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ヒーローに憧れて~リキッドハウル編~

  2XXX年。世界は混沌に包まれていた。

  100年ほど前から、突如として特殊能力に目覚めた人々が、その能力を悪用し、次々と凶悪な犯罪を巻き起こす様になったのだ。

  国会議事堂を占領しようとする能力者テロ集団、総理暗殺を目論む人々、ただ自身の力の誇示と娯楽の為、一般人に能力を使って悪さをする者達。

  そうした状況を鑑みた結果、政府は直ちにそれら能力者犯罪を取り締まる為の動きを強化。

  全国から、これら能力を悪用した犯罪を憎む、正義の心に溢れた能力者達を選定し、そして彼等を鍛え上げる事で、新たな秩序をもたらそうとした。

  初めは警察組織に所属させた能力者達を、特殊能力犯罪科と命名した部署に配属させ対応させたが、そのうち彼等の活躍を見た市民達が、口を揃えてスーパーヒーロー等と呼び始めた事から、自然と彼等の名称は“ヒーロー“という名で一般化。

  そうした動きもあり、彼等の名声が広く世に知れ渡ると、政府だけでなくテレビ関係者や雑誌記者などもそれらに目を付け、利用するようになり、結果的に特殊犯罪科は“ヒーロー協会“に名を変え、独立した政府組織となったのだ。

  そして、ヒーローの活躍が一般的となった現代。

  産まれてくる子供達は、そんなヒーロー達に憧れ、将来の夢を見い出すようになり―――

  「うわぁぁぁ!!」

  「バーカ!!無能力者のくせして、俺様に逆らうからそうなるんだよ!!」

  「アニキやっちゃえー!」

  「やれやれー!」

  「やめてよぉ!!」

  とある閑静な住宅地の一角にある、自然豊かな緑に溢れた静かな公園内で、子供達のそんな只事では無いやり取りがどこからか聞こえてきた。

  大きな身体をした猪獣人の男子と、その取り巻きと見られる子供達が数人、一回り身体の小さなイヌ科の仔を威圧し、虐めているように見える。

  猪獣人の男子が拳を振り上げ、イヌ科の仔を上から殴り下ろすと、彼はその場にうずくまって、ひたすら痛みに耐え続けるが、しかしそれでも容赦なく、足や拳がその仔を打つ。

  「やめろーーー!!」

  「あ?なんだぁ?」

  「……ぇ?」

  そんな折、彼等から少し離れた公園の入口辺りで、誰かの叫ぶ声がした。反射的に振り返り、声のした方を見ると、一人の人間の少年が、脇目も振らず全力疾走してくる。

  「おりゃあ!!」

  「ぶへっ!」

  その勢いのままに、猪の少年へとタックルした人間は、彼がその衝撃によろめき、体勢を崩したところで、蹲るイヌ科の仔の前にいき、まるでヒーローのように、その場へと立ち塞がったのだ。

  イヌ科の仔は、そんな人間の少年を、驚いた様子で見上げていた。

  「弱い者虐めはやめろ猪野頭!そんなのはこのオレが許さないぞ!」

  「ぶひぃ…!てめぇ…赫夜(かくや)ぁ…いつものヒーローごっこじゃ済まさねぇぞぉ!」

  「ヒーローごっこなんかじゃない!オレは将来絶対ヒーローになるんだ!だから、弱い者虐めをするお前を見逃したりなんかしないぞ!わかったらさっさとどっか行け!!」

  「てめぇ…だったらいつもみたいにサンドバッグにしてやる!」

  強烈なタックルをお見舞いされて、一度は体勢を崩し、地面に膝を付いた猪野頭であったが、元々体格の違いもある為か大したダメージを受けている訳でも無く、口元を拭いながらその場から立ち上がった。

  プッと口の中に溜まった唾を吐き出し、手下の取り巻き達に膝やズボンの汚れを落とさせると、キッと少年を睨みつけて、前屈みになるよう仁王立ちする。

  どうやら二人は普段から因縁のある関係のようで、その様子を見るに、お互いあまりよい印象を持っていないらしい。

  イヌ科の仔が地面に手をついて、怯えたように二人を交互に見るが、赫夜と呼ばれた人間の少年と、猪獣人である猪野頭は頭一つ分程も身長差があり、その上猪野頭は太っているというか、体格も一回り大きくて、小柄な人間の方が勝てる姿を想像する事が出来なかった。

  猪野頭が気合いを入れるように呻き声を上げると、更にその腕の筋肉が膨れ上がり…

  「お前ら!そいつを捕まえろぉ!」

  「やぁぁぁ!」

  「わぁぁぁ!」

  「ぬっ!?」

  猪野頭の号令で、取り巻きの二人が少年に襲いかかった。ここに来て数の面でも不利になるだなんて、一体この少年はどうやって切り抜けるつもりだろう。そんな事を考えている間にも、それっぽく構えていた人間の少年は、呆気なく取り巻き達に捕まってしまう。

  「え?」

  思わず、そんな風に唖然と声が出た。

  どうやらこの人間の少年は、別に何か対策があるわけでもなく、目の前で虐められている者がいたという理由だけで、無計画に突っ込んできただけだったようだ。

  そのお陰でヘイトは完全に少年へと向かったが、逆にイヌ科の仔は酷く申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

  少年が、両手を後ろ手に捕まれ、ジタバタと暴れながら叫んだ。

  「あ!おい!卑怯だぞ猪野頭!このデブ!正々堂々戦え!」

  「ぶへへ!なぁにが正々堂々だぁ!どうせ1対1で戦ったって、おめぇじゃ俺様に勝てねぇだろうが!時短だ時短!」

  「ふざけるな!ヴィランとしてのプライドが無いのかお前は!!」

  「う、うるせぇ!俺様はヴィランじゃねぇっつーの!!それに、将来ヒーローになりたいんならこれくらいの人数差一人で覆してみろ!!本物のヒーローなんて、いつだって20人くらい相手にしてるだろうが!」

  「ぐっ!……た、たしかに」

  少年は猪野頭のそんな言葉に、身体だけでなく主張さえボロボロに論破されてグウの音も出なくなってしまっていた。将来ヒーローになると豪語する割にはあっさりと負けを認めてしまうものである。

  猪野頭が、そんな少年を見下ろし、下品に笑った。

  「ぶ、ぶへへ…!なぁにがヒーローになるだ!この程度も切り抜けられねぇ癖によぉ!いつもいつも俺様に逆らいやがって、この野郎!」

  「ぐはっ!!」

  猪野頭の容赦のない握り拳が、少年の無防備な腹にクリーンヒットした。途端に身体を“く“の字にして、開いた口から唾液の飛沫を吐き出す少年。

  「おら!おら!おら!生意気なんだよ!てめぇも無能力者の癖しやがって!!」

  「ぐっ!がっ!あ゛!」

  「無能力者がっ!ヒーローに!なるなんて!夢見てんじゃ!ねぇよ!オラァ!」

  「がふっ!ぁ゛…っ!…っ!…ぃ゛っ!」

  猪野頭が、容赦なく少年の腹や頬を殴りつける。その度に、身体を跳ねさせ、一方的に暴力を受ける少年は、しかしそれでも、ふとした瞬間、反抗的な視線で猪野頭を睨み付けることを止めず、闘志を燃やし続けているようだった。

  「おらぁ!」

  「がはっ!…がふっ!ごほっ!」

  そして、持ち上げた膝が鳩尾に決まると、その勢いに取り巻き達の拘束も解け、少年はその場へ蹲るよう両膝をついた。そんな無様な様子を見たいじめっ子達は、そろって機嫌が良さそうに笑うと、手を叩きあったり、指をさして少年を嘲ったり、あまりにも酷い様子で彼の事を蔑んでいる。

  イヌ科の仔も、それを蒼白した表情で見つめていた。身体は恐怖に震え、誰かに助けを求める事も出来ずに、ただ、見つめていた。

  「アニキ!あれやりましょうよあれ!いつものやつ!」

  「おう!ぶへへ!“あれ“か」

  取り巻きの一人がそう提案すると、何かを思い出したかのよう不敵に微笑んだ猪野頭が、うずくまる少年の身体を軽々と持ち上げて、背中側から抱き寄せた。

  痛みに意識を朦朧とさせ、瞼を痙攣させながらも、未だ闘志を失わない少年が、些細な抵抗をしてくる事などお構い無しに、その首元へ後ろから野太い腕を回してくる。

  「ぐっ…!?がっ!?」

  「そうら…!見てろよ見てろよ?」

  首を締められ、少年が目を見開きながら何とか腕を取り除こうと指で猪野頭の前腕を掻き毟る。身長差がある為、少年の足はギリギリ地面に着くか着かないかという所で、バタバタと忙しなく動き、徐々に表情が焦りを含むようになってきた。

  「〜〜〜っっ!!!〜〜〜っ!!」

  「ぶへへ!苦しいかぁ!?」

  「〜〜〜〜〜っっっ!!!」

  子供の戯れとは思えない容赦のないヘッドロックに、少年の毛のない顔が真っ赤に染まり、そして恐怖に歪んだ。

  つま先と踵で蹴りつけた地面から僅かに土埃があがり、最初は抵抗の為激しく動いていたそれらも、徐々に徐々に収まりを見せつつ、少年もまた瞼を痙攣させて白目を剥きそうになっている。

  「〜っ!……〜…!………っ!…………っ…っ…っ…っ!!」

  そして、酸欠で抵抗が弱まるにつれて、どんどんと少年の身体から力が抜けていくと、最後にはガクガクと洒落にならないほど全身を震わせ、完全に猪野頭へと身体を預けるよう項垂れてしまった。

  相変わらず周りの者達はそれを見て、尚更笑いを強くしているし、じょろろろ…という音と共に少年のズボンの股座から濃い染みが広がり始めると「おー!出た出た!小便漏らした!」と、まるで予定調和だったかのように全員で盛り上がっている。

  そこでやっと、ほんの少し猪野頭の腕の力が弱まって、少年は息を吹き返した。

  「ぶはっ!はっ!はっ!」

  「ぶへへ!小便漏らし野郎!……おら!参ったか!」

  「…は…は…は…っ…オレは…ヒーローに…」

  「こいつ、まだこんな事言ってますよアニキ!」

  「へっ!懲りねぇ奴だなぁ!おら!もっかい小便漏らしてみろぉ!」

  「ぎっ!?……〜〜〜」

  ここまで暴虐武人に振る舞われても、少年は心が折られた様子もなく、未だに抵抗の意志を顕にして、猪野頭へと歯向かった。

  勿論、ここから逆転する算段がある訳でもなく、更に猪野頭がまた腕に力を込め始めれば、改めてされるがまま、一からジタバタと暴れ始めて、先程と同じような末路を辿る少年。

  そうして、何度も何度も、いじめっ子達の玩具として可愛がられた少年は、彼等がその行動に飽きるまで、好き勝手虐められてしまい―――

  そして日が暮れ始め、空が茜色に染まりきった頃…。

  ドサリと地面に投げ出された少年は、結局あれから反撃の一つもする事が出来ずに、彼等の娯楽としてさんざん消費された。

  「これに懲りたらもうアニキに突っかかってくんなよ!バーカ!」

  「ぶへへ!んなこと言うなよ。どうせコイツはまた突っかかってくるぞ。自称ヒーローになる男だからなぁ。……ま、突っかかってきたら突っかかって来たで、その度俺様がまた玩具にしてやるよ!ぶはははは!」

  「…………」

  少年は気を失っているのか、いじめっ子達のそんな言葉に反論する事も出来ず、地面に倒れて微動だにもしなかった。

  相変わらず、イヌ科の仔は彼等の虐めをただ怯えて見る事しか出来ず、終始うずくまって、どうにか自分にヘイトが向かないよう、大人しくすることしか出来なかった。

  いじめっ子達が去っても、少年は動かず、顔も丁度向こう側を見ている為、どういう状況か分からない。

  恐る恐る膝から上体を起こしたイヌ科の仔は、ゆっくりと少年の近くに寄って、その身体へ優しく触れる。

  「んがっ!」

  「ひっ!」

  肩に触れた瞬間、ビクッと少年の身体が跳ねて、イヌ科の仔は思わず弾かれるように手を引いた。

  ズリ…ズリ…と、気だるそうに少年の腕が地面を這って、震えながら立ち上がろうと、掌を土に付ける。

  「うっ…ぐ…」

  「ひぃぃ…」

  まるでゾンビのような呻き声をあげながら、身体を起こした少年に、イヌ科の仔が怯えながら後ずさる。別に何か暴力を振るわれると思った訳では無いけれど、生来の気質から、どうも臆病な性格であって、ただ反射的にそういう行動を取ってしまうだけなのだ。

  目を閉じ、顔を隠して縮こまると、予想に反して、少しの沈黙。

  「………だいじょぶだったか?」

  「…ぇ?」

  言われて、うっすらと目を開けると、そこには、こちらを振り向いて、歯を見せながら不器用にニッと笑う少年の姿。

  身体に力が入らないのか、支える両腕はブルブルと震えて、顔は唾液や涙で濡らし、凸凹に腫れてしまっているけれど。

  まるで太陽のような笑顔だった。

  あれだけ暴力を振るわれても、優しさに満ち溢れた無邪気な笑顔がそこにあった。

  イヌ科の仔は、そんな彼の姿に、思わず唖然と言葉を失ってしまって。

  「……だ、大丈夫…」

  「……へへ…なら良かった。…いてて…っ」

  「……」

  ゴクリと唾を飲み、恐る恐る返事を返すと、少年はへにゃりと目元を緩めながら、そう言って汚れるのも構わずその場にドサリと倒れ込んだ。

  倒れていても腕の先は震えており、痛みと疲弊で身体はとっくに限界を迎えているだろうに、自分より何より、まず始めに他人の心配からする彼に、思わず言葉を失ってしまう。

  「オレ…赫夜スバル…お前は?」

  「……お、大神……大神…狼夜」

  「狼夜か……へぇ…あれだろ、最近この近くに引っ越してきた。」

  「…そ、そう…」

  「へへ…やっぱりな。…ヒーローの勘は当たるのさ。…うっ…」

  笑うと切れた口内が痛むようで、少年は顔を顰めながら苦痛に呻き声を上げる。

  あれだけの暴力を受けたにも関わらず、未だ話す気力があるのも驚きだが、なぜああまでして身代わりになってくれたのか、分からなくて狼夜は言葉が出なかった。

  「あいつら…」

  「…え?」

  「あいつら…猪野頭のグループには気を付けろよ。…よくこの公園でつるんでて、悪戯ばっかしてるから大人達も手を焼いてるんだ。……毎回毎回注意してんのに、ずっと反省しやがらねぇ。最悪な奴らだよ。」

  「……そ、そうなんだ。」

  どうやらあの猪野頭のグループは、地元でも評判の悪ガキ達だったらしい。平気でヒトに暴力は振るうし、誰彼構わず突っかかってワガママを通そうとするし、皆がいつも迷惑してるような、そんなどうしようも無い奴らだ。

  「……あ、あの…」

  「ん?」

  「……あの…お、おれ……おれの…せいで…そんな…あの…」

  「へへ…気にすんな!俺が助けたかったから助けただけさ!……ヒーローはどんな悪にも屈しない!…例え実力じゃあ叶わなくたって、弱い者を守るのがヒーローの使命さ。」

  「………凄いね…。…その…。…あ、ありがとう…。」

  「…良いってことよ!」

  スバルがそう言って笑うと、狼夜は何だか申し訳ない気持ちになりつつ、素直に彼を凄いと尊敬してしまった。

  自分なら、あんな風にあからさまに自分より強い相手へと、負けると分かっていて歯向かう事は出来ないし、しようとも思わないからだ。

  今回の発端だって、たまたま遊びに来たこの公園で、猪野頭に金を出せと言われたのがキッカケだったし…。

  正直に持っていないと伝えたつもりだったが、猪野頭はそんな狼夜の態度が気に食わないとイチャモンをつけて、突然殴りかかってきた。

  そして、どうしていいか分からず、助けも呼べないまま途方に暮れていた狼夜の前に、突然スバルが現れて、彼が身代わりになってくれたのだ。

  「また何かあったら助けてやるからな!遠慮なくオレを頼ってくれていいぞ!…ヒーローは人助けの達人なんだ!」

  「…え、えぇと……。……う、うん。」

  「よし!…またな!」

  「…ま、またね!」

  ボロボロの身体で、恩に着せるような事を言うわけでもなく、気丈に振舞うスバルへと、狼夜は自然と見惚れてしまっていた。

  お互い子供で、何なら同い年くらいなのに、こうも凄い人が居るものなのかと、子供心にとてつもなく衝撃を受けた事を覚えている。

  テレビや、本で見るヒーロー。たしかにヒーローは悪に屈せず、弱者を守ってくれるものだと思っていたけれど。

  狼夜は、たしかにスバルの後ろ姿へヒーローの面影を見た。きっと、本物のヒーローはこんな風にかっこよくて、とても優しい人なんだろうと、そんな高揚と確信が、幼く未熟な彼の心と記憶に深く刻み込まれた出来事だ。

  そして、その出会いが、これから先の運命を決定づけてしまうとは、まだ、お互いに自覚することなく…。

  [newpage]

  狼夜とスバルは、家が近いという事もあって、すぐにお互い仲良くなった。

  あれから、偶然出会った猪野頭にまた難癖を付けられ、虐められる所だった狼夜を、スバルが相変わらず無茶な手法で同様に助け、そんな彼を心配するように接した事がキッカケだったと思う。

  

  「くそ〜…猪野頭の奴……いてて…」

  「だ、大丈夫?…その…いつも…そんな風に?」

  「ん?…へへ…大丈夫大丈夫!アイツとはヤり慣れてるからさ!…うちの親はめちゃくちゃ怒るけど、もうこんくらいの傷なら全然へーきへーき!」

  「……そ、そうなんだ…」

  「あ〜あ、オレにも特殊能力があったらなぁ…」

  鼻血を出し、土に汚れた頬を拭いながら、スバルはそう言って大きく溜息を吐いた。

  ヒーローが生まれるキッカケとなった特殊能力。それは大体100年ほど前から突然、人々の中に現れ始めた力らしく、今でも殆ど詳しい事が解明されきっていない未知の力だ。

  自分の不思議な力に気が付いた人々が、その能力を使って銀行を襲ったり、警察を振り切ったり。それだけじゃなく、あまつさえ、死傷者を大量に生み出した事から、早急に対応が求められ、結果、ヒーローという“能力者に対する能力者“だけを集めた組織が、政府によって結成される事になったのだという。

  そして、ヒーローという存在は、今や国民の憧れの的であった。

  「たく…猪野頭め。…あいつ、能力持ってるくせに悪い事に使うなんて…許せねぇよ。」

  「……あの……あの子は…一体、ど、どんな能力なの?」

  「猪野頭の能力か?……詳しいことはオレも分かんないけど、多分よくある身体強化系の能力なんじゃねぇのかなぁ。……はっきり言って元からあんな見た目だし、力は強そうだから違いは分かんないけど、本人はリンゴくらいなら握りつぶせるって言ってた。オレらくらいの年齢でそんだけ握力があるなら、多分特殊能力なんだろ。学校の奴らは皆そう言ってる。」

  「……そ、そうなんだ。」

  猪野頭とその取り巻き、スバルと狼夜は全員同じ小学三年生だった。引っ越してきて間もない狼夜は、猪野頭が能力者であるという情報を聞いた事があっても、その能力が具体的にどんな能力なのかという事は、あまり詳しく知らない。

  しかし、元々この土地に住んでいたスバルによると、正式に能力者という決定が下された訳では無いらしいが、猪野頭は身体強化の能力者であるという噂が同じ学年内で広がっているらしい。

  本人達が自分からそれらの噂を広めているという事もあるが、実際にリンゴを丸々一個握り潰した所を見たという者が取り巻き以外にも数人おり、子供ながらに卓越した筋力を持っていることから、能力者であるのはほぼ間違いないというのが周りの意見だった。

  「あ〜あ、悔しいなぁ…オレにも炎とか氷操ったりする能力が発現しねぇかなぁ。そしたらあんなヤツ一発でノしてやるのに!……こんな若いうちから能力持ってる奴はかなり珍しいらしいのに、馬鹿だから使い方を間違ってるんだ。猪野頭は。」

  本来、能力というのは思春期に差し掛かる10歳から16歳の間で最も発現しやすいと言われている為、生まれながらにこうした能力を持っているという事はかなり珍しく、にも関わらずそれを悪事に使っている猪野頭を、スバルは非常に敵対視している。

  腕を前に突き出し、掌から何かを出そうとする仕草を見せたスバルだったが、当然の如く、そこから能力が撃ち出されることは無くて、彼はガクリと項垂れるように肩を落とした。狼夜も見よう見まねでやってみるけれど、同じように何か起こるわけでもなく、別に期待していた訳では無いが、なんとなく少し残念に思う。

  「なぁ?狼夜はもし能力を手に入れられるんなら、どんな力がいい?」

  「…お、おれ?……おれは……な、なんだろう。」

  考えて、何も思い浮かばなくて、肩を落とした。今までずっと田舎の方に住んでいた狼夜は、ヒーローなどテレビの向こう側の存在でしかなく、ある種非現実的なものだと考えていた為に、まるでそれを意識する事などなく育ってきた。

  都会と違って田舎の方に能力者は多くなく、居たとしても少し身体の調子を良くするとか、軽い物くらいならちょっとの間浮かせられるとか、そんなしょぼくれた力ばかり。

  強い能力に目覚めた者は、ヒーロー協会にスカウトされるか、その力を使って一稼ぎしようと地方を去る為、毒にも薬にもならないくらいの、パッとしない能力者ばかりが残っており、殆ど手品と変わらない見世物のようなものが、それまでの能力者のイメージだった。

  「夢がないなぁ。…例えばさ!イーグルクローみたいに空を飛んだりできたら気持ちいいだろうなぁ!…マグマフィストみたいな派手な力もカッコイイし、トリックゼロみたいな、一見弱そうな能力でも、使い方次第で相手を翻弄しながら戦うのも憧れちゃうぜオレ!」

  「う、うん…ふふふ。」

  スバルは、いつだってテレビの向こう側で活躍するヒーロー達に夢中だった。家には現役ヒーロー達の載ったヒーロー図鑑があったり、壁紙やベットのシーツさえヒーロー1色に染まった、所謂ヒーローオタクが彼という人物を的確に表す言葉だろうと思う。

  同時に、狼夜はそうやって目をキラキラ輝かせてヒーローについて夢中に語るスバルの横顔が好きだった。だから、ほんの少しでもヒーローの話をした途端、止まらない彼の言葉を、いつもうんうんと聞いては、飽きる事もなくスバルの話に最後まで付き合うのが狼夜の役目だった。スバルもスバルで、そうやっていつまでも話を聞いてくれる狼夜に無意識のまま甘え、いつもは他人にドン引きされて出来ないような詳しい話までしてしまうくらい、彼との関係は親密になっていった。

  そして二人は自然と親友になっていた。

  スバルは見た通り、元来の社交的な性格で友達も沢山居たが、ここまで詳しくヒーローの話をするのは狼夜にだけだった。そして、スバルと正反対の性格である狼夜にとっては、地元でも作る事が出来なかった唯一の友人であり、憧れの存在がスバルだった。

  家も近いという事で、遊ぶ時はお互いの家で遊ぶ。外で遊んでいたらいつ猪野頭一派が邪魔をしに来るかわかったものでは無いので当然である。

  学年が上がって、四年生になる頃には、クラス替えで同じクラスにもなり、すると二人の関係はもっと親密なものになっていった。休み時間だけでなく、登校や下校も二人でするようになり、いつしかスバルの話を聞いてヒーローに詳しくなった狼夜も、彼と同等かそれ以上に会話をする事が出来るようになっていた。

  それだけではなく、家族を伴ってヒーローの握手会に参加するなど、家族ぐるみでも付き合いが増えていく。

  そうやって二人は、日を追う事にどんどんと仲良くなっていくが、しかし、それを気に食わない者も一人存在していた。

  「チッ…アイツら…俺様の前で仲良くしやがって…」

  そう。猪野頭である。

  それまで、いつも突っかかってきたスバルをコテンパンに叩きのめしていた猪野頭は、実の所、スバルを虐めることに仄暗い優越感を抱いていて、彼を苦しませてビクビクと痙攣する様子を見たり、お漏らしさせる事に性的な興奮を覚えていた。

  どんなに酷い目に合わせても、変わらずヒーロー気取りで突っかかってくるスバルは、猪野頭にとってよく鳴く良い玩具だった。その上、首を絞めてやると見せる苦しそうな表情や、白目を剥く様、身体全体から徐々に力が抜けて、派手に痙攣する姿を見ると、得も言えないような高揚感に胸の奥がドキドキとして、ずっとそうして弄んでやりたいと思う。

  同時に、同年代から見れば一回り大きい肉体とは言え、まだまだ青年にも差し掛かっていない未成熟な身体。その下半身にある股間の奥が熱くなって、彼はそんな自分の身体の変化に気がつくことも無く、無意識のまま勃起する事もあった。というより、殆ど毎回、スバルの首を絞め、その反応を見る度、ズボンの下を硬くし、性的興奮を覚えているくらいである。

  だからこそ、最近は学校で「お漏らし野郎」等とおちょくっても、こちらをキッと睨み付けるだけで、その後はフンと顔を逸らし、昔のように突っかかってくる訳でも無くさっさと遠ざかっていくスバルを見て面白くないと心底思うし、更に言えば、二人がお互いの家で遊ぶようになってから、外で遭遇する事も減り、スバルを思い通りに痛ぶれなくなってしまって、かなりの欲求不満になっていた。

  元々俺様が目を付けてた奴なのに…!

  学校で二人が仲良く話している姿を見る度、猪野頭はそんな風にイライラが募り、机の下で酷く貧乏揺すりしながら、親指の爪を口の端でガジガジと噛む。

  その上、元々同じクラスだったスバルが、四年生に上がった事をキッカケに、別のクラスになってしまったのもイライラに拍車を掛けた要因だ。そして、都合よく大神と同じクラスになっただけではなく、たまたま授業の始まりのチャイムが鳴り響く教室の前を走って急ぎ通り過ぎた時に、二人が隣合った机で座っているのを見て、形容しがたい気持ちが猪野頭の胸の奥でチリチリと焦げるように燃え広がり、それが俗に言う嫉妬という感情である事を、まだ精神的にも同年代と劣る幼い彼では知る由もなかった。

  クソ

  クソ!

  クソ…ッ!

  だから、猪野頭の溜まりに溜まった言いようの無い不満は、もはや爆発寸前だったのだ。

  そして事件は、放課後に起こる。

  「……おい赫夜ぁ!ツラ貸せよ!」

  「はぁ……??」

  スバルと狼夜は空手部、猪野頭は柔道部の練習がある為、普段は下校時間が合わない筈であったが、その日だけは違った。

  付近でコンビニを襲ったチンピラの能力者…つまりはヴィランが居たようで、ヒーローが駆け付ける前に逃げてしまったらしく、未だ捕まっていないという事で、生徒達の安全を考慮した結果、早めの下校を強制されたのだ。

  その結果、当然のように部活動も軒並み中止。

  そうして都合よく下校時間が被ってしまったのが今回の事件の原因になった。

  猪野頭のそんな呼び止めに、スバルは呆れた様子で不機嫌さを隠す事もなく、片眉を上げながら挑戦的に振り返った。

  学校からそれなりに離れたいつもとは違う帰り道、管理されてないためか、脇道に草の生い茂ってしまうような、人通りの少ない廃工場地帯の一角で、見計らったように後ろから声を掛けられたのだ。わざわざ猪野頭の事を警戒してこんな遠回りをしたのに、それが失敗していたのだから不満に思わないわけもない。

  「なんだよ、猪野頭。わざわざこんな所までこそこそ後ろをストーカーしてきたのか?まったく暇なヤツだな。この変質者。」

  「うるせぇ!関係ねぇだろ!…俺様が来いっつったら大人しくついて来るんだよ!痛い目にあいてぇのか!あぁ!」

  「ふん…話になんねぇな。…行こうぜ狼夜!」

  「か、かっくん……。…うん。」

  「っ!」

  猪野頭の一方的な物言いに、スバルはいつも通りそっぽを向いて、その提案をあっさりと吐き捨てた。

  赫夜の赫をあだ名にする程親しくなっていた大神にも驚いたが、それよりもスバルが、咄嗟に大神の掌をギュッと握り締めて踵を返すと、その様子を見た猪野頭は、自分の提案が無視されたこと以前に、カッと頭に血が上って、視線の先へとノイズが走ったかのように錯覚する。

  「うがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

  「っ!…狼夜!逃げろ!」

  「えっ!?」

  猪野頭が、両手を前にして、猛獣のようにドタドタと走り出してきた。まるで意識を失っているかのように白目を剥き、こめかみに無数の血管を浮きだたせて、耳や突き出した豚鼻、口から蒸気のようなものを出しているのが確認できる。

  その異常な様子に、咄嗟に振り返って反応したスバルが、狼夜を強く突き飛ばした。猪野頭の軌道は、明らかに狼夜を狙ったものであり、スバルは彼を守るため躊躇うことなく身代わりになったのだ。

  「ぐわぁぁぁ!!」

  「ぶふぅぅぅ!!ぶぅぅぅ!!」

  明らかに猪野頭は正気な様子ではなかった。顔は真っ赤に充血して沸騰してしまっているかのようだったし、全身から煙をモクモクと吹き出してスバルの肘あたりから身体を鯖折りにして宙に持ち上げてしまっている。また、肉体は更に一回り大きくなって、もはや小学生のそれとは思えない身体付きになってしまっていた。

  「かっくん!!!」

  「逃げ…ろ…!…狼…がぁぁぁ!!」

  狼夜が慌ててスバルの名を呼ぶと、彼は相変わらず自分の事など後回しにして狼夜に叫んだ。

  スバルの尋常ではない悲鳴を聞いた狼夜は、顔面を蒼白にして、恐怖に荒く息を吐き、まるでパニック障害を引き起こしているかのように喉を引き攣らせてその場から動けないでいる。

  言った通り狼夜は元来臆病で気弱な性格だった。狼獣人なのだから、もっと胸を張って堂々と生きろ!と、田舎に住んでいた時一緒に暮らしていた祖父にはよく叱咤されたものだが、むしろその叱責がトラウマになって、尚更殻にとじこもるような性格になってしまった。結局、彼が亡くなってこちらに引っ越してきた後も、暗い部屋に閉じこもり、そのせいで半ば無理やり親の手によって外に出され、そして猪野頭との惨事に遭遇。結果的にそれがスバルとの出会いを引き寄せたわけだけど、その時に感じた猪野頭への恐怖は未だに強く狼夜の心を蝕んでいる。

  地元で元々通っていた学校のクラスメイト達にも、影でコソコソと陰口を叩かれ、オドオドしている様子が見ててイライラすると、結局友達の一人も出来ない苦痛ばかりの学校生活だった。

  スバルと出会ってからは、少し改善したような気もするが、結局スバル以外の友達は出来ていないし、そんな臆病な自分を変えるため、彼と同じ空手部に入部したけれど、これもまたスバルに助けられてばかりの状態で、いつも何かある度、何の見返りも求めず、空で輝く太陽のように、ひたすらこちらを照らし続けてくれる彼へと、何もかも尽くされる日々。

  結局、そう簡単にヒトは変われないという事なのだ。いつだって助けてくれるスバルへおんぶにだっこで、しかしそんな環境を心の底では心地よく受け入れている弱くて醜い自分も居た。

  今だって、唯一の親友が目の前で苦しんでいるというのに、自分はその場に震えて立ちすくむ事しか出来ないでいる。それどころか、一丁前にズリズリと踵だけは後ろに動いて、その場から尻尾を巻いて逃げようとする最悪な自分がいる事にも気がついていない。

  ガタガタと震えて、見上げた視線が猪野頭と交差した気がした。それは気のせいではなく、明らかに彼の敵意が、その瞬間こちらに向かってきていると確信する。

  すると、唐突に猪野頭の力が弱くなって、スバルは地面に放り捨てられた。グッタリと、猪野頭に与えられた痛みによってその場で動けなくなり、息も絶え絶えに彼を見上げれば、猪野頭はゆっくりと、狼夜に向かって足を動かしており…。

  「やめ…ろ…!…狼夜…逃げ…っ」

  「ひっ……ひぅっ…」

  「ぶふぅぅぅぅ」

  スバルのそんな懸命な声は、狼夜の怯えた耳には届かなかった。怪物と化した猪野頭も勿論反応するわけがなく、逃げる事が出来ないと理解しているのか、まるでカウントダウンを数えるように、一歩、また一歩と、その歩を進めていくのだ。

