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待雪草を君に

  人は生まれながらにして、自分の運命を選択することが出来ない時がある。

  それは例えば腕が無かったり、それは例えば目が見えなかったり。

  神様はとても不平等だ。世間では人は努力すればなんでも叶える事ができると言うけれど、そんな選択肢、端から持っていない者が確かにいて。

  ……俺もそう。

  俺の中に流れる忌むべき血が……産まれながらにして俺の人生を狂わせた。

  [chapter:――待雪草を君に――]

  俺がこの世に生を受けた時の話だ。同じ病院、同じ時間に、別の夫婦もまた出産していた。

  俺は人間の夫婦で、彼は熊の夫婦。まるではじめからそう仕組まれていたかのように都合よく、俺達の腐れ縁はそこからもう始まっていたのだ。

  俺の名前は碧海翔

  彼の名前は大熊[[rb:熊掌 > ゆうしょう]]

  彼の大きな身体に似合いの名前だ。それでいて彼の性格にマッチしている名前でもある。

  互いの夫婦はこの仕組まれたかのような偶然から、親交を持つようになった。聞けば家が近所だということで、尚更両家の間に絆は深まり、そして俺と熊掌もまた、物心付く前からまるで兄弟かのように育った。

  兄弟と言っても、仲は決して良いとは言えなかった。なにせ熊掌は熊獣人で、子供時代からとても傲慢だったし、まるで野生に放たれた獣のように、自分の欲望に忠実だった。

  俺達の両親は、それもまた子供のすることと、熊掌の性格を深く考える事はしなかったし、俺が熊掌に何度も玩具を取られたり、押し倒されたりしても、少し叱る位で事態の深刻さを理解していなかったと思う。それに実際子供というのは元来そういうもので、だけど俺がそれに抵抗出来ないと理解してしまった熊掌は、最悪な事にそれが“習慣”となってしまった。

  子供とは恐ろしいものである。相手が抵抗出来ないと分かるや、それを頭で理解し学ぶ。そしてそれが習慣となり、その習慣がその者の人格を形成する大きな要因となるのだ。

  つまり熊掌は俺に対していじめっ子という立場になり、俺はまるで熊掌の舎弟であるかのような扱いを受けた。熊掌は俺を見下し、そして俺に対して自分を祭り上げるよう強制しようとした。

  けれど俺も俺で、腕力では抵抗出来ないものの、心まで熊掌に抵抗出来ないかと言えばそうではなかった。

  いつも自分が熊掌から不遇な対応をされている事は理解していたし、熊掌に楯突いても勝てない事は、既に何度も身にしみてわかっていた。だからと言って熊掌を祭り上げるような事は絶対ごめんだと決心していて、だから熊掌から逃げるように距離を取る。そういう風に学習したのだ。

  幼稚園に預けられるようになっても、熊掌の性格が変わることは無かった。常に周りに対して高圧的でありながら、しかしその力は熊掌のカリスマとなって強いリーダーシップを発動していた。

  不思議と熊掌の周りには人が集まり、そして熊掌がいつもちょっかいを掛けてくる俺には、友達と呼べる相手も出来ず、それでいて熊掌の取り巻きが、彼と一緒になって俺の事をいじめる。そんな感じだった。

  俺は次第に口数も少なくなっていったが、それでも抵抗心を忘れることは決して無かった。言葉や拳で語ることは無く、けれど目でいつも彼らを威圧していた。それが熊掌にとって気に入らないと知っていても、それでも彼にそうして抵抗することは絶対にやめず、例えば誰の班に入れて貰えなくたって、例えば砂場の角さえ使わせて貰えなかったって、熊掌がいつもそこで俺に突っかかってくるけれど、ただ無言でその場を後にした。

  そんな俺が気に入らないのか、熊掌の嫌がらせは家に帰っても続いた。言った通り俺と彼の家は近いから、家に帰っても熊掌は簡単に俺の家に訪れる。両親の仲が良いからむしろ歓迎される程で、熊掌は俺の両親の前ではまるで、唯一無二の親友であるかのように接してきた。俺の両親はそれを疑うことも無かったし、だからと言って俺がそれを否定しようものならば信じてもらうことなど出来はしない。それほど巧妙に、熊掌は実際の顔を隠していたからだ。

  部屋に上がって二人きりになると、熊掌は決まって俺を罵る。例えばお前は俺の下僕だとか、友達が一人も出来ないんだから素直に俺様の言うことを聞けだとか。俺のベットを椅子代わりに独占して、俺が逃げようとすると無理やり抑え込まれ、延々と、俺がどれだけ無様なのか繰り返し刷り込むように呟いた。

  小学校に上がってクラスが分断されると俺はやっとそこで初めて熊掌から開放される事になる。熊掌の息の掛かっていない生徒が増え、俺にも唯一友達と言える存在が出来たりもした。その時は初めて友達が出来てとても嬉しかったし、熊掌と同じクラスじゃないだけでまるで天国にいるかのようにも錯覚したのを覚えている。

  けれどそれも長くは続かないのは当たり前で……彼は決まって昼休みなんかになると、自らのクラスの取り巻きを連れて現れた。彼らは俺だけでなく、俺の友達にも威圧を掛け、俺がやめろと言っても聞くことは無く、むしろそれを悪化させた。熊掌は俺が初めてムキになって抵抗した事に満足げで、そんな事が続く内に、好んで俺と付き合おうとする友達は居なくなっていった。

  3年になって、そこが俺の転機になったのは間違いない。無論、悪い意味でだ。

  3年になると、俺は熊掌とまた同じクラスになってしまっていた。相変わらず俺は彼らの虐めにあっていたが、良心や教師が気付くことは決して無い。虐めと言っても、モノを隠されたり、そして机に落書きされたりではなく、例えば俺が一人で給食を食べているだけで、恥ずかしくないのかとか、昼休みに話す相手が居ないという事が見ていて嫌になるとか、そういう精神的な言葉攻めだった。影でコソコソと話してみたり、遠くから俺を見て笑ったり、そういうネチネチとした嫌がらせがずっと続いた。熊掌は家に帰ると決まって俺を床やベットに押し付けて自分の価値を分からせようとする。自分がかまってやっているだけありがたいと思えとか、お前には俺以外にいないとか、そんな事ばかり。俺もたまに反撃して「うるさい!」とか「構うな!」とかそう抵抗してみるのだけど、抵抗すればするほど、俺が悲しい目をすればするほど、熊掌にとってそれは糧となるようで、そういうときはむしろ強く抑えつけられた。

  三年にはいってしばらくすると、そこで初めて自らの性を診断することになる。それは学校の行事として行われる事で、血液を採取し、その場で診断結果を言い渡されるという物だった。

  俺は別に自らの性に興味なんてなかった。大抵の者はβという括りになり、今はもう殆どαやΩは存在しないと言う。それに1000人に1人であるαならばまだしも、10000人に1人であるΩなんて、正直俺にとってはテレビで聞いたことがあるという程度の認識でしか無かったのだ。

  その日までは…

  「おー…珍しい、君はΩだね。」

  「……え?」

  驚く俺もそうだったが、周りもそうだ。生徒は勿論の事、教師に至るまで、まるでΩを初めてみたかのような、そんな様子で俺を見ていた。

  Ωとはつまり、社会の最底辺だ。そういう認識が、まだこの世界には残っている。それは何も、Ωになる者が少なく、理解されがたいという理由だけではない。Ωにはある、特異な性質があったからだ。

  「ん?おや、これまた珍しい…君はαだ。おめでとう!」

  それと同時に、別の場所で診察をしていた医師の口から、俺とは全く別の言葉が産まれた。

  αの性を持つものがいた。そう告げるもので、それでいて、その者とは

  「ありがとうございます!」

  あの大熊熊掌だった。

  熊掌の視線がこちらを向いた気がした。まるでその視線は、やはり言った通り、俺が社会の底辺で、自分はその上に立つものなのだと、そう言っている気がした。

  その時初めて俺は絶望した。これまでどんなに熊掌に馬鹿にされようとも、嫌がらせされようとも、自分を保ってこれたのは、自分がそんな矮小な存在じゃないと、そう思っていたからで。

  自分がまさか10000人の中の1人になるなんて、思っていなくて…

  俺とは違い、周りに凄いともてはやされる熊掌の後ろ側で、俺はただ一人、いつもどおりそこに立ちすくんでいた。

  ――――

  そんな生活を続けながら、俺は中学生になっていた。

  相変わらず熊掌の嫌がらせは止まる事を知らず、けれど最近熊掌は小学校からやり始めたタッチフットの延長線でラグビーに打ち込むようになり、家に帰ると比較的落ち着いた生活を送れるようになった。熊掌は他の熊獣人から見ても大きな体格をしているし、育ちも速い。それがαだからなのかわかりはしないが、とにかく周りよりも身体つきが全然違って見えた。

  俺がΩだということを、俺の親はとても悲観していたけれど、しかし幼馴染である熊掌がαだと知ると、じゃあ二人将来は結婚できるじゃないか!と冗談でも言ってほしくない言葉を嬉しそうに口にしていた。両親にとって熊掌は勉強も出来、スポーツも万能で、将来性が高い男の筆頭である。いつでも翔を嫁にしてくれて構わない。熊掌君なら大歓迎だ。私達も安心できる。そう家に来ていた熊掌の前で、冗談か本気かわからない面持ちで呟いた父に、熊掌は人のいい笑みを浮かべて二つ返事を返した。親も熊掌も、本当に勝手な話を進めているものである。

  俺はΩであるが、普通に働き、普通に結婚して、普通に暮らしたい。仮にαと結婚することになっても、それは絶対熊掌以外であるし、奴と付き合う事はこれから先どんな間違いがあっても無いだろうと確信している。あんな奴と一生を過ごすと考えただけで、胃の中から何かがこみ上げてくる気がするのは錯覚ではないだろう。

  Ωはあまり、社会的に地位が高くないと言われる。それは実際、βと比べてもどこか仕事が遅いとか、そう言うイメージもあるが、やはり大きな要因としては、発情期と呼ばれる期間が存在し、その間は全く使い物になら無いということだろうか。発情期中はその対象であるαだけではない。βさえも惑わすフェロモンを発し、自らも身体を襲う熱と欲情に苦しむ。

  それに対する薬も既に開発されているが、それを服用してもαは匂いに反応する、そのため会社の中枢を担うαを無駄に刺激し、ただそこに居るだけで邪魔者扱いされてしまうので、そういった理由からΩは疎まれるし、歓迎されないのだ。

  ただ、唯一それを完璧に抑制する方法も無くはない。「運命の番」と呼ばれるαと出会う事が出来れば、発情期は完全に抑える事ができるのだ。いや、正しくはαによって“抑えられる”事ができると言ったほうがいいだろうか。

  運命で結ばれたαには、Ωに対するある特殊な力を発揮できるという。それは簡単に言うと、“発情期の操作

  ”というものらしい。運命の番のαは、Ωの発情期を操作し、いつでも発情を抑える事ができるし、逆に発情させる事も出来てしまうという。それはつまり完全にαによって自らの性欲を支配されるという事であり、まるでαの子を成す為の道具とでも言うような、そんな忌々しい能力だ。

  運命の番に出会ったからと言って、必ずしもそれが良いことではない。むしろそれは、熊掌の言うよう奴隷になるようなものである。

  俺はそんな風になりたくないし、なろうとも思わない。だからこうして、発情期が発現すると言われる歳から既に薬を服用してそれを抑え込んでいるし、これからの対策だってしっかり考えている。最初の発情さえ抑えてしまえば、その後薬を服用し続ける限りフェロモンは放出されない。それは本来薬を服用してもαには嗅がれてしまう匂いでさえ消すので、これさえ飲むのを忘れなければ、俺は周りと同じく、普通に暮らしていけるのだ。

  熊掌にはいつも馬鹿にされているけれど、彼の言うとおりに自らの人生を悲観しながら生きるなど、俺はごめんだった。それに俺は、同じクラスの女子に少し、恋心を抱いており、自分から話しかける事は出来なかったけれど、それでも彼女を好きという気持ちがあって、その思いを大切にしていた。熊掌はΩである俺が、自らの意思でα以外と生殖行為が出来ない=恋愛も無理な存在だと貶めるが、そんな事はどうでもいい。確かに男のΩは自らの子種で他人を孕ます力が極端に弱いと言われるが、確率はゼロでは無いわけだから、最初から諦める事はない。

  しかし、そんな俺をあざ笑うかのように、相変わらず学校に行けば、熊掌は周りにもてはやされる。中学生にして、彼は180を超える体格、屈強な身体、無骨な顔でありながら整った笑顔という反則的な力を持ち、尚且つ運動や勉強もできる。文武両道の生徒だった。勿論そんな生徒であるから教師からの評価も高いし、彼は表立って自らの本当の顔を隠していたから、影で俺に対して悪い噂を流されるからつるまない方が良いと吹聴して回っていても、周りはみんな彼の言葉を信じた。

  この頃になると彼も自分の評価という物を意識し始めた為、誰かの視線があるような場所で俺を直接いじめる事はなくなっていた。直接というのはつまり、言葉とかで罵ったりすることはせず、けれど代わりだと言わんばかりに

  俺を体育館やグラウンドに連れだした。そこで教師から借りたというビデオカメラを俺に持たせ、常に自分の映像をカメラに映せと強要する。俺があまり周りの生徒と仲良くすることが出来ず、彼の取り巻きに囲まれ怯えたように丸くなっているのが愉快だったのだろう。熊掌の取り巻きの生徒は皆スポーツや勉強が出来て、俺という存在がちっぽけに見える。それが彼の思惑通りだと理解しても、それを拒否することは勿論出来なくて、俺は周りから、それこそ熊掌の下僕だと思われていただろう。そんな不本意な称号を与えられながらも、むしろ熊掌は“嫌な奴”として孤立している俺のような者に、わざわざかまってやっている心の広いやつだと思われ、彼の評価は上がっていくばかりだった。

  熊掌は修学旅行等の班の中にも無理やり俺を混ぜた。特に中の良い友人には、「俺の召使だ。」と教え込み、俺に対して自分の荷物持ち等の雑用を強要する。唯一救いだったのは、俺に対して命令を行える権利が熊掌のみだった事だろうか。召使と言われても、彼の友人の世話まで焼かせるような事はさせず、むしろそんな事したならば怒りを露わにしていた。

  結局のところコイツはただ俺に対して嫌がらせをするのが単純に好きなだけなのだが、その際負の感情が自分に向いていないと気が済まない質なのだろう。そこまでして俺を陥れたいかと考えると、とことん性格がネジ曲がっていると思った。

  そんな修学旅行中、俺は熊掌に呼ばれ、宿泊していたホテルの屋上に来るよう言い渡された。どうせまた俺に対するイビリを延々の行う気なのだろう。そう思ってため息を吐きながらそこに向かう。

  屋上につくと、本来学生は立ち入り禁止になっているようで小さな看板が立てられていた。しかし行かなければまた何を言われるかもわからないし、彼がこうして俺を立ち入り禁止区域に呼び込み、教師に密告するという事も考えたが、それは奴の性格を考えるとないだろうと思った。熊掌ならそんな手は使わず直接俺をネチネチと責めるに違いない。俺はこっそりと中に入っていき、薄暗い階段を一歩一歩慎重に登っていった。屋上は明かりも灯されておらず、夜の月が照らす光と、街のネオンで埋め尽くされていた。なかなか綺麗な景色に目を奪われ、しばらくボーっと街を眺めている所で、後ろから誰かの声が聴こえる事に気がついた。

  「あはは、もう熊掌君ったらぁ…」

  「騒ぐなよ、教師に見つかるぞ。」

  それは紛うことなき熊掌と、そして誰か女性と思われる者の声だった。

  俺は驚愕し、慌てたように物陰に隠れて声のしたほうを覗き見る。暗くてよく見えないが、二人は楽しげに夜景を眺めており、ふと、会話の途中で熊掌がこちらを見た気がした。

  おそらくこれは仕組まれた事なのだろう、ともすれば、全く理由が分からないと困惑している所で、月明かりに照らされ、会話していた女子の顔が露わになった。

  (…っあの子は…!)

