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獣郎太君はいつもトキメいている。

  木嶋獣郎太(20)歳は、ここ、城西大学の二年生。

  ラクビーの特待生として入学し、2m近い身長と横にも縦にも広い身体、むっちりとした脂肪を纏う筋肉が印象的で、まるで腕や足は丸太のよう、ドラム缶にも似た身体周りは所謂ガチムチと言われる体型なのだろう。いつも服はぱつんぱつんで自分に合う物がないと笑っている。

  目は顔の脂肪で挟まれ細く見えるため何となく印象が悪いが、にっこりと笑うと意外に柔和な表情が見えるため、ガラが悪いとは思われない。ただし高校を卒業してから早速モテようと努力した結果オシャレのつもりで生やしたラウンド髭は、強面に拍車を掛けているし、地声が低く大きい事と、初見では目の前に巨大な壁でも出来たかと思われるような身長のお陰で、人が寄ってこないのは事実だ。

  それが原因かどうかは分からないが、少し見た目とは反して恥ずかしがり屋な一面もあるようだ。あまり人と関わらない・・・と言うか、体育会系のノリ以外で話されるのが苦手らしい。そこが彼の生活を記録しようと思った最たる理由に当たるのだが。

  以上、ちょっと周りから浮いているけれど、決して悪い男ではない獣郎太君の学生生活をここに記そうと思う。

  私が誰とは気にしてはいけない。あくまで私は語り部、獣郎太君のトキメキに満ちた学生生活に、またトキメいてしまった者の1人なのだから。

  さて、準備が出来た所で、まずは彼の1日を覗いて見よう。

  ラクビー部の朝は早い。

  獣郎太も、既に反射の域に達して居るのか、時計の時刻が4時になった瞬間にガバりと起き上がり、寝ぼけて閉じたまんまの瞳と、少しばかり跳ねた髪の毛を気にした様子もなく、のそりと動き出して壁に掛けられたユニフォームへと着替え始めた。

  どうやら部屋は同室の者がしっかりと掃除しているらしい。体育会系特有のズボラで荒れ果てた男臭い部屋では無く、キチンと整理され整えられた部屋は、彼1人で生活していたら実現出来なかっただろう。

  ふと、自らの下半身に出っ張りを感じて下を覗き込めば、立派にトランクスを押し上げ朝立ちしている自らの愚息。まだまだ元気な大学二年生。むしろ今が旬であろう、体格に見合った太く長い、毛の茂った臍まで届きそうなほど勃起した逸物は、スグにでも種子を吐き出したくてたまらない様子である。そういえばもう2週間は抜いていない気がする。何せ寮での生活は常に誰かと共にいるのだから抜いている隙などないのだ。

  ともあれ、獣郎太はトイレに入り、小便をする勢いのままに愚息を鎮めようとする。これから朝練があるのだから抜いている時間などない。何とか一時的にでも萎んでくれた息子に、窮屈な思いさせると心の中で謝りながら、ラグパンに脚を通せば、部屋の片隅、もう一つのベットでも、モゾモゾと動きが見られた。

  「おぅ・・・起こしちまったか?」

  「んー・・・大丈夫。ふぁーー・・・毎日朝練お疲れ様。」

  「へへ、まぁな。これくらい文字通り朝飯前だっつの。」

  起き上がったのは獣郎太と比べると子供にも見えてしまいそうな1人の男子。とは言え彼も大学生だ、ただ彼らが並ぶと大人と一緒にいる中学生くらいには見えなくもない。まぁ、彼が割と童顔である事と、男子の平均的身長よりも少し小さいのが大まかな原因だろうか。

  男子は立ち上がると、目を擦りながら大きく欠伸して獣郎太を見上げ、そして何かに気付くと訝しげに眉を潜めた。

  「・・・寝癖」

  「ん?」

  「寝癖付いてるぞ、今から人前に出るのに、そんなみっともない姿で出ていくなよな。」

  「んあ?こんなもん恥ずかしくねぇよ!誰も気にしねぇって!」

  「・・・ちょっとしゃがめ。」

  「?」

  獣郎太の跳ねた髪、たしかにそれは彼の芋くさい顔と相まって、アホくさいとか馬鹿のように見えてしまう要因となりそうだ。

  男子は手招きするように獣郎太をしゃがませる。そうするとやっと2人の顔が同じ高さ、もとい、少し獣郎太の方が小さくなるだろうか。洗面器の蛇口から水を出してそれを少し手に湿らせると、男子はまるで撫でるように獣郎太の寝癖を指先で整える。

  獣郎太は、まるで子供の頃母親に同じことをやられた時の事を思い出して少し赤面したが、チラリと視線だけで見上げた相手の顔を見ると、またすぐなんだか恥ずかしくなって視線を外した。

  トキメキポイントその1・・・である。

  「よし、これでいつもの色男に戻ったな!」

  「お、おう・・・って色男じゃねえよ馬鹿!」

  「いやいや、お前は普通にカッコイイだろ。まさにラガーマンだな。くくく」

  「ば、馬鹿っ!俺ぁもう行くからな!」

  「行ってらっしゃい!」

  「・・・・・・〜〜!!」

  トキメキポイント、続けて2である。

  恐らく色男だなんて周りから言われた事は無いのだろう。否定しても、相手は真顔でそれを肯定するものだから、尚更恥ずかしくなって、獣郎太は顔を真っ赤にした。まるでゴリラと豚をある程度整えて合わせたかのような男臭い顔が乙女のように赤面している姿は、彼とつるんでいるいつものメンツから見たら嘲笑の対象になるだろう。

  当たり前のように笑顔で「行ってらっしゃい!」と言われると、もはや耳まで真っ赤に染まった偉丈夫は、がに股を開いて、乱雑に部屋を出ることしか出来なかった。

  その後、彼がこのよく分からない気持ちを発散するように朝練に取り組んだのは言うまでもない。

  部活後シャワーを浴び、朝食をとって、午前中の授業を終えると、血気盛んで育ち盛りの大学二年生、他体育会系は、猛スピードで食堂へと向かう。

  別に数量限定の幻の献立があるとか、早く向かわないと席を獲得出来ないとか、そんな事はない、単純に腹が減った。それだけの理由である。

  しかしそれこそが、この野獣達を動かす最大限の欲求である事は言うまでもないだろう。

  元はスポーツを重んじる大学であった為か、今もその名残が残るこの城西大学は、生徒が腹一杯食えるようにという理由から、食堂は常に解放されており、ビッフェ形式を取っている。値段は城西大学の学生ならば900円で食べ放題とかなり安くなっており、一般向けにはもう少し高値で公開されている、なかなか珍しい学食と言えるだろう。

  昼時になると件の体育会系が場を占めてしまうため、一般人やその他文系の者達の出入りが殆ど無くなってしまうが、代わりにその日最も騒がしくなると言っても過言では無い状況になる。彼らの大きな声が大学の外まで聞こえるのでは無いかと言うほど響き渡り、この大学に入学したての者達はそろって何事かと焦り始め、それが毎年の恒例となっていた。

  今日も今日とて、トレイいっぱい山のように盛り付けられた白飯とおかずに、涎を垂らしそうなほどニンマリと笑う獣郎太は、もはやこの為に生きているのではないだろうかと思えるほど嬉しそうだ。彼にとって飯の時間が人生で最も至福の時間なのだろう事は疑いようのない事実であるが、その獲物を睨み殺さんばかりの表情を見た者達からすると、近付いて食事の邪魔をしようものなら噛み付かれる。いや、よもや自ら食われかねないと錯覚してしまうのも無理はない話だった。

  ともあれ、そんな獣郎太に近づくのは。

  「おっす。おつかれ。」

  「んぐ・・・ん?お?よお!」

  「相変わらず良い食べっぷりだなぁ。お前」

  「あったりめぇだろ!食わねぇとやってけねぇよ俺ぁ!」

  同室で一緒に暮らしている男子だ。彼は獣郎太とは裏腹にバランスの整った献立をトレイに持って現れると、獣郎太に他愛のない話を持ちかけながら、その隣に腰を下ろした。

  傍から見るとまるで熊と子供が並んで座っているかの如く不釣り合いな二人であるが、しかし当の本人達はそんな事全く気にした様子も無く、周りから一種の好奇の瞳で見られている事にも気付かないまま談笑していた。何となく見た目からは話の合わない二人だと勘違いされがちであるが、実は小学生の頃からの幼馴染で、かなり気心の知れた関係であることが分かると、こうして不釣り合いながらも一緒に行動している事には図らずも納得してしまうだろう。

  つまりは親友とも言える間柄だった。

  「もうちょい落ち着いて食べられないのか?飯食ってる時のお前、俺でも近寄り難いぞ?」

  「へっ・・・どうせ俺ぁ飯にガッツク卑しい男ですよ。」

  「いや、でもそれで良かったと言えるけどな。」

  「なんだよ。同情か?」

  「もしお前が体育会系の奴らと飯食ってたらさ、俺は遠慮してこうして一緒に飯食えないだろ?だから、お前が1人でいると、良かったって、今日も一緒に飯くえるなって、いつも思うもん。」

  「っ~!?」

  トクンと胸が高鳴るような気がした。

  そう、本日のトキメキポイント3である。

  恥ずかしげもなく、普段通りのトーンで言われると、獣郎太は彼の方を向いて身体を硬直させた。

  いつもは肉で細められた瞳がカッと見開き、同時に顔が真っ赤になってボフンと頭の先からは蒸気が爆発する。

  口の中へリスのように蓄えられた飯を飲み込むことさえ出来なかった。

  「ん?どうした?」

  「むっ!?ぐぅっ!むぐぅ!んんんっ!ん"っ!ごくっごくっごくっ・・・!ぷはっ!な、何でもねぇよ!」

  「おいおい、そんなわけないだろ。顔真っ赤だし、汗もーー」

  「み、水っ!水おかわりしてくる!」

  「お、おう・・・」

  ダンと立ち上がり、大きな声で食堂中に響いた声、周りの喧騒に掻き消えた声だが、近くにいた者達は何事かと視線を送ってくる。

  そんな視線に気付くことも出来ないまま、大股を開いてぎこち無く歩き出した獣郎太は、人混みを掻き分けてウォーターサーバーの前まで来ると、そこに手を着いて、大きく項垂れながら息を吐いた。

  (どうしちまったんだ・・・俺ぁ・・・)

  原因は分かっている。自分でも自覚してしまうほど限定的状況でそれは起こるのだから。

  同室の幼馴染ーー翔の言葉に、何故だかとても心が揺さぶられてしまう。

  それもこれも彼が恥ずかしい言葉を当たり前のように告白してくるのが悪い!と知りつつも、嫌かと言われればそういう訳ではないし、なんというかむず痒い。くすぐったい気持ちになるのは確かだった。

  (中二じゃあるめぇしよぉ・・・)

  思春期真っ只中の中学生時代ならまだしも、今はもう大学二年生。

  確かに中学の時からラクビーに掛かりっきりで、反抗期はあっても色恋には全く興味を示さなかったというのはあるが、何しろ相手もいなかったし、好きになってくれるような者も・・・・・・

  そこまで考えて、何だか虚しくなり、また一つ大きなため息をはいて水をコップに汲めば、とぼとぼと席に戻る途中、隣に座っていた筈の幼馴染の姿が消えている事に気がついた。

