「触征」─ 地球外の生命体に寄生され異形へと堕ちていく少女のお話

  第5話「[[rb:触征 > しょくせい]]」

  私は今、とても立派な車の中で寛いでいる。

  見たこともない高そうな車。

  弾丸も跳ね返すだろう分厚い車体は、某国の大統領が乗っている車よりも頑丈そうだ。

  たぶん特注で何億円もするんだろう。

  まあ、内装は無骨で窓一つないけれど……

  オマケに私は遺体袋に入れられ、鉄製の堅いベットの上にロープで固定されているけれど。

  私は路地裏で全身に銃弾を撃ち込まれ、倒れて死んだ… 振りをした。

  あんなへなちょこ玉を浴びせられても、どうにかなる体ではない。

  私を殺る気ならツァーリ・ボンバに括り付けて上空から一緒に落とす位はしてもらわないと。

  それでも死ねないと思うけどね。

  数日前から私が付けられている事には気付いていた。

  わざと裏路地に入ったのも彼らの接触を期待したから。

  毎日毎日バカみたいにあの道を通ったしね。

  でも不意打ちで攻撃とは穏やかじゃない。

  反撃して全員肉片にしても良かったけど、取り敢えず彼らの正体と目的を調べるために私を拘束させてあげた。

  (で、私の演技はどうだった?)

  自分で言うのも何だけど、結構良い演技だったと思う。

  地面に倒れた後の痙攣、最後はガクッと首を垂れて死んだふり。

  我ながら完璧だった。

  『良かったんじゃないか? さすが沢山の人間を手にかけ死に際を見てきただけのことはある』

  ノクターが褒めてくれるなんて珍しい。

  それだけ私の演技は完璧だったのだろう。

  ……いや、褒められたのかな?

  『それより、こいつらは何者だ?』

  (う~ん、自衛隊っぽい服着てたよね。 この車も迷彩柄だったし)

  『私達の入った路地を封鎖するようにしていた車両は警察のものだったな』

  ということは……

  ついに私も国家から一目置かれる存在になったか。

  悪を成敗し、この国を守る正義の少女。

  バレてしまったからには仕方がない。

  しかし、地位や名誉には興味がないし、勲章の類いも遠慮させていただこう。

  『そんな待遇を受けるヤツが装甲車でロープに縛られ護送されるとは思えんのだが?』

  (まぁね)

  [newpage]

  長時間のドライブを堪能し、私はとある施設に運び込まれた。

  私が死んでいると思っているのか、簡易なストレッチャーに揺られて建物の中へとドナドナされていく。

  館内に入るとエタノールの臭いが臭覚を刺激した。

  病院… いや、物騒な武器を持っている人達もいるし特殊な研究施設の類いだろう。

  長い廊下やエレベータを乗り継ぎ、ようやく目的の部屋に着いたようだ。

  多分ここは手術… いや解剖を行う部屋。

  私を囲むように数人の人間が現れた。

  男3人、女2人、合計5人か。

  皆さん血圧が高いですよ?

  心臓バクバク、そんな状態で私を切り刻むおつもりですか?

  勘弁して欲しいなぁ……

  (ねぇ、ノクター。 この袋が開いたらどう挨拶しようか?)

  私は彼らへの挨拶をどうするかノクターの意見を聞くことにした。

  『大人しく切り刻まれるのは癪だな』

  (ですよね~ だったら……)

  ジィー

  遺体袋のチャックが開き、私の顔が露わになる。

  「ども、こんちは。 あはっ♪」

  私は笑顔で彼らに挨拶した。

  「え? あ、あ……」

  「うわー! こいつ生きてるぞ!!」

  「きゃー!!」

  期待通りの阿鼻叫喚。

  私は指先から触手を伸ばして、彼らの腹部を突き刺した。

  大丈夫、致命傷だけど5分は死なないから。

  それより、その格好は何?

  宇宙にでも行くおつもりですか?