  その子は俺が密かに想いを寄せていた女子。クラスのマドンナ的存在で、ただいつも遠くから眺める事しか出来なかった俺の想い人。

  そう、熊掌は俺がその女子の事を好きだと理解しておりながら、あえてその子とこうして付き合っている事実を俺に見せ付ける為、人気の無い屋上に俺を呼び込んだのだ。

  俺が唖然と様子を眺めていると、おもむろに二人の会話が途切れる。聞こえてくるのは熱い吐息の音だけ、見れば二人は見つめ合い、そして……

  その先を覗くことは出来なかった。見れば立ち直れないと思ったのかもしれない。とにかく俺は口元を抑え、声を出さないようにしながらその場所を後にした。

  二人がその後何をしたのかは分からない。けれど熊掌が戻ってくるのは、それからしばらくしてからだった。俺は部屋で一人、すでにベットの中へとうずくまっていたけれど、熊掌が帰ってきた事は、同室の生徒との話し声で理解していた。

  「お、帰ってきやがったなぁ!おいおい、こんな時間まで何してたんですかぁ?」

  「へへ、俺聞いたぜ、五十嵐泉と屋上行ってたらしいな。」

  「……まぁな。……屋上でヤッてきたぜ。」

  その言葉を聞いた瞬間、俺の中で何かが弾けるような、そんな感覚がした。明らかに俺にも聞こえるようわざとらしい声色で呟いたその事実は、俺をまたあの絶望のどん底に叩き落とすには充分すぎる言葉だった。

  ワイワイとその事について盛り上がる生徒達に気づかれないように、俺はただ身を丸め、毛布の中で、早くこの地獄のような修学旅行が終わらないかと、ずっと祈り続けていた。

  熊掌と五十嵐泉は、その後しばらくして呆気なく別れたらしい。熊掌にとってもその程度の関係で、とりあえず童貞を捨てる為に選んだ女。そんな感じだったのだろう。熊掌にとってクラスのマドンナという存在は、いつでも選んで捨てることのできる女でしか無いという事だ。

  どちらにしても俺はもう彼女の事は想っていなかったし、けれど少しこの生活に疲れてしまって、尚更口数は減っていた。熊掌の体格に不釣合いな拳大の尻尾でさえ、少しでも視界に入ると堪えきれない怒りが湧き上がると共に、何も出来ない自分に諦めのような感情を持って、抵抗することも忘れていた。ただ俺は熊掌に浴びせられる嫌がらせを受け続け、その中で一人ポツンとそれを享受するだけの存在になってしまっていた。彼があの修学旅行のあと、俺に言った言葉は「好きになったやつさえ不幸にする」という事だ。全部コイツが仕組んだ癖に、まるでそれが俺のせいだと言わんばかりに、俺の心を深く傷つけようと何度も責めてきた。

  最近言葉で俺を貶める時間が極端に減ったからか、熊掌は俺を無理やりラグビー部のマネージャーに仕立て上げた。と言ってもやはりそれは熊掌の補佐をする事が担当で、例えば彼のドリンクを用意したり、タオルをもっていったり。俺は無口で、意図的に周りとの会話を避けていたし、話しかけられても逃げるようにその場を立っていた為、皆には「熊掌の背後霊」などと蔑まれていた。

  俺だって好きでこんな事しているわけじゃない!と声を大きく叫びたかったけれど、その時の俺にはそんな気力は勿論なく。

  だからだろうか、忙しさとそうした精神的苦痛から、俺は重大なミスを犯してしまったのだ。

  いつもの帰り道……だった場所。ラグビー部は遅くまで練習する為、もう辺りは真っ暗だ。その日も熊掌と二人、帰路に付いていた。

  本当は一緒になんて帰りたくないが、帰り道が一緒なのだから、時間が一緒になってしまったらこうして互いに顔を突き合わせて帰るしかない。修学旅行を除けば、昼休みも放課後もずっと部活やその他の用で歩きまわっていた熊掌は、この時間になると堪えていた鬱憤を吐くよう、畳み掛けて俺を責めた。

  「おめぇみたいな奴は一生人に飼われて生きてくしかねぇ。まぁ、Ωなんてめんどくせぇ奴、誰も欲しがらねぇがな。だがそんな奴でも、チームの士気は上がる。社会の底辺を見てたら、自分はそうなりたくねぇと努力するようになっからな。俺がおめぇの利用価値を上げてやってんだ、そんな風に扱われるだけ幸せだと思えよ翔。」

  「…………」

  まるで暗示にも似た言葉だ。熊掌の声は低く、唸るように脳を這っていく。その言葉は暗に一生飼い殺してやると言われているようで、でもこのままだと本当にそうなってしまいそうで怖くなる。ずっとこうしてコイツの言いなりになっていたら、俺はきっと……

  そう思っていた所で、唐突に熊掌の足が止まった。

  いきなり目の前を歩いていた巨体が足を止めたことによって、俺もぶつかりそうになりながらも、その場に立ち尽くす。熊掌の視線の先には森林公園。人通りが少ないこの地区にあって、視界も悪いため誰も近寄らない。街灯も建てられていないようなそんな寂れた公園だ。熊掌はこちらを見ること無く小さく呟いた。

  「おめぇ、そういえばまだファーストヒート初めてなんだって?」

  「……?」

  熊掌の言葉に、少しだけ額から汗が漏れる。ファーストヒートとはつまり、初めての発情期を刺す言葉である。なぜそんな事を聞くのか分からないが、とにかく何か嫌な予感だけが俺の頭によぎった。

  「こいよ。」

  「え……」

  熊掌がこちらをちらりと見下ろすと、不敵な笑みを浮かべながら小さく呟いた。そのままノシノシと公園に入っていく熊掌に、俺は困惑したままその後を追う。公園の中は街灯がある街の道路よりも真っ暗で、遠く反対側に至るまで見えない。俺は月明かりを頼りに、ただ前方を歩いて行く熊掌についていくしか無かった。

  公園の中腹、そこにあるベンチの前で熊掌が立ち止まると、今度こそ突然止まった熊掌の背中に、俺は鼻をぶつけた。「どんくせぇ奴」とつぶやく熊掌に、俺を鼻を抑えながらそれを見上げる。

  こんな所で何をするつもりなのだろうか。俺は熊掌から数歩距離を取って、彼と向き合った。

  「聞いたぜ?おめぇ、薬で発情期抑えてるんだってな。随分小狡い事やってんじゃねぇか。」

  「…………」

  「Ωなんてもんはαの奴隷だ。薬で無理やり抑えてたって、そりゃ自然の摂理に逆らってるってもんだ。」

  「…………」

  俺は答えない。何を言われようが、コイツに対して何か反応を返せば、コイツはもっとつけあがって状況を悪くしようとする。だからただ俺は視線を逸らしていつも通り熊掌の言葉を受け流していた。

  でも……

  「で……その薬ってのは、これのことだろ?」

  「……っ!?」

  熊掌が懐から取り出したのは、俺が持っていた筈の抑制剤。間違いない、専用のケースの中に入れているから、それが俺のだとしっかり理解できる。万が一落とした場合にも誰のものか分かるよう名字が記されているそれは、今熊掌の手のひらの中でカラカラと音を立てていた。俺は目を見開き、バッと熊掌の方を振り向くと、久しぶりに熊掌に対して喰らいかかった。

  「っ返せ!!」

  「おっと、返すわけねぇだろ。これはおめぇに必要のねぇもんだ。いっぱしにまともな生活なんざ送ろうとしてんじゃねぇよ。」

  「返せ!っ返せよ!」

  「へへっ…」

  俺が熊掌の身体にすがるよう腕を伸ばすが、逆に熊掌がそれを高く持ち上げてしまえば、どんなにそこで飛び上がったって届くことは無い。

  好きでも無い相手の身体に密着すると、漂ってくるのは部活で汗を掻いた熊掌の臭い。こちらがそれを奪い取れない事を良いことに、熊掌は今まで無いほど凶悪な笑みを浮かべ、俺を見つめていた。

  そしてそのときは訪れる。

  「かえっ…せ…ぁ…く…!」

  「おいおいどうしたぁ?顔が赤くなって来たぜ?」

  「ぅる…さぃ…!はっ…なんで…っ…今朝…薬…っ!」

  胸が熱く、苦しくなる。身体全体に巡る血が煮えたぎるような感覚がして、下腹部に何か疼きのようなモノを覚えた。身体は震え、力が入らなくなり、足がガクガクと震えて笑う。今にも倒れそうになるのを必死に堪えながら、今朝飲んだ筈の薬の効果が、もう切れてしまったのかと熊掌を睨んだ。

  熊掌は俺の手を掴み、そばにあったベンチへと放り投げると、屈んで俺の視線に視線を合わせ、不敵な笑みを浮かべながら呟いた。

  悪魔のような赤い瞳。ギラギラと暗闇に煌めく狂気。俺は胸を抑え、身体を丸めるようにして息も絶え絶えに熊掌を見つめる。

  悪い予感、それが全て、現実になる瞬間だった。

  「知ってっか?薬の効果が唯一効かない場合があるって話。」

  「はっ…はっ…」

  「運命の番のαって奴は、Ωの発情期を操る事ができんだ。」

  「くっ…あ゛…」

  「その発情期を操っちまえば、こんな薬なんか全く意味ねぇ。……ここまで言えばもう分かんだろ?」

  「は……そ…んな…ありえ…」

  「俺がオメェの“運命の番”って奴なのさ。翔。」

  「っ?!」

  熊掌の口から語られた衝撃の言葉。その言葉を聞いた瞬間、俺の瞳の奥の希望が全て消え去る音がした。

  目を見開き、唖然として絶望を露わにする俺に、熊掌は満足げな笑みを浮かべ、屈んでいた背を戻し、俺をずっと上から見下げた。

  「αの汗の臭いってのは、中でも結構Ωには強烈なフェロモンらしいぜ?それを密着して嗅がせりゃ、操る効果も倍になるってわけだ。…だがまぁ、こんな簡単に操れるとは思わなかったぜ。……もっかい試してみっか?こうして、俺がお前に触れながら…」

  「ふああああああああッッッ!!!!」

  「ハハハッ…やっべぇな…こりゃ…」

  熊掌がおもむろに俺の頭を鷲掴んだ。…たったそれだけ、それだけの事なのに俺の身体は、足先から頭のてっぺんまで言うことを聞かず、電流のような感覚に全身襲われた。

  目を見開き、口を大きく開けて叫ぶ。今まで熊掌に晒した事の無いような顔を晒し、それを見た熊掌もまた興奮に目をギラつかせた。

  今までどんなに事をしても自分の思い通りにならなかった相手。それが今顔を真赤に染め上げ、自分の裁量一つでこれをどうすることだってできる。それは熊掌がずっと願っていた事に他ならなかった。

  熊掌にとっても、ここまでとは予想だにしておらず、彼自身翔のフェロモンに当てられていた。身体が大きいとは言え実際はまだ多感な中学生である。こんな状況の相手を目の前にして、その欲望を抑えることは出来なかった。

  「……俺ははじめから分かってたぜ。おめぇが俺の運命って奴だってな。」

  「ひぁ……やだ…くるっ…な…」

  熊掌がベンチに座る翔の上へと、覆いかぶさるように身体を動かした。その目には血管が浮き出て、口からは荒い息を吐いている。熊掌の二回りも違う大きな身体を、翔はなんとか退けようとするが、もうそんな事で止まる段階はとうに過ぎていた。熊掌のジャージにはその大きく勃起したペニスが山を作り、先端をカウパーで濡らしている。目尻に涙を蓄えた翔と視線を合わせ、そして……

  「んむっ…んん゛ん!」

  「ん……む……」

  その大きなマズルが、翔の唇をゆっくりと覆っていった。

  二人は同時に目を閉じ、そしてその甘く熟れた唾液を交換しあう。互いにファーストキス、熊掌は実際の所修学旅行の夜、あの屋上で言ったような事をしては居なかった。それはただ翔を貶める為の嘘。本当は翔が逃げたのを見計らって、適当に話題を変え、そのまま別れたのだ。初めから翔の気が抜ける瞬間を見計らい、薬を盗んで動揺させ、こうする為に仕組んだ綿密な罠であった。

  熊掌は掴んだベンチの縁を壊してしまいそうになるほど力を込め、翔は熊掌の肩を強張ったかのようにギュッと握りしめる。拙く、不慣れなキスでありながら、息をするのも忘れてしまうほど長く、二人は深いディープキスを交わした。

  「ぷはっ…」

  「んはぁ…っ!っ…」

  数分間続いた長い長いキス。先に口を離した熊掌は、唾液で濡れた口元を拭い、相変わらず熱の篭った瞳で翔を見つめた。翔は虚ろな瞳で身体をビクつかせ、力の無い手でベンチに寄りかかった熊掌の太く獣毛に覆われた腕をつかむ。口は唾液で月明かりに照らされ、その下腹部で起ち上がるペニスは、ジャージをドロドロに濡らしていた。

  熊掌は辛抱たまらないと言った風にジャージの下を脱ぎ去ると、露わになった凶悪なペニスを翔の前に掲げた。それはビキビキと辛いほど起ち上がり、それでいて既に黒ずんでいるのは、彼が毎日のように擦りたてているからか。既に18cmを超えるそのペニスはグロテスクで、翔はゴクリと息を飲んだ。そこから漏れる強烈なフェロモンは、彼の汗なんて優しいと言える程強く放出されており、翔の鼻孔を犯していく。翔は首を力なく横に振り、それを拒否するが、そんなもの今の野獣のような熊掌には関係ない。あっという間に翔のジャージも無理やり脱がせられ、そして誰にも見せたことがない秘部を、熊掌に晒すハメとなった。

  「やだぁ…いやだっ…!らにする気だっ…やめろよぉ…!」

  「うるせぇ…観念しやがれ……おめぇはもう、俺の番なんだ…!今更あがいたって、変えることなんかできやしねぇんだ!」

  熊掌は翔の両足首を掴み、ぐっと持ち上げた。そうすると涙に濡れる翔のソソる表情も、そして自らの怒張を受け入れる為ヒクヒクと震えたアナルも、小さなペニスに至るまで、翔の全てが視界に入ってくる。ぺろりと上唇を舐めて、何度も夢にまで見たこの状況に、熊掌はただただ興奮を隠せなかった。いつも自らの下に翔を屈服させたいと思っていた。いつもその瞳を自らにだけ向けさせたいと思っていた。被虐に濡れた顔も、絶望に歪んだ表情も、その感情が向けられる度、心の奥底に眠る“何か”が疼いて仕方なかった。

  それも今日で終わりだ。ここで翔の中に自分を納めれば、そうすればもう、翔は正真正銘自分のモノになる。

  グッと亀頭の先端がアナルへと密着した。Ωのアナルは運命のαを受け入れる時に限り、裂けること無く柔らかい名器へと変貌するという。それが本当ならば慣らしなんて必要ない。慣らせるほどの理性も、もはや持ち合わせていなかった。

  遠くで翔の叫ぶ声が微かに聞こえる。それはもう、野獣と化した熊掌の耳には入っていない。

  ズチュルルッ―――!