  元いた場所には1枚の紙切れ

  ーーーあんまり無理するなよ?先に戻る。ーーー

  思ったより長く思考に囚われて席を外していたようだ。みっともない所を見せてしまったと思う反面、これ以上一緒にいて、またそんな姿を見せる事にならないで済むという安心感もあり、何だか複雑な気分に陥る。いつも通り接しているのに、無性に彼の事が気になるようになってしまったのは何故だろうか。今までは単なる親友として普通を心掛けて接し、遊んだり、談笑したりする仲、そうして上手くやってきた筈なのに。

  同じ大学に入学し、部屋も一緒になって、今まで以上に一緒に接することが多くなったからだろうか。それにしても元々互いの家に泊まる事は良くあった筈

  で、それが直接的な原因とは考えにくい。

  (まさか俺がアイツの事・・・・・・す、すす好きになっちまってるなんて・・・)

  心の中でさえ呟くのが恥ずかしくて躊躇われる上に顔が熱くなる。親友の、しかも男を好きになってしまうとは、無理矢理感情を抑えて来たが、遂に限界を迎え始めてきたのだろうか。

  ただ単純に男を好きになったわけではない。それならば同じラクビー部に、むさ苦しい男が腐るほどいるし、奴らとはそんな関係になる事は全く想像出来ない上にコチラからも本気で遠慮したい。

  だからといって彼のように背の小さい男子だとか、童顔だとか、それ以上にどう見ても女にしか見えないような男だとか、オカマだとか、そんな相手を好きになるような特殊性癖を発症した訳でもない。それは自分の股間が正しく証明・・・つまりはそう言ったAVをこっそり見ることで確認した。それをかんば見るに自分は、翔という男にだけ惚れているのだ。

  女のAVを見ても簡単に抜ける。ただ喘いでる女優をアイツに置き換えると実はもっと抜ける・・・

  別に女のふくよかな胸を見て興奮することもできる。ただ、控えめな・・・もっと言えばアイツのように平たい胸でも良いかなぁとこっそり思ったり・・・

  男の尻になんか興味はない・・・でもアイツの尻なら・・・

  そこまで考えて頭をブンブンと振り回した。

  一体自分は何を考えているのかと顔を真っ赤にしながら心の中で叫ぶ。

  席について、残った飯を見つめるものの、もはや食欲も湧かず、また大きな溜息をついて、紙切れを握りつぶした。

  一体自分の身に何が起こっているのだろうか。考えても答えはでない。

  結局食べかけだった料理をそのまま残して片付け、食堂を後にした獣郎太は、煮え切らない気持ちのまま、昼の練習に顔を出す事となったのだった。

  「気合い入りすぎだろ」と仲間にドン引きされるほど打ち込んだのは、自分の心の中に燻る感情を早く忘れたかったからに違いない。身体中泥だらけで、首の周りのシャツには色が変わるほど汗が滲み、濃い腕毛にさえも土が付着して鬱陶しい。拭っても拭っても湧き出てくる汗のせいで服は雨に濡れたかの如くビショビショで、仲間からは「汚ぇ!」と指を指されて笑われた。

  シャワーを浴びてスッキリした所で、午後の授業に対するやる気がとことん削がれてしまったのは、結局まだ昼の同居人とのやり取りが完全に忘れられていないからだ。

  (糞!女みてぇじゃねぇか俺ぁ)

  言葉に出さず心の中で悪態をついた。

  自分でも驚くほどメンタルが参っているらしく、こんな風になったのは小学生の時以来だ。

  ウダウダ考えるよりも身体を動かせば、今までは彼の事を上手く消化してパッパと忘れられたのに。

  今は、少し身体を動かしたくらいでは、忘れられそうもない。

  (走るか・・・?)

  午後の授業はあるものの、こんな気持ちではまともに思考は働かないだろう。仮に疲れて眠ってしまったとしても、今の状態では夢にまで出てきてうなされてしまいそうだ。

  どうせ単位はそこまでキツいわけでもないし、1日くらいサボった所で問題はない。むしろもっと休んで平気な顔をしている先輩だって記憶にあった。

  そうと決めれば獣郎太は大学の構内を軽快な足取りで走り始めた。

  私服が汗で濡れてしまっても全く気にした様子はない。むしろ、もっともっとと言わんばかりにスピードを上げていく獣郎太に、何人かの生徒はそれを訝しげに見送っていた。

  いつの間にか沈んでいた夕陽。その足で部活に赴き、午後いっぱい走っていた事を話すと「お前正気か?」と本気で心配されたのは言うまでもない。

  ちょっと危ない薬やってんじゃないだろうな!なんて疑われたりもしたが、ただ身体を動かしたくて仕方なかったというと、獣郎太の表情から何かを悟ったのか、仲間たちはその後深く追求する事はしなかった。

  部活が終わる頃には、流石に全身が鉛のように重くなっており、同居人の事を考える余裕も無かった。

  やっといつもの自分に戻ったのを実感し、シャワーを浴びようとくたびれたユニフォームを気だるく脱ごうとした所で気付く。

  私服のまま走った為に着替えは汗臭く、日頃部室のロッカーに置いているユニフォームの替えも今日の昼と夜の部活で使い切った。

  このままの状態で部室に備え付けられた

  シャワーを浴びても結局服を着て身体が汚れたままになるのは何だか嫌であるし、ともすれば、面倒臭いが、一度部屋に戻って着替えを持ち、寮の大浴場で身体を洗った方が良いかも知れない。

  気持ちの整理を付けるためとは言え、一日中ぶっ続けでハードな運動をし続けた身体は、今にも倒れてしまいそうだ。正直部屋に戻るのは、同居人の顔を見てしまって、またしても心に動揺が生まれる可能性があったが、これなら大丈夫だろう。

  仲間に一言別れを告げてズルズルと靴底を引きずりながらなんとか構内に設置された寮の部屋に戻ると、ガチャリという音に気付いた相手が視線を伸ばし、そして獣郎太の姿を見て想像通りの驚愕顔を見せた。

  「おい!まて!駄目!絶対入るな!何だお前!汚すぎる!そこで止まれ!」

  「・・・・・・着替え忘れちまったんだよ。」

  「俺が持ってくるからそこから1歩たりとも動くな!上下に揺れるのも禁止!左右もだ!わかったな!」

  「・・・・・・・・・」

  綺麗好きの同居人は手を伸ばしてストップのジェスチャーを何度もすると、引き攣った顔、というより戦慄にも似た表情で獣郎太の全身を見る。

  まぁ反応としては予想していたが、予想していたからと言って、実際ここまで言われると傷付いてしまうのは仕方の無いことだ。獣郎太は毛深い指先で後頭部をボリボリと掻き毟ると、ひょっとこのように口を尖らせて拗ねたような仕草をした。

  流石は掃除を徹底的に行っている同居人だけあって、獣郎太の服であっても仕舞われている場所を完璧に把握しているようだ。姿が見えなくなってたった数十秒で獣郎太の着替えを見繕うとそれを差し出してくる。何故か自分の手の中にもう一つ、明らかに獣郎太の服ではない服を持っているのが気にかかるが、その意味を知るのはすぐだった。

  「よし、いくぞ!」

  「は?はぁ?な、何言ってやがんだ!」

  「はぁ?何がだよ?俺も風呂まだなんだ。」

  「だ、だからどうした!なんで一緒に入らなきゃいけねぇんだ!」

  「何言ってんだよ。大浴場なんだから当たり前に入ることになるだろ。それともお前わざわざ部室に戻るつもりなのか?今更裸見られて恥ずかしがるタマかよ。」

  「~~~っ!?」

  考えてみれば何もおかしい事ではないのだ。大浴場であるのだから友人と共に汗を流すのは全く不審ではないし、普通やましい気持ちになってしまう獣郎太の方が現段階ではおかしいと言わざるを得ない。

  確かにここでむしろ拒否した方が相手に不審がられてしまうし、だからといって一緒に風呂に入った場合には、正直言って折角消し去った煩悩が復活してしまう事受け売りである。

  返す言葉が無くなって詰まってしまった所で「行くぞ?」と声を掛けられてしまうと、獣郎太は顔を真っ赤にして項垂れ、その言葉に渋々従うしかなかった。

  大浴場までの道程はそこまで長くはない。ほんの一つ階段を下がるだけで着いてしまった目的地に、上から垂れる暖簾を見て一瞬立ち止まってしまうも、結局意を決して入ることになってしまった。

  ミッションはたった一つ。興奮して勃起しないこと。

  ともすれば、相手の方を向かないようにする。どうしても向く場合には目を瞑る。とにかく欲望に負けない。この三つをしっかりと守っていれば大丈夫の筈だ。

  鼻息荒く決意を固めると、普段は殆ど使わない大浴場の脱衣所に立った。

  運動部の屈強な男子が寮の大浴場に現れるなど珍しいのだろう。ほぼ文系しか居ない脱衣所に現れた格の違う存在に視線が奪われ、獣郎太を見つめる男達がぎょっとする。そそくさと逃げ去る者、その体格に目を奪われてしまうもの、明らかな情欲の視線を持つ者、様々だ。

  獣郎太が泥に塗れたユニフォームを脱ぎ去ると、日頃外で活動する為に焼けた肌が服で覆われた部分との差で陰影を作る。具体的には首周りから二の腕の先、太ももから下が全部日焼けして黒く、それ以外は真っ白だ。元々毛深いものだから、胸から腹、腕全体に、足全てが深い毛に覆われてしまっているが、それでも尚その白さが良く目立つ。

  「こっち。」

  「お、おう」

  脱いだ服はすぐさま同居人が当たり前のように回収し、獣郎太は目を瞑ってぎこち無く返す。どう見ても不審であるが、元々の身長差が果てしないために特に気付かれた様子は無かった。

  タオルで前を隠しながら風呂場へと向かう2人を、周りの生徒達は唖然とした表情で見つめ続けていた。

  大学に入学したての時は利用していたが、ラクビー部に所属し始めるとすぐにシャワー室が主な風呂場となった為に、この大浴場を使用したのは今も入れて数える程度しかない。

  突如現れた毛むくじゃらの大男の存在に浴場内が少しざわめくが、獣郎太にとって今意識すべき事は同居人の裸体を見つめて勃起してしまわないようにする事だけである為、そんな様子には気付いていなかった。

  「なんか妙にざわついてるな。・・・体育会系がそんなに珍しいのか・・・?なぁ?」

  「んっ!?な、なんだよ!」

  「・・・なんでお前目ぇ瞑ってるんだ?危ないだろ・・・」

  「い、いや、実は埃が入っちまってだなっ!」

  「たく、仕方ねぇなぁ・・・」

  「っ!?お、おい!」

  「・・・・・・我慢しろよ。俺も恥ずかしいんだから・・・」

  極力目を合わさないようにとしていたのが運のツキだった。それに気付いた翔が獣郎太の腕を掴み、滑って転ばないようにと自ら先導を買って出たのである。

  いきなり掴まれた腕に困惑の声を上げ、ドキリと心臓が高鳴った。どうやら離してくれる様子もなく、獣郎太はなされるがままに、洗面台の一角へと連れていかれた。

  熱い相手の体温が腕から伝わってきて、

  折角消えたと思っていた胸の鼓動が再熱する。

  つまりはトキメキポイントその4だ。

  誘導されるがままに座り、手が離されると少し名残惜しいと思ってしまうのはどうしてだろうか。「さっさと目を洗えよ」と念を押され、同時に日頃から彼の使っている洗剤を渡されれば。しまったと思ったのも束の間、これでは2度と目にゴミが入ったなんて同じ言い訳は通用しないだろうと心の中で苦虫を噛み潰す。だとすれば常に顔にシャワーを当て続けて耐えるしかないと、半ば強引に身体を洗い始め、こうなれば早めに身体を洗ってしまって、湯船に逃げ込むのが吉だ。

  「さ、先に湯船に浸かってるぞ!」

  「ん?早いな。わかった。」

  相手は頭を洗っている最中のようで、こちらに声だけで返事を返してくる。

  なんとか逃げきれた!と思うも、結局これは問題を先送りにしているに過ぎない。かといって1人で部屋に戻るのも、相手を避けているようで居心地が悪くなるだろう。

  相手が湯船に浸かってきた段階で少し間を置き、抜け出すしかあるまい。そうだ!そうすれば自然だ!と頭の中でその流れをシミュレーションする。

  来た!