  たぶん彼らは医者や学者の類いだろう。

  彼らの素性を確かめた所で有益な情報は得られない。

  だから、私は部屋に設置されたカメラに向かって話しかけることにした。

  「初めまして、佐々木美保と申します。 この度は中々の歓迎ありがとうございます。 詳しいお話が出来る人はいますか?」

  【……】

  無言。

  「10秒以内に反応がなければこの5人を殺します。 見たこともないような惨たらしい殺し方で」

  【まて、いや待って欲しい。 私は責任者の田辺、国家安全保障局の者だ】

  部屋の中に設置されたスピーカーから男性の声が聞こえた。

  やはり政府機関の方でしたか。

  困ったなぁ……

  「あの、私は地位や名誉に興味がないので、勲章とかそう言う類いの物は辞退します」

  【…え、あ…… いや、そう言う訳でここに来たもらったわけではなく……】

  やっぱ違うんだ。 残念。

  「じゃあ、どういう理由で私をここに連れてきたんですか? 結構荒々しかった気がしますけど」

  【その前に彼らを解放して───】

  「田辺さん、でしたっけ? 私が質問したんですから先に答えて下さい」

  私は、少しイラッとした声で田辺と名乗る男の会話を遮り回答を促す。

  【……】

  仕方ないなぁ。

  「私、人間を殺すことを何とも思ってないので本気で殺しますよ?」

  【悪いがそのような一方的な要求は政府として───】

  「ぎゃー!!」

  私の近くにいた女性が中々の悲鳴で叫び声を上げた。

  直後、ボンッ! と音を上げ女性の着ていた宇宙服のような防護着が破裂する。

  部屋中にその破片と一緒に肉片が飛び散り、血の臭いが立ち込める。

  腰から下だけとなった彼女の断面からは触手がウネウネと突き出ている。

  「可哀相に彼女は体の内側から触手さん達によって破裂して吹き飛びました。 あなたのせいですよ?」

  くっ、という男の声に交じって複数の人物の声がスピーカから微かに聞こえた。

  結構な人間がいそうだ。

  『少しやり過ぎではないか? いきなり飛ばしすぎだろう』

  ノクターさん、飛ばすというのは肉片のことでしょうか?

  第一印象でこいつには敵わないって事を見せるのは大事だよ。

  人間なんて、これで絶対折れるから。

  【…分かった、正直に話そう】

  (ほらね)

  【私達、いや政府は、君の素性と力、そして行動に懸念を抱いている】

  「懸念とは?」

  【どうして君はあのような姿を持ち、あのような行為を行っているのか、君と交戦したあの男達は一体何者なのか。だ】

  「話しても良いです。 でも、あなたは正直に話すと言いましたよね? 今までの会話の中で嘘はありませんか?」

  取り敢えず、聞いてあげよう。

  【嘘はない】

  ボンッ!

  はい二人目爆散。 いや触散か。

  【ま、まて! 本当に嘘は───】

  「あなたの名前、田辺じゃないですよね? あなたのせいで二人死にました。 まだこの人達を殺すおつもりですか、後藤さん?」

  【……】

  『上手いな美保。 それに、他人の頭の中にある情報を読み取る事まで出来るようになったか』

  (まだ会話している人間だけしか読めないけど凄いでしょ)