  「っか――ッ!???」

  「うぐ…おぉぉぉおお!!!」

  先端が、まるで赤子の手のような、そんな亀頭の先が入っていく。肉を広げ、襞の形を変形させながら、熊掌のペニスの形に“成っていく”

  先端さえ入ってしまえば、後はもう猫の身体と同様だ。一番隊が先行している為、他の部分はズルズルと入っていってしまう。

  翔が言葉にならない言葉を吐きながら、口を大きく開け、弓なりにしなって首を大きく上に向けた。熊掌は柔らかいながらも自らのペニスを包み込み、離さないとばかりに吸い付く腸内に、歯を食いしばって眉間に皺を寄せながら耐えた。

  今にもどくどくと射精してしまいそうなほどの快楽。これが翔の中。そう考えるだけで、ビクビクとペニスは震え、尚更その硬度を増していく。

  ゆっくりと推し進め、到達したのはS字結腸。途中分かれた子宮へ続く道をあえて通らなかったのは、翔にまだ妊娠してもらっては困る理由があるからだ。

  だがしかしその分、直腸にはしばらく、熊掌のペニスの形をしっかりと覚え込んでもらうつもりだが。

  「へッ…全部…入ったぞ!!」

  「あ゛…❤ひあ゛❤…そんら…やら…❤」

  熊掌が息も絶え絶えにそう溢すと、翔は自らの腹を突き上げるペニスを見つめ、ガタガタと視線を震わせながら呂律の回らない舌で呟いた。グリグリと直腸の奥を無理やり押し広げられる感覚に、背筋から寒気にも似た何かが駆け上がってくる。熊掌がまた悪戯に腰を横に振るとその感覚が強くなり、翔はダラダラと涙を流しながら声を上げ、熊掌は額に汗をしながらニヤリと歯を見せてそれを見つめていた。

  「そこッ❤…らめッ!❤ぬいてッ…ぬいてぇっ!!❤」

  「抜いてほしいのか?どうなっても知らねぇぜ?オルァ!!!」

  「ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!❤❤❤」

  翔が力なく熊掌の腰を押しのけようとしながらそう叫ぶと、熊掌が口角を上げて一気にペニスを引き抜く。ズロロロロロ!!!と派手な音を立てながら抜かれたペニスは、翔の前立腺や襞を思いっきり引っ掻き回し、アナルから大量の飛沫を飛ばして地面を汚した。発情も相まってか痛みすら快楽になってしまう今の翔には、その衝撃は果てしないものであり、顎をブンとしゃくりあげ、ガクガクガク!と震え上がった。どうやら今の衝撃で絶頂に達したらしく、視界では白い火花が幾つも散っている。ベンチに突き立てられた熊掌の腕を、まるで死後硬直したかのような力でギュッと掴み、まな板に乗った魚のようにビクンビクンと身体を痙攣させていた。

  熊掌はその勢いのままペニスを引き抜き、そしてそのままベンチへと腰掛ける。いまだ痙攣し続ける翔を悠々と持ち上げれば、自らの上に跨がらせるよう座らせ、まるで向き合うような形をとって、そのまま自らの反り立つペニスを翔に勢い良く突き立てた。

  「あ゛あ゛ア゛あ゛あぁア゛あ゛ァ゛あ!!!❤❤❤」

  ペニスは一気に最奥であるS字結腸を突き破る勢いで刺激する。そうすると奥が刺激されることによって先程と同様背筋から駆け上ってくる絶頂感に身体全体が支配され、同時に熊掌のペニスを中で激しく引き締めた。どうやらココが弱点らしい。熊掌はそれをいとも簡単に理解すると、そのまま翔のモチモチとした尻を鷲掴み、艶かしくグラインドさせる事でそこを重点的に刺激する。

  「そごッ!❤やッ❤おがじぐにゃるっ!❤死んじゃうっ!死んじゃうぅぅぅぅ!!!❤ッ❤」

  「へへ、おかしくなっちまえよ!!オラ、ココが良いんだろうが!!」

  脳を掻き回すようなずっと続く絶頂感。ペニスからは常に何かが駆け上る感覚がし、翔は口から唾液を垂らしながら叫んだ。瞳をギュッと閉じ、その目尻から涙をダラダラと垂らし、この未知の感覚を止めてくれと懇願する。身を襲うその感覚に行き場を無くし、無意識の内に熊掌の首に腕を回して抱きしめてしまえば、それは熊掌にとって興奮を助長する要因となって、尚更責めを加速させた。

  とは言え童貞にとってこの快楽に耐えるのはなかなか難しい。いつも行っている自慰より何倍も興奮し、何倍も気持ちいい感覚に、流石の熊掌も限界が近づいてくる。おそらくこの快感が終わったら翔は気絶してしまうだろう。この瞬間を終わらせる事を、とても惜しく思った。

  「イクぞ!!しっかりと受け取れよぉ!!!」

  「やあ゛ァ゛アあ゛ぁあ゛ア゛あぁア゛アあ゛ア゛あっ―――❤❤❤」

  ドプッ!!

  一層強く、奥底へ。

  強く打ち付けられたペニスによって、今までで最も強い絶頂が、翔の全身を襲った。熊掌の身体をギュッと抱きしめ、そして何度も震えるペニスから、熊掌の濃い精子が直腸に叩きつけられる。尿道を駆け上る精子の感覚さえ直腸で感じながら、熊掌もまた両目を閉じその快感に震えた。

  自慰なんかでは感じることの出来ない絶頂感。そして、多幸感が熊掌を包み込む。いつもより大量に吹き出した精子が翔のアナルから漏れるのも気にせずに、熊掌はゆっくりと翔を正面に捉え、そしてまたマズルで覆うように深いキスを落とした。

  身体を襲う虚脱感に、そのまま目を閉じて意識を失う翔。

  翔が気絶しても、しばらく熊掌はその場で翔を抱きしめ続けていた。

  ――――

  ふと目を覚ますと、俺はとてつもない気だるさに襲われ、目だけを動かして辺りを見渡した。

  そこは見慣れた自分の部屋。窓から照らすのは眩しい太陽の光。ここで眠った記憶が無くて、そういえばこうなる前、何をしていたのだろうかと働かない頭で思考する。

  身体はジャージを着込んだまま。何故か痛む全身。そして最も違和感が強い場所。それは……

  「あ……あ……ああ……っ…!!」

  肛門から何かがとろりと垂れているような感覚がした。そして身体の中心。そこがジクジクと疼いており、それがきっかけで昨日あった事を思い出す。

  ――へへ、おかしくなっちまえよ!!オラ、ココが良いんだろうが!!――

  ――イクぞ!!しっかりと受け取れよぉ!!!――

  脈動するペニスの感覚、頭が焼かれるほどの絶頂。脳に響くのは、最も忌み嫌う相手の声。

  ドタドタと床を鳴らして風呂場へと向かった。途中母親が「おはよう。昨日熊掌くんが――」と言いかけた言葉も耳に入らず、乱暴に脱衣所の扉を開けて中に篭った。

  震える手でシャワーのお湯を出し、マズルを取り去ってそれを尻に押し当てる。

  「翔!?何かあったの?」

  「……やだ…やだ…やだ…やだ…んうぅ」

  尻の中に入ってくる温かいお湯。それはまるで昨日の感覚を思い出すようで、翔は気持ち悪さから口を抑えた。廊下の方から母の声がするが、そんなものは耳に入っていない。ガタンとシャワーが床に落ちて水を吐き続ける。翔はそこに手をついて、腹の奥底から湧き上がる異物をそのまま吐き出した。

  「うえぇ…っ!う゛ぇ…え…う…あ…うう…ううあああ…」

  吐瀉物と一緒に涙を流し、そして尻穴からはお湯と共に白く濁った水が吐き出された。もう既に種を付けられてから半日以上経っている。実際には子宮に出されたわけでないが、それだけ時間が経っていたら、子宮の方に精子が降りていっても不思議ではない。

  絶対に…絶対に熊掌の子供を孕んだりなんかしたくなかった。…でも今はもう、それが現実になりつつあって、怖くて怖くて身体が震えた。両肩を抱きしめるようにしてそれを抑えようとしたけれど、どんなに強く身体を抱きしめてもそれが収まる気配は全く無くて。

  もう一度お湯を腸内に流し込んだ。何度も何度も流し込んでは、それを全て尻から吐き出した。

  その日は結局…ずっと部屋の中に篭っていた。

  部屋に篭って一週間も経てば、流石に親も心配し始め、どうやら余計な事をしたらしい。

  余計な事とはつまり、熊掌を呼んで、何か俺の身に起こったのかと理由を聞いたのだ。

  勿論熊掌はそこで起こった事など素直に話すわけも無く、ラグビーの試合中誤って選手がフィールド外にいた俺に突っ込み、そこで気絶してしまってトラウマになっているのだろうと適当にでっち上げた話をした。

  俺の親も馬鹿なものだから熊掌の言うことならとそれを信じ、そして俺に何も言わずに熊掌を部屋に案内したのだ。

  当然俺は熊掌に会いたくないが為に学校を休んでいたのだから、内心穏やかではない。しかしそれでも部屋に入られた以上抵抗することは不可能で、相変わらず俺を見て不敵な笑みを浮かべる熊掌を、俺は強く睨みつけた。

  「一週間も休むとは、よっぽどショックだったみてぇだな。……俺が“運命”だって事」

  冗談ではない。それだけでなく、自らの体内に子種を蒔かれたのだ。今回ばかりはもう、立ち直る気力が無かった。

  「安心しろよ。おめぇを孕ますつもりなんざサラサラねぇ。まぁ良かったじゃねぇか、俺の性処理道具として利用価値が出来たんだから。」

  「ふざ…けんな!」

  俺は小さく震える声で呟いた。直腸とは言え中に出せば妊娠の可能性はゼロではない。もし直腸から子宮口に精子が流れていった場合それだけで発情中のΩは妊娠する。

  熊掌がベットへと腰を下ろし、そしてグイっと俺に身体を近づけた。俺は毛布で身体を守るようにしながら後ろに後ずさって身構える。本当は今にもこのまま崩れ去ってしまいそうな程、心は疲弊してしまっていて、熊掌は以前とは違い、明確な恐怖を伴った翔の視線に気がついているようだった。

  熊掌は小さく笑みを浮かべ、その顔に手を近づけようとする。ビクリと震え目を瞑った翔を見れば、そのまま片手で軽々と翔をベットへと押し倒し、そこに覆いかぶさるよう両手をついた。

  「震えてんぞ?怖ぇんだろ?」

  「ち、ちがっ…」

  「嘘つくんじゃねぇよ。言っただろうが。おめぇは始めっから俺の下僕になる運命だってな。さっさと受け入れた方が身のためだぜ?」

  「だ、だれがっ!―ひッ!」

  翔が言葉を放つ前に、彼を守っていた毛布がいとも簡単に取り払われる。そうされてしまうともはや翔を守る防壁は一つもない。目の前を覆う大きな身体に、いつしか身体はガクガクと震えて、以前熊掌にされた陵辱の記憶を身体が勝手に思い出していた。

  「いいか?明日からは必ず登校しろ。おめぇの親に約束しちまったからな。必ず登校させますってよ。」

  「ひっ…やっ…やだ!触るなよぉ!」

  「俺の言うことに逆らったら……分かんだろ?それとも、またみっちり身体に教え込むか。」

  「やっ!わかった!わかったからもぅやめっ!」

  「……言葉使いがなってねぇなぁ。やっぱ一回知らしめとくか。……ここにな。」

  「やっ!?ひぃぃぃぁぁぁ❤❤❤」

  熊掌の大きく無骨な毛深い手が、俺のシャツをめくりあげる。ゆっくりと撫でるようにその手は身体を這っていき、俺がジタバタと藻掻いても効果はない。ギラついた瞳が俺を真っ直ぐ見下ろしながら、低い声で呟かれる。ゾクゾクと首筋から伝わってくる振動に、やめてほしいと懇願するも、はじめからそれを中断するつもりなどない熊掌はニヤリと微笑み、そして俺の下腹部をその手で押さえると、運命の番、それを知らしめるかのように俺の中のスイッチを押した。

  「ハハハッ…相変わらずヒデェ顔してんなぁ。」

  「やめっ―❤…やめれ…❤…やだ―もうあれわ―っ!」

  身体全体が熱に包まれる。押さえられた下腹部が疼き始め、胸が苦しくなって、顔に血液が集まっていく。息は自然と荒くなり、瞳は欲情に濡れて、望んでいないにも関わらず、まるで相手を誘っているかのように見えた。

  こうなってしまってはもう自分で解決することは出来ない。どんなに心は拒否しても、目の前でこちらを見下げる熊に従うしか道は無かった。

  グイと顎を掴まれ、顔を正面に無理やり矯正される。ウルウルと熱に浮かされ惚けた顔を見れば、熊掌の中の支配欲がグングンと刺激されていった。目の前の人間を、ここまで操ることができる力。いつだって思い通りにできる力。朝練終わりで汗に濡れた身体は、強いフェロモンを発していて、熊掌は思いついたかのように翔を自らの胸に押し付けた。

  「ふむっ❤…ふー❤…ふー❤」

  「オラ…俺の臭いをしっかり覚えな。…この臭いを嗅いだらすぐおっ勃っちまうようにしてやるよ。嬉しいだろうが。」

  弾力がありながらも、鍛えられた胸元。そこから溢れんばかりに放出される雄のフェロモンに、翔の脳が支配されていく。これが熊掌の臭い。若く、それでいて青臭い男の香り。それが肺一杯に吸収されていく。

  力の無い腕で、その胸から自らの身体を遠ざけようと試みては居るが、臭いを嗅ぐ度に身体全体が溶けていくような感覚に襲われ、あくまでもΩはαに逆らえないのだと、そう言われている気がした。

  まるで獣の…いや熊の習性と言わんばかりに、自らの臭いを擦り付けるよう翔を抱きしめる。他の雄に、他のαには決して手を出させないとばかりに、自身の所有物である証を刷り込む。息が苦しくなって胸をたたき始めた所で、やっとその行為は終わりを迎えた。

  自らを押さえ込んでいた腕が離れると、そのまま仰向けにベットへと倒れた。既に全身に力が入らず、軽い酸欠のせいか瞬きすら億劫に感じる。熊掌は自らのズボンを乱雑に脱ぎ去ると、そこから取り出した大きなペニスを手に持ち、横たわっている翔の眼前に掲げた。相変わらず部屋中に広がるような男臭いフェロモンが翔の鼻孔を擽る。今そんなモノを出されたら……

  「何だ?そんな物欲しそうな顔しやがって…淫乱野郎。これがほしいんだろうが。素直に言えよ。」

  「はー❤…はー❤…」

  「オラ…俺のふぐりの臭いもしっかり覚えろよなぁ♪」

  「ふぐぅ……っ…んふぅ…❤❤」

  熊掌が竿をぐいと持ち上げ、自らの陰嚢を翔の鼻先にベットリと乗せる。まるで大きめの鶏卵ほどの質量を持ち、短い獣毛に覆われたそれは、翔の顔の形になぞって変形し、明らかに熊掌の身体の中で最も強いフェロモンを発していた。その臭いと質量は、この大きな身体を持った熊の、雄としての有能さを体現しているものだった。

  「舐めてぇんだろ?…本能に従えよ。おめぇはもう、Ωの性に逆らえねぇ。強いαを……いや…運命の番を無意識に求めちまってんだよ。」

  熊掌の言葉など認めたくはない。認めたくはないけれど、確かに今、翔は葛藤していた。

  口と鼻を覆うこの大きな陰嚢、それは本来ならば吐き気を催す臭いを発し、今にも顔からどけろと怒鳴り散らしたいくらいなのに。それなのに、この熊に命令されると、それに従わなければいけない気がしてしまう。

  この臭いは嫌な臭いのはずなのに、ずっと、ずっと嗅いでいたくなる中毒性があった。そのうえ舐めて身体の中に取り込んでしまいたいとも思う。そんな思考は自分の望んでいる事ではない。そう思いながらも、息を深く吸うのをやめられなかった。

