灰武で妖怪パロという相変わらず強めの幻覚と妄想を混ぜ合わせた作品
ぱずりべの妖怪衣装の灰武……くっっそ好きなんですよね
Xのアンケでカプは何でどんなネタで読みたいかというのを取った時のです
アンケありがとうございました
10月の東京イベントで新刊出します
支部に載せてるこの妖怪パロ話
プランツパロ+書き下ろし
犬の気持ちの灰武編
猛獣使いタケミっちの出会い編
書くのが難航してる兄弟ネタ
何でもありな人向けの灰武を詰め込んだ短編集を出します
→[[jumpuri:灰の中で咲く花 > https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23158219]]
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著作権は放棄してないんで無断転載とか止めてくだせぇ
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六本木。そこは極悪の烏天狗、灰谷兄弟が支配する地域。天竺の飛び地とも言われている。妖怪らしく武力と妖力でのし上がり、そのカリスマで六本木の地を支配していた。
……が、二人は未だ嘗てない未知の者にちょっと戦慄していた。いや、ドン引きしていた。
「いや、いやいやいや!? なんでアレ食らって生きてるわけ!!」
「大将やマイキーは戦闘力バケモノだとは思ってたけど、こんなヤツいるなんてなぁ〜」
「いや兄ちゃん! 感心する場合じゃねェって!」
「でもほら……」
荒れ果てた地。元々どっかの空き地で多少の草木が生えていたが、今はその面影すらない。兄弟二人、全力で力を使った結果である。まだ余波が残っているのか、あたりは土煙で覆われている。その土煙の中心でもそもそとゆっくり起き上がる人影が見えた。
「いっててて……」
髪の色同様、頭には金色の耳。元は綺麗な着物も攻撃によりところどころ傷んでいる。生えている尾は一本のみだが、妖狐なのは見ただけでわかった。
東卍の使いで……なんて言ってきたが本当に東卍の使いか怪しく、むしろ東卍なら実力もあるだろうと見てみたら尻尾は一本のみ。妖狐は尻尾に妖力を溜めるので一本であれば下級の妖怪……ならばと面白半分で絡んで手を出してみたらコレだ。
鬼族であるマイキーや大寿、同じく妖狐でも尾が九本もあるイザナ。大軍を束ねる彼ら程の強さは正直ない。むしろ東卍にいるには弱すぎるくらいだ。
だが何を撃っても殴ってもムクリと起き上がるアホみたいな耐久値。さながらゾンビのようにやられては起きてを繰り返すタチの悪い起き上がりこぼしのよう。あれだけやられているのにもかかわらず、わーわーと騒がしい声は依然として衰えない。むしろコッチが疲れてくるほどである。
「もうそろそろいっスか? 話を聞いて欲しいんですけど!!」
何度やっても諦めず起き上がって二人を見つめてくる蒼の瞳は、キラキラと輝いて光を失っていない。普通の雑魚なら心も折れて濁った目をするのに、この妖狐の目は一切曇らない。化け物級の耐久値に折れない心、そしてそこそこ可愛いと言われそうな顔の妖狐に蘭は面白くなっていた。
「兄ちゃん……どうする?」
「ん〜……面白いから聞いてやるよ」
「あ! ありがとうございます!!」
ニカリと笑う妖狐。あれだけボコボコにした相手だというのに、純粋に笑いかけるのかと思うと、どこか心臓がドキリと跳ねた。
これが烏天狗の灰谷兄弟と妖狐の花垣武道との初めての出会いである。なかなか物騒。
◇◆◇
そんな出会いだった灰谷兄弟と武道。武道がマイキーの使いで、イザナの配下である灰谷兄弟のいる六本木に来たのは本当のことだった。マイキーの妖力で守られた手紙が武道の懐から出てきたので間違いない。