  私はノクターの力をかなり使いこなせるようになってきたらしい。

  「後藤さん、あなたでは役不足です。 もう少し上の方か頭の回る人に変わって下さい」

  この男は上級の官僚である事に間違いはない。

  でも、私と話をしたいならもっと上の人に出てきてもらわないと。

  よって、彼にはご退場頂きましょう。

  【そうか。 悪いが切り札はこちらにもあるんだ】

  あ~ やっぱそう来たか。

  部屋の中に置かれたモニターに、一人の女性が意識を失ない椅子に固定されている映像が映る。

  淫女先生だ。

  麻酔だろうか、全身に注射針を打ち込まれて可哀相に。

  【悪いことは言わない。 分かったら無駄な抵抗は止めてもらいたい】

  さて、ここからが腕の見せ所だ。

  人外を相手に調子に乗った罰をたっぷりと味合せてやろう。

  「その人、別に殺して構いませんよ? 私、人間なんていうゴミには興味ないので」

  【こちらを混乱させるつもりか? この女性は君と仲が良いことは調べてある】

  「私は彼女のマンガが好きなだけですから。 なんなら私がこの手で殺しましょうか?」

  面倒だからここら辺で引き下がってくれると有り難いんだけど……

  ウイーン

  私のいる部屋の後方で扉の開く音がした。

  振り返るとモニターに映っていた通りの状態で淫女先生が椅子に固定され意識を失っている。

  【ご覧の通りだ。殺せるならやって構わない。 ただ、もし助けたいのなら私の指示に従ってもらいたい】

  面倒くさいなぁ。

  私はベットから降りて先生の方へ歩を進める。

  そして、先生の頭を両手でガッシリと掴む。

  「だから人間を殺す位なんとも思ってないって言ったでしょ!」

  語尾を強め、私は先生の頭部を一気に引き裂いた。

  頭部が左右に割れ、大量の血と脳みそが床に飛び散る。

  【なっ!?】

  「これでそちらの手は終わりですか? あなた1つ上のフロアーにいますよね。 今から行っても良いですか?」

  私は首をズルズルと伸ばし、天井に付いたカメラの真ん前に顔を近づけるとニヤリと笑みをこぼす。

  「お前を最高に惨たらしいやり方で殺してやるよ。 そこで待ってろ。 あはははは!」

  そして、最後にカメラをぶち壊した。

  「どう? ノクター、今の凄くない?」

  『そのままホラー映画に使えそうだな』

  自分でも惚れ惚れとする演技に大満足。

  「さて、と」

  私は部屋の中を見渡す。

  私を解剖しようとしていた人達は出血多量で死んでしまった。

  後藤がいらん時間をかけるから。

  敵は絶対に取ってあげるからね!

  『お前が刺さなければ死ななかったと思うが』

  「てへ。 それよりノクター、先生の方は?」

  『再構築は可能だが……』

  「だが?」

  『それより、いくら何でも酷すぎないか? ほとんど脳が残っていないぞ』

  確かに先生の頭は凄いことになっている。

  しかし、この位しないとエンタテインメントとして臨場感に欠ける。

  でも…… ちょっと調子に乗りすぎた感はあるね。

  反省。

  こいつらが先生にちょっかいを出すことは当然想定済み。

  先生を事前に人外化させたのも、リアルグロを体験させたのも、もちろん作戦だ。

  さすが私。

  『淫女の体を生体改造した後で思いついただけだろ』

  「でも近いうちに手を打たなきゃって思っていたし、ナイスタイミングだったよ」

  『淫女の脳内に私の回路をそのまま残しておいたのは正解だったな』

  そう。先生を人間に戻す際に、遺伝子構造は人に戻したがノクターの回路はそのまま置いておいた。

  つまり、先生の体の中にはノクターの欠片が残っている。

  もちろん先生が触変した際の遺伝子情報も保存されている。

  「ノクター、一応先生を触変出来る体にしておいて」

  『分かってる。 念のため… そうだな、戦闘形態のパワーアップもしておこう』

  見るも無惨な状態となった先生の頭部から、グチャグチャと音を上げて細胞の再生が始まった。

  先生にこの光景を見せてあげたかった。

  『悪いがそこに転がっている死体を淫女の近くまで運んでくれるか』

  「どうするの?」

  『再生と再改造に使う養分にしたい』

  おっけ~

  私は3人の遺体を先生の前に積み上げる。

  たんとお食べ、先生。

  先生の体から触手が生え、3人の死体に突き刺さる。

  触手が体液を吸い上げながら脈動を始めた。

  先生、これであなたは人間を喰らって自己再生しちゃう完全な化物になりました。

  人間なんてゴミみたいな下等生物から完全なるクリーチャーへと進化してください。

  「先生は人間のようなゴミとは違うんですから」

  『少し時間がかかりそうだ。 先に行こう』

  「あいよ」

  多少の心配はあるけど、先生がここで修復改造している間に上にいるゴミ達と話を付けに行こう。

  あと、後藤を殺さないと。

  「ねぇノクター。 ドアの前に結構な数の人間がいるけど、どうする?」

  『20人か。 上のフロアーに行くまでにもウジャウジャいるな』

  というわけで、まずは天上をぶち抜いてショートカット。

  私は体から触手を突き出し天井をぶち抜くと、一つ上の皆さんがいるフロアーへと移動した。

  [newpage]

  「こ~んに~ちは~」

  7人ほどがいる結構広い部屋。

  その中に…… いた!

  「約束通り後藤を殺しに来ました~」

  私は触手を放ち、後藤の両手両足を拘束して持ち上げる。

  「うわー!!」

  彼は突然の出来事に驚きの声を上げることしか出来ないようだ。

  「念のため聞きますけど、この中で一番偉い人は誰ですか?」

  「わ、私だ」

  後藤さん… あなたこの状況でまだそんな事を言うんですか……

  ゴキッ ボキッ!

  「うがーっ!!」

  私は後藤を拘束している触手に力を入れ彼の両手足の骨を砕いた。

  「ま、待ってくれ! たぶんこの中では私が一番立場が上だと思う」

  そう言って一人の男が手を上げた。

  「どちら様ですか?」

  「内閣官房の橋本と言う。 官邸から指示を受けここに来ている」

  「じゃあ、あなたが私と交渉できる人間ですね。 よろしく」

  「その前に彼を解放して───」

  言葉を遮って私は後藤の首を触手でへし折る。

  ゴキッ!

