厄介な物には好かれるもんで

  こんな要素があります

  ・プランツパロ

  ・武道と10BDは人間

  ・プランツは主人を選ぶ生きてるお人形と思ってもらえれば

  ・プランツについて詳しくはプランツ・ドールまたは観用少女で検索検索ゥ←

  ・基本は少女だけど、話の中では少年もいる設定

  ・続きを書きたいので続くような導入部分で終わってる

  幻覚と妄想と癖を捏ねくり回した結果の産物です

  10/27の新刊でこの話+書き下ろしが載ったのが本になります

  →[[jumpuri:灰の中で咲く花 > https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23158219]]

  今までの作品にもコメント・スタンプやいいねにタグやフォローなどありがとうございます

  著作権は放棄してないんで無断転載とか止めてくだせぇ

  [newpage]

  「プランツの店?」

  巷で賑わっているプランツドール。普段は眠っている生きている人形。

  波長が合えば目を覚まし、主人と認めてくれるとかなんとか。富裕層に大変流行っている……らしい。詳しいことを武道は知らない。

  だが富裕層で流行るということは、バカ高い値段がするということ。貧乏ではないけれど富裕層ではない武道にとって、一生お目にかかれない……そう思っていた。

  冒頭の電話から聞いた話によると、自分を慕ってくれて付き合いのある九井一がプランツの店を構え、九井の親友で武道とも付き合いのある乾青宗と共に店をやるらしい。バックにはまたも知り合いの柴大寿がいるとかなんとか。

  そして九井の店が完成したので、武道を呼んで飯を食いたいという。なお大寿は予定があるため三人らしい。昔から金を作ることが上手い九井なので、プランツに手を出すことにも違和感はない。

  思ったより早かったな……と最初に思ったくらいだった。

  九井の店は表通りに面しておらず、少し裏に行ったところにあった。

  「……なんか、映画に出てくる胡散臭い店みたい」

  中華テイストで少し薄暗い。こんな店でプランツなんて売れるのか? と店前で佇んでいると、ガチャリと扉が開いた。

  「なんだよボス、さっさと入れって」

  「うわ、胡散臭!」

  「いいんだよ、胡散臭くて。こんなのも見抜けねェバカにやるプランツはないね」

  ほら、入れよ……と武道を招き入れる。プランツというモノを見たことがない武道にとって、それが九井の戦略であれば間違いがないのだろう……と、深く考えずに店の中に足を踏み入れた。

  もう少し武道がプランツについて詳しければ、後々の悲劇は起こらなかったのかもしれない。

  「うーん……店内も胡散臭い!」

  「だーかーら、これくらいがいいんだよ。あんまり金あるように見せると防犯が大変だからな」

  「でもこれはこれでどうなんだろう?」

  「……ちょっと考えるわ」

  店内も中華で調度品が揃えられているが、如何せん怪しいお店です! と言わんばかり。思わず何回も胡散臭いと言ってしまう武道に、流石に九井も思うところができたようだ。

  「花垣、久しぶりだな」

  「こんにちはイヌピーくん、久しぶりって言っても先週会ったばっかだよ?」

  「……そうか?」

  店のソファーに座っていた美丈夫、乾が嬉しそうに武道を出迎える。久しぶり……なんて言いながらも何だかんだ最低週一で会っている。

  如何わしい胡散臭い雰囲気のお店に、アジアンビューティーな九井とビスクドールのような乾。脳裏でプランツよりもこの二人のがやべぇのでは? なんて過ったのを振り払う。頭の中で大寿がその考えをぶん殴ってくれた。ありがたい。