  心の中で呟くのは、視線の先で立ち上がった相手がこちらに向かってくるのが見えたからだ。勿論直視しないよう、湯で顔を洗う仕草をして誤魔化す。

  ゆっくりと湯船に浸かった相手は、当然の如く隣に腰を下ろしてくるわけで。

  意識するなという方が無理な話だ。さっきまでは身体を洗ったりすることで誤魔化していたが、今は特に何かするわけでもなく、2人並んで座っている。

  恐らく体育会系の巨大な男が現れた影響からか、既に浴場内には人の気配が無く静まり返っていて、それが尚更緊張感を高めた。

  隣で息を吐く同居人に、何故かチラチラと視線が向かっていくのを理性で何度も押さえ付けた。

  「調子はどうだ?」

  「ななな何がだ!俺はお前の方なんかこれっぽっちも見てねぇぞ!」

  「はぁ?」

  「あっ!?」

  いきなり声を掛けられた為に焦ってしまった。検討違いの事を口走ってしまい、思わず口を噤むがそれも遅く、相手は訝しげな表情でこちらを覗き込んできた。

  余計な事を言ってしまったが為に、こちらを見つめる相手の視線が痛い。何とか顔を逸らしてそれを見ないようにするも、明らかに不自然なのは当たり前で。

  「なんで顔を逸らすんだ?」

  「そ、逸らしてねぇよ別に!」

  「いや・・・明らかに俺を見ないようにしてるだろ・・・」

  「何のことだ?」

  静かな浴場の空気と相手の言葉を誤魔化すように下手くそな口笛を吹いて気を紛らわせた。ジッと見つめてくる視線はいつまでも感じるが、とにかくそれを意識しないようにする事しか出来ない。

  「やっぱり、最近のお前少しおかしいぞ?」

  「へっ!そ、そんなことねぇよ!」

  「いや、絶対におかしい。俺の事避けてるのか?」

  「ぎくっ!な、なわけねぇだろ!今だって一緒に風呂まで来てんだからよ!」

  「んー・・・まぁ、たしかにな。」

  一瞬バレてしまったかと思い心の声が出掛けたが、どうやらなんとか上手くいったようだ。我ながらかなり危ない問頭だったと思うが、咄嗟の機転でなんとか誤魔化すことが出来た。精神をかなり摩耗しているのが辛いが、こうなってしまっては仕方の無いことである。

  「まぁでも、良かったよ。」

  「な、何がだよ。」

  「一緒に風呂、入れてさ。いつもはお前、部室でシャワー浴びて帰ってくるだろ?だから1年の時から、こんな風にゆっくり一緒に風呂に入ったりも出来なかったし。」

  「ま、まぁ、そんなもんだろ。」

  「だから素直に嬉しいんだよ。お前と一緒に風呂入れて。」

  ドキッ!

  トキメキポイントその5からバックアタック!

  突如後頭部を殴打されたかのような強烈な言葉に、心臓がバクバクと痛いほど脈動している。熱い風呂に入っているから、顔の赤さは誤魔化せるが、鼻息が荒くなるのは隠せない。

  「それにしても、凄い日焼けだな。」

  「えっ!?あ、ま、まぁな。自分でも見てて気持ちわりぃし」

  「いや、むしろスポーツマンっ!て感じでカッコイイだろ。・・・見ろよ、こんなにクッキリ」

  「っ~~な!」

  ふと、相手の指が、獣郎太の太くたくましい毛深い腕を指先でなぞった。

  おもむろに触られた筋肉はビクリと反応し、流石にそれは不味いと視線を相手に伸ばしてしまうと、今まで直視する事を避けていた相手の姿を見てしまった事で、身体が硬直してしまう。

  濡れて潤いに輝く肌、少し赤らむ頬、蒸気越しに艶を増した上目遣い。

  いつも肉に挟まれて細く見える目が見開く、後ろに下がろうにも浴槽の塀が既に背中にあり身動きが出来ない。

  トキメキポイントその6.7.8が勝負をしかけてきた……▽

  「ん?どした?」

  「あ、ぁ・・・あ・・・」

  「それにしても胸がでかいなぁお前。なんつうか、下手な女より大きいし・・・けど毛深いから辛うじて男の胸って感じだな。乳首なんてどこにあるのか。これか?」

  「っ!??んひぃ!」

  「・・・え・・・な、何だよいきなり変な声出して・・・・・・もしかしてお前乳首性感帯とか?」

  「や、やめっ!?」

  頭からオーバーヒートした為に排熱処理された蒸気が吹き出し、それでも尚間に合わないのか顔が耳まで真っ赤に染まってガチガチに固まる。そんな獣郎太に気付いた様子も無く、何の躊躇いも無しにたわわな雄っぱいから腹へと生い茂った体毛に物珍しさを感じ、それを撫でるように触る相手は、まるで子供のように目を輝かせていた。

  ふと、毛に覆われた胸を掻き分けるようになぞった指先。友人同士の冗談のつもりで、見つけた乳首を軽く抓られると、何やら股間に響くような小さな快楽が走り、驚いて声を上げてしまう。

  その声にビクリと手を離した相手が、何かの間違いだろうと小さく笑って、またしても戯れに乳首へと触れると、今度は声を上げるのではなく、静かにビクビクと震えて胸の筋肉を痙攣させ、声を殺したように目と口を閉じて快感に耐えるその姿に、流石の相手もそれが演技で無いことに気付き、途端に気まずい表情になる。

  「え・・・そ、そんなガチな反応・・・」

  「・・・くぅ」

  「・・・お、お前もしかして勃って・・・」

  「〜~っちがう!」

  否定しようにも事実だ。水面に沈んだ股間を隠すタオルの下で、獣郎太の隠しきれない大きな魔羅がそそり立っているのは、傍から見ても明らかだった。

  流石の事態にどんどんと空気が重くなっていく。堪えようとしたのだが無理だ。相手の裸を見てしまった時点で半勃ち状態であり、完全に勃起するまで時間の問題だったのが、肌を触られ、乳首にまで手を伸ばされては、反応しないわけが無い。

  「ご、ごめんな?」

  「くっぅ・・・」

  「あ、あるって、男に触られたってさ、気持ちよかったら勃っちまうこと!それにお前、寮生活なんて常に人と一緒だろ?溜まってたらちょっと刺激されるだけでそうなっても仕方ないって!」

  相手が気まずさ故か、全力でフォローをいれてくる。きっと自分がこの野獣のような大男に好かれていることなど全く予想もしていないのだろう。

  獣郎太は恥ずかしさのあまり片腕で顔を隠していた。勃起は相変わらず収まらず、隠しきれていないが、それをタオルの上から抑え続けていた。

  「あの・・・俺・・・ほんとごめん。・・・なんつうか、調子こいた。久しぶりだったしさ、お前と風呂入るの。・・・だから、ちょっと気分上がってて・・・・・・」

  「・・・・・・・・・」

  「さ、先に・・・戻るわ。今は俺の顔も見たくないだろうし・・・」

  気を使ってか、トボトボと浴槽から出ていく相手。ちょうどそのタイミングで、今まで人がいなかった浴場にも、何人かの生徒達が入り始める。

  自ら好いている相手に、とてつもなく恥ずかしい所を見せてしまった。そんな感情がグルグルと脳内を駆け巡っている。乳首が感じるなんて自分でも初めて知った事である。いやむしろ、彼に触られたからこそ反応してしまったのかも知れない。

  必死で自らの愚息を鎮めようと股間に力を込める。数分掛かってやっと萎んだそれが、今はとにかく恨めしかった。男とは不便なもので、情欲を隠そうとしてもココが真っ先に反応してしまうものだから隠しきる事が困難だ。

  湯船から脱力したように上がり、さっさと脱衣所に向かうと、しっかりと着替えが折り畳んで用意されており、恐らくそれは相手の細かな気遣いなのだろう事がよくわかった。

  ジャージとタンクトップという寝間着姿に着替え終わると、歩いて数十秒。部屋の前に着いてしまう。

  相手はどうしているだろうか。相変わらず気まずい雰囲気になる事は目に見えていたが、しばらく扉の前で悶々とした後、意を決して部屋の扉をガチャりとあけた。

  「んあ〜〜」

  「ん?」

  次いで聞こえて来たのは、予想していた沈黙や相手が一足先に眠っているだろう暗い部屋ではなく、電気がつけられ、そしてまるで溶けるかのように微睡んだ覇気の無い声。

  嫌な予感にすぐさま部屋へと上がり込むと、絨毯の上に座り込み、三つ目にもなろうと言う酒の缶を片手に酔っ払う同居人の姿だった。

  「マジかっ!?」

  「おー!獣郎太!帰ってきたか獣郎太!」

  同居人は彼にしては珍しく真っ赤な顔で、上機嫌に手を上げ笑っていた。

  駆け寄ってすぐさま抱き上げ、手に持った缶を奪い取れば、それを相手の届かない場所に置いてこれ以上飲まないように注意する。

  「お前何やってんだ!」

  「ごめんな獣郎太ぁ。ごめんなぁ。」

  「何に謝ってんだっ・・・!なんで酒なんかあるんだよ・・・」

  実は同居人は、1度酒で暴れた事があった。酒に弱すぎてフラフラになり、線路に突っ込みかけたり、ガラスに倒れ込んで危うく流血沙汰になったりと、大変な目にあったのだ。それは成人式の時のどんちゃん騒ぎで、彼は特に酒を飲もうとは思っていなかったらしいが、周りが煽って1杯飲ませてしまい、そのたった1杯で起こした不祥事だった。

  普段は真面目で大人しい男であるが、ひとたび酒を飲んだ瞬間、同級生の女子の着物やセットされた髪を引っ張ったり、暑いからと全裸になりかけたり。最終的には殆ど記憶が無いとのたまって、それ以降彼に酒を飲ませる事は仲間内で禁止されていた。

  「ごめんなぁ獣郎太ぁ!先輩がしゃぁ、くれらんらけどさぁ、お前飲むからぁと思って取っといらのに飲んじまっらぁ!」

  「おーおー、そりゃどうも。つーか飲まねぇよ部活あんのに!」

  「俺ぁ嫌なやつだよらぁ・・・あんらことしてごめんらぁ!らから許してくれよぉ獣郎太ぁ」

  獣郎太の首にヒシとしがみつき、肩に顔を埋めて泣きじゃくる相手は、おそらく先ほど獣郎太にしでかした事を悔いているのだろう。

  まさか酒を飲んで忘れようとするとは・・・恐らく酔って話でもすれば仲直り出来ると思ったのだろう。自分の酒癖を理解してないが為の純粋さとも思えた。

  「許す、許すから!寝ようぜもう!な?」

  「やらぁ!一緒にれてくれらいとやらぁ!」

  「わかったわかった!寝る!一緒に寝るから!大人しくしろよ?それでいいか?」

  「うん」

  拗ねた子供のように駄々をこねる相手に、とりあえず今だけは従っておこうと狭いベットへゆっくり身体を下ろしていく。首から離れようとしない為にそのまま自身も狭いベットの中に寝そべると、ギュウギュウに密着した相手の身体から、一緒に使ったシャンプーの香りが香ってきた。

  不意なトキメキポイントは、先程理性を抑えたばかりなのに不味い!

