それは、何の前触れもなく現れた。
現代の科学では解明どころか、その現象を捉える事すら出来ない時空の歪みを伴いながら──。
◇
夏の夕暮れ。
弓道部に所属する[[rb:奈央 > なお]]は部活を終え、一人家路を急いでいた。
「全く…… 部活が終わったら連絡してって言ったのに」
今日から両親が不在のため、スーパーに立ち寄って食材を買って帰るつもりだった。
折角だから、幼馴染みの[[rb:聡 > さとし]]を誘い夕飯でもご馳走しようと思ったのだが、一人分だと作り甲斐がない事もあり弁当を買って帰ることに決める。
「ま、仕方ないか」
スーパーへ行くつもりで歩いていたその足を弁当屋へと向け、路地を曲がったその時。
コツッ と何かを足で蹴った感触が爪先から伝わる。
足元を見ると “木の実” のような物が一つ転がっていた。
「何だろう?」
形はクルミのようだが、色は真っ白で見た事のないものだった。
奈央はそれを拾い上げると、夕陽を浴びてキラキラと反射し神秘的な雰囲気を放つ。
「綺麗…… 聡にも見せてあげよ」
彼女はハンカチを取り出し、それを包み込むとスカートのポケットへ仕舞う。
ポケットの中で人肌に温められたその物体が、中で孵化の準備を着々と進めている事には当然気付くはずもなく───
[newpage]
自宅に戻った奈央は、一人夕飯を済ませ自室に戻ると、そのままベットへと横になった。
制服のままだが、部活の疲れが一気に押し寄せシャワーを浴びる気力もない。
今にも瞼が閉じられそうな状態でスマホを手に取り、メッセージアプリを立ち上げる。
【今日はごめん!! お詫びは絶対にするから!!】
聡からのメッセージが届いていた。
クスッと笑みを浮かべ、怒りマークのスタンプを返すと、奈央は何となく聡のプロフィール画面を開く。
よく分からない写真が一覧で表示され、その中の一枚の写真をタップし拡大表示する。
画面に剣道部に所属する聡が竹刀を構え真剣な表情をしている姿が広がる。
奈央は、その写真を見つめスマホを胸に抱くようにギュッと握ると、静かに目を閉じた。
時計は夜9時を指している。
部屋の中は、スゥ… スゥ… と奈央の規則正しい呼吸音だけが響いている。
偶然なのか、それともこのタイミングを見計らったのか……
スカートのポケットに仕舞い忘れていた白い実のようなものが パキッ と小さな音を上げ亀裂が走った。
そして、中から白い糸クズのような物が次々と這い出してくる。
“卵” から “孵化” したそれは、まるで寄生虫を思わせるような動きを取り、凄まじいスピードで分裂を繰り返し始めた。
ほんの数秒で夥しい数にまで増殖し、奈央の体を這い上がると全身へと広がっていく。
特に、彼女の股間付近に密集して集まったソレは次々と割れ目の中へと潜り込んでいった。
まるで体内へ寄生する事を目的とするかのように……
彼女の体に異変が起きたのはその瞬間だった。
奈央の腹部がボコッと一気に膨れ上がり制服を押し上げる。
股間から侵入した大量の寄生虫が膣と子宮内で物理法則では考えられないような分裂と増殖を始めたのだ。
「がはっ!」
声にならない悲鳴をあげ奈央の体がビクンッと大きく跳ねた。
激痛を超えた痛みが全身を駆け抜け一気に意識が覚醒するも、体が硬直し指一本動かす事が出来ない。
すでに彼女の全身には寄生虫がビッシリと張り付き、皮膚を真っ白に染め上げていた。
顎が外れそうな程に開いた口や耳からも大量に体内へと侵入し、遂に脳にまで達した寄生虫は脳細胞を包み込むようにして覆い尽くすと、まるで融合するかのように溶けて染み込んでいく。
同時に、全開まで見開いていた眼球が瞼の奥から這い出てきた寄生虫によって浸食され、瞳の色を奪って白く濁らせていく。
開きっぱなしの口からは粘度の高い唾液が流れ落ち「あっあぁっ」と意味を持たない言葉を発し続けてながら。
数分後───
腰を突き出すかのようにエビ反りになったまま硬直していた奈央の股間から、プシャーーッという水音と共に大量の白い液体が吹き出した。
それが終わりの合図であったかの様に体が弛緩すると、ダラリと脱力した奈央はベットに倒れ込む。
全身を真っ白に染め上げていた寄生虫が、アメーバーのように溶けて奈央の体へと吸収さると、肌の色が徐々に元の色を取り戻し始めていく。
白く濁っていた目に黒い瞳が戻るも、仰向けで両足を大きく広げたままピクッ、ピクッと痙攣している彼女からは生気が感じられない。
一見、奈央の姿形は元に戻っていたが、彼女に寄生した未知の生物は グチョ… グチュ… という音を上げて更なる同化と改変行動を体内で進めていた……
[newpage]
「……ん……」
どのくらいの時間が経ったのだろうか。
奈央が意識を取り戻し、枕元に置いてある時計に目を向けると既に深夜3時を指していた。
(あれ? 私いつの間に……)
奈央は気怠い感じを覚えながらも、起き上がろうとしてベットに手を突くと、スマホを触れた感触が伝わってきた。
スマホを拾い上げようと上半身を起こした瞬間、シーツがグッショリ濡れている事に気付く。
よく見ると制服や下着までもが湿っている。
「なにこれ…… うっ!」
部屋中に漂う強烈な臭いが鼻をつく。
異様な空気を感じ取った奈央は、恐る恐るスカートの中へと手を伸ばした。
なぜかショーツを履いておらず、ピチャという感触が肌と指先に伝わってくる。
ゆっくりと手を離すと、ねっとりした白濁液が指の間で糸を引いている。
白濁の粘液に塗れた手を見つめるその先に、聡の写真が映し出されたスマホが視界に入った。
「聡……」
体の奥から湧き上がる抑えきれない感情の高ぶりを感じると、瞼の裏がボコボコと蠢き奈央の目から瞳が消え白く濁る。
無意識のうちに指に付いた白濁の粘液を舌先で舐め取ると、その指を再び秘所へと伸ばす。
ヌルッとした感触が膣内に入り込み奥へと進んでいく。
ぐちゅ…… ぐちぃ……
卑猥な音を響かせ奈央は自慰行為に没頭する。
片手で胸をもみしだき、腰を突き上げて愛液を撒き散らすその体は快楽に包まれているように見えるが、その表情はかけ離れたものだった。
まるで感情が死んでいるかのように無表情で、ただ機械のように指を動かし続ける。
そんな自慰を10分ほど続け、奈央は何かを思い出したかのようにベットから降り机へと向かう。
指を秘所に突き入れ膣壁を引っかき回しながら、机の引き出しを開きお守りのような物を取り出した。
それは高校受験の前に、聡と一緒に作ったお揃いのお守り。
中には願掛けとして当時流行ったお互いの髪の毛を交換して入れてある。
奈央は、大切に仕舞っておいたそのお守りを何の躊躇もなく破り捨た。
そして、中に入っていた聡の髪の毛を指先で摘まんで取り出すと、瞳のなくなった目でじっと見つめる。
