Day05:濡れた服

  仕事の打ち合わせが終わり、最寄り駅を出て数分歩いたところで、ロータスは突然のにわか雨に降られてしまった。

  「困ったなぁ……」

  時間は夜の10時を回り、周りは住宅地でコンビニや人通りもまばらだ雨脚が弱まる気配も無く、これから駅に戻るには遠すぎる。

  にっちもさっちも行かなくなって、悩んでいるうちにパンツまでぐっしょりと雨に濡れてしまった。

  「ど……どうしよう」

  雨に濡れた服が肌に張り付き、体のラインをくっきりと浮かび上がらせる。股間のあたりも、すっかりと濡れそぼって、小柄でほっそりとしたロータスの体に、ぴったりと張り付いていた。

  「うー……」

  こんな格好で街のほうに出るなんて。でもこのままでいるわけにもいかないし……

  そんなことをぐるぐる考えていると、ふとエリオントのことが頭をよぎった。ネットで知り合ったちょっといけ好かない知人だが、確かこの前連れられた家がこのあたりだったはずだ。

  「た、確かこの辺に……」

  記憶を頼りに道を進むと、エリオントの家に辿り着いてしまった。

  雨脚は弱まる様子を見せず、雨で煙った住宅街を眺めて、一人立ち尽くすしてしまう。

  ブロロロ……

  エンジンの音に振り向くと、見知った高級車が目の前の家で止まった。

  「あ……」

  思わず濡れた服をぎゅっと握りこんだ。

  エンジンを止めた車から、スラリと背の高い獣人がこちらを見て、慌てた様子で駆け込んできた。

  「ロータスくん……? なんで、ここに?」

  エリオントが折りたたみ傘を片手に、びしょぬれになったロータスの隣にしゃがみ込む。

  「あ、いや……その……雨で……」

  「とりあえず上がれよ。シャワーと着替えも用意する」

  エリオントが家の中へと誘導する。

  びちゃ……びちゃ……

  濡れてまとわりつく服を引っ張りながら、ロータスは彼の手を取って、家の中へと入った。

  ガチャン……

  格の違いを見せつけられる玄関ホールに、再度足を踏み入れた。

  以前の子供服はさすがに片づけられていた。

  「一人暮らしだから、遠慮しないで良いぜ」

  「はい……その、すみません……急に」

  「気にすんなよ。小さい子をほっとくなんてできないだろうが」

  「いや、そんな……」

  「タオルとか準備するから、ちょっと待っててな」

  エリオントは足早に、家の奥へと去っていった。

  ロータスはびしょ濡れのまま一人で玄関ホールに立ち尽くす。

  「うぅ……」

  雨に濡れて冷えきった体が、ぶるっと震える。濡れた服はぴったりと肌に張り付き、体のラインをくっきり浮かび上がらせていた。

  パンツもぐしょ濡れで、身動ぎするとグシュグシュと靴下から音が鳴る。

  パチン……パチン……

  暗かった家に明かりが広がり、この前と同じようなゆったりした音楽が流れ始める。

  揺らぎのある重低音に、体の緊張感がほぐれていく感じがする。

  ブルルッ……

  冷えたからだに安心感を覚えたせいか、急に尿意が高まった。

  「おまたせ」

  バスタオル片手に、エリオントが戻ってきた。雨でよく見えなかったが、いつもの真っ赤なカラコンとメッシュが、暗闇によく目立つ。

  「あ、あの……」

  ロータスは股間をぎゅっと握り、前かがみの姿勢を取った。

  「おや、おしっこかい?」

  「す、すみません……と、トイレ……」

  「しーしー、間に合いそう?」

  「た、たぶん」

  「無理すんあよ、ここで漏らしちゃってもいいからな」

  「へっ?」

  思いがけない提案に、思わず声が裏返った。

  「あとで掃除できるし、大丈夫だ。ほら、しーしー、しーしー」

  「あっ、やだっ……」

  彼の声に促されたように体が弛緩して、足ががくがくと震える。

  ベショッ……

  体を支える体力もなく、ロータスは地面にへたり込んでしまった。

  ぐしょぐしょの服が冷たい地面に張り付き、べったりとへばりつく。

  「ひうぅ……えぐっ……」

  こんな情けない姿を見られ、無力感に嘆くが、涙までは出そうになかった。

  「しーしー、しーしー」

  「あっ……」

  ショワワァァ……

  びっちりと体に張り付いたズボンから、温かい液体が垂れ落ちる。

  ぐしょぐしょに濡れそぼったパンツに、どこからが水でどこからがおしっこか分からない感触が伝う。

  ぐしょ……ぐしょ……

  びちゃびちゃに濡れた床面に、じんわりと温かいおしっこが雨水と混ざりながら広がっていく。

  「しーしー、しーしー」

  「あう……やっ、ごめんなさっ……い」

  湿ったズボンが張り付く足をもじもじとこすり合わせる。

  体中に張り付いた雨水が、足元に溜まった温かい液体と混ざりあって、どっちがどっちか分からなくなっていく。

  「気にしないで、全部お漏らしできたら、シャワーを浴びようね」

  「ふぅ……うぅ……」

  恥ずかしさに顔が熱くなるのが分かり、股間をぎゅっと握った手がぶるぶると震える。

  チョロ……

  次第に水音は弱まり、玄関がこれ以上濡れ広がることはなさそうになった。

  「おしっこは、もう出ないみたいだな」

  「あう……うぅ……」

  クシャクシャ……

  エリオントの大きな手が、優しく頭を撫でてくる

  「しーしー、全部だせた?」

  「う……うん」

  真っ赤な顔でびしょ濡れになりながら、震える肩で返事をした。