  既にジャージの下ではパンツを軽く押し上げるペニスの鼓動を感じる。

  しかし相手は離れようとせず、むしろもっともっとと密着してくる始末だった。

  「ん。獣郎、あったかい」

  「~~っ!」

  可愛すぎか!と、心の中で叫び声を上げながら、こちらの胸元に頬を寄せてニヘラと笑う相手にまた顔が真っ赤に染まる。

  トキメキポイント9がヘッドショット!!に既に堪えきれなくなったペニスが立ち上がり、互いの身体の間で擦れていて、今にもトランクスへと射精してしまいそうだ。

  ふと、自らの腹を押し上げる硬い存在に気が付いたのか、相手が訝しげな表情で獣郎太を見上げる。

  「なんらこれ・・・ジャージのらか、らんかあるぞ」

  「あ、翔っそれは!やめっ!~~イっ!」

  ジャージを窮屈そうに押し上げる物体が気になるのか、掌で股の間から上に撫でるよう腕が動く。流石にそんなそんな直接的な刺激を与えられては、二週間も蓄え、更に今まで理性で抑えてきた感情が爆発してしまうのも無理はない話で。

  顔を上げ、頬を真っ赤に染めて、歯と目を食いしばるようにビクンビクンと全身が震える。

  そう、トランクスの中で濃い精子をドクドクとぶちかましてしまったのだ。

  数秒にも及ぶ射精はじんわりとジャージから滲むほど吹き出し、獣郎太は声を抑えるだけで精一杯だった。

  「ん。ズボン濡れてるぞ。脱いだ方がいい」

  「ぁっ!も、もう勘弁っ!ゆ、許すから!許すからもういいだろぉ!」

  「らめにきまっれるらろ!」

  毛深い腕で目元を隠し、目尻から溢れるのは涙。こんな羞恥に耐えられる筈もなく、この大男にとって既に忘れ去られていた幼い過去の癖、泣き癖が蘇ってしまった。

  小学生の低学年の頃は、今のように鍛えていなかった獣郎太はよく見た目で馬鹿にされ、いつも泣いていた。昔は贅肉ばかりで、周りの子供より一回り大きい身体も特異に見られた。その癖ちょっと虐めてやるとスグにボロボロと涙を流すものだから、周りの男子、はては女子に至るまで、彼はクラス皆から虐めを受けていたのである。

  そんな過去の経緯があるからか、元々あまり精神的に強くない獣郎太は、実は堪えられない事があると、こうして昔の彼に戻ってしまうのだった。

  こんな歳になって、こんな毛だらけの野獣のような大男が、ズルズルと鼻を啜るように軽くべソを掻いているのだから面白い話である。

  相手はそんな獣郎太の首元に抱きつくようにすると、その顔に自らの顔を近付けて呟いた。

  「獣郎、好き」

  「・・・んぇ」

  「好き、獣郎」

  「な、何言ってーーんむ」

  唐突に呟かれた言葉に、唖然として素っ頓狂な声を出した。腕の隙間から、涙で濡れた瞳を少し出して下を見つめれば、にへらと力の無い笑みで笑う相手の姿。その表情はとても欲情的で、それでいて可愛らしい。

  トキメキポイント10のチャーム♡

  もう一度呟かれた言葉に、今度こそ腕を上げ、潤んだ瞳で相手を見つめれば、間髪入れずに唇と唇が情熱的に合わさった。

  「んむ、ふ、じゅる、ん、は、んふ、む」

  「ん、ふむぅ、ん、ふ、むぅ、んじゅ、んく、ん」

  目を閉じて、お互い貪るようなキス。

  舌と舌を絡め合わせ、歯をなぞり、唾液を交換しあってゴクリと喉が上下する。

  その間にも相手の手によって捲られたタンクトップと、ジャージが膝下までずり下ろされ、ドロドロに濡れたタンクトップを突き上げるテントが姿を表した。

  「んはぁ~んまぃ」

  「んあっ!お、い、かける、こんなっ!んあっ!」

  唇を離すと酒の香りが辺りに充満する。それに酔ってしまったかのように身体全体が熱く火照り、互いの唇から幾つもの唾液が橋を作った。

  翔は満足したように笑いながらニッコリと舌なめずりをすると、未だ状況を理解出来ずにオーバーヒートを起こす獣郎太の首筋や胸元にキスを落とし、そしてその体毛に埋もれた乳首へと吸い付いた。

  思わず声を上げる獣郎太を他所に、空いた手で下半身のテントへと腕を伸ばすと、窮屈そうにトランクスを押し上げるペニスを解放してやる。

  「あ"っ!翔っ!駄目だ!そんなっ!」

  獣郎太のそんな叫びも虚しく、相手はこれでもかと盛り上がる毛深い雄っぱいの先端、乳首へと吸い付きながら、その大きく脈打つペニスに触れる。

  亀頭の半分まで皮で覆われたペニスの先端からは、尿道に残った精子が我慢汁に押されてダクダクと吹き出しており、それを潤滑油代わりに、ゆっくりと亀頭を剥いていった。

  「んあぁっ!や、やべぇっ!またっ」

  剥いた瞬間、たったそれだけの刺激で獣郎太はまた射精した。

  既に1度吐き出しているにも関わらず、1度目と同等、いや、それ以上に濃く、粘ついたザーメンをペニスから吐き出し、自らの腹を汚した。

  恥ずかしさからまた腕で目元を覆い、自らの身体の様子など見ることも出来ない。ハァハァと息を乱しながら、何度も歯を食いしばって、断続的に精子を吐き出す。下半身に余程力が入っているのか腰が僅かに浮き上がり、射精中の敏感な亀頭を触られる度に面白いほど身体を痙攣させてその瞬間のみ声が一瞬大きくなるのを、相手は乳首に吸い付きながら楽しそうに眺めていた。

  脂肪を程よく含む割れた腹筋が白く染まり、亀頭責めによって発生した潮で濡れながらも、相手の容赦ない搾精は続いた。

  「あ"っ、あ"っ、あ"っ、あ"っ、あ"〜~っ!!」

  くちゅくちゅと粘液が掻き回される音が、獣郎太の野太い喘ぎに消える。相手に触られる事で開花した乳首という性感帯も、まるでなめくじのような舌に舐られ、そして吸われる度に硬度を増し、今や舌先でチロチロと弾かれる始末である。

  既に4度目の射精に踏切った獣郎太は、ブリッチのように腰を上げて、ガクガクと痙攣を繰り返した。

  「お"~っ!お"お"お"お"お"~っ!」

  7度目の射精になると、もはや声は野獣のそれとなんら変わらなかった。

  根元から亀頭の先まで一気に搾られるよう掌を動かされ、毛深い太ももがピンと伸びて硬直する。太い足の指が大きく開き、最後の射精に踏み切った。

  手を離されても尚、激しい快感に震えた身体が、何度も痙攣を起こし、ベットをギシギシと揺らす。

  精子塗れになった手を見つめ、にちゃにちゃと弄びながら、ゆっくりと獣郎太の顔の傍に寄り添った相手は、どこか満足げだ。

  「みて、獣郎」

  「う、あっ・・・」

  「いっぱいでたね。えらいえらい。」

  「あ"・・・かけるぅ・・・」

  「ん、キスしよ。」

  「んん・・・む・・・んは、んむ」

  汚れていない方の手で顔を隠した獣郎太の腕をどかし、虚ろな瞳で半泣きの視線を自らの手に集中させる。手コキで泡だち、少し凝固した精子の塊に濡れる手を見せつけられ、また顔を隠したい気持ちに陥るも、えらいと頭を撫でられながら言われると、それも耐えられた。

  懇願するように名前を呼べば、それだけで察した相手が唇を近付け、お互いに空いた手で両方の頬に触れて引き寄せながら、また濃厚なキスを味わった。

  「仲直りだね」

  「あっ・・・」

  そういった同居人は、そのままウトウトと目を瞑ってしまい、後に残されたのは、荒く息を吐いた獣郎太のみ。

  髭面のゴリラのような男が涙で顔を濡らし、頬を赤らめているという状況にやっと気が付いた獣郎太は、ゴシゴシと目元を腕で拭って、傍に置いてあったティッシュの箱を丸ごと掴み、そして乱雑に後処理し始めた。

  我ながらどれだけ出したのだろうと言えるほど身体は精子だらけで、あまつさえ相手の顔面さえ汚してしまっている。

  相手を起こさないようにそれを処理し、身体に付着したザーメンも全て拭いさって、結局着替えたばかりのタンクトップとジャージ、トランクスはまた別のものに変えた。

  また相手と寄り添って寝ようかと思ったが、冷静に考えてそれはやめ、自らのベットに向かう。相変わらず心は困惑したままで、相手の呟いた告白の言葉が何度も頭の中で反響していて。

  結局眠れないまま部活の時間になった。

  死んだように眠る相手の横顔を見つめて、悲痛な表情をする。

  部活は突然の大雨で中止。

  獣郎太はそれでも1人グラウンドに残って、夜まで練習を続けていた。

  ーーーー

  「タッチラグビーやろう!」

  「え、えぇ?」

  虐められた俺を助けた後だっただろうか。

  ニッと歯を見せて、まるで向日葵の花のように明るく笑った男子が、そういって手を伸ばしてくる。

  「お前身体おおきいし、きっと強くなれるって!」

  「そ、そんな、オレ・・・」

  「むずかしくないからさ!やろう!」

  強引に手を引かれて、無理矢理参加させられた。

  俺はその時初めて、他人から遊びに誘われたかと思う。

  言われた通り、がむしゃらにプレイすると、そいつはとても興奮した様子で、すごく上手いと、俺の試合を褒めてくれた。

  身体中シンドくて、暑くて、喉はカラカラで。

  でも、一緒にプレイした皆が、俺の方を向いて、笑顔を向けてくる。

  「なっ!お前なら上手くなれるって言っただろ!」

  その中で1番に輝いて見えたのは、俺を誘ってくれたその男子の笑顔だった。

  ・・・思えばその時だろうか。俺がラグビーをやってみたいと思えたのは。

  キツくて、辛くて、でも凄く面白くて。

  毎日のようにタッチラグビーに励んで、一緒に切磋琢磨した。

  まるで兄弟のようなチームワークに、俺達はすぐさま部活でも1番の実力になった。

  そのうち同じチームになると不利だからと、別々のチームになった時には、2人で大きく抗議もした。

  けれど2人敵同士になってぶつかると、またそれも違った楽しみが生まれるもので、スグに俺達は最高のライバルにもなった。

  いつしか俺は、クラスの皆から虐められる事も無くなって、むしろ仲間として受け入れられるようになり。

  1番最初に、虐められた俺を助けてくれた男子が、俺のその後の人生、それを大きく変える出会いになるだなんて、そんな事、思いもしなかった。

  順調で円滑なラグビー人生、しかしそれも、俺達が小学六年になるころだっただろうか。

  まるで組み立てたトランプタワーが、風に舞って倒れてしまったかのように呆気なく、簡単に潰えてしまった。

  「っ~~くぁっ!」

  「あ、あぁ・・・」

  地面に転がり、自らの脚を抱き寄せるよう抱えた相手。

  周りの生徒が、眉をひそめて集まってくる。

  俺は倒れ込んだ相手を見つめて、顔面蒼白になりながらその場に膝をつくばかりで。

  遠くから教師が「救急車!」と叫ぶ声がする。

  まるでそこから時間が止まってしまったような。

  そんな感覚が、俺の身体を支配した。

  翔は全治1ヶ月にもなる足の骨折で入院する事になった。リハビリも含めれば約半年。

  原因は言うまでもないだろう。

  俺が誤って転倒し、場外のベンチに頭をぶつけそうになった所、それを見た相手が咄嗟に俺とベンチの間に入ってきたのだ。

  俺はその時から既に周りより一回りほど大きな身体付きをしていたし、ベンチは石で造られたモニュメントのようなものだった。咄嗟の状況に衝撃を緩めることも出来ず、俺とベンチの間で、相手の足をそのまま押し潰す形になった。

