江戸の町で働く私。仕事を終え、家路につこうとしたところ先輩に呼び止められた。
「今夜一杯どうだい?」
この先輩、良からぬ噂がある故、出来れば関わりたくはない。
「家で妻が待っておりますので…御免」
立ち去ろうとする私の背に先輩は驚きの言葉を投げかける。
「その愛妻も呼んでいるんだとしたら…」
何だと?それは聞き捨てならぬ。いざとなれば私、この男を切り捨てる覚悟を決めた。
先輩と訪れた場所は遊郭だった。さて、この男をいつ切ってやろう?
妻と合流し、3人で店に入る。通された部屋には3人分の食事。それと御簾の奥に人影…誰だ?
「それでは始めてくれ」
先輩が言うと人影が頭を垂れ、ゆっくりと口を開く。これは…江戸で今流行りの小説だ…
「君らが読みたかった話だろう?」
私に耳打ちする先輩。
「素晴らしき10月。秋の夜長の朗読。女遊ばかりが遊郭じゃない」
先輩の真意に頭が下がる。
「ちなみに簾の奥の女は俺の妻だ」