まるで髪の毛から何かを読み込むように……。
そして、ニヤリと笑った彼女は口を大きく開け、髪を口の中へと放り込んだ。
「あ~ 聡…… お願い… 私をもっと気持ちよくしッ ─── ぐぅえェェェえッ!!」
突然、奈央の口から白い触手のような物が大量に突き出てきた。
それはグチャグチャと音を立てながら形を変え、人の顔のような形状へと変貌していく。
口、鼻、目、耳……
全てが形作られ、ゆっくりと色味が付くと髪の毛が伸びる。
そこに現れたのは、紛れもない聡の頭部。
「奈央」
それは彼女を見つめて名を呼んだ。
今よりも若干幼さが残る顔付きではあるが、その表情も声も寸分違わぬ高校入学前の聡である。
しかし、首から下は無数の触手の集合体となり彼女の口の中へと繋がり、まさに顔だけしか無い状態だった。
「あ~ 聡…… 嬉しい……」
奈央は、聡の頭部を両手で掴んで自分の胸の前にあてがった。
聡の口が開き舌を伸ばして彼女の乳首を舐める。
ペロペロと可愛らしく舐められ、奈央の口から先程とは違い思わず甘い吐息が漏れ出す。
自然と力が入り、聡の顔を胸へと押し当てると彼の口は貪るように彼女の乳房へ吸い付いてきた。
ジュルッ…… ヂュッルルッ……
唾液を絡ませながら強く吸われ、奈央は全身を仰け反らせて歓喜の声を上げる。
ビクンッ ビクンッ と何度も大きく痙攣する体。
絶頂を迎える度に股間からは潮を吹き出し、ベットを更に汚していく。
「はぁ… はぁ… ねぇ、今度はここも舐めて……」
奈央は聡の顔を自分の股間へと伸ばし、秘所へ押しつける。
聡はそれに答え、舌を使って丁寧に愛撫を始めた。
ヌルッとした柔らかい舌がクリトリスに触れ快楽を享受すると、聡はその部分を集中的に攻め始める。
何度も、何度も聡の顔を秘所に押しつけ奈央は喘ぎ続けた。
聡は自分の思い通りに気持ち良い場所を攻め続けてくれるのだ。
「ぎもじいよ 聡ー! もっど! もっど舐めでー!!」
尽き果てる事のない性欲は日が昇るまで続き、ようやく満足した奈央は疲れた表情でベットの上で横になる。
荒い呼吸を繰り返しながら枕の横に置いた聡の顔を見つめる。
そこには、いつも通りの笑顔を浮かべた聡がいた。
「綺麗だよ奈央。 愛してる」
「……」
聡がそんな事を言ってくれるはずがない。
私がそう言って欲しいと思ったから、目の前の聡の “顔” はそう言ったのだ。
これは、聡の髪の毛に含まれてた情報を元に構成した、ただの器。
そう思うと今までの興奮が嘘だったかのようにスーっと冷め、奈央は聡の顔を “解” いた。
ゴポォ…… ゴポッ……
聡の顔は皮膚が溶け、肉が溶け、骨が溶け、脳が溶け… そして触手状に戻ると奈央の口の中へと消えていった。
その光景は、ホラー映画のグロテスクなシーンを思わせるほど恐ろしいものだった。
奈央の目に黒い瞳が戻り、一気に現実に引き戻される。
「うっ! ぐえぇぇえっ!」
胃から逆流してくるものを我慢できずに全て吐き出す。
体がガクガクと震え、先程のおぞましい行為が頭の中にフラッシュバックする。
「何… 今の…… 私は一体……」
混乱する頭で必死に記憶を手繰り寄せる。
彼女の頭に人間には存在するはずのない知識や感情が流れ込んできた。
物質や生命体の情報吸収の手段とその融合方法。
記憶や知識、経験といった情報を解析して移植・展開する能力。
髪の毛1本からでも、その人物の遺伝子情報を取り込んで再現する事が出来る再生能力。
そんな得体の知れない力が奈央の中に存在している。
「嘘…… 私、人間じゃ… ない……」
ふらっとした足取りでベットから抜けると、鏡の前に自分の姿を映し出す。
そこに写っていたのは、制服だけでなく、顔や髪も白濁とした液体に塗れてはいるが紛れもなく奈央の姿だ。
恐怖を感じながらも、奈央は心の隅にある構成情報を自分の体に展開してみた。
すると、左手から寄生虫のような物が湧き出し、一気に肘から下がに白く染まるとアメーバのように形を変えながら聡の頭部が再生されていく。
「嫌…… いやー!!!」
おぞましい形へと姿を変えていく自分の左腕を振り回し壁に叩き付けた。
中途半端に構成された聡の頭部を何度も何度も叩きつけると、肉と脳が潰れて飛び散り骨の砕ける感触が伝わってくるが一瞬で再生を繰り返し元通りに戻っていく。
「ううううっ……」
奈央は涙を流しながらその場に蹲った。
こんな化け物になってしまった自分が恐ろしく、精神が崩壊しそうなほどの絶望を感じる。
しかし、この体は精神崩壊などは絶対に起こす事はできないと理解していた。
奈央は自分の左手を自分の顔の前に近づける。
構成情報が暴走し、もはや人の手とは思えない形状になっていた。
生気のない表情でその手をじっと見つめながら、自分の遺伝子情報を異形の手に展開する。
無数の寄生虫が腕から這い出し白く染め上げると、次第に人の手らしい形状へと変化を始め、五本の指を持つ本来の手が再構築され肌の色が徐々に戻っていった。
そんな様子をボーと眺めていた奈央は、何かを思い出したかのようにふらりと立ち上がる。
「お風呂に入らなきゃ…… このままじゃ学校に行けない」
抑揚の感じられない声で呟くも、それは必要ない事が分かった。
全身から煙が上がり制服が一瞬で溶け落ちていく。
そして、体内からアメーバーのような物が染み出し、下着や制服が次々と構築されて奈央の体を包んでいった。
シュー と音を上げ煙が消えると体にまとわりついていた白濁液は全て蒸発し、綺麗さっぱり何もかもが無くなっている。
まるで、最初から汚れていなかったかの様に……。
「……」
その様子を奈央はボーっとした表情でただ見つめていた。
この体には構成情報を取り込めばそれを自由に再現出来る能力が備わっている。
物だけでなく、人でさえもその情報を自分の物に出来る。
奈央はそんな化物になってしまった自分の体に理性では恐怖を感じるも、同時に心の奥底では抑えきれない高揚感を感じていた。
「ふふっ……」
姿見に映る彼女の顔は、不気味な笑みを浮かべている。
それは奈央自身の物なのか、寄生虫に乗っ取られた奈央なのか、もはや曖昧な状態だった。
[newpage]
「おはよ~ 奈央。 って、制服クリーニングにでも出した? いや、もしかして新品?」
教室に入るとクラスメイトの由香が声を掛けてきた。
クリーニング屋の娘だけあって鋭い指摘をぶつけて来る。
奈央は自分の着ている制服の構成情報を確認すると、由香の言った通り確かに1年前に購入した時と同じ状態。
これからはボロが出ないよう、構成時に注意を払う必要がありそうだ。
「おはよう。 今日も暑いね~」
奈央は制服の件は無視し、いつも通りを装って返事をする。
一つ前の席に座る由香は、体を曲げて私の顔をニヤニヤとした顔で覗き込んできた。