  「舐めろ…!」

  熊掌がトドメとばかりに、睨みを効かせて呟いた。

  ビクリと翔の瞳が怯えたように震える。そして少しの沈黙のあと、諦めたようにゆっくりと、しかし着実にその行為を行う段階に踏み込んでいった。

  仕方ない…仕方ないことなのだ。ここから逃げることも出来ない、俺は不本意だけれど、この命令に従わなければいけないんだ。

  そう言い訳するように心の中で自分に言い聞かせた翔は、熊掌に言われるがまま、恐る恐る口を開き、そして……

  「ん…む…あ…ジュル…」

  「そうだ……クク…オメェは俺の命令にだけ従えばいい。」

  しょっぱくて、臭くて、口から胃の中まで全て雄の臭いに包まれる。でも一度口を開けて舐め始めると、不思議とその味を覚えた舌が止まらなくなり、無我夢中でそれを舐めることに没頭した。熊掌の金玉が呼吸するように蠢き、皺を一つひとつ伸ばすように舌で舐め回す。ザラザラとした獣毛が舌を撫で、まるで毛繕いするかのようにそれを整えた。

  「ククク……まだまだおめぇにゃ覚えてもらわねぇといけねぇ事が山ほどあんだ。…まぁ、今日はこれくらいにしといてやるよ。」

  「はー❤はー❤」

  自らの顔の上から持ち上げられた唾液に濡れた陰嚢。それを艶やかな表情で物足りなさそうに見上げる自身の瞳に気づかない翔は、その顔が如何に熊掌の可逆心を刺激しているか自覚していない。

  熊掌は自らのペニスの先端から垂れるカウパーを、今にも翔に吸い取らせてやりたい気分であったが、それはまたこれからの為に取っておこうと、なんとか理性でそれを押さえ込む。

  ただしその分、翔の下半身に目をやると、強引にそのズボンを剥ぎ取っては。

  「やっ―もぅ終わるって―っ!!」

  「ああ“奉仕”は終わりだ。…次は俺が楽しませてやるっつってんだ。嬉しいだろうが?」

  「やっ!やらぁっ!!――ごめんらさい!ごめんらさい!っあッ謝るからぁ!敬語使うからぁ―もっ―もう―っ!あ゛っ…❤」

  「関係ねぇっつうのっ!!」

  突如剥ぎ取られた衣服に、驚愕の表情をして、それを取り返そうと腕を伸ばす翔。しかしそのまま放り投げられたズボンはどんなに手を伸ばしても届かない場所に落ち、絶望に目を見開いた。自らの身体の上に陣取る大柄な熊の下半身には、ビクビクと震える巨大な逸物の影。その影と、熊掌の顔を何度も往復するように見つめ、自らの下半身を片腕で隠すようにする。空いた手で熊の分厚い胸板を懸命に押すが、徐々に迫ってくる身体に抗うことは出来ない。血走った瞳で鼻息荒くこちらに狙いを定めた獣を、止める手立ては何処にも無く、唯一の砦であった下半身を隠す腕も簡単に退けられた。

  以前と同様に涙を流し、なんとかやめてくれと懇願する翔に、熊掌は尚更興奮を露わにしてそれを拒否する。今度はもう、いちいち入り口で止まったりなぞしない。そのまま腰を一気に推し進めれば、一週間互いに忘れられなかったあの感触が記憶から呼び起こされた。

  「へっ…やっぱりおめぇの穴は俺様を受け入れちまってるぜ…なぁ?」

  「ぁ゛…か…❤❤」

  「もうおめぇの身体はっ―俺様のもんだ!!!」

  「ひあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!❤❤❤」

  直腸の1番奥、最も翔の弱い場所に熊掌のペニスはしっかりとフィットする。まるではじめからそう作られていたかのように嵌められたその場所から、全身を襲う寒気にも似た、いやそれよりも巨大な快感。ゴチュゴチュとうねる大木がもたらすその快感は翔の視界を不明瞭にし、身体が強張って図らずも相手を受け入れるかのような体勢を取った。自らの顔の横に添えられた両手を、熊掌がしっかりと掴む。手のひらと手のひらを合わせ、指を一本一本絡ませるような掴み方。つまりは恋人繋ぎで、しっかりとその手をベットへと押し付けるよう固定した。

  赤く蒸気した顔も、羞恥に濡れる瞳も、涙で煌めいた朱色の頬も。自らのペニスで腸内を突かれ、快感に身悶える姿は熊掌の欲望を尚更増大させた。

  もっと乱れさせたい。もっと喘がせたい。もっともっと快楽の坩堝へと相手を陥れ、そして全ての意識が自分へと向くように。

  熊掌もまた無意識に、翔へと深いディープキスを落とした。どうして今そのようにしたかったのかは分からない。けれどただ、翔の身体を包み込んで、自らの臭いと体液で全てを汚してやりたいと、そう思った。

  繋がれた掌、互いに強く、ぎゅっと握りしめる。まるで今だけ恋人になったかのような、そんな多幸感と一緒に。

  程なくして、熊は快感に歯を食いしばり、射精を迎える。

  一週間、溜めに溜めた雄の精子は、翔の中を溢れさせるほど、ドロドロと、ネットリとそこを満たしていった。

  まるで臭いをつけるように、自らの所有物だと知らしめるように、しばらく抱き合い、そして射精後も何度か腸壁に精子をこすりつける。ビクビクと震えた陰嚢、その中にある全てを吐き出したのではないかというくらいの量を放出し、やっと抜かれたペニス。それに釣られ、黄ばんだ精子がベットを汚した。

  簡単に後始末をし、気絶した翔の首筋に真剣な表情で顔を近づけた熊は、そこに軽く牙を突き立てる。

  少しだけ痛みに身じろいた翔を尻目に、熊掌はまだまだ猛る獰猛な性欲と支配欲をなんとか理性で押さえ込みながら、名残惜しそうにゆっくりとその場を後にした。

  ――――

  俺達が高校に進学する頃になると、熊掌の無茶苦茶な要求は、日増しに酷くなっていた。

  熊掌は虐めや言葉での責めを表立って行わなくなった代わりに、学校や帰り道、はては部活中等、グラウンドの人目につかない場所で俺を辱め、陵辱するようになった。

  熊掌は俺が拒否しようとすると、直ぐに発情のスイッチを操作し、無理やり意思を捻じ曲げる。体育館の裏や誰もいない部室、まるで動物のように所構わず、興奮したらそれを発散すると言わんばかりに、至る所で俺の身体を求めた。そのせいで、俺の身体は熊掌の良いように開発され、乳首や耳、尿道に至るまで、全て熊掌の手で性感帯に変えられた。今ではもう、発情しなくても身体中は敏感に反応してしまうようになり、周到に熊の臭いを覚え込ませられたせいで、熊掌の臭いを嗅げば勝手に身体が発情期を迎えたように熱くなった。

  何の理由かわからないが、身体中熊掌に噛まれた跡が残っている。彼は興奮がクライマックスに達すると、良く俺の首筋や腕、背中等を噛む癖があった。お陰で俺も噛まれるとそこがジクジクと熱くなり、それが収まらない間は性感帯のようにその部分が疼いた。

  これは個人的な認識だが、おそらくストレスによるものなのではないかと感じていた。熊掌は小学校から続けていたラグビーの選手として注目されるようになり、日に日に練習量も多く、そして期待も沢山寄せられていた。その癖学年でもトップの成績を維持し、生徒会役員としての仕事も任され、周りは熊掌をなんでもできる優等生だと決めつけていた。彼は俺以外の前ではまるで別人のような立ち振舞をする。俺と二人になった時なんて、言葉使いから粗暴を極めているというのに、他人が居る所ではセリフは変わらずともどこか爽やかな空気を身にまとう。身長も中学から随分と伸び、2mを超えるようになった。獣の血を宿す身体は日々繰り広げられる過酷な練習でがっしりどっしりとした重量の感じられるものになり、無骨ですこし丸い、眉すら整えることのない男臭い顔である筈なのに、女子にも男子にもよくモテた。熊獣人の宿命からか腹が出て、それでも内包する筋肉は他の選手とは比べ物にならない。ガッチリと、そしてむっちりとした身体は着実に成人へと向かっている証拠でもあった。

  だがしかし、そんな尊敬の眼差しを向けられているからか、俺と二人きりになると、以前とは比べ物ならないくらい彼は俺を見下した。もうこちらが何を言っても全てシャットアウトされ、前に彼が言い捨てたような“性奴隷”という立ち位置がしっくりくる所に収まってしまったように思う。

  熊掌にとって俺は自らの猛る精力を発散する為だけの存在。どこでもいつでもそれができるように、半ば無理やりマネージャーという立場を取らされているだけの奴隷である。

  相変わらずスポーツに青春を捧げたようなラグビー部の生徒達は苦手だったし、話題も下品で低レベル。それなのに俺はそんな奴等に見下され、こうしていつも通り、熊掌の背後霊と言われ罵られていた。

  「あッ❤やッ❤あ゛ッ❤い゛❤らめッ❤イッ❤うぅぅ❤」

  「ふッ―くッ!そろそろイクぞ!しっかり受け取れよぉッ!!!」

  「ふう゛うぅう゛うぅう゛うう゛!!!❤❤」

  校舎裏の人気がない雑木林。俺はいつものように熊掌に犯されていた。

  壁に手を付き、ズボンだけを降ろされて、後ろからガツガツとペニスを突き立てられる。俺は口の端から唾液を垂らし、蕩けるような強烈な快感に歯を食いしばって耐え、しかしそれでも開発されきった身体は観念したように絶頂した。自らの勃起したペニスの先からダラダラと小便のように透明な汁が溢れ、地面に栄養をおくる。一層強く最奥まで突き立てられたかと思えば、その瞬間には既に熱い精子が自らの身体の中へと注ぎ込まれていて。

  「あ゛…❤…あ゛…❤」

  「ふぅ……」

  ズルリと勢い良く抜かれたペニス。その反動がスイッチとなるように、強張った身体全体の力が抜けていく。ガクガクと生まれたての仔馬のように震える足、支えられない身体がその場にペタリと座り込んで、その瞬間、アナルからゴポリという粘着質な水音を立てて、大きな精子の塊が地面に白い水たまりを作る。

  地面から生えた雑草がチクチクと下半身を刺激しても、すぐ立ち上がることは到底出来ずに、今や毎日のように流している涙で地面を濡らした。

  「16時半からいつも通りミーティングだ。遅れねぇでさっさと来いよ。」

  カチャカチャとズボンを履き直し、こちらに向かって吐き捨てるように呟いた熊掌の足元で、俺は自らの涙を制服の裾で拭った。こちらに見向きもせずその場を後にする熊掌は、あからさまにスッキリしたという表情で、ポケットに手を入れながら上機嫌で部室へと向かっていく。俺はまだポタポタと漏れる涙と鼻水を何度か啜りながら、制服の胸ポケットに常備しているウェットシートを取り出し、汗や精液で濡れた身体を拭いていった。こんなモノをいつも持ち歩くようになってしまったのは熊掌のせいで、そしてそんな熊掌の為にこうして自ら後処理をする為の道具を持ち歩いている事に嫌気が差した。

  しばらくして、やっと自らの尻穴から溢れる精子をだし尽くし、それでもまだ中に残る異物感に腹を押さえながら、壁伝いに校舎裏から離れる。遠くの方では、すでに練習を始めている部活動の活発な声が聞こえ、これからまた熊掌のマネージャーとして部活動に向かわなければいけないのが酷く億劫に感じた。

  今、このまま、この場所からどこか遠くへ逃げ出すことが出来たらどんなに気持ちが楽になるだろう。産まれた時から決められた運命という奴に雁字搦めにされて、もはやそれは修正の効かないところまで来てしまっている。自分はこのままあの熊の良いように扱われて人生を終えるのだろうか。運命の番という事は、本来自分は、熊掌と結婚し、子供を産んで、彼の妻として生活しなければいけないのだろう。でも、それは最も望んでいない事で。

  「碧海!」

  「……?」

  俺がふとそんな事を思案し、ラグビー部の部室に向かう為に部室棟へと向かっていた時だった。後ろから誰かに声を掛けられたのは。

  まさか俺に声を掛ける人物が居るとは思えなくて、恐る恐る後ろを振り返る。少し遠くの廊下の真ん中で、こちらに手を振る人の影。

  「ちょうどよかった。碧海、お前に話したい事があってなぁ。」

  そこに居たのはこの高校で、現代文の授業を教えている教師の虎山だった。でっぷりと太った中年の虎獣人の男で、眼鏡を掛け、虎獣人にしては冴えない見た目をしたやつれ気味の教師である。現に今も少しこちらに駆け寄ってくるだけで額から汗を垂らしており、荒く息を吐いている。

  俺は訝しげな表情で駆け寄ってきた虎山を見上げると、彼は少し息を整えるようにしてから小さくつぶやいた。

  「碧海、お前、なんだか悩んでる事があるんじゃないか?」

  「……っ…なんですか…突然…」

  虎山の言葉に不意の図星を突かれ、俺は突然の事に動揺を悟られないよう必死に無表情を装った。

  まさか熊掌と学校中で行為に及んでいる事がバレてしまったのだろうか。…いや、しかしそれならもっと別の場所で密かに話しかけるだろうし、こんな大っぴらな場所で、不純同性交遊について話はしないだろう。

  ただ今は、その話でないことを祈りながら、虎山の言葉に耳を傾けた。

  「ハハ、すまんすまん突然で悪かったな!…いやな、お前がΩだってこと担任の先生に聞いてなぁ。あまり日頃から元気が無いようだし、お節介だと思ったが、とても気になってしまってな。……ここだけの話、先生もΩで、子供の頃は凄く苦労したもんだ。発情期はもうホント大変だろ?……俺もなぁ…番が居てくれたから良いものの、あの頃は大変だった……俺の番は先に逝っちまったが、アイツのおかげで今はもう発情しない。それでも大変さは分かってるつもりだ!!高校生ってのは多感な時期だろ?……どうだ?…今も少し浮かない顔をしているし、なんなら先生、相談に乗るぞ?」

  「…………」

  どうやら熊掌と俺の関係については何も知らないらしい。虎山の言葉からそう感じた俺は、ひとまずホッとしたように胸を撫で下ろして息を吐いた。どうやらこの教師は、俺が日頃から暗い生徒であること、そしてその性がΩであることを聞きつけ、自分の過去と照らし合わせたのだろう。特にこの教師は確か40を越えていると聞いた。20年以上前のΩ差別はおそらく、もっと過酷だった事は容易に想像が出来た。

  だがしかし、それが相談をする理由にはなりえない。むしろこの教師が何かした所で、事態が好転するとは到底思えなかった。仮にこの教師に今の事態を説明して、熊掌に注意でも行えば、この男が見ていない場所で酷い仕打ちを受けるのは俺自身だ。そう考えると相談なんてできるわけも無かった。

  「特に…ありません…」

  俺は小さくそうつぶやく。ここで救われる人生ならば、これまでずっと苦労してきていない。

  「…そうか。…例えば誰かに口止めされたりとかはしてないよな?」

  「…………」

  「………俺はいつも、お前の事しっかり見てるから。…何かあったら、俺に相談しろよ?…大丈夫…秘密は守るからな。」

  俺は小さく頷いて、それを見た虎山は小さく困ったように笑うと、そのまま踵を返して去っていく。とても優しい教師だということは伝わったし、きっとその言葉に嘘偽りは無いのだろう。

  ……もしもっと早く、俺がこの教師に出会うことが出来ていたら、事態は好転していたかも知れない。

  けれどそれはもう、届かない願いであることだけは確かで。

  ただ俺は気付くことが出来なかった。

  今の会話を遠目で覗く、一つの影があったことを。

  そしてその影が、手にした携帯端末で、誰かに何かを送っていることも。

  気が付かなかった。……気が付けなかった。

  やっとアウェイ感の拭えないラグビー部の練習が終わり、部員が解散する時間となった。男達はロッカールームで人目も気にせず全裸になり、鍛え上げられた身体を晒している。タオルで身体全体を拭き、ボディーシートで汗のべとつきを拭い去って、ガハガハと股の間の雄を揺らしながら笑いあっていた。