  最後に分かりやすい音を出してくれてありがとう、後藤さん。

  「調子に乗らないでください。 あなた達から私への指示や意見は受けませんので」

  私はそのまま後藤の首を引き千切って頭部を壁に投げつけた。

  中々丈夫な壁だね。

  頭の方が粉々になった。

  「橋本さん、私から人間のゴミ共に伝えることは2つ。 一つは私と淫女先生、そしてその周囲に今後一切の監視やちょっかいを出さないこと」

  「……持ち帰って検討させて───」

  はい、残念。

  私の触手が橋本さんの隣にいた人の頭部を貫きました。

  可哀相に。

  「“はい” 以外の発言は認めませんよ」

  「わ、分かった。 今後の監視などは一切行わないことを約束する」

  最初からそう言っておけば良いのに。

  私ナメられてるのかな?

  「それと、2つめ。 これからも私達は人間を殺します。 私達が関与していると思われる事案に関しては政府が責任を持って隠蔽してください」

  「……」

  「それは、法治国家として───」

  誰だか分からないヤツが口出ししてきたから取り敢えず首を跳ねる。

  これで三人目。

  言うこと聞かないと交渉が終わる前にみんな死んじゃうよぉ~

  「良いですね、橋本さん」

  「わ、分かった。 各機関にはそう指示を出す。 ただ少し時間を欲しい」

  はい四人目~

  「待ってくれ! 分かった! すぐに手配する」

  だから最初からそう言えって。

  「では交渉はこれで終わりです。 橋本さんは隅にあるロッカーの中に入って下さい」

  「…どうする気だ」

  はい五人目~

  沢山の触手が突き刺さった男が悲鳴を出す間もなく血を噴き出しながら倒れた。

  「わ、分かった! 入る! すぐに入るから」

  橋本っちは急いでロッカーへと駆け込んだ。

  「助けが来るまでそこにいてくださいね。 あなたに死なれると交渉がパーになっちゃうんで」

  さてと、残りは一人。

  「あなた、白衣を着ているって事は医者か何かですか?」

  「そ、そうだ。 君と交戦していた男達の残した遺伝子を調べている」

  確かに捕食前の交戦で血とか精液は飛び散ってたしね。

  ちょっと厄介だな。

  『なぁ、美保。 ちょっと良いか?』

  (どうしたのノクター?)

  『いや、その…… 淫女なんだが』

  (そういえば、先生の再構成は終わった?)

  『……終わってはいる』

  何その表現。

  グチュ… グチョ…

  下のフロアーから触手の這う音がする。

  先生の目が覚めたのだろうか。

  私は先程突き破って出てきた穴から下を覗き込む。

  「……」

  あれ? 確か下のフロアーの床ってコンクリだったよね?

  触手で埋め尽くされてるんだけど……

  「うわー! 助けてくれー!!」

  「きゃー! 痛い! 痛いー!!」

  下から人間の悲鳴が聞こえますけど、先生は一体何をしてるの?

  『無差別に人間を襲って捕食してるな』

  (どういう事?)

  『淫女の遺伝子に何か混じっているのが原因だろう』

  先生の体に別の遺伝子が!?

  私は再び白衣の男性に目を向け脳内をスキャンする。

  「はぁ~…… 先生の体に寄生体の男から抽出した遺伝子を入れたのか……」

  こりゃ一本取られたねぇ~

  こんな切り札を隠し持っていたとは。

  私は触手を放ち、白衣の男の体を拘束して壁へ磔にする。

  恐怖と絶望に染まったその表情は合格。

  でもさぁ。

  「人間の分際で淫女先生に変なことしてんじゃねーよ!!」

  私は男の顔面の一部を抉り骨という骨を砕いた。

  「ぎゃーっ!! あぁーっ!!」

  男はこの世の物とは思えないような悲鳴を上げ叫び出す。

  「3時間は死なないから、罰としてたっぷりと激痛を味わってから死ね!」

  悲鳴を上げ続ける声が不快なので、最後に声帯を壊しておいた。

  『下のフロアーに戻ろう』

  「そだね」

  [newpage]

  先生のいるフロアーは触手が床をビッシリと覆い尽くし、部屋の中がベトベトのドロドロになっていた。

  大量の触手に覆われた室内。

  その部屋の角に先生…… いや、それはあった。

  「え~っと、あれは何でしょうか?」

  巨大な卵のような繭のような形状をした物体。

  表面は紫がかった半透明で、ぶよぶよとした質感をもち、触手が血管のように走り脈動している。

  内部は白濁とした液体で満たされているが、何か入っているような影が浮かぶ。

  間違いなく先生だろう。

  部屋を覆い尽くしている無数の触手は、その物体の下部から生えている。

  触手があちこちに転がった人間に突き刺さり、何かを吸い上げているようだ。

  餌食となっているのはドアの前にいた人間達だろう。

  女の膣内には太い触手が股を引き裂いて突き刺さり、男のペニスは触手に巻き付かれながら激しく脈動し射精している。

  これは凄い、この触手両刀か!