その仕草は聡の事を茶化す際に見せる顔。
「ねぇ、3組の中村早紀って子が聡に告白したの知ってる?」
「え?」
突然の情報に言葉を失う。
中村早紀… 確か聡と同じ剣道部だった気がする。
話をした事はないが、可愛らしい顔立ちと人当たりの良さから男子の間では人気の高い子だ。
でも、まさか彼女が聡に……
「そうなんだ」
内心の動揺を悟られないように返事を返す。
由香は顔を近づけ、口元に手を当てながらヒソヒソ声で話しかけてきた。
「どうも聡は返事を保留にしたそうなんだけど、気になるよねぇ~ 聡ってああいう大和撫子風な女子好きそうだし」
由香の言う事は間違っていない。
聡は昔からその手の女の子が好きだし、パソコンのZドライブなる隠しディスクの中に溜め込んでいるエッチいマンガや動画もそんなのばっかりだ。
現に私が弓道部に入ったのだって……
「ま、聡の好きにすれば良いんじゃないの?」
「おやおや、幼馴染みの余裕ですか? 奈央もそろそろ自分をアピールしておいた方が良いよ~」
奈央は、はいはいと軽く受け流すとトイレに向かうために席を立つ。
そして教室を出ると、廊下で登校してくる友人達に挨拶を交わしつつ歩きながら考えていた。
聡に告白してくる人がいても、それを咎める権利なんてない。
奈央自身も男性から何度も告白を受けた事がある。
当然、その好意は受け入れるつもりなどなく、もれなくお断りをしてきた。
聡もそうだと勝手に思っていた。
いや、奈央の知る限り全て断っていたはずだ。
しかし、由香の話では今回は返事を保留にした… つまり聡は迷っているという事になる。
正直なところ、嫌な予感しかしなかった。
アピールならしているつもりだが、幼馴染みの位置からステップアップして聡の隣に立つにはまだ努力が必要……
奈央はトイレに設置された洗面台の前に立ち、蛇口を捻る自分の手を見つめる。
(今の私なら何ステップも先に進めるよね)
その声に応えるかのように、手の平の皮下で寄生虫がモゾモゾと動き回った。
同時に手が触れている物の構成情報を無意識に取り込んでしまう。
頭の中に蛇口を構成する金属の情報が流れ込み自分の遺伝子の中にねじ込まれていく。
「……」
蛇口を掴んでいる右手の皮膚が溶け肉組織が露出すると、煙を上げながら新しい表皮が構築され再生されていく。
肘から下が銀色に光る合金に置き換わり、指先が鋭利な刃物のような形状へと変わった。
人間の肉体ではありえない色… そして構成物。
心の奥底からドロリとした黒い感情が沸き上がるのを感じる。
(この体で中村早紀を…… いや、その前に聡が彼女をどう思っているのかをこの体に取り込まないと)
光沢を放つ異形と化した自分の腕を見つめながらニヤリと不敵な笑みを浮かべると、シュッと音をたて金属の爪が更に鋭く突き出した。
奈央はその変化を確認しクスッと微笑む。
そして、その視線を正面の鏡へと向けた。
そこには瞳が消え白く濁った鋭い目を自分に向けた人間とは思えないおぞましい顔の自分が映っていた。
異形と呼ぶに相応しい人外の顔。
誰が見ても恐怖を覚えるほどの醜悪な姿。
それは、奈央の奥深くに押し込められていた理性にも届き、自分の顔を見つめる彼女の心が急速に冷めていく。
そして本来の自分を取り戻すかのように瞳がゆっくりと黒く染まる。
「ひぃ!」
目の前の鏡に映る化物を見て奈央は小さく悲鳴を上げるも、それが自分だと一瞬で理解できた。
奈央の顔は、そのほとんどを金属と化した皮膚に覆われていた。
間違いなく先程取り込んだ金属の情報を元に構成された表皮。
人の細胞と融合したこの世に存在しない構造体を持つその表皮は、表情筋に合せて口を開く事ができ中から同じく金属で出来た鋭利な歯が覗いている。
「嫌だ…… いや……」
震えた声で小さく呟き、両手で口元を押さえようとするが自分の左腕が目に入るとその動作が止まる。
左腕がまるで鎧で包まれたかのような金属で覆われ、その先には鋭い刃を持った爪が突き出ていた。
金属のはずなのに、その表面には血管のような無数の細い線が走り、それが脈打つように動き自分の肉体と同化していることが分かる。
「嫌… こんな体嫌! 戻って… お願い戻って!」
奈央は必死の形相で叫ぶと、それに答えるかのように腕の金属部分が煙を上げて溶け出し始めた。
顔の表皮も煙を上げてドロドロと溶け落ち、鏡には顔全体が肉組織と眼球だけとなった不気味な頭部が映し出される。
「あぁ… 私の… 私の顔が……」
赤茶色をした肉組織と大きく見開かれた目玉だけとなった顔が内側からボコボコと波打つ。
そして、筋繊維の中から無数の寄生虫が這い出すと一瞬で顔全体を覆い尽くし、シュー と煙を上げながら新たな皮膚を再生させていった。
その光景はとてもじゃないが直視できる物ではなかった。
「うっぷ… ぐえぇぇええっ」
胃の中から込み上げてきたモノが洗面器の中にぶちまけられる。
吐瀉物に交じって無数の寄生虫がモゾモゾと蠢いているのが見えた。
奈央は、その場に倒れ込み両手を口元に当て震えていた。
先程まで金属と化していた手も、元の柔らかな肌に戻っている。
「押さえなきゃ…… このままじゃ私、取り返しの付かない事になっちゃう」
先程まで自分が考えていた事が恐ろしくて仕方がない。
それは人として踏み越えてはいけない一線… いや人が考えつくような物じゃない。
このまま感情に飲まれれば自分は姿だけでなく、心まで化け物になっていってしまう。
(怖い。 助けて、聡……)
奈央は恐怖に顔を歪ませながら、逃げるようにトイレを後にした。
[newpage]
放課後、奈央は部活の練習を終えるとその足で剣道部の道場へと足を向けた。
トイレでのおぞましい出来事の後、すぐにでも帰ろうと思った。
しかし、どうしても聡の顔が見たくなったのだ。
クラスの違う彼と会って話をするには放課後位しか機会がない。
このまま一人で居たら、自分を見失いかねない。
(聡に会いたい。 会って少しでも良いから話がしたい)
世間話をしたらすぐに帰ろう、と奈央は心に決めていた。
聡のいる剣道部の道場前で深呼吸を一つするとドアを開ける。
そして、出来るだけ平静を装い声を上げた。
「聡~ ちょっと良い?」
「おお、奈央か。 あっ、昨日はすまなかった。 ごめん!」
聡は奈央の顔を見ると両手を合せながら防具を着けたままの姿で道場の外へと歩いてくる。
たったそれだけで、奈央は心が温かく満たされていくのを感じ自然と笑顔になった。
しかし、その光景を一人の部員が睨むように見ているのが視界に入る。
敵意を剥き出しにしたその表情に、奈央の心がぐにゃりと歪む。
「どうしたんだ?」
「え? えっと…… メッセでも良かったんだけど、今日もうち両親いないから聡の家に行ってもいい?」