  俺は一人、目のやり場に困りながら部屋の角で身を丸くしている。熊掌は俺がこうした体育会系の恥じらいが無い様子を眺めるのが苦手と知っておりながら、わざと部屋の中で俺を待機させ、その顔を見て後で愉快だったと俺を責めるのが好きだった。昔は別にこんなもの見たって何も感じなかったのに、最近は熊掌のペニスを舐めたり、頬張ったり、突かれたりしているせいで、他人のモノにもいちいち反応してしまうようになっていた。

  「はえ~…やっぱ何度見ても熊掌のちんこでっけぇなぁ…つーかまたでかくなったんじゃねぇか?」

  ふと、着替え途中の熊掌の股間を見て、自らの股間と交互に見比べながら感嘆するように呟いた狼の獣人。狼のペニスも決して小さくは無いのだが、熊掌と並んでしまうと、その大きさは一目瞭然だった。狼の言葉に、熊掌は不敵に微笑んで片方の口角を釣り上げる。チラリと目線だけ動かして俺を一瞥し、そして直ぐに狼の方へと向き直った。

  「まぁな。…実際、コイツで突かれた雌は泣いてヨガり狂ってるぜ?」

  その言葉の“雌”とはおそらく、俺のことなのだろう。熊掌は遠回しに俺がいつも酷い顔で喘いでいるという事を公衆の面前で言いふらし、俺の羞恥心を煽っているのだ。がっしりと自らの陰嚢を持ち上げ揺らし、自らの雄を自慢げに見せ付ける熊掌に周りの目は狼以外も釘付けになる。

  「ご、ゴクリ……だろうなぁ…そんなんで突かれたら誰だってアヘっちまうよ。」

  「…クク…そうか?…そんなに気になるなら試してみるか?」

  「えっ!?」

  まるで獲物を狩るような、心を見透かしているかのような、そんな瞳で相手を見つめながらそう呟いた熊掌に、流石の狼もドキリと尻尾を伸ばして驚きを露わにした。その表情にはなんとも言えない男としてのエロスが混じっていて、同じ男であるはずなのに、狼の心を鷲掴みにするには充分な威力を発揮する。

  「………ガハハッ!冗談だよ。」

  「だ、だよなぁ!!アハハハ!」

  「馬鹿な事言ってねぇで、さっさと着替えろよ。」

  少しの沈黙の、唐突に吹き出しながらそう呟いた熊掌に、周りも釣られるようにして笑い。しかし狼は少しだけまんざらでも無かったようで、誤魔化すように笑いながらも、その顔は少し残念そうに見えた。

  ふと、周りが賑やかさに包まれている間、また熊掌と視線がかち合う。その目は相変わらずこちらを小馬鹿にしたように細められていて、俺はまるで何も気にしていないと言うように視線を逸らした。

  そうだ、別に熊掌が俺以外の男を抱いたって、そんなものは関係ない。勿論それが女であっても、むしろ自分に視線が向かなくなる分都合が良いとさえ思っている。…思っているのだから、もうそれでいいのだ。深く考えれば考える程なんだかよくわからないドツボに嵌りそうな気がして、そこで無理やり思考を中断した。

  部員が帰った後の誰もいない部室。既にこのチームの信用を得ている熊掌は、「やりたいことがあるので自分が部室の戸締まりをしていく。」と一言言うだけで、なんの疑いも無く鍵を渡してもらえる存在だった。

  だからこの場所で最後、熊掌に呼び止められても。…この後何が行われるのか分かっていても。俺はそれを拒否することが出来ない。明日が休日である事を考えると、きっと今夜は朝まで開放されることは無いのだろうと、どこか諦めに似た面持ちで思った。

  「こっちに来い。」

  「…………」

  「……座れ、ここだ。」

  部室の内側から鍵を掛け、それと同時に長椅子へと座った熊掌が、後ろから神妙な面持ちで声を掛けてくる。自らの股の間を差し、座れと呟いた熊掌に、俺は恐る恐る近づいてそこへと腰を掛けた。熊掌の大きな身体に抱き込まれるかのような体勢で、彼は自らのスマホを俺の身体を挟むようにして操作すると、ある一つの画面を開いた。

  「見ろ。」

  「……これ…は。」

  画面に映し出された映像は、どこか薄暗い部屋のような場所だ。…体育…準備室…だろうか。バスケットボールの入った大きな籠に、跳び箱、埃を積み立てていそうなマットが敷かれており、中央には何やら別の影も見えるが、それが何なのかは、この暗闇では分からない。

  画面右上には赤い文字でLIVEの文字。ただしこの放送はプライベートの設定になっているようで、来場者数は1名、つまりこの端末だけのようだった。

  <始めろ>

  熊掌が画面をタッチし、コメントに書き込むと、程なくして画面が明るくなる。おそらく電気を付けたのだろう。やはり予想していた通り場所はどこかの体育準備室のようで、もうどのくらい使われていないのかわからない用具が乱立している中で、画面中央、その場所に“それ”は居た。

  「…な…っ…」

  画面中央に居たのは、荒縄によって身体全体を縛られた虎獣人の男だった。

  男は目隠しをされ、猿ぐつわで声も出せない状態にされながら、腕を後ろ手に縛られ、身動きが取れない様子にされている。なんとか身じろぎして縄を解こうとしているのは伝わるが、脂肪に覆われた身体に食い込む程強く結ばれている縄だ、そんなもの意味が無いことは明白であり、男はうーうーと言葉にならない声を響かせていた。

  虎は上半身ワイシャツとネクタイ一枚、下半身には穴の空いた靴下一枚以外何も着用して居らず、股は無理やり広げられるように縛られ、くるぶしと太ももを雁字搦めにされていた。胸はワイシャツの上からでも乳首が露出し、まるで乳房があるように見える程強く縛られ、汗のせいで薄く体毛が透けて見えている。

  翔には、その虎の男に見覚えがあった。

  忘れるわけはない。つい今日の放課後あったばかりなのだ。服はワイシャツにネクタイのみだが、あのネクタイの模様には見覚えがある。それに虎獣人特有の縞模様が、今日見たあの男と一致している。

  ……間違いない。男はこの学校の教師である、虎山である。

  「な、何してるんだこれ!…ヤバイんじゃないのか!?」

  「黙って見てろ。」

  俺は流石に怖くなって、熊掌を見上げながらそう叫ぶ。しかし熊掌は全く気にした様子も無いまま、淡々とそう答えるだけで、俺は尚更怖くなった。

  まさかコイツは教師にまで手を出したのか?それはおそらく事実であり、画面の中では二人の男がゆっくりと虎山に近づいていくのが見えた。

  一人は屈強な体格をした牛。俗に言うバルク体型というのを体現したかのような、筋肉に覆われた男。

  一人はふくよかな体格の猪。どちらかと言うとガチムチ体型に近いその身体は、プロレスラーのようにも見えた。

  牛の男が、虎山の猿ぐつわのみを強引に取り去る。するとスマホのスピーカーからは、やはり虎山で間違いないだろう声で抵抗の言葉が聞こえた。

  『「お前ら何者だ!こんな事して許されると思ってるのか!?一体何が目的だ!…すぐに警察に捕まるぞ!!」』

  「……うるせぇ男だ。」

  虎山の畳み掛けるような叫びに、画面を見ていた熊掌が小さく呟いた。俺は今、なぜこんなモノを見せられているのか全く分からず、困惑に脳がついていけない。

  牛と猪の男はずっと無言で、まるでロボットのように虎山を持ち上げると、天井に吊り下がって居たフックへと縄を引っ掛け、彼を宙に固定した。

  まるで精肉工場で吊られる肉のように、虎山が宙に浮きながら喚き散らす。何故か正面から吊るわけでは無く、カメラの映像から真横になるよう吊るされた虎山は、足をM字に開脚し、全てをさらけ出す格好となる。ただし状態が真横なので、ペニスと陰嚢は足の影に隠れてほとんど見えない。

  そこまで様子を眺め終わって、やっと熊掌がこの映像を見せている真意を語り始めた。

  「おめぇ、この男と何話してたんだ?」

  「っ…は?…な、何も話してない!」

  「嘘つくんじゃねぇよ。おめぇがコイツと話してた所見たって奴がいんだよ。」

  「…お前…っ!…俺は何も話してない!この人は無関係だ!」

  「……ふん。…そうかい。」

  <続けろ>

  画面にコメントが流れると同時に、二人の男が虎山を囲むよう動き始める。周りの気配を察したのか、虎山が頭を四方八方に振り回し、牙をむき出しにして威嚇した。

  映像で見れば猪→虎←牛という順番に横並びしている。猪の方が虎山の正面、牛の方が虎山の背面と言う構図だ。

  ガラガラガラとチェーンが引っ張られ、虎山の身体がどんどんと天井に近くなる。そしてちょうど牛の頭が虎山の尻の高さになった所で、おもむろに牛がそこへ口を近づけた。

  『「んひッ!!!❤」』

  虎山の驚いたような、間抜けな声がスピーカーから木霊した。

  そこは虎山のアナル。牛はなんと、虎山の尻尾を根本から掴み上げ、そしてそのアナルへと、長い舌を挿入し始めたのだ。虎山はマズルを大きく縦に広げ、言葉にならない言葉を放つ。ズジュルっジュゾゾゾゾ!とわざとらしく卑猥な音が響き渡り、虎山の耳も、翔の耳もその音に犯されているようだ。

  『「ひぎッ!❤な、何やってッんお゛ッ!❤あ゛ッ!?やめッ!そんなッ❤とこまれ!?❤そごマンゴッ!!❤まんごらめぇぁぇぁぁ!!!❤❤❤」』

  そう言えば虎山はΩなのだと言っていた事を翔は思い出す。つまりは翔と同様に彼には子宮という器官が備わっている筈で、きっとそれを牛の長い舌で、ネットリ、そしてじっくりと舐め回されているのだろう。そう思うとまだ犯された事は無いはずなのに、翔の子宮もジンワリと疼いている気がした。

  牛の舌は長く太いと有名だ。この牛も例に漏れずそうなのだろう。牛の舌が挿入された穴からは、止めどなくポタポタと水滴が垂れており、唾液の啜る音が、虎山の嬌声と混じって聞こえてくる。

  虎山は開けた口からダラダラと唾液を飛ばし、ジタバタと子宮をほじくり返される快感に藻掻いていて、縄に縛られている突き出た中年の腹がブルブルと震えていた。

  『「あ゛ッ!?❤あ゛ッ!?そごダメッ❤そこダメッ❤なとこらからッ!?❤おかひくッ❤イヒィん❤なっちゃうとこらからぁぁぁ!!!❤ッ――――ッんほおおおお!!!❤❤❤ポルチオらめぇぇぇぇぇ!!!!!❤❤❤」』

  牛がギュッと虎山の尻を掴んで、目一杯そこを広げて固定する。おそらく最奥まで届いたのだろう。この男はΩの弱い所をしっかりと理解しているからこそ、重点的にそこを責める為に身構えたのだ。事実、その瞬間虎山の身体が大きく震えて強張った。唯一自由に動かせる頭を天井にしゃくりあげて、呂律の回らない言葉を叫び始めたかと思えば、瞬間、その身体には不釣り合いの小ぶりな包茎ペニスの先端から、勢い良く潮を吹き出す。ギシギシと虎山を釣り上げているフックが軋む程音を立て、全身の震えが強まり、おそらく絶頂しているのだろう。牛はそれでもしっかりと虎山の尻を固定して、絶頂し続ける虎山のポルチオを執拗に責めているのがよくわかった。

  『「あ゛あ゛あ゛ぁアあ゛ぁあアあ゛ア゛ぁ゛!!!!!❤❤❤」』

  終わらないオーガズムに、虎山の叫びが木霊するのを見て、翔はもう見ていられないと視線を上げ、熊掌に縋るよう懇願した。

  「もうやめてくれ!本当に何も話してないんだ!この人は関係ない!」

  「グハハ!おめぇも俺様とヤッてる時はこんなんだぜ?Ωっつうのは皆こうなのかねぇ。」

  「俺たちの事だろ!!関係ない人を巻き込むなよ!!!」

  「…あ゛??……最初に他人巻き込んだのは、おめぇだろ。」

  「……ッ!」

  熊掌の喉からこれまで聞いたことの無いような驚くほど低い声が出る。次いでギロリとこちらを睨んだ瞳はどこか狂気のようなモノを孕んでおり、流石の翔もその威圧感に息を飲み、言葉を閉ざすしか無かった。

  こちらがそんな懇願をしている内にも、どうやら熊掌はコメントで指示を送っていたようだ。相変わらず牛は舌で中年虎のアナルをこれでもかとネットリほじくり返しているのに加え、今度は今までそれを傍観していた猪も動き始める。

  猪はおもむろに虎山の前に移動すると、虎山の中年ビール腹に隠れるよう陥没した包茎チンポに手を伸ばした。ただ予想だにしなかったのは、向かう先が虎山の竿ではなく、陰嚢の方だった事だろうか。虎山のチンポはなんとか太さが平均的なくらいで、長さも陰嚢の大きさも小さい。どうやら現状勃起しているようだが、それでも皮が余りまくってドリルのように先端を覆い隠しているし、勢いがあるのは今現在吹き出してる潮くらいのものだろう。おそらく彼の性器が陰嚢も含めて小さいのは、Ωの雄の生殖能力がほとんど無いに等しいからで、世間一般的に言われている通り、“産む”事に特化している為だ。

  猪はそんな虎山の陰嚢をつかむと、それを強く引っ張り握りしめた。途端に今まで快楽だけを狂うほど与えられていた虎山の顔が、悲痛に歪む。まるでクルミをこすり合わせるようにゴリゴリと掌で金玉を転がされる感覚に、虎山はまた別の意味で絶叫した。

  『「いぎぃあ゛あ゛あ゛!!!!づぶれ゛るッ!!きんだま゛づぶれぢまうぅ゛ぅ゛!!!!」』

  「ガハハ!!こりゃあ傑作だなぁ!…まぁいいだろ、どうせ子供なんか自分の意思じゃ作れねぇんだ。潰れちまったって何も変わんねぇよ。」

  『「んがああ゛ああ゛ああ゛!!は、は、離じでぐれぇえ!!ほ、ほんどに潰れぢまうッ――あ゛あ゛あ゛ア゛!!!」』

  尻穴からもたらされる止めどない快楽と、金玉からもたらされる想像を絶する痛み。相反する二つの感覚に脳が異常をきたしたのか、虎山のペニスはずっと萎えることをしなかった。むしろペニスは先端から精子をドロドロと垂れ流しており、おそらく生命の危機を感じて子種を吐いたのだろう。猪はそれをジュッポリと口に含み、ペニスもろとも味わっていた。

  「やめろ!!こ、こんなに苦しんでる姿見て、何が面白いんだ!!」

  「おもしれぇに決まってんだろ?……無様だよなぁ…どうせ価値のねぇ金玉の癖に大事にしやがって。………おめぇらは産まれた時から雌だ。だからこんなもんさらさら必要ねぇんだよ。…何ならおめぇの金玉も、俺様が直々にぶっ潰してやろうか。そしたらもう俺に逆らう気なんざ起こらねぇだろ。」