  「ぶふぅ!ぶふぅ!」

  「ぁ……ぁ…」

  そしてとうとう、猪野頭が狼夜の目の前に立ちはだかった。豚鼻から大量の蒸気を吹き出す猪野頭が狼夜を見下ろすと、彼は恐怖によって言葉を失い、掠れた声でそれを見上げる事しか出来ない。

  背後では、スバルが懸命に身体を引き摺りながら迫ってきていた。どうにか腕を伸ばして助けようとするけれど、身体が思うように動かなくて、視界が霞む。

  そして、そんなスバルの奮闘など虚しく、猪野頭が腕を持ち上げると…。

  「やめ…っ」

  「ぁ……」

  「ぶふぉぉぉぉ!!」

  渾身の拳が狼夜を襲った。それは顔面にクリーンヒットし、声すら出す暇もなく、彼を勢いよくその場から吹き飛ばす。

  その威力は絶大で、狼夜の身体がクルクルと回転しながら草むらに落ちる程だった。鼻から垂れた血液が飛び散り、まるでスローモーションにでもなったかのように、情景がゆっくりと流れていく。

  「狼夜ぁぁぁぁぁ!!」

  守ると誓った相手を守る事が出来ず、スバルは自身の無力感に苛まれながら彼の名を叫んだ。将来ヒーローになる。その為だけに努力し、真面目に武道にも取り組んで、真剣に全てを費やしてきた人生なのに…。

  そんな事を考えてはいるけれど、それもそのはず、高々10歳にしかならない少年の決意や努力など、どれほど根を詰めた所で程度が知れているというものだ。特に、この世界においてなんの能力も持たない一般人が、猪野頭のような能力者に勝てる道理はなく、ある意味でこの現状は、取るに足らない些細な日常の一コマでしかないのである。

  そう、この100年の間、能力者が生まれ落ちるようになった現代では、こんな出来事なんてもはや当たり前のこと。

  「ぅ……ぁ……」

  一瞬景色が真っ逆さまに落ちて、視界が明滅したようだった。

  何が起こったのか。何をされたのか。脳震盪を起こして揺れる脳みそでは思考する事も出来ず、狼夜は視線を回しながら空を見る。

  「かっ…く…」

  ぐわんぐわんと頭が揺さぶられるようだった。マズルの先端が微妙に湿っていて、黒みがかった鼻先の毛にベットリと赤が滲んでいる。

  どうにか這いずるようにして腕を動かし、草根を掻き分けるようにした。頭では状況を理解する事が出来ないけれど、身体が勝手にそう動いて、自然とスバルの姿を探すよう、求めているようだ。

  「〜〜〜っっっ!…ぇ゙〜っ…ぇ゙っ…っ…っ❤❤」

  「ぶへ…!ぶへへぇ!❤」

  そして、見えてしまった景色は……あの日の絶望。

  一年前のその日、この街に引っ越してきて、始めて出会った時の猪野頭に植え付けられたトラウマがまた、記憶の底からバチバチとフラッシュバックするよう、鮮明に映し出されている。

  スバルは猪野頭に背後から首を絞められ、完全に足がつかない状態で持ち上げられて、全身をガクガクと震わせながら脱力していた。

  瞳は痙攣する瞼の裏を忙しなく行き来し、ダラリと舌を垂らした口の端から唾液を垂らして、しかしその表情には何故か、なんとなく恍惚を秘めているようにすら見えてしまう。

  猪野頭は、下品な笑いをあげながら、相変わらず暴走状態でその様子を楽しんでいるようだった。

  理性を完全に失っているように見えても、本能がそれを求め、スバルの肉体を好き勝手玩具にする悦楽を貪欲に楽しんでいるようだ。

  「ぶへへぇ❤もういっかいっ!❤もういっかいっ!❤」

  「も…やめ゙…っ❤…やれ゙べっ…❤げ…っ!?…ェ゙〜〜〜〜〜〜っっっっ❤❤」

  スバルのそんな懇願も虚しく、猪野頭は白痴になったかのような様子で、今度は彼を地面に押し倒し、その首を両手で上から押さえ付けた。

  喉が押し潰される圧迫感に、頭が破裂してしまいそうな圧力を感じ、耳が遠くなって、目尻が熱くなる。

  猪野頭の分厚い両手を掴んで、ザリザリと地面を蹴るようにしながら必死に抜け出そうと蠢いた。しかしそんな抵抗など、何らかの能力の暴走によって大人程の体格を得た今の猪野頭には通用するわけも無く、いつもと同様、ゆっくりゆっくり、脱力するよう収まっていく。

  「〜〜〜〜ぇ゙ぇ゙❤……ぇ゙…❤」

  喉が潰れたような、ひしゃげた“音“が出て、魚が跳ねるようにスバルの全身がビクンビクンと大きくうねる。

  苦しいはずなのに、辛いはずなのに、けれど思考が真っ白に染まって、意識を失う瞬間が、何故か非常に心地よい。

  それは酷く眠い感覚の中で、微睡みに身を預けるように……。

  それは流れる温かいお湯の中で、ゆっくりと全身をその中へと沈めるように……。

  怖くて、開放的で、気持ちよくて、ゾクリとする。

  いつものように、じょろじょろと反射的に小便を漏らした。溢れ出るその体液の温もりが、尚更股座を快感で包み込んで、頭がおかしくなりそうになる。

  いや、ひょっとしたらもうとっくにおかしくなってしまっているのかもしれない。

  霞がかる視界の向こう側、猪野頭のニヤついた顔がこびり付いて離れなかった。

  「……かっ…く…?」

  そして一方、未だ朦朧とする意識の中で、狼夜はただそんな二人の狂気じみた様相を横からひっそり眺め続ける事しか出来なかった。

  呆然と口をついて出たスバルの愛称は虚しく空を切り、常軌を逸した猪野頭の行為の前には無惨にも呆気なく霞んで散り散りと細かく消えていく。

  言葉が志半ばに途絶えてしまったのは、恐怖やジクジクと未だ全身を襲う鈍痛、それへ助け舟を出せない虚しさからではなく、胸の奥にチリチリと燻る火花のような何かが、全身の血液を伝って身体中に流れ、下半身に集中して得も言えぬ感情を巻き起こしたからであった。

  そしてそれは、二人が目の前で繰り広げている背徳的な行為を見て沸き起こった感情というよりも、ただの一方、首を絞められ、派手に痙攣し、醜くも情欲的な、どこか恍惚とした表情を覗かせるスバルの、そんな横顔へと釘付けになった結果の末である。

  狼夜は人生で始めて勃起という、性的興奮による生理的現象をその身に感じていた。そしてそれはまた、スバルの首を絞め付けている猪野頭の方も当たり前に同様であった。彼にとっては始めてでは無いけれど、暴走と共に肥大化した股間が、横からでも明らかに見て分かるほどズボンを押し上げ、ビクビクと縦に震えている様子が見えている。

  狼夜は、自らの下半身の違和感には気付かないまま、とにかく言葉では表現出来ない複雑な感情に苛まれながらも、ただいつまでも、最後までスバルから目を離すことが出来なかった。

  それから…。

  何度も…

  何度も…

  何度も…

  何度も…。

  目の前で首を絞められ、その度に全身を打ち上げられた魚のように震わせるスバル。

  最初、始めてスバルと出会った時、猪野頭に同様の事をされて、苦しむ彼を見た際には、どうやっても感じえなかった筈の感情が、今どうしようもなく溢れて、止まらなくなってしまっている。そしてそれは、二人がこれまで一年もの間一緒に過ごしてきて、強い絆を得た今だからこそ。芽生え、覚醒し、弾けて、開いた。

  そして、狼夜の中に芽生えていたその想いを強烈に刺激し、それをそのままぐちゃぐちゃに、元の形など分からぬほど歪に、閉じた蕾を広げてから、もう戻る事が無いほど、醜くゆがませてしまったのだ。

  

  そうして、ひとしきりスバルを弄んだ猪野頭は……。

  息を荒く吐きながら、得意でもないのに無理をして全力疾走していた。硬く肥大化した肉体を縦に揺らし、どこか焦った様子ですっかりと暗くなった夜道を走りながら、とにかくひたすら家を目指してがむしゃらに歩みを進めている。

  猪野頭の家は代々八百屋を営む農家の家系で、この恵まれた体格も沢山の栄養豊富な野菜からくる健康的な肉体であった。猪というのは種族柄太っているように見られることが多いけれど、その実この身体には筋肉が詰まっていて、こうして順調に成長していけば、それはそれは大きな身体になるに違いないと、彼の父親はいつも期待したようにそう周りへと自慢している。

  そして、家に辿り着いた猪野頭は、乱暴に玄関の扉を開けると、そのまま自分の部屋がある2階へと駆け上っていった。

  途中、居間の方から「拓哉!!こんな時間まで何してやがった!!」と父親の怒鳴るような声が聞こえた気がするけれど、それに返事を返す余裕もないまま、部屋の中に閉じこもって扉を背に寄りかかる。

  「はぁ…はぁ…っ…お、俺…っ」

  荒く息を吐いて、血の気の引いたような表情をしながら、猪野頭は先程自分がしてしまった行為を思い返していた。

  スバルがこちらの要求を無視し、大神の手を握った所で、何故か自分でも予想外なくらいに頭へ血が登ってしまったというのは確実に覚えている。そうしたら、まるで視界全体に砂嵐のような白黒のノイズが走って、そして、気がついたら大神を殴り飛ばし、そのまま欲望の赴くようスバルの首を絞めつけてしまっていた。

  鮮明に全てを思い出せる訳では無いけれど、全く記憶が無いというわけでもなかった。まるで自分の身体の内側にもう1つの部屋があって、その中へと強制的に閉じ込められたような感覚に陥り、そこでモニター越しに生々しい映像でも見せつけられているような、そんな感覚に囚われ続けていた。

  そして、気が付いたら、気絶するスバルの首に手を掛け、ぼんやりとそれを見下ろしている自分に気が付き…。

  怖くて怖くて仕方がなかった。

  柔道を習っている為、寝技などで相手を気絶させ慣れてるお陰か、結果的に彼を殺すような手遅れにならなかったのは僥倖だけれど、今回のこれは明らかにやり過ぎだと、脳が忙しなく警告を鳴らしているようだ。

  心臓がバクバクとうるさいくらいに高鳴って、呼吸は浅く、全身から冷たい汗が流れ出る。

  あの時の自分はどうかしていた。そして、一体何故あんな理性を飛ばすような状況になってしまったのか、それも理解が出来ず、色々なことがありすぎて脳の整理が追いつかない。

  ふと、何か違和感の強く残る自らの下半身に目をやり、そっと、恐る恐るズボンの中へと手を突っ込んでみれば……。

  「……濡れてる…」

  パンツはもはやプールに浸かったのかと錯覚する程に濡れそぼっていた。それは汗なのか、それともスバルが漏らしていたようにいつの間にか小便でも出してしまったか。確かめるように恐る恐る触ってみると、驚く程ネバネバしていて、糸を引くような、透明な粘液だとわかった。俗に言うカウパーというヤツで、こう見えて幼い身体はまだ精通を体験することはなく、しかし、もう殆どそれに近い感覚を、猪野頭が今日のうちに味わっていたのは明確である。

  ブルリと一瞬背筋が震えて、あの時の感覚をハッキリと思い出した。

  高揚感。征服感。達成感。満足感。

  どうしようもなく脳みそが弾けて、どうしようもなく気持ちよかったような、そんな気がする。

  それは、猪野頭の今後の性癖を決定づけるには充分過ぎる記憶であり……。

  「……もう…いっ…かい…❤」

  彼の欲望を飢餓感で埋め尽くすには、それこそ充分過ぎる経験でもあったのだ。

  そして一方、ほんの少しだけ時間を戻せば…。

  震える腕で懸命に地面を押し掴み、何とかその場で上半身を起こした狼夜が、倒れたスバルの方へ悲しげに視線を向ける。這う這うの体で、ゆっくり立ち上がると、挫いた足を引き摺るようにして、どうにか彼の元へと辿り着く事が出来た。

  そして、殆ど倒れるようにしてその場に膝を着くと、ぐったりと力無く道路へ寝そべったスバルを見下ろして、狼夜は思わず、堰を切ったかのようにボロボロと涙を流す。

  全ては自分の責任のように思えた。せめてほんの少しだけでも猪野頭に抵抗する事が出来たなら……、そんな風に考えては、同時にそれが現状ではどんなに頑張っても無駄に終わるだろう事を理解している。

  それでも、これまでずっと怠惰に過ごしてきたツケが、今になって帰ってきたことには変わりないと思う。スバルの強さに甘えて、彼の作る陽だまりの中に甘えて、ただぬくぬくと温まり続けていた結果が、今回の悲劇に繋がってしまったに違いなかった。猪野頭という暗雲が、スバルという太陽をすっかり覆い隠してしまうと、ただそれを見上げるだけの自分は、何もする事が出来ずに、降り注ぐ雨に打たれるままとなってしまう。その癖、寒い寒いと震えるばかりで、スバルの与えてくれる熱が、彼自身をゆっくりと傷付けている事にも気が付かなかった。

  温めよう温めようと無理をすればするだけ、彼は自身の熱に焼かれて身を焦がす、その犠牲の上に、狼夜の陽だまりは作られているという事を知りもせずに、……いや、知っていてなお、気付かぬふりをし続けていたのだ。

  ――矮小で、最低で、最悪な自分。

  それはまるでドロドロと、地を這いながらいつの間にか周囲を変容させてしまう、毒沼のような醜い悪意に他ならなかった。

  

  涙を流しながら、見下ろしたスバルの、その細くて白い、美しい首筋に視線が向かうと、狼夜の頭に、先程まで行われていた行為の情景がフラッシュバックする。

  舌を出し、唾液や鼻水を漏らしながら、じょろじょろと股下を濡らす無様なスバルの姿。

  意識を失う直前の、魚が跳ねるような身体の痙攣。弾けてしまった言いようのない欲望。

  思い出しているといつしか、好奇心が涙を止めていた。飲み込んだ唾が喉を溜飲する感覚が妙に鮮明にわかってしまう。

  そっと伸ばした震える腕。静かに忍び寄る両の手のひらが、スバルのか細い首すじへと狙いを付け、そしてその指先が僅かに肌へと触れてしまえば……。

  「ごほっ!ごほっ!〜っ!あ゙っ!」

  「――っ!?」

  突然大きく咳き込み、背中を激しく地面に打ち付けながら全身を揺らしたスバル。意識を取り戻し、何とか呼吸しようと慌てふためく彼の動きに、狼夜は思わずハッと腕を引いて、それを気まずく背中に隠した。

  派手に何度も咳を零し、それが落ち着いた後も少しの間ぼんやりとして、荒く息を吐いたスバルは、ふと、視界の端に狼夜の姿が見えると、心配する彼に肩を抱かれるようにしながら、何とか上体を起こす事に成功する。

  「狼…夜…」

  「…か、かっくん……あの…おれ…」

  「ごめんな!「ごめんなさい!」」

  「……え?」

  お互いの言葉が重なるように飛び出して、しかしそれを聞いて驚いたのは狼夜の方だった。

  スバルは、謝罪の言葉と共に狼夜を強くギュッと抱き締めると、ただ心底悔しそうに歯を食いしばり、眉間に皺を寄せながら顔を顰めている。

  「オレが……オレがもっと強かったら…、お前をこんな目に合わせなかったのに!!」

  「……そ、そんな…」

  スバルはそう言って、結局先程の惨事も自分のせいだと全て背追い込もうとするけれど、むしろそんな彼の態度が、今の狼夜にはただひたすら辛いものだった。

  相変わらず彼は、あんな目に遭ったというのに一切めげたりもせず、いつもと変わらない輝きと暖かさを持っているけれど、実際のところ、自分が弱くて、矮小で、卑屈だから、そんな自分を守る為に、スバルが代わりに傷付いてしまっている。狼夜は今回の件で、その事にどうしようもなく気付かされていた。

  だから、彼が謝る必要なんてないし、むしろこちらが謝らなければならないのに……、スバルは、悔し涙を流しながら、狼夜の身を案じ、そして全ての責任を背追い込もうとする。

  「オレ…オレ……もっと強くなる!…強くなって、絶対にあいつに勝って…、それで、立派なヒーローになるから…!」

  「……かっくん」

  「絶対にもう、お前に手を出させるような事はさせない!…オレがお前を…守るんだ!!」

  「……うん」

  スバルがそう自身を奮い立たせて決意すると同時に、狼夜もまた、そんな彼の身体を抱き締めながら、心の中で強く決意していた。

  絶対に、絶対に強くなる。今までのように、ただ守られるだけの存在じゃなく、スバルの優しさと愛に報いる為、彼の温もりを享受するだけの自分とは、ここでお別れだ。

  いつか彼の傍で、彼の隣に並んで歩ける存在になれるように。そして自分もまた彼を守り、いままで一方的な与えられた愛を、いつも、いつでも返す事が出来るように。そう努力しようと決意した。

  少なくとも、自分を守って、スバルがまた傷つかないように。

  ――運命の歯車が、音を立てて回り始める。

  かつん…

  かつん…

  そんな些細な音がして、部屋に閉じこもっていた猪野頭は、ふと、気煩わしげに顔を上げた。

  音は窓から聞こえてきており、それはただの聞き間違いではなく、明らかな意図を持って示されている。

  何事だろうかと、気が進まないながらにベットから降りて、窓を開ければ、下に居たのはまさかのスバルで。

  「っ…!?」

  「………中に入れろ」

  全く想像していなかった訪問者に、猪野頭の胸の奥がドクドクと忙しなく鼓動した。つい先程、やり過ぎる程に痛めつけてしまったハズの相手が、今目の前にいて、わざわざ話しかけてきている。

  その様子は明らかに不機嫌そうであり、そしてどこか思い詰めたようでもあった。

  猪野頭は、なるべく平静を装って、こっそり1階へと降りると、父親にバレないよう、玄関の扉を開ける。

  「………」

  「……なんだよ。さっさと入れろよ。」

  何を言われるか気が気ではなかった。今までスバルに沢山の嫌がらせや虐めをしてきたけれど、彼が本気でこちらを拒否するような事はなかったし、そんな彼の甘さに救われていた。

  猪野頭は、スバルの事がいつも気になっていて、そして気に入ってもいる。最初は自分に反抗してくる生意気な奴だと思っていたけれど、凝りもせずに突っかかってくるスバルを、どこかライバルのように感じていたし、彼のその愚直な真っ直ぐさに、猪野頭自身、いつの間にか魅力されていた。

  こっそりとスバルを家の中に招き入れて、部屋へと案内する。いつもだったら幾らでも勝手に口をつく、色々な煽りや皮肉の言葉さえ出てくることはなくて、空気は重たく、今まで感じたことの無いような緊張感が漂ってくるようであった。

  短い道中であるが、お互いに一言も発する事はなく、部屋の扉を開けて中に入ると、周囲を見渡したスバルがひと言「…きったね…」と呟いた事で、なんだか少しだけ気分が落ち着いた気がした。

  「う、うるせぇ…。」

  悪態をついて、ベットへドサリと腰を下ろした。スバルもどこか緊張してるのか、手持ち無沙汰になりながらも、結局座るところを見つけられずに、隣に腰を下ろす。

  風呂に入りたてのいい匂いが、猪野頭の敏感な鼻の粘膜へこびりついた。妙にドキドキと心臓が高鳴って、胸の中でバチを持った小人が、心臓を激しく叩いているのではないだろうかと、そんな事すら錯覚したくらいである。

  少しの沈黙。居心地が悪くて、でもなんだか悪い気分ではない。チラリと横目でスバルを見下ろすと、フワフワと撫で心地の良さそうな髪が、左右に揺れている様子が見えていた。

  「なんだよ……。今日のこと…親か先公にでもチクる気か?」

  「…………」

  正直、どう転んだとしても、今回の件はやり過ぎだったと自分でも思う。

  わざわざ後をつけて、キレて、殴って、絞めて。

  スバルがそれを周囲の大人達に相談すれば、猪野頭は手痛い叱責を受けるだろうし、それが目的だろうとなんとなく思っていた。

  けれど……。

  「………もう、狼夜に手を出すな。」

  「……はぁ?」

  スバルの口から出た言葉は、その予想した言葉どれとも違う。全く考えてもいない言葉だった。

  彼はそんな猪野頭の様子に気付くこともなく続ける。

  「……オレの事はどうでもいい。……でも、狼夜は良い奴なんだ。……優しいし、よく気を使える、素直で無邪気な奴だ。…だけど気弱だし、大人しくてお前みたいな奴とは根本的に合わない。暴力とも無縁だ。…オレはあいつを守ってやりたいし、守ると誓ったんだ。…だから」

  スバルはそこで言葉を切ると、どこか悔しそうに俯いて、握りしめた拳を震わせた。

  本当は、猪野頭にこんな交渉をすること自体、今までの自分の価値観では認められない事だけれど……。それでも、わざわざこうして足を運んできたのは、今の状態では猪野頭に勝つ事は絶対出来ないという、無力な自分を自覚しての事だった。

  それこそ、大人に頼るという手もあっただろう。けれど、ヒーローという憧れに異常な程の執着を見せるスバルにとって、彼等の力は自分とは全く関係のないもの。あくまでスバルは、自分だけが持っているいずれかの選択肢の中で、最良を目指した結果、猪野頭という悪に交渉するという、その判断に舵を切ったのだった。

  ヒーロー達も、時には因縁のライバルであるヴィランに交渉をする時がある。それは彼等が何度も拳を交える事によって、正義と悪という相見えぬ関係の中でも、信頼関係を築いている証拠であった。

  猪野頭はいけ好かない奴だが、長い間お互いに喧嘩し続けた実績がある。スバルは、そんな彼との僅かな絆に全てを賭けたのだった。

  猪野頭の口角が、ほんの僅かに釣り上がる。

  「ぶへへ…。良いぜ。その条件、飲んでやるよ。」

  「っ…ほ、本当か!?」

  「おう。……けどその代わり、親とか先公に俺らのこれをチクるのは無しだ。」

  「……元からそのつもりだ」

  「それだけじゃねぇぜ。……お前、自分はどうなってもいいっつったよなぁ?……ならお望み通り、大神の代わりにお前が俺様のご機嫌を取りな。ぶへへ。」

  「くっ……!」

  猪野頭のそんな要求に、スバルは一瞬歯をかみ締めて彼を睨みつけたが、直ぐに諦めて肩を落とした。

  実際、身代わりになると言ったのは自分だし、それで狼夜に手を出さないと誓うのなら、スバルにとってそれが全てだ。

  けれど一つだけ、どうしても嫌な事があって…。

  「……この事、狼夜には秘密にしてるんだ。……だからその…あいつの居るところでは…」

  スバルのそんな言葉に、尚更猪野頭の笑みは深くなる。そもそもスバルが考えているご機嫌取りと、猪野頭の考えるご機嫌取りでは、その内容にずいぶん大きな差があって、彼が考えているのは精々取り巻きの一人になって奉仕させるとか、そんなもの。けれど、猪野頭の考えるご機嫌取りとはつまり、彼がいつしか目覚めさせていた欲望。それを発散するための、仄暗く背徳的な癖。スバルの首を絞めたいという、ヒトに知られてはいけない禁忌だ。

  「ぶへっ!我儘の多いやつだな。……まぁいいぜ。…なら、俺が呼んだらすぐ来いよ。その代わり、この事は全部周りに内緒だ。いいな?」

  「………わかった。それでいい。」

  「……ぶへへ」

  考えていた内容よりも、ずいぶんこちらの都合よく事態が進んだ事で、猪野頭は思わず下品な笑いを堪えることが出来ずにいた。

  これからは誰にも邪魔されず、合理的にスバルの首を絞める事が出来る。そう考えると、また下半身に熱を持つような、そんな気になった。

  「じゃあ早速、遊んでやるとするか。ぶへへ…」

  「い、今か!?」

  「あたりめぇだろうが。」

  「くっ…」

  猪野頭がそう言って部屋を出ると、暫くした後、手になにかシートのようなものを掴んで戻ってきた。その足下には、ぴょこぴょこと跳ねるように動き回る謎の生物がいる。

  「も、モチゾウ!?…お前ペットなんか飼ってたのか?」

  「あ?悪ぃか?」

  モチゾウとは、この世界における一般的なペットで、ツルツルとした毛のない肌に、吸い付くようなモチモチの感触を持つ人懐っこい生き物だった。身体は丸みを帯びていて、長く垂れ下がった耳を持ち、伸縮自在の象に似た鼻を持っていて、犬のようにハッハッと舌を出しながら呼吸する。

  モウ!という個体によって高低の違う鳴き声を出し、大型犬程もある大きな身体をしていて、四足歩行だ。愛嬌があって、大型だけでなく、猫くらいの小型の個体や、単色から、牛のような模様を持っていたりもするなど、非常に多様な生態を持つ生き物であり、言った通り広く一般的に飼われている最もポピュラーなペットである。

  モチゾウは、スバルの姿を見ると、人懐っこく先細りした尻尾をフリフリと振って、身体をこすり付けてきた。

  「可愛い…」

  「モ゙ウ!」

  薄茶色い身体はペタペタとした吸い付くような肌触りで、それこそ餅のように柔らかく柔軟性があった。猪野頭は、そんなスバルの様子を無視して床に大型ペット用の大きなトイレシートを敷くと、振り返って不敵にスバルを睨み付ける。

  何をする気だと、警戒に強ばるスバルを見下ろした猪野頭は一言。

  「脱げ」

  「……は?」

  「ズボン脱げよ。どうせ小便漏らすんだろうが。」

  「なっ!?」

  猪野頭のそんな馬鹿にしたような言葉に、スバルは耳まで真っ赤にして恥ずかしさに目を見開いた。プライド的にも悔しいし、猪野頭に馬鹿にされた事も腹が立つが、狼夜の身代わりになって、こいつの要望を聞くと言ってしまった手前、逆らうことも出来ずに、意を決していそいそとパンツ毎ズボンを脱ぎ去る。

  「これでいいかよ!」

  「ぶへへ!へぇ、人間のちんぽってちっちぇなぁ。」

  「…死ね!」

  羞恥心に顔全体が熱くなるが、スバルはヒーローの吟時だと自分に言い聞かせて、そんな苛立ちを何とか心の中に押さえ込んだ。

  小便を漏らすという言葉から想像するに、どうやら猪野頭はまたこちらの首を締め付けて楽しむつもりなのだろうと思って、そんな暴力的な思考ばかり思い浮かぶ彼にうんざりとする。

  いつか、特殊能力に目覚めさえすれば、こんなヤツコテンパンにやっつけてやるのに…!

  スバルは、10歳から覚醒しやすいと言われる自身の特殊能力を想像して、それまでの辛抱だと決意を新たにしたのであった。

  猪野頭によって促されるまま、スバルはトイレシートの上へと誘導される。

  「ぶへへ…!これからたっぷり絞めてやるからなぁ。覚悟しろよ赫夜ぁ。」

  「くっ…!このサイコパ…ッッ…〜〜〜!!?」

  言い終わる前に、背後から背中に密着した猪野頭が、ゆっくりとスバルの首を前腕で覆い隠し、締め付けた。

  全身が強ばって、恐怖が心を支配するけれど、憧れのヒーロー達を思い浮かべて、なんとかそれに抗おうとする。

  息が出来ない。苦しい。もう嫌だ…!

  そんな弱音が心の底から湧き上がってくるけれど、次第に酸欠の脳は思考回路を狂わせて、考える余裕すらなくなってしまう。

  「〜〜ェ゙…!❤…ぇ゙ぇ゙……❤」

  「ぶへっ❤」

  それからはもういつも通り。

  スバルはガクガクと全身を震わせながら、無様に小便器を漏らして意識を遠く暗転させてしまう。トイレシートに黄色い染みが広がっていき、ふんふんとその匂いを嗅いだモチゾウが、ただ貪欲な好奇心の赴くままに、スバルの股間へと鼻先を伸ばしていく。

  「モ゙ウ!」

  「ぁ゙……?❤」

  野太い鳴き声と共に、尻尾を忙しなく振り回したモチゾウが、スバルの股座へと顔を押し込んで、彼の小さなチンポを舐め上げた。

  既に白目を剥いて、現状を把握する事も出来ないスバルは、突然下半身を襲った生暖かい舌の感触に、直接的な快感の目覚めを感じ取るけれど、具体的にそれが何なのか、なぜそう感じてしまうのか、理解することも出来ずにただ受け入れるしかない。

  モチゾウは、その長く野太い舌を使って、器用にスバルのちんぽへと吸い付いた。普通の獣とは違って、人間のように柔らかい唇で、優しく愛撫されると、スバルは人生で初めて、勃起という生理的現象をその身に味わう。

  意識を失いそうになる言いようのない感覚と似ているそれは、未熟な彼の肉体に、歪んだ淫楽の喜びを教えこんでいくのだ。

  そうして、猪野頭の手により、その日だけでなく、定期的に首絞め性感を開発されていくことになったスバル。

  それだけならいざ知らず、猪野頭は、時にスバルの腹を殴る等、彼の肉体を無意識のままに、所謂M奴隷という人種へと、調教してしまっていたのだった。

  彼の波乱は、まだ始まったばかりだ。

  [newpage]

  狼夜本人にはまるで秘密だが、彼を守りたいというある種一方的な、見方を変えれば、どこか歪んでいる、その自分勝手なエゴの為に、定期的に猪野頭のサンドバッグ…もとい、彼等が知る由もないが、無意識のM奴隷として調教を受けるようになってしまったスバル。

  彼は認めていないし、おそらくそれを認識した所で認めようともしないだろうが、日に日にそうした調教を受ける中で自然と、スバルは痛みや苦しみに快楽を見出す身体に変化させられ、順調に歪んだ性癖の芽を育みつつあった。

  幼く未熟な精神では、それが性的な快感であるという事を認識出来ないが、頭の片隅の方で気持ちいいという感覚だけは既に目覚め始めているようだ。

  けれど、ヒーローはどんな苦しみや痛みにも屈しないという、そうした彼にとっての常識が、その認識を歪めているようで、快楽は忍耐と混合され、奇跡的な食い違いを見せていたのであった。

  一方、そんな事など知る由もない狼夜はと言うと…。

  「ふっ!ふっ!ふっ!ふっ!」

  この二年の間、毎日のように身体を鍛え上げ、彼の中で日の目を見る事も出来ず、燻っていた筈の自信や、男としての吟時、価値観が、順調に芽を出しては、育っている様子が伺えた。

  それはひとえに、スバルに守られているだけの自分ではいけない。スバルと共に歩み、彼の隣に立って、互いに守り合える存在でいたい。そう決意したあの日から、こうして人知れず空手の型を一から復習するなど、一心不乱に努力を積み重ねてきた結果である。

  その上で、成長期が訪れた肉体は、狼獣人の血筋もある為か、日に日に逞しく、大きくなっていって…。

  「狼夜…また背ぇ伸びたか?」

  「え?…そ、そうか?」

  「うーん……クッソー…とうとう身長追い越された…。」

  「そ、そんな事ないさ。…俺は耳の長さもあるから……な?」

  「耳合わせたらもう全然叶わねぇよ…!…ま、身長なんて別にヒーローには必要ねぇからいいけどさ。」

  「そ、そうそう!」

  小学校も六年になり、徐々に人間と獣人の身体の成長に差が生まれようとしていた。元より、人間は知能面で、獣人は肉体面で優れていると言われており、人種によって違いもあるが、どちらかが優れていれば、大抵はどちらかが劣っている…というのがこの世界の常識だった。

  勿論、そのどちらも兼ね備えた完璧な存在が産まれる事だって往々にして有り得る。

  狼夜は、肉体の面でスバルに勝り始めている事を悟ると、彼のプライドを守る為、わざとテスト等の点数を低く調整して、知能で劣っている振りをしていた。

  それに、そうすれば、勉強を教えて貰うという体で、スバルと二人きりになれる時間も増えるし…。

  自身ではどうやら気付いていないようだが、狼夜は明らかに“持てる者“の素養があった。

  一方、スバルは未だに能力へと目覚めている訳でも無く、肉体の成長も周囲より明らかに遅い。あれから必死に努力して、毎日のように鍛錬しているけれど、今では狼夜に身長ばかりか、腕や足の太さ、肉体の分厚さ等でも負けている自覚があった。

  見比べるようにして視線をチラチラと送っていた相手が、部活でぐっしょりと汗に濡れたシャツをおもむろに脱ぎ去ると、その美しくしなやかな肉体に、自分のみならず、周囲の目を釘付けになる。

  「…ふぅ」

  「………………なんかいらつく」

  「ん?何か言ったか?」

  一挙手一投足に至るまで、全て絵になってしまうほど、恐ろしく眉目秀麗に成長した狼夜の姿を横でジロリと観察していたスバルが、思わず嫉妬に襲われながら、ジト目になってそんな事を言った。