  結果折れてしまった相手の足。

  俺はそれを見て泣きじゃくる事しか出来なくて、けれど相手は一言、脂汗を浮かべ、悲痛に歪んた表情で「良かった・・・無事だ」と安堵したように1人呟いていた。

  病院に運ばれた翔に、無理矢理付いていきたいと教師に懇願し、部活はその後当たり前のように中止になった。

  救急車の中で、痛みに気絶してしまったその横顔を見た時、俺は取り返しのつかない事をしてしまったと、声を殺してずっと泣いていた。

  教師が俺の肩を擦りながら、何度も俺のせいではないと励ましてくれていたが、俺は全くそう思うことが出来なかった。

  病院について、暫く経った時、相手の親が慌ただしく病室に入ってくる。

  俺の親もそう違わずに現れ、俺は何度も何度も相手の親に謝り、俺の親も、何度も頭を下げて謝罪した。

  俺はただただ泣きじゃくっていた。涙が枯れるのでは無いかと言うくらいに、ただ泣いていた。

  しばらくして手術中のライトが消えると、医者は相手の親だけを呼び出して別室に消えていく。俺の親は俺の事を配慮してくれたのか、少し先の自動販売機にジュースを買いに向かっていった。

  俺はどうしても相手の容態が気になって、こっそり医者の消えた部屋に聞き耳を立てる。

  深刻そうな声。俺は心臓の鼓動を抑えることが出来なかった。

  「当たり所が悪かったようで、かなり複雑な状況です。・・・手術である程度補整したので、後はギプスで回復を待てば完治はするでしょう。ただ・・・」

  「はい・・・」

  「リハビリで歩けるようにはなっても、以前のように走り回ったり、激しい運動をする事は出来そうに無いですね。」

  「っ!?」

  その言葉を聞いた瞬間、俺はガタガタと震え、後ろに後退りした。

  部屋の中で椅子から立ち上がる音が聞こえると、ハッとしてその場から駆け出す。

  走りながら、何度も堪えきれない涙を腕で拭いさって、人目につかない階段の隅で、その日1番に声を上げて泣いた。

  しばらくして声が聞こえた誰かが言ったのか、看護婦のお姉さんが現れて、親の元に連れていかれ、どこに行ってたんだと叱られた。

  それでも俺はずっとずっと泣きじゃくっていて、親と看護婦が顔を付き合わせていた。

  数日経って、面会が可能になると、俺は学校終わりにすぐさま駆け出して相手の入院する病院に向かった。

  受付のお姉さんに事情を説明して、特別に病室を教えて貰うと、俺はまたそこから駆け出して、真っ直ぐにそこへと向かう。

  息を切らして病室のドアを開ければ、目を見開いて驚いたようにこちらを見る相手の姿。

  「お、お前なんでーーっ?」

  「かけるぅ・・・がげる"ぅぅぅああああ」

  「わー!!」

  相手の姿を見て、スグに大きな口を開け、ボロボロと泣き出した俺。その姿を見て、同室のおじいちゃんやおばあちゃんが慌てたようにこちらを見る。

  とにかく翔がそこにいた。それだけが嬉しくて、それでいて色んな思いが溢れ始めて

  「い、いいからこっちに来いよ馬鹿!」

  「うあ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」

  泣きながら一歩一歩ゆっくり歩んでいく。事情を察した周りの患者達は次第に優しい微笑みを向けるようになった。

  「ごめんなぁぁ!がげる"ごめ"ん"な"ぁぁ!」

  「それはもう分かったってば。」

  「うあ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」

  「あーもう泣くなよ!迷惑だろ!」

  相手の足が宙に固定されているのを見ると、その姿にまたしても涙がでる。

  備え付けられたティッシュの箱から何枚も中身を取り出して俺の顔に押し付ける相手は、心底迷惑そうに顔を顰めていた。

  相手は今回の事を気にしてないとか、自分が悪かったとか、俺を責めようとは全くしなかった。どうやら既に親から聞いていたらしいが、俺が運動はもう出来ないかも知れないと言うと、そんな事か。とそれを気にした様子もなく一蹴した。

  「別にいいよ。出来なくなったって。どうせ辞めるつもりだったし」

  「そんな・・・」

  嘘だとすぐに分かった。中学になったら、1番にラグビー部に入りたいと言っていたのは相手自身である事を俺は良く知っていた。

  とても目を輝かせてスポーツ紙のラグビー選手を見ると、このプレイが凄いとか、この動きを真似したいとか。そんな風に楽しそうに語る姿が印象的だったから。

  「俺、元々才能なかったんだよ。・・・身長はもうずっと伸びてないし、身体付きだってラグビーに向いてない。今は小学生のタッチラグビーだから良いけど、これからやり続けようとしたら、絶対に限界にぶち当たるんだ・・・」

  「そ、そんな事・・・!」

  「無いわけ無いだろ!・・・・・・お前はわからないだけだ。身長でかいし身体もでかい、俺に無いもの、全部持ってんだから・・・」

  「おれ・・・俺・・・」

  言葉が出なかった。彼はこう言っているが、実際鍛えていれば身体付きなんてどうとでもなる代物である。諦めなければいくらだってチャンスはある筈だ。でもそれを声に出せなかったのは、彼の選手生命、それを断ってしまったのが自分だったからで。

  俯いて、意を決したように小さく呟いた。

  「俺も・・・やめる・・・」

  「はぁ?」

  「翔がいないラグビーなんかやっててつまらねぇもん!!だから俺もラグビーやめる!!」

  「っ!お前!何言ってんだ!!馬鹿にしやがって!!」

  「っー!?」

  俺が叫ぶと、翔は俺の胸元を強く掴み、自らの眼前に手繰り寄せた。

  目を見開き、身体が息の詰まったように硬直する。互いの視線が至近距離で交わり、同時に気付かなかった相手の涙が、目尻に少し浮かんでいるのが見えた。

  「お前がラグビーやめたら!誰が俺の代わりになるんだよ!!!」

  「っー」

  「俺が出来なかった事、お前がやってくんなきゃ誰がやるんだよ!!」

  「かけ・・・」

  「お前の為に、俺・・・俺は・・・足まで差し出して・・・」

  「かける・・・」

  そこまで言って胸元から手を脱力させ、項垂れる相手に、俺は気付かされた。

  やっぱり翔は、ラグビーずっと、続けたかったんだって。

  俺の事を気遣って、バレバレな嘘を呟いて。

  でも、そうやって自分にも嘘をついて、納得させるしかなかったんだって。

  「かえれ」

  「かけ・・・」

  「帰れって言ってんのが聞こえねぇのか!!」

  「っあ」

  項垂れた相手に手を伸ばそうとした所で、その手を払い除けて彼が叫ぶ。

  俺は何も言うことが出来なくて・・・そのままゆっくりと踵を返し、その場を後にした。

  とぼとぼと歩く帰り道、やっぱり少し泣いてしまったけれど、それでも沢山泣きたいのを理性でなんとか我慢した結果だった。

  俺は、翔の分も練習して、立派なラグビー選手になる。その為に、もう泣かないようにする。

  その時、俺は心の中でそう決心したから。

  アイツはきっと、俺と一緒のチームになって、大会で活躍したかった筈だ。

  俺と一緒に強くなって、お互いに弱点を克服したかった筈だ。

  時には壁にぶつかる時もあるかもしれない。あの病室で叫んだように、俺の才能に引け目を感じて喧嘩もするかも知れない。

  けれど、そんな時も2人で支えあう、信頼に溢れたチーム。

  きっと、そんな未来を信じで、目を輝かせていたに違いない。

  俺はそんなアイツの、未来を奪ってしまった。

  俺にはない沢山の才能をもったアイツの人生を、もう修正が効かないくらい大きく変えてしまった。

  だから、アイツの代わりとでも言うように練習に励んだ。

  アイツの人生を奪ってしまった分、俺がアイツの夢を叶えるために励んだ。

  退院したアイツは何も言わず、部活に励む俺の肩を叩いて笑ったけれど。

  その瞳の奥に、2度と取り戻せない過去の炎が燻っているように感じた。

  その後沢山の大会で優勝し、それでも納得しない俺は、アイツに誇れるよう練習に明け暮れた。

  アイツとはすっかり元の関係に戻り、アイツはアイツのなりに夢を追いかける事にしたようだった。

  スポーツ医学を学び、選手が怪我をしないように。

  栄養士の資格をとって、選手達の体調管理が出来るように。

  物覚えが良い事を生かして、沢山選手の役に立てるように。

  そんな一生懸命夢の形を模索する彼は、以前と変わらない笑顔で微笑むようになり、それでも俺は、どこか心の奥底で、そんな彼の生き様に負い目を感じずにはいられなかった。

  心の中で、アイツに恋をしてしまったと気付いた時。

  何気ない日常の中で、アイツがそばに居てくれる幸せに気付いてしまった時。

  俺はまた絶望に追い込まれた。

  馬鹿だと思った。当たり前だ。

  絶対に不可能な恋をしてしまったと苦悩した。

  アイツの夢を叶えてやる事にさえ、こんな行き詰まって、手探りな自分がいるのに。

  それを乗り越え、あまつさえ性別の壁までぶち壊してアイツを愛するなんて。

  絶対無理だ。・・・だからこそ、この気持ちを極限まで胸の奥底に押さえ込んだ。

  それなのに・・・

  (獣郎、好き)

  酔っていたとは言え、相手の口から出た言葉。

  その後行われたあの行為。

  俺は一体、どうすればいいんだろう。

  どうすれば正解なんだろう。

  わからない。全く想像もつかない。

  「うあああああああああ!!!」

  叫び声を上げながら、土砂降りの雨の中がむしゃらに走った。

  この気持ちの整理は、どんなに誤魔化そうとしても誤魔化しきれないだろう。

  「があああああああああ!!!」

  雨の音が、グラウンドに響き渡る怒声を地面に落として行く。

  バシャン・・・

  大きな水音を立てて地面に尻餅をつく。

  泥でユニフォームが濡れ、身体中真っ黒に染まった。

  あまりに疲れ果ててしまって、もう立ち上がる事さえ出来ない。

  暗い空から降りしきる雨が、身体全体をこれでもかと打ち付けた。

  (暫く・・・こんまま・・・)