  「ねぇノクター、これはどういう状況?」

  『暴走、いや進化の暴走と言ったところか』

  おっと先生、暴走までするとは羨ましい。

  しかも “進化の暴走” とか格好良すぎるんですけど。

  完全に私を超えちゃいましたね。

  「取り敢えず暴走は止められるの?」

  『いや、暴走事態は終わっているようだが淫女の意識が……』

  「なるほど。 先生の意識が戻っていないから止められないと」

  『いや、もう戻っている』

  ちょっと待ってくださいノクターさん。

  それは、先生が自らの意思でこの惨状を引き起こしているとでしょうか?

  『そういう事だ。 しかも楽しみながら進化を加速させている』

  わ~お。 さすが先生。

  強制的に打ち込まれた遺伝子すら取り込んで進化するとは、私には真似できない芸当です……

  『それより淫女の状況を確かめよう』

  「あいよ」

  先生の状況を確認するため近づこうと足を踏み出した瞬間、触手の動きがピタリと止まった。

  そして、先生を包んでいた繭にひびが入り始める。

  ドクンッ… ドクンッ… グチョ

  脈動と共に繭の裂けた隙間からドプッ… と強烈な淫臭を放つ液体が垂れ流れ出し、先生の体がゆっくりと露になる。

  「先… 生……?」

  私は先生の姿を見て思わず息を呑む。

  暴走と聞いていたからどんなクリーチャーになって出てくるのかと期待していたけど人間の姿だ。

  しかも全裸。

  「あ゛~ ふふっ」

  先生は、まるで “ヴィーナスの誕生” のようなポーズで、指に付着した粘液を舐めながら秘所を弄り、妖しい笑みを浮かべてこちらを見ている。

  人間の姿なのにすごく綺麗。

  その姿は妖艶であり、同時に凄く卑猥だ。

  一言で言うなら……

  「エッロ!」

  ほどよいサイズの胸。

  主張しすぎず、小さすぎず、張りのある最高の膨らみ。

  腰はキュッとくびれ、ヒップはボーンと身体が肉感的な曲線を描いている。

  実にけしからん体型だ。

  指先で秘所を弄り、凄い粘度を持った愛液がトロ~っと床に着きそうな程に糸を引き垂れ落ちる。

  そして、秘所の上からは一本の剛直がいきり立っている。

  私の大好きなペニス。

  大きい。 形も凶暴。

  今までの寄生体の男とは比べものにならないほどの……

  ん?

  先生はいつから両性具有に?

  いや、ここはその筋の者として[[rb:二形 > ふたなり]]と呼ばせて頂こう。

  というか、その肉棒エグすぎるんですけど。

  先生が舌舐めずりをしながら私の方へと近づいてくる。

  触手の群れが先生を取り囲むかのように一緒に移動してくるその姿は、まるで触手を従える女王様のようだ。

  格好いい……

  先生の手が鎌首をもたげる触手を優しく撫でる。

  グチョ… ピチャ

  まるで自分の子供の頭を撫でる母親のように。

  そして、糸を引く粘液が付いた手を口元へ運び、指先を舌で絡め取るようにしながらしゃぶり始めた。

  ジュル…… チュパ……

  これはヤバい。

  ヤバいくらいエロい!

  先生は指を口内で転がすようにして丹念に舐めながら私に妖しい笑顔と目線を送ってくる。

  格好良すぎ!

  私もアレやりたい!!