  汗がキラキラと輝くように光り、彫りが深く、整った狼の横顔が、どこか憂いを帯びている風に見えて、自然と目を奪われる。

  ほんの少し前までは、自分より身長も低くて、別に筋肉質でもなくて、おどおどと猫背になり、人前でシャツを脱ぐ事なんか恥ずかしがって出来なかった癖に。

  そんな様子を知っているからか、どうも釈然としなくて、スバルは後ろから狼夜のモフモフした硬い腹筋をワシャワシャと乱暴に撫でた。

  「うわ?…なっ!なにしてっ!?…や、やめろ…っ!そんな風に撫でられたら…っ!うぁ❤」

  「このこのこのこの!参ったか参ったか参ったか参ったか!」

  「参った!参りました!だ、だからやめてくださいお願いします!」

  擽ったさと恥ずかしさ、そしてスバルに触れられると胸の奥が落ち着かなくなって、狼夜は嬉しさ半分にすぐに降参を宣言する。周囲の者達が羨ましそうにそのやり取りを見ている中で、けれど狼夜が唯一興味があるのは、親友であるスバルの事ばかりであった。

  悪戯っぽく笑ったスバルの、その笑顔が眩しくて、興奮と嬉しさに尻尾を忙しなく左右に振りながらも、なんだかすごく目を背けたくなるような、そんな気持ちでいっぱいになる。でも、そのような事をしたらとてもじゃないけどあまりに勿体なくて、その動き一つ一つに至るまで、つぶさに観察し、スバルの汗の匂い、雫の垂れる首筋、少し紅潮した頬、その全てを記憶の画廊という額縁へ、刻み込むよう嵌め込んでいった。

  ロッカーから着替えを取り出したスバルが、汗に塗れたシャツを脱ぐ事もなく、上着でさっと隠してしまうと、何故か妙に残念な気持ちになってしまうのはどうしてだろうか。

  皆みたいに、そのシャツを脱ぎさって、ここで着替えてくれたらいいのに…なんて下心と、でも、自分以外の人々に、彼の裸を見られたくないという気持ちが反発し合って、なんだか少し複雑な気分だった。

  「なぁ…、服着替えないと、なんだか汗で濡れたの着続けるのは、嫌な感じしないのか?」

  「ん?………別にいいんだよ。どうせ家に帰ったら風呂入って着替えるんだから、その時まで我慢すれば。」

  「……だけど、今日は外が寒いから、風邪を引いてしまう可能性だってあるし…」

  狼夜の言葉など聞こえていないかのように、スバルはさっさと鞄を肩に背負うと、踵を返して歩き出してしまった。慌てたように狼夜も後を追い、隣に並んで歩き始める。

  質問した時、なんだか妙な感じに一瞬言葉が途切れたのはなぜだったんだろうか。

  彼にとって、他人に肌を見せたくない理由があったとしたら、それを聞くのは野暮なような気がして、狼夜はそっと言葉を噤んだ。

  スバルのポケットに挿入されていたスマホが、マナーモードで微かに震える。

  ――家に来い

  そんな短いメッセージと共に…。

  「おら!気張れ!」

  「がっ!はっ!❤」

  猪野頭の部屋、いつものようにペット用のトイレシートが敷かれた床の上で、後ろ手に腕を組み、膝立ちになったスバルが、腹を勢いよく殴られる。

  そこは、血がうっ血して青紫になってしまっていた。その姿は痛々しく、それでもスバルは懸命に、猪野頭からもたらされる痛みを耐えている。

  ブルブルと痙攣して、痛みに今にもうずくまりたくなるけれど、体勢を少しでも崩せば、更なる拷問がスバルを待ち受けていた。

  耳元で「呼吸しろ」と囁かれ、震える息遣いでなんとかそれを整えると、その瞬間拳を腹に突き出され、スバルは口から胃液を吐いた。

  「辛れぇか?ぶひひ❤」

  「これ…くらい…っ…ヒーローには…きかな…❤」

  「そうかいそうかい。おら、じゃあこれはどうだ!あぁ!?」

  「ぐぅぅぅぅ!うぅぅぅ!!❤」

  意識を朦朧とさせながらも、相変わらずそんな強がりを言うスバルに、猪野頭が拳を腹へとめり込ませて、グリグリとそれを回転させた。

  ジンジンと響くような痛みが全身を駆け抜け、思わず歯を食いしばってそれに耐えようとするけれど、その響くような痛みが四肢に伝わる度、同時に僅かな快感もまた滲むよう感じ取れるようだった。

  日常的な痛みが、脳を作り替え、快楽物質を分泌させる事で、適応しようとする。

  次第に“痛い“は“気持ちいい“に…

  “苦しい“は“喜び“に…。

  この二年の間で、猪野頭の手により、スバルの肉体は根本から変えられてしまっていた。

  そうしてどんどんと日々を過ごすうちに、あっという間に二年の月日が経過すると、彼等は中学二年生になっていた。

  思春期真っ盛りで、非常に多感な時期へと移り変わって行く中で、周囲にも浮ついた感情が溢れ、未熟だった彼等もまた、自らの中にある淡い淡い気持ちに気付き始めてしまう。

  誰と誰が好き合ってるだの、誰々が片思いしてるだの、恋愛の話題には事欠かない時期。

  そんな風に周囲が他人を意識し始めるようになると、今までは無関心だったり、理解できなかったりしていた感情にも自然と名前があったのだと教えられ、そして、一度意識してしまったなら最後、四六時中それに夢中になってしまうのが、思春期という大人へ至る階段の途中期間なのだ。

  狼夜はこの二年の間にすっかりと大きくなって、今や昔のように誰かに守られるような、そんな見た目や雰囲気とは程遠いものとなっていた。

  身長はスバルよりも頭一つ分大きく、肉体の分厚さも比較にならない程で、一見すると中学生とは思えない身体付きをしている。

  小学から続けていた空手では黒帯を習得。すると、その目立った体格の大きさから、小・中学生が立ち会う少年の部ではなく、大人含めた高校生以上が拳を交える一般の部へとコーチの推薦で昇段し、既に色付きの帯を賜る程になっていた。

  それだけではなく、大会では必ず上位に食い込み、ほとんどの場合優勝を手にしてしまえる程の圧倒的実力。

  また、狼獣人であり、モデルや俳優と間違われるようなルックスも相まって、彼の存在はどんどん有名になり、周囲にはスバル以外にも彼を慕って話しかけてくる人々で溢れ、そうじゃなくても、こうして年齢を重ねれば重ねる程、次第に二人の間には、抗いようのない明確な格差が広がっているように感じた。

  「やあ!!!」

  「らぁ!!!」

  狼夜が一般の部に上がってから、本当に久しぶりの手合わせだった。

  当たり前であるが、未だにスバルは少年部での活動を余儀無くされており、昇段してしまった狼夜とは、そもそも戦いの土台から違う為、滅多に手合わせなんてするような事はなくなってしまっていた。

  とはいえ、それは明らかに狼夜が特別という話なだけであり、むしろスバルの方が当たり前の扱いであるという事を忘れてはいけない。

  でも、ほんの2年程前までは、奥手で、臆病で、スバルの陰に隠れ、怯えていた狼夜が、今ではこんな圧倒的な実力を有しているのだから人生とは分からないものだ。あの頃の、誰が見てもひ弱だった彼の姿など、もう遠い遠い過去の存在のように感じる。

  それでもスバルは、持ち前の前向きな性格や明るさで、そんな彼への複雑な感情を隠し、出来るだけ平静を装うよう、いつも通り彼へと接して、今でも良好な関係を築けていると思っている。

  「うわっ!」

  「っ!?」

  スバルが狼夜の下に素早く潜り込み、相手のくるぶしに引っ掛けるよう足を払うと、彼は驚いたようにそう声を出して、その場にひっくり返った。

  拳を顔面の横に突き出し、トドメを刺したかのような仕草をすれば、勝敗は決し、今回は意外にもスバルの勝利。

  やられた…というような、あからさまな表情をする狼夜に、スバルは何かを察してほんの少し目を伏せるけれど、すぐに相手の思惑など気付いてもいないという風に振舞って、ニッと、出来るだけ自然な作り笑顔を顔面に貼り付けながら、彼に向かって手を差し出した。

  「はは!オレの勝ちぃ!」

  「…ハハハ…流石かっくん…動きが速すぎて、潜り込まれると俺には対処出来ないな。」

  「お前がデカすぎるんだよ!たく、すっかり身長追い越されちまったなぁ。オレ。」

  「………う、うん」

  「………」

  互いに平静を装って振舞っているけれど、狼夜はスバルより明らかに強くなってしまった負い目を感じているし、スバルは自分よりも劣っていた相手にすっかり追い抜かれてしまったという悔しさで、複雑な感情だった。

  狼夜もまさか、自分にここまでの才能があったとは考えてもみなかっただろう。小学生の頃は、明らかにスバルの方が身長や筋肉面で優れていたのに、成長するとあっという間にそれを追い越してしまって、あれよあれよと自分の意志とは関係なく昇段させられていく。

  スバルもスバルで、狼夜の事を嫌いになった訳では無いのが複雑な感情の原因だった。相変わらず彼とはヒーロー談議で盛り上がる仲だし、見た目は変わってしまっても、中身はずっと変わらないまま。優しくて、大人しくて、その性格さえ知っていたら、人に好かれて当然の奴だ。才能が認められて周囲の目が彼に注目し始めた事を嬉しく思う反面、ヒーローという存在に憧れたスバルにとって、その羨望は目が眩む程に輝かしく、そして嫉妬に狂ってしまいそうな程羨ましすぎる。

  一緒に手を取り喜んでやりたいと思いつつも、もし自分が狼夜のような存在になれたらなと…そんな叶いもしない妄想に、いつも心が苛まれるような、とても苦しい日々だった。

  その上、狼夜はうまくやったつもりだろうが、明らかに手加減され、わざと負けられた事にも、スバルのプライドがズタズタに切り裂かれてしまう。

  狼夜が、そんな彼の想いなど知る由もなく、少し緊張した面持ちで静かに呟く。

  「かっくん…。良ければ帰りにラーメンでも食いに行かないか?」

  「ん?…いくか!」

  「う、うん!」

  お互いに複雑な気持ちを隠しながら、それを気遣いの笑顔で隠す放課後。それでも、咄嗟に提案した内容を、スバルが快く引き受けてくれると、狼夜はそのフサフサとした尻尾を思わず左右に激しく振って、高く尖った耳を忙しなく上下に動かしながら、作り物じゃない、素直で無邪気な心の高揚を、無意識に身体で表現せざるを得なかった。

  とはいえ、一瞬の喜びだけで全てが上手くいくわけではなく、二人並んで歩いているというのに、会話もないその気まずい距離は、まるで今、夕焼けによって互いの後ろへと不揃いに伸びていく影法師のように、酷く遠く、果てしなく感じるようだ。

  それでも狼夜は、そんな精神的な距離よりも、物理的な意味でスバルの傍に居れるのが満足だった。

  思春期になって、ずっと抱え込んでいた胸の奥へと芽吹いている気持ちが、スバルに対する叶わない恋だと理解してしまった時は、酷く泣き叫びたい感情に一時を支配されたけれど。

  スバルの…好きなものを語る横顔が好きだ。

  スバルの…太陽のように輝く笑顔が好きだ。

  スバルの…何にも代えがたい無償の愛が好きだ。

  語り出したらキリがないくらいに、彼の好きな部分は沢山あるけれど、別にそれは、彼と恋人にならなければ得られないものではなく、だからこそ、狼夜はそばに居るだけで満足だと、そう自分を無理矢理納得させることにして、今でも大切に、その感情を胸の奥へとしまい込んで、包み込むよう隠してしまった。

  でも、見えないよう隠してしまったからといって、それが突然顔を覗かせないという保証はどこにもないだろう。

  「さむっ…!」

  「っ…!?」

  秋から冬に向けて気温がどんどんと下がり、汗で濡れたシャツを相変わらず脱がないまま帰路につくスバルは、どこか浮かない顔で前を見つめる、狼夜の横顔を横目で見上げながら、空気を切り替えるようにそう呟いた。

  何の気なしに彼の、すっかり大きく武骨になってしまった雄らしい手を取って、そのまま流れるよう、相手のズボンのポケットへと繋いだままの手先を潜り込ませてしまうと、狼夜は突然のそれに驚きながら目を見開いて振り向き、ピンと一瞬張り詰めた耳と尻尾が、また忙しなく動き始める。

  自然と二の腕が触れ合うような距離に近付いて、狼夜の大きめのポケットの中では冷たくなったスバルの指先が、絡み合うよう繋がれてしまっていた。

  胸の鼓動がとにかく煩くて、その音がもしかしたら相手に聞こえてしまうんじゃないかと、酷く不安な気持ちになる。

  でも、それ以上に、スバルを好きでいたい感情が、それをしまい込んだ胸の奥から、当たり前のように顔を覗かせるものだから、何も言葉が出なくなってしまう。

  悟られないように浅く息をするけれど、興奮し過ぎて鼻息が荒い。

  落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け!

  いつも唐突に訪れる、こんなスバルの行動が、狼夜の愛を痛い程刺激して、結局それを諦めさせてくれないのだ。

  「あったけ!」

  「う、うん…」

  こちらを見上げて、ニッと笑うスバルの笑顔を見ると思う。

  (嗚呼…俺は…)

  どうしようも無く彼の事が好きなのだ……と。

  [newpage]

  ヒーローなんてクソ喰らえ…!

  まだ物心もつかないような幼い時分に、父親がテレビに映るヒーローの姿を一瞥しながら、吐き捨てるように呟いた言葉を、猪野頭は何故か妙に鮮明な記憶の中で、未だに時折思い出す事があった。

  思えばその頃から、別に理由もなく、ヒーローの事があまり好きではなかったのかもしれない。

  だから、そんな嫌いなヒーローを気取って、そんな嫌いなヒーローを目指して、そんな嫌いなヒーローを尊敬しているスバルを、猪野頭は最初から、気に食わない奴だと思っていたような気がする。

  「ゔ〜〜〜っっ❤❤ゔっゔっ❤❤」

  「ぶへへ❤お〜らどうだ?❤どんな風に感じるか言ってみろよ❤なぁ?❤おい❤」

  少し腰の高いクッションに座り、背後からその丸太のようにふとましい足でスバルの首を挟む、そして、手に持った電動マッサージ器を、彼の臍の周りへと押し付けながら、そこを上から突くように叩き、振動を加える猪野頭は、相変わらず興奮した様子を隠す事もなく、スバルに向かって下品にそう問いかけた。

  「ぇ゙〜〜…❤ぇ゙ぇ゙…っぅ゙…っっ❤❤」

  「おぉっと❤」

  もちろん、そんな猪野頭の問い掛けに答える事など出来る訳もなく、いつも通りジタバタと動きながら、ひしゃげた声を出し、掌でギブアップするかのように彼の足を叩くスバル。しかしそのように懇願した所で解放されるわけもなく、そのうち彼は、フッと白目を剥いて涙を蓄えた目を閉じ、全身をビクンビクンと大きく揺らして気絶してしまった。

  ズボンを脱がされた腰がヘコヘコと動いて、明らかに勃起している小さな包茎チンポの先端から透明な飛沫を飛ばし、もうすっかり首絞めによる快楽を享受してしまっているスバル。彼はもはや猪野頭の手によって、後戻り出来ない所まで肉体を開発されてしまっており、猪野頭も猪野頭で、そのようにスバルを虐め倒す優越感と加虐心に、一切の手加減などする訳もなく、それらの行為をどこまでも楽しんでいた。

  思春期になって、教師からもそれとない性教育を施されるようになる時期。中学二年生の男子ともなれば、特にそれらの知識には酷く敏感で、今どきインターネットで調べればありとあらゆる情報を得られる事から、当然猪野頭も、そうした造詣にはしっかり精通していた。

  だからこそ、“正常“なSEXやマスターベーション、おおよそヒトが行う性行為に含まれない、調べても見つけたことの無いこのような行為で…。こんな本来ならば暴力と苦しみしか生まないような責め苦で…。しかしどこまでも圧倒的に興奮してしまっている自分に、猪野頭は都合の良い言い訳を考え、それを正当化していた。

  これは男同士の喧嘩の延長だ…。

  普通腹を殴られたり、首を絞められて性的興奮など覚えるわけがないのだから、これはいやらしい行為ではないのだ…。

  むしろ、痛みを与えているのだから、そんな行為からは遠く離れていると言える筈だ…。

  だから、俺様は興奮なんてしてないし…

  だから、俺様はスバルの事なんか好きじゃないし…

  だから、誰かに止められる筋合いもない…!

  「はぁ…はぁ…はぁ…。…ぶへへ❤」

  気絶し、瞼を痙攣させながら、ぐったりと自らの小便が染みたシーツの上に仰向けで倒れるスバルを見下ろして、猪野頭は凶悪な笑みを浮かべていた。

  いつの間にか、自らもズボンを脱ぎさり、その下半身に勃起した、中学生とは思えない太長い包茎の逸物を、自慢げにそそリ勃てている。

  スバルの幼く、精巧で綺麗だった童顔が、唾液や鼻水、涙で穢れ、ぐちゃぐちゃになってしまっているのが酷く癖だ。

  その上、どんなに酷い目に合わせても諦める事なく、最後の最後まで抵抗しようとする、そんなスバルの崇高な心が、なおさら猪野頭の興奮を助長する。

  ヒーローとは、悪に負けず、いつも輝く善の心で…。

  弱気を助け、不条理に屈せず、人々を守り、導く者。

  そんな存在を、殴り、壊し、蹂躙する快感。どこまでも好き勝手、自由に出来てしまうその興奮。

  「最高だぁ…❤」

  猪野頭は、確かにスバルのその中に、誰よりも深く、誰よりも強く、自らの理想とする英雄像を見ていた。

  ヒーローとはこうあるべきだという、その願望全てを、言葉ではなく、身体と行為で彼から学ばせてもらった。

  そして、それを壊す楽しさや優越感さえも……。そう、文字通り全部だ。

  「ぶへ…❤…ぶへへ…❤」

  猪野頭は、不気味な笑みを浮かべながら、自らの逸物を激しく上下に擦りたてた。

  際限なく溢れる我慢汁がグチュグチュと音をたて、スバルの身体を跨ぐようにしながら、その顔面に向かってペニスを突き出す。

  「お゙〜〜っ❤❤❤射精るっ❤射精るぞぉっ❤❤チンポ汁食らえ!!!❤❤」

  こめかみに太い血管をこれでもかと浮き立たせながら、フンフンと鼻を鳴らして、雄臭い雄叫びをあげる。

  宣言し、最後にもう一度「お゙っ!❤」と喉奥から低くふとましい声を出したかと思えば、仮性包茎の皮を、根元までズリュリと剥き、膨らんだ亀頭から、激しいマグマの奔流を放つ。

  びゅるっ!!❤びゅるるるるっ!!❤❤まるで繋がった一本のうどんのようなザーメンが吹き出して、小便のようにスバルの顔面へと排泄されていった。射精する度その逸物は何度も何度も力強くしゃくりあげて、あまりの快楽に全身を痙攣させながら、猪野頭はだらしなく牙の突き出した口を大きく開いている。

  惚けた表情で、どこか虚ろに遠くを見るよう視線を飛ばした。まるでドラム缶のような腰が、ビクンビクンと痙攣する度、スバルの全身を彼の種が穢している。

  数分にも及ぶ射精。それは猪野頭にとって初めての射精でもあり、そしてこれからの人生でも最高の射精だったという自負があった。

  自らのスライムのようなザーメンに塗れ、それでもなお目を覚まさないスバルを見下ろし、これまで感じたことの無い満足感を得ると共に、更なる支配欲がムクムクと鎌首を持ち上げる。

  「ぶへ…ぶへへ…❤…まだだ…❤まだ…❤」

  自らの逸物を掴み、ブルブルと縦に揺らしながら、猪野頭は身体を倒して、その先端をスバルの唇に擦り付けた。

  覆い被さるようにして見下ろし、まるで筆で絵を描くように、彼の顔を鈴口で撫でる。

  まだ、彼をこれ以上穢すのは早い。

  スバルがこれから先、生きていく上で、その理想通り確かにヒーローという存在になれたのなら…。

  猪野頭は、“本物“になった彼と対峙し、絶望させ、自らの手によってその理想を打ち砕く妄想に、今から興奮が収まらず、鼻穴を広く膨らませた。

  猪野頭にとって、スバルは理想のヒーローだ。

  理想ではあるが、まだ本物ではない。

  だから、彼がまたこれから先、努力し、晴れてしっかりとヒーローになる事が出来たなら…。

  その時初めて、彼を手に入れよう。

  身も心も、完全にヒーローになった彼を、完膚なきまでに叩きのめして、自分のものとする。

  こんな“ごっこ遊び“の延長では、もう満足出来ない。

  「親父……話がある。……ぶへ❤」

  「……とうとう来たか。息子よ…。ぶひ❤」

  そしてその日、世界にまた新たなヴィランが一人、誕生したのだ。

  数日後、猪野頭が父親共々失踪してしまう事を、彼等はまだ知る由もない。

  [newpage]

  猪野頭家族が突然の失踪をし、彼等の存在を知る者たちは、当然しばらく動揺を隠すこともできず過ごしていた。とはいえ、父親の方はともかく、息子の猪野頭は問題行動が多く、暴力で従わせた舎弟だのなんだのは居たものの、周囲からの評判は軒並み悪かった為に、中には居なくなってせいせいしたと言う者もいる始末であった。

  かく言うスバルも、これまで散々良いように弄ばれてきたという経緯もあり、猪野頭に対しては全く好意的な感情を持ち合わせていなかったが、それにしても、幼馴染の一人が突然失踪したという事に関しては、あれだけの事をされてきたのに、まず心配の気持ちが先に来るという、どこまでもお人好しな面が浮き彫りになってしまっていた。

  警察によって色々な捜査が進んでいたけれど、結局何も掴めぬまま、彼等は行方不明者という扱いであっさりと処理。

  それを聞いたスバルは、もう猪野頭に身体を弄ばれる事が無くなったと安堵する一方で、もう二度と彼に会えないのかもしれないと考えると、何故か妙に落ち着かないような、そんな気持ちに苛まれてしまっていた。

  「……かっくん。……また、アイツの事考えてたのか?」

  「……は?」

  「………猪野頭。……あんな奴、かっくんが気にする価値もない。どうしてそんなに気にするんだ?」

  「……え?…あ、…いやまぁ…その…。一応、幼馴染ではあるだろ?だから……。って…でも、そうだよな。オレが気にする必要なんかないよな!あんな奴!ハハハ……ハハ…」

  「…………」

  学校の掲示板に貼られた行方不明者のリスト。その前でボーッとそれを眺めるスバルに、狼夜が後ろから声を掛けた。

  猪野頭が居なくなってから、ここ数日の間、こうして掲示板の前を通る度、なんとなく立ち止まってしまう自分がいる。

  狼夜の言う通り、さっさと忘れるべき相手である筈なのに、スバルは、猪野頭の手によってこの四年間行われてきた数々の陵辱を思い出して、なんだか落ち着かない気持ちになる。

  それでも、そんな気持ちを振り払うように、空元気を振り絞って、ニッと笑いながら狼夜の方へと振り返ると、彼は、スバルを心配するような、しかし、どこか釈然としないような、少し困った様子の表情で、こちらをジッと見下ろしてくる。

  誰に対しても心を砕くスバルが心配で堪らなかった。ヒーローとして圧倒的な志を持ったスバルは、いつだって自分よりも他人を優先し、どんな相手であっても手を差し伸ばすことだけは止めようとしない、ひどく純粋な性格だ。

  だからこそ、狼夜は、いつかスバルがその性格ゆえに、誰かによって傷付けられたり、騙された結果絶望したりしてしまうのではないかと、常日頃から不安を抱えている。

  彼の思想は何にも変え難い美徳ではあるけれど、この世の中、善意だけで全て丸く収まるのであれば、ヒーローという存在はそもそも必要ないだろうし、皆誰しも生きやすい世界になっているだろう。

  しかしだからこそ、そんな純粋で、無垢である彼を守る為の、自分という支えが必要なのではないかと、狼夜はそんな風に考えた。

  今では狼夜も、スバルと共にヒーローになりたいと思っている。彼と共に歩み、彼と共に過ごし、死ぬまでスバルの傍で、彼を支え続ける。

  最悪ヒーローになれなくたってよい。ヒーローをサポートする職業もあるし、とにかくスバルと共に、彼の役に立てれば本望なのだ。

  狼夜は、スバルがヒーローになれることを、疑いもしていない様子であった。

  けれど実際のところ、スバルのヒーロー適性における消費期限はもう、かなり際どいところにきていた。

  ヒーローになる為には、当たり前であるが、同じく能力を持った犯罪者=ヴィラン達を取り締まれる抑止力となる力が必要になる。

  けれど、未だにスバルは何の力にも目覚めてはいないのだ。中学二年生であるという事は、少なくともあと一年の猶予はあるけれど、それを過ぎたら力の覚醒はかなり絶望的になる。

  稀に16歳以上でも突然何かしらの能力に目覚める者もいるが、年齢が上がるにつれて可能性はどんどん下がっていき、少なくとも希望的観測で18歳程度まで。それ以降は絶望的で、世界でも片手の指で数えれるくらいしか実例のない、かなり稀有な例になってくる。

  つまるところ、スバルがヒーローになれるかどうかの命運は、この一年に賭かっている言っても過言ではなかった。

  その焦りと重圧は、日に日にスバルの心を毒のように蝕んでいく。

  毎日のように訓練し、試せるものは何でも試す日々だった。これまで培われてきた様々なヒーロー関係の書籍だけでなく、海外の翻訳されてない論文に至るまで、身体を鍛える傍らで、どうにか能力の覚醒を促す方法がないか探す。

  それでもやはり、ほとんど収穫は得られなかった。ただし、能力の覚醒には強い感情や、死に直面するような危機が関係しているという話もあり、スバルは特に感情面での覚醒を期待し続けていた。

  これほどヒーローになる事を熱望しているのだから、きっとこの想いに答えて力が覚醒してくれるはず。

  そんな期待に夢を見ているうち、刻一刻と時間は無情にも過ぎていき、スバルはとうとう、能力覚醒の期待限界と言われる、16歳の誕生日を迎える羽目となってしまったのだった。

  「誕生日おめでとう、かっくん。」

  「……お、おぅ。ありがと、な。……………。」

  誕生日を祝いに来てくれた狼夜が、そう言って祝福の言葉を掛けてくれると、スバルは何とかいつものように歯を見せて笑い、そしてそのまま悲しげに目を伏せて、ぎこちない表情のまま、静かに押し黙ってしまった。

  理由は分かりきっている。これまでかなり長い間、ヒーローになる為の努力を続けてきたスバルであったが、とうとう16歳という年齢に到達するまで、目立った能力の覚醒を自覚していないという、そんな致命的な欠点を抱えていたからだ。

  ヒーローにとって特殊能力は必須条件だ。無能力者ではそもそも、試験を受けることだって出来ないし、能力があってもそれが有用でないと判断されれば、ヒーロー協会に所属する事は非常に難しくなる。

  とはいえ、仮にヒーローになれなくても、彼等を補佐し、その活躍を傍で支える仕事がない訳ではなく、最悪ヒーロー関係の職に就くこと自体は難しい事では無い。

  けれど、スバルが目指しているのは、現場で活躍し、人々をその手で救う事が出来るヒーローという存在であり、それ以外の仕事には全く魅力を感じる事が出来ないでいた。

  ヒーローという存在に憧れて16年。彼等の傍で働けるのならば、それはそれでやり甲斐もあるだろうし、出来ない訳ではないだろうけれど。

  憧れを間近で見続け、接し、補佐する立場になった時、はたして自分は、彼等に対して嫉妬しないだろうか。醜く穿った見方で接してしまったりしないだろうか。正直、その歪んだ感情を抑え込める自信が、スバルにはなかった。

  「……あの…。け、ケーキ、食うか?…かっくんの為にこれ…作っ…買ってきたんだ!な?」

  一方で、言いながら、市販の物と見紛うほど、丁寧に作られ、梱包された手作りのケーキを持ってきていた狼夜は、スバルを元気づけるように、それをテーブルの上へと置いて、語りかけた。

  狼夜も実の所、未だ能力の覚醒は訪れていないのだが、正直に言ってしまえば、スバルが覚醒していない状態で、自分だけ能力に目覚めてしまった場合の気まずさを考えると、彼とは反対に、それが起こらなかった事を、どことなく安堵している節もある。

  スバルには当然、ヒーローになってほしいと思うし、その権利を誰よりも持っているという事は、長年一緒に過ごしてきた狼夜には痛い程わかるのだ。

  それに、そうは言っても、まだ16歳になりたてで、一年の猶予があるのだから、焦りはありつつも、彼がまだ覚醒を諦めて居ないことは明白である。

  だから、そんなスバルをとにかく元気づける為、狼夜はひたすら明るく彼に話し掛けた。

  「大丈夫。あと一年あるんだ。かっくんなら絶対ヒーローになれるし、その資格は充分ある。……俺は、最後まで諦めないかっくんをずっと見てきたんだ。諦めなければ勝機はある。ヒーローは最後の最後まで諦めない。…だろ?」

  「…狼夜。…ふふ。…そうだな!」

  こちらの影響を多分に受けてか、彼と同じく牙を見せて、ニッと笑う狼夜に、スバルは驚きつつも、気力を取り戻して、最後にはすっかり笑顔を返した。

  「オレとした事が、弱気になってたな!…こんなんじゃヒーロー失格だ。」

  「そうそう。その調子でいこう。まだチャンスはあるんだからな!」

  「……あぁ。……ありがとう。狼夜。」

  昔は守るだけの対象だった狼夜が、今では逆にこちらを勇気付けてくれる程までに社交的になって、時の流れとは本当に凄まじいものなんだなと実感する。

  それはひとえに、狼夜もまた、スバルの隣に立つ為…、スバルと共に歩んで行く為…、そう奮起して、これまで努力した結果でもあり、その決意がなければきっと、今もまだ守られる対象であっただろう事は、想像に容易いだろう。

  そしてもしその目的を設定せず生きていたら、きっと小柄な青年の後ろに佇む、不気味な長身の狼獣人…という構図になっていた可能性も大いにある。となると、それはそれで、スバルにちょっかいを掛けてくる変な輩も減りそうだし、何より彼からの世話焼きが多くなりそうなので役得かもしれないが、スバルがヒーローになった暁には、多忙で全く会わなくなるという事もありえそうだし、実際のところはなんとも言えないな…。と狼夜は一人そんな事を考えていた。

  「そういえば、親が銭湯の貸切チケットを誕生日プレゼントの一つにってくれたんだけど。…狼夜、一緒に行くか?ペアで使えるやつなんだ。」

  「ぶっ!?!?!?ごほっ!ごほごほ!!…え!?え゙!?!?か、貸切の銭湯!?!?は、裸で…!?」

  「商店街のくじ引きで当たったらしいんだけど、貸切とはいえ男女別で、自分達で行ったところで普通の銭湯と変わらないからってさ。だからどうせなら、いつも世話になってる狼夜と二人一緒に行ってきたらって…。………大丈夫か?…そりゃ銭湯なんだから、裸になるだろ。」

  「そ、それってつまり、かっくんのりょ…両親公認で…俺達、は、裸の付き合いを…!?!?」

  スバルの言葉を聞いた瞬間、目に見えて取り乱した狼夜が、飲んでいたジュースを口から吹き出し、盛大に噎せながら、興奮のままに目をギラギラとさせ始めた。尖った耳は、スバルの言葉を一言一句聞き逃さんという風に向きを揃えているし、これまで以上に忙しなく動くフサフサの尻尾が、絨毯の敷かれた床上で、バシバシと激しく音を立てながら振り回されている。

  瞳は見開かれていて、充血しているようだ。その上で息は荒く、肩は大袈裟に上下していて、今にも身体中の血管が破裂して、爆発してしまうんじゃないかと……実際、つぅ…と垂れた鼻血が、マズルの先端を赤く染めていた。

  思ったより何倍も予想外な反応を返す狼夜に、スバルはこめかみから大粒の汗を垂らして困惑した。ボソボソと早口で呟いている言葉も意味不明だし、これほど長年知った仲なのだから、風呂程度でそこまで舞い上がってしまうものだろうかと、なんだか呆気にとられてしまう。

