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今日も良い朝だ…オムツが濡れてない、それだけで快適な
朝だと言える。通常の日常が戻ってきた気がする…。
いつものように(少し寂しそうな様子の)ディアスさんが
用意してくれた朝食をダイニングで一緒に食べていると。
「そうだ。アクセル君、今日は出版社の方々との集まりが
あって家を留守にするんです。留守番を頼めますか?」
ディアスさんから珍しく頼みごとをされた。
「は、はい。っていうかオレでいいんですか?」
「アクセル君だからお願い出来るんですよ。申し訳ないの
ですがペット達のお世話をしてあげてくれませんか?」
「ペット…!そ、そうですね。楽しみだな…。」
今までは体調不良で会いに行けなかったけど今なら…。
「ふふ…。アクセル君、好きだって言ってましたもんね。
気分転換も兼ねて是非お願いしたいのですが…。」
「喜んで!何をあげていいとか聞かせてもらえれば…。」
その後、ディアスさんからペットの食事の注意点を聞いて
出掛けて行くディアスさんを見送った。さて、ペット達と
いっぱい遊ぶぞ~。体調が戻ったので、明後日には本部に
出向き一旦直接報告をする予定にしている。そうなれば
しばらくここには来れない、その前に会っておかねば…!
[newpage]
そう思っていたのだが、ペットの部屋の扉の前に立つと…
何故かここに入ってはいけないような気分がしてしまう。
「なん…だ…?…っ!?…いやいや…ディアスさんに…
頼まれてるん…だからっ…は、入る…ぞ…っ…!」
オレを襲った謎のプレッシャーを押しのけて部屋の中に
入った。部屋に入ると先程まで感じていた重圧が消える。
「…なんだったんだ?…そういえば…初めて入るな…。」
そこでオレは気付いてしまう。調査対象者の自宅捜査で
3週間滞在して調べていない部屋があったことに対する
違和感を…。何も調べていない…?…ありえないだろ?
突如、身の危険を感じて装着していたヒーローベルトの
救難信号スイッチを入れた。…が、次の瞬間…っ!!
「…っ!?…そ、そんな…っ!?…師匠…っ!?」
見間違える筈がない…風の刃…師匠の能力…。それが…
オレに飛んできてヒーローベルトを切り離し…。
「へぇ~。流石だねっ?能力を見ただけでわかるんだ?」
次は声の方向から切り離されたヒーローベルトに向けて
弾丸のような衝撃波が放たれ…オレのベルトを破壊した。
「じゃあさ…柴犬は今のもわかるかな?」
挑戦的なその声は…オレに見せつけているようだった。
…悔しいが…今のはハピネス先輩の能力…こいつは…?
「まったく…ディアスの能力で堕ちないどころか認識阻害
まで見破るなんて、しぶといなぁ。目障りだなぁ。」
やはり…っ!この部屋に入らないように印象を操作されて
いたんだ…でなければこのような事態説明が付かないっ!
「お前は誰だ!?なぜ師匠達の能力を使える!?」
「まったく、犬はうるさいから嫌いだよ。だまれっ!」
声の方向からまたも風の刃が飛んでくる。オレは能力を
使って身体能力を上げてそれを回避した。
「いいのかなぁ?能力使うとオムツ濡らしちゃうぞ~。」
…~!?こ、こいつ…そんなことまで知ってるのか!?
「そんな身体でいつまで戦えるかなぁ?」
やっと姿を現したそいつは小柄な猫獣人の姿をしていた。
「いきなり通報をしてくるあたり勘も鋭い…悪いけど
ボクの計画には、すっごく邪魔だから消えてねっ?」
そう言うとそいつは室内でもお構いなしに能力を乱発し
攻撃を繰り返してくる。ま、まずい!ペット達が…っ!
「やめろっ!ペット達まで巻き込むなっ!」
「いいんだよ。そいつらは…もう用済みだし。
…それにもう元に戻れやしないんだからね。」
…何を言って…?オレはペット達を見つけて保護し…?