  言葉を発する力も無く、ただ荒い息だけで大きな胸が上下する。

  既に時刻は夜中。グラウンドの明かりもそろそろ消えてしまうだろう。

  疲れから瞼が重くのしかかってきて今にも眠ってしまいそうだ。

  けれどそうして意識を手放すその瞬間、どこからか、獣郎太を呼ぶ声が聞こえた気がした。

  「獣郎太!!!」

  「か・・・ける・・・」

  「お前何やってんだこんなとこで!!!立てるか?!」

  「・・・おれ・・・おれっ・・・は・・・」

  「ほら、肩貸すから、部室まで頑張れ!」

  名前を呼ばれた事で意識が僅かに浮き上がる。薄く目を開けて視線を動かせば、傘を持ち、こちらを心配そうに覗き見る相手の姿。

  その顔を見た瞬間、なぜだか胸がとても熱くなって、堪えられなくなって。

  スーッと目尻から垂れた涙が、雨の雫に隠れて流れた。

  綺麗好きなのに、汚れるのも構わないと、雨と汗と泥に塗れた俺の肩を持ち上げた相手は、ゆっくりと歩き出す。

  すぐ側の部室、そこに入ると、俺はゆっくりとロッカーを背にして座らせられて、ふぅと息を吐いた相手が、キッと眉を潜めこちらを睨んだ。

  「お前!夜遅くまで帰って来ないから何してるかと思えば!!心配したんだぞ!!連絡しても繋がらねぇし!!!」

  「・・・・・・・・・」

  「聞いてみりゃ部活は雨で中止だって言うし!その後誰もお前の事見てねぇって言うし!!もしやと思って最後にここまで来てみりゃ案の定!!何考えてんだ馬鹿!!本当に心配したんだぞ!!?まさか誘拐なんてされるわけも無いだろうし、事故ったかもしれないと思ってお前の親に連絡行ってないか確認してーーー!!聞いてんのかおい!!」

  「ぅ、っ・・・ぅぁ・・・ぐっ・・・」

  「っーーおまっ・・・な、何で泣いてんだよ・・・」

  相手の怒号が響き渡る部室の中で、獣郎太の声を殺した音が僅かに聞こえる。ふとその顔を覗いてみると、泥だらけの酷い髭面をくしゃくしゃにして、ボロボロと目尻から涙を流す獣郎太がいた。

  困惑に眉を曲げ、ポケットからハンカチを取り出した翔が、慌てたようにその顔を拭う。

  こんな状況は、とても久しぶりで。だから昔を少し思い出して、何故だろう、こんな時なのに怒りを忘れて小さく笑った。

  「・・・ふふ・・・なんだかな・・・懐かしい、お前がそんな風に泣いてるの見んの。」

  「ぅぐっ・・・ぁぁっ・・・ぅぁ・・・」

  「小学生の頃は、しょっちゅう泣きじゃくってたくせに・・・・・・思えば、あの事件があった辺りから、もうずっと、泣いてなかったっけ・・・」

  「おれっ・・・おれ・・・!」

  「わかってるって。・・・・・・全部、俺の為だったんだろ?・・・知ってるよ」

  相手の言葉に、獣郎太は涙で歪む目を身開いて視線を合わせた。

  今まで誰にも言ったことのない秘密。勿論、当の本人には絶対にバレないようにしていた決意。それが、実は既に知られていた。

  「ちょっと考えれば分かることさ。・・・はは・・・お前優しいから。・・・あの時、病室で俺が叫んだ事・・・あれ気にして、頑張ってくれてたんだよな・・・」

  乾いたように悲しげに笑った翔は、気まずげに視線だけを下に逸らした。

  知っていた。知られていた。けれど翔はそれを言葉にする事はしなかった。

  「知ってた、けどさ。・・・でも、言えなかったんだ・・・言ったらなんだか・・・嫌な事が起こりそうでさ・・・怖くなって・・・」

  獣郎太の肩を掴む翔の手が僅かに震えているような気がした。

  「ーーーあの頃のお前はすげぇ頑張ってて、仲間からも信頼されてて。・・・正直、輝いてた。・・・俺が憧れてたラグビー選手が、目の前にいるみたいでさ。・・・すげぇなぁって、思った。」

  がむしゃらに部活動へと情熱を捧げた中学時代。俺は始めてのラグビー部で1年からレギュラー入りを果たし、同時に長年優勝を逃してきたその部に、栄光をもたらした男と言われた。

  俺にとっては自分の実力を試す意味と、俺が潰してしまった翔の人生をここから始めるという意味で、絶対に負けられない重要な年だと意識していたから、ここで勝つのは当然だと思っていた。

  「でも、・・・それと同時に怖かった。俺がその場に居なくても、お前は当たり前に活躍しててさ。俺は、それを眺める事しか出来なくて・・・・・・お前の隣に立ってる奴らに、本当は俺がその場所にいる筈だったんだ!って、言いたかった。お前の才能、全部引き出せるのは、俺だけだって、そう思ってたのに。」

  本当は、常に客席から見つめる相手の視線を意識していた。彼が最も望む動きを、彼が最も望む戦略で。

  だから、むしろ翔が居なかったら、俺はあんな風に成果を上げることなど出来やしなかっただろう。翔の面影はずっと、俺のすぐ後ろで、共に試合に出場していたのだ。

  「でも、全然そんな事なかっただろ?俺が居なくても、お前はしっかり活躍してる。・・・・・・だからさ・・・俺、もう必要ないんじゃないかなって・・・もう、お前のそばに居られないんじゃ無いかなって・・・・・・怖くなって・・・・・・」

  そんなことは無いと叫びたかった。

  けれど身体に蓄積された疲労のせいで口が上手く動かず、言葉は掠れて宙に消えた。

  「・・・お前の家に行った時、その時お前は家に居なくて、近所の公園に行ったっておばさんから聞いて、こっそり覗きに行ったことがあったんだ。・・・お前すんごい真剣な顔してさ、めっちゃハードな練習してて。・・・・・・それ見た時、ふっとあの病室で言った事思い出したんだ。」

  そうだ。1日も無駄になんてしていられなかった。

  俺の肩には、翔というもう一つの人生があったから。

  「・・・・・・もしかしたら、あのこと、気にしてくれてんのかなって思った。何回も何回も気にすんなって言ったのにさ。お前・・・変な所で頑固だから・・・でも・・・お前がそういう奴だって、俺そん時になってやっと思い出して・・・・・・」

  彼が公園を覗きに来ていたなんて、まるで気がつく事が出来なかった。

  俺はただがむしゃらに、コイツに認められる男になろうの決めていて。

  「嬉しかったけど、でも、勘違いだったら情けないからさ・・・言うの躊躇って・・・つーか、もし本当にお前が俺の言った言葉気にしてくれてんなら、それはそれで、きっと、お前の中に、俺がずっと居れると思って・・・どっちにしろ言いたくなかったんだ・・・」

  目尻の涙を拭いながら、翔が小さく笑った。

  「お前がこの大学の特待受けるって聞いた時、確信した。・・・・・・ここ、俺の憧れてたラグビー選手の母校だもんな。今じゃ殆ど落ちぶれてるけど、それでもお前はここに拘ってた。別の学校の方が明らかに待遇いいってのに。」

  子供の頃、何度も何度も彼はこの大学に入学したいと言っていた。

  曰く、尊敬する選手の母校にあたり、彼と同じ大学で、彼と同じように練習したいと。

  忘れる筈がなかった。

  その羨望の眼差しを、俺が独り占め出来たら、どんなに嬉しいだろうと、思っていたものだから。

  「お"・・・れは・・・ずっと・・・」

  「・・・・・・え?」

  「お前と・・・一緒にいたかった・・・・・・でも、お前の・・・足を折ったのは・・・俺だったから・・・」

  「・・・だからそれは」

  「っちがう!」

  「っ!」

  やっと喉の奥から声が出た気がした。

  突然の声に、今度は翔が驚きに目を見開く。

  ぜぇぜぇと息を乱しながら、俺は言葉を続けた。

  「お前は・・・優しい・・・から・・・いつも全部・・・自分のせいにして・・・俺を甘やかす・・・・・・俺ぁ、お前に、助けられてばっかで・・・いつだって・・・守られる側で・・・」

  虐めから助けてくれたのも。

  ラグビーというスポーツの楽しさを教えてくれたのも、全部彼だった。

  それなのに俺は、その人生を奪った上に、それでもまだ気を使われて。

  情けない。

  「俺が出来るのは・・・お前の夢を受け継いで、叶えてやることだけしかねぇ。・・・それだって全部、俺の責任だ。・・・俺のケジメだ。・・・本当はお前と一緒に、フィールドを走り回りたかった。でもそれは・・・俺のせいで出来ねぇから・・・っ」

  「っ・・・もういい。もういいよ獣郎。お前はもう充分頑張ったって。だから、俺の人生なんて背負わなくていい。お前はお前の人生を生きてくれればそれで!」

  翔の泣き顔なんて、もしかしたら始めて見たかも知れない。ボロボロと目の端から大粒の涙を流して、俺を悲痛な表情で見つめる。

  しかしそれとは裏腹に、俺は何故だか酷く落ち着いた心持ちで・・・・・・ゆっくりと息を吸う。相手をしっかりと見据えて、そしてとうとう、心の底で燻っていた言葉を吐き出した。