  「じゃあ、行くか?」

  「い、今っ!?!?!?」

  「え?…い、今行きたいなら、別に行ってもいいけど。」

  特に何をする訳でもない誕生日なので、狼夜が行きたいというのならば構わないけれど、今まで見たこともない彼のそんな勢いには、流石のスバルもドン引きせざるを得ない。

  結局、どうせ暇だし、次いつ行けるかも分からないので、二人準備して貸切の銭湯へと向かう事になった。

  狼夜が終始言葉少なめに、まるでロボットのようなぎこちない動きを見せていたけれど、もう何もかも無視する事にして、構わずそのまま突き進んだ。

  本来であれば、予約が必要なサービスだったらしいけど、普段から利用する者も多くないという事で、特別に案内されたのは、六畳くらいの個室の風呂場。狼夜が足を伸ばして浸かれそうな大きな浴槽もさることながら、外に出る扉の向こう側には、小さな露天風呂もあり、街中にある銭湯にしては、かなり珍しいタイプの風呂だと思う。

  おずおずと緊張して、震えながらゆっくりと服を脱ぎさり、時折こちらを凝視してきては、口を開けて固まってしまっている狼夜を尻目に、それを気にした様子もなく、さっさと素っ裸になったスバル。

  一年前であれば、猪野頭によって腹に幾つもの鬱血痕を付けられていた為、こんな風に素肌を晒す事など出来なかっただろうけれど、今ではそれもいつの間にか綺麗さっぱり消えてしまって、わざわざ隠す必要も無くなった。

  早速浴室に足を踏み入れると、その内装に感心したよう声を上げて…。

  「おー!なかなかいい感じだな!」

  「そ、そうだな…」

  「……なんで前屈みなんだ?」

  後から着いてきた狼夜が、何故かその大きな身体を前屈みにして、股間にタオルを押し付けながらそう呟いた。「……気にしないでくれ。少し腰が痛いんだ…。」そう言いながら、よろよろと老人のように歩く彼は、壁際に設置されているシャワーの前に座り込むと、頭から熱湯を浴びて、冷静さを取り戻そうとする。

  「あ゙〜〜…」

  自分でも驚く程低く野太い声が出て、20歳は老け込んだ気分だった。

  銭湯に行こうと誘われた瞬間から今の今まで、一瞬足りとも冷静になれた時間は存在せず、熱いお湯の力でやっとの事、少し頭が冴えたような気がする。

  なにせ、まさか突然このようなサプライズ助平イベントが発生すると予想だにしていなかったからだ。今までずっと、部活でも教室でも、着替えようとしなかったり、肌を隠していたスバルが、一体何の心境の変化なのか、その秘匿を破り、全てをさらけ出してきたのだから興奮しないわけもないだろう。

  それも、上半身だけならいざ知らず、タオルで股間を隠す事すらなく、本当に突然、一気に生まれたままの姿で。

  ギンギンに勃起したペニスを前屈みとタオルで隠し、腰の痛みと誤魔化して、何とか椅子に座る事が出来たものの、裸で居る以上、これを最後まで隠し通す事が出来るかどうかあまりにも不安で、狼夜は酷く落ち着かない気持ちだった。

  それに、身体を鍛え始め、飯を沢山食うようになり、筋肉量が増えれば増える程、性欲もまた強くなっていったような気がする。

  狼夜も今年で16歳。獣人は人間よりも肉体の成熟が早く、既に大人顔負けの身体付きをしている上に、思春期真っ盛りの彼が、日々蓄積されていく性欲を我慢出来る訳もなく、毎日スバルのあれやそれを想像して、最低五回は抜かないと治まらない生活をしているなど、一体誰が想像できるものだろうか。

  今回の体験で、いつもはただ妄想で補うことしか出来なかったありとあらゆる情報が補完された事で、狼夜のオナニーライフに画期的な変化が訪れた事を、彼は人知れず神に感謝していた。

  「神よ……ありがとうございます…。」

  「何が?」

  「んがるぅっ!?!?」

  背後から耳元でそう囁かれると、その声のあまりの近さに、思わず背筋をピンと伸ばして、狼夜は慌てて振り返った。

  そこではスバルが悪戯っぽい苦笑を浮かべながら身を乗り出しており、その姿を凝視してしまうと、まるでバジリスクに睨まれた哀れな冒険者のように、狼夜の上半身は、面白おかしい仰天ポーズのまま石になってしまう。

  その様子にまた小さく笑ったスバルが、冗談めいた口調で、どことなく妖艶さをイメージさせながら、そっと呟いた。

  「お客さぁん。お身体流しましょうか?」

  「………」

  「沈黙は了承ってことかな?」

  白目を剥いて固まり、灰色になってしまった狼夜。どうやら彼は、あまりにも強いショックの為、スバルの呟いた言葉など耳に入っていない様子で、そんな彼の肩をつつきながら、沈黙を了承と捉えたスバルが、手のひらにボディーソープを取ると、それを広げて馴染ませ始める。

  「それにしても、ほんとデカくなったなぁ狼夜。……初めて会った時はオレよりも頭一つ分くらいちっちゃくて、すんごく可愛らしかったのに、まさかこんなゴツイ身体になっちまうとか、今でも信じられねぇよ。」

  「……ァ…ぇ?」

  言いながら、昔を懐かしむようにそう呟いたスバルが、手のひらに馴染ませた洗剤を、狼夜の鉄柱のように硬い、筋張った肩へとベットリ擦り付けた。

  ビッシリと生え揃う灰黒の短い体毛を、高級で柔らかい手触りのいい泡立て器に見立て、ワシャワシャと掻き回して白く撹拌していく。

  比べれば比べるだけ、やはり信じられないくらいの差を感じる肉体であった。肩の筋肉だけでもこちらの数倍は発達しているように見え、それは実際にこうして触って確認すればするだけ、疑いようのない事実としてスバルの興味を刺激する。

  「あ、あの……か、かっく……ぁ❤」

  「胸筋とかどうなってんだこれ。オレなんて平たいだけなのに、お前下手したらそこら辺の女の子より盛りあがってるんじゃないか?……てかうわ!え?こんな柔らかいんだ!へぇ〜…」

  狼夜の口元から僅かに漏れた声は、スバルの好奇心から溢れ出す言葉に掻き消され、彼に届く事は結局なかった。

  山のように盛り上がる胸板は、力を入れていないとまるでスポンジのような柔らかさと弾力を持ち、触り心地が非常に良くて、ついついずっと飽きずに触っていられると思ってしまう程、素晴らしいものであった。それだけではなく、自らの胸元と見比べるだけでも、その分厚さには驚きばかりが芽生えて、実際、後ろから抱き着くと、回した手のひらの指が何とか組めるくらいの、そんな恐ろしい図太さだ。どんなに頑張って腕を伸ばしても、手首までは絶対に届かないことから、これまでの彼の努力が、その肉体にしっかり反映されているのだろうなと、よく分かる有様であった。

  狼夜は、スバルの細くしなやかな指先で身体を撫でられる度、プルプルと小刻み痙攣して、瞳をギュッと瞑る。触られた箇所からゾクゾクと、背筋を伝うような心地良さが伝播していくようで、それに呼応するよう、タオルを突き上げた逸物がビクビクとしゃくりあげているし、尻尾が忙しなく相手の毛のない腹を払っていた。

  いつもはピンと尖っている耳も、今はその心地良さに観念して、ペタリと前側に寝そべってしまっている。

  スバルが、おもむろに狼夜の座っている椅子を奪ってしまうと、丁度頭が胸の高さになって、尚更洗いやすくなった。

  「気持ちいいか狼夜?」

  「はふっ❤はっ❤はっ❤はっ❤」

  「へへへ、良かった良かった。」

  背後から首筋に腕を回し、下から撫でるように顎をワシャワシャ擦ってやると、狼夜は口をダラりと開け、荒く息を吐きながら、目元をトロリと蕩けさせた。

  相変わらず尻尾が恐ろしい程左右に揺れて、スバルの言葉に反応するよう、耳がピクピク動く姿を見れば、彼が言葉も出ないくらいこのマッサージに夢中になってしまっている事は傍目から見ても明らかだ。

  なんだか、時間が進むにつれ、いつの間にか色々な事がお互いの間ですれ違っていったように思うけれど、こうして見ると、童心のあの頃に戻ったようで、スバルの心も暖かくなる。

  抱き着き、全身を擦り付けるようにしながら、狼夜の広い背中を洗ってやれば、辛抱堪らないという風に、狼夜の喉から切ない声が響き渡った。

  「くぅぅ〜❤」

  「よしよし、ちゃんと最後まで洗ってやるからな。」

  「あっあっあっ❤あうぅぅ……❤」

  言って、その場に膝をついたスバルが、背後から腕を回し、その六つに割れた美しい腹筋を、両手でワシャワシャと上下に撫でる。

  腹は特に心地よいようで、狼夜の口から普段では想像できない程の甘えた低い声が出ると、なんとなく奉仕するのが居心地良くなってきて、尚更それに気合いが入るようだった。

  とはいえ、あまりにも心地よすぎる為か、狼夜の尻尾が顎先を何度も何度も跳ねる為、それが少し鬱陶しくなり、角度を変えるようにして横に移動すると、ふと、先程までは彼自身の肉体で見える事がなかった、そのそそり立つ股間へと思わず瞳が釘付けになって、スバルはゴクリと息を飲む。

  「………でっっっ……かっ」

  「……はふ…はふ…❤❤…………へ?」

  「………すっげぇ………、オレのちんこと比べて全然大きさ違うんだな狼夜。……じゅ、獣人て皆こうなのか?…それともこれって……お前だけ?」

  「ぇ……?ぇ……?❤」

  一瞬、腹を撫でられる心地良さに心を奪われて、スバルが横に移動したことに気が付かなかった狼夜が、彼の驚愕に染まる、呆然とした声を聞いてしまうと、鼻息荒く一度見、二度見と繰り返して、それからサァッ…と血の気の引くような感覚に、冷静さを取り戻した。

  こちらのタオルを突き上げる下半身をジッと凝視して呟くスバルに、狼夜は、何度も自らのそれと、スバルの顔を見合わせながら、ドッドッド…と、パニックに心臓を叩き付けられて、震えた声を出すのみとなっている。

  き、嫌われる……っ。

  男同士で興奮する頭のおかしい奴だと思われる…っ!

  親友相手に欲情する変態、一方的な片想いの愛情、性的な興奮、気持ち悪い感情…etc…etc

  これまで隠し通そうとしてきた、様々な思惑が全て胸元から溢れ出そうとし、その言葉と気持ちの雪崩が視界を下から白く覆い隠していって、頭の中がパニックで真っ白になってしまう。

  終わった…

  俺の人生…片想いだった好きな人に嫌われて、しかも変態扱いされながら終了したんだ…

  目尻から自然と涙が溢れて、狼夜はただ口をパクパクと魚のように動かすことしか出来なかった。

  「こ、これ……これはその……ちが……違くて……っ」

  言い訳なんて思いつかない。今にも泣き出してしまいそうな感情に、頭の整理も追いついていない。

  違う…違くて…違う…違う…。壊れたブリキの機械のように、同じ言葉が空虚に回る。そんな事を主張しているにも関わらず、身体は素直で、相変わらずペニスは萎える事を知らないまま、スバルの瞳に晒され続けていた。

  そんな彼の異変に気付かないまま、スバルがプッと、吹き出したように笑う。

  「プッ…ふふ!ハハハ!…え〜!お前さぁ、そんなにオレのマッサージが気持ちよかったのか?…てか、どんだけ欲求不満なんだよ〜!…ダメだぞしっかり自分で抜かなきゃ!特にお前獣人なんかさ、凄い溜まりやすいんだろ?授業で習ったじゃんか!」

  「へ…?…ぇ?………へへへ…???」

  「ハハハ!……おっかし〜!」

  スバルがそう言って腹を抱えながら笑うと、狼夜は瞳を涙でじんわり濡らしながら、訳も分からず乾いた笑いをあげることしか出来なかった。

  許された…のか……?

  未だパニックに陥っている頭は、今どういう状況になっているのかと、それを理解しようとするのに精一杯で、スバルが笑っている意味も、実際にはそれを何ら問題として捉えていない事も、全く何も分からなくて、唖然とする。

  スバルにとって、狼夜とは親友であり、それ以前に男同士でもあるのだから、別に下ネタの一つくらい当たり前の話題くらいに思っていた。しかも、勃起なんて生理現象の一つだし、学校で授業を受けてる時なんか、不意に意味もなく勃ってしまった経験も、誰にだってあるだろう。

  むしろ、今までそういう話題をしてこなかった堅物の狼夜が、こうやって人並みに勃起させてしまっている姿を見ると、コイツもちゃんと男だったんだなと安心する。

  きっとストイック過ぎる狼夜の事だから、オナニーだってあんまりしないんだろうなと、そんな考えがなんとなく思い浮かんで、スバルは笑いながら、からかうように呟いた。

  「にしても、チンコまでこんなデカイんだな狼夜。羨ましいわ。完全にオレの負けだ!……でも、男に身体洗われて勃起してるようじゃ、肝心の女相手には役に立たないぞ?……そもそもオナニーの方法知ってるのか?普段から沢山弄って慣れとかないと、お前そんな見た目で早漏じゃ恥ずかしいぞ?……ま、オレもまだ童貞だから偉そうに言えないけどさ。……て、聞いてるか?…おーい?」

  「………」

  フリフリと顔の前で手を振っても、相変わらず狼夜は石のように固まって動かず、一言も発しないのだから、相当恥ずかしいんだろうなと思う。

  こんなんじゃやっぱり、これから先、彼女なんか出来た暁には、緊張だけで上手く立ち回る事も無理そうだ。スバルは、鼻を鳴らして困ったように息を吐くと、視線をチラリと下に向けて、未だ勃起する狼夜の逸物をタオル越しに見下ろした。

  「たく、仕方ないやつだなぁ。」

  それは、ただ純粋な善意の行動でしか無かった。正直、猪野頭によって長年羞恥を植え付けられていた身としては、その恥ずかしさも理解できるし、特に、見た目は変わっても、未だに自分以外の周囲の者と話す時は、なんだかぎこちない様子を見せる、相変わらず奥手な様子の狼夜を知っていると、この反応も頷けるような気がする。

  というより、スバルもスバルでもはや羞恥心の差異がどことなく壊れてしまっているのだ。なにせ子供の頃から猪野頭の手によってお漏らしを強制させられていた実績もある。あまり嬉しくないことではあるけれど、この程度慣れっこという訳だった。

  スバルが、狼夜の身体の正面へと、まるで潜り込むように移動する。

  「うっわぁ〜…マジでデッカ…」

  「へ?…な、何してっ!?あぐっ!❤」

  なけなしタオルをペラリと捲って、呆気なく床に放り捨てた。そこでやっと理性を取り戻した筈の狼夜も、スバルの行動を見下ろすと、また困惑に顔を真っ赤にする。

  そんなことお構い無しに、スバルは狼夜のペニスへと手を向けると、その硬く勃起した鉄の棒を根元から掴んで、驚きに感嘆の声を上げた。片手では全く指が回りきらないそれは、500mlのペットボトル並に太く、長くて、その上火傷しそうな程に熱を持ち、ゴムのように強く反発する弾力がある。

  少し意外であり、とはいえちょっと親近感が湧いて嬉しかったのは、これだけ大きいにも関わらず包皮が亀頭の半分程を覆う仮性包茎で、勃起していても勝手に剥けないのが分かったからだ。

  しかも、その下にふてぶてしくぶら下がる金玉も本当に大きくて、全体的にソフトボールをもう一回りくらい膨張させたかのような、片手に余る程の質量を持っている。

  なんだか、触ってみたは良いものの、実際他人の逸物に触れるなんてスバルも初めての経験だ。最初は何となく世話をしてやるつもりで触ってみたけれど、いざ手にしてみると思ったよりも緊張して、これをどう扱ったらよいものか分からなくなる。

  自分のモノと比べると、大きさだけじゃなく、太さ、熱さ、少しだけ香ってくる臭いさえ全く違くて少し困ってしまう。

  とりあえず、金玉を揉み揉みと下から優しく按摩してやり、形を確かめるようにゆっくりと、数回上下に擦りたてれば、瞬間、狼夜が大きく仰け反り、腰を僅かに上へと突き上げ始めて…。

  「っ……ダメだ!?!?!?❤❤かっくん!!?!?❤❤射精るっ!!!!!!❤❤❤んお゙っっっっ!!!!❤❤❤」

  「うえ!?……ぶあっ!!!!」

  ブルブルと全身を震わせた狼夜が、もはや堪えきれないとばかりに喉からそんな言葉をひり出して、勢いよく派手に射精してしまった。

  当然、この程度で狼夜が絶頂してしまうとは思ってもおらず、無防備に構えていたスバルも驚いて、そのまま顔面に激しいマグマの奔流を受け止めてしまう。

  あんまりにもドロドロとしていて、粘着性のある凄まじい精液だった。まるで、バケツに入った白いペンキを顔面に叩きつけられたかのような、そんな衝撃に狼狽え、そのまま全身にザーメンを吐き出され続ける。

  「ぷあっ…!あ…!ぷふ…っ!くはっ!」

  「止まんな…っ!?❤❤まだ射精るっ!?❤❤くっっっ!!あ゙っっっ!!❤❤」

  どれだけ腕で拭っても、どんどんと追加される精子に、スバルは陸上で溺れてしまうと錯覚するくらいだった。

  浴場全体には青臭い独特の臭いが充満し、それだけでなく、直にそれへと触れてしまった鼻の粘液からは、イカやタコを彷彿とさせる海鮮のような臭いがして、こびり付いてくる。

  最初は申し訳なさそうにギュッとマズルへと皺を寄せて快楽に耐えていた狼夜も、いつしか止まることなく溢れ出る射精の快感に脳が蕩けて、空いた口から舌を垂らし、目元をトロリと弛緩させながら、無意識に腰を上下へと揺らして、全身を心地よさそうに脱力させてしまっていた。

  普段のオナニーでは、決して感じることの出来ない感覚だ。好きな人に触られたという、たったそれだけの興奮が、何よりもこの奔流を驚く程心地よいものにしておかしくなる。

  「うえ…っ…にっが……くさ…」

  「ごめ……❤…はひ…っ❤」

  あまりにも強い勢いだったし、突然の出来事でもあったので、ポカンと空いた口にもそれが侵入してきて、図らずもスバルは、男の精子の味を覚える羽目になった。

  全身を脱力させ、ぐったりと後ろ手に手をついてぼんやりする狼夜も、口では反射的にそんな事を呟きつつ、まともに思考することが出来なくなってしまっていた。

  相変わらず無防備に開いた股の間。そこにそそり立つ逸物は天を向いていて、スバルは一旦、シャワーでそれらを洗い流す。

  お湯でさらに凝固する精子は、非常に落ちづらく、洗い流すのも一苦労だ。

  やっとのことそれらから解放されたスバルは、未だに股を広げながらすっかり気を抜く狼夜を見つめて、それからまだ元気を失わないペニスを見下ろす。

  「お前どんだけ溜まってたんだ?…早漏過ぎるだろ。」

  「……そ、そんな……事…言われたって…❤」

  別に溜まっていた訳では無かった。ただ、好きな相手に触られていると考えただけで、興奮が最高潮に達し、ほんの僅かな快楽だけでも堪らない程昂ってしまったのだ。

  言葉の端々に、荒く吐いた息を織り交ぜながら、狼夜は未だ勃起するペニスをヒクヒクとしゃくり上げる。それを見たスバルは少し楽しくなって、もう一度手を伸ばしながら呟いた。

  「まだまだ出そうだな。」

  「へっ!?❤あっ!❤か、かっくっ❤…んお゙っ❤」

  「あんだけ出すんだから、全然スッキリしてないんだろ?…せっかくなら今ここで全部出しちゃえよ。な?」

  「うぁ゙ぁ゙ぁ゙〜〜…っ…❤ダメだっ…❤そ…ぞれ…っ❤気゙持゙ち…っ❤」

  「ん?ここか?…よしよし、じゃあいっぱい擦ってやるからな!どんどん気持ちよくなれよ。」

  「ん゙あ゙お゙ぉぉぉぅっ❤❤❤」

  一度緊張が解れると、思ったよりも度胸がついて、思考も冷静になるようで、スバルは先程とは打って代わり、今度こそ的確に快楽を目的とした手淫で狼夜を責め立てた。

  気の抜けた甘い、間延びした声を出し、雁首を手のひらでグリグリ回転させられると、狼夜はガクガクと腰を震わせながら、顎をしゃくりあげて快楽に惚けた声を出す。金玉は根元から強く下に引っ張って、我慢汁とボディーソープをローション替わりに、ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ。

  「んお゙ぉぉぉぉっっ❤❤イクッ!❤またイクぅッ!!❤❤」

  「よしよし、いいぞ。出しな。」

  静かな浴室の中で、手のひらがペニスを扱きあげる卑猥な水音ばかりが響き渡り、次の瞬間には早くも二発目を告げる狼夜の野太い叫びが聞こえてくる。

  ビクンと大きく腰が突き上がって、唇をタコのようにすぼめた狼夜は、全身を仰け反らせながら、またしても大量の射精を行うのだ。

  「あ゙〜っっ!あ゙っあ゙っあ゙っ!!❤❤」

  「うわっ!…すご…!二発目なのにこんな出るんだな。…デカイ金玉なだけあるわ。」

  今度は顔面に掛からないよう、ペニスの角度を調整したスバル。一度目では目を閉じてしまった為、観察できなかったその射精を見つめて、素直に驚嘆の声を出しながら、自らの胸と腹に打ち付けられるザーメンの勢いに感心してしまう。

  そして、その二度目の射精も、スバルの体感で数十秒は続く長さに感じた。非常に濃く、へばりつくような独特な臭いが立ち上り、気温の高い浴室内でも湯気が出てしまいそうな熱を持っている。興味本位で、おもむろにその精液を掬って見れば、その粘性は驚く程であり、少し黄ばんでいる黒くないタールのようだった。

  まじまじと、そんな風に観察している内にも、狼夜が、後ろ手に着いていた腕から脱力して、肘をつき、一段身体を寝そべらせてしまう。

  見ると、もう片方の腕で目元を隠し、荒く息を吐いて、胸元を大きく上下させていた。伸ばした足…と言うより、下半身全体がブルブルと小刻みに痙攣しており、与えられた快楽の強さをその身で表している様である。

  実際、今まで感じたことの無い、凄まじい快楽だった。自分で扱く義務的な処理よりも、遥かに気が狂ってしまいそうな気持ちよさで、毎回毎回頭が真っ白になってしまう。片想いを拗らせた、好きな相手に触られているという状況は、とてつもなく恥ずかしい気持ちもあるけれど、それ以上に、もっと触れて欲しいという気持ちや、たまらなく気持ちいいという感覚で、もはや言葉も出なくなってしまう。

  そして、その結果、未だに股を開き、スバルにさらけ出してしまっているのは、心の底で、もっと彼に触れて欲しい、気持ちよくして欲しいという、そんな感情の結露が、無意識に肉体に現れているからに他ならないだろう。

  「またこんなスグに出して、俺に触られるの、そんな気持ちよかったのか?」

  「……っ」

  そんな恥ずかしい問いを、驚くほど素直に質問されると、狼夜は相変わらず目元を腕で隠し、羞恥を抑えながら、最終的には静かにゆっくり頷いた。それを見たスバルは、どことなく楽しさと満足感を感じ始めていて、相手が気持ちよくなってくれているという、その様子が何だかとても嬉しく思ってしまうのだ。特に最近はあらゆる面で自身を追い越し、自分の方が出会う前から鍛錬してきたにも関わらず、実力で負けてしまっていると感じる事の多くなった狼夜に対して、どうしても拭い去る事の出来ない嫉妬と負い目があったし、そんな自分が気に入らなかった。いつだって自分の方が狼夜を守る対象であり、彼はヒーローになった俺の第一のファンなのだという、無意識にそんな考えを持って、彼の事を見下していたスバルにとっては、狼夜が自分より強く、既に守られるべき存在ではなくなったというのが、どうしても受け入れられない事実の一つであった。だから、そんな狼夜が、武力ではないと言え、見ようによっては自分の手で骨抜きになっている姿を見ると、なんというか、少しでも彼に勝てたようで安心する。

  完璧に近い狼夜であっても、どうやら性的な部分では、まだまだスバルの方が上手らしい。そんな事実が、スバルの心の中にあったわだかまりを少し浄化してくれたし、昔のように自分が彼の手を引いているように感じて優越感に浸れるのだ。

  スバルは、握り締めた狼夜のペニスを見下ろし、ちょっとした悪戯心が頭に浮かぶと、おもむろに口をそこへ近付けて、その先端へと突然吸い付いてしまった。

  瞬間、突然のねっとりとした刺激に、狼夜の大きな身体が勢いよく跳ねる。

  「はむ…❤んちゅ…❤」

  「っ…はぁっ!?…か、かっく…!?❤❤そんなっ!き、汚っ!?❤あ゙っ??❤あ゙っ??❤あ゙ぁ…っ!??❤」

  「ん〜…?。❤ぢゅるっ❤ぢゅるるる…❤」

  狼夜のそんな驚きと困惑に満ちた言葉を無視して、スバルは目いっぱい口を大きく開けると、彼のペニスへと吸い付いて、それを飲み込もうと頭を動かした。

  なんというか、口に含んだ亀頭の舌触りはのっぺりとしていて、ドロリと溢れ出てくる我慢汁は塩水のようにしょっぱく、今までに感じたことの無いような食感があって興味深い。その上で、尿道に残っていたザーメンも僅かに飲み込んでみると、それは先程も味わったように苦く、鼻を抜けるような青臭さで、はっきり言ってしまえばお世辞にも美味しいという感じではなかった。

  でも、だからと言って飲み込めない訳ではなく、ひたすら溢れ出るそれらの粘液を、スバルは顔を顰めながら懸命に飲み干し、口に含んだ亀頭部分を、舌の腹でねっとりと、撫でるように舐め回していく。

  「うぁぁぁぁ…❤ち、ちんこ溶け…❤」

  「ん…ん〜〜…❤ぢゅるっ❤ぢゅぼっ❤」

  狼夜の口から、気が抜けて脱力したような声が出た。人肌の体温に温められた心地よい熱の中に、自らの男の象徴を取り込まれ、そのあまりの気持ちよさに、開いた膝がガクガクと上下に震え始める。

  舌をダラリと口の端から垂らし、熱に浮かされたような蕩けた瞳で下半身へと目をやれば、下唇から舌先を突き出すようにペニスを咥えたスバルが、頭を左右に動かしながら、ゆっくりとその巨大な逸物を飲み込んでいく姿が見えていて…。

  夢では無い。長年の憧れであり、最愛の相手が、今自分の股座へと頭を埋めて、こちらのそそり立つチンポを本当に飲み込んでしまっている。……そう考えると、またしても胸の奥から溢れ出るような興奮が弾けて、激しく脈動する心臓の動悸が収まらなかった。

  未だ困惑と、目の前の光景を信じられない自分もいるが、それ以上に、興奮と快楽が脳みそへと津波のように押し寄せてきて、正常な判断が出来なくなる。

  狼夜は、無意識のままに、自らの股へと食らいつくスバルの後頭部を抑え込むと、脱力して仰向けに倒れ込んでいた上半身を起こし、上から全体重を掛けるようにして、彼の頭を抱え込んだ。

  「っん゙!?ッッん゙〜〜〜!!!???❤❤❤」

  「あ゙ぁ…❤すげ…っ❤ちんぽ気゙持ち…っ❤」

  「〜〜〜〜〜゙っっ❤❤」

  当然、突如として狼夜に後頭部を押さえつけられ、力ずくで頭を固定されてしまったスバルは驚き、焦りにくぐもった叫び声を上げる。

  これ以上は入らないと思っていた狭い喉奥、その更に向こう側へと、尚も無理やりペニスが侵入してきて、呼吸が出来ずにパニックへと陥ってしまったのだ。

  しかし、そんな事など知る由もない狼夜は、自らの逸物を根元まで深く咥え込まれる、その快楽の虜になってしまっていて、ジタバタと暴れ始めたスバルを押さえ付けるように、力を込め続けた。

  「〜〜〜〜〜〜……ぼっ❤…ご…❤❤」

  次第に、呼吸が出来なくなったスバルの口の隙間から、なけなしの酸素が溢れ出て、全身から力が抜けて行った。

  狼夜の腰を掴み、太腿を叩いていた腕は、そのうちそこを撫でるような威力でしか動かせなくなり、もがいて開いていた足も、ぐったりと浴場のタイルに滑っていく。

  猪野頭によって、長年開発されていた性感。それは、彼の失踪と共に、二度と刺激されない快楽だった筈なのだけれど、こうしてまた、図らずも狼夜の手により、今別の形で再現されてしまって、意識を失う直前、死を意識した瞬間、脳内で起こるのは、快楽物質であるドーパミンの異常分泌。

  「射精る…っ!❤また…っ…また射精るっ!!❤❤射精ちまうっ!!❤❤イクゥッッ!!❤❤」

  「っ!?❤❤❤〜〜〜〜〜゙゙゙❤❤❤」

  じょろろろろ…❤と昔を思い出すように、スバルは情けなく失禁して、全身をまた魚のようにビクンビクンと激しく痙攣させた。脱力したお陰か、開いた喉奥へと、更にペニスが侵入していくと、スバルの鼻先が陰毛へと押し付けられ、顎は生き物のようにキュッと収縮し始める狼夜の金玉に密着する。

  その状態で、食道へと直接ザーメンを排泄されれば、スバルの瞳が、痙攣する瞼の裏に隠れ、彼もまた無意識のままに、ドライオーガズムへと達してしまうのであった。

  射精中、脊髄反射でペニスを吐き出そうとするスバルの頭を上手く利用し、何度かそれを上下にピストンさせる狼夜。嗚咽に混じって滲み出る唾液は、普段のものより強い粘着性を持ち、それがスバルの口の端から潤滑液代わりに吹き出して、ドロドロと狼夜の金玉をいやらしく濡らしている。

  小便のように吹き出す射精の快感に、心の底からリラックスして、心地よさそうに息を吐きながら、瞼をだらしなく下げる狼夜。

  チラリと自らの股座を見下ろせば、そこにはビクビクと震えながら、窒息寸前で脱力するスバルの姿があって、彼は思わず慌てたように、押さえつけていた腕の力をやっとの事解放した。

  「うわぁぁ!!か、かっくん!?す、すまっ!すまん!!だ、大丈夫か!?」

  ズルルルル…❤と口から長大なペニスがまろび出て、オクラのように粘着いた唾液が大量の糸を引く。ぐったりとするスバルを抱き上げ、白目を剥きながら気絶する彼の汚れた頬を優しく叩いて問いかければ、そこでやっと呼吸が出来たと、大きく息を肺に取り込んで、咳き込む彼の様子が見える。

  あまりにも強い快楽と、止められない理性のせいで、ついついうっかり手を出してしまった。徐々に目の焦点が元に戻り、それでも、状況を飲み込めていないスバルが、何とかこちらを見下ろす狼夜の視線に気が付いて…。

  「ろ…や…ごほっ…ごほごほ…!」

  「すまん!ほ、本当にすまん!…俺とした事が…あ、あんまりにもき、気持ち良くて…っ」

  咳き込む内に、記憶がどんどん鮮明になってきて、スバルは狼夜にされた事の顛末を思い出した。まさか狼夜が力ずくで頭を押さえてくるとは思わず、パニックに陥っている内に、呼吸が出来なくて一瞬意識を失ってしまったのだ。

  最初何故謝られているのかと意味が分からなかったが、それを思い出すと徐々に眉間へと皺が寄って、狼夜を睨むようにムッと見つめる。

  「……お前…ごほっ!…全く…やりすぎ…ごほ!……はぁ」

  「申し訳ない…!本当に…すまない!」

  とは言っても、始めに手を出したのが自分である以上、スバルは強く彼を責めることも出来ずに、疲れて軽く息を吐いた。

  狼夜の鍛え上げられた柔らかい胸に腕を添え、立ち上がろうと脚に力を込めるけれど、ガッシリと抱き寄せられている為上手く動けない。

  離して欲しくて、ふと、狼夜の顔を見上げると、彼は何か、思い詰めたかのような、というより、こちらに焦がれるような、そんな瞳でスバルを見下ろしており、どこか恥ずかしそうに、目尻を赤く染めている。

  そして、彼の名前を呼ぼうと声を出したところで…。

  「狼「か、かっくん…!あの!次はその…!」」

  言葉は掻き消され、意を決したように思い切りそう叫んだ狼夜が、少し前のめりになってスバルへと顔を近付けた。

  思わず気の抜けた声を出し、唖然と目を見張るスバルに、狼夜はどこか緊張したように、言葉を続ける。

  「こ、今度は…その…。お、俺が…次は…。か、かっくんを、気持ちよく…してやりたい…。」

  言われて、スバルは一瞬固まり、言葉を失って沈黙した。

  狼夜は気恥しそうに視線を外し、尖った耳まで真っ赤に染めて、そこをピコピコと動かしながら、スバルの身体をギュッと抱き締めている。

  相当思い切って告白したに違いない。肩を抱く狼夜の手は熱く、触れている場所全てから熱を発しているのでは無いかと言うような有様だ。

  面と向かってそんな事を堂々と言われたからか、それとも、単にその緊張が移ってしまったからか、スバルもまた戸惑ったように視線を外すと「お、俺はいいよ!」と、彼の誘いをそれとなく断る。そして、狼夜の拘束から逃れ、立ち上がろうとするけれど、やっぱり彼は離してくれそうになかった。