「…?…っ!?…なっ…?!…し、師匠…っ…!?」
弱々しい子犬の姿だが…間違いない…もう一匹のウサギは
…ハピネス先輩…!?…なんで…こんな…!?
「もう犬っころ達には、柴犬が誰かもわからないよ。」
「そんな訳がっ…ある筈ないだろっ!?嘘を言うなっ!」
「虚弱獣化してる期間が長すぎたね。もう獣人化
どころか…能力も記憶も残っちゃいないって。」
「そ、そんなバカみたいなことを…信じる…わけ…。」
猫獣人の意見など一蹴してやりたかったが言葉が出ない。
「何を信じるかは君次第だよ柴犬。まあ、関係ないか。」
猫獣人はオレ達に向かって風の刃を放つ…避けられない!
そんなことをすれば師匠達に当たって…っ!?
その時だった、オレの傍を駆け抜けて…子犬が風の刃に
立ちはだかる。子犬は風の盾を作り出したがそれもろとも
壁まで吹き飛ばされた。
「し、師匠っ!?…そんな…っ!?なんで…っ…?」
「驚いたなぁ。虚弱獣化の状態で能力を使うなんてね。
師弟の愛は素晴らしいねぇ。でも、無理しすぎだよ。
そんなことしたら存在が消えちゃうよ?」
師匠に駆け寄るも…浅い呼吸をするだけで反応が無い。
「いいものも見れたし。そろそろいいかな?君の能力も
貰ってあげるからさ~。ボクも忙しいんだよね?」
猫獣人は師匠とハピネス先輩の能力を使いオレに攻撃を
加える。身体強化の能力を使って回避するも絶え間ない
攻撃に距離を詰めることが出来ない…。
「ようやくオムツが取れそうだったのにそんなに
無茶しちゃったら…漏らしちゃうぞ~?」
「お、お前だけはっ!?許さない!師匠を…こんなっ!」
能力を使うほど下腹部が重くなって…次第に強い尿意が
オレを襲いはじめるが…力を使わない訳にはいかない…。
「頑張るねぇ~。どうなっても知らないよ~。」
こいつ…っ…!わかってて…やってんだろっ!?
「ほらっ!そろそろ限界だよねっ?…漏らしちゃえ。」
「…~っ!?…ぐっ…ぁ…!?…~~~っ!?」
堪らず能力を解除して…その場で立ち止まってしまう…。
「いつ見てもいいなぁ…とっても強いヒーローがさ
おしっこ我慢できなくて、お漏らししちゃうところ
情けなくて、惨めで、ねえ、すごく恥ずかしいよね?」
こんな…やつの…前で…い、嫌な…のに…も、もう…っ!?
オレは両手で股間を押え…ひたすら耐えるしかなかった…。
「まるで、おしっこ我慢できない子供みたいじゃんか。
おちんちんから…いっぱい出しちゃえ。おしっこと
一緒に、ヒーローの力…お漏らししちゃえ~。」
「なん…だってっ…!?…ま、まさか…っ!?」
おしっこを漏らした時の倦怠感…身体を動かもせずに…
意識を手放してしまうこともヒーローの力を失ってっ!?
「その顔、いいね。身に覚えがあるでしょ?遠慮せず
…全部出しちゃおう。我慢しなくていいからさ~。」
冗談じゃないっ!?そんなことしたら…オレはっ!?