  そんな魅惑的な光景と、全身を包み込む白濁の粘液から放たれる強烈な淫臭で私の本能が発情する。

  先生が近づいてくる度に濃くなる臭いに耐えきれず、私の体が勝手に触変を始めた。

  変身した私の触手から愛液の噴射が止まらない。

  臭いだけでこんなに凄いなんて……

  先生のエロス全開の体から視線を外せず、動くことすら出来ない。

  私の目の前まで来た先生は、股間からそびえ立つ巨大な肉棒を私の体に擦り付ける。

  「どう美保ちゃん? これはあなたのためだけに作った特製の生殖器なの」

  白濁のドロッとした粘液が私の体に触れただけで、気が狂いそうな程の絶頂が体を駆け抜ける。

  私は無意識に首をもたげ膣口を広げペニスの先を咥え込んだ。

  クチャッ

  ブボッ! 先生のペニスが私の膣口に触れただけで盛大に愛液が噴き出してしまう。

  こんなものが中に入ってきたら私、どうなっちゃうんだろう……

  自分を保てる自信がない。

  「私の体で、美保ちゃんに今まで感じたことがない絶頂をあげる。 受け取って」

  膣口に入れた状態で固まっている私に、先生がニヤッと笑顔を向けた次の瞬間。

  ズボッ! ミチミチ!

  先生のペニスが一気に伸び、私の首の中へと突き刺さった。

  「あ… ああっ… あっ……」

  何これ……

  先生のペニスが私の首を限界まで押し広げ、擦り上げながら体の奥深くまで突き刺さってくる。

  首を動かさなくても、首を締め上げなくても、先生のペニスが私の首の中で勝手に膨らみ伸び縮みを繰り返してくる。

  覚醒した寄生体のペニスなんか比較にもならない次元の違う快感が私の全身を襲う。

  これはただのペニスじゃない。

  触手の遺伝子を組み込んだ触手ペニス。

  私は身動きが取れなくなる程の絶頂を感じながら、先生の触手ペニスの送出を受け続ける。

  今の私は絶頂を感じ愛液を吹き散らすだけの肉塊に成り下がっている。

  「ねぇ美保ちゃん、わたし進化して分かったの。 この世は快楽だけあれば良いって」

  先生の触手ペニスがさらに大きく膨れ暴れ回る。

  ジュブッ! グチュ! グチュ! グチュ!!!

  「私ね、美保ちゃんにいつでもどこでも快楽を貪れる体になって欲しい。 でも今の美保ちゃんの体じゃ超えられない」

  先生の触手ペニスの動きが速くなる。

  「んあぁ!!」

  ブシャー! ビシャー!

  私の体のあらゆる所から愛液が噴き出す。

  「こんな比じゃない絶頂が欲しくない?」

  「ほ、欲ひいれす……」

  先生の言いたい事が分かった。

  私にもっと進化しろと言っている。

  「じゃあ私の遺伝子をあげる。 進化した最強の化物の遺伝子よ、受け取って!」

  大量の精液がぶちまけられた。

  「ぶぼっ!」

  あり得ない量の焼けるように熱く、濃厚な精子が私の体の中を満たしていく。

  ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!

  触手ペニスの鼓動に合わせて先生の遺伝子をたっぷりと含んだ精液が注ぎ込まれ、私の体を冒していく。

  「あっ… あっ……」

  言葉が出ない。

  凄い。

  凄い、凄いっ、凄いーっ!!

  私の細胞が、遺伝子が、先生の精液を我先にと取り込んでいく。

  吸収の速度が尋常ではない。

  絶頂、いやそんな生ぬるいものではない、今まで感じた事が無い超絶的な感覚が全身を襲う。

  何かのスイッチが入ったような、抑えきれない高揚感が全身を包み込んだ直後、私は意識を失った……

  [newpage]

  どのくらいの時間が経ったのだろうか。

  気がつくと私は白濁とした液体の中にいた。

  この臭いは私の愛液……

  違う、先生の精液の臭いも感じる。

  今までとは比較にならない濃い臭い。

  私を包み込む液体の臭いだけで体が発情してしまう。

  もっと欲しい。

  ドプッ……

  私の中に強烈な快感が流れ込んできた。

  もっと、もっと頂戴。

  トプッ… ドボッ

  私の願いに答えるかのように、外から快感が運び込まれてくる。

  「……」

  状況が把握できてきた。

  私は今、培養繭の中で全てを溶かされ再構築されている。

  先生の精液に含まれた遺伝子情報が私の遺伝子と混ざり合って、新たな生命体へと進化していく。

  進化を促すためには沢山の栄養と快感が必要だ。

  培養繭の外で、私は夥しい数の触手を生やし人間を絡め取って蹂躙している。

  さっきの先生のように。

  多くの人間の男根を触手で包み込み、ペニスを強制的に擦り上げ精液を貪ぼっている。

  女の秘所には触手を突き刺して、絶頂による快楽物質を吸い上げる。

  果てそうになる人間達に私の愛液を流し込み、無理やり発情を促し、用の無くなった人間は養分として捕食する。

  私は触手で人間達を犯し続け快楽と養分を自分の体へと送っているのだ。

  私は進化した。

  寄生体からだけでなく人間からも快感を得る身体を。

  そして、人間を餌として喰らう事の出来る能力を手に入れた。

  寄生体だけでなく人間も餌にする化物に。

  ピシッ!