  「・・・もう遅せぇよ・・・俺・・・お前の・・・事・・・好きになっちまってんだ。」

  「っへ?」

  「・・・・・・愛してる・・・翔・・・」

  人生を背負わなくてもいい。そんな事を言われても、もう自分はとっくに自ら背負いたいと思ってしまっている。

  この目の前にいる男を、俺はとっくに愛してしまっている。

  「な、何言っーーっ!?」

  相手の言葉を遮るように、その唇へと噛み付いた。

  今度は相手からではない、自ら手を伸ばして、逃がさないように腕の中へと抱き締めて。

  「んっ、む、は、じゅうへー、ふむ、あっ」

  「ん、ふ、んは、んん、む、ふ、ぷは」

  お互い荒く息を吐いて、至近距離で視線が交差する。

  もう言葉はいらない。あとはただ感情の赴くままに、また濃厚なキスを交わした。

  「ずっと、お前の事好きで・・・」

  「あぁ・・・俺も・・・」

  「でも、ラグビーでお前の理想叶えるのだって難しいのによ。恋愛なんて、絶対無理だろ・・・?」

  「・・・お前らしいな。・・・でもとっくの昔にもうお前は俺の理想以上の選手になってたよ。」

  「・・・マジかよ」

  2人で肩を並べて、互いに寄り添う形でこれまでの思いをただ呟く。

  今まで、ずっと隠し続けていた気持ち、お互い両思いだったのに、そうとは知らずに胸に秘め続けた思い。

  「・・・だから俺は、きっといつかプロになるだろうお前の体調管理出来るように、医学とか栄養学ぼうと思ったんだ。」

  「・・・・・・へへへ。」

  「・・・何がおかしいんだ。」

  「だってよ。もしお前がそうなれたら、俺達ずっと、一緒だろ?」

  「まぁ・・・かもな。でも、お前の家に住み込みで管理するわけじゃないぞ?」

  「住み込めよ。誰も気にしねぇだろうし。」

  「・・・・・・・・・」

  「仮にそうなれなくても・・・一緒に住もうぜ。」

  「っ馬鹿、気が早いんだよ!」

  ドクンと翔の心臓が高鳴る。

  彼にとってのトキメキポイント、もういつか数えることを忘れてしまったトキメキ。

  ぎゅっと握りしめられた手。

  お互いの温度を交換し合う。

  これからも。

  いつまでも。

  ーーーー

  「なぁ、ほんとに覚えて無ぇのか?」

  「覚えて無いな。」

  「そうか・・・」

  「なんでそんな残念そうなんだよ。」

  その後、部室のシャワー室で、2人は同じ個室に入り泥を流していた。

  なんとか獣郎太の気力も回復し、しかしまだ安静にしていろと、獣郎太の頭を洗うのは翔だ。

  どうやら昨日の酒のトラブルについて、翔に記憶があるかどうか確認しているらしい。案の定全く覚えていないらしいが。

  しかし獣郎太はその話題から記憶を掘り起こすと、昨日の情事を思い出して顔を赤らめる。自然とペニスも勃ち上がってしまうのは仕方のない話で。

  「お前・・・何かやらしいこと考えてるだろ?」

  「ぎくぅ!!な、なんの事だ??」

  「バレバレだろ。ビンビンに勃起してるし。」

  「あ、こ、これは・・・」

  洗剤を付けて髪を泡立てている最中、翔が小さく呟いた。

  目を閉じている獣郎太は全身をびくりと痙攣させると、慌てて股間を両手で隠す。しかしその巨根を隠すのは正直無理な話で。

  「そういえば、昨日乳首触ったらめっちゃ感じてたよな?」

  「な、何すんだ!や、やめぇーーっ!」

  シャンプーを中断して、少し悪戯な笑みを浮かべた相手が、獣郎太のふとましい脇の下から手を差し出して脂肪と筋肉に膨れた胸を下からワシ掴みする。そのまま毛に隠れたピンク色の初々しい両乳首へと指を伸ばすと、既に興奮から硬くなった乳首は弄って下さいと言わんばかりだ。

  慌てたように声を大にする獣郎太であるが、はち切れんばかりの毛深い雄っぱいに隠れた乳首が、指先でクリクリと弄ばれ始めると、ピンと身体を硬直させて固まってしまう。

  ピリピリとした小さな電流のような快感がペニス全体に流れるようだ。

  強い快楽とは言えないが、蕩けるような快感が持続するようで、癖になってしまう。

  「やっぱり気持ちいいんだな。・・・こーんな敏感な乳首なら毎日弄って開発してやらないと損だな。ふふふ」

  「あ、あっ、やめっ、そんなっ、勘弁っん」

  耳元で呟かれる言葉にゾクゾクと背筋から何かが這い上がってくる。

  ビクンビクンとペニスが何度もしゃくり上げ、それがあからさまに乳首で感じてしまっていることを表していた。

  獣郎太の前に移動した翔は、自ら跨ぐように胡座の上へと腰を下ろす。

  勿論乳首は刺激したままで、相手の首筋へと吸い付けば、その部分はまるで蚊に刺されたように赤い痕がついた。

  そのまま髭を舌でなぞるように舐めながら、自らの尻の間で獣郎太のペニスを擦り立てる。我慢汁に濡れたペニスはぬちゃぬちゃと充分過ぎるほどの粘液を纏い、スムーズな動きを可能にして、獣郎太はどんどんと荒くなる声を抑えることが出来なかった。

  「うあっ!な、なんだこれっ!すげっ!き、気持ちよすぎるっ!か、かけるぅ!いっ、イッチまうっ!イッチまうよ俺っ!んうっ!!!」

  瞬間、たった数回擦り立てただけにも関わらず、獣郎太のペニスが尻の割れ目を強く押し上げ、そして濃い粘液を迸らせた。

  それはまるでゼリーのように強い粘着性を持ちながらも、水鉄砲で勢いよく打ち出されているかのようで、彼の精巣と括約筋がかなり優れている事を如実に表していた。

  ビクビクと震えて歯を噛み締めていた獣郎太は、しかし射精が終わりに近付き始めると、惚けたようにその唇を弛緩させてダラりと虚ろな目をした。

  翔は1度立ち上がると、自らの尻の谷間がドロドロになってしまっているのを確認しようとする。しかし背後の、しかも下半身を見ようとすると、かなり無茶をして身体を捻るしかない。夢中になって確認しようとした為に、自らの尻を獣郎太に向けている事になど気づかず、また、惚けていた筈の獣郎太が徐々に意識を取り戻し始めた事も分からなかった。

  「うっわー・・・どんだけ出したんだこれ?・・・尻全体がねちゃねちゃする・・・」

  自らの尻に手を伸ばして触れてみると、粘着力に溢れた精子が幾つも糸を作っていた。

  シャワーの蛇口に手を出すと、思いのほか威力が強く、あっという間に個室全部が蒸気に包まれていった。

  「うわっ!ーーーえあっ!?」

  そんな蒸気に紛れて、突如身体が強く引き寄せられる。思わず驚きに声を上げて身を固くすると、勿論引き寄せたのは獣郎太しかいない。

  シャワーでシャンプーを落としきったらしい。その目は少し不機嫌そうに顰められ、口を尖らせて翔を見下ろしている。

  おそらく先程の唐突なセクハラ行為が気に入らなかったのだろう。

  「え、えと・・・気持ちよかっただろ?」

  「あぁ・・・」

  「だ、だったらなんでそんな顔してるんだよ・・・」

  「ああいう不意打ちが気に入らないからだ!」

  「い、いいじゃんか!そういうエロいこと出来る関係、な?俺達友達でもあるわけだし・・・」

  「そうだな。・・・でも、俺がリードしたかったんだよ!」

  どうやら獣郎太にとっては、どちらかと言うと相手を気持ちよくさせたいという気持ちがあったらしい。

  それなのにも関わらず相手にはリードされっぱなしだ。酒を飲んで忘れてしまっているとはいえ、初めての行為だって、本当はこちらから恥じらう相手に近付いて・・・というのを想定していたのだ。

  「え・・・お、お前、もしかして俺が女役なのか?」

  「・・・違うのか?」

  「い、いや!・・・見た目的にはそうかも知れないけど、性格的には明らかに逆だろ!」

  「俺が女だって言いてぇのか!?」

  「・・・・・・いや・・・すまん・・・」

  獣郎太の言葉を聞くと、それがどれだけ不釣り合いな言葉かよく理解できた。

  何せ身体中毛だらけで、脂肪と筋肉に覆われた達磨のような身体をしている上に、顔は厳つく髭を生やして、太い眉毛が不機嫌そうに皺を作っている。鼻息も荒く、ギラついた目は情欲に溢れていて、先程出したばかりというのに未だ萎えない血管を多く纏う勃起は、まだかまだかと震えていた。

  こんなあからさまに男臭い野郎を女と呼ぶには、あまりにも言葉の響き、ひいては意味にさえ失礼な気がする。そっと目を逸らし、翔は額から大粒の汗を垂らした。

  「で、でも無理だぞ!お、俺はそんなデカいチンコ、し、尻は絶対無理だ!」

  「大丈夫だ、いける!」

  「な、何を根拠にしてるんだよ!・・・お、おい!こ、擦るな!ち、チンコ擦るなぁ!」

  獣郎太は相手をがっしりと掴んだまま仰向けにすると、まるで野獣のように息を荒くしながら魔羅を尻の穴付近に擦り立てる。

  なんだかその顔は、昼時、飯を食う時の獣郎太にとてもそっくりだった。

  「はぁ・・・ち、チンコって、もっかい言ってくれ。」

  「ち、チンコ?」

  「だ、誰のだ?」

  「獣郎太のチンコ・・・」

  「うっ!!」

  「えええっ!?」

  獣郎太の唐突な言葉に、困惑しながらも言われた通り返す。というか、言うことを聞かなければ問答無用で今にも暴走したペニスを突き入れられそうだ。

  何だか改めてそんな言葉を言えと言われると、少しだけ恥ずかしくなって、翔は顔をそっと逸らし、頬をほんのり赤くしながら呟いた。

  するとたったそれだけにも関わらず、獣郎太の身体が震え、そしてまたしても尻の間に精子を吐き出す。

  これには流石に、思わず驚愕の言葉を禁じ得ない。

  「おまっ・・・どんだけ精力旺盛なんだよ・・・」

  「お、俺だって普段はこんな早漏じゃねぇし!二、三発出したら満足するんだぞ!」

  「それでも二、三発出してるんだな・・・」

  「た、ただ・・・お前が、お前の言葉とか聞くと・・・・・・ど、どんだけだしても足りねぇって言うか・・・・・・お、お前が可愛すぎんのがいけねぇんだろ!」

  「な、な、な何言ってんだよ!は、恥ずかしくないのか!馬鹿!」

  「恥ずかしいに決まってんだろ!!」

  「開き直るな!!」

  お互いに顔を真っ赤にして、もはや子供の喧嘩のように叫びあった。改めて考えてみると、今まで妄想の中だけだった行為を、こうして現実で、しかも妄想の相手同士行っているという事実。それがどれだけ幸運で、どれだけ晴らしい事か。現実味が無さすぎてあまり考えていなかったかもしれない。

  触れ合った体温、質感、妄想の中とは違う、全て本物の感触。

  意識してしまうと、お互い無言で、けれど顔を真っ赤にして、ただ視線を合わせる事しか出来なかった。

  「え、えーと・・・」

  「ま、まずは、き、キスでもするか?」

  「そ、そうだな・・・改めて、や、やるか。」

  そのうち無言が空気を圧迫して、目を逸らした。気まずさに耐えきれなかったのだ。

  もう本当は遠慮することなんてない。でも少し焦りすぎていたかも知れない。

  そう思って、何となくまた1から始めたくなった。

  2人の顔が近付いていく。翔はそれを察知して目を閉じる。

  (な、なんで目を閉じてんだよ!は、反則だ!ずりぃぞ!こ、こここんな!き、緊張するじゃねぇか!な、なんでだ!くそ!で、でもするぞ!やるぞ俺は!男獣郎太!こんな所で足踏みなんかしてらんねぇ!そもそも1回やっただろ!そ、そん時の要領を思い出して!!)