  「ろ、狼夜…は、離し…」

  「そ、そんなのず、するいだろ!…かっくんは俺に手を出して来たのに…」

  「ず、ずるいとかずるくないとか…か、関係ないだろ!……も、もう終わりでいいじゃないか!何でそんなこと…」

  「お、俺だって、あんな事されて恥ずかしい思いしたんだぞ!か、かっくんだってされないと、フェアじゃないだろ!」

  「うっ…!」

  そう言われると確かにその通りで、スバルは彼の反論へと、明確に返す言葉を思いつく事が出来なかった。

  そんな一瞬の沈黙の隙をつき、それを了承だと勝手に判断した狼夜は、ふと、スバルの下半身へ熱の篭った視線を向けると、恐る恐るその場所へと手を伸ばし、震える指先で、彼のペニスを摘むよう掴んで…。

  「あっ!?❤……ろ、狼夜!やめろって!オレは良いからぁ…っ!❤」

  「…………」

  もがくスバルの動きを力で押さえつけながら、狼夜は彼の反論を無視して、その小さなペニスをクチュクチュと弄り始めた。言葉には出さないものの、頭の内では興奮によって思考が高速に回転しており、ふんふんと鼻息を荒くしながら、スバルのちんぽの形、大きさ、気持ち良い所はどこかと、あらゆる情報を余さず記憶に蓄積させようとする。

  「あ゙っ❤あっ❤ゔ〜〜〜っ❤❤ん〜〜っ❤❤やぁぁ…❤」

  スバルが皮を上下させる度に腰を震わせて、とうとう恥ずかしさに耐え切れず、狼夜の胸元へと顔を埋めながら、くぐもった声を出した。

  ギュッと彼の胸元の毛を掴み、自らの下半身から響き渡る、クチュクチュという卑猥な水音に、耳まで真っ赤にしながら快楽を享受する。

  一方、狼夜はそんなスバルの様子に、普段は隠れている筈の加虐心が刺激され、なおさら興奮して尻尾を激しく左右に振り回した。自分のモノとは違い、スバルの逸物は人間から見ても平均以下に感じる小さめのチンポで、皮は勃起しても完全に亀頭を隠し、狼夜の大きな手だと、指先2本で容易く摘んでしまえる程のモノだ。爪先を皮の中に潜り込ませると、裏筋を優しく引っ掻くように刺激して、たまにグルリと中を掻き回す。それが思いのほか気持ち良いのか、甲高い悲鳴を上げて、ビクンと大きく腰を痙攣させるスバルを見ると、狼夜はその様子を確認して、得意になったように、尚更その刺激を続けるのだ。

  「あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙〜❤それだめぇぇッッ!❤やだぁぁ…!❤ゔぅ゙〜〜っ❤❤」

  「こ、これが気持ち良いんだな?❤へへ…よしよし❤」

  スバルの全身が快楽に強ばって、狼夜に抱き着く力が強くなった。しつこく、ねちっこく、弱点を見つけた狼夜はそこを刺激して、容赦なく相手を絶頂へと追い詰めていく。

  伸びた腕が、狼夜の手首を力無く掴んで抵抗するけれど、元よりただ指先を動かすだけの責めには、全く意味をなさなかった。どちらにしたって、筋力で既に圧倒的差をつけられている狼夜に対して、快楽で腑抜けた力など通用する訳もなく、スバルはただされるがまま、自らのチンポを好き勝手気持ちよくされるしかない。

  「イッちゃうっ!イッちゃうぅっ!❤❤」

  「いいよ…❤我慢しないで射精すんだ❤」

  「やぁぁっ❤❤射精ちゃうぅっ!!❤ひぃぃっ!❤」

  腰が三日月のように反って、ピンと足の指先が伸びた。突き出した股座の頂点、その先端からピュルリ❤と糸のようなザーメンが弱々しく吹き出して、狼夜の指先をネットリと汚す。

  ガクン…ガクン…と大袈裟に下半身が跳ね、その度掠れた声にならない声が、スバルの喉から音を出し、最終的には、そんな射精の余韻に、彼はぐったりと狼夜の腕の中で脱力するのだった。

  「はぁ…❤はぁ…❤」

  ぼんやりと視界を薄めながら、相手の胸元に隠していた顔を出し、蕩けた表情で荒く息を吐くスバル。

  それを見下ろしていた狼夜が、ドキリと心臓を高鳴らせ、それからゴクリと、喉仏を広く上下させながら唾を飲み込む。

  「かっくん…」

  「はへ…❤…はっ…❤…んっ……!?…んんっっ!!❤」

  そして、そう一言呟いたかと思うと、狼夜は項垂れるスバルの顎を持ち上げて、なんの前触れもなくその開いた唇へと噛み付くようなキスをした。

  長いマズルで、頬ごと口元を包み込み、長くて太い舌を突き出して、中を優しく舐め上げる。

  突然の出来事に、スバルは一瞬何が起こっているのか全く理解できなかった。そして、舌を絡め取られ、大量の熱い唾液をやり取りし始めた所から、今、自分がされている事をやっと理解し、驚きにくぐもった声を上げる。

  当然、抵抗するように持ち上げた腕で、狼夜の豊満な胸板を叩く。けれど、射精したばかりの身体には相変わらず力が入らずに、スバルはただされるがまま、人生で初めてのキスを、狼夜に捧げる事になってしまったのだった。

  けれどそのうち、次第に頭がボーッとしてきて、わけも分からず本能のまま、自らも無意識に絡めるよう舌を動かして、狼夜のキスを受け入れてしまう。

  それは気持ちよくて、熱くて、何となく心の奥が、じんわりと優しくなるような、そんなキス。

  そして、一度口を離され、二人の視線が交わると、スバルは無防備に惚けた表情を晒しながら、なんとか言葉を放とうと口を動かして…。

  「…は…は…❤…あの…❤んむっ❤❤んんっ❤❤」

  しかし、その言葉を言い終わる前に、また角度を変えて、狼夜のキスがスバルの口を塞いでしまった。

  今度は抵抗などせず、素直にそれを受け入れて、お互いを情熱的に求め合ってしまう。

  スリスリと脇腹を撫でていた狼夜の手のひらが、滑るようにスバルの下半身へと降りていって、もう一度ペニスに触れる。

  すると、ビクンと大きく腰が動いたものの、相手から何か嫌がる素振りなどは一切なく、改めていやらしい指先が、スバルのペニスを優しく刺激し始めるのだ。

  マズルを離した狼夜が、横抱きにしていたスバルの体位を変えて、後ろから覆い被さるように彼を抱き締める。未だ熱くそそり立つ狼夜のペニスが、ぬるぬると腰に擦り付けられているのは、否応なしに理解出来ていた。

  ここまでくれば流石に、彼が自分の身体に欲情しており、尚且つキスまでするということは……。なんて、そんな気恥しい考えが、確信と疑念の間でスバルの感情を戸惑いに揺れ動かしている。

  でも…

  そんな…

  オレ達は男同士なのに…

  必死に頭の中でそんな考えを振り解き、否定しようとすればする程、何をどうすればよいのか、分からなくなって、もう全てがおかしくなりそうになる。

  「ひぃぃ…❤もうちんちんだめぇぇ!❤触るなぁぁ!❤………ぁ゙ッ…!?❤」

  その上で、狼夜から与えられる快楽がまた、スバルの思考をぐちゃぐちゃに掻き回してしまっていた。もう訳が分からなくて、早くこんな感情から逃げてしまいたくて、泣きじゃくりながら懇願するように頭をブンブンと左右に振る。

  すると、背後から伸びてきた、狼夜の筋肉質で、筋の浮かぶ丈夫な腕が、スバルの首をおもむろに絞め始めてしまって…。

  「ろ…や…っ❤…これ…らめっ❤…かふっ❤」

  「…やめていいのか…?」

  「や…っ…❤…やら…っ❤これらけは…っ❤〜〜〜ぎっ❤❤」

  「……本当は好きなんだろ?…わかってるさ…」

  それは猪野頭によって散々身体に覚え込まされた快楽の一つであった。幼い頃からずっと、定期的に締められ、いつしか快感を伴うようになってしまった行為。それを、何故狼夜が知っているのか……。スバルは涙で濡れた瞳を持ち上げながら、彼を見上げている。

  別に狼夜は、スバルと猪野頭の関係を知っていた訳では無かった。もしそれを知っていたとしたら、おそらく猪野頭はもう随分と前に別の理由でこの世から消えていただろうし、今回彼が突然失踪した事件に、狼夜は関わっていないのが、何よりの証拠だ。

  でも、猪野頭が暴走し、二人を襲ったあの事件。あの事件があったあの日から、狼夜は、スバルが首を絞められ、恍惚の後に、気絶して失禁している姿を見ており……。

  本当は、ずっとあの時の記憶が忘れられなかった。狼夜が性を意識したのは、あの日、あの場所で、スバルが気持ちよさそうに意識を失う、その姿を何度も何度も猪野頭の手によって見せられた事が原因だったのだから。

  そして、実際夢に見るほど、あの時の情景が羨ましくて仕方がなかった。自分もまた、スバルの首を絞め、彼を深い深い快楽の底に引き込みたくて、ずっと妄想していた。だから、気付いた時にはもう、今こうしてスバルの首へと腕が掛かってしまっていたのである。

  「ほら…すごく硬くなってる❤」

  「が…っっ〜〜〜…ぁ゙❤❤…ぇ゙…ッッ〜〜〜〜っっ❤❤」

  狼夜の言う通り、一度射精したにも関わらず、いつの間にかまたスバルの逸物はギンギンに硬くなって、あからさまに勃起してしまっていた。有り余る包皮を優しく根元まで剥いてやると、その瞬間ピクリとしゃくり上げたそこから、ぢょろ…ぢょろろろろ…❤と小便が漏れ、あの日と同じ情景が目の前に広がっていく。

  そして、同時にスバルの全身がガクガクと震え始めた。顔を真っ赤に染め、口から舌が飛び出し、痙攣した瞼が瞳を隠してひしゃげた声が出る。

  それに合わせるよう、狼夜の指先が剥いた亀頭をクルクルと円を描くように刺激し、そして間髪入れずに、折り曲げた人差し指の関節で裏筋を、親指の腹で亀頭の上側を、ズリズリと擦るようにすると、ペニス全体が何度も膨れ上がり、射精に向けての準備を開始する。

  「げ…ぇ゙ぇ゙ッッ〜〜〜〜っ❤❤ぇ゙…ぐ…っ〜〜っ❤」

  パチパチと、絞める腕を叩いていた手が、ぐったりと力無く落ちていき、掠れた潰れた音が喉からひり出される。ガクンガクン…❤と全身が派手に痙攣したかと思えば、びゅるっ❤びゅるるるるっ❤と、先程よりも勢いよく精子が吹き出して、正面の鏡に降り掛かっていた。

  今までは、首を絞められるだけで、直接ちんぽを弄られる事などなかった故に、スバルはここで完全に、射精と首絞めの快楽が紐づけられてしまう。

  狼夜のふとましい腕が、ギュッと顔面を押し潰すように挟むと、スバルは頬肉を押し上げられ、鼻水と涙と唾液に顔を濡らし、タコのように唇を突き出して、無様に快楽を享受するのだった。

  数秒の後、やっとその腕が外される。

  「ぶはっ!❤はっ❤はぐ…っ❤あ゙❤」

  真っ白に染まっていた視界が、呼吸と共に現実へと呼び戻されて、スバルはグッタリと狼夜の肉体に全身を預けてしまう。

  少し休憩を慣らすように、こちらを抱き締める狼夜の手が、優しく腹や胸元を撫で、緊張と興奮に強ばった身体を落ち着かせるようマッサージしてくれた。

  そして、なんとか息が整い始めたところで、胸を撫でていた腕がゆっくりと、また首元に迫ってくると、スバルは「ひっ!❤」と怯えた声を出しながら、しかし流されるままに、もう一度首を圧迫されてしまうのであった。

  「ぁ゙っ!?❤❤❤」

  

  スバルの息を飲むような悲鳴が、浴室の中にこだましていた。

  身体が暖かい熱に包まれ、心地よい温もりの中で、スバルはゆっくりと目を開けた。

  見れば、全面にはガラス張りの壁があり、どうやら貸切の銭湯、その湯船に浸かっている事が理解出来る。

  透けた壁の向こう側は、小さな露天風呂のある庭のような場所だ。背後には狼夜が居て、スバルを抱きしめるようにしながら、浴槽の中にある段差に腰を下ろしていた。

  「……お…れ…」

  「…っ…お、起きたか?」

  「…狼…夜……お前…っ」

  「……す、すまない!また…やりすぎてしまった…」

  「……くそ」

  声掛けられると、スバルは一瞬逡巡したのち、狼夜にされた事を思い出して、僅かに顔を顰めた。

  それを見た狼夜は、慌てたようにギュッとスバルを抱き締めると、非常に申し訳ないという風に、額から汗を垂らして謝罪の言葉を口に出す。

  そう簡単に許したくはないけれど、やはり先に手を出したという負い目がある手前、強く非難することも出来ずに、スバルは押し黙ることしか出来なかった。

  その代わり、背中を丸め、こちらの肩へと顎を乗せて、とぼけたように抱き着く狼夜をジロリと睨めば、いつまでこうしているつもりなのかと、少し苛立ったように言葉を出す。

  「おい、抱き着くなよ…!」

  「……え?」

  「え?…じゃないだろ!いつまでこうしてるつもりなんだよお前!」

  「だ、だが…」

  狼夜は、まるで捨てられた子犬のような、シュンとした表情で尚更肩に強く体重を掛けてくる。先程の行為によって、なにやら変な期待を彼に持たせてしまったかもしれない。ちょっとした悪ふざけのつもりだったが、他人に触られるのがよっぽど気持ちよかったようで、こんな甘えた声を出す狼夜など、普段の彼の様子からは考えられない姿だ。

  どうせもがいて抵抗したところで、体格が倍近く違う狼夜の拘束を解くことなど出来そうもないので、スバルは大人しく諦めて、大きな溜息を吐いた。

  「……オレ、どのくらい気絶してたんだ?」

  「うーん?…そこまで長くなかったぞ。湯船に浸かってすぐだから、5秒くらいだ。」

  「…たく、ヒトの首なんて絞めやがって…死んだらどうするつもりだよ。」

  「……だが、凄く気持ちよさそうな顔をしていたし、まるでもっと絞められたがってるみたいだったから…」

  「…っ!?ち、違う!そ、そんな事あるわけないだろ!馬鹿!」

  狼夜の言葉に、スバルは挙動不審になりながら、慌ててそれを否定した。彼自身は認めたくないと思っているが、実際猪野頭の調教による影響で、首絞めの快楽を芽生えさせてしまったスバルは、それからもたらされる気持ちよさをなんとなく自覚してしまっており、あの気絶する瞬間の、眠るような快感が、実は忘れられないものになってしまっていた。

  あからさまに本心では無い拒否の仕方をするスバルに、狼夜は抱き締める力を強めて返事を返す。

  「俺…かっくんがそうされたいなら、いつだって協力するぞ。」

  「な、何言って…」

  「俺はかっくんの全てを受け入れる。……だから、かっくんが首を絞められて気持ちよくなれるなら、また…」

  「………」

  狼夜のそんな言葉に、スバルは軽く俯いて、顔を真っ赤にしながら、返す言葉を失ってしまった。

  まるでまたこういう行為をしたがっているかのような口ぶりだ。それはただの出来心から来た悪ふざけだったはずなのに、狼夜が突然そんな事を言うものだから冷静になれず戸惑ってしまう。

  にっちもさっちもいかなくて、ただただ長い沈黙が続いた。

  そろそろ身体が熱くなって、のぼせてしまいそうだと思っていたところで、狼夜がおもむろにその身を翻し、スバルと位置を交換するよう、正面からこちらを見下ろしながら、腕を浴槽の縁につく。

  「かっくん…」

  「な…なに…っ…なんだよ…っ」

  「もう一度……キスしてくれないか?」

  「……は、はぁ?」

  正面から覆いかぶさられるようにして、狼夜の顔が近付いてくる。それは息が掛かるほどの距離であると同時に、一度体験した行為だからか、最初の緊張した面持ちはどこへやら、狼夜はその精悍な顔付きに、男らしい妖艶さを漂わせて、こちらを熱っぽく見下ろしていた。

  突然のそんな要望に、思わず驚いて身を引こうとしたけれど、位置を交換したせいで後ろに逃げ場はなく、左右にも彼のふとましい腕が手すりのように行動を阻害している為、動く事が出来ない。

  徐々に近付いてくるマズルが、狼夜の言葉を嘘ではないと暗に示している。戸惑いと緊張によって、何も言葉が浮かばない間にも、刻一刻と制限時間は迫ってきていたようで…。

  「……沈黙は、了承ってことだな?」

  「………っん❤」

  僅かに微笑んだ狼夜が、そう言って喰らいつくようなキスをしてきた。身構えるように目を閉じて、肩と背筋がキュッと高く持ち上がる。

  最初は閉じていた唇も、彼の舌が優しくそこを撫でるようにすると、自分の意思とは無関係に、無意識のまま力が抜けて、その侵入を喜んで受け入れてしまう。

  「ん゙っ❤ちゅ…っ❤んむ…っ❤ん゙〜〜〜っ❤❤」

  押し返そうと突き出した腕は、なんの意味も成さなかった。むしろ、その腕に強く押し付けられるように、狼夜の胸板が迫ってきて、尚更身体が密着していく。

  頭が茹だるように熱く、意識がボンヤリとしてしまうのは、湯船の温度だけが原因ではなかった。

  数分間にも及ぶ、長い長い情熱的なディープキス。

  やっとの事口を離されると、スバルは荒く息を吐き、狼夜は繋がる銀の糸を舌で絡め取りながら、控えめにニッと牙を見せて、照れたように笑い…。

  「へへ…かっくん…好きだ…」

  「っ…!?」

  突然の告白に、スバルは目を見開きながら彼を見つめて固まってしまった。まさかそんな事を言われるとは全く想像しておらず、徐々に首元から頭のてっぺんまで顔が真っ赤になって、ボンと頭頂部から、抑えられなかった熱が弾けて打ち上がる。

  そのまま、いたたまれなくなって下げた視線。その先にそそり立つのは、そう、男なら誰しもが持っている、興奮度メーター。

  「お、お前…また勃って…」

  「あぁ…だから、またしよう」

  「え…ぁ…そ、そんなの…オレ…っん❤」

  言うが早いか、指摘したと同時に顔を上げると、もう一度狼夜のマズルが近付いてきて、スバルの口元を否応なしに覆い隠した。

  身体は尚も密着していき、下半身の滾りに滾った怒張する熱が腹に押し付けられるよう突き出されると、スバルの心臓もまた、驚くほど強く脈動し、恐怖とも不安とも言えない感情が思考を覆い尽くしていく。

  「ん゙〜〜〜〜!!❤❤」

  結局その後、貸切が終わる一時間もの間、二人がこの浴場から出てくる事はとうとう無かった。

  たった一度の悪ふざけが、狼夜の理性を粉々に砕いて、彼の中で燻っていた様々な欲望を、ひとつ残らず解き放ってしまったようだ。

  その被害を一身に受けてしまったスバルは、自分優位だと思っていた性知識が、全くもってただの自惚れだったことを、狼夜の手によって嫌というほど身体に教え込まれてしまうのであった。

  銭湯からの帰り道。

  並んで歩く二人の間には、それまで漂っていた気まずい雰囲気は微塵もなく、昔に戻ったかのような、仲の良い気安い空気が漂っている。

  狼夜は終始ニコニコと朗らかに微笑みながらスバルを見下ろしていて、スバルは気恥ずかしそうに視線を逸らしながら、耳まで真っ赤に染め、居心地が悪そうに腕を組んでいた。

  どうやら、銭湯での一件が、二人の距離を縮めてくれたらしい。むしろ、気まずさが更に強くなってしまう可能性もあっただろうが、それよりも狼夜は、スバルが行為の最中に見せた姿に、今でも意識を高揚させているし、スバルもスバルで、今まで狼夜に見せることがなかった恥ずかしい様子を見られて動揺が続いているという状況だ。

  「……前見ないとぶつかるぞお前」

  「……へへ」

  言っても狼夜は気にした素振りすらなく、何がうれしいのかずっと上機嫌な様子で、ふさふさの尻尾と耳をパタパタと動かしていた。

  それだけ銭湯で見せたスバルの姿が印象的だったのだろう。今も、耳まで真っ赤にして恥ずかしがる彼の様子を見ると、その耳元で優しく率直な意見を囁いてあげたくなる。

  そんな狼夜の姿をチラリと見上げて、呆れたように大きく溜息を吐いたスバルが、組んでいた腕を解いてしまうと、狼夜はそれを見て、隙を突くようにソッとその手のひらを取った。

  「っお、おい!」

  「……ダメか?」

  「…っ…だ、ダメに決まってるだろ!…調子に乗るな!」

  「…フフ」

  瞬間、驚いたようにバッと狼夜の腕を払ったスバルが、自らの手を隠すように、反対の腋の下へと潜り込ませた。そして、ムッと口を突き出しながら、潤んだ瞳で拗ねたように狼夜を見上げると、彼もまた少しおどけた様子で、懇願するようにスバルを見下ろす。

  どうやら、とぼけてそれとなく手を繋ごうと思ったけれど無理だったらしい。そんな狼夜の思惑など知る由もなく、ついついそれを許可してしまいそうになる心境を振り払って、スバルはフンと顔を逸らした。

  この調子ならば、いつか手を繋ぐ事も許してくれるだろう。そんな淡い未来を思い描いて、小さく笑った狼夜は、代わりにスバルの肩を抱いて密着するようにすると、彼の反応を伺うように顔を覗き込んだ。

  「…………」

  どうやら、手は繋げなくとも、肩を抱くくらいなら了承してくれるらしい。

  狼夜は、こうして縮まっていく距離を嬉しく思いながら、いつか成就しそうな自らの愛を夢見て、期待に胸を踊らせた。

  ――しかしそれは、ほんの僅かな間の、儚い夢幻でしかなかったのだ。

  「危ない!!」

  「……へ?……か、かっくん!!!!」

  浮かれて気付くことのなかった危機。

  顔を都合よく問題の場所へと逸らしていたスバルだけはそれを見逃すことなく、狼夜の腕を振り払って、おもむろに走り出していた。

  ちょうど運悪く、少し先の路地で暴れていた一人のヴィラン。普段の狼夜であったなら、見逃すはずのない違和感であったが、恋により盲目になった瞳では、その変化を捉えることが出来なかった。

  数人の敏感な衆人達が、暴れ出すヴィランの様子に気が付いて走り出す。ただ、変化に疎く、反射神経の遅い一般人達がそれに気付くのは、事が起こってから数秒後の事。その場に居合わせた殆どの者たちが気付かなかったその危険に、すぐ走り出したスバルは、やはりヒーローの素質を持っていたのだろう。

  ふとした瞬間、力を解放したヴィランの身体から、強い衝撃が迸り、周りにあったありとあらゆる物体を吹き飛ばした。

  それは例えば電柱であったり、建物であったり、そして駐車されていた大型のトラックでさえ、全て。

  吹き飛ばされたトラックのその射線上に、小さな子供が歩いていた。スバルはすぐさまその子供を守ろうと走り出し、手を伸ばしながら無我夢中で叫んだ。

  狼夜もその後を追い、伸ばした腕は――

  選択肢

  間一髪…スバルの元へ届いた。[jump:6]

  健闘虚しく、スバルの元へは届かなかった。[執筆中]

  [newpage]

  間一髪…スバルの元へ届いた。

  その手はまるで、スライムのように粘性を伴って伸び、子供へと覆い被さるスバルの身体に届いた。

  ハッとして驚く間も無いままに、どうにかスバルを助けたいと一心に思う。

  その結果……。

  「ぐ、ぁぁぁぁ……っ」

  「かっくん!!!!」

  慣れない能力を使ってスバルを引き寄せた結果、不安定な態勢で横這いに倒れた彼の、地面に接着していた膝から下へと、倒れたトラックのコンテナ部分がのしかかった。

  バキボキという嫌な音と共に、激しい痛みが襲ってくるけれど、スバルは子供に恐怖心を与えたくない一心で、その痛みと悲鳴を耐える。

  狼夜の伸ばした腕が形を変えて、コンテナの下にズルリと潜り込み、大きく広がるように膨張したかと思うと、クッションの形となってトラックを弾き、それをスバルの足から吹き飛ばす。

  「だ、大丈夫か!?かっくん!」

  「ろ、狼夜……お、オレ…オレの足が…っ」

  「っ…大丈夫だ。トラックは退けたから…君も大丈夫か!?」

  「……う、うん…」

  「よし、ここから避難しよう!」

  狼夜は、痛みに青い顔をして脂汗を滲ませるスバルと、彼が守ろうとした子供を一緒に抱き上げて立ち上がった。

  「危ない!」と叫ぶ声が聞こえて振り返ると、第二波となる電柱が倒れてくる。

  咄嗟に背中を向けて抱えた二人を守ろうとしゃがみ込めば、瞬間、背中からキノコのように伸びた粘液が形を変えて、今度は小さなエアーバックのように電柱を受け止め、そのまま弾いてしまう。

  「…狼夜…お前」

  「せ、説明はあとだ!ここから逃げよう!」

  スバルの驚きと、絶句するような声が聞こえて振り返った狼夜だったが、どうやら能力が発動して助かった事を確認すると、すぐさまハッと気を取り直して走り出した。いつの間にか背中から伸びた粘液は消えてなくなっており、狼夜は腕の中で呆然と、生気を失ったように俯くスバルをチラリと見下ろして、しかしただ今は何も言うべきではないと、その感情を振り払うようにその場から離れていく。

  それはつまるところ、狼夜に訪れた特殊能力の覚醒に他ならなかった。

  ただただスバルを助けたいという気持ちが作用して、その強い感情に呼応した肉体が、思いがけず力を発現してしまったのである。

  その結果、スバルを助ける事に繋がったのは僥倖であったけれど、…反面、能力覚醒に思い悩む彼の心に、深い傷跡を残してしまったのは確実であり……。

  五年後……。

  スバルはあの事件をキッカケにして、両足に再起不能の大怪我を負い、ヒーローになる夢を諦めざるを得なくなった。

  普段の日常生活で歩いたり、ほんの少しの速度で軽く走る事は出来ても、それ以上の激しい運動は全て禁止され、未だ発作のようにたびたび襲い来る足の痛みに耐える日々。

  それも、非常に長く厳しいリハビリの結果、やっと手に入れた生活だった。医者には元より、二度と歩く事は出来ないだろうと言われる程の傷だったけれど、これでも奇跡的な回復力で、最善の状況まで復帰できているのだと言う。

  とはいえもちろん、そんな身体ではヒーローになる事など出来る訳もなく、どちらにしても、彼には結局能力の覚醒も訪れなかった事から、遠い過去の夢は、空想の夢のままで終わってしまったのだ。

  そしてその反面、あの日スバルを助けたいと思う一心で能力に覚醒した狼夜は、すぐさまヒーロー協会からスカウトされるという名誉を授かり、高校進学を辞めて本格的な訓練を開始する為の専用施設に入所する事になった。

  元々空手でも全国有数の実力を持っていた狼夜だ。スバルの影響で幼少期からヒーローの理念等にも通じており、高い思想と戦闘適正を認められた挙句、その能力もまた、協会にとっては類を見ないほどのレアな能力だったらしい。

  彼の能力は“ゲルモーフ“…粘液変形者とも呼ばれ、自分の肉体を思い通りの液体に変化させ、操る事が出来る、SSS級能力だ。

  何故この能力がSSSとされるのか、SSSとは、これまでに発見されたことのない未知の等級。一見どこにでもありそうな、何の変哲もない平凡にも見えるその能力であるが、協会がそれをSSS級としたのには、その汎用性があまりにも高過ぎるから…と言わざるを得ないだろう。

  あらゆる隙間から物質の中へと自由自在に侵入出来るだけでなく、その液体の性質を変えて硬質化したり、重量を操作したり、効果を変容させたり…こんな事は朝飯前。

  狼夜はその気になれば文字通り不死になる事も、不老になる事だって可能なのである。ただ、“そういう成分を持った粘液を願い、生み出す“だけで、彼はそれを実現出来てしまう。流石にそんな事が分かったら世界がひっくり返ってしまうため、最重要極秘事項に指定されているようだが。

  身体は全て粘液に変換出来るため、物理攻撃は一切無効。例えナイフで刺しても、バットで殴っても、凶器は全て身体をすり抜け、貫通していく。

  同時に、炎熱、凍結、雷撃、放射線。それら全てに耐性のある粘液で身体を覆っている為、力学的な攻撃にも対処出来る。洗脳や精神破壊もそうだ。それらに耐性のある粘液を常時身に纏う為、あらゆる特殊能力を無効化する事が出来る。そしてこれは、他人にも粘液を与えることで同じ効果を付与出来るという点でも優秀だった。

  そもそも、相手を包み込んで能力を使えなくする粘液に浸せばいい。それだけで能力者は手も足もでなくなり拘束される。何十、何百体もの分身を作り出して勝手に街をパトロールさせたり、戦闘させたりすることだって出来るので、今や誰が本物の狼夜なのか、それを知る者すら居ない。

  研究者の中には、狼夜の能力は神の物質を作り出す能力だとか、この世に存在しない物質…ダークマターを作り出す能力だとか、神そのものが顕現したのだとか、そんな事を言うものまでいるくらいだ。

  つまるところ、そんなチート能力に覚醒した狼夜が、ヒーローどころか、この世界の守護者とまで言われ頭角を現すのは、そう難しいことでは無かっただろう。

  一方、スバルはと言うと、子供を助けて負った傷と、心を折るようなリハビリの日々。そして、狼夜という身近な存在が、落ちぶれていく自分とは裏腹に、もはや神とまで言われて敬われ始めた世界に嫉妬し、絶望してしまうと、ただ何をする事もなくぼんやり過ぎていく時間を、ひたすら無為に過ごしていた。

  もはや堕ちる所が無いまで圧倒的に堕落し、子供の頃に持ち合わせていた高尚な意志など全く無く、僅かな障害者手当を貰いながら、ひたすら安酒ばかり飲んで、壊れそうになる感情や思考をどうにか落ち着ける日々。

  その日もまた、缶ビール片手に、とことん絶望してしまった救いようの無い気持ちを、少しでも紛らわせるよう夜道をヨタヨタと酔っ払いながら歩いて、ただひたすら無駄に時間を潰していた。

  やる事もなく、生きる意味もなく、かといって死ぬ勇気もない、そんな風にどん底の底まで落ちぶれて、子供の頃では想像もしていなかった哀れな自分を、嫌悪するのももううんざりだ。

  ついにそのまま塀にもたれかかってしまうと、意識を失う寸前の所で、何者かに腕を捕まれ、優しく持ち上げられた。

  力無く項垂れた首を持ち上げ、なんとかガクつく視線を向けようとしてみれば、そこには月の逆光に顔の隠れた、こちらを見下ろす誰かの姿。

  「お…前…っ〜〜」

  ――呟いた言葉は、口元を覆う何かに途切れて…。

  「……迎えに来たよ。かっくん。」

  懐かしくも優しい、そんな低い声が聞こえた気がした…。

  [newpage]

  「あ゙〜〜〜〜っ❤❤ゔ〜〜あ゙〜っ❤あ゙っ❤あ゙っ❤あ゙〜〜っ❤❤」

  股を大きくM字に広げられ、自身の足首を掴んだ腕とくるぶしを共に拘束されて、仰向けに寝かせられている。

  目元には黒い軟体のようなマスクが装着されており、全身の拘束と合わせて、それが狼夜の能力で生み出されたモノだろう事は、自ずと簡単に予想できる状況だった。

  当然、服など着せてもらえる訳もなく、勃起した逸物には、球体の連なった細い管が尿道へ通されており、ケツ穴もまた、黒い粘液がそこを押し広げるように侵入している。

  その上で、細かい繊毛のビッシリと生えた粘液が乳首を覆い隠すように蠢いており、その全てに媚薬成分を持たせていることから、拐われて早1ヶ月、スバルは常に興奮状態を維持されて、狼夜の手によりその無垢な肉体を徹底的に改造されている最中であった。