「あ…ぐっ!?だ、ダメ…っ!だっ!?も、漏れっ!?」
だが、もう限界だった…オレは我慢することが出来ず
少しずつ…徐々に…だんだんと生温かい感触が拡がる…。
「いやっ…だっ!?こ、こん…なっ!?…~~~っ!?」
オレは穿いていたオムツの中に…漏らしてしまう。今なら
わかる…おしっこだけじゃない…ヒーローとして在る為の
エネルギーが…一緒に漏れ出ている…力が…入らない…。
「そのまま出し続ければ犬っころとお揃いになれるよ。」
「こんな…こと…しやがって…っ…何が…目的だ…。」
「ボクじゃないって~。これはディアスの力だよ~。」
「…な、何を…言ってるんだ…そんな…はずは…。」
「ディアスの良いニオイ嗅いでたら気持ち良くなって
お漏らししちゃってたの忘れちゃったのかなぁ?」
「なっ…そんな…こと…ある訳…。」
「言い淀んでる時点で自覚があるじゃん。信じたくない
よねぇ?大好きなディアスのせいでこんなになって。」
そんな…ディアスさんが?…オレ達を…こんな目に…?
いや…違うっ!そんなことが…ある筈がないっ!
「…ディアスさんの能力だとしても…っ!…違う…っ!
こんなこと…ディアスさんが望んでする筈がないっ!」
「…本当に目障りだな。早くケモノに堕ちろよ…。」
漏らすことで発生する脱力感で動けないオレに向かって
猫獣人が手を掲げて能力を発動しようとする。いよいよ
もって…手詰まりだ…くそっ…こんな…やつに…っ!
「ヴィジル君。流石においたが過ぎますよ。」
ディアスさん…っ!?どうして…ここに…っ…!?
それに…そいつの名前…なんで知って…っ!?
「ディアスじゃないか。なぜ戻ってきた?」
「嫌な予感がしたので引き返してきたんです。」
「君も勘がいいのか…まったく、ボクの仲間になるって
話も聞いてくれないし、いいかげんにしてほしいな。」
こいつが…ディアスさんに会いに来てたヴィランか…っ!
「ヴィジル君。…君のように自分勝手で他者をどうとも
思わないような奴とは仲良くするつもりはないよ。」
「ふんっ。ディアスの能力でこいつらをこんなにした
くせにそんなことを言う権利があると思ってるのか?」
「…そうだね、鈍感なぼくでも…流石に気付いたよ
でも…アクセル君が信じてくれるから大丈夫だ。」
ディアスさんがオレを見て優しく微笑んで、そう言った。
「アクセル君、ぼくのことを信じてくれてありがとう。」
ディアスさんは猫獣人に向かって手をかざすと桁違いの
出力の風の刃が飛び…それを回避した猫獣人に衝撃波が
何発も襲い掛かる。それは猫獣人に直撃し壁際まで弾き
飛ばし…ディアスさんはオレの身体強化まで取得していた
らしく…一瞬で距離を詰めてそいつを捕まえてしまった。
「ボクをどうにかしたってっ!そいつらはもう元に
戻らないぞっ!ディアスっ!お前がやったんだっ!」
「そうだ、ぼくのせいだ。…でもね?アクセル君が
こういう時どうすればいいか教えてくれたんだよ。」
「もう元通りになんかなりやしない…諦めろっ!」
「…大丈夫だよ。大切なものを間違って奪っても…
ちゃんと返して…ごめんなさいってすればいいんだ。」
「な、何を言って…っ!?やめろっ…!触るなっ!」
「ヴィジル君も一緒に返そう?それで…一緒に謝れば
きっと…みんな許してくれるよ。」
「そ、そんなことすれば…っ!ち、力を失うぞっ!