そんな予定を考えもしていなかった奈央だが、自然と言葉が出てしまった。
奈央が聡の家に行くのはよくある事で、お互いの親同士も公認の関係である。
昔に比べれば行く回数は減ったが、今でも時々聡の家に泊まる事もある。
なので、特に不思議がる事も無く聡は答えを返した。
「そうか。 んじゃ母さんに言っておくわ」
「うん、よろしく!」
奈央は普段通りの笑みを浮かべながら、聡の肩や首筋をわざと触れるようにして何度かポンポンと叩いた。
そのやり取りを睨むようにして顔を向けている彼女に見せつけるかのように。
首筋から流れ出た汗と、しっとりと濡れた道着の感触が手に伝わると同時に様々な情報が頭の中に流れ込んできた。
聡の記憶、思考だけでなく、彼の着ている道着や防具の状態、構成、傷の位置や痛み具合までが手に取るように分かる。
「うち来るなら、一緒に帰るか?」
「え? わ、私この後少し用事があるから、先に帰ってて良いよ」
聡は、耳を赤くして俯いた奈央を不思議そうに見ながら、分かったと返事をして再び道場へと戻っていく。
奈央は理性を抑える事が出来なかった罪悪感と、自分の持つ力の恐ろしさを思い知ると同時に、聡の気持ちを知り嬉しさのあまり顔がほころんでしまう。
(この格好のまま来たのは正解だったみたい)
聡は奈央の弓道着姿を見た時、胸が高鳴ったのを感じていた。
そして、聡はやっぱり私の事を……
奈央は顔を赤らめモジモジと落ち着きの無い様子で道場をゆっくりと後にする。
直後、後ろから道場のドアが開く音が聞こえた。
「あの!」
奈央に声をかけたのは、聡に告白をした中村早紀だった。
予想通りの展開に、奈央はニヤリと笑う。
「確か、3組の中村さん…… だっけ? どうしたの?」
「お話があるんですけど」
彼女は真剣な表情で奈央を見つめている。
その目を見れば彼女が何を言いたいのかはすぐに分かった。
「ここじゃあれでしょ。 裏に行こうか」
[newpage]
部室棟の裏。
この場所は大掃除の時以外は誰も立ち入らない場所。
部室には裏窓がないので誰にも見つかる事はない。
「防具付けたままみたいだけど、決闘でもするつもり?」
「違います」
「そう。 で、私に何か用?」
彼女は私の問いに下を向いて無言になるが、意を決したように顔を上げて私の目を見つめてきた。
その目は真っ直ぐに私の顔を捉えてる。
「聡と付き合っているんですか?!」
彼女の言葉に私の目がピクリと動く。
他の女子が聡の事を呼び捨てにするのは何とも思わないが、何故かこの女が呼び捨てにするのが許せなかった。
体の中で沸々と人のものではない感情が湧き上がるのを感じ、ソレが活動を始める。
「付き合ってないよ。 でも聡とあなたは付き合えないから」
「はあ? それ、どういう意味?」
明らかに敵意剥き出しの口調。
おそらく彼女は私と聡が幼馴染みである事を知り、先手を打って告白したのだろう。
でも、残念。
「聡はあなたと付き合う気はないみたい。 でもね、その白防具を着けた姿 “だけ” は好みだって。 確かに凜々しくて格好いいし、聡好みのポニーテールも似合ってるけど」
私の言葉を聞いた瞬間、彼女は顔を真っ赤にして俯いた。
もう答えは出ているようなものだが、格好だけとはいえ聡の好みだという事が許せなかった。
だから……
「ねぇ、私にその姿を頂戴?」
「は?」
彼女は意味が分からないという顔をする。
私はそれに構わず、一歩前に踏み出して彼女の顔を両手で包み込むようにして掴んだ。
突然の事に彼女は驚き、私の手を振り払おうとするがもう遅い。
「何!? この馬鹿力!」
「酷い言い方。 あなた剣道部なんでしょ? 弓道部の私より力がないの? 弱っ」
逃げようと必死でもがいていた彼女の顔が上がり、キッとした鋭い視線を私に向けてきた。
しかし、私の顔を見た彼女の目が次第に大きく見開き、その表情が恐怖の色に染まっていく。
「ひぃ!」
瞳が消え白く濁った私の目を見た彼女は、喉の奥から絞り出すような悲鳴を上げた。
それはまるで、化け物を見るかのような怯えた表情。
でも、この程度で恐怖に染まるのは早すぎだよ。
本当の絶望はこれからなんだから。
「あなたの情報だけもらおうと思ったけど辞めた。 全部を取り込んで私の物にするね。 だから邪魔者は消えろ!! ぐぅえぇェエッ!」
私は口を大きく開くと無数の寄生虫と触手を彼女へと吐き出した。
私の体から放たれたそれらは一気に彼女に絡みつき、一瞬のうちに全身を覆い尽くすと体内へと浸食していく。
「何これ! 嫌! 痛っ! 痛い痛い痛─── ぐぉぼボッ!」
彼女が悲鳴を上げ口を開いた瞬間、夥しい数の触手が口の中へと入り込み一瞬にして動きを的確に殺した。
彼女の目には今まで見たことのないようなおぞましい私の顔が映っているだろう。
鏡など無くても分かる。
今、私は寄生虫まみれの顔で口から触手を吐き出している化け物なのだから。
「体や姿だけじゃなくて記憶や思考も、あなたのぜーんぶを頂戴」
触手が彼女の脳に到達したことを把握すると一斉に脳内へと突き刺した。
私の中に様々な情報が流れ込んでくる。
初めて生身の肉体から吸い上げるおぞましい行為に、全身がゾクゾクと震え快感が走ると秘所を濡らす。
ただ触れただけの吸収とは比較にならないほど情報の繊細度だ。
人の身には備わっていない、私にしか存在しない器官から理性やら道徳やらが簡単に吹き飛ぶほどの強烈で凶暴な快楽が溢れ出てくる。
「あ…… あっ……」
彼女は白目を剥きながら小刻みに体を震わせ、股間からは黄色い液体が流れ出していた。
それを見ても今の私には何の感情も浮かんでこない。
次々と脳内に流れ込んでくる彼女の知識と記憶、そして遺伝子情報を取り込み、私は自らの意思で中村早紀の全てを自分の体と融合させる。
そして、最後に彼女の着ていた下着や道着、防具の構成情報までしっかりと取り込んだ。
数分間に渡る寄生と吸収を終えると、私の目の前には先程までいたはずの中村早紀の姿は跡形もなく消えていた。
私は彼女の抜け殻を遺伝子レベルで分解し、ここの土と同じ構成物へと変換したのだから。
「聡をおかずに朝から自慰するなんて、私ってとんだ変態大和撫子ね。 でも、ごちそうさま」
ペロリと舌なめずりをしながらそう口にしたのは、白い剣道防具に身を包んだ少女。
ポニーテールの長い髪が風になびいて揺れている。
そう、私はこの体に取り込んだ彼女の構成情報を自分の肉体へと展開し中村早紀となっている。
「へぇ~ 防具で隠れていたから分からなかったけど結構胸があるんだ」
彼女から吸い上げた情報を元に構築したこの体は偽りの姿ではない。
今の私は正真正銘の中村早紀。
姿だけでなく、声も性格も記憶も知識も、何もかもが遺伝子レベルで寸分違わぬ中村早紀になっている。