  ヂュポポポポッ❤と我慢汁を伴って、尿道から勢いよくビーズが引き抜かれる。

  「お゙〜〜ッッお゙んっ❤❤❤お゙っっっ!!❤❤」

  「よしよし、そろそろ擬似的に射精してるような錯覚に陥るだろ?……これからもたっぷりズポズボしてやるから、しっかり尿道でイけるように頑張ろうな?」

  「は…はッ…❤ちんごごわ゙れ゙るっ❤❤ごわれ゙ちゃうがら゙っ!❤❤」

  頬や耳を真っ赤に染めて、口の端から唾液が漏れる。ビーズが尿道から抜かれると同時に顎をしゃくりあげ、舌を突き出しながら、腰をビクンと大きく持ち上げては、すぐに落とした。ガクガクガクゥ…❤と下半身を震わせて、疑似射精の余韻に浸りながら、荒く息を吐いたスバルは、泣きじゃくり、殆ど怒鳴りつけるように狼夜へ向かって叫んでいる。

  目元を隠す粘液の下から、それに溶けない溢れ出る涙が、ダラダラと隙間から漏れては、頬を湿らせていた。

  「ヒーローになりたいんだろ?……ならこのくらい耐えないとダメじゃないか。ん?」

  「っ……だがら゙っ!❤も゙…ッオレ゙ヒーロ゙ーに゙な゙ん゙かっ…な゙れ゙ない゙んだよ゙!!❤❤っふざけっ…ん゙っ…ゔあ゙ぁ゙!!❤❤」

  「………夢を諦めた君の弱気な姿なんてみたくない。……諦めなければ幾らでもチャンスはあるさ。…その為にも、ヴィランに捕まった時を想定して、訓練し続けないとな。」

  「やら゙っ!❤やら゙ぁッ!❤も゙っ…イ゙ぎだぐな゙っ……❤ぎぃぃ!!❤❤」

  「そら、大好きな首絞めと同時に尿道ほじられてアクメを我慢出来るか試してやる!どうだ!」

  「ごっ…ぉ゙っ❤❤ごぇ゙…ぇ゙ぇ゙…〜〜ッ…〜ッッ!!❤❤」

  背後から伸びてきた黒い粘液の触手がスバルの首をギュッと絞め付け、同時に狼夜が能力で生み出したビーズ付きブジーを手にして、それを容赦なく尿道に挿入していく。

  ゾリゾリと内襞を擦り付けながら前立腺のある小部屋まで到達させ、グリグリと圧迫しては、また勢いよく引き抜くのを繰り返すと、まるで連続で射精しているような感覚に陥り、首絞めで白く染まった脳みそに、気が狂うような絶頂が迸って、何も考えられなくなった。

  首を絞められると、気絶に向かって全身がガクガクと陸に上がった魚のように震えて、跳ね上がる。その痙攣のせいで、特に手を動かさなくてもブジーが尿道を行ったり来たりし、それが尚更快感を生み出して堪らなかった。

  相変わらず、ぢょろろろろ…と小便を漏らし、それが狼夜のスライムによって余すこと無く吸収されていく。

  ケツ穴に挿入された粘液を勢いよく引き抜いて、間髪入れずに二本指でゴチュゴチュと前立腺を掻き回せば、スバルの震えは尚も強く、激しくなり、突き出した唇からは、喉の奥に詰まったかのような、声にならない声ばかり漏れ始めていた。

  首から触手が外されても、しばらく痙攣は収まらず、呼吸も止まってしまって、全身が強ばり続けている。

  「〜〜〜ッッ!?❤❤ッ!?❤ッ…ッ…っ!?❤ッッッ!!❤❤❤ぐぎっ!❤〜〜…ィ゙っ!❤❤」

  「……少しやり過ぎたか?……だがまぁ、これくらいヒーローなら耐えて当たり前だな。」

  実際にヒーローとして活動していれば、中には洗脳や魅了の力で彼等を捕らえ、陵辱の限りを尽くすヴィランも少なくは無い。

  狼夜……リキッドハウルもまた、そのような状況下に追い詰められ、救助した仲間を既に何人も見てきたのだ。狼夜の能力から得られる特殊な素体を使って、ヒーロー協会に記憶と肉体の初期化技術が実装される前は、一部を除いた沢山のヒーローが、志半ばでその心を折られ続けていたという。

  ひとしきり絶頂の余韻に痙攣を繰り返していたスバルは、そのうち疲れ果ててグッタリとベットにその汗だくの身体を沈めると、そのまま一拍置いて、まるで7歳にも満たない子供のように、もはや恥も外聞もなくぐちゃぐちゃ泣き出してしまったではないか。ヒーローとして、そのような様子を楽しんでしまうなんて有り得ないという気持ちは当然ありつつも、しかしスバルのその無様な泣き顔が、何故か堪らなく狼夜の加虐心を擽ってしまう。

  「ゔっぅ〜っ!❤ゔぁ゙あっ!❤はぐぅっ❤ゔ〜〜っ❤❤」

  「あぁ…すまんすまん。……ちょっとやりすぎたみたいだな。…少し休憩しようか。」

  小さく笑ってそう言いながら、頭を撫でると同時にスバルの身体を拘束していた全ての粘液が一瞬にして狼夜の肉体に取り込まれ、跡形もなく消え去ってしまう。全ての拘束から解放され、生まれたままの姿を晒すスバルの上へと、ゆっくりと覆い被さった狼夜は、未だ泣きじゃくる彼の顔を見下ろして、涙で濡れる頬を親犬のように優しく舐めてやる。

  「……君がイケないんだぞ。……あんな姿を俺の前に晒すから…。」

  「うっうっ…❤…も、…やだ…っ…❤…オレを…ぐす…解放してくれよぉ…っ❤」

  「帰したところでどうなる?……また酒に溺れて、人生を無駄に生きるつもりなのか?………ほら、泣くな。」

  「んっ…❤んむぅ…っ❤…ちゅ…❤んふ…っ❤」

  狼夜の正論に、スバルは返す言葉が思い浮かばず、その間にも唇をソッとマズルで塞がれて、慰められるように舌を絡ませられた。嫌なのに、嫌なはずなのに、そのキスは何故か妙に心地よく、荒れた心をどこか優しく癒してくれるような、そんな気がしてしまった。

  この五年という長い年月の間に、厳しい鍛錬と、沢山の修羅場を乗り越えてきた狼夜は、学生の頃と違って更に身長も伸び、それに加えて元々凄かった筋肉量も驚く程増えている。

  精巧な顔付きにも関わらず、少し頼りなかった表情も、今や歴戦の戦士を思わせる風貌を漂わせており、四肢は丸太、胴体はドラム缶をイメージさせるような、非常に屈強で大柄な肉体へと進化していた。

  しっかりと成長し、男性ホルモンの豊富な大人の男になった影響か、顎と胸、そして腕や足全体に、人間の体毛を思わせる黒い胸毛や腕毛がびっしりと生えており、元より色の白い胸元と顎のラインは言わずもがな、灰黒の毛皮に覆われた腕や足にも、その漆黒はかなり目立っていた。

  それはまさに雄そのものを体現する男らしさの塊であり、全身からフェロモンのようなムンムンとした色気を漂わせていて、大勢の人々を魅了するカリスマと妖艶さが一目で分かるような有様だ。

  その上、実力だって、他のヒーローと一線を画す力だと言われているのだから、彼がNo.1ヒーロー…いや、世界の英雄と呼ばれるようになるのは時間の問題だっただろう。

  メディアへの露出も少なく、普段から寡黙で冷静、にも関わらずたまに見せる笑顔は純粋無垢な青年のような爽やかさで、あらゆるヒトを虜にしてしまう。大抵は能力で造られた狼夜の姿にそっくりな分身がその役割を担っているが、彼らでさえ圧倒的な力でヴィランを捕まえた後、すぐさま次の脅威へと向かっていくらしく、その様子が人々にはストイックだとかなり好評で人気の一つらしい。

  にも関わらず、そんな彼が、ヒトを一人拐って監禁し、陵辱の限りを尽くしているなんて、一体誰が想像出来るだろうか。

  口を離して、ニッコリと穏やかに微笑みながら、こちらの頭を優しく撫でてくれる狼夜は、そこだけ切り取れば、誰にとっても非常に理想の恋人であり、ヒーローだと言えるだろう。

  しかし…

  「じゃあ、そろそろ続きといこうか。」

  「ひっ!や、やだぁ!❤」

  「大丈夫。今度は優しくするからな。」

  言いながら、スバルの下半身へと移動した狼夜が、彼の太腿の下から腕を通し、引き寄せるようにして掬い上げると、その姿からは彼の優しさなど微塵も感じる事は出来ず、被害を被っているスバルにとっては、恐怖以外の何物でもなかった。どんなにやめて欲しいと懇願しても、泣いて謝っても、これがスバルの為なのだと暴走している狼夜の前では、何一つ要望を聞き入れて貰う事は出来ず、毎日のように行われる陵辱に、脳みそも身体もふやけて、甘く蕩けていくようだ。

  腕や足を拘束された訳では無いけれど、少しでも抵抗したらすぐにでもまた先程のように身動きを制限され、無茶苦茶にされる事は目に見えている、だからスバルは、それが恐ろしくて泣きじゃくる以外に何もする事が出来ない。

  震えながら、目元を両の手のひらで覆い、溢れ出る涙を拭うけれど、そんな事をしている間にも、狼夜の長い舌が、ベロリと、金玉から竿、鼠径部を舐め上げていて…。

  「うぅっ❤もうちんちんやだぁ…っ❤ちんちん気持ちよくしないでぇ…っ❤壊れちゃうからぁ…っ❤ぐすっ❤」

  シクシクと泣きじゃくりながら、子供のような口調で懇願した。なにせこの一ヶ月の間、延々と媚薬漬けにされた肉体は常に熱を持ち、意識を混濁させていて、思考を一時だって正常なものにしてくれないのだから当たり前である。言語と感情のリソースを節約して、快楽に耐えるようしなければ、とっくにスバルは正気を失い、再起不能になっていただろう。これはつまるところ、無意識下における肉体の防衛本能が、彼を子供の頃へと退行させてしまっているに過ぎない。

  「わかったわかった。じゃあ、今度はこっちな?」

  「ひぇ…っ❤」

  言われながら、指先で下から金玉をチョンと弾かれると、スバルは怯えた声を出しながらピクリと僅かに下半身を痙攣させた。

  それが何を意味するのか理解する暇もなく、大きくマズルを開いた狼夜が、呆気なく金玉諸共ペニスを口の中へと含んでしまえば、ねっとりと湿った生暖かい熱に囚われて、今度こそスバルは、驚いたように全身を大きく跳ねさせてしまう。

  太腿とベットの間に挿入され、胸元まで伸びてきた狼夜の指先が、スバルの胸の突起に這いより、そこを弾く。いつの間にかその指先には、何かびっしりと柔らかい棘のようなものが生えていて、それが恐らく彼の能力の応用であることは言うまでもないだろう。

  「くひぃっ!❤」

  親指と人差し指の間で、ツンと尖った乳首を挟まれ、コリコリとこねくり回されると、スバルはビクンと腰が跳ねて、折り畳んだ腕に力が入り、狼夜の両手を挟むようにしながら身を竦める。突き出した腰に合わせて、チンポと金玉が狼夜の舌の上でズルリと滑り、唾液が全体にまとわりつくと、浮いた腰をブルブルと震わせて、快楽に歯を食いしばりながら甲高い悲鳴を上げた。

  狼夜の指先にまとわりついた繊毛は、その一つ一つがまるで意志を持つ生物のように、それぞれ好き勝手ワサワサと動き回っている。既に媚薬に依存しきった肉体は、風がそよぐだけでも快楽を作り出してしまうというのに、幾つもの棘が乳首を引っ掻くよう動き回れば、それに抗う事など出来るわけもなかった。

  「あ゙ぁっ!❤ち、乳首っ!中入るのダメぇっ!❤」

  そのうち、ギュッと指の腹で乳首を圧迫されると、それと同時に粘液が形を変えて乳頭から中へと浸透していき、スバルの胸をいやらしく滑稽なものへと作り替えようとする。乳管を通って、いくつもある小葉と呼ばれる器官の中に侵入すると、そこでミルクを作り出せるよう組織を改造していき、更にその噴出で快楽を得られるよう、細胞の隅々まで媚薬を染み渡らせていくのだ。

  「ひぃぃっ!❤あっあっあっ!?❤お、おっぱいっ!❤おっぱいイクゥ!!❤❤」

  そうやって胸を改造され、そこだけでドライオーガズムに達するよう調教されている間にも、今度は狼夜の口の中でそそり立つ、小ぶりのペニスへと、粘液の魔の手が迫っていく。

  ベロリと舐めた舌先が形を変えて細くなり、ペニスを包み込む筒のようなモノに変化すると、そこをギュムギュムと強く締め付けて、同時に尿道の中へと、ゆっくり粘液が浸透していった。

  未だ乳首の快楽と度重なる絶頂へ夢中になり、足先をピンと伸ばしながら、口を大きく開けて絶句したように固まるスバルを後目に、尿道へと侵入した粘液は彼の金玉袋の中まで侵入すると、そこにある二つの玉へと直に染み込んで、植物の根のように無数の触手に分かれて伸びていく。

  そして、その根を伝って滲み出すのは、精力剤と増精剤、覚醒剤と媚薬…などなど。

  ビクンとまたしても大きく震えたスバルが、目を見開いて朦朧とした意識を覚醒させると、金玉の中で蠢く触手の感覚に気付いて、ガバリと上半身を持ち上げた。まるで内側から直接金玉を愛撫されるかのような違和感に、もはやヒトの証である言葉を出す事すら出来ない。

  意識が全て、男の急所であるそこに向かい、ゾワゾワと背筋を伝う悪寒と冷や汗を止めることが出来なかった。まるで風邪に掛かって熱と寒気を同時に感じてしまうような、そんな自律神経の混乱模様に脳は危険信号を送り続けるけれど、もはや肉体は思うように機能してくれない。

  しばらくそうしてたっぷりと、精巣を直接クスリ漬けにした狼夜が顔を持ち上げれば、瞬間、それと同時に尿道から管になった粘液がつぷりと引き抜かれて、その反動にスバルは腰をまた前に突き出しながら射精してしまったのだった。

  「ひぎぁぁっっ!!❤❤漏れ…漏れるぅっ!!❤❤イクぅぅ!!❤❤」

  「おっと、勿体ない。」

  早速薬の効果が出ているようで、急速に造られた大量の精子がドビュッ…と重たくボトボトと飛び出し、狼夜は舌を伸ばしてそれをどんどんと飲み込んでいく。

  相手の頭を抱え込むように力無く掴み、歯を食いしばってギュッと目を閉じたスバルは、止まらない射精の感覚に酔い、次第に腰をカクカクと情けなく振りながら、だらしなく蕩けた顔で搾精される快楽を享受し始めた。

  尚も摘まれたままの乳首からは、ピュルリピュルリとミルクを吹き出しており、狼夜は、そんなスバルの姿を上機嫌に見上げながら、彼の吐き出すザーメンの味に、舌鼓を打ち続けるのだ。

  「ん゙っお゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙!!??❤❤❤出りゅぅぅぅぅ!!!!❤❤❤」

  ブリュリュリュリュリュ…っ❤ブチッッ!ブチチ!❤❤

  ケツ穴から拳大の球が幾つも連結したアナルパールを無慈悲にも勢いよく引き抜かれ、頭の中でチカチカと閃光をほとばしらせながら絶叫した。ベットに跪き、背を月のように反らしたスバルは、天井を見上げ、舌を突き出しながら、その後はフッと力を失ってそのままシーツの上へと上半身を突っ伏すよう脱力してしまう。

  「……かなり拡がってきたな。……ふふ、偉いぞかっくん。」

  「ひあっ❤………あ゙〜…❤あひっ❤…ひゅっ❤」

  言って、背中を優しく撫でるようにすると、スバルの身体が驚いたようにビクンと震えてはまた脱力し、時折思い出したかのようにその後も痙攣を繰り返していた。ベットへと横向きに貼り付いた視線は虚ろで、そこにはもはやヒトの持つ理性など存在しないかのような、そんな混沌とした暗闇が広がっている。

  そして、パクパクと呼吸するように動いた彼のアナルは、今ではぽっかりと開いて閉じる事もなく、まるで狼夜の欲望を中へ誘おうとするような、そんな卑猥な肉色を見せていた。

  ゴクリの喉を鳴らして息を飲んだ狼夜は、今にもそこへと自らの剛直を突き立て、掻き回せたらどんなに良いか…と、そんな事を考えるけれど、まだまだもう少しスバルのこの乱れた様子をひとしきり堪能したくて、その欲望を必死に押さえつけている。

  「さぁ…もう一度、今度は自分でひり出してみような?」

  「ん゙っ!?❤ゔ〜〜っっ!!❤❤ま゙だっ…拡゙がっ…っっ❤❤」

  狼夜が能力で作り出したアナルビーズを操り、ケツを突き出すように脱力するスバルの蕾へと、それをどんどん侵入させていった。

  苦しげに呻き声を上げ、シーツをギュッと掴んで俯くスバルは、ズン…ズン…と球がゆっくり挿入されていく苦しさに歯を食いしばって、垂れ下がる小ぶりのチンポをヒクヒクとしゃくり上げながら、その先端から我慢汁の糸をタラリとシーツに垂らすのだ。

  「そら…全部入ったぞ?…よく頑張ったなかっくん。」

  「ふぐぅ…っ❤❤…ぐるじ…っ❤お腹…っ破けるっ❤」

  たった数秒の出来事にも関わらず、何時間にも感じる瞬間だった。スバルの腹は、中に無理矢理挿入されたアナルパールのせいで不規則な凹凸を見せながら膨れ上がっており、狼夜がそれを戯れに操作して内部でグリグリ動かすせいで、まるでエイリアンの幼体にでも寄生されたかのような様相を呈している。

  その苦しさで、口の端から唾液を垂らし、荒く呼吸するスバルを引き寄せた狼夜は、シーツの上に彼をしゃがませると、その膨れ上がった腹を優しく撫でながら、中のボール粘液を突然ゲル状に溶かしてしまったではないか。そうすると、挿入時は球の連なったアナルパールだった粘液が、腹の中でまるで便のような柔らかいモノへと変化し、多少なりとも苦しさは紛れるものの、一刻も早く出したいという欲求は尚更強くなる。

  「さあ、このまま息んで、ケツに力を入れるんだ。」

  「はぁ…❤はぁ…❤はぐっ…❤ぐ…ぎぃぃ…っ❤❤」

  狼夜の言葉に、スバルはもはや思考が覚束ず、言われるがままに従って、彼の腕と体を支えにしながら無様に息み始めた。歯を食いしばり、こめかみに血管を浮き上がらせて、何とか必死にケツの括約筋を開こうとするけれど、ミリ…ミリリ…❤と黒い粘液が顔を出しそうになる度、その快楽に全身から力が抜けて、肺に溜まりきった空気を全て吐いてしまう。

  「そら、もう一回!しっかり踏ん張れ!」

  「はぁ…❤はぁ…❤ふんぎ…ッ!❤ん゙いいいいっっ!!❤❤❤」

  叱責されて、全身から脂汗を垂らしながら、スバルはもう一度ケツに思い切り力を入れた。今度こそほんの少しだけ粘液の先端が穴から僅かに顔を出すけれど、どうしてもそれ以上が続かず、このままでは到底それを全て出す事など出来そうにない。

  「全く、仕方ないね。世話が焼けるな君は…」

  「はぁ…❤はぁ…❤…っあ゙!?…や…っ…だめ!ダメダメダメっ!❤今゙お゙腹゙押゙ざれ゙だらっ!?❤❤」

  そこでとうとう痺れを切らした狼夜が、そう言いながらグッと撫でていたスバルの腹を上から強く圧迫すると、彼はその感覚にブンブンと首を横に振り、涙を流しながら狼夜の身体へと尚更強くしがみついた。大きな手のひらがスバルの腹を端から端まで覆い隠し、そのまま強制的に排泄を促そうと、無慈悲なまでに強烈な力を込める。

  瞬間、ぶっ…❤ぶぴっ❤という卑猥で汚らしい音がして、メリメリと開いた肛門から、とうとう固形化した柔らかい粘液が姿を現してしまったではないか。

  「やだぁっ!!❤❤出ちゃうっ!❤出るからぁっ!❤んお゙お゙お゙お゙お゙おおおっっっ!!!❤❤」

  そして、それからはもう止めようにも止められない勢いで、一本の縄のように繋がった粘液が、ぶりゅぶりゅぶりゅ❤と下品な音を立てながら、強制的に排泄されていった。背筋が突っ張って、足の指がシーツを掴むようにギュッと折り畳まれる。ほんの少しばかり腰が持ち上がり、それでも尚腹を押される力は強くなるばかりで、モワモワとした湯気の立ち上る長大な粘液の管が、シーツの上へとグルグルとぐろを巻くようだった。

  そしてそのうち、全身から力が抜けて、開放感と排泄の心地良さに、スバルの顔が蕩け、舌が口からまろび出る。最後には、ぶびゅっ!❤と一際大きな音と共に粘液が全てひり出されて、スバルはぶるりと僅かに全身を震わせながら、狼夜の身体へと、倒れるようにその身を預けるのだった。

  もちろん、排泄の姿を横からしっかりと観察していた狼夜も、それを見て満足げだ。当然これは擬似的に粘液を排泄させる事によって、トイレさえも快楽が伴う行為に仕立て上げる、彼なりの調教の一種であるからして、事前に腹の中は綺麗にしてあるので、ひり出されたものは汚物などではなく、むしろこの世で最も綺麗な物体だと、狼夜は本気で考えている。

  「そら、まだまだ休憩している暇はないぞ?」

  「ひっ❤う〜〜っ❤うぅっ❤う〜❤」

  そう叱咤して、スバルの腕を引いた狼夜。泣きじゃくって首を横に何度も振る彼を、先程と同じよう、ベットの上でしゃがませてケツを突き出す格好にすると、パクパクと金魚の口のように開閉を繰り返すスバルのケツ穴を見て、おもむろにそこへと腕を伸ばした。

  「ふっ…ぎぃぃぃぃぃっっっ❤❤❤」

  「さぁて、どこまで入るかな?ん?」

  そして、自らの拳を握り締めると、グリグリその先端をケツ穴に押し付けて、そのまま徐々にそれを埋没させていくではないか。

  何度もアナルパールとスライム排泄で慣らされたそのケツ穴は、ミリ…ミリミリ…と僅かに音を立てながらも、しっかりと確実に狼夜の拳を飲み込んでいき、そのうちあっという間に手首までズッポリと咥えこんでしまう。

  「ほら?分かるか?俺の腕がズッポリと中まで入ってるのが。ん?どうだかっくん。」

  「はがっ❤…ァ゛❤…かふっ❤…ォ゛❤」

  「こうして…っ!ゴリゴリ…っ…すると堪らんだろう?な?…そら!どうだ?っ何とか言ってみろ!えぇ?」

  「ギッ…がぁぁぁぁぁ!!❤❤❤ひぎぃぃっっ❤❤❤ケツ゛り゛ゃめ゛ぇぇぇ❤❤ケ゛ツ゛て゛イ゛く゛ぅぅぅぅ!!❤❤❤ほおおおおおお!!❤❤❤」

  「そうかそうか!ケツ穴が気持ちいいか!ヒーローの癖に、ケツで感じる淫売が!恥を知れ!!」

  狼夜がそう言って、アナルに挿入した拳をグリグリと回転させて、スバルの前立腺を強く上から圧迫した。ベットに両手を付き、しゃがんでケツを突き出すようにしたスバルは、最も弄られやすい体位で、最も弄られやすい角度で、狼夜からフィストファックされており、まるで獣が唸るようなガビついた絶叫を上げ、ケツイキの快楽を貪っていた。

  狼夜が腕を動かす度、スバルの股の間で揺れる萎えた包茎チンポの先から、ドロドロと小便のように我慢汁が垂れてシーツに染みを作る。

  そして、突如としてグポンッ!!❤と勢いよく拳が引き抜かれれば、ビクンと大きく痙攣したスバル。彼は、顎をしゃくり上げ、舌を伸ばしてブルブルと細かく震えると、なにやら一拍遅れて、ケツに薔薇を咲かせながら、またしても絶頂に叫ぶのだ。

  「ん゛ッッほお゛お゛オ゛ぉオ゛ぉお゛ォおお❤❤❤❤❤❤❤」

  しゃ〜〜……じょろろろろろ…❤

  小便を漏らし、襞が捲れる程ケツ穴を好き勝手拡張されて、ヒーローが拷問に耐える為の訓練という名のもとに、狼夜から激しい調教を受けるスバル。

  昔の、あの純粋だった恋心は、一体何処で砕け、歪んでしまったのだろうか。……今になっては、もう分からなくて。

  乳首も金玉も尿道もアナルも、スバルの肉体は全て、こうしてあの日から毎日狼夜の手により開発されていた。……最初はもちろん、酒に溺れたスバルを助けたい、更生させたいという気持ちで取り組んだ善意の保護だったのだけれど。……ヒーローになるという夢を失ってしまったスバルの自暴自棄な態度とその変化に、狼夜はいつしか、誰よりも尊敬していた相手が堕落してしまった姿を見て、深く絶望し、失望してしまう結果となる。

  子供の頃、輝いて見えたスバルの姿はもうそこにはなく、ただ存在していたのは、アル中になって何もかも投げ捨ててしまった、薄汚い浮浪者の姿だけ…。

  ――ならば……

  ――ならばそんな下らない…意味も無い…もう何もかも捨て去ってしまった…誰に必要ともされない無駄な人生ならば…。

  ――自分自身でさえ期待せず…夢や希望の光も消え…ただ死を待つだけの愚かな日々であるならば…。

  ――俺が……君を愛したこの僕が…その全てをありがたく使わせて頂こう…。

  ――どうせ必要のない命なら、もはや誰がそれを拾い、貰ってしまった所で文句はないだろう?

  ――どうせ生きるのが億劫ならば、君を愛したこの僕が、正しくその運命を消費してしまってもよいのだろう?

  狼夜はそう考えて、スバルを自宅に監禁し、そして嫌がる彼を無理矢理ベットに押し付けて、全てが自分好みの肉体になるよう、徹底的な調教を開始したのだ。

  それこそ子供の頃、片想いをし続けるだけで、なし得る事ができなかった、そんな彼への欲望を発散する道具として…。

  手に入るとは考えていなかった。いや、出来ると分かっていても、あえて一線を超えぬよう考えないようにしていた。そんな愛するスバルの意志を無視してまで…。

  ひたすら抑え込んでいた欲望は、今こそ解放の時を迎える。

  「さて、そろそろ俺も我慢の限界だ…。」

  「ふー…❤ふー…❤」

  呟いた狼夜が、そう言って仰向けに寝そべるスバルの両足首を掴み、その開いた股の間にズリズリと、我慢汁で濡れそぼったペニスをいやらしく擦り付けた。

  それは20cmを優に越える、ペットボトル並の太さをした逸物であり、陰嚢は一つのソフトボール大、先端からは小便のように絶え間なくカウパーを出し続ける、雄としての精力が目に見えて高い逸物であった。

  それでも、そのペニスが不釣り合いに見えないのは、彼の体格全体から見ても通常のサイズに見えるからだろう。

  狼夜の腰が前後に揺れる度、重たい陰嚢もまた僅かに遅れて動き、短い毛に覆われたそれがスバルの猫のように小さな金玉へとぶつかる。

  同じ男として生まれたはずなのに、明らかに生物としての圧倒的な違いを感じるペニスだ。スバルのそれと比べれば、1口サイズのウィンナーと大人の腕くらいの差がある。

  スバルは思わず、擦り付けられるそれに両手を突き出して、顔面をくしゃくしゃに歪めながら、涙を溜めて首を横に緩く振った。その手のひらに、擦り付けられた大量のカウパーが糸を引き始める。

  「…ろ…や…っ❤…も…これ以上は…っ…うっうっ…❤」

  「……そんな事言って、まだまだちんぽビンビンに勃起させてるじゃないか。……ほら、丁度いい。…触ってみろ。いつもここまで挿入ってるんだぞ?わかるか?……ヒーローじゃなく、元からこっちの才能があったのかもしれんな。ここまで飲み込める奴はそう居ない。」

  「ひっ…❤…こ、こんなとこ…まで…??❤」

  「そうだ。いつも根元まで…ズッポリとな…。君のここは俺のチンポを受け入れる為にあるようなモノなのかもな。というよりも、元々こうなる運命だったのかもしれない。少し開発しただけでこの有様だ。ネットリと絡み付いて、俺のチンポを貪欲に飲み込もうとしてくる。……君は俺の性奴隷になる為に産まれてきた娼婦なのさ。」

  狼夜が、突き出されるスバルの手を取って、それを自らの亀頭の先端へと固定した。そのまま腰を突き出し、股の間から臍の少し上まで、それが届いてる様子を伝えてやると、スバルは思わず息を飲んで、絶句してしまっている。

  ついでに、才能がなければそもそも半分も飲み込めないとか、ヒーローではなく自分の性奴隷になる為に産まれてきたんだとか、薬と快楽で思考能力が鈍っているスバルに、とことん意地悪な事を言ってやれば、彼はまた堪えきれないように顔を歪めて、いつしか嗚咽混じりにポロリポロリと涙を流し始める。

  少し言い過ぎだろ!という善の狼夜が頭の片隅に居る一方で、もっとこうして泣かせてやりたい、意地悪してやりたい…!と叫ぶ悪の狼夜が、与えられる興奮を糧に、もはや思考の半分以上を占領してしまっている。

  じわじわと言葉で追い詰めて、スバルの心を自分一色にしてやりたい。彼の世界を俺だけで埋めつくし、自分以外を見えないようにしてやりたい。監禁してきているハズの男なのに、それでも媚びへつらい縋り付かなければ、もはや精神状態を維持できないくらいに、追い詰めて…追い詰めて…追い詰めて……。

  そして甘く蕩けさせ、一心に愛情を注いで、どこまでも際限なくドロドロに依存させてやりたい。

  狼夜が居るから生きていける。狼夜が居ないと生きていけない。そんな状態までスバルを堕とし、永遠を彼と共に過ごし続けるのだ。

  それが狼夜の純粋な思惑であった。

  彼の泣き顔を見て、尚更滾った欲望が、もう我慢の限界を切に訴えている。

  「そら、挿入れるぞ?」

  「やっ!❤…やだぁ!❤」

  足をバタバタと動かして、抵抗しようとする意思は伝わってくるけれど、足首を掴むだけでその全てを完封した狼夜が、樽のようにふとましい腰を引いて、亀頭の先をスバルのアナルへと密着させた。

  泣きじゃくり、嫌だ嫌だと抵抗する割には、瞬間、まるで別の生き物のように亀頭の先端へとみっちり吸い付いたそこは、呼吸するように蠢いて、溢れ出るカウパーを啜るよう脈動している。

  狼夜にとっても、スバルのアナルは誘惑の蔓延る魔窟のようなものだ。一度そこに挿入してしまえば、その余りの気持ちよさに理性は霧散し、ヒーローとして培ってきた屈強な意思さえ、獣欲に呑まれて消え去ってしまう。

  息を荒く吐き、乾いたマズルをペロリ舐め上げながら、ゆっくりと腰を突き出していった。「ひぁぁ!❤」とスバルの驚愕に震えた嬌声が聞こえ、掴んだ足首の先がピンと張り詰めて動かなくなるけれど、もはやこちらの意志など関係なく、アナルが勝手にペニスを求めて、それをどんどんと呑み込んでいくようだ。

  「ぐ…ぉぉ…っ❤熱ぃ…っ❤」

  「あ…あ……っ??❤」

  額から大粒の汗を垂らし、思わず姿勢を崩して前屈みになっていった。その間もどんどんと、底なし沼に沈むようペニスが呑み込まれていって止まらない。

  狼夜が、その鋭い牙を剥き出しにして歯を食いしばり、唾液を口の端から垂らして肉体を倒す度、スバルの身体は、彼の大きな影に隠されて、最終的には四肢の先以外見えなくなって行った。

  狼夜の陰毛がスバルの金玉を覆い隠し、重たく揺れる性巣が蟻の門渡りに密着すると、とうとうあの長大なペニスが、全て中に収まってしまったのだと、スバル本人が理解するには十分だった。

  狼夜の快楽に脱力した大きく低い溜め息が、頭上から聞こえてくる。

  「はぁぁぁ……っ❤とろっとろだ…❤」

  「あ゙…❤あ゙ぅ…っ❤」

  「おら、言っただろう…?もう一度確認してみろ。…ズッポリこんなとこまで挿入っちまってるのが分かるだろうが?」

  「はうっ…❤あ゙…っ❤ぞんな…っ❤ほんろに…っ❤」

  もう一度手を取られて、スバルは自らの腹の上へと無理矢理それを持っていかれた。するとそこには、正真正銘内側から腹を盛り上げる、太い突起の感触があって、スバルは苦しげに声を上げながら目を見開いた。