  「……ッだから――俺は何も話してないって言ってるだろ!!なんで…なんで信じてくれないんだよ……!!!」

  「…………」

  もう本当に見ていられなくて、ギュッと目をつぶり顔を逸らす翔。しかしそれを許さない熊掌は無理やり翔の頭を正面に固定し、まざまざと虎山が陵辱されるディスプレイを見続けさせた。堪えきれずに腕を振り払い、熊掌を見上げて叫ぶ翔に、熊掌は凶悪な笑みを浮かべるだけだ。

  もう何を言っても無駄なのか。目の前で無実の罪を着せられ、自分のせいで陵辱される相手を眺めている事しか出来ないのか。そう思って拳をギュッと握りしめ、その場に項垂れるが、熊掌はそれを冷たく見下げるだけで、この狂った陵辱をやめるつもりは毛頭ない。

  <殴れ>

  その指示と共に、尻を舐め回していた牛の男が動き出す。ズロロロロと取り出された舌は、まだ出てくるのかと思うほど長く、そして太く、こんな物が尻の中を動き回っていたのかと思うと、その感覚は想像を絶する。ジュポンと取り出された舌と同時に、最後虎山が短く潮を吹き絶頂する。猪も一旦玉を弄る手を止め、ガラガラと虎山の身体が下がっていった。

  『「あ゛…❤お゛…❤」』

  断続的に声を出し、痙攣を続ける冴えない虎の中年。目隠しはさんざん流した涙でびしょ濡れになり、顔の獣毛もつやつやと光沢を放っていた。今度は正真正銘、虎山の身体がカメラから正面を捉えるよう位置を調整され、M字で股を開いた無様な姿を素直に晒す。「も…やめれくれぇ…❤」と息も絶え絶えにつ呟く虎に対して、牛の男がおもむろに拳を勢い良く腹に突き立てた。

  『「ごぉふぉ!!!!」』

  「ひっ…ッ!?」

  突き出た腹に、牛の太く筋肉質な腕がめり込む。突然の衝撃に口から大量の唾を吐き出し、肺が潰れたような声を出した虎山に、翔は思わず両手で顔面を覆い、その様子から目を逸らした。

  一撃で終わらせるつもりはない。次は猪がゆっくりと虎山の前に歩を進めると、勢い良くその腕を、虎山の腹へと突き出した。

  『「ぼぉえっ!!!!」』

  「オルァ!目ぇ逸らさねぇでちゃんと見ろ!!おめぇが招いた事態だ!!終わらせたかったら全部吐きやがれ!!」

  熊掌が俺の顎を強く掴み、そして画面へと無理やり顔を動かそうとする。俺は惨たらしい惨状を見たくない一心でそれに必死な抵抗を表し、頭を激しく左右に振った。それでも熊掌のグローブにも似た無骨な手が俺の顔を固定してしまえば、何度も何度も牛と猪に交互で腹を責められる虎山の姿が目に入り、俺は大きな雫をボロボロと目尻から溢れさせた。

  「ほんろに――ッ!!ほんろにッらにも喋ってらい!!もう許してくれよぉ!!」

  顎を掴まれている為に口元が歪み、呂律の回らない舌で必死に言葉を放つが、熊掌はそれを聞き入れようとしない。むしろ、俺が初めてこれほどまでに抵抗しているのを見て歪んだ笑みを浮かべており、この醜悪な行為を、尚更助長している気がしてならなかった。

  <次だ>

  虎山が腹を責められ続け、精子と一緒に胃の中の物まで吐き出してしまった後、熊掌がコメントでまた指示を出す。俺は熊掌の胸元に顔を埋め、嗚咽と涙を出しながら、ただ縋るように懇願し続けていた。

  熊掌は翔が自らの意思で胸に擦り寄ってくる事にどこか優越感を感じていた。いつもならば行為の最中でもこうして擦り寄ってくる事は珍しく、素の状態でここまで密着された事は無いに等しかった。当然の如く、もはや翔から実際の会話内容を聞き出すよりも、この状態を楽しんでいる感情の方が大きくなっており、虎山への行為をここでやめるつもりは無い。

  『「も、…もうやめれくれぇ……」』

  画面の中で息も絶え絶えに呟く虎山の姿は、相当酷い有様であった。口元は唾液や鼻水でぐしゃぐしゃであるし、目隠しは大量の涙を吸って滲んでいる。腹は真っ赤にうっ血した痕が幾つも出来、それでいてピョコンと立ち上がった短小包茎は、何度も精子を吐き出しているにも関わらずいまだ萎えない。

  「ガハハッ!コイツ、こんなにされてんのにまだ勃起してやがるぜ。…相当の好きもんだなぁ。こりゃ。」

  「…………」

  確かに本来であるならば、痛みを与えられた状態で勃起を維持する事は難しい。たとえ生命の危機に反応していたとしても、何度か吐き出してしまったらそれを持続させることはほとんど無理である。

  にも関わらず彼が興奮し続ける理由。それは虎山の携帯端末を覗けば自ずと答えが帰ってくる事だった。

  牛の男がおもむろに、虎山の所持品をあさり始める。出てきたのは彼が使用している筈のスマホであり、牛は手慣れた手つきでそれを操作すると、端末の画像ファイルをあさり始めた。

  そこにあったのは、自ら縄に縛られ、目隠しをされて、ほとんど今と変わらないような陵辱を受ける虎山自身の姿。写真のファイル名には「ご主人様との記録」と書かれており、同じ狼と共に映った写真が幾つもあった。

  中にはセックス以外にも、例えば公園に行った写真、一緒にランチを取っている写真、そして……結婚式、壇上に二人並んで手を取り合う姿。

  携帯の画面をカメラに映した牛は、それが何を意味するか、こちらに暗に示しているのだろう。

  翔は虎山の言った言葉を思い出していた。――番は先に逝っちまったが――…つまり、彼には運命の番が以前いて、それがこの狼の男という事なのだろうか。

  そしてその狼に、身も心も全て、開発され尽くしていた…と…

  「ガハハ!おいおい…なんだよコイツ、生粋のド変態だったって訳かよ!じゃあ今まで拒否してたのは演技で、ずっと楽しんでたって事じゃねぇか!!」

  画面を見ると、猪が乱暴に虎山の目隠しを外すのが確認出来た。カメラにさらけ出されたその表情は、頬を紅潮させ、目を情欲に潤ませて、確かに言葉では拒否していると思えない雌の顔をしている。

  牛がのそのそと近づいて、端末の画面を虎に見せ付ける。惚けた面で舌を出し、荒く息を吐いていた虎の表情が強張った。秘密を知られた……そう絶望に染まった顔で。

  『「あ…あ゛…すいませんご主人様…すいません……」』

  「ククク……これで理解したろ?Ωっつうのは、αの奴隷になる運命ってこった。」

  「……そんな…そんなこと…」

  結婚制度がαΩのみ特例を設けており、本来結婚不可能の男である狼が契を結んでいる時点で、消去法で行くと彼がαである事は間違いない。そして、そのαに身体中を縛られ、雌の顔でよがっている虎山が、彼をご主人様と慕っている事を考えれば、熊掌の言葉も当然のように思えた。

  たまたま虎山がそうだった可能性も勿論ありえる。しかしただでさえ数の少ないαとΩにおいて、その事実は大変重いものでもあった。それはΩとして、いつかこのような生活から脱し、まともな生活を送りたいと思っている翔の理想を打ち破る程度には衝撃的な事だ。

  翔は現実に打ちのめされ、唖然として画面を見つめる。秘密を知られてしまった虎山は一瞬絶望に慄いていたが、今はもう、隠しきれない欲情の表情で二人を見つめていた。

  牛がフックを操作し、虎をマットの上に降ろす。少々期待の孕んだ瞳でそれを見つめた虎山の後ろに、猪が移動した。

  『「あ゛ッ!❤あ゛ッ!❤ちくびらめッ!?❤ちくびらめれすぅぅぅ!!❤❤」』

  猪が、虎山の乳首に狙いを定めると、後ろから手を前方に回してワキワキと卑猥に動かす。それは縛られ隆起した乳房のような虎の胸を鷲掴むと、そのまま揉みしだき、人差し指の指先で、コリコリコリと乳首を弾いた。

  その瞬間、虎山の表情が喜々として歪み、顎がしゃくり上げ、口から唾液が飛び散った。今までは目隠しのお陰で隠れていたが、実際はこのように喜んでいたのだろう。いつの間にか敬語になった言葉は、秘密を知られ自分の性癖が露呈してしまった故か。

  牛の方が今度は開かれた虎山の股ぐらに顔を埋める。すると、途端に虎山が目を見開き、穴空きのソックスの中で指をわななかせながら一層声を大きく出した。牛は元々舐めるのが好きなのだろう。ともすれば、この牛に一度舌を使わせたら、いつまでも舐られていそうな気さえした。

  「ふん、これじゃあもう何をやったって意味ねぇな。まぁ、どうせこんなんじゃ何話してたって意味ねぇだろうが。」

  「……どうして…こんな…ッ…」

  もう先程とは違い、スピーカーから聞こえてくるのは虎の喜びに打ち震えた声だけ。その声は、いずれ自身もそうなるのだと、まるでそう言っているかのようで、翔は両耳を押さえながら項垂れた。

  グイ、と翔の背中に、何か硬い物が擦り付けられる。何を…と言いかけた所で熊掌を見上げれば、その表情から何を求めているのか、簡単に想像がつくもので。

  「おめぇはこっちの相手だ。」

  「あ…あ…」

  背中に擦り付けられたのは、勿論熊掌の太く長い逸物。それは先程着替えをしている時に狼が言っていたよう、萎えていても普段から相当大きいものであるが、勃起してしまうと、もはやそれは凶器とも呼べる品物になった。

  ズボンを押し上げビクビクと震えるそれに、翔はゴクリと唾を飲む。何を言われずとも自ら床に膝をついて、椅子に座る熊掌の股ぐらに顔を近づけた。ズボン越しからでも臭い立つ雄の香り。思い切ってズボンを脱がそうと手を掛ければ、中から出てくるのは窮屈そうにケツワレを押し上げ濡らす立派な逸物。

  少し出っ張った熊掌の硬い腹を押しのけて、ギンギンに反り立った一つの山。血管が浮き出て亀頭は充血し、鈍く光を照り返しては濃厚なフェロモンを撒き散らす。

  クラクラと脳を揺らすその香りに夢中になり、翔は無意識の内に発情してその先端へと舌を伸ばしていた。

  「ん…じゅる…んは…」

  「いい顔すんじゃねぇか。ククク…コイツよりよっぽどエロく見えるぜ?」

  『「あ゛ッ❤あ゛ッ❤それだけはッ❤それだけは勘弁してくださッッッッ❤ん゛う゛ぅ!!!」』

  チラリと視線をずらし、スマホの画面に映された虎山の方へと目をやれば、もはや牛と猪は好き勝手に陵辱を続けていた。

  牛が自らの巨大な逸物を片手に持ち、べったりとマットに突っ伏した虎山のアナルへとそれをあてがう。流石にアナルともなれば、自ら愛したα以外を受け入れるのは嫌なのだろう。必死に牛へと懇願するも、そんなものは全く意味が無い。言葉の途中にも関わらずズブズブとそれを埋めていく牛に、虎山はマズルを大きく縦に開け、目を見開いてガクガクと震えた。

  どんどんと近づいていく距離、結果密着した腰に、牛は間髪入れず腰を激しくグラインドさせる。

  『「あ゛あぁ!?!?!?!❤❤あ゛ッ!❤あ゛ッ!あ゛ッ!❤あ゛ッ!❤チンポッ!チンポやばひぃぃぃ❤❤ご主人様以外のチンポなのに!!❤おがじぐにゃる!❤おがじぐなっぢゃうのお゛お゛ぉ゛ぉ゛!!!❤❤」』

  虎が目を上向きにし、ダラダラと口から唾液を飛ばしながら叫んだ。いつも皆に見せている学校の教師という顔はとうの昔に消えてしまって、今はαによって無様に身体を調教された一匹の雌豚がそこに居るだけだ。腰を突き入れる度に小さなチンポの先から潮と白濁の汁を吐き出し、愛したαがこの世を居なくなってから、ずっと持て余していた感情を今解き放つ。

  気持ちいい気持ちいい気持ちいい……!!本当は感じちゃいけない筈なのに、本当は抵抗しなければいけない筈なのに、身体はどうにもチンポを求めてやまない。

  『「あ゛ひぃぃぃ!!!❤❤ご主人様以外のチンポでイグゥゥゥ!!!❤❤名前も知らない男のチンポでイッぢまうぅぅぅぅぅう!!!!イグイグイグイグッ❤❤んほおオオおオおオオオ!!!!!」』

  ビクンッ!!と大きく虎の身体が跳ね上がる。口から泡を吹き、久しぶりに全身を襲う強い快楽に、脳みそが完全にショートしてしまう。

  もはや精子を吐き尽くした短小包茎はビクビクと震えるばかりで、溢れるものと言ったら透明な汁だけ。敷かれたマットがビショビショに濡れていき、体育準備室に虎山の叫び声が響き渡った。

  「おーおー、ガハハ!ひっでぇなこりゃ。真性の変態だこの教師。発情もしてねぇ癖に乱れすぎだろ。」

  「はー❤…はー❤…」

  「……おめぇもこの教師同様、さっさとコイツがほしいんだろ?…なぁ?」

  画面の向こうで盛大にメスイキを晒す教師。イッてもイッても牛の腰は止まることを知らず、いつの間にか猪が自らの怒張を虎山に咥えさせている。

  それを見て心底愉快そうに笑った熊掌が画面から目を離すと、自らの魔羅を両手で掴み、寄り掛かるように息を荒くする翔の姿が目に入った。

  もはやこちらが何をせずとも、自身の汗の臭いや性器の饐えた臭いでさえ、勝手に発情を催すようになった翔の身体は、熊掌の調教の賜物と言っても過言では無いだろう。

  ビタビタとその頬に自らのペニスを打ち付け、挑発的に呟いた熊掌を上目遣いで見上げた翔の瞳が、それをほしいと如実に表わしている。

  「欲しけりゃおねだりしてみな。じゃねぇとやらねぇぞ?ん?」

  「はー…はー…❤」

  ここで熊掌の言いなりになったら、それこそ本当に、画面の向こうで乱れる虎と同様の存在になってしまう。

  浅ましく腰を振り、相手をご主人様と言いながら敬愛して、ただただチンポを求める快楽人形。

  そんなのは嫌だ…絶対にゴメンだ…そう思いながらも、目の前で反り立つ巨大な肉の槍に、全て意識を持っていかれてしまいそうな自分が居た。

  翔の顔半分を覆うほど大きな魔羅。長さだって、翔の頭を突き抜けている。太く脈動する血管が這い、雁の張った立派な亀頭を咥えこんで、その先端から溢れる我慢汁を啜って自らに取り込んでしまいたい。そんな欲望が、翔の脳を支配する。

  けれど……

  「…嫌…だ…」

  「あ゛??」

  「俺は…こんな…こんな風になんかッ――ひぁッ!?」

  言葉の途中でそれは中断された。頭を強引に掴まれ、こちらを睨みつける熊掌の顔が目に入る。その表情は先程とは打って変わり、眉間に皺を寄せ酷く不機嫌そうな、そんな表情で。

  「あ゛ぁ??良く聞こえねぇ。悪いが、もっかい言ってもらえるか?…言えるもんならなぁ?」

  「お…俺は…こ、こんな風には…ッ…ひゃぁぁぁ!!」

  言うが早いか、身体を突き飛ばされ、ロッカールームの床に乱暴に押し倒された。肩を捕まれ、無理やり視線を合わせられると熊掌は苛立ちを隠さずに強い声色で言葉を放つ。

  「まだ分かってねぇのかおめぇ?もっと徹底的に教え込んでやらねぇと理解できねぇか?あ゛ぁ!?」

  「んああああッ!!❤❤❤」

  熊掌が翔の発情を操作し、今まで以上に強い性欲を解き放つ。汗や臭いでは到底発現しないような、とびっきりの発情。それだけで翔が失禁してしまうようなそんな強い感覚に、翔は自らのズボンをジンワリと濡らした。