  進化した新しい私が誕生する。

  私を包んでいた繭が割れ、大量の愛液が床に流れ出る。

  繭から出て最初に目に映ったのは、無数の触手に覆われた部屋と、食い散らかされた人間の残骸が転がった地獄。

  私はその光景を見つめ、秘所から滴り落ちる愛液を指に取りペロリと舐め上げた。

  「み、美保ちゃん? 気分はどうかしら?」

  後ろから声が聞こえた。

  私は声の主へ首を180度回転させ顔を向ける。

  「ええ、とても良い気分ですよ。 クイーン」

  『クイーン!?』 「クイーン!?」

  「私をここまで進化させたあなたは、名実ともにクイーンです」

  私は彼女の遺伝子を元に再構築された生命体だ。

  彼女がいなければ今の私は存在していない。

  ノクターに寄生され触手クリーチャーとして覚醒したのは彼女のお陰。

  快楽を貪り人間を捕食する行為に、精神が順応出来たのも彼女のお陰。

  彼女のマンガの世界ではそれが当たり前だったから。

  そして、そんな化物になった私を受け入れ、更に進化させてくれたのも彼女。

  私は彼女に憧れ、尊敬を抱いている。

  生まれ変わった私にはそれが今でも刻み込まれている。

  彼女は私を作り出した存在、クイーンであると。

  「クイーン… いえ、ノクターに聞きましょう」

  『何だ?』

  私の進化はノクターとクイーンによる計画的な暴走だ。

  おそらく、クイーンに寄生体の遺伝子が打ち込まれ、私が頭部を粉砕した際に立案されたと思われる。

  「違いますか? ノクター」

  『その通りだ』

  私に計画を隠していた事は許し難いが、意識的な進化より無意識下での進化の方がリミッターが外れる事を考慮したのだろう。

  お陰で私の方がクイーンよりも進化が上回っているのはそのためだ。

  結果的に私は生物とは呼べない未知なる生命体へと進化できた。

  「な、何か美保ちゃんの雰囲気がいつもと違う気がするけど……」

  「そうですね。 成長… とでも言うのでしょうか。 今までの私は、まだ人としての理性がありました。 しかし今はもうありません。 あるのは、食欲、性欲、そして快楽を求める本能と最低限の記憶と感情のみ。 それ以外は不要ですから消去しました」

  私の言葉にクイーンはゾッとした表情を見せる。

  しかし、その表情は恐怖や畏怖というものではない。

  期待と興奮に満ちたものだ。

  「性格も変わったのね。 でもそんな美保ちゃんも素敵」

  彼女は本当に素晴らしい化物だと思う。

  ただ快楽を求め続けるのではなく、それを糧に人類を破滅へと導く存在に昇華しようとしているのだから。

  私がクイーンの立場ならこんな考えには至らなかっただろう。

  彼女に出会えて良かった。

  「多少… いえ、自分で言うのも何ですが、かなり冷酷な性格になったと思います」

  クイーンは私の言葉に、これから何が行われるのかを察したようだ。

  「追加の派兵がこちらへ向かってきているようですね」

  『ああ。 150人の戦闘兵器満載の部隊が接近中だな』

  橋本との約束は守られなかったようだ。

  なら仕方が無い。

  私は体中から無数の触手を突き出して言った。

  「下等生物共に自分達の置かれた立場を叩き込んでやりましょう」

  [newpage]

  30分後。

  膨大な数の人間が触手の海で溺れている。

  グチャッ! ブチッ! ボキィ! ジュルルルッ

  夥しい数の触手が人間の体に突き刺さり、体液を吸われながら生殖器を蹂躙されている。

  「あなた達のような下等生物は、どう足掻いても上位生命体には敵いません。 身をもって私達の餌となりなさい」

  ボキボキッ! グチョッ!