  本当にこんなところまで挿入ってしまっているんだ。そう思ってしまうと同時に、狼夜に言われた、娼婦という言葉もまた、スバルの絶望に染まった思考を容赦なく過ぎっていく。

  「動くぞ。」

  「ひっ!?❤ん゙ぁぁ!?❤❤出りゅうぅっ!?❤❤」

  「お゙っ…!締まるっ!❤」

  言って、何の心構えも無いうちにペニスを勢いよく引き抜かれてしまうと、スバルはその感覚に足先をブルブルと震わせて叫んだ。

  大量の粘液が接合部からシーツへと飛び散り、いきなり亀頭までのほぼ全てを引き抜かれると、頭が真っ白になって視界がチカチカと明滅してしまう。

  身体が強ばると、アナルの締め付けも尚更強くなって、狼夜はその快楽にまた気の抜けた低い声を出した。そして、身体を倒して密着したまま、シーツとスバルのケツの間に両手を差し込み、下半身を抱えるようにすると、そのまま上から叩きつけるように、容赦なくピストンを開始する。

  「ひっ!?❤ん゙ぎぃ…っぁ゙ぁ゙ァっ!!❤❤ダメッダメッ!❤これら゙め゙ぇっ!❤❤ズンズンしら゙い゙でぇっ!?❤❤や゙め゙゙゙…っ―――お゙っ!?❤❤❤❤」

  「は…ふ…ぁ…ぐっ…❤すげっ…❤チンポ絡んでくる…っ❤このっ…!❤淫乱なメス穴がっ!❤❤おら!イケッ!イケッ!ッッ止まんねぇぞ!??もっとイケおらっ!!❤❤」

  「ッッッイ゙ッッッ…で゙る゙゙っ!?❤も゙゙イ゙ッで゙る゙がらっ!?❤❤止゙ま゙っ……れ゙っ!❤止゙ま゙っーー〜〜〜っっぎゅぃぃっ!?❤❤」

  目の前に覆い被さる、山のように盛り上がった屈強な毛深い胸を叩き、与えられるあまりの快楽に恐怖しながら叫んだ。臀部を狼夜の大きな手のひらによって強制的に下から持ち上げられ、快楽を逃がす為に尻の角度を動かすことも出来ず、視界の明滅がどんどん強くなっていく。

  程なくして、何かが弾けるような感覚の後、目の前が真っ白に染まると、足の指がギュッと丸まって、身体全体がガクガクと揺れ動いた。一瞬白目を剥き、喉の奥から反射的にひしゃげた音が出て、呼吸が全く止まってしまう。

  しかしそれも束の間の出来事だ。止まらないピストンによって、また新たな絶頂が追加されると、意識が一瞬で現実へと引き戻され、スバルは思わず息を飲んだ。――このままでは死ぬ。イキ殺される。……本能がそう告げて、恐怖に懇願を叫ぶけれど、またしても身体が大きく跳ね上がり、瞬間、意識が飛んで、ガクガクガク…と絶頂の余韻が四肢を震わせる。

  「ぐおっ…❤やべっ…っ❤チンポ溶けるっ❤」

  狼夜も、いつもはヒーローとして見栄えよく整えている言葉を思わず崩しながら、筋の浮き出す筋肉質な肉体を僅かに震わせていた。ヒーローという体育会系の組織に所属する間に、周囲の益荒男達から移ってしまった荒々しい言葉遣いが、今ではいつの間にか彼の素の言葉遣いになってしまっている。ほんの少しでも気を抜けば、すぐにでも射精してしまいそうな快楽に、片目を閉じ、歯を食いしばりながら耐えた。ペニスを抜き出す度、ネットリと吸い付いて離れない襞が、ウネウネと竿全体を揉みこんできて堪らない。そして、誘い込まれるまま、そのドッシリと重たい腰を突き出せば、ギュッとペニス全体を締め付けてきた腸壁が、絶頂に合わせて激しく痙攣するものだから、思わず息が漏れてしまう。

  このままでは、思う存分楽しむ前に射精してしまうかもしれない。そう考えた狼夜は、そのままグッと腰を奥まで押し付けると、そこで息を浅く吐きながら一旦動くのを止めて、代わりに尻で文字を描く様に、グリグリと結腸を亀頭全体で押し潰していく。

  「ふー…ふー…❤…どうだ?…チンポ気持ちいいか?ん?」

  「ぐぃぃっ!?❤❤おく…っつぶれりゅ…っ❤っぐりぐりだめぇっ!だめらのっ!…そこっ…押゙じづぶざな゙…ぃれぇっ!❤」

  「全く、口を開けば…っ…文句ばっかりだな…っ!そんな反抗的なら…っふ…お仕置きしねぇと…っ!駄目だろうが!……そら!奥開くぞ!…ぐっ!❤」

  「ひっ!?❤ん゙゙ひぃぃ!!❤❤ひらか…っひらが゙ら゙゙い゙れ゙ぇっ!!❤❤❤――――ぁ゙…っ!?❤あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ァ゙!!!!❤❤❤❤」

  何かを探るように、いやらしい腰付きで奥を練り潰す。右、下、左、上……何度も角度を変え、雄臭い臀部に掘りを作りながらグッと腰を突き出せば、グポッ…❤と何かが嵌ったかのような、そんな感覚がして、同時に二人の喉から、掠れた低い声が漏れ出してくる。

  瞬間、スバルの絶叫が部屋中に響き渡り、狼夜の黒くて汗臭い胸毛が強く掴まれた。狼夜は下から掬うように掴んでいたケツも腰と同時に動かし、固定したかと思うと、スバルが逃げられないよう、尚更奥まで怒張を押し込んでいく。

  男のポルチオとも言われるS字結腸。本来曲がりくねっていて、ペニスなど挿入出来ないその場所に、狼夜は無理やり亀頭を押し込んで、グポグポと張った雁首を引っ掛けるよう戯れに浅く出入りを繰り返していた。

  すると、スバルの小さなチンポから、ぢょろろろろ…❤と自らの腹に耐え切れず小便が漏れ出してしまったではないか。それをすかさず狼夜の粘液が包み込んで吸収し、美味しく頂いてしまう。突っ張っていた足も、ギュッと狼夜の腰に絡められており、それがただの反射的な行動だと分かっていても、スバルからまるで求められているような反応を返されてしまったと、浮ついた心の高揚を抑えられない。

  結腸の入口をほじくり回すように、腰をいやらしく動かす。同時に、自らの豊満な胸をスバルの顔面に押し付けて、汗に湿った雄の臭いと、呼吸を阻害してやれば、尚更彼の興奮と性感が高まるようだ。

  「ッッ!?❤❤〜〜〜〜っっ!!??❤❤❤」

  「ぐお…❤すげぇ締まるぞ…っ!❤…相変わらずっ…苦しいのが気持ちいいんだろ!?❤❤そら、もっと奥こねくり回してやるからな!❤」

  「ぅ゙〜〜〜!!❤む゙〜〜〜っっ!!❤❤」

  抱えた尻と腰を交互にグリグリと動かし、結腸に亀頭をグポグポと嵌め込む。雁が引っ掛かるように刺激されて、それが堪らなく気持ちいいと共に、背を軽く反らしたスバルが、尚更顔面を胸元に埋めて、全身をグッと強ばらせた。

  ピュッとスバルのペニスから潮が吹き出し、絶頂の余韻が痙攣と共に狼夜の逸物にも伝わってくる。そして、唐突に全身をガクン…ガクン…❤と派手に震わせ、足先をピンと伸ばしてクワガタの鋏のように持ち上げたスバルが、勢いよく自らの腹に吐精すると、しばらくそのまま硬直したのち、ガクリと気絶するように脱力してしまった。

  その間も、そろそろせり上がってくる射精に向けて腰を振り続ける狼夜。ゴリゴリと前立腺を削り、結腸に擦れる雁の気持ちよさに、金玉がグググ…と収縮する。大量に漏れ出すカウパーと腸液が、接合部に泡立ってジュポッジュポッ❤という激しい音を鳴らし、背筋から駆け上がってくる絶頂感に身体を強ばらせると、そのうち全身から絶え間なく溢れる汗を滲ませて、鋭い牙を剥き出しにしながら大きく叫んだ。

  「イクぞ!?中に射精すからな!!❤❤イクッ!イクッ!射精るっ!!❤❤がぁぁぁぁぁ!!!❤❤孕めぇぇぇっ!!❤❤」

  「〜〜〜〜〜ッッッ!?❤❤❤❤」

  顎をしゃくり上げて上向きに持ち上げ、マズルを開いて眉間へと皺を寄せながら咆哮した。

  バチュッ!!❤と一際強く腰を打ち付け、グッとペニスが中でしゃくり上げると同時に、ビュルルルルッ!❤と洪水のような勢いでザーメンが放たれていく。

  ベットに立てた屈強な足が、指先で強くシーツをつかんでいた。その足と太い胴体に挟まれる形で伸びたスバルの膝先も、プルプルと震えて時折縦に揺れている。

  いつしか、男らしい顔を快楽に惚けさせた狼夜のマズルから、ダラリと長い舌が垂れていて、強ばった全身が、力みすぎて小刻みに震えている。

  射精中も、尿道の中まで全て吐き出すように、何度も何度もバチュッ!❤バチュッ!❤と腰を打ち付ければ、その度に、ソフトボール大の巨大な金玉もまた、縦にブルンブルンと揺れ動き、存在感を主張するのだ。

  「フー…❤フー…❤」

  大量に出し切った余韻で、ぶるりと震えた狼夜が、荒い息を吐きながら上体を起こす。彼の胸板に押し潰され、呼吸すらままならなかったであろうスバルは、半開きになった瞼を痙攣させて、舌をダラリと垂らしながら、顔面を汗と体毛、唾液と鼻水でグチャグチャに汚し、グッタリとしてしまっている。

  半立ちにまで萎えた逸物をズルリと抜き出せば、その反動にスバルの全身が震えた。よく見れば彼の腹には扇状に噴出したザーメンの跡があり、ガニ股になった下半身をガクガクと痙攣させて、不規則に全身を揺らし続けている。

  余りにも重たくベットリとした狼夜の精子は、スバルの腸壁にこびり付いているようで、アナルから風船ガムのような泡を作り出してはすぐ割れているのが傍目から見えた。ぶびゅっ❤といやらしい音を立てながら、多少中身は漏れるものの、殆どが固形物のようにその場へと付着していて、その癖柔軟性もあるものだから、息んでも中からひり出す事すら出来ずにいる。

  狼夜がベットの上を移動して、自らの精子に塗れたペニスを、スバルの口元へと持っていく。

  「しゃぶれ。…掃除しろ。」

  言って、その先端を唇に付けてやれば、殆ど反射的に伸ばされた舌先が亀頭に這い始めて、彼は素直にそれを自らの唾液で綺麗にしていくのだ。

  狼夜が、スバルの頭を撫でながら、奉仕される自分の逸物を見下ろして、すぐにまた半立ちだったそれを硬く膨張させていく。

  そして、彼の頭を鷲掴むように両手で引き摺ると、ベットの縁まで持ってきて仰向けにし、その顔面へと跨るように立ち上がって、腰を低く、口の中へと突き出していった。

  「ごぼっ…っ❤ぼぇっ…っ❤❤」

  「ほら、しっかり喉開け。…さんざん慣らしてやっただろ。……どんどん挿入れてくからな。」

  開いた口の中に、無理やりペニスを挿入されて、薄目に涙を滲ませたスバルが、嗚咽を混じらせながらそれを飲み込んで行く。日頃からペニスだけでなく、指や粘液を突き入れられながら拡張を繰り返された喉奥は、例えそれが無理やりであっても、挿入されれば勝手に開いて、しっかり飲み込めるように調教されてしまっている。

  上から見れば、喉仏のある首の全面が不自然に盛り上がり、程なくして狼夜の全てが飲み込まれて、そのデカい金玉がスバルの顔面を覆う。丁度獣と雄の臭いが強い部位の香りを嗅がされながら、顔を真っ赤にしたスバルは、ゴクリゴクリと唾を飲み込む蠕動の動きで狼夜のペニスへと奉仕し、相変わらず足を無様にガニ股へと開きながら、全身をビクビクと痙攣させて、さっそくドライオーガズムへと達しているようだった。

  狼夜が何度か、慣らすように腰を前後へとゆっくり動かす。

  「いいぞ…っ…あ゙〜…❤…喉が…っいやらしく…吸い付いてくるな。……ご褒美に乳首も弄ってやるからな。…嬉しいだろ❤」

  「〜〜〜っ!?❤ぶふっ❤ぇ゙っ…❤」

  同時に、ツンと硬く勃起し、薄い胸の上で薄桃色の主張をする乳首を、上から人差し指で弾くように引っ掻いた。瞬間、ビクンと身体を大きく跳ねさせて、尚更強くペニスを飲み込むような動きをするスバル。

  カリカリカリカリ…❤と弄ぶように高速で乳首を掻きむしってやると、ガニ股だった足がガクガクと震えながら徐々に真っ直ぐ突っ張り始め、ギュッと手のひらがシーツを強く握り締めたと思ったら、身体を反らし、腰を突き出すようにしてビュルリと射精する。

  喉奥を穿つペニスに細かな振動が伝わってくることから、どうやら何か叫び声でも上げているらしい。

  構わず、小刻みに腰を振って、喉奥を刺激すると、精子の次には潮を吹き出すようになって、それが狼夜の顔面まで吹き上げる程であった。

  そんな様子のスバルを見下ろし、こうして手酷く犯す優越感に興奮が抑えられず、自分では想定してなかったタイミングで、絶頂の予感が狼夜を襲い始めてしまう。

  「あ゙〜っ…やべっ…❤射精る射精るっ❤くそっ射精るぞ!❤あ゙〜〜!❤イク!!❤❤全部飲めよ!❤❤こぼすなっ!!❤ぐおおおおっ!!❤❤」

  「!?…がぼっ❤…ぼえっ❤〜〜〜ッッッ❤❤」

  不本意に思いつつも、絶頂に高まる快感が下半身を支配し始めると、もうそんな事などどうでも良くなって、ただ射精したい気持ちに意識が集中してしまっていた。不本意であると言った通り、それは強すぎる興奮により、自分でも予想だにしない内に訪れた射精だった為、いつもの余裕など全くなく、吹き出すザーメンの量も膨大で、狼夜は雄の悦びをこれでもかと全身で味わうのだ。

  まるで遠吠えするかのようにマズルを天井へと向けて、唇を突き出しながら、ブルブルと震える狼夜。

  薄目で遠くを見つめ、目尻を赤くし、鼻穴をヒクヒクと開閉させながら、喉から低い声を出している。

  スバルもスバルで、最初ジタバタと動かしていた足を、いつしか真っ直ぐに伸ばしてそのまま脱力した。腰だけがカクカクと上下に痙攣していて、断続的に潮を吹き出し、深い深いドライオーガズムに視界を真っ白に染めてしまっている。

  狼夜が慎重にゆっくりと腰を引けば、自然と吸い付く唇がチンポの幹に伝ってタコのように突き出し、ズルルルルゥ…❤と、尿道に残るザーメンまで貪欲に飲み込むようだった。その刺激の強さに狼夜もまた少しばかり顔を顰め、意を決して勢いよく最後にチンポを引き抜くと、ブルリと一度全身を震わせながら、満足気に大きく息を吐き出す。

  ゴプリと、口の中に白濁の塊を保有したスバルが、鼻穴から泡を膨らませ、薄らと開いた瞳をぼんやりとさせながら、舌で精子を掻き回している。

  そうして呆然とするスバルを抱き寄せた狼夜は、未だ口を開いて中を見せびらかす彼の様子を見ると、満足そうに頷いて、髪を撫でながら「飲め」と呟くのだった。

  「ん…❤…ごくっ…❤…あ…❤」

  「よしよし、偉いぞかっくん。……俺のチンポ汁美味かっただろ?」

  飲み込み、それを示すようにまた口を開けたスバルの舌を摘みながら、狼夜がニッコリとヒーローらしい笑みで微笑む。ゲフ…と精液の青臭い臭いがする息を吐き、グッタリとするスバルは、まるで意思のない人形のようにも見えていた。頬を湿らす涙の跡を舌で拭い、啄むようなキスを落とす狼夜は、スバルの首筋に強く吸い付くと、そこへと赤いキスマークを付けて、変わらない独占欲を誰にともなく主張するのだ。

  「さぁ、まだまだ始まったばかりだぞ。」

  「ぅぁ…❤ぁぁ…❤」

  狼夜が耳元に口を近付けると、ゾクリとするような低い声で呟いたのだった。

  夜は尚も更けていく……。

  「ぎ…ぃ゙ぃ゙っ❤❤ぎゅぃ゙…っ❤ぐっ…❤お゙っ…お゙っ…お゙っ…お゙っ…❤❤」

  「苦しいか?…苦しいよな?…でもそれが気持ちいいんだろ?……おら、もっと絞めてやるからな!…イケ!!首絞められてイケおら!❤」

  「ごぉ゙ぉ゙っ❤お゙っぉ゙〜〜〜っ❤❤〜〜ッッッ❤❤」

  身体全体を軽々と持ち上げられ、背後から首をヘッドロックされながら、ズチュズチュ❤と粘つく音を立ててケツを掘られる。

  スバルは、太い腕に挟まれた頭を上向きにし、頬を圧迫されて唇を突き出しながら、目にハートを浮かべて絶頂していた。

  壁に向かって小便なのか潮なのか分からない液体を吹き出し、乳首の先端からはサラサラの白い乳液を垂らしている。

  腰だけを艶めかしく動かし、突き上げる度に、スバルの腹が内側から盛り上がって、前立腺がゴリゴリと削り取られる。よくよく狼夜のペニスを見れば、あきらかに普通の逸物とは違う突起が裏筋から金玉に掛けて生えているのが確認出来ていて、それは彼の粘液で作られた凸凹であり、まるで背骨のように連なったデコボコが、腸液を弾き飛ばしながらケツ穴を出入りしているようであった。こんなモノで掘られたら正気ではいられなくなるのではないだろうか。しかし、狼夜は全くそのような配慮などせずに、容赦なく下からアナルを突き上げていた。

  「イクぞ?イクからな!?❤奥で射精してやる!!❤射精すぞ!!❤❤オラッ!オラッ!オラァッ!!❤孕めスバルッッ…!!❤孕めぇぇっっ!!❤❤」

  「ぎゅい゙〜゙〜゙〜゙ッ゙ッ゙!?!?❤❤ィぎゅ〜〜〜っっ❤❤」

  ジュボボボボッ❤という派手な音を立てながら、凸凹のあるペニスを引き抜いた後、すぐさま最奥まで突き入れて射精する。自然と首を絞める腕にも力が入って、毛皮越しにも筋が浮き出す程の強さで絞められながら、スバルも勢いよくザーメンを噴き出しながら絶頂した。

  酸欠になった頭が真っ白に染まって、浮いた足がガクガクと不規則にあられもない痙攣をする。重力に従って身体が落ちようとすると首が尚更絞まり、更に腹の奥へとペニスが侵入してきて、射精したのち、ぢょろろろろ…❤とまた小便が漏れ出した。

  結腸から溢れた糊のように重たい精子が、ぼと…ぼと…❤と床に落ち、狼夜のふっくらとしたふぐりや、筋肉が張り詰めたふとましい足にも伝って垂れている。

  尻尾がパタパタと忙しなく左右に揺れていた。鋭い牙の生えるマズルから、長い舌が気持ちよさそうに垂れている。

  もちろん、たったそれだけの射精で満足などできるわけも無い狼夜は、今度、項垂れるスバルの膝の下から腕を掬うように差し込むと、そのまま頭のてっぺんを両手で掴んで、まるでオナホールを扱うように、また腰を振り始めるのだ。

  結局その日も、カーテンの隙間から朝日が差し込む時間まで、延々と狼夜に犯される夜を過ごした。

  [newpage]

  ヒーロー業務に追われて帰ってきた日の狼夜は、まるで癒しを求めるようにスバルの身体を可愛がる。

  No.1ヒーローともなると、ヴィラン退治の他に、拐われたヒーローの救出、雑誌の取材、CM撮影、モデル業務など、世間からは引く手数多だった。

  普段、そういった仕事を全てキャンセルしている狼夜であるが、時折顔を出さなければヒーローや平和の象徴としての役目を全う出来ないと、半ば無理矢理参加させられる日もある。

  特にそういう時は、それまで溜まっていた仕事を一気に受けないといけないので、みっちりとスケジュールの詰まった一日になってしまうのが鬱陶しい。そして、慣れない仕事で疲れながら家に帰ってきた狼夜は、外向きの顔をどこかへポイッと放り投げてしまって、スバルへと心の底から依存した態度を取り続けるのだ。

  「かっくん…一緒に風呂に入ろう。いいよな?」

  「……ぁ…ぁぁ…」

  言われて、怯えながら返すスバルの手を無理やり引き、浴室へと連れ込んでしまう狼夜。

  裸になれば、もちろん待っているのはどこまでも淫靡に満ちた行為で……。

  「ん…っ❤んむぅ…❤んちゅ…っ❤ふっ❤むぅ❤」

  「ん…ちゅ…ぢゅる…ん…❤」

  その日は、顔を向き合わせ、ひたすらキスをされる日になった。壁に追い詰められたスバルは、その唇をマズルで覆われて、狼夜の舌と唾液で口をいっぱいにされる。

  絶えず送り込まれる唾液には、能力によって成分を操作された粘液が含まれており、それには軽い幻覚剤や覚醒剤、もちろん媚薬も混じっていて、高い依存性まで保有している。もはや、スバルは狼夜からもたらされるこの粘液を摂取しなければ、しばらくした後、禁断症状に悩まされる事になるだろう。……彼に逃げ場など存在している訳もなかった。

  数十分にも及ぶ、ねちっこいキスは終わりを見せることがなく、角度を変えては、何度も何度も唾液を交わす。それ以外の部位には触られること無く、ただひたすらキスされるだけで、快感の伴う行為など一切していないというのに……。

  「んんっ…❤んっ❤んっ❤んっ❤ろう…んちゅ…やぁっ!❤」

  舌を乱暴に絡め取られ、ゴクゴクと無理矢理唾液を喉に流し込まれる。かと思えば、歯茎をなぞるように優しく擽られて、今度はこちらの唾液を余すこと無く吸引されてしまう。

  そのうち、頭がぼんやりとして、背筋から蛇の這うような緩い快感が、頭の先へと伝っていくようだった。

  それはいつしか、身体を震わせ、下半身に熱を集めてしまって、ヤバいと思った時には、既に手遅れに陥っている。

  弾力のある筋肉に覆われた腕から手を離し、今度は相手を押しのけるようにしてその毛深い胸元に両手を置いた。けれど、当然そのような行為など大した抵抗にはならず、そのままキスを続けられると、高まった快感が、行き場を無くすかのように、突然眉間の奥で弾けてしまって…。

  「んっ…!?❤ん゙〜〜っ!!❤❤んっ!❤ん゙ん…❤んふぅっ……ぅ゙…❤んはぁ…❤」

  「ん……ぢゅるる…❤…んは…っ❤………へへっ…今、イッただろう?…キスだけでイケるなんて、いやらしくなったもんだな。ん?」

  「はへ…❤は…❤は…❤…ちが…ぅ…❤ィ…ッて…なんか…❤」

  「そうか?……ならチンポから垂れてるこの白いのはなんなんだ?ん?……俺とのキスが気持ちよかったんだろう?…素直じゃないな、かっくんは。」

  「ひぁぁっ!?❤こ、これ…ぁっ…❤ち、ちがうぅ…❤」

  狼夜の指先が、弄ぶかのようにスバルのペニスの先端を弾いて、そこからトロリと漏れ出す精子を絡め取り、スリスリと亀頭に擦り付ける。

  小さなチンポをヒクヒクと縦にしゃくり上げ、震える手で牽制するように狼夜の手を掴もうとするけれど、それは空中で止まって役目を果たそうとしなかった。

  まるで触られるのを心待ちにしていたかのようにも見えるその態度に、狼夜は意地悪く苦笑する。

  「何が違うんだ?…こんなにチンポ硬くして、俺に触られて気持ちよくなりたかったんだろうが。……だが、嘘をつく奴にはお仕置きしないとな。」

  「はひ…?❤ひぁぁっ❤やぁぁっ!❤」

  言うと、蛇のように手首から伸びてきた黒い粘液が、スバルの勃起したペニスを根元へと押し潰すようにして拘束し始めた。尿道に粘液を詰め込み、金玉へと埋もれるように貼り付く。これによって射精は完全に封じられ、たった一瞬、尿道に粘液を挿入される快楽が、彼にとって狼夜の許可なしに感じる事が出来た最後の快感になった。

  当然、金玉には今も毎日増精剤、精力剤などを投与されている為、そんな事をされたら射精出来ずに困るのはスバルだ。

  その上、狼夜が気付いていないと思って、一人でいる日中の内、ずっとオナニーで気を紛らわせているスバルにとっては、狼夜以外の快楽源である自慰行為は無くてはならない行為である。酒を飲めず、媚薬で常に発情状態を維持され監禁された環境では、その心の平穏を保つ為に何か依存できる行為が必要だったのだ。

  スバルは絶望に顔を染めて、指で引っ掻くように拘束具を取ろうと躍起になる。しかし、そんな事で外れる訳もなく、完全に快感から遮断されたペニスが、虚しくそこにあるだけだった。

  「はず…外して…っ!…外せよぉ…!…うぅっ!」

  「…フフ…君が悪いんだぞ。素直に気持ちいいと言わないから。……大丈夫だ。代わりに他の性感帯でたっぷり気持ちよくしてやるからな。……ほら、まずは乳首でいっぱいイこうな?」

  「ひぎゃぁ…っ!?❤はっ❤ひぃぃっ!?❤乳首…っ❤んむぅっ❤❤」

  言いながら、意地悪く笑った狼夜が、両手の人差し指を折り曲げて、下から弾くようにスバルの乳首に触れた。瞬間、ビクンと震えたスバルが胸を突き出すように反らすと、もう一度キスをして言葉を封じてしまう。

  力無く狼夜の手首を掴んで離そうとした。けれど、相変わらずそのような抵抗など全く無意味で、ただ指の回らない彼の手首の太さを再確認するだけだった。

  親指が伸び、人差し指の関節と同時に挟まれるようにして、クリクリと転がされると、その度にビクビクと全身を震わせ、スバルは快感に耐えることしか出来ない。

  狼夜が、手早くスバルの肉体を翻すと、背後から抱き締めるようにして座り直した。口を離されたスバルから、懇願の声と涙が溢れ出る。

  「ぷあっ❤…やぁぁ!!❤コリコリ…っ❤コリコリするなぁ…!…んあっ❤スリスリするのもダメぇっ❤…乳首おかしくなっちゃうってばぁ!❤」

  「……我儘だなぁ。かっくんは。……ならほら、カリカリするのはどうだ?……こうして爪の先で…カリカリ〜…」

  「ひぃぃ❤❤それ…っ❤とれちゃうっ!ちくびとれちゃうぅ!!❤❤んお゛ぉぉっ❤」

  「取れたらむしろ助かるじゃないか?ん?…もう乳首で気持ちよくならなくてよくなるんだから。……おら、ちゃんと気持ちいいって言わないと、いつまでも続けるぞ。」

  「んお゙ぉ゙ォ!❤ごめんら…っ!?❤ごめんらさいっ!?❤❤きもぢ…ぎもぢぃでずっ❤❤ちくびイきゅッ❤❤❤イッぢゃうっ❤❤」

  「イケ…!乳首だけでイッてみろ!!イケおら!」

  「くひぃぃィっ!?❤❤お゙っ❤お゙ほぉっ❤イくイくイくッ!❤❤ちくびイッッくぅぅ!!??❤❤」

  伸ばした足を内股にして、狼夜の腕をギュッと掴みながら全身を震わせる。心の中では離れたいと思っているにも関わらず、むしろ狼夜の身体に背中を押し付けるように動いてしまって、尚更乳首を触りやすいように胸を突き出してしまうものだから仕方がない。

  ぷひゅ…❤と乳頭から白くサラサラとした液体が飛び出てきた。周囲の肉を掴んで揉みこみ、優しく押し潰してやる度に、それはぴゅるぴゅる❤と控えめに吹き出して、スバルの雪のような肌へと一筋の流れを作り出す。

  「少し出が悪いな…?…まだ身体に馴染んでないか?」

  「あぅぅっ❤も、もうイッてる…!❤イッてるから離せよぉ…❤」

  スバルの言葉を無視して、ボソリと呟いた狼夜の指の先端から黒い粘液が滲み出すと、それはまるで生き物のように形を変えて、相手の胸の突起へと近づいていった。その見た目はハリガネムシのような細い触手であり、あっという間に乳首の先端に辿り着くと、そこに頭を擦り付けるようにしながら、何やらグリグリと回転している。

  その刺激に、あられもない声を出す暇もないまま、いつしか触手がズプリとそこに先端を埋めて侵入してしまうと……。

  「っ!?❤…くっ…ひぃぃぃっ!!??❤❤」

  「おっと…。今もっとミルクが出やすくなるように、乳首の中ほじほじしてるからな。あまり動いたら駄目だぞ。」

  「あ゙ぁ゙っ!?❤あ゙〜〜!!❤❤ほじほじダメぇぇっ!?❤❤それおかしくなっちゃうのぉっ!!❤❤」

  「ん?…乳首ほじくられるの好きか?…じゃあこのまま色々いじくり回してやろうか。…ほら、ずぽずぽ抜き差しされるの気持ちいいか?❤」

  「んほぉぉぉっ!?❤ぞっ…ぞれっ❤イッッくぅぅ!!❤❤」

  黒い粘液の触手が、乳頭から侵入して円を描くように中をぐちゅぐちゅとほじくる。かと思えば、今度は何度も出ては入り、出ては入りを繰り返して、隙間からミルクを噴き出しながら乳首の浅い所を何度も拡張するように擦り付けられた。

  当然、外と内から突起を刺激させる快楽に、すぐさま観念したスバルは、背筋をまた月のように反らし、胸を突き出すようにしながら絶頂を宣言して、ガクガクと全身を震わせてしまう。

  そうやってイッてる間にも、粘液はしつこく乳首にこびり付いて、中で毛細血管のように広がり、ミルクを作り出す器官にあらゆる薬を染み込ませていくのだ。

  そして、勢いよく触手が引き抜かれると、今度こそ大量のミルクが噴水のように吹き出して、狼夜はスバルを抱き上げると、その胸元に口を近付けてそれらを吸い上げる。

  「おっと、勿体ない。…ぢゅる…❤ん…ん…❤」

  「くぁぁァっ!?❤❤ま゙だ…イッ…ぐぅぅ〜!!❤❤」

  反った背中に腕を回し、突き出された胸の先端に噛み付いて、花の蜜を吸うようにそれを飲み干す。ほんのりと甘くて、人肌に温かいそのミルクは、薬の影響もあってか止まることを知らず、絞れば絞るだけ溢れ出て美味かった。

  片方の出が悪くなると、もう片方に口を付けてまた搾り取る。スバルの両手が狼夜の肩に置かれて、引き離すような動きを見せても我関せずだ。

  瞼を細め、顔を逸らしながら、歯を食いしばって呻き続けるスバル。胸の先端からピリピリとした感覚が下半身と脳に迸り、激しいわけではなくとも、ジンジンと毒のように滲む快楽が思考を焼いてしまう。

  特にイッた直後、それでもなお責められ続けると、今にも逃げ出したくなる気持ちでいっぱいになるが、上機嫌で溢れるミルクを啜っている狼夜に、そのような事はお構い無しだ。

  「もぅ吸わらいでぇ…っ❤❤ひぎぅ…っ❤」

  惚けて回らない舌先を懸命に動かした。肩を掴んでいた腕は力無く狼夜の後頭部を掴み、まるで赤ん坊のような手つきで彼の尖った耳の先端をくしゃりとささやかに握りしめている。

  ベロリとスバルの乳首を、ザラついた舌の腹で舐め上げながら、彼の表情を見上げれば、快楽に染まったその顔に高揚感が溢れて、狼夜の加虐心はどんどんと加速していってしまう。

  そして、しばらく乳首を舐め回され、ぐったりとするスバルの腰を引き寄せながら、やっとの事口を離して解放してやる。

  「乳首気持ちよかったか?」

  「…はふ…❤は…❤ひ…❤…っ❤」

  もちろん、頭を横倒しにして、ぼんやりと遠くを見つめるスバルには、狼夜の言葉に返すだけの気力もなく、時折全身を痙攣させて、掠れた声を喉からひり出すだけで精一杯であった。

  そんな姿も愛おしくて……。自分の手で気持ちよくなってくれている事が嬉しくて……。狼夜は満足気に微笑みながら、スバルの首筋を舐め、持ち上げた手首には啄むようなキスをする。