  「そういえば、所々にプランツを置いてるかと思ったけど、まだ置いてないんだ」

  「追々な。ま、そう簡単に目覚めさせるヤツは現れないと思うが」

  「え、そうなの?」

  「プランツってのはワガママなんだよ。自分で自分の主人を決める。だからこそ選ばれたって欲が満たせて見目もいいから富裕層に人気なんだよ」

  「へー……でもそれじゃ儲からないんじゃ?」

  「ココはプランツを目覚めさせられない富裕層を見て笑いたいんだと」

  「……特殊な趣味」

  「いいんだよ、金ならある」

  何とも不純な動機である。だがそれも九井らしいので、武道は深くツッコまない。

  テーブルの上には色とりどりの豪華な食事、そして酒。大半は九井の腹の中に収まるが、三人はウキウキと食事会を始めた。

  ◇◆◇

  「プランツを作るやつが気難しいヤツなら、プランツも気難しくなるっぽいんだよな」

  「どういうこと?」

  大量にあった食事はなくなり、今はツマミと酒を片手にチマチマやっている。少し酒が回って、いつもよりテンションが高い九井が愚痴る。

  「灰谷っていうプランツ職人が作った、兄弟のプランツがいるんだけどよ。そのプランツがどうやっても目覚めないらしい」

  「元々波長が合うのが少ないんだろう?」

  プランツが目覚めにくいというのは、プランツに詳しくなくても誰でも知っている。だが、その灰谷という職人が手掛けたプランツは一味違うらしい。

  「腕は確かな職人だった。過去にもその兄弟以外にプランツを作ってる。で、その兄弟プランツの出来は過去最高傑作と名高い。だけど目を覚まさなくてそろそろ八十年になるらしい」

  「八十年!?」

  せいぜい二、三年かと思っていた武道が叫ぶ。八十年となるとその製作者もとっくに亡くなっているだろう。

  「ココ、もしかしてその話を出したってことは……」

  「そ! 兄弟共に競り落としてやった! 今はバックヤードでおねんねしてるぜ」

  「なるほどねぇ……」

  オークションに参加していた時に、たまたま出品されていたらしい。製作者はやはり亡くなっており、遺言にも兄弟プランツについて、もちろん残していた。

  「そん時に言われたのが〝兄弟は離したら永遠に目覚めない〟だとよ」

  「だからオークションに兄弟揃って?」

  「そういうこと」

  三人は席から離れ、噂の兄弟が眠るバックヤードを進む。所々、目を瞑っているプランツドールが並んでいるが、目を覚ます気配は一切ない。この人形達がいずれ主を見つけ、目を覚まして生きている人間のように動き出す……それはまさに夢物語のようだ。

  兄弟は他のプランツと違い、ガラスケースの中に入れられていた。確かに他のプランツよりも美しいという言葉が当て嵌まる。

  少年と青年の間……どちらとも言えない雰囲気の金髪で三つ編みをした兄。弟はそれよりも幼く、大きめの眼鏡をかけていてどこか可愛らしさがある。髪型は某三分クッキングの人形と同じ。兄と揃いの金髪をした弟。目が閉じられているのが残念だ。

  「ふわ〜……天使みたいな兄弟……」

  「花垣、そんなに気になるなら触ってみるか?」

  「え! いいの!?」

  「どうせ目覚めないしな。もし触って目ェ覚ましたら、世話にかかる金は出してやるよ」

  「え! プランツってそんなに金かかるの?」

  「軽く云十万円は飛ぶぞ」

  「ヒエッ」

  人はそれをフラグとも言う。その前から何本もフラグは突き刺さり、ヒラヒラとはためいている。そんなことを知らない三人は、呑気に兄弟をガラスケースから出し、椅子に二人を座らせた。運ぶのはもちろん、オークションを競り落とした九井。