それとイザナはもちろん、鶴蝶とも武道が顔見知りなのも確認済みだ。イザナが手紙を受け取ってくれないため、灰谷兄弟を経由した苦肉の策であったと武道は言うが、そこで灰谷兄弟を選択している時点で色々とアウト。
臨時に東卍にいる武藤経由、もしくは幼馴染みだという鶴蝶に連絡を入れればいいものの、どちらも不在だったため灰谷兄弟をチョイスするというクソセンス。誰が聞いても何故そこを選んだ? と言われるしかないだろう。
その結果、なんやかんやで灰谷兄弟に気に入れられてしまい、以来何かと渋谷にいる武道の元に現れて攫っていくようになった。
「タケミチと〜り♡」
「借りてくな〜」
「あっ! またテメェらか!!」
「タケミっち離せ妖怪攫い!!」
「タケミっちも抵抗しろォ!」
「抵抗したら落ちちゃうでしょ!!」
何とも騒がしいがここ最近よく見かける光景だ。武道を小脇に抱えて攫っていく灰谷兄弟。一度抵抗で暴れたら高所から落とし、武道をキャッチし合うというのを何回も繰り返され、しまいには「次騒いだら落とす」と蘭に脅されたので武道は大人しくしているしかない。あの時の蘭の目はマジだったと武道は語る。
天竺内であれば、幼馴染の鶴蝶が助けてくれるかイザナが気まぐれで助けてくれるが、六本木だとそうはいかない。しびれを切らしたマイキーが突撃して助けてくれるかイザナに灰谷兄弟が呼び出されるまで、六本木の彼らの拠点に監禁されているようなものだ。
幸いにも本人達は武道を相当気に入ったようで、初対面のようにボコボコにはされないが、たまーにスイッチが入ると危ない時はある。
「で? 今日はどうしたんすか」
荷物のように抱えられて空を飛ぶのも慣れたもの。本来なら慣れなくてもいいのにあまりにも頻度が多すぎた結果、感覚が麻痺している。常に武道の周りには理不尽の権化が多すぎたのもあるだろう。周りの環境にすぐ慣れるのは武道の美点だが、身内からは不評を買いまくっている。
「べっつに〜」
「面白い映画手に入ったから見ようぜ」
「……またホラーとかじゃないっスよね」
「そんなぁ」
「まさかぁ」
「あ、コレ、怖いヤツだ」
にたにたと愉悦を隠しきれない似たような笑顔。これはまた拘束されながらホラー映画を見させられるなと武道は悟った。諦めも肝心。特に大した用事でもないのに、こうして武道を攫うくらいには武道のことを気に入っている灰谷兄弟。どうせそのうち飽きるだろうと武道は思っているが、今のところその兆しはない。
「ふべっ!」
「オラ、落とすぞ」
「落とす前に言ってくれません!?」
地面に降り立ったかと思いきや、パッと手を離されて顔からいった。それでも耐久値が高い武道にとってはかすり傷程度で済んでいる。額が少し赤く、蒼の瞳がうるうるしているその顔を見るのが好きな蘭と竜胆。その顔を見るたびに、得も知れないゾクゾク感が背中を走る。瞳孔が開いているのに頬を染めてる姿を身内が見たらドン引くし、他人が見たら恐怖を覚える。
「なんだろなぁ……この感覚」
「不思議だよなぁ」
また何か言ってるよと思いつつも、ツッコめばだる絡みされることも学んできた武道。最近は灰谷兄弟との接し方もわかってきて嬉しいやら悲しいやら。イザナ達天竺の面々からは呆れた顔を、鶴蝶からは心配そうな顔を常に向けられるようになった。
「あれ? 家じゃなくて六本木のシマ?」
「食うもんも飲み物もなーんもねぇから買ってく」
「あ! ならポテチ! ポテチとコーラ!」
「言うようになったよなァ」
図々しくも、自分の要求を言えるくらいには仲良くなったんじゃないかと武道は思っているが、あの灰谷兄弟に対してそんなことができるのも武道くらいである。