  「……ほら、かっくん。……こっち見て。さぁ。」

  「ぁ…❤…ぅぁ…??❤」

  そして、彼の顎を掴み、ほんの少しばかりはたくようにしながら、未だ朦朧とする視線を、無理矢理こちらへと向けるよう仕向けた。それから、薄らと開いた瞼の奥で、スバルの黒いオニキスのような瞳がこちらを見つめると、ただそれだけで狼夜は、まるで一目惚れを経験した15歳の未熟な一人の青年のように、淡く儚い恋心を宿した無邪気な表情で、彼の眼を見つめ返すのだ。

  ――そこにただ純粋な愛を込めながら……。

  「さぁ、今度は“こっち“で気持ちよくなろうか。」

  「…ひっ❤」

  狼夜がそう言いながらニッと牙を見せて爽やかに笑い、スバルの腹を優しく撫でながら、もはや辛抱堪らないと我慢汁をダラダラ流す怒張をあからさまにしゃくり上げてそう言った。何度も何度も縦に揺れるペニスの先端から、生臭い飛沫が周囲へと飛び散る。

  スバルは思わずボロボロと大粒の涙を流し始めて、グズグズと咳き込みながら微かに首を横に振る。

  それが受け入れられる事は無いと分かっていても、どうにか希望に縋り付きたくなるのだろう。

  ヒーローである狼夜がそれを断るというのは、その役職から考えれば明らかに矛盾した行為であるけれど、彼もまた愛する者の前ではただの獰猛な獣。

  涙を拭ってやりつつも、これから行う予定の行為を中断するつもりは毛ほどもないようで、少し困ったように太い眉を八の字にするばかりだった。

  「ぃ…ぃま…いれられたら…っ❤うぅ…ぐす…❤」

  「……大丈夫さ。いつもそう言って平気だっただろ?」

  「……で、でも…こんなのいれられたら変になる…っ❤」

  「そうなったら俺が最後までかっくんの面倒見るよ。」

  「う…うぅ…❤やだって言ってるのにぃ…❤」

  「へへへ、こう見えても結構我慢してるほうなんだがなぁ…」

  実際、ヒーローの性経験について尋ねると、朝まで何人もの女を取っかえ引っ変えして輪姦しただの、一人の女が泣いて気絶して絶叫しても行為を続けただの、そんなとんでもない話を、まるで自らの自慢であるかのように堂々と訓練後の更衣室で吹聴してまわっている姿を見たこともあるくらいだ。勿論狼夜の一連のSEXも大概ではあるが、理性のままに抱き潰して壊していないだけ、自分は良心的な方だと本気でそう思っている節がある。

  今だって結局、スバルが泣いて嫌がっているというのに、そうは言ってもどうせ一度行為に及んでしまえば、与えられる快楽に気持ちよくなって最後まで受け入れてくれるではないかと、スバルのその様子をただの興奮剤として認識し、実際には嫌がっている振りではないかと決めつけている有様だ。恋は人を盲目にするというが、狼夜のそれはとことん筋金入りで、まさしく天然でもあった。

  「今日は優しくするから。な?」

  「や、やだ…❤やめ…っ!?❤」

  言い訳のようにそう呟いて、狼夜はスバルの身体を持ち上げると、狙いを定めてそのまま下ろしていく。いつも通り抵抗する暇さえなかった。気付いたら既にアナルの入口に亀頭の先端が宛てがわれていて、あとほんの少し体重が掛かるだけでも挿入されてしまうという所である。

  そのまま腰を突き出されれば、もはや時すでに遅し。

  「あ゙っ!?❤あ゙〜〜〜〜〜っ❤❤❤」

  「お゙っ❤お゙ぉ゙…っ❤…へへへ…❤」

  ズブズブと狼夜の怒張がゆっくり奥まで侵入してくると、瞬間、ビクンと震えて背筋を伸ばしながら天井を向いたスバルが、驚いたように間延びした声を出した。

  狼夜も狼夜で、相変わらずまるで自我を持つ生き物のようにこちらへと吸い付き、締め付け、蠢くスバルの胎内に酔いしれると、唇を突き出しながら雄臭い顔を晒して、その心地良さに低い声を出している。

  上から肩を押さえ付けて、そのまま最後まで容赦なく挿入した。そして、抱き締めたスバルの首筋にマズルを埋めると、彼の汗が揮発したツンとする臭いを嗅ぎ、牙でそこをアグアグと甘噛みしながら、尚更勃起を加速させる。

  所謂対面座位という態勢だ。胡座を掻いた狼夜の股の上に、スバルを抱き締め、みっちりと中を確かな愛の証明で埋めつくしていく。

  「嗚呼…❤好きだ…❤好きだかっくん…❤愛してる…❤」

  「はぐ…っ❤ぁ゙…っ❤…お腹…っ❤やぶれりゅ…❤…息…っ…止ま❤」

  狂信と狂乱と狂愛で心を埋めつくし、狼夜は甘く囁きながらひたすらにスバルの肉体を抱き締めた。

  もう、仕事も人生も食事すらどうだっていい。ただスバルとこうして抱き合うことが出来るだけで、全ての欲求は満たされていると感じる。

  特に、煩わしい日常の、煩雑な作業に追われる日々を過ごすと、決まって狼夜はこうして素直な気持ちを吐露するようになった。ヒーローとして活動している最中も、いつだってスバルの居る部屋に帰りたくて、ヴィランなんかよりもよっぽど厄介な存在に、狼夜は身も心も捧げてしまっているのだ。

  スバルは、顔を真っ赤に染めて、歯をかみ締めながら、反射的に狼夜の毛深く屈強な肉体へと抱きつくようにしていた。何か苦痛と快楽を和らげるための拠り所が欲しくて、自然と目の前にある狼夜の温もりに、その役割を求めてしまうのである。それが苦痛を与えている元凶である事を除けば、図らずも、おそらくこの世で最も逞しく、頼りがいのある存在に縋り付いているという事実が皮肉にも見えるだろう。

  圧倒的な体格差。まるで大人と子供のようにも見えるその大きさの違いに、二人が同じ年齢の幼馴染だとは、他の誰にも理解が及ばぬ事実であった。

  「……動くぞ?」

  「はぐぁ…っ❤…ゆ、ゆ゙っぐり゙…❤ゆ゙っぐり゙してぇ…っ❤」

  「わかったわかった。」

  スバルの鼻が詰まったような悲痛な声に、狼夜は思わず苦笑して、その背中と頭を優しく撫でるようにしてから腰を振り始める。言われた通りまずはゆっくりと行為に及ぶ算段であったにも関わらず、やはりどこまでも男というのは快楽に従順で、一度始めてしまったらそんな理性など何処吹く風。次第に動きは速くなり、いつしかそれはリズムの良い等速になった。

  「あっ❤あっ❤あっ❤お゙っ❤」

  「ふっ❤ふっ❤ふっ❤ふっ❤」

  いつもよりストローク自体は派手では無い。狼夜の判断で好き勝手腰を突き出せる正常位とは違い、対面座位ではどちらかというとスバルの肉体を動かさねばならない為、自然と浅く速く、ズンズンと奥を小刻みに突くような形になる。

  普段は前立腺を思うがまま、狼夜の裁量ひとつで激しくも緩くも責められるのに対し、今回のように奥を重点的に一定の速さで突かれるのも、それはそれで得も言えぬ快楽が背筋を伝い、スバルを快楽の輪廻へと叩き落としていくようだ。

  最初はそこまで大きくなかったハズの快楽が、まるで雪のように振り積もって蓄積されている感覚。いつもなら、ただ雷のように全身へと駆け巡る絶頂感に身を任せて、気が狂いそうになるばかりだが、今回のこれも、これはこれで、また違った感覚に、頭がおかしくなりそうだ。

  スバルは、狼夜の首に震える腕を回しながら、懸命にその感覚を言葉にしようとするけれど、パニックを起こしてろくにしっかりとした説明が出来ない。

  「えっ…❤あっ…❤やっ…❤やだ!❤…やだやだ!❤」

  「どうした…っ!…まだまだ余裕だろ?」

  「ち、ちがっ❤あ゙っ❤…やっ❤…な、なんかっ❤なんかゾクゾクっ❤ゾクゾクするっ!❤…こ、これ止めてっ!❤これやだぁ!❤」

  「残念だが…っ…俺は…っ…まだまだ…っ…ヤリ足りないんでね…!❤……続けるぞ…!」

  「はぅぁ…っ❤ッあ゙〜〜っ!❤きちゃうっ!❤なんかくるぅ!❤❤」

  いつしか、ギュッと狼夜の身体に抱き着いて、スバルは困惑と恐怖に言葉を叫んだ。いつもはとっくに頭の中で快感が弾けて、その余りの気持ちよさに泣き叫んでいるハズの場面だというのに、何故かその絶頂は訪れる事がなく、ずっと奥の方でタイミングを見計らっているように感じる。

  それが、狼夜のピストンと共にどんどんと、まるでカウントダウンのように歩を進めてきて、その体験した事がない感覚に危機感ばかりが募っていった。

  視界がグルグルと虹色に光って回る。貧血を起こす直前の、意識が遠くなるような感覚に、目の前が砂嵐に襲われたように霞んでいった。

  ―来る

  ――来る

  ―――来るっ!!

  そう思った瞬間には、視界がほんの一瞬暗転して…。

  「――――ぁ゙?❤❤」

  「うお゙っ!?…なんだ…っ❤…中うねって…っ!❤」

  ぐるりと瞳孔が瞼の裏に隠れて、腕を折り畳みながら、背中がグッと反った。絶頂している最中にも、どんどんと澱のように溜まっていく快楽が思考の先に見えていて、何故か無意識にそちらへと全ての感覚が集中していくように感じる。

  狼夜が腰を打ち付けると、その澱にまた新たな沈殿物が積み重なり、それが一定の量溜まると、新たに発芽した快楽の芽が花開いて、止まらない、止められない、絶頂から降りて来れない。

  こんな深い気持ちよさは、初めての経験だった。

  「――――ぁ゙ィぐっ❤―――――――――イっ❤――――――――ィ…―――――――――❤❤❤❤」

  「う…おぉ…っ❤やべ…っ痙攣っ!❤」

  全身が異常な程ガクガクと痙攣して、舌を突き出しながら顎をしゃくり上げていた。腕は不規則に震え上がり、まるで酷い癲癇のようにあられもない動きで暴れ回っている。

  息は完全に止まり、時折声が漏れる瞬間だけ呼吸する事が出来た。それでもなお、スバルの腰を掴んで上下に動かす狼夜は、あまりの快楽に牙を食いしばり、マズルに沢山の皺を寄せて、瞳をギュッと閉じている。

  「……射精…る…っ!!?❤❤❤」

  「―――!?❤❤❤」

  しかし、当然そのように我慢した所で、絶頂の快感に抗う事など出来ず……。狼夜もいつもより余裕のない状態で射精した。言葉少なめに、ただ、反射的に呟いた言葉で、ブルリと全身を一度大きく震わせながら、尻尾と耳をピンと伸ばす。

  そして、それは強制的に搾り取られるような射精となった。大きく膨らんだふぐりから、大量のザーメンが引っ張り出されるかのように、ビュルビュルと一本の縄となって吐き出されていく。

  根元から先っぽまで、生クリームを搾り取るような腸壁の動きを感じた。下手したらちんぽがもぎ取られるかもしれない。そんな馬鹿な事さえ考えてしまうほど強烈な締め付けだ。狼夜は思わず、原初の時代に遡って、獣のような酷い唸り声を上げながら、キツくスバルの腰を掴んでいる。

  「がるるるぁ!!❤❤ま゙だ射精るっ!!❤❤」

  「―――ぁ゙❤❤❤」

  その射精は、数分にも及ぶ非常に長いものとなった。どれだけ止めようとしても止まるものではなく、スバルの腹がぽっこりと膨れ上がってしまうくらいの、強烈な射精。

  やっとの事それが終わる頃には、狼夜もまた荒く息を吐き、態勢を維持する事も出来ず、思わず壁に背を預けてしまう始末。

  天井を向きながら、大きく息を吐いて脱力した。力無く狼夜の胸元に倒れ込んだスバルも、腕をダランと垂らし、完全に身を預ける形で時折大きく痙攣している。

  これまでにも感じたことの無い快感だった。ヒーローという長時間の戦闘にも耐えうる強靭なスタミナを持った男でさえこの有様なのだ。…気付いて、ガバリと身体を起こし、スバルの肩を掴んで顔を見れば、彼は当たり前のように意識を失ってしまっているようであった。

  結局、優しくすることなんて出来ぬまま、その日はそうやって終わりを迎えたのだ。

  そうして日々を過ごしている間、スバルは完璧に狼夜の性奴隷のような扱いになっていき、常に全裸で居ることも当たり前になってきていた。

  狼夜が家に帰ると、まずは一日の仕事で蒸れに蒸れた股間を、口で掃除する所から始まる。

  「お゙っ❤お゙っ❤お゙っ❤……い、いいぞ❤…そ、そこっ❤うおっ❤」

  「んっ❤ぢゅっ❤はむっ❤んっ❤ぢゅるる❤んっ❤」

  「おう…っ❤で…射精るっ❤…射精すぞ!❤…飲んでくれスバル!❤❤」

  「ん!?❤ん〜〜〜〜っ❤❤ぢゅるるるるるる❤ん…❤ごく…ごく…ごく…ごく…❤」

  玄関先の廊下の壁に野太い腕を突き、下半身に座り込んで自らの逸物を美味そうにしゃぶりながら、時折上目遣いで見上げてくるスバルをおかずに、狼夜は溜まった性欲を発散する。

  金玉をやわやわと優しく按摩し、緩急のついた動きで竿全体を舐め、啜るスバルは、いつしか狼夜の弱い部分を的確に刺激し、五分も掛からずに与えられる餌を捕食するまでとなった、立派な尺犬である。

  狼夜ともあろう益荒男が、スバルの口淫を前にすると、その鍛え上げられた膝をガクガクと揺らし、直立することさえ困難な様子で、その上、どこまでも初心な青年のような瞳で、薄く瞼を開きながら、頬を赤くスバルを見下ろしている。

  射精する瞬間、男らしく顔を歪めて、唇をすぼめながら遠い目をした。射精中も、絶え間なく卑猥な音を立てて、いつまでもチンポをしゃぶられ続けると、いつの間にか観念しているのは、最近ではもっぱら狼夜の方となった。

  それでも、そのまま二度目、三度目と、その場でたっぷり搾り取られてしまうことも珍しくは無い。

  「うぁぁぁ❤❤…また射精るっ❤❤お゙っ!❤お゙うっ!❤お゙〜〜❤❤」

  間延びした息を吐き、膝を震わせながらまたしてもたっぷりと射精する。

  その日も結局、スバルの気が済むまで、狼夜は三回射精させられた。

  それから、普段行うSEXにおいても、少しばかり変化があった。

  バックで激しく後ろからスバルを責め立てる狼夜が、彼の耳元で低く、何度も何度も甘く痺れるような言葉を呟いている。

  「はっ…❤はっ…❤はっ…❤スバル…好きだ。❤…愛してる…❤愛してるんだ…!❤」

  「ふぁぁっ❤❤あ゙っ❤あんっ❤あっ❤あっ❤」

  言いながら、力任せにそのまま押し倒し、うつ伏せになったスバルの背後から、のしかかるように腰を振り続けた。

  「君の…っ為なら…っ❤…俺は…命だってっ❤❤」

  「ひぁっ!?❤あ゙っ❤あ゙〜〜っ❤❤イクッ❤またイッちゃうぅっ❤❤」

  「イクのか?❤イクんだな?❤…なら一緒にっ!!❤❤ぐぅぅう!!❤❤」

  「ひぃ…あ゙ぁァ〜〜〜〜っっ❤❤❤」

  そうして、同じタイミングで絶頂を共有し合い、そのまま二人肌を合わせたままで、なおも狼夜は愛の言葉を囁き続けるのだ。

  そうすると、快楽と共に深愛を刷り込まれたせいか、スバルの心境にも、徐々に変化が現れていった。

  相変わらず素直では無いし、どこか気恥ずかしがっている様子は見せるものの、狼夜のそういった過剰とも言える言葉に反応を返してみたり、度重なる絶頂を味合わされた時には、そこで素が出るのか、狼夜に甘えるような態度を取るようになっていったのだ。

  「射精るぞ!?❤また中に射精すからな!?❤❤」

  「あ゙っ❤あ゙っ❤❤射精ひてぇっ❤❤ろうやの赤ひゃん孕まへてぇ…っ❤❤」

  「っ…そんなっ…事言われたらっ!!❤❤イクっ!!❤❤奥に種付けするぞ!!❤❤孕めスバルぅぅ!!❤❤」

  「んほぉぉぉォっっッ!!❤❤」

  スバル自身の口から孕ませて欲しいと言われれば、狼夜は理性も何も無くして、全て彼に注ぎ込んでやりたいと思った。溢れる尊さを行動で示そうと、首筋に噛み付いて、愛の烙印を刻み込む。

  伸ばされたスバルの手の甲に、上から手のひらを被せて指を絡めた。互いの体温、溢れ出る汗、何もかもが溶け合って、まるで一つに絡み合うような、そんな多幸感が脳を支配している。

  「ふぐぁ…❤ぁぅ…っ❤…ろ…や…っ❤」

  「…はぁ…はぁ……もっと…もっと君が欲しい…。僕と一緒にどこまでも堕ちていこう…」

  「………ん❤」

  正常位に組み伏せ直して、思うままに本音を呟く。上から覆いかぶさり、影を落としながら見下ろしたスバルにそう問い掛けると、彼はぼんやりとしながらも、その後は確かに、微笑みながら小さく頷いて…。

  両手の指を絡ませ合いながら、たまらず深い口付けを交わした。

  好きで好きで抑えられなくて、愛が溢れて止まらなくて…。

  興奮が、情欲が、恋慕が、尊さが、ドロドロに混ざっては、心の中から流れ出していく。

  「好きだ…❤好きだ…❤かっくんっ❤君をずっと愛してるっ❤愛してるんだ!!❤」

  「ひぁぁっ❤あ゙っあ゙っ❤しゅきぃっ❤ろうやぁ…っ❤もっと愛ひてぇっ❤❤んぁぁァっっッいくぅぅっ❤おひりイくぅぅ!!❤❤」

  激しくて乱暴な抽挿。だけど、愛おしくて堪らない感情。

  細腕を強く引き寄せ、ずちゅずちゅと熟れるアナルを掻き回した。そこに余裕なんて一切存在しなくて、狼夜はただただ、感情と快楽の思うままにスバルを愛し続けている。

  そして、それを一身に受け止めるスバルもまた、蕩けるような甘い甘い快楽と絶頂の中で…。

  狼夜の熱に絆されていく。

  微かな変化ではあるけれど、確かな愛を持って、狼夜はひたすらスバルを懐柔していくのだ。

  [newpage]

  AM4:00…二人微睡むベッドの上で…。

  「……ずっと好きだった…。……子供の頃、君に助けられた時から…俺は心惹かれていたんだ…。」

  「…………」

  「だから、そんな君が夢を諦めて人生を棒に振ろうとした時……俺は心のどこかで、それをチャンスだと思ってしまったんだろう。………その結果、沢山酷い目に合わせてしまって。…本当にすまない。」

  行為が終わって、横たわるスバルを抱き締めながら、つらつらと語る狼夜に、彼は耳を真っ赤にしながら、ただそれを聞いていた。

  「……愛してる。…君だけを。……こんなに沢山酷いことをしたけれど。……この気持ちだけは、本当なんだ。……ただ、こうでもしないと、君を手に入れられないと…そう……考えてしまって…。」

  本当は後悔していた。無理矢理彼を拐って来てしまった事を。

  監禁して、自由を奪った。それはとても許されることでは無いと、初めから嫌という程分かっていたくせに。

  けれど、それが唯一手の届く方法だと思った。

  酒に溺れたスバルを見た時、幻滅もしたし、助けたいと思っていたけれど、同時に彼を手に入れるチャンスは、今この時しかないのではないかと、そんな悪魔の囁きが耳元で強く唸った。

  けれどそれも一重に、狼夜がスバルを愛していたからで……。

  愛しているからこそ…その囁きに頷いてしまった。本当なら、愛とは相手を慈しむ事。こんな風に自分勝手な欲望をぶつけて、傷付けるような事をするなんて、それはきっと、愛とは言えないだろうに…。

  ギュッとスバルを抱き締める腕に力を込める。

  「……ごめんな…かっくん。……俺を好きにならなくていいから…。俺を嫌いになってもいいから…。……だからせめて…傍に居させて…。」

  身勝手な願いだというのは分かっている。これも愛に反する行為だと知っている。自分がこれまで彼にしてきた仕打ちを考えれば、こんなこと、到底受け入れられない事は痛い程分かっているけれど…。

  ただそれでも君に、願いたい…。触れたい…。跪きたい…。

  「………いいよ」

  「………え?」

  きっと初めはその願いが強すぎて、これはもしや幻聴ではないかと思った。

  けれど、少し身動ぎをして、息が掛かるほど近く、こちらへと振り向いたスバルが、ジッと真っ直ぐに真剣な視線を交じ合わせると、狼夜はゴクリと唾を飲み込んで、興奮と期待、恐怖と緊張に、瞳を少し見開いた。

  「………いいよ…それで。……お前がそうしたいなら。」

  「………あ、…え?…あの…そ、それは…その…」

  ただの懺悔のつもりだった。ずっと心の奥にしこりとして残っていた、一抹の罪悪感を取り除くための、自分勝手な懺悔。

  だから、返事がなくったって構わないと思った。スバルに嫌われていても、彼の傍に居れたなら、狼夜はそれで満足だった。

  それなのに、あまりにも予想外の言葉が帰ってきて、狼夜は思わず狼狽する。

  頬を恥ずかしく真っ赤に染めて、交差していた視線を僅かに下げ、スバルの目を見ることも出来なくなる。

  こんなにも身勝手で、こんなにも醜い、そんな俺を…。

  どうして彼は受け入れる事が出来るんだろう。どうして彼は許す事が出来るんだろう。

  そこには確かに、子供の頃憧れ、惚れたあの日のスバルが居て、胸の辺りが異常に激しく脈打つのを感じる。

  「………」

  言葉が出なくて、押し黙ってしまった。

  モジモジと動く訳にも行かなくて、足の指だけがベットの下の方でシーツを右往左往撫で上げている。

  「………オレも…お前に沢山謝りたいこと…あるし。」

  「……え?…そ、そんなの…」

  「……ずっと守ってやるって言ったのに、その約束を破った。……お前がどんどんオレを追い越していく度に、嫉妬して、妬んで、そんな自分が嫌いだった。」

  「………かっくん」

  全て自分で決意したことだった。狼夜を守ると誓って、努力して、最終的には、皆を守れるヒーローに。それがスバルの目標であり夢だった。

  けれど、側に立つ狼夜の存在を見上げる度、心の奥底に淀んだ感情が積み重なっていって……。

  「オレ、元々ヒーローの器なんかじゃなかったんだ。それなのに無茶して、人助けなんかしようとして…。そんでその結果が酒浸りの毎日だっただろ?」

  とにかく夢も希望も失った気持ちだった。そもそも能力の覚醒もないのにヒーローになれるわけなど無かったのだけれど、あの日…あの時、あの子供を助けたことを…本当の所は…。

  「…オレ…実はずっと後悔してたんだ。……子供なんか助けずに、逃げとけばよかったって。…あんな他人見捨てて、自分の事を優先すればよかったって。…っでも!…そんなの最低だろ!?…オレが求めてるヒーローは、そんなんじゃないはずなのに…!全部自分の信念に従って選んだ結果なのに、その結末が最悪だったからって、まるで被害者面なんかしてさ。」

  ヒーローになれなかったのは、あの子供を助けたせいだと馬鹿な結論に至った。その上、あの子供を助けようとしなければ、狼夜も能力に覚醒することは無く、そんな彼の活躍を遠目から羨ましく眺める事になる羽目になんかならなかったのに…と、ひたすら最低な事を言い訳にしては、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて…。

  「……オレの人生…すげぇカラッポだったんだなって。その時気付いた。…オレはただヒーローっていう、皆の憧れに憧れてただけで、元々ヒーローになる素質なんか一切無かったんだ。…表面上、それっぽく取り繕ってただけ。……内面は醜いヴィランそのものだった。」

  「…そ、そんなことっ!」

  「……いいんだ。自分のことは自分がよく分かってるから。」

  「……っ」

  そんな事はない…と狼夜は思った。

  何故なら確かに、狼夜はスバルと初めて会ったあの日、あの時、助けてくれた彼の横顔に、誰よりも眩いヒーローの姿を見ては、憧れ…尊敬し…。

  そして、今なお彼の目標は、右も左も分からず困惑し、運悪く虐げられた見ず知らずの子供を、颯爽と現れては助けてくれた、在りし日のヒーローの面影を辿っている。

  ――狼夜は……リキッドハウルは、スバルの思想を受け継ごうとした、未だ不完全なヒーローでしかない。

  それは、夢に溢れていたあの頃のスバルとは違って、彼がただの紛い物のヒーローだから…。

  心の弱いヒーローだから…。だから、こんな風に彼を傷付けて、愛してるといいつつも、自分勝手に想いを押し付けて…。

  心の中の欲望に負けた。ヒーローとしてあるまじき行為をした。嫌がるスバルを見下ろして優越感に浸り、彼を監禁して、無理矢理懐柔しようとし続けた。

  そんな、本物には程遠い。

  自分こそ、欲に塗れたヴィランそのものだった。

  だからこそ手が届かない。今でさえ…。

  そんな俺を許してくれる、君には敵わない、心まで…。

  「……でも、お前がオレの前に現れた時…オレ。……何も無い人生だったけど、お前に覚えられてた事が、なんか…凄く嬉しくて……」

  笑うスバルに、心が痛む。

  そんな事は…ない。……むしろ、こっちが嬉しかったくらいなんだ…。君にまた出会えて…。

  そして、ずっとスバルの心に居れて。嫉妬だとしても彼の思い出に残っていて…。…嬉しかった。

  そんなの最低なのに…。最悪なのに…。でも、確かに心が高まる想いで…。嬉しかったんだ。

  「……忘れるわけ…ないだろ。俺の恩人で、親友で、初恋の君を……。」

  「そうかもしれないけどさ。オレはそんなこと知らないし。………それで、お前がオレを監禁しだした時は、実際腹も立ったし、意味不明だと思ったけど……でも。」

  「…………」

  スバルが、一度目を伏せて、少し頬を赤くしながら言葉を続ける。

  「……お前と過ごしてくうちに…さ。……なんていうか、オレにとって何にもなかったハズの人生だけど、よくよく考えたら、No.1ヒーローに囲われてるわけだろ?それって凄いよな。しかも、歴代最強って言われてるヒーローだぜ?……そんな奴が、なんかたまに、オレの事が好きだとか…なんとか…」

  ゴニョゴニョと、言いずらそうに言葉を濁したスバルは、そのまま意を決したように勢いづけて叫ぶ。

  「あ゙ー!とにかく!なんつーかな!嬉しかったんだよ!!……今でも狼夜が……オレの事覚えててくれた事も。……そんで、オレの事…す…好きで居てくれるって事も…。……なんか、オレの他愛のない人生でも、ほんの少しは役に立ってる気がするっていうか…。なんていうか。」

  「………そんなの…当たり前だ。君が俺の心の中から一瞬でも姿を消した事なんてないんだから。」

  「……そ、そういう所がさ、恥ずかしいけど…。でもなんか、お前にそう言われるとオレ、思いの外嬉しかったみたいだ。」

  顔を真っ赤に染めて、照れたようにニッと笑う。スバルの笑顔を見ると、狼夜もそれを見て複雑そうに微笑んだ。

  自分がスバルを好きなのことは当たり前の事だ。だから、そんな好意を向けられるだけで、今までの全てを許そうとしてしまうスバルに、少しだけ危機感が芽生えると共に、そんな彼を守り続けたいと思ってしまうのも事実で。

  「……俺…君を好きでいてもいいのか?……だって、君を拐って、監禁して、無理矢理犯した相手なのに。なのに……なんで君は俺を許せるんだ…。」

  俯き、悲しげな顔で呟いた狼夜に、スバルはポカンと目を見開いた後、吹き出したようにクスッと笑った。

  「……まぁ、そりゃあさ。お前が全く見ず知らずの赤の他人で、素性も何も知らん男なのに、好きだとか愛してるだとか言ってきたら、きっとこんな上手くいかなくて、多分最後まで抵抗するだろうけど。……でも、狼夜は、オレがずっと子供の頃から知ってる狼夜で。…親友で、家族で、言ってみたら弟みたいなもんだろ?……まぁ、今はオレの方がめっきり身長やらなんやら追い越されちまったけど。……でも、だからこそ、お前の気持ちにはできるだけ応えてやりたいし、許してもやりたい。オレが不甲斐なかった分、お前に沢山の負担をかけた事もあったと思うし、今までもこれからも、迷惑掛けてんのはお互い様だから。な?」

  「……そんな。迷惑なんて…ん」

  言葉を放つ途中で、口元に指をつけられる。

  「…オレが酒に溺れてあのまま生きてたとしても、ろくな人生にはなってなかった。…もう生きる意味もないのに、死ぬ勇気もないから惰性で生きてただけの終わった人生だ。……それを拾ってくれただけでも、なんだか今思えば、オレ、すごく救われた気がしたんだ。……他の誰でもなく、オレのこれから人生、お前が使ってくれるなら、オレ、それでもいいんだ。……て言うより、そうしたい。……狼夜の役に立ちたい…!…お前がオレを好きでいてくれるなら、その間だけでも、お前の為に生き続けたい。……だから…ん」

  今度は、狼夜がスバルの口元に人差し指をつけて、言葉を遮った。

  「……その先は、俺が言いたい。………やっぱりかっくんには敵わないな。…きっと、ずっとずっと、生きている限り敵う事はないんだろう。」

  そう言って苦笑した狼夜が、真剣な表情に切り替えて、スバルを優しく見つめる。

  「……君が…好きだ。愛してる…スバル。だから、これから先の君の人生、全部ぜーんぶ…俺にくれるか?…俺に愛させてくれないか?」

  「…………」

  「……君をずっと……永遠に愛すると誓うよ。」

  言った瞬間、互いに求め合うよう、深い深いディープキスをした。

  ギュッとその身に抱きつき、抱き寄せ、二人だけの小さな結婚式で、二人だけの永遠の愛を誓う。

  

  数十秒にも及ぶ、情熱的なキス。

  離れる時も、その熱が惜しくて…。

  「……好きだ。…かっくん。……愛してるよ。」

  改めて面と向かって呟いた。すると、とうとう狼夜にも実感が湧いてきて、途端に身体中が熱くなっていくような気がする。

  尖った狼の耳が忙しなく動き、フサフサの尻尾がパサパサと動いた。

  「……オレも好き。…ぁ…ぁぃ…してる…」

  「っ…」

  そう消え去るような声で返された言葉を聞けば、先程までの発言は嘘ではなかったんだと、幻聴ではなかったんだと、今やっとそう信じる事が出来て、途端になんだか、酷く目頭が熱くなる気がする。

  ――でも、君の人生に価値が無いなんて、そんな悲しい自己評価は、今後改めて貰うべきだな。

  狼夜は、そんな事を思いながら、スリスリとスバルの髪に顎を擦り寄せて、彼の身体をまたギュッと、強く抱きしめた。

  ――まずは、能力を使って妊娠できるように身体を作り替える所から始めようか!

  今後の計画を頭の中で練りながら、二人はこの日、二人だけの誓いのキスで、夫夫となって結ばれたのだった。

  二年後……。

  「あ゙っ❤あ゙っ❤やっ❤ま、また!❤また妊娠しちゃう!❤妊娠しちゃうから中ダメぇっ!?❤」

  「ふっ❤ふっ❤ふっ❤いいさ。二人目仕込んでやるから、たっぷり子種汁飲み込んで、赤ん坊孕んじまえよ!…纏めて面倒見てやる!❤」

  「あっ❤狼夜っ❤狼夜だめっ❤あ゙っ❤子宮の入口グリグリしたらっ!?❤❤い、イッッくぅぅぅ!!❤❤あ゙〜〜〜〜〜!!❤❤❤」

  「イケ!!❤二人目孕め!!❤❤まだまだ沢山餓鬼こさえるぞ!!❤❤オライケ!!❤❤がぁぁぁ!!❤❤」

  雪崩込む狼夜の優秀な遺伝子が、子作りしたいと媚びたスバルの卵子に着床した。

  まだまだアツアツの二人は、これからも幸せに日々を過ごしていく。

  またこの日、新たな命を胎に宿しながら……。

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