当然、身に纏っている道着も防具も直前まで彼女が着ていた物と全く同じ状態で構成されている。
「うわっ、臭っ……」
思わず鼻を押さえてしまうほどの悪臭。
汗の臭いだけでなく、捕食中に彼女の漏らした尿の臭いが混ざり合い強烈な臭いを放っていた。
「いい歳してお漏らしだなんて、私って何てはしたない女…… あっ」
私は最低な事を考えついた。
取り敢えず尿の刺激臭を排除すると、私はこの体を無理矢理発情させた。
一瞬で口から涎が垂れ顔が紅潮すると、腰がガクガクと動き出す。
秘所から愛液が垂れ始めたのを確認し、ショーツを破り捨て秘所の中に指を突っ込んで引っかき回した。
体内で大量の愛液を作り出し、飛び散る愛液をわざと袴に染み込ませるようにしながら、さらに激しく指を動かし続ける。
袴がたっぷりと淫猥な体液を吸収してしっとりと濡れると、何とも言えない臭いが立ち込めた。
私はこの状態のまま道場の方へと歩き出す。
中村早紀だった土の上に自分の愛液を滴らせ、わざと踏みつけながら……
剣道場へと戻ってきた私は、彼女がいつもこなしている後片付けを部員達と行う。
私と彼女が一緒に歩いていた姿は何人かの生徒に見られている。
このまま中村早紀がいなくなると不審に思われるかもしれない。
最後に早紀が下校する所を目撃させておけば私が… 奈央が疑われる心配はない。
そのためには出来るだけ私がこの時間までここにいたという印象が残るようにしておく必要がある。
そう、強烈な印象を……
部員達は私… 中村早紀から発する淫猥な臭いに気づき軽蔑の視線を向けている。
私は、わざと頬を染め発情した表情を作り、隠れて股間を触る仕草を取る。
その様子を一人の後輩が見たのを察知し、彼女に顔を向けた。
後輩は顔を真っ赤にしながら視線を逸らす。
「お疲れ様。 今日は暑いね」
私は糸を引く液体が付着した手でその後輩に触ると、まるで汚物を見るような目で彼女は睨み返してきた。
彼女に触れた事で私の頭の中にその子の思考が流れ込んでくる。
この後輩は早紀を憧れの存在として見ていたらしい。
だが、彼女の中で早紀は最低の人間になったようだ。
他の女子部員達も、触れて心を読んだ限り早紀の事を嫌悪し侮蔑する存在へと変わっていた。
聡を惑わした罰はこの位で許してあげる。
(はは…… 私、何ておぞましい事をしているんだろう……)
中村早紀の姿で学校を後にした私は、彼女の自宅近くまで歩くと人気の少ない路地裏に入り込んで適当な人間を捕食した。
そして、自分の構成情報を書き換えて存在しない人物の姿になりすまし聡の家へと向かう。
周りに注意を払い、定期的に人目の付かない場所へと入り人間を捕食して姿を変えながら……
この体はもう人じゃない。
そして、私の心も理性が外れ始めている。
聡の家に行くためだけに、私は見ず知らずの人をすでに3人捕食しこの体に取り込んだのだ。
今の私の本性を聡が知ったら絶対に嫌われてしまう。
いや、それどころの話ではない。
でも、それでも……
私は聡の事が好きだ。
聡を愛している気持ちは誰にも負けない自信がある。
このまま聡に嫌われて離れるのは絶対に嫌だ。
嫌だ… 絶対に嫌だ!!
だから、聡にはこの体を好きになってもらえば良い。
聡の望む理想の女性… 理想の性癖にだって私はなれる力を得たんだから。
そう思うと自然と口元が緩み口角が上がる。
聡の家に近づくと、私は周りに誰もいない事を確認し歩きながら肉体を本来の奈央の姿へ変換した。
制服は… 汚れの全くない新品の構成。
下着も、ソックスも、全部新しい物。
聡には少しでも綺麗な私を見てもらいたいから……
[newpage]
◇
いつもと変わらない聡の部屋。
床の上にはマンガ本や段ボールが無造作に置かれている。
年頃の女の子を通す部屋とは思えないが、それが奈央の心を安心させる。
「悪いな。 急に親が実家に戻っちまって」
「親戚の人が病院に担がれたんじゃ仕方ないよ」
どうやら聡の親戚が急に倒れてしまい、見舞いのために両親は母方の実家に戻ったそうだ。
両親がいないという事は、今日はこの家には聡しかいない……
「丁度私も一人だし、今日はここに泊まってくね。 ご飯は任せて」
「わりーな。 助かる」
頭をポリポリと掻きながら苦笑いを浮かべる彼を見ながら、奈央は部屋を出ると1階へと向かった。
キッチンの前に立つ奈央は、放課後に聡に触れて取り込んだ彼の趣味・思考を展開しトレースを始める。
彼の好みの味、好きな料理……
全てを把握した状態で、彼女は冷蔵庫の中にあった食材で手早く夕飯の準備を始めた。
肉じゃがと唐揚げ、海苔の味噌汁、少し硬めのご飯。
彼の好物の食材を冷蔵庫に揃えているおばさんに少しの嫉妬を覚える。
でも、間違いなく私の方が彼を満足させられる。
「だって……」
奈央は出来上がった料理を前にし、一品一品に人差し指を軽く押し当てていく。
指が触れた箇所には数ミリほどの線虫が付着しモゾモゾと蠢いている。
それは、ゆっくりと溶けてアメーバー状になると吸収され消えていった。
その様子を奈央は無表情で眺めている。
「聡は私が作るご飯以外じゃ、もう満足できないんだから……」
テーブルに並べられた食事を前に聡は目を輝かせていた。
そんな彼に笑顔を向けると、奈央は向かい合うように席に座る。
「私の料理人生で最高の出来です。 さあ、召し上がれ」
「すっげー美味そう! いただきます!!」
箸を手に取ると、彼は勢いよく食べ始めた。
何度も美味しいと言ってくれる聡に、奈央は嬉しさを隠しきれず笑みをこぼす。
「残さず食べてね。 栄養満点だから」
「おう、完食余裕。 ってか奈央ってこんな料理上手かったんだな。 こんな幼馴染みを持ったオレは幸せもんだ」
聡の言葉に一瞬ドキッとした表情を見せるが、すぐに奈央はクスッと笑う。
「聡のために頑張って作ったんだから。 美味しいのは当たり前ですっ」
奈央は偉ぶった口調でそう言うと、聡は照れくさそうに微笑んだ。
食事を終え、片付けが終わると二人はリビングのソファーに並んで座りテレビを見ていた。
時折、奈央はわざと肩が自然と触れる仕草をすると、聡は恥ずかしそうに顔を背ける。
だが、その仕草がまた可愛らしく見えて、奈央は思わず抱きしめたい衝動に駆られる。
そして、彼女の頭の中に一つの欲望が浮かぶ。
聡を自分の体で包み込んであげたいという欲求が……
時計を見るとすでに10時を指している。
奈央は聡の肩に手を置くと彼の今の気分を読み込んだ。
…そろそろ頃合いだろう。
そして、耳元に顔を近づけて囁く。
「ねぇ、聡の部屋行こう?」
「え? あっ、ああそうだな」
奈央の甘い吐息混じりの声に、聡は頬を染め鼓動が激しくなるのを感じる。