  「自分の股間見やがれ!!小便漏らして何がこんな風になりたくないだ!!あ゛ぁ!?」

  「ひぅぅッ!❤あ゛ッあ゛あ゛あ゛ッ!!❤❤」

  発散出来ない性欲が、身体全体を駆け巡っていく。少し布が肌に擦れただけで、目の前が壊れたテレビのようにチカチカと光を迸らせる。

  怒りに任せ、どんどんと発情のタガを外していく熊掌。限界まで高められたそれに、次第と翔の意識が鈍っていき、最後には気絶してしまうのも無理はない話だった。

  「はー…はー…」

  「…………」

  気絶した翔を見つめ、荒く息を吐く。怒りに任せて無理な事をさせてしまったが、その姿を見て冷静さを取り戻すと、些かやりすぎてしまったと後悔が頭をよぎった。

  気絶しながらもビクビクと震え、上気した顔で荒く呼吸をする翔に、熊掌の情欲がムクムクと鎌首をもたげ始める。…全てコイツが悪いのだ。そう自分に言い聞かせると、熊掌は翔のズボンを無理やり脱がし、そして。

  「おめぇは俺のもんだ……」

  「…んひ…あ…❤」

  気絶したままの翔の秘部へと、自らの怒張をゆっくり挿入し始めた。

  「く……!」

  翔の中は、既に毎日の開発で熊掌のペニスの形を覚えこんでいる。故に柔らかくチンポを包み込むそこは、以前よりも強く快感を生み出す場所となっており、別段解さなくても、熊掌の巨根を咥え込むまでになった。それはまるで熊掌専用の膣とでも言えるだろうか。ドクドクと脈動するそこは適度な締めつけでありながら、熊掌のペニスに吸い付いて離しはせず、抜く時は吸い付き、挿入する時は密着しながらも柔らかく受け止める。そんな名器に開発されていた。

  ただし熊掌は、まるで何かを探すかのように翔の中を掻き回し、そして見つけた。

  「…すっげ…」

  熊掌が腰を動かし、探るように挿入したのは、翔の膣穴。つまりは子宮である。直腸の途中、前立腺の少し奥辺りから上方に挿入する穴があり、本来ならばぴっちりと閉じているそちらに、今日は自らの剛直を無理やり納めていく。

  いつもは通り過ぎてしまう穴であり、初めて挿入する場所でもあるそこは、開発されきったアナルとは全く違う動きをし、熊掌のペニスをギチギチと締め付け、そして柔らかくうごめいていた。幾重にも連なるつぶつぶの襞が熊掌のペニス全体をザラザラと刺激し、まるで揉み込むように何度も縮小を繰り返す。アナルとはまた全然違う快楽の質に思わず感嘆の声と息を吐き、今にも突き破ってやりたい気持ちをなんとか押さえながら、ゆっくりと腰を密着させていく。直腸よりも最奥が手前に有るため、程なくして行き当たりにぶち当たると共に、ブニュブニュとした子宮口の感覚が亀頭から伝わり、熊掌は確かめるようにそこを何度も亀頭の先端でゴリゴリと撫でる。気絶している筈の翔がビクンビクンと震え、次第に表情が熱に浮かされていき、明らかに快楽が伴っている事を理解すると、そのままゆっくりと引き抜いた。直腸の中で何かから抜ける感覚が亀頭を襲う。そうしたならばそのまままた腰を突き出し、ゆっくりと最奥まで挿入するのを繰り返せば、次第に直腸のみならず、その子宮穴さえ熊掌のペニスの形を覚え込まされていった。

  「ひぅ…ぅぅッ❤❤」

  気絶しながらも、おそらく断続的にイッているのだろう。膣の締め付けが不規則なものになり、ギュッと強く締め付けられたかと思えば、次の瞬間には弛緩し、ビクビクビクと縮小を繰り返す。それはアナルと同じ感覚でありながら、襞の締め付けとザラつきが加わり、そちらとは比べ物にならない快楽をペニスから与えてきた。

  グッと翔の身体を押さえつける。足を顔の横まで持ち上げ、最も奥まで挿入できる体位、俗に言う種付けプレスの形を取ると、執拗に、ねちっこく、何度も何度も子宮口を亀頭の先で押しつぶした。

  そして熊掌にも限界が訪れそうになる。このまま腰を押し付けて、子宮の中に溢れるほどの精を吐き出し、もう一生逃げられないだろう子供という枷を植え付けてしまいたがったが、熊掌は理性でそれを必死に堪え、今はまだそれを行わない。まだその時ではない。

  それは自身らがもう少し歳を取ってから…そう…例えば大学に入学する頃ぐらいにもなればきっと自ずと行うハメになる筈だ。それは相手が拒否しても、どんなに嫌がったとしても……

  またしても熊掌は、翔の首筋に自らの顔を近づけると、そこにゆっくりと牙を突き立てた。

  それは所有物の烙印。誰にも渡さないという意思。

  勢い良くペニスを抜いた熊掌は、そのまま気絶している翔の顔までそれを持ってくると、自らの手で何度もそれを扱き上げ、そして

  「ぐッ…あ…!!」

  ビクビクと震えながら、何度も腰を突き出す。毎日のように吐き出しているにも関わらずゼリーのように濃度が濃い精子を、ドプドプと翔の眠った顔にブッかけて臭いを擦り付ける。自らの精で汚してやったという強い征服感が熊掌の心を支配し、同時に尿道にあまった精子も吐き出すよう、翔の頬に亀頭をこすりつけた。

  すっかり放置された携帯端末の画面の向こう。

  今だLIVE映像が映し出されたそこでは、終わることの知らない陵辱が続いている。

  最初は命令で陵辱している筈だったのだが、どうやら牛と猪も、この中年の虎を気に入ってしまったらしい。

  『「あ゛ッ!?❤まだぐる!!!❤まだぎぢゃう!!!❤❤赤ぢゃん汁子宮の中にはぎだざれるぅぅぅぅ!?!!?!?あ゛あ゛ア゛あ゛ア゛あ゛!!!!!❤❤孕んじゃうぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」』

  みっちりと腰を最奥に擦りつけながら、直腸では無く、明確な意思を持って虎山の子宮に、精子が叩きつけられる。ただ射精されているだけなのにその間も断続的に絶頂が止まることは無く、虎は目を上向きにして歓喜に叫んだ。確実に孕ませるよう精子を吐き出しながらも膣内をゆっくりピストンし、襞に擦り付けながら引き抜けば、間髪入れずに次の瞬間には別のチンポが最奥まで貫かれた。

  まだまだ調教は終わらない。

  フィストファック。イマラチオ。二輪挿し。

  虎の男は、若くもない身体に、とことん性の喜びを教え込まされた。

  ――――

  あれから虎山は、俺の事をあからさまに無視するようになり、結局俺の味方になろうとするものは誰一人として居なくなった。いつか熊掌言っていたが、どうやら虎山は今でも毎日のように調教を受け、奴隷としての生活を謳歌しているらしい。勿論新たなご主人様となったのは、あの牛と猪であることは言うまでもない。昼は教師としての顔、夜はド変態性奴隷としての顔。俺達が高校を卒業する頃に、彼は学校から姿を消し、牛と猪が本格的に奴隷として飼うつもりなのだと熊掌が笑っていた。

  一方で俺の生活にも変わりは無い。毎日のように犯されて、毎日のように種付けをされた。一度反抗してから熊掌の扱いは酷くなる一方で、発情させられたまま部屋に一日中監禁されたり、イケないようペニスの根本を紐で強く結ばれてから延々と亀頭責めをされたり、俺が観念して熊掌の奴隷にならない限り、こうした虐めは無くならないだろう。熊掌と身体の相性が悪いのか、今まで妊娠しなかったのが嘘のようだ。本来ならばアナルに射精されても、妊娠する可能性はゼロではない…とどこかの本で読んだので、今まで妊娠しなかったのは、きっと神が与えてくれた唯一の奇跡だと思っていた。……少なくともその時の俺は…。

  高校を卒業したら、俺たちは大学に進学するか、就職をする事になる。俺はいちいち熊掌との結婚を後押しする親も、そしてその熊掌ともこの場できっちり縁を切りたかったので、就職して一人暮らしをしようと考えていた。

  誰も知らない街に行き、誰も俺を知らない場所で、今度こそ新たな人生を迎え、幸せに暮らそうと、そう思っていた。

  けれど現実は非情で……

  ある日のことだ。それは何の前触れも無く、唐突に俺を襲った。

  その日俺は熊掌の部屋の中に居た。無論自ら望んでそんな場所に居るわけでなく、熊掌が無理やり連れてきた挙句に何故か待機させられている。今日は熊掌の親も一日居ないらしい。ともすれば、何の目的で呼ばれたのかは明白だった。

  熊掌の部屋は二階の1番奥の部屋。入ると手前に参考書の積まれた本棚があり、様々なトロフィーや賞状がその反対側に飾られている。どれもこれもラグビーの大会で手にしたもので、優勝カップからMVPに選ばれた誉れ高い賞まで、また中には皆勤賞や体育祭でチームを優勝に導いた際の写真など、様々だ。

  きっちりと片付けられた部屋の中は、全ての物が熊掌の身体の大きさに合わせて揃えられたものだから、なんだか俺は巨人の部屋に一人残されたかのようで落ち着かない。

  熊掌の読む高尚な本など正直見た所で理解は出来ないので、俺は暇を持て余してベットへと仰向けに倒れ込んだ。スマホの電源を入れて、適当にゲームでもプレイし始める。

  ベットの毛布からは、ほんの微かに熊掌の臭いがして、俺は何だかよくわからないが、無意識にそこへと顔を埋めスー…と臭いを肺に取り込む。

  俺を置いていった熊掌は一体どこで何をしているのだろうか。俺は考えたくもない筈の男を思って、小さくため息を吐いていた。

  ブルブルブル…

  「ん…?」

  ふと、手に持っていた携帯電話が震え始める。画面を見つめると、そこには熊掌の名前が大きく表示されており、何かあったのだろうかと電話に出ると。

  「もしもし……」

  「……がさごそ…がさ…」

  「……?」

  電話の向こうから聞こえてくる音はなにやら布が擦れるような、そんな鈍い音ばかり。ポケットに入れていたスマホが誤作動で電話を掛けてきたのだろうか。そう思って電話を切ろうとした、そんな時。

  『「翔との間に赤ん坊が出来ました。」』

  「え…?」

  突如聞こえてきた熊掌の声に、俺は思わず素っ頓狂な声を上げる。…一体コイツは何を言っているんだ?と確かめるように問いかけたが、しかしどうやらこちらの声は聞こえている様子は無く俺の意思とは関係なく会話が続いていた。

  勿論そんな事実は無いし、そこで心底真面目な声色で呟く熊掌の言葉に、俺は寒気のようなものさえ覚えていた。

  『「そ、それは本当なのか!?熊掌君!?」』

  「え…え…」

  次いで聞こえてきたのは父の声。間違えるはずはない。熊掌はどうやら俺の両親に、ある事無いこと話しているのだ。

  『「本当はお二人にもっと早くご相談するべきだったのですが、俺も息子さんを想うばかり、不甲斐ないながらも先に手を出してしまって。」』

  違う!!何を言っているんだコイツは!?散々俺を苦しめておいて、まだ俺にこんな仕打ちをするつもりなのか!?電話口から聞こえる声に、俺は絶望を露わにしていた。

  「ふむ……そうだな。確かに相談はしてほしかったが。……でもまぁ、熊掌君の事だ。それを言ってくれたという事は、きっちり翔の事、面倒みてくれるんだろう?」

  「はい。勿論。……申し上げませんでしたが、実は俺と翔は“運命”でして。…将来的には結婚も考えてお付き合いしています。。」

  「まぁ…!!うふふ…そうね。私達も熊掌君なら歓迎だわ。他の男が言ってきたならともかく。…それに運命って事なら遅かれ早かれそうなってたわけだし。」

  三人の会話が全く頭に入ってこない。俺の話をしている筈なのに、そこで反論の言葉を出そうにも、俺の言葉は全く届かない。両親が少しでも不満の気を表してくれるならと思ったが、それもなく。そもそもどうしてこいつらは本人を差し置いて結婚なんて事について話しているのか意味がわからなかった。

  「俺は大学に行きますが、部屋を借りますので、当面はそこで一緒に暮らしていけたらと思います。」

  「同棲ね!!やだ!私ったら若い頃思い出しちゃったわ!!ウフフ!」

  「まぁ、今までも毎日のように一緒に居たし同棲に心配はないが、結婚はいつ頃と考えてるんだね?」

  「はい。結婚については、本当は今直ぐにでも行いたい気持ちで一杯ですが、やはり大学もありますし、しっかり勉強して就職し、経済的に落ち着いた頃にはしたいと。少し遅いですが5年後には。」

  まるで死刑宣告を受けているようだ。経済的とか就職とか、5年後という生々しい数字まで出てきて俺は額から大量の冷や汗を流す。

  身体が固まって動かない。懸命に声を出しても、その音は無慈悲にも届くことは一切なかった。

  『「そうね。私達も精一杯サポートはするから。…あの子を…翔をよろしくおねがいします。」』

  違う。そんな言葉を求めてたんじゃない!!俺は、俺はこの生活から抜け出したいんだ!!もうコイツの言いなりになって生きていくのは嫌なんだ!!