やめろっ!?…うぁああぁあっ!?…あ…ぁ…。」
猫獣人は断末魔のような声を上げ…その場に倒れた。
するとディアスさんは大きな狼に姿を変えて…。
『こんなになるまで…気付けなくて…ごめんね。全部
…返せるものは…全部…みんなに…返すからね…。』
ディアスさんの目の色のような金色の輝きが部屋を
充たし…その場にいたみんなに降り注いだ…。
…先ほどまで身体を蝕んでいた強力な脱力感が消える。
「…師匠っ!?…ハピネス先輩っ!?」
虚弱獣化し続け…弱り果てていた2人が獣人の姿に戻って
いる。2人とも眠っていたが…呼吸も脈もちゃんとして…
何より力強い生命力を感じることが出来た。
「良かった…ちゃんと…返すことが…出来たね…。」
声のする方向に振り返るとそこには巨大な狼の姿から
獣人に戻ったディアスさんがいたのだが…。
「ディアスさんっ!?大丈夫ですか!?」
「アク…セル…君かい…?みんな…無事…かな?」
元気になったオレ達とは反対に力なく倒れていた…。
「ごめん…ね…迷惑を…かけ…た…。」
「ディアスさんっ!しっかりしてください!」
オレはディアスさんに駆け寄り…手を握る。
「アクセル君…ごめん…ぼく…は…。」
ディアスさんはそこで目を閉じて…しゃべらなくなった。
「なにをお通夜みたいな雰囲気出してるのさ…
寝てるだけだよ。もう…付き合ってらんない…。」
声の方向を見ると猫獣人が悪態を付いて睨んでいる。
「ディアスのせいで全部台無しだ…。まったく。
ボクは失礼させてもらうからねっ!」
「おいっ!待て!」
オレがそう声を掛けるも猫獣人は立ち去ろうと…。
「逃がさないのだ!」
急に現れた黒い影が猫獣人を拘束する。
「コテツ!?来てくれたのか!?」
「一瞬であったが…救難信号の反応があったのでな。」
「おいっ!離せっ…このっ…チビ犬!」
「そ、某はチビではない!大人なのだ!」
猫獣人もコテツの影捕縛の前にお手上げのようだな…。
ひとまず逃げられなくて良かった…。
「アクセル殿!グレイス氏のこともわかったのだ!
詳細を端末に送っておいたから確認を頼むのだ!」
「わ、わかった!コテツ、ありがとう!」
[newpage]
その後、改めて応援を呼び…現場の関係者はすべて本部へ
移動し…オレはすぐに開放されたが、師匠とハピネス先輩
2人はメディカルセンターでしばらく治療を受けることに
なった。猫獣人は独房に監禁されている、聴取には意外と
協力的で…行方不明の一般人についても所在をあっさりと
白状したとのことだ。ディアスさんは…体調が戻った後に
本部で取り調べを受けている。自身の行動を包み隠さずに
話しているらしく…都合の良いことばかり言わないのは
ディアスさんらしいな…。本当に…誠実すぎるんだよ…。
コテツが持ってきてくれた資料と本部の聴取のおかげで
ディアスさんの力も解明されることになった。
ディアスさんは2つの力を持っている。内1つは家系に
伝わる能力「世界に愛されし器」自分の生命力を相手に
分け与えることが出来るらしいとのこと…グレイス家に
生存している血族のうち1人だけが…能力を継承する。
他のご家族が既に亡くなっているので…ディアスさんが
この能力を必然的に受け継ぐ形になっていたようだ。
もう1つは「エクリプス」…これはあの絵本から取った
名前だけど…相手の能力を奪って自分のものにする力…。
ディアスさんの身体から発生するニオイを嗅ぎ続けると
何かしらの形で力が流出してしまい…特定の条件を満たす
ことでディアスさんは流出した能力を習得出来るんだ。
特に後者の能力は強力過ぎて、ディアスさんも自分で制御
出来ていなかった為…本部としても簡単に釈放することが
難しいのだとか…。能力のことがあってもディアスさんが
全部、悪い訳じゃないんだから…早く本部の拘束から解放
してあげたいんだけど…オレだけの力じゃ…。
そんなもどかしい思いを抱えながら1週間ほどが経って
ようやく師匠の治療が終わり、オレ達は久々に自宅へと