  触手が動くたびに肉片が飛び散り血飛沫が舞う。

  そんな光景を見ながら私は無表情で絶頂を味わい、人間達を次々と捕食していく。

  「ちゃんと見ているのですか?」

  私の横には至る所から血を流し触手で拘束された橋本がいる。

  彼にはこの光景をたっぷりと脳に焼き付けおいてもらう必要がある。

  上位生命体である私の信用を裏切った彼は簡単には殺さない。

  「目を背けずよく見ておきなさい。 私達に刃向かうとはこういう事なのです。 理解できましたか?」

  私は橋本にそう告げると、意識を失いそうな彼の両手を触手で食いちぎる。

  「ぐぅああー!!」

  人間の悲鳴は心地が良い。

  もっと聞いてやろう。

  私は生き残っている人間の身体に触手を突き刺した。

  「ぐわー!!」

  「ぎゃー!!」

  至る所で悲鳴が上がる。

  お前達は私にほんの一瞬でも快感を与える事が出来ました。

  光栄に思って私の養分となって消えなさい。

  人間だった物は触手に喰われ、ただの液体へと変り私の身体へと流れ込んでいく。

  『お楽しみの所悪いが、少し良いか?』

  もう少し快楽を味わいたいが、ノクターの作業が終わったようだ。

  「終わりましたか、ノクター」

  『ああ。 まだ日本国内だけだが、世界中への電波送信は1分以内には完了する』

  人間共が乗り付けてきた車に衛星通信車があった。

  クイーンの発案で衛星を乗っ取り、ノクターが世界中の電波施設を掌握した。

  この現場の光景は橋本の脳から、衛星を通して人間達の脳へと送られた。

  同時に上位生命体の存在と、その絶対的な力もインプットされたはずだ。

  これで日本は愚か、世界中の人間は私達に快楽を与え養分となる餌だということが脳へと刻まれた。

  そう、人間は上位生命体の餌にすぎない。

  それだけのために存在が許されている。

  私の気分次第で人間は殺され、犯され、食べられる。

  今日からこの星は、快楽と恐怖だけで成り立つ世界へと生まれ変わる。

  私とクイーンがそれを証明しよう。

  「ノクター、少し予定が狂ってしまいましたが構いませんよね」

  『何のことだ?』

  「あなたが完全体になる前に、この星を征服してしまいましたので」

  『そんな事か。 構わないぞ。 何なら私の破片の回収の事すらどうでもいい』

  ふふっ

  彼も私と完全に融合…… いや取り込まれたようだ。

  私の意識化で掌握されている。

  すぐにでもノクターの意思を形成する回路を破壊する事も出来る。

  しかし、彼にはまだ役割がある。

  「安心して下さい。 あなたの欠片は必ず全て回収しますから」

  『そうか。 優先順位は低くても構わないぞ』

  「いいえ、早くノクターを完全体にしないといけませんから。 それが私の優先事項です」

  ノクターが完全体になるという事は、当然私もその影響を受ける。

  今の破片ですらこの能力。

  それが完全体となったら……

  想像する事ができない程の力を私は得る事が出来るだろう。

  彼の意思を消すのはその後だ。

  「ギシャー! グギャーー!!」

  10メートルほど先で、身の毛もよだつ姿のクリーチャーが命を弄んでいる。

  クイーンが発する人外の雄叫び。

  周りに溶解液を撒き散らし、触れる物全てを溶かしている。

  触手の先端は、触手と人間の顔が交じった物へと変化し人間達を貪り蹂躙する。

  捕食した人間達の顔を触手と遺伝子融合して捕食器官と生殖器へと作り替えているようだ。

  人間に恐怖と絶望を与えるためだけに凝縮したその姿は畏怖の象徴。

  クイーンの名に恥じない生命体としての姿。

  そう。

  その姿です。

  あなたは私が認めた最強の生命体。

  自ら人を捨て進化した最悪の化物。

  私を進化へと導き、この先も永遠に私と共にこの世に存在し続ける上位生命体。

  もう人に戻る事は出来ない所まで、私は彼女をこちら側へと引き込んだ。

  彼女を巻き込んだ事に後悔があるとするならば、それは……

  もう淫女先生の描くマンガが読めない事。

  こればかりは仕方が無い。

  (大丈夫よ美保ちゃん)

  「?」

  クイーンが人間の頭部を秘所に突っ込みながら語りかけてきた。

  (私の描くマンガの内容は、私と美保ちゃんがこれから現実に起こしていくんだから。 ね?)

  私は思わずクスリと笑った。

  全く、この人は……。

  「次は確か、人外百合でしたよね。 容赦はしませんので」

  (!?)

  クイーンはビクッと体を震わせた。

  その反応で秘所に突っ込んでいた人間の頭部を膣圧で潰してしまったようだ。

  私は数え切れない量の触手を放ち、生き残っていた人間達の身体に突き刺して捕食する。

  そして、人間達の断末魔をバックに、彼女にだけ聞こえるように呟いた。

  私のクイーン。

  あなたは私の中で永遠の先生です。

  完