  心の中では声を大にして叫んでいるのに、身体は全く言うことを聞かない。

  両親の言葉が胸に痛い。頼むから否定してくれ、どうにか俺を自由にしてくれ!!そう思っているのに、事態は全く好転しなくて。

  「じゃあ、今日はご挨拶だけ。」

  「ああわかった!相談してくれてありがとうな。熊掌君。」

  「ほんと。頑張ってね!応援してるわ!私達!」

  「…はい。」

  …そしてそれを最後に電話口からは何も聞こえる事は無くなった。同時に電話が切れた音のみが俺の耳に伝わってくる。

  俺はその場に固まる事しか出来なくて、必然と力の失われた腕が携帯をベットへと力なく落とした。

  しばらくして部屋の扉が開く音が聞こえてくる。勿論そこから現れたのは、不敵な笑みを浮かべた熊掌本人であり、俺はひとまず手にした携帯を投げると、そのまま熊掌へと勢い良く体当たりをした。

  久しぶりに肉体的な抵抗をしたと思う。けれど結局、俺の体当たりなんて、日々ラグビーでもっと屈強な男たちに体当たりされている熊掌には効くはずもない。

  むしろ俺がその腹に押されて床に尻もちをついてしまう形となるが、俺はまた熊掌を睨み上げると、立ち上がって拳を振るう。

  しかし振った拳は簡単に熊掌の腕に捕らわれてしまい、どんなに引っ張っても、どんなに押しても、彼の身体が動くことは無かった。次第に俺は息を乱して抵抗が弱くなる、そうなった所で、彼は取った腕を振り上げ、俺をキングサイズのベットへと乱暴に放り投げた。

  「うあっ!!」

  「ふん、満足したか?」

  鼻で小さく笑った熊掌。俺をベットへと放り出してやる気満々なのか、一枚一枚上着を脱ぎ去り、そしてその鍛えられた赤茶色の身体を露わにしていく。

  「お前って奴は…どんだけ俺を貶めれば気が済むんだ!!!」

  俺が息を荒く吐きながら叫んだ言葉。けれど熊掌はそんな言葉には聞く耳を持たず、そしてベットの前に立ちはだかると、俺を見下げて呟いた。

  「じゃあ。サッサと餓鬼こさえんぞ。」

  「ッ…な、なんでそうなるんだ!!お前は、俺が本当にそんな事すると思うのか!!お前の子供なんて絶対に孕みたくなんかない!!これからずっと一生お前の言いなりになんかなりたくない!!」

  「ククク…そうかい。」

  熊掌の口からでた言葉はそれこそ、もう二度と取り返しのつかない事態になる話で、俺はそんな事したくないと抵抗を露わにする。しかし熊掌の大きな身体が俺の身体を覆うと、途端に俺と熊掌の力の差が明確に表されるだろう。

  「お、俺たちもう…沢山子作りしただろ……俺、妊娠出来ない身体なんだ…!だからもう無理だ…俺を開放してくれ…!」

  そうだ。だからもう、俺を貶める事はこれ以上出来ない。俺はもう本当に疲れてしまって、ただ普通に生活を送りたい、たったそれだけの願いなのだ。

  「クク……ククク…ガハハハ!!お前、まさか本当に俺たちに餓鬼が出来ねぇとでも思ってんか?毎日のように溢れるだけ子種蒔いてて、それで本当に餓鬼が出来なかったと思うのか??」

  「や…だって…本には…ゼロじゃないって…」

  「ククク…そうだなぁ。ゼロではねぇ。…まぁ、確率は0.000000000001%にも満たねぇだろうがな。」

  「ッ…!?」

  ギシリとベットが二人分の体重に歪む。俺に顔を近づけて、艶かしく呟いた熊掌に、ゴクリと息を飲んだ。現実が、紛れもない絶望が俺に突きつけられる。俺が唖然としてまた失意にくれている所で、熊掌の身体が俺の上に立ちふさがる。

  熊掌の大きな身体は、もはや俺の肩幅よりも巨大だ。それにも関わらず、多少の脂肪はあるものの、ほとんどが筋肉で形成された鋼の身体でもあった。彼が俺に覆いかぶさるようにすれば、それだけで影が出来たように俺の身体がすっぽりと隠れてしまう。本来ならば誰もが憧れる肉体。そして誰もが夢見る状況。それなのに、俺にある感情は恐怖のみ。

  「それにおめぇは気付いてねぇみてぇだがな。もし仮に餓鬼が出来ねぇってんなら、別に俺がおめぇのマンコに種付けたって変わんねぇだろ。」

  「ひっ…そ…それは…」

  熊掌が耳元で呟く。牙の痕が今だ残る首筋に舌を這わせ、俺の背筋がゾクゾクと震える。認めたくない。でも確かにそれは的を得ていて。

  「なぁ、おめぇは今までよく頑張ったよ。毎日毎日俺様にこんだけ酷く扱われて、それでもずっと諦めねぇで頑張ってた。俺がどんなにおめぇの邪魔しても、おめぇはいつか普通の生活を夢見て諦めなかった。…でももう良いじゃねぇか。俺様と暮らせば悪いようにはしねぇ。おめぇはただ、俺様の相手をしてりゃあ良い。好きな仕事だってやれよ。その代わり必ず俺様の所に帰ってこい。そうすりゃ俺もおめぇを可愛がってやる。…どうだ?悪い話じゃねぇだろ?あ?」

  「…………」

  低く、洗脳のように呟かれた言葉。今まで俺を否定してばかりいた熊掌が、実質初めて俺を褒めたのだ。俺の心が行き場のない感情にざわめく。

  そうだ。今まで頑張ってきた。もう諦めてもいいじゃないか。それにこれ以上頑張っても、もう逃げ場なんてどこにもない。

  ……けれど…

  「なんで……なんで俺なんだ……」

  「…………」

  「なんで、俺をそんなに追い詰めるんだ……なんで俺をそんなに欲しがるんだ…!…お前なら、お前にならもっと従順な奴が腐るほど居るだろ…!命令も、お前の望んでる事も…全部ぜんぶ…してくれるような奴が…!」

  今までずっと心の中でくすぶっていた疑問。

  ここまでずっと、言葉に出せなかった疑問。

  本当はずっと気付いていた。いつかこの行為が、俺を貶める行為からズレていた事を。

  言葉では俺を罵るのに、セックスではまるで蕩けるような優しさを見せる時がある。

  例えばそれは、掌に指を絡ませ、牙が刺さらないように優しくキスをする。例えばそれは、俺が甘えた声を出すと、嬉しそうに抱きしめてくる。

  でも言葉にするのが怖くて、それが本心だとしたら、俺はどうしたらいいか分からなくて。

  「……馬鹿だな。おめぇは。」

  「……ッ…」

  熊掌が小さく笑みを浮かべる。

  そして俺の肩を掴むと…

  「そんなもん面白くねぇだろうが!俺の命令聞いて、俺の望んでる事全部してくれる奴だぁ?確かにそんな奴等、腐るほど居るだろうな。…でもそんなもんつまんねぇ。おめぇみたいに無駄な希望追いかけてる奴を、徹底的に貶めんのが楽しいんだろうが!」

  「っ…や、やめっ!――ひあああああ!!!!❤❤❤」

  期待した俺が愚かだった。

  熊掌はそう叫ぶと、俺の身体の発情をスイッチする。瞬間身体全体を包む情欲の嵐。何度経験しても慣れない、それでいて、汗や臭いで発現する発情とは全く違う、抗えない力。

  俺の腕を頭の上で掴み、ベットに押し付けた熊掌は、空いた手で俺のズボンを無理やり脱がせ、そして今度こそ逃げられない子作りの準備をする。

  「やら…❤…子作りやら❤」

  涙を流し、懇願する翔をよそに、熊掌も自らのズボンを脱ぎ捨てる。彼に取って待ちに待った時でもあった。

  これまでのように行為だけではない。しっかりと形として、コイツを所有物とすることができる。

  彼にしては珍しく、鼻息を荒くし、目を充血させながら自らの怒張を翔の秘部へとあてがった。もはや前戯などしている余裕は今の熊掌にない。

  「あ゛ッ?❤あ゛ッ?❤あ゛ッ?❤入っでぐるぅぅ…❤❤」

  「へっ…オルァ…全部…入っちまうぞッ…!」

  ミチミチと翔の膣を押し広げるペニスの感覚。今まで侵入された事は無い筈の場所なのに、何故か既にソコは熊掌のペニスの形に迎合し始め、膣が蠢いてそれをぬっちょりと締め付ける。

  キュンキュンと子宮が疼き、やっと精子を取り込める事に興奮しているようだった。

  「分かるかッ…!俺様のチンポが、おめぇの子宮にキスしちまってんぞ!!」

  「はあ゛あ゛あ゛❤❤らにこれぇぇぇ???❤❤❤」

  ゴリュゴリュ…と熊掌のペニスが翔の子宮口を亀頭の先っぽで捏ね繰り回すと、ビクンと翔の身体が大きく跳ね上がった。バチバチと、目の前に砂嵐のような光が迸る。

  「ククク……今までとは全然違ぇだろ?これがαとΩの子作りセックスってやつだ…!」

  「あ゛ぁ゛ぁ゛ッ…!❤変になるッ!❤こんなの耐えられなッ―――ッッッ!!❤」

  途端に、ズンと振動が下半身を襲った。

  何の前触れもなく、熊掌がペニスを引き抜き、そしてまた最奥まで挿入したのだ。

  その瞬間、快楽を許容する事が出来なかった脳が思考を停止する。それと同時に目を上向きにした翔は、舌を突き出して言葉を失った。

  もとより、これ以上待ってやる程の理性も持ち合わせていない。

  「ぎッ!?❤あ゛ッ!?❤じッぬッ!?❤❤じんじゃうッ❤❤どめでぇぇぇ!!!❤❤❤」

  「ガハハ!こんなもんじゃねぇぞ!!オルァ!!乳首も一緒に弄ってやる!!」

  「あ゛あ゛あ゛!!!❤❤あ゛あ゛あ゛❤❤❤―――ッ!!!」

  堪えがたい快楽の波。声も枯れ果て、ただ野獣にも似た雄叫びを上げることしか出来ない。イッた側からまた絶頂に達し、自らのペニスの先から吹き出た潮が、腹を濡らしていった。もはや感じるのは苦痛にも似た悦楽。ペニスが襞に擦れる度に膣は熱を持ち、望んでも居ない相手の逸物を温かく迎え入れた。

  乳首は毎日のようにネットリと弄られているせいで、今では立派な性感帯として機能している。ただでさえ絶頂と発情により敏感な身体であるにも関わらず行われるその行為は、翔の意識をぼんやりとさせるには打ってつけのものだろう。

  行き場のない苦しみから少しでも開放されたくて、ひたすら目の前で腰を振る相手の身体に寄り添った。何かに掴まりでもしなければ、本当に死んでしまうと生存本能が囁いたのかも知れない。

  熊掌が翔の身体をグッと強く固定する。すなわち今度こそ種付けプレスの体勢で、相手の子宮をグチョグチョと突き上げた。

  「まずは一発!!!孕みやがれぇぇぇ!!!!」

  「んあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!❤❤❤」

  瞬間、迸るザーメン。密着する腰。揺れる陰嚢。脈動するペニス。

  ドクンドクンと心臓と同等の振動が全身に響き渡る。同時にビクビクと力強くしゃくりあげるペニスから、ゼリー状の濃厚な精子がドバドバと吐き出されていった。

  子宮の中を満たすだけでは飽きたらず、溢れたそれは、襞やアナルにまで侵食していく。精子が吹き出すと同時に絶頂に達した翔は、目を潤ませ、惚けた顔で、ただ強く熊掌を抱きしめていた。

  「ぐ…」

  「あ゛~~~~~~……ッ❤❤❤」

  もはや言語機能でさえ、快楽に犯されてしまったのか、言葉とも言えない喘ぎ声を出し続ける翔。

  顔をあげ、熱に浮かされたままの表情でそれを見つめた熊掌は、何も言わず、ただその唇に自らのマズルを覆い被せた。

  そしてまた艶かしく腰がピストンを始める。

  まだ、まだこれでは足りないと、そう行動で示すように。

  何度も何度も……

  ――――

  「帰ったぞぉ!」

  まだ建てられて日の浅い新居のマンション、少し新しい香りのする扉を開けて、暖かな明かりの満ちた玄関の向こうに呟いた。

  「パパー!おかえりー!!」

  「あぱー!かかえりー!」

  それと同時に居間の方からドタドタと音を立てて出てきたのは、赤茶色の毛色をした熊の子供と、まだ歩くことがやっとと言った人間の子だ。

  「おー!いい子にしてたかガキンチョ共~!」

  「うん!いいこにしてた~!」

  「ひいこにしてら~!!」

  「ガハハ!そうか!母さんはどうした?」

  「ごはんつくってる~!」

  「おはんつくっれる~~!!」

  人間の子を抱きかかえ、熊の子は肩車してやる。無邪気な子供達の笑い声に仕事のストレスが吹き飛ぶ気持ちになりながら、ノソノソと愛した者の待つ居間へと向かっていく。

  「おう。帰ったぞ。」

  「……おかえり。…飯、今できた所だ。」

  台所に立っていたのは、あれから少し歳を取って、しかしそれでも変わらない愛妻の姿。

  子どもたちを床に下ろしてやり、「いい子に座ってろ。」と二人の頭を撫でてやりながら、自らはソッと、まだ準備をしている妻の後ろに歩いていき、背後から抱きしめてやる。

  「ッ…なんだ…いきなり。」

  「おう、手伝ってやってもいいぞ。」

  「…藪から棒に……疲れてるんだろ、良いよ。先に座って待ってッ…おい!」

  少々驚きながらも、少し呆れたような反応を返す妻に、思えばこんな柔らかい表情ができるようになったのは、子供が出来たあの後だろうか。

  最初は生みたくないと泣いて居たのに、今ではもう立派な母として、二児の面倒を見ている。

  久しぶりに帰ってきた家だ、少しくらい好きにしてもいいだろうと、その首筋にキスを落とし、そしてエプロンの中へと手を入れていった。

  「あ…ッ…子どもたちにッ…見られたらッ!」

  「かまやしねぇ。見せつけてやりゃあいいだろ。」

  「馬鹿!やめろ!何考えッ!!~~~~ふぅ❤❤」

  「おいおい、んなこと良いならおめぇ、ギンギンになってんじゃねぇか。…まぁお互い久しぶりだもんなぁ…今日は3人目、作るか?」

  「い゛ッ!❤も゛ッ!❤そんなにッ!面倒みきれなッ!❤」

  少しずらしたエプロンの隙間から、胸に二つ熟れた乳首を見つけてそこに吸い付く。同時にもう片方も指でクニュクニュと摘み上げ、それだけで相手の股間は起ち上がり、すでに汁でズボンを濡らしていた。

  必死になって口に手の甲を押し付け声を押さえる相手。カウンターの向こうでは、子供たちが運ばれてくる料理を今か今かと待ち望んでいる。

  「あ゛~~!!!」

  ビクン!!

  子供の叫び声に、二人の身体が驚きで跳ね上がった。

  まさか見られたのだろうか?そう思い冷や汗が垂れる。

  だがしかしそれはどうやら勘違いのようで、テレビに映った何かを指差して喜んでいるようだ。

  「見てみて~~!!パパが映ってる~!!」

  「ぱぱがうちゅってる~~!!」

  テレビ画面には、赤いコスチュームに身を包んだ大柄な熊のラガーマン。大会で優勝し、チームの勝利に最も貢献したとして、インタビューを受けている様子が映っている。

  『「やっぱり飯沼は良い選手で、こっちの指示に的確に答えてくれるんで、試合運びが上手く行きました。いつもそうですが、今のチームがあって初めて優勝できてるんで、次回もこの調子でイケたらと思ってます。」』

  『「今話題の大熊熊掌選手。凄い身体でしたねぇ。次回の試合も期待が持てる所です。さて、次のニュースに入る前に一旦CMです。」』

  『「勝つために、最高のポテンシャルを引き出したいから……」』

  アナウンサーの質問に、試合後の荒い息遣いのまま答えた熊掌。スタジオに返され、次回の試合も期待が持てるとコメントを貰った所で、テレビはCMに映る。そこでもまた熊掌が、栄養ドリンクのCMキャラクターとして抜擢されている映像が流れ、彼は今注目のスポーツ選手として、様々な活躍をしている事が理解出来た。

  「ママー!ご飯まだ~?」

  「まま~ごはんまら~!」

  父親が出ている映像が終わると、途端に興味を無くした子供たちの声が、こちらを呼んでいるのが聞こえた。その声を聞いてハッとした二人が、軽く顔を合わせる。

  「ほら…子供達が待ってるだろ。」

  「…ちッ…やっぱ餓鬼なんかこさえなきゃ良かったぜ…」

  「お前が言うか。」

  目の前でおあずけを食らったかのようにマズルを尖らせる熊掌。元々子供を無理やり作ったのは自分の癖に、どの口が言うのだろうか。ともすれば、こちらが料理の盛り付けられた皿を持ち上げると、熊掌もまた手伝いとして皿を持ち上げる。

  「先に風呂入ってくればいいんじゃないか?汗掻いてるだろ?」

  「…後でな。一緒に入んぞ。」

  「…ッ…」

  「勿論、今日は寝かさねぇから覚悟しとけよ?」

  子供の頃から変わらない不敵な笑顔でこちらにそう告げた熊掌を見て、下半身がジュンと熱くなるのを感じた。

  おそらく一週間ぶりだろうか。

  …今日はまた野獣の如く抱かれてしまいそうだと、翔は少し期待の孕んだ心で、早く子供を寝かしつけようと決めたのだった。

  人生は何が起こるか分からない。

  思い通りにならないことも沢山あって、運命というしがらみに雁字搦めにされ、それがとても嫌な時期があったけれど。

  それでもいつかは、こうして幸せだと思える日が来る。

  翔は今、二人の子供と、一人の夫と共に、これで良かったと思える今を、生きることが出来ていた。

  おわり

  

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