  九井が持ち上げて運ぶ姿を見て、兄弟二人の見た目は思ったよりも幼く見えた。

  「名前はあるんスか?」

  「確か……兄が蘭で弟が竜胆だな」

  「花の名前なんて女っぽいな」

  「へー……ならこっちが竜胆くんっスかね?」

  武道が眼鏡をかけた弟の方に手を伸ばすのと同時に名前を呼ぶ。すると今まで閉じていた目が開かれ、ラベンダー色の瞳が現れた。

  「……え」

  「は?」

  「ココ、目ェ開けたぞアイツ」

  どう見ても目を開いてジッと武道を見つめている。気難しく、誰も目覚めさせられないと言われていたが、散々フラグを立て見事に回収した結果である。

  ジッと黙って武道を見つめていたかと思っていたら、視界から竜胆が消えた。

  「え! どこに!? ぐえっ!!」

  視界から消えたのは、身体を低く屈めて武道の腰辺りに突進したからである。そのため、急激な衝撃に武道は耐えられずバランスを崩す。

  その先には未だ椅子に座って眠っている蘭。

  「……あっぶね〜」

  「花垣!」

  「オイ! 大丈夫か!」

  「何とか……オレも竜胆くんも無事だし、蘭くんも無事っス」

  壁ドンをする形で蘭に当たらないように何とか止まる。勢いでついた手はジンジンしているし、未だに腰には竜胆が抱きついてきている。何ともまぁ可愛らしい顔で、ぐりぐりと頭を擦りつけてくる姿は可愛いが、行動は可愛くない。

  「竜胆くん、危ないから急に抱きついちゃダメっスよ」

  「そうだけどそうじゃねェ……」

  「そういうところは花垣だよな」

  未だ寝ている蘭を壁ドン、腰には竜胆。八十年も起きなかったプランツの片割れが起きていることに動じない武道。九井の頭は痛かった。

  何せ起きないなら起きないなりに展示しようと思っていたのに、それがパァになったからだ。何より先程自分が言った言葉もある。金を出すということ。

  そこは武道でも譲らないし、いつも貢ごうとして拒否られるので、これは合法で貢げるのでは……と瞬時に頭の中で計算される。

  だがそれだけで終わらないのが、花垣武道という男。

  突然、壁ドンをしていた武道の両肩にスルリと腕が回る。ドキリと心臓が跳ねた。竜胆は未だ腰に抱きついている。九井と乾も距離がある……となると考えられるのは一つ。

  ギギギッと音が鳴るようにぎこちなく腕が伸ばされた先を見ると、弟と同様にラベンダー色の瞳が武道を見つめていた。ジーザス。

  「アイエエ! 目ぇ開いてる! 何で!?」

  もはや半泣きどころかガチ泣き。完全にキャパオーバー。逃げようにも首に手を回されてるし、弟は腰にくっついている……完璧に詰んだ。

  「綺麗な目がコッチ見てるよぉ……」

  「どうすんだココ」

  「ちょっと待ってくれ……今考えてる……」

  ひんひんと泣く武道をジッと見つめる蘭。先程の竜胆と同じ仕草なはずなのに、どこか妖艶さがあるのは何故だろうか。

  ボロリと武道の大きな目から涙が流れたのと同時に、蘭が武道へと顔を近づける。そしてそのまま涙ごと武道にキスをした。

  「あ゛? 何してんだテメェ……」

  乾がブチギレた。武道はポカンとした顔で立ちつくす。流石に驚きで涙も止まった。

  「オレ……今、ちゅーされた?」

  二十六歳にもなるいい大人が、キスをちゅーなんて言う姿に、どこぞの九井一がダメージを受けているが、そんな武道と九井以外で蘭と乾が睨み合っている。

  竜胆は相変わらず頭を擦りつけてると言っておこう。武道から顔は見えないため気づかれていないが、乾に向けてニヤニヤと挑発するような顔を蘭は浮かべている。

  目覚めて数分でこの態度……舐め腐っている。

  「コロス……」

  「どうしたんスかイヌピーくん! ステイステイ!!」

  蘭に手を伸ばす寸前で武道が止めるが、蘭は挑発を続け、竜胆も便乗して舌を出している。似たもの兄弟。

  「花垣どけ、そいつを殺せねェ……」

  「待って!? 何でそんな急なヤンデレ台詞!? コ、ココくぅん!」

  「あー……うん、整理するからちょっと待ってくれ」

  流石オレらのボスだぜ! と喜べばいいのか、癖のありすぎる兄弟に好かれて、今後どうするものか……。

  考えても考えても答えは見つからず、九井は途方に暮れた。