帰ってくることが出来た。ハピネス先輩は…命に別状は
ないのだけれど…虚弱獣化している期間が長かった為…
もう少しだけ療養に時間が掛かるようだった。
「アクセル…今回は…すまなかった…。」
「し、師匠っ!?よして下さいよ!オレは何も…。」
「いや…アクセルが来てくれなかったら俺たちは…
獣人にも戻れずにいただろう…本当に助かった。」
でもオレは何も出来ていなかった…今でもそれが悔しい。
「あ、あれはディアスさん自身が解決したんですよ…。」
「そういえばディアスの釈放が決まったとか。」
「…っ!?師匠!本当ですかっ!?」
初耳の情報にオレは前のめりになって師匠に詰め寄る。
「ああ…俺たちに能力を返す際に力を失ったから問題ない
そうだ…だが、相応の監督者が引き取るのが条件だ。」
「相応の…だ、だったら…師匠!お願いします!」
すると師匠はニヤっと笑ってオレの頭を撫でた。
「…何言ってんだ。アクセル、お前しかいないだろ?」
「えっ…?オレが…?でも…。」
「うちの本部でディアスの手綱を握れんのは他でもない
お前だけだ。…俺でもハピネスでも務まらねぇ…。」
なんで…?そんな筈は…オレなんかまだまだ駆け出しで
師匠達の足元にも及ばないのに…。
「まだわかんねぇか?ヒーローとしての力じゃねぇ。
ディアスの心に一番近付けたのはアクセルなんだ。」
「ディアスさんの心に…?」
「俺たちと仲良くなってもどこか一線引いてたディアスが
アクセルにだけは…自分から心を開いていたんだぜ?」
ディアスさんが…オレに心を開いてくれていた…?
「…行ってやれよ。ディアスが今、一番会いたいのは
アクセルだ。自信を持て…ディアスのこと任せたぞ。」
「…師匠…っ!…はいっ!すみません…行ってきます!」
オレは師匠を家に残して本部へと走って行った…。
「はぁ…。流石にこれでアクセルも俺から卒業だな…。
もう少し…一緒に居たかったが…寂しくなるな…。」
[newpage]
オレが本部に駆け込むと…既に師匠とハピネス先輩から
話を通してくれていたらしく、書類にサインをするだけで
ディアスさんは釈放された。特に何かの罪に問われても
いない…それは師匠やハピネス先輩が被害として申告を
しなかったからだ。事の顛末の報告だけで被害は無い…。
2人の助力があって…ディアスさんは日常に戻ることが
出来る。そして…あの能力は今でも使用出来ないらしい。
ヒーローではないが本部にディアスさんの能力は登録され
オレはスーツの機能でそれを確認出来る。「エクリプス」
「世界に愛されし器」そう表示された能力は使用不可を
現す灰色と赤いバツ印でオレの目に映されていた…。
「やっと会うことが叶いましたね。アクセル君。
迎えに来てくれて…ありがとうございます。」
「いえ、オレも早く会いたかったです。…だけど
ディアスさんが正直に報告しすぎなんですよ…。」
「ふふ…。でも自分に嘘を付きたくないですからね。
それに…アクセル君に誇れるぼくでいたいんです。」
「…そんなことしなくったって…ディアスさんは
素晴らしい人だって…オレは知ってますよ。」
聴取で何日も拘束されていたというのに…ディアスさんは
ちっとも動じていない…オレも見習わないとな…。
「身元を引き受けてくれて…ありがとうございます。
でも…いいんですか?あんな力…怖くないです?」
そうか…ディアスさんは力なんて望んでないんだよな。
強すぎる力は畏怖の対象だが…オレはまったく逆で…。
「オレは…カッコいいと思いました。師匠と先輩の能力を
駆使してあっという間にあいつのこと倒しちゃうし。」
「そうですか…。アクセル君が怖くないならいいです。」
お、オレ基準なんですね…?もっと自信もっていいのに。
「あの大きな狼になった時なんか見惚れましたよ。」
そうだよ。ディアスさんは自分をもっと誇っていいんだ。
「それじゃあ…そのまま惚れてもらっていいですよ。」
…?…ん?…えっ…と…?…っ!?…ディアスさんっ!?