先頭を歩く蘭に着いていく形で、竜胆に肩を組まれて歩き始めた時……蘭の行く手を阻むかのように複数人が前を遮った。
「ナニ……コイツら」
機嫌良さげにしてたのが一瞬で地に落ちた。武道の血の気は引くし、竜胆も呆れ顔で阻んだヤツらを見ている。灰谷兄弟のことをわかっていれば、六本木のシマで喧嘩なんて普通は売ってこないだろう。何やら口やかましく騒いでいるが、断片的に聞こえてきたのはこの兄弟への報復らしい。
「蘭くんと竜胆くん、またどっか潰したんスか?」
「どうだったかな。絡まれたから殴ったり、ムカついたからふっ飛ばしたくらい?」
「記憶にない……と」
「んな雑魚覚えてられっかよ」
竜胆とコソコソ話していると、思い当たる節が複数な時点でアウト。蘭は不機嫌そうに扇を扇いでいるし、竜胆は興味ないのか武道の耳をもふもふしている。武道はただジッとしているしかない。オレはただの置物……なんて思って立っているが、もふもふしてくる竜胆の手がこそばゆい。
向こうは必死に喚いているのにこの興味のなさ……実に可哀想になってくる。
そろそろ相手がしびれを切らして突撃してくるか? なんて思っていた時、先にしびれを切らしたのは蘭だった。
「ウルセェ……邪魔」
手元で扇いでいた扇を大きく一振り。巨大な竜巻を起こし、取り囲んでいたヤツらを絡め取る。
そしてそのまま往復するように反対にもう一振り。竜巻は絡め取ったヤツらを巻き込んだまま、勢力を増し回転を速め、最後に上から下へと扇を振り下ろすと、竜巻は解除され風の勢いもつけて一気に地面へと叩きつけられた。
「うっわ! 痛そぉ……」
「オマエも何回もやられたじゃん」
「何回もやられたからこそ痛みがわかるんスよ」
「なるほど」
「ぺちゃぺちゃ喋ってねぇで行くぞ〜」
目の前には死屍累々。うめき声を上げるばかりで起き上がる気配はない。
スタスタと前を歩く蘭に続くように着いて行かないと、次にボコられるのは確実に武道そして次点で竜胆だ。慌てて着いて行こうとしたその時だった。
「クソがよぉ!」
「これで終わりだ!!」
どうやら隠れていた残党が複数の火球を飛ばしてきた。一つ一つの威力は低いが纏まった火球はデカく、威力も高いことが予想できる。意識が逸れるのを待っていたかのようなずる賢さ。狙いは先を歩いている蘭。
予想よりも速く、このままだと蘭に確実に当たると竜胆も扇を構えようとした瞬間……先に黄色い何かが蘭を庇うように飛び出した。
「危ねぇ!!」
「っ! タケミチッ!」
そしてそのまま飛び出した武道に火球が当たった。ドン! ドン! と次々に火球が当たり、辺りは煙に覆われる。黙々と黒煙が立ち昇り、武道が無事なのかすらわからない。
「タ……タケミチ……?」
竜胆が声をかけても反応が返ってこない。ザワザワと腹の底から怒りが込み上げてくる。
蘭も同様、あまりの怒りに目の白目部分がジワジワと黒に染まる。
「オイ……」
「テメェら……」
兄弟揃ってブチギレて扇を構えようとした瞬間、爆発的な妖力が辺りを覆う。周りを囲んでいる雑魚でもない、ブチギレそうになった灰谷兄弟でもない。ならばこの妖力は誰か……可能性があるとすれば煙に包まれた武道だが、その姿は見えない。それとも第三者かと辺りを見渡そうとした瞬間、煙が晴れる。
そこには一本だったはずの尾が九本に増え、当たったと思われた複数の火球を一つに纏め、当てられたものよりも巨大な火球を掲げている武道だった。
「よかったっスね……火ならオレの得意分野なんスよ」
にっこりと笑ってはいるが、怒っているのは誰の目から見てもわかった。火球に照らされて、ゆらゆらと揺れる九本の尾が神々しい。
「コレ、お返ししますね」
