナツ一個くれよ」
リオンに返されると、クロは渋々にドーナツの中のシンプルなものを一つワイヤーで持ち上げるとクルリと廻しながらリオンに投げる、そのままリオンの出した手にしっかりと収まって、後で食べるのだろう、隣に置かれた。
「ほら、フォルス達も食うだろ?色々買って来たから食べようぜ」
なんて言われると、仕方なさげにフォルスも、アルマもリオンの買って来たバーガーのうちからいくつかを手に取っていた、その際に二人も自分の食べ物をお返しに渡している。
「トルテも食べるだろ?」
リオンがふくよかな腹を揺らしながら小分けされたナゲットの箱と、少し辛めなチリソースのパックを差し出す。
「……そうね、折角だから貰うわ、ありがとう」
甘い物が多い中で辛いソースを選んだのはリオンの優しさだろう、トルテもそれを受け取るとデスクの横に添える、ヒーロー達の一時の休息、思い思いに食べ物を食べて談笑しているが、トルテはディスプレイに映るデータの整理や調整を細かに行い、四人のデータを細かくリスト化していく、
そんな中、事務所に警報が鳴る、四人が食べる手を止め、トルテは入った連絡を大きな画面に写す、
画面には大型の兵器を振るう龍人が暴れていた。
「おっと、また仕事か!よっしゃ行くぞ!!トルテ!アーマーくれ!」
とリオンが食べていたバーガーをがぶりと豪快に呑み、どっしりと立ち上がる。
「やれやれ、全くしょうがないねぇ……さっさと済ませようか」
飲んでいたゼリーは綺麗にまとめられてゴミ箱に入れ、フォルスも悠々と立ち上がる、ふっくらと丸みのある身体がぼよん、と揺れる。
「よぉし、これでまた運動できますね…頑張りましょう!」
ドスン、と鈍重な足音を出しながらもアルマも張り切っている。
「んむ、あむ…んぐ…よし、最短で片付けて、おやつ食べよう」
どぷぅん、だぷん、と丸々と肥えた図体を軽々と持ち上げながらクロも悠然と立ち上がり、べろりと口周りを舐めて綺麗にする、
四人のヒーローは確かに肥えた、しかしその意志は多少の揺らぎもない。
「調整は終わってるわ、四人とも、気を付けて、いってらっしゃい」
トルテがデスクを操作すると、立ち上がった四人に折りたたまれたアーマーが渡され、ソレを起動する、四人の巨体をアーマーから射出されるスーツが包むと、四人のでっぷりと肥えた巨体は見る見る内に引き締まり、その上から四人のアーマーが装着され、頭部がヘルメットで包まれると、其処には立派な四人のヒーローが立っていた、
そしてヒーロー達は口々に、『行ってきます』と言って扉を開け、人々を守る為に出撃したのだ。
「……ふぅ、それじゃあ、こっちも進めないとね……」
四人が出撃し、広く感じる事務所、トルテはパソコンを操作し、量産型の追加開発を行う、
そのついでに、ちょっとだけ、四人の肥えた図体の映像や、身体データをついつい横目に眺めてしまう、
以前の鋭かった四人とは比べ物にならない丸々と肥えた醜態、映像で見るのもいい、
しかし、研究の為、その言葉を盾にしながらも内心では自分で見てしまう。
「……やっぱり、やっぱり……かな…」
自分の研究室に引き籠れなくなったのは、結果として四人をあの狐に売ったような物だから、
あの狐と自分の関係は仕事の間の関係、しかしそれを知られるわけにはいかない、
だから事務所で四人と直接会う関係を作る事にした、
以前なら必要なかった量の食べ物も、四人との関係を乱さない為に食べた、
だからこそ、だからこそだろう、結果なのだろう、
ぷつっ、ぷちんっ、カラララ……
そんな音が聞こえた、見下ろせばふっくらと丸みを持って膨れた腹、その先の白衣のボタンが一つ無い、
トルテは、
少しづつ、
太っていた。
おしまい
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