「え、ええっとっ?!…でぃ、ディアスさんっ!?」
「ぼくはもう言いましたからね?あの時、嘘を見抜いたの
でしょう?アクセル君だけ知ってるのはずるいです。」
あ、あの検証の時か!?追及されないから考えないように
してたのに…まさかこんな形で責められるとは…っ!?
「ぼくはアクセル君のことをただ…弟の代わりにだなんて
思ってないです。とても大切に思ってるのですから。」
あの時の紫色は迷いでなく弟じゃないって言ってたのか!
「これ以上…ぼくが言わないとダメでしょうか?」
「あ…あの…オレ…は…その…っ…ですね…っ!?」
…オレは、あんなに大切にされて…面倒を見てもらって
それだけじゃない。ディアスさんは尊敬できる大人で…
性格は抜群に良いし…か、顔もカッコいいかもしれない。
料理はちょっとあれだけど…描いてる絵本もすごく素敵で
黒系統の体毛に引き締まった体付きは頼りがいがあって…
こんな気持ちになるのは初めてでわからないけど…。
「お、オレは…ディアスさんのことが…。」
これからも一緒にいたい。同じ時を過ごしていたい。そう
思った…師匠に対して思う気持ちとも違う、こういうのを
…多分だけど…好きっていうんじゃないかな…。
「好き…だと思います…。」
に、煮え切らない返答で…すみません…。
「…良かった。でも、そのうち…アクセル君にぼくのこと
好きだって断言させてみせます。覚悟して下さいね?」
そう言ったディアスさんの目にいつもの優しい眼差しは
なくて、その代わりに…獲物を狙うような鋭い目付きを
していた。オレは思わず息を飲む…だけどそれは一瞬で
次の瞬間にはいつも通りのディアスさんに戻っていた。
「それにしても…告白して反応が無いから脈が無いの
かと思って…ぼく…気が気じゃなかったんですよ?」
「ごめんなさい…。って、あれじゃ気付かないですよ!」
どちらからともなく笑い出して距離が近付いた…。
ディアスさんからは相変わらず…良いニオイがして…。
…?…良いニオイが?…っ!?…ど、どういうことだっ!
オレはスーツの機能を使ってディアスさんを調べる。
「の、能力が復活してる!ディアスさんっ!?」
「あれ…?そういえば身体が軽いような…?」
「ち、ちなみにオレ達の能力は…。」
するとディアスさんは風の刃、衝撃波、獣化、身体強化を
オレの目の前でやってみせた…。
「使えちゃうみたい…?」
「ど、どうしよう…本部に報告を…!…その前にっ!」
「どうしたんです?アクセル君、そんなに慌てて…。」
「だって…オムツ穿かないとっ!また漏らしちゃう…。」
ディアスさんの家ならまだしも…いや、家なら良いという
訳じゃないんだけど、本部の近く…屋外で漏らすのはっ!
「大丈夫ですよ。ぼくが面倒見てあげますから。」
「い、いや…ダメでしょ!?大人として…っ…!」
「あ…ダメかもしれない。好きな人のオムツを替えてたら
ぼく、いろいろと…我慢できないかもしれませんね。」
「ち、違っ…!そ、そういう意味じゃなくてぇ…!?」
また目付きが鋭く…っ!?ディアスさんもその種族らしい
狼っぷりを発揮してきてるし…オレも覚悟をしないと…。
まだまだ平穏な日々を手に入れるにはほど遠いみたいだ…
だけど…オレ達は大切な人たちと過ごすことが出来る。
どこかで一歩間違えば…すべて失っていたかもしれない。
未来はわからない、だから…一歩ずつ間違わないように
大切なものをなくしてしまわないように…これからも…
ずっと…オレ達は一緒に歩んでいくんだ。
おわり
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