彼女の言葉に素直に従い立ち上がると、そのまま二人で二階にある聡の部屋へと向かった。
[newpage]
部屋に入ると、彼はベットの上にごろんと横になる。
奈央はその端にちょこんと腰を掛けて聡の方へと視線を向けた。
「ねぇ、聡って好きな子はいる?」
「え?」
突然の質問に、聡は横になっていた体を起こして彼女を見つめ返す。
真剣な眼差しの奈央の顔は赤く染まっていた。
「私はね、好きな男子がいるよ?」
「……ぇ?」
聡は驚きと困惑の表情を浮かべる。
その相手が、まさか自分とは思っていない。
彼は、奈央が男子から人気があり沢山の告白を受けてきた事を知っていた。
だから、自分に好意を持っているなんて微塵も考えていないのだ。
聡にとって奈央は憧れの少女。
自分には手の届かない存在。
彼女が自分に優しくしてくれるのは幼馴染みだから。
奈央は聡の考えが手に取るように分かる。
彼女の頭の中には彼の記憶と思考が全て入っているのだから……
「ねぇ聡、相談に乗ってもらえるかな?」
奈央はゆっくりとベットの上を四つん這いで移動し聡の目の前にやってくる。
そして、彼の顔に自分の顔を近付けた。
至近距離まで迫る奈央の整った綺麗な顔。
聡は緊張した面持ちで唾を飲み込む。
「私、聡が好き。 ずっと前から好きだった……」
奈央は潤んだ瞳で真っ直ぐに聡の目を見て言った。
聡は奈央の告白に目を大きく見開く。
「奈央……」
奈央はゆっくりと目を閉じて顎を少し上げる。
まるでキスを待つかのように……
聡は、奈央の唇に吸い込まれるように自らの口を重ねた。
それは、初めてのキス。
お互いの舌先が軽く触れ合うと、ゆっくりと顔が離れていく。
奈央は名残惜しそうな表情で聡を見つめている。
「俺も、お前の…… 奈央の事がずっと好きだった」
聡は、奈央の目をしっかりと見てそう告げる。
その言葉に奈央の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。
奈央は両手を広げて聡の首に回すとぎゅっと抱きつく。
そんな彼女を、聡は優しく受け止めた。
「嬉しい……」
そう呟くと、奈央は聡へ両胸を押しつけ体を更に密着させる。
柔らかい感触が聡に伝わり、彼の下半身が徐々に硬さを増していくのを奈央は感じた。
それを受け入れるかのように奈央は両足を聡の腰にまわして絡めると、聡の股間へ腰を擦り付ける。
それは、奈央が聡への想いを表す行為。
「して…… 私を聡だけの女にして」
「え!?」
聡は驚いた声を上げた。
それは、奈央の言葉に対する物ではない。
履いていたはずのズボンとパンツがいつの間にか脱がされ… いや消えてなくなっていたからだ。
それは奈央も同じくスカートと下着が消え股間が露わになっている。
「脱ぐの面倒だし、これならすぐに出来るでしょ」
奈央はそう言うと、聡のモノを手で掴み自分の秘部へとあてがう。
状況が把握できず呆然とする聡を尻目に、彼女は自らの秘所に彼のペニスを入れようと腰を動かし始めた。
しかし、なかなか上手く入らない。
「……。 そっか、すぐ発情させるからちょっとだけ待ってて」
直後、奈央の体がビクンッと跳ね上がる。
同時に彼女の口から涎が垂れ、あンっ! と艶かしい喘ぎ声が漏れ出した。
秘所からトロッと愛液が溢れ出し聡の太ももに垂れ落ちる。
「これで入るね……」
そう言うと、奈央は聡の肉棒を掴んで腰を突き出しながらゆっくりと自らの中へ挿入していく。
膣内のヌルッとした温かい感覚が聡の敏感な部分を包み込み、自然と口から快感の声が出てしまう。
聡の目の前に広がる奈央も顔が紅潮し快楽に歪んでいた。
初めて味わったその気持ち良さに、聡は一瞬意識が飛びそうになるが明らかに異常な事態に我に返った。
「奈央… お前一体…… 今ズボンが消えて───」
「そんな事考えなくても良いよ。 考えなくて良い」
奈央は快楽に酔いしれていた表情とは打って変わり、冷たい表情と声でそう言い放つ。
直後、聡は頭の中で弱い電流のような物が走る感覚を覚えた。
「……。 ああ、そうだな…… ごめん、俺の勘違いみたいだ」
「初めてで緊張してるんだね。 私もだから大丈夫だよ」
奈央は、聡を抱きしめながらベットへ押し倒す。
そして彼の口に軽く触れるようなキスをしてから、聡の体の上で腰を上下に動かし始めた。
「はっ、はッ… 聡のおちんぽ気持ちいいよぉ~ 私のオマンコが聡の形になってるぅ~」
奈央は激しく腰を振り続ける。
結合部からじゅぷじゅぷと音を立て、柔らかな乳房がその動きに合せて揺れ動く。
聡の手が奈央の動きに合わせて自然とその膨らんだ部分を揉むと、奈央は気持ち良さげな吐息を漏らした。
「んあっ! もっと激しく揉んで! 私の体をグチャグチャに犯してぇ!」
柔らかく弾力のある奈央の胸に、聡の手指が深く沈んでいく。
奈央は聡の手を掴むと、まだ足りないと言わんばかりに自分の乳首に押し当てるようにしながら激しく動かした。
「ねぇ、見える? 私のオマンコに聡のが入っているところぉ。 おちんぽ吸い付いて離れないのぉ」
奈央はそう言って、繋がっている部分を見せつけるようにしてグリグリと動かす。
聡のペニスを咥え込んだ奈央の腰が浮くと、聡のモノを離すまいと膣が伸び膣圧が強くなり、ぐぽポっ… ぶジュっ と卑猥な音を響かせる。
彼女の卑猥な言葉と、その淫靡な光景を目にし、聡のペニスがさらに膨張して大きくなった。
「ふふっ。 聡は女の子がいやらしい言葉を言いながらエッチするのが好きなんだよね。 ほらぁ、私の淫乱なオマンコをもっと見て?」
奈央はそう言いながら指で秘所を左右に広げるようにして見せつけた。
彼女のそこはヒクつき、トロリとした粘液を引きながら聡の肉棒を飲み込んでいる。
「これって……」
聡は驚きの声を上げる。
この光景に彼は見覚えがあったからだ。
男の上に跨がり、自ら腰を振りながら甘い声でイやしい言葉を叫ぶその姿が、昨日の夜に見たAV動画のワンシーンとよく似ていた。
「ふふっ」
奈央は妖しく微笑むと、聡の頬に手を添え再び唇を重ねた。
今度は口の中に舌を入れ、お互いの唾液を交換し合う激しいディープキス。
奈央は聡の舌を吸ったり、歯茎を舐めたりと積極的に攻めてくる。
まるで、昨日見たAV動画の女優のように……
じゅぽ… ちゅぱ…… 二人の舌が絡み合い、唾液が混じり合う音が室内に響く。
「ぷはぁ…… う~ん、女優さんみたいに上手くいかないね。 聡はこっちの方が興奮するかも」
「え?」
いつの間にか目の前の奈央が弓道着姿になっていた。
道着はすでに汗でしっとりと濡れ、まるで部活後のように上気した顔でこちらを見つめている。
その表情がとても色っぽく、聡は興奮を覚えてしまう。
だが、これは明らかにおかしい。
