蘭、らん、それが今回語る三毛猫の男の子の名前。
最初、白猫の母とキジ猫の父は三毛猫が生まれると知ってから、女の子向けの名前の花の名前をそのままつけることを決めていた。
しかし実際は男の子。
白猫の母はもうちょっと男らしい名前をつけようと提案したが、キジ猫の父は純粋に育ってほしいからなどとこじつけのような理由でそのままつけた。
だが、皮肉にも三毛猫の蘭くんはその名前のおかげで猫社会からスレていく。
彼は引きこもりだった。
「三毛猫だったから女の子だと思ってた。ごめん。」
それと同じようなことを友達付き合いしていたキジ白の女の子から、あるいは親友だと思っていた黒猫の男の子から、あるいは授業中に先生から、あるいは病院の受付から、あるいは…
ごめんってなんだよなんて蘭くんは思う。
謝られる筋合いなんてないのに、何か自分が女の子じゃなくてがっかりだなんて言われているようで。
男の子じゃなくて女の子だったら話せていたのかよなんてすっかり日常になってしまった毛布の中で蘭くんは学校でのことを八重歯を噛み締めながら、考えた。気力のなさげな目で暗闇を見つめ、ぼうっと寝たきりの夜を過ごす。
毛布は擬似的な他人を感じられる。三毛猫の蘭くんにとってもそれは変わらなかった。言葉を交わさなくてもずっと自分のそばにいて、暖かい毛皮で体を包み込んでくれる。
でも、ただ足りないものがある。毛布に肉球も舌もないのだ。だから、毛繕いもしてくれはしない。
言葉も発さない。だから蘭くんは自分の肉球をペロペロ舐めて毛繕いをし、自分で自分を慰める。
やっぱり自分の手だから、自分が気持ちいいところはなんでも知っている。高校生と同じ年になった蘭くんは死ぬほど嫌だった自分の雄として股間についた赤いそれを日常的に弄るようになっていた。
友達として一緒に買い物にいったりしていたキジ白の女の子の思い出、何度も寝泊まりして自分のちんちんを見た時に気まずい顔をした黒猫の彼を襲えば良かったと思うほどの欲情。
蘭くんはバイに近かった。
他人とのふれあい、つながりを思うあまりに、数少ない猫たちとの思い出を懐かし気味にズリネタに使い、毛布の暖かさにほだされるような思いで、自分の肉球の中で小さい雄を握りしめ、出てくる精を受け止め感じる。
「今日もご飯おいとくね。」
白猫の母がドア越しに置く食事を食べて今日も蘭くんは眠る。