撃ってきた相手にひょいと軽く火球を投げ返す。威力は倍、当たれば大怪我通り越して死ぬかもしれないと慌てているが、火球はすぐ目の前まで来ている。
叫び声と共に、慌てふためいたり逃げようとするが間に合わない。もう終わりだ! と混乱する場。絶体絶命と思ったその時、フッと幻のように火球が消えた。
「コーン……なんちゃって」
火球を消したのは投げ返した武道本人。手を狐にして立っている。幻影だったのか現実だったのか判断つかないが、あの熱さは幻影じゃないと思わせる。
「オレのダチを傷つけるのは許さねぇ……今すぐここから去らねぇと、次はないっスよ」
キュッと瞳孔が縦になり、いつもの蒼の瞳ではなく金色に輝いている。このままでは殺される! と口々に言いながら、囲んでいた妖怪達は一目散に去っていった。その場に残ったのはゆらゆらと尻尾を揺らす武道とポカン顔で立つ灰谷兄弟のみ。
「大丈夫っスか、二人共! 特に蘭くん怪我ねぇ!?」
尻尾は増えても駆け寄ってくる姿はいつもの武道。瞳の色も金色からいつもの蒼に戻っている。そんな武道にいち早く正気に戻り、行動を起こしたのは兄の蘭だ。
「あでででで!」
「どういうことか説明しろぉ?」
片手で岩をも持ち上げる怪力でアイアンクローを武道にブチかます。ギリギリと痛そうな音がしているが、あまり武道にダメージが入っていないのが悔しい。クソ耐久力がこの時程無くなって欲しいと思ったことはない。
「せ、説明って……?」
「その九本の尾はなんだよ」
「え! 九尾の狐だから……?」
「そうじゃねぇ」
「いでで! いつも邪魔だから一本に纏めてるんスよ!」
「……力を隠してたとかじゃなく?」
「九本でも耐久と回復にほぼ全振りだし、唯一扱えるとしたら火くらいで……それに九本も尾があると色んなとこにぶつけて物落とすから、ドラケンくんとか三ツ谷くんに怒られるんスよ!!」
「ぶっ……!」
「アッハハハハ!! なんだよソレ!!」
自分達を馬鹿にしてるとか騙していたとか、そういった考えが頭を一瞬占めたが、武道はそんなことはなく、ただ邪魔だからという理由で尻尾を一本に纏めていたというのだから面白い。これだから構うのを止められないのだと、兄弟は目を合わせてニヤリと笑う。
「タケミチ……オマエの尻尾、オレらの前では九本のままでいろよ」
「仕舞ったら殴るから」
「えっ!?」
両隣からガシリと肩を組まれ、六本木を歩き始める。ふわふわと揺れる九本の尾に気分を良くさせて、二人は武道の尾に重なるようにお互いの翼を重ね合わせた。
◇◆◇
それからどうなったかというと……武道は蘭と竜胆と共に居る時は尾を隠さなくなった。増えた尾は蘭の枕や布団代わりになったり、手入れをするのが楽しくなった竜胆にせっせと毛繕いをさせられている。動き回ると相変わらず物を落とすので、灰谷宅ではソファーに座りっぱなしだ。
それと比例するかのように二人の翼に包まれて寝たり、もふもふさせて貰っているのだからお互い様だろう。だがよくもふもふさせられたり、させて貰っているせいか周りは不機嫌そうにしている。
「タケミっち……烏クセェ」
「クセェな……」
「マイキー、アイツら焼き鳥にします?」
「烏は焼き鳥にはできねェだろ。消し炭じゃね?」
「コロス」
東卍だけでなく同盟を組んでる黒龍、同じ仲間の天竺からも不評なくらい匂いが移っているらしい。武道はスンスンと自分の匂いを嗅いでみるが、混ざりあっているためいまいちわからない。
「烏は一途だからな〜」
「今度揃いのピアスしようぜタケミチ」
「……え?」
どうやら知らない間に求愛されていたらしい。驚く武道を他所に、外堀は埋められつつある。
さらに数週間後……武道の両耳には蘭と竜胆、互いと揃いのピアスが光っており妖怪大戦争が起こったのは言うまでもない話である。