「お前いつの間にそんな───」
言い終わる前に聡の頭に再びピリッと電気が流れる。
同時に、聡は奈央の格好が変わった事に何の違和感も抱けなくなっていた。
奈央は自由に服装を変える事が出来る。
そんなのは当たり前であり、それは俺と奈央だけの秘密なのだから。
そう、聡の脳には食事の際に体内に入り込んでしまった線虫が寄生している。
それは奈央の体細胞と同じ成分で構成されており、彼女の体の一部と言っても良い存在だ。
当然、異能と化した彼女の意思で自由に操る事が出来、寄生した物体の組成や記憶の改ざんを容易に行う事が可能になっている。
しかし、聡の意思や記憶は出来るだけ残しておきたいため、奈央に対して不都合な事を考えさせないよう、思考を誘導するように命令を脳内へ流し込んでいた。
それにより、聡の認識では奈央は最初からそういう能力を持っていた事に改変されている。
「……。 どうせなら胸当もあると最高だ」
「ふふっ、何それ」
奈央はクスリと笑うと、聡の希望通り胸部に胸当を出現させた。
ついでに、右手には “かけ” を挿し、その姿は完全に弓道部の奈央である。
「やっぱ奈央はその格好が似合うよ」
「私、聡はこういうの好きなんじゃないかな~って思って弓道部に入ったんだよ? だからそう言ってもらえると嬉しい」
奈央は嬉しそうな笑みを浮かべて聡の顔を見る。
その笑顔はとても可愛らしくて、胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。
それと同時に自分のためにそこまでしてくれていた奈央の事が愛おしくて堪らないという感情が湧き上がってくる。
聡は奈央の体に手を回し、ぎゅーと強く抱きしめる。
「好きだ、奈央」
「うん。 私も聡が大好き」
奈央は再び腰を動かし始め、聡のモノを膣内で擦り始める。
ヌルッとした温かい感触に包まれて、聡のペニスは更に硬さを増していく。
彼の腰の上で激しく振り乱れる奈央の姿は、胸当てがズレて大きな乳房が露わになり、それが激しく揺れ動いている。
かけを挿した手を口に入れ、ちゅぱちゅぱと黒ずんだ革をしゃぶっているその姿は、普段の彼女からは想像も出来ない程に淫らな行為だった。
しかし、その光景は聡の性的欲求を刺激し、深層心理で更なる欲望と願望を膨れ上げさせていた。
当然、そんな彼の心の変化を察知した奈央は急に腰の動きを止めると、ニヤッと不敵な笑みを浮かべる。
「へんた~い」
まるで心を見透かされたかのようなタイミングで、そう言われて聡は一瞬ドキリとする。
しかし次の瞬間、それ以上の驚きが聡を襲った。
ずしりとした重い感触が全身を包み込む。
聡にはその重さに覚えがある。
そして、体から漂ってきた臭いにも……
自分の体を見渡すと剣道の防具を身に着けていた。
胴を着け、垂を付け、そして腕には小手まではめている。
道着はまるで猛稽古後のようにぐっしょりと濡れていて、肌に張り付くような感覚が伝わってきた。
「女の子にこんな姿でエッチさせるなんて、今日だけだからね?」
「奈央… お前その格好……」
聡の腰に跨がっている奈央は、白い防具と道着に身を包んでいる。
それは彼の所属する剣道部の女子が着用している物であり、見慣れた姿であった。
「稽古後の物だから凄く匂うね。 想像以上に臭い……」
奈央は自分の体に鼻を近づけると、クンクンと匂いを嗅いで顔をしかめる。
彼女の言う通り、長い時間をかけて染み込んだ汗の臭気が聡の鼻腔を刺激する。
そんな悪臭を放つ防具姿の奈央を見ていた聡は、ふとある事に気が付いた。
彼女の付けている垂れに【中村】という刺繍が入っている。
「それ、早紀の防具か?」
「え?」
奈央は自分の付けている垂れに目を落とすと、少し考えるような仕草をする。
その直後、刺繍の名前が【奈央】に変化した。
聡は、何故自分と奈央が防具を付けているのか、何故垂れの名前が一瞬で変わったのか疑問を持つ事が出来なかった。
それは当たり前であり、二人はそういう関係だからだ。
聡のペニスが興奮を隠せないようにビクンと脈打ち堅さを増した。
それを合図にするかのように、奈央は腰を浮かせて聡の肉棒をギリギリまで引き抜くと、そのまま一気に腰を落とす。
ずんっ! と音を立て大量の汗を染み込ませた防具と道着を身につけ重量が増した奈央の体に、聡の剛直が今まで以上に深く突き刺さった。
膣内を押し広げて侵入したそれは、最奥まで到達し子宮口をこじ開けるようにぐりぐりと押しつけられる。
奈央は声にならない悲鳴を上げながら、背中を大きく仰け反らせた。
「あ~ 凄い…… 聡、今日一番興奮してるね」
「奈央だって、今の突きだけでイッ─── うあっ!」
聡の言葉を遮るように奈央は激しいピストン運動を始める。
パンっ、パンっ、と力強くぶつかり合う音が響き、ミシミシと防具が軋みを上げる。
「ねぇ、私は聡の妄想するこんな性癖も喜んで受け入れる事が出来るの。 聡のためならどんな格好にも、どんな姿にだってなれるんだよ」
「奈央… 奈央ぉっ!!」
聡は奈央の腰を掴み、下から何度も肉棒を突き上げる。
奈央の体は聡に突かれる度に跳ね上がり、その動きに合わせて秘所から愛液を吹き散らかした。
二人の結合部は泡立ち、飛び散った粘液が二人の防具を染めていく。
「ああっ!! イッくぅ!!」
奈央は背中を大きく仰け反らせ絶頂を迎えた。
彼女が付けている胴が小刻みに震え、口から涎を垂らしながら虚ろな目で天井を見つめている。
そして、力尽きたかのように聡の体に覆い被さった。
「はぁ、はぁ…… ごめんねぇ、私だけ先にイッちゃって……」
「おい、そんなにくっ付くと白防具に色が移っちまうぞ」
聡が身につけている防具と道着の藍染めの色が、綺麗な白防具に移りシミのように藍色に染まっていく。
奈央はそんなことお構いなしと言わんばかりに聡の体の上で体を揺すっていた。
[newpage]
「汚して…… 防具だけじゃなく私の体もいっぱい汚して……」
「早紀!?」
奈央の声が… 姿が中村早紀に変わっていた。
顔が、声が、体つきまで間違いなく早紀のものだ。
「私の… 奈央の体はちょっと疲れちゃったから、この子の体を使わせて貰うね? 捕食した罪悪感も少しあるし、この体で聡とセックスさせてあげる」
聡のペニスを包み込んでいる膣がきゅぅと締まった。
「んっ… この子の体、凄く敏感…… 毎日聡の事を考えてオナニーしてたからかな」
早紀は聡の体を起こすと、軽くキスをして今度は自分がベッドに寝転がる。
股を開き、聡に見せつけるように秘所を広げて誘っている。
そこはもう愛液で溢れており、ヒダがひくりと痙攣しているのが見えた。
聡は誘われるがままに腰を突き出し彼女の膣内に挿入する。
「きっつ!」
奈央の膣内とはまた違ったキツさが聡を襲う。
