奪われた言葉

  ある日、ユウタがいつものようにヨウの家で過ごしていると、ヨウが突然、深刻そうな顔をしてユウタに話しかけた。

  「ユウタ、最近お前、大人の言葉を使いすぎてるよな。」

  その言葉に、ユウタは驚きながらヨウの顔を見つめた。

  確かにここ数日、ユウタはもう少し普通に話すことができるよう、少しだけ「大人」の自分を取り戻そうとしていた。

  だが、ヨウはそれを見逃してはいなかったようだ。

  「そ、そんなことないよ…ただ、たまには…」

  ユウタが言いかけた瞬間、ヨウは彼の口を軽く押さえた。

  「ダメだよ、ユウタ。赤ちゃんはそんな難しい言葉を使わないんだ。お前は、俺の可愛い赤ちゃんなんだから。もう、大人の言葉は必要ないだろ?」

  ユウタの胸に不安がよぎる。

  ヨウの目は以前とは違い、冷たく鋭いものになっていた。

  そして、その視線に逆らえないと悟った瞬間、ユウタの心の中で何かが壊れそうな感覚がした。

  「じゃあ、どうすればいいんだよ…」とユウタは弱々しく言った。

  すると、ヨウは微笑みを浮かべて答えた。

  「簡単さ。これからは、お前は赤ちゃん言葉以外で話しちゃダメ。もし大人の言葉を使ったら、おむつを替えてもらえないし、ミルクもあげないよ。」

  ユウタはその言葉に絶望感を覚えた。

  ヨウが本気だということは、彼の表情から十分に理解できた。

  ユウタはこれまでの生活が奪われていくのを感じつつ、逃げ道のない状況に追い込まれていった。

  「でも、そんなの…無理だよ。俺だって話したいことがあるんだ。」

  「ダメだよ、ユウタ。お前は赤ちゃんだ。赤ちゃんはただ『ばぶばぶ』とか、『おぎゃー』とか、可愛い声を出すだけで十分だろ?さあ、やってみろよ。」

  ヨウの言葉に従わざるを得ない状況で、ユウタは心の中で葛藤しながらも、小さな声で「ば、ばぶ…」と呟いた。

  「そうだ、それでいいんだ。」ヨウは満足げに笑い、祐太の頭を撫でた。「ほら、もう一度。もっと可愛くやってみろよ。」

  ユウタは屈辱感に苛まれながらも、また「ばぶばぶ…」と赤ちゃん言葉を口にする。

  自分がどんどん耀の言う通りになっていくことに恐怖を感じながらも、彼の命令には逆らえなかった。

  その日から、ユウタの生活は一変した。

  ヨウはますます赤ちゃんプレイにのめり込み、ユウタに大人の言葉を完全に禁じた。

  どんなに必死に話したいことがあっても、「ばぶばぶ」「おぎゃー」などの赤ちゃん言葉しか許されなかった。

  もし間違って普通の言葉を口にしようものなら、ヨウは冷たく叱責し、さらに厳しい罰を課すようになった。

  「ユウタ、何回言えばわかるんだ?赤ちゃんは『ありがとう』なんて言わないんだよ。お前の仕事は、可愛くして、俺の言うことを聞くことだけだろ?」

  ユウタは何度も反抗しようと試みたが、そのたびにヨウの圧力に屈し、次第に自分の意思を失っていった。

  ある日、ユウタは限界に達していた。おむつを履いたまま、ヨウの前に座り、「ばぶばぶ」と言うことしか許されない自分を鏡で見つめた。

  自分が誰だったのかさえも、もう思い出せなくなっているような気がした。

  大人としての自分は消え去り、ただヨウに支配される赤ちゃんとしての日々が続いていく。

  「ばぶ…おぎゃー…」

  それが、ユウタが口にできる唯一の言葉だった。

  「そうだ、それでいい。お前は俺の赤ちゃんだ。」ヨウは微笑みながら、ユウタにミルクを差し出す。

  ユウタはそのミルクを受け取り、まるで自分の意思がないかのように、飲み始めた。

  ヨウの目の前で、彼は完全に赤ちゃんとして振る舞うしかなくなっていたのだ。

  その夜、ユウタは一人で泣きながら寝床に入った。

  自分の声は奪われ、ヨウの言いなりになるしかない状況に追い込まれていた。

  話すことすらできず、ただ「ばぶばぶ」と言うだけの日々が続く。

  このまま一生、赤ちゃんとして耀に支配され続けるのだろうか――。

  そう考えると、ユウタの心は暗闇に沈んでいった。

  【続く】