膣壁がペニスを締め上げ、奥へ進ませまいと抵抗してくる。
彼女もそれを感じたのか、聡の両腕と掴んで引き寄せると、両足を腰の後ろに回してガッチリとホールドした。
ミチリと音を上げ聡のペニスが根元近くまで飲み込まれる。
「ンあァァン!」
早紀は甲高い喘ぎ声を上げた。
その表情は苦痛に耐えているようにも見える。
「大丈夫か?」
「うん…… この体すごく感じやすいみたい。すぐに気持ち良くなるから気にしないで」
早紀の顔は笑みを作っているが、その目から涙がぽろぽろと零れ落ちていた。
「痛いのか?」
「違うの。 この子、聡と繋がっているのが嬉いみたい…… だからいっぱい犯してあげて!」
目の前の早紀は、本物の早紀なのか、それとも奈央なのか聡には判断がつかない。
ただ、その言葉に答えるように腰を動かし始めた。
腰を引くたびにカリ首が引っ掛かり、亀頭が抜けそうになる。
それを逃さないとでも言うかのように、早紀の膣が吸い付いてくる。
あまりの刺激に聡の射精が促され、腰の奥から熱いものが込み上げて来た。
「うっ! 出そう。 抜くぞ」
「ダメぇ!!」
急いで抜こうとした時、早紀が絡めいた足が力強く聡の腰を引き寄せそれを阻止した。
そして、体を起こし両腕で聡の頭を抱きしめると耳元に唇を寄せそっと囁く。
「出すなら私の中に…… 聡の精液が欲しい」
それは奈央の声だった。
早紀のポニーテールに結い上げていた髪がふわっと垂れて聡の頬を撫でながら靡くと、セミロングの黒髪が視界に入る。
耳元にあった顔がゆっくりと離れ、聡の瞳に映ったのは奈央の笑顔。
膣内の感触も奈央のものに戻っており、ぎゅぅと強く聡のモノを握りしめてきた。
「[[rb: 射精 > だ]]して! 奈央の子宮の中にぶちまけてぇー!」
聡は堪らず腰を突き出し、奈央の子宮口にペニスの先端を叩き付ける。
びゅーっと勢いよく精液が飛び出し、奈央の子宮内を満たしていく。
「ンあッ!… あぁああアアッ!」
奈央は体をビクビクと震わせ、初めて味わう射精の… 中出しの快感に打ち震える。
それと同時に膣壁を限界まで引き締めて聡の肉棒から大量の精子を搾り取っていった。
「凄いドクドクしてる…… 私の中、聡の子種汁でいっぱい……」
奈央は自分の下腹部に小手をしたままの手を当て、愛おしむようにさすり始めた。
そして、子宮に注がれた聡の精子一つ一つから遺伝子情報を精査し、最も適した一つの精子を選び出す。
奈央は満足そうな笑みを浮かべ、自らの肉体へとその情報を転写していく。
「ごちそうさま」
奈央は腰を浮かせ肉棒を引き抜いた。
栓を失った秘所から愛液と混ざった精液がこぷっと音を上げ、糸を引きながら溢れ落ちてくる。
彼女は自分の膣から溢れる精液を小手先で掬うと、まるで蜜を舐めるように舌でペロリと舐め、口に当ててしゃぶり始める。
その姿はとても淫猥で、聡は顔を真っ赤にして目を逸らしてしまう。
「イヤらしい女の子は嫌い?」
奈央の姿は、まるでレイプをされた後かのように白濁とした精液と愛液に塗れ、防具と道着が着崩れている。
湯気が立ちそうな程に熱を帯びた彼女の顔は、口から聡の精液を垂らして艶めかしさを漂わせていた。
そんな奈央の姿は、聡の最も好む性癖を刺激するもので興奮を覚えないわけがない。
「最高にエロくて興奮する」
奈央は聡の言葉を聞いて、荒い息を吐きながら微笑を浮かべる。
当然だ。
これは聡が心の奥に隠していた願望であり、奈央はそれを引きずり出して彼が最も興奮するシチュエーションを作り上げたのだから。
思い人が、自分が最も好む格好と性癖を満たして乱れ、喘ぎ、果てていく姿を見て喜ばない男などいない。
今の奈央にはそれが出来る。
いつでも、どんな姿でも彼の望むままになれるのだ。
でも、この格好でのセックスはちょっとだけ苦痛かもしれない。
重いし、動きにくいし、それに臭い……
「今日は特別だから。 次は普通の激しいエッチをしようね」
「普通の意味がよく分からないけど…… なら、次は清楚なお嬢様でよろしく」
「変態」
防具と道着の構成情報を解除し、ようやく全裸になった二人は汗だくの体で笑い抱き合うと、どちらともなくキスをした。
奈央は聡の体から伝わる体温を感じ、聡は彼女の柔らかさと匂いに包まれる。
そして、聡の心の中で奈央への支配欲が芽生えていくのを彼女は感じ取ると、それが嬉しくて仕方がなかった。
この時間がずっと続けばいいのに……
[newpage]
それから二人は長い時間ピロートークを楽しんだ。
奈央は、聡の体の上で甘え余韻を味いながら考えていた。
今日一日で自分の体の構造と能力は大体把握出来た。
こんな体に変わってしまった時は取り乱したが、今ではどうしてあんなに絶望していたのか不思議に思えるくらいだ。
私は人や物質の情報を融合し展開できる人外の体を手にした。
中村千紗のように人を別の物質に変換することだって出来る。
人を捕食し、完全な構成情報を取得できれば、姿だけでなく記憶、人格までも完全にコピーして再現が可能だ。
いや、それはコピーではなくオリジナルになると言っても良いだろう。
そして、それを私の意思を持ったままで思うがままに再構築し制御できる。
何て素晴らしい体なのだろう。
しかし、私をこんな化物に変えた寄生体の目的と意図が分からない。
そして、この体にはまだ未知の部分も多い。
この体に拳銃のような武器を取り込んだら?
動物や昆虫のような生物を取り込んだら、この体はどうなってしまうのだろうか……
もっと自分の能力を調べる必要がありそうだ。
「どうした奈央」
「ん? 何でもないよ」
でも、今は聡と一緒にいるだけで良い。
それだけが今の私にとって全てなのだ。
寄生体の影響なのか、私の奥にある本性だったのかは分からないが、私は淫乱で快楽に貪欲である事を知った。
(今度、聡のお気に入りのAV女優を探し出して捕食しようかな……)
こんな事を何の躊躇もなく考えている自分はもう以前の自分ではないのかも知れない。
それでもいい。
お陰で私は聡とこうして愛し合う事ができる関係になれたのだから。
もう戻らない…… 絶対に手放さない。
私は人間を辞めた。
「ねえ聡? ずっと私と一緒にいてくれる?」
「当たり前だろ。 絶対に離すもんか」
聡の答えに私は満面の笑みを浮かべると、彼は優しく体を抱きしめてくれた。
私はそんな聡の頭を抱き寄せると、耳元に唇を近づけて囁いた。
「嬉しい…… 約束を破ったら食べちゃうからね」
「はいはい」
ははは、と笑う聡からは見えないが、奈央の目からは瞳が消え白く濁り、口元が裂ける様にニタリと大きく開いていた。
二人は精液と愛液が飛び散る異様な雰囲気に包まれた部屋で抱き合い、互いの温もりを感じながら眠りについた───
完