  心の中で自分を奮い立たせるように気合をいれた。ふるふると震える唇を不格好に突き出して、どんどんと近付いていく。充血に赤らんだ目をギュッと閉じてゆっくりと、しかし確実に。

  「んっ・・・・・・!」

  「んむっ・・・ふ、む、ん」

  唇を合わせた。

  おかしい話だが、1番最初にした時よりもずっとぎこちないキスだった。

  ゆっくりと合わせた口を開いて、優しく舌を挿入していく。

  まずはただ触れ合うように、けれど次第に強く絡ませて。

  獣郎太は、そっと相手の肌を滑るように撫でると、胸から腹、脇腹に触れ、そのまま掌を下半身へと持っていく。

  ビクリと身体が震えて、獣郎太の首に回された腕が、ギュッと尚更硬直したのを感じた。目を薄く開けてみれば、ふるふると瞼を震わせながら、必死にきたるべき快楽に耐えようとする姿。

  いつも凛としている彼とは全く違う余裕のない表情に、尚更獣郎太の情欲は燃え上がった。

  「んあっ、ふむ、んんっ、ん、んふぅ、んら、らめっ、んむふっ、ん」

  ペニスに触れると、それは既に熱を持ち、そして先端から明らか水とは違う粘度を持った体液を吐き出していた。

  「すげぇ出てるぞ?」

  「やっ・・・い、言うなっ・・・」

  「なんでだ?ここにゃ俺達しか居ないんだから恥ずかしくないだろ?・・・素直に興奮してるって言えよ。」

  「あっ、ひっ、だ、激しっ、もっとっ、や、優しく」

  「可愛くおねだりできたらいいぞ?」

  「そん、あっ!いあっ、やら、やらそれぇっ」

  粘液を毛むくじゃらな掌に馴染ませると、さっそくそのペニスを擦り立てる。

  獣郎太のゴツゴツとした分厚く大きな掌は、相手のペニスをたった一握りで全て包んでしまえる程で、少し力を入れる部分を意識すれば、簡単に亀頭ばかりを責め立てる事が出来た。

  唇を離し、相手の快感に耐える表情を見つめながら、ゾクゾクとした加虐心に火が灯りはじめた獣郎太。息が触れ合う程の近さで呟き、相手を意地悪く言葉で責め立てながら、徐々に刺激を強くしていく。

  「あっ、あっあ、っわ、わかった!言う、言うから、す、ストップ!」

  「よし・・・」

  手の動きを止め、一旦離すと、獣郎太の掌がネチャネチャと音を立てた。見てみると、沢山の透明な粘液がいくつも糸を作り、獣郎太のゴツい掌をドロドロに汚してしまっていた。

  わざと音を立てて、相手の前で粘液を弄ぶ。自分でも初めてなのだろう。その量に相手は顔を真っ赤にしていた。

  「ほら、言えよ。」

  「っ・・・・・・」

  「言わねぇとまた・・・」

  「っあ・・・わかったって!」

  「へへ・・・」

  獣郎太の言葉に、相手は観念したようで、1度息を吸って拗ねたように獣郎太を見つめると、少し上目遣いで、頬を赤らめながら、少し困ったように眉をひそめて、掠れるほど小さく呟いた。

  「や、優しく・・・・・・優しくエッチして・・・?」

  「〜〜っ」

  「んわっ!」

  獣郎太はその言葉を聞くと、広がった鼻から蒸気を吹き出すかの如く興奮し、耐えきれずにそのまま相手の唇に噛み付いた。

  もう一度濃厚なキスをしながら、次はあまり亀頭に力を入れず、全体的にクチュクチュと擦り立てる。

  今度こそ純粋な快楽のみなのだろう。相手はビクビクとペニスをしゃくり上げて、徐々に腰を浮かしはじめた。

  「んふっ、んんっ、ぷあっ、だ、じゅうろ、っん、いくっ、あっ!ふむぅっ!んんんんっ!!」

  言葉を放とうと口を離した瞬間にすぐ塞がれ、それでも懸命に限界が近い事を伝えようとする相手。

  キスを継続しながら、その言葉を聞いた獣郎太は、徐々にペニスへの刺激を強めると、それに釣られて腰を徐々に高く上げる相手の足が、ピンと突っ張った。

  瞬間、熱いザーメンがどくどくと獣郎太の掌を汚していく。射精の瞬間を見逃しはしないとキスを中断すれば、射精する度断続的に声を上げ、腰をガクガクと痙攣させて射精を繰り返す相手のペニスを好奇の瞳でじっと見続けた。

  好きな相手を、しっかりと射精に導くことが出来た。それがとても嬉しくて。

  「はぁ・・・はぁ・・・・・・んはぁっ!」

  「へへ・・・」

  「やめっ、やめっ、やめれっ!・・・ひぃぃーーっ!」

  悪戯に射精後のペニスを再度擦り立てる。

  相手の手が獣郎太の手を止めようと動くが、力の差は歴然で全く通用しない。

  歯を見せていやらしく笑う獣郎太に、翔はそれでも何かに縋り付きたくなって、その首筋へと強く腕を回した。ガクガクと腰が陸に上がった魚のように跳ねる相手は、声も震えて強いビブラートのようになってしまっている。

  何度か擦り立てると、流石に可哀想になって手を離した。

  瞬間全身の筋肉を傍から見ても分かるほど脱力させた相手に、獣郎太はまたキスを落としていく。

  「ば・・・か・・・」

  「へへ・・・可愛すぎてついな・・・」

  脱力しながら、キツい責めに息も絶え絶えになった相手。

  獣郎太は、そんな相手の両足を掴むと、おもむろにその太腿へと自らのペニスを挟みはじめる。

  「なに・・・してんだ?」

  「尻が駄目ならここ使うしかねぇだろ?」

  正常位の態勢で小さく笑う獣郎太。

  つまりは擬似セックスという事だろうか。その答えを確認する前に獣郎太は腰を振り始めると、熱いペニスの熱が翔の太腿を激しくピストンし始める。

  「あっ、うっ、く、あっ!」

  「はっ、はっ、ぐ、くっ!」

  身体を激しく揺さぶるピストンは、まるで本当にお互い繋がってしまっているのではないかと錯覚してしまうほどだった。

  顔を真っ赤にして、汗を額から流し、歯を食いしばりながら一心不乱に腰を振る獣郎太を見れば、これが実際自分の中に入ってきた時、どうなってしまうのだろうと思う。

  既に限界が近いのか、一層強くピストンを早めた相手に、何だかこちらも熱くなり始めて。

  「はっ、イッーぐっ!」

  「んわぁーっ!」

  太腿から生えたかのような巨根から、未だに衰える事のないザーメンが勢いよく飛び出す。それは翔の身体全体に降り掛かるよう弾け飛び、腹は勿論、胸や顔にまで、白く全身を汚していった。

  獣郎太は、射精しながらも腰を何度か振り続ける。自らの太腿を何度も擦り立てる相手の魔羅を見下げると、面白いほど脈動したそれから、少し勢いの衰えた精子を吐き出しているのが、とても印象的だった。

  「はぁ〜・・・」

  流石に限界まで酷使してしまった身体の疲れも取れておらず、更には熱いシャワーの温度で徐々に逆上せ始めたからか、3度目の射精になるとやっと底抜けの精力に終わりが見えた。

  射精の虚脱感から、赤く染まった顔は惚けたように口を開け、全身から力が抜ける。太腿を広げてペニスを解放すると、そのままその場に仰向けに寝転がり、そばに居た相手をグッと自分の胸元に引き寄せた。

  「あ"〜〜・・・出したなぁ・・・」

  「・・・出しすぎだろ。」

  「・・・へへへ」

  ここまで興奮して連続で抜いたことなどいままでには無く、疲れが最高潮に達し、酷く眠たい。

  相手の小さなツッコミに力なく笑いながら目を閉じると、感じたこともない多幸感に包まれて、今にも気を失ってしまいそうになった。

  「おい!寝るな!満足したなら帰るぞ!」

  「ん・・・あぁ・・・」

  何とか相手の声に意識を戻して立ち上がると、後は身体にこびり付いた精子を洗い落としてサッサとシャワー室を後にする。

  「そういえば、着替え・・・」

  「あ・・・」

  「まぁ、お前の服借りるか・・・ダッボダボだけど。」

  獣郎太は予備のユニフォームを今日の朝に補充したばかりだが、相手は濡れてしまった服の替えを持っていない。当たり前と言えば当たり前であるが、せっかく浴びたシャワーが無駄になるのは勘弁願いたいものである。

  ふと、そんな翔がロッカーの中に入ったユニフォームの一つを手に取った。おそらく自分が2人は入れるだろう大きな服であるが、無いよりはマシである。

  その言葉にドキリと反応したのは勿論獣郎太で、つまりこれは彼シャツという奴では!?とまた鼻息を荒くした。

  「ワンピースだなこりゃ」

  案の定着てみれば、それはまるで、女子の纏うワンピースと同様だった。ギリギリパンツが見えない程度に下半身が隠れているが、胸元はボタンをすべて閉じてもかなり露出してしまっている。

  服の下から生えるように見えた素足が欲情的で、獣郎太はまたしても自らの愚息がパンツの中で鎌首をもたげ始めたのを感じた。

  「は、早く帰ろうぜ!」

  「ん、そうだな。」

  そんな事にも気付かない相手を尻目に、獣郎太はサッサと部屋に戻ってしまおうと自らの欲望を危惧して呟いた。

  外に出てみると雨はすっかり止んでいて、これならば濡れずに済みそうだと2人は安堵する。

  とはいえこんな2人を誰かに見られてしまったら、大学で噂になっても仕方ない。出来れば男同士で付き合い始めたという事は、誰にも知られないままでいたかった。

  しばらくして寮に戻ると、まずは獣郎太が先行して様子を見る。

  人の気配が無いことをしっかりと確認するとすぐに戻って相手を誘導し、仮に突然人が現れても良いように、獣郎太の影に隠れるよう部屋へと戻った。

  「なんだか妙に緊張したぜ・・・」

  「見つからなくてよかったな」

  鍵を閉めて誰にも見つからなかった事に胸を撫で下ろす。相手は特にそこまで心配していなかったのか、さっさと靴を脱いで部屋に上がると、部室から持ってきた汚れた服を片付けていた。

  獣郎太も、やっと心から安心出来る空間に来たためか、部室で堪えた眠気がドッと押し寄せてきて、瞼が重くなり、徐々に目を開けるのも困難になっていく。

  身体をグッと伸ばすと、既に無茶をした反動から身体中が凝り固まっているようで、明日は久し振りの筋肉痛になるだろうなと、大きな欠伸をしながら小さく思った。

  もう限界だと自らのベットに倒れるよう寝転ぶ。今日は土曜。明日は唯一部活が休みである日曜だ。今ほどそれを良かったと思えた日もないだろう。

  翔が戻ると、既に獣郎太は軽いイビキを掻きながら自分のベットへとうつ伏せで眠っていた。

  倒れるほど運動していたのだ。体力が取り柄の男だとしても、今回ばかりは仕方の無いことだろう。

  小さく笑うとそっと毛布を掛けてやる。雨に濡れてしまった身体をシャワーで温めたとはいえ、蓄積された疲労の影響を受けると体調が悪くなる可能性もある。それだけは何としても阻止しなければいけないことだ。

  幼い頃の事故で諦めてしまった夢。

  それを代わりに追いかけ、必死に練習に励んでくれる相手は、既にこの大学のチームにとって・・・いや、確実に日本のラクビー界にとって重要な存在である事は間違いないだろう。

  元々高いポテンシャルを秘めていることは知っていた。獣郎太は謙遜しているが、彼 が本当にすごい実力の持ち主である事は、彼を知っているものなら誰でも理解しているだろう。

  そんな彼のポテンシャルをしっかり引き出してやりたい、そう思ったのがこの道を歩むことのきっかけだった。

  彼が体調を崩さないよう管理して、彼がしっかりと試合で万全な力を出し切れるように。いつしかそれは、彼の隣でいつまでも一緒に居たいと思う感情に変わって。本当はこの気持ちを抑えたまま生きていくつもりだったけれど、それが現実になるなんて思いもよらなかった。

  寝顔を見て、そっと幸せを噛み締めるように微笑む。

  自らもベットへと戻ろうとした所で、突如グイと腕が勢いよく引かれた。思わず態勢を崩して後ろ向きに倒れてしまうと、そのまま覆われるようにギュッと抱き締められる。

  「・・・一緒に寝ようぜ・・・」

  「起きてたのか?」

  「ちょっと寝ちまった・・・へへ」

  話してる間にも、声は掠れて微睡みに消えかかっている。仕方ないのでここは彼の言う通り、狭いベットだが、一緒に添い寝してやる事としよう。

  獣郎太が毛布を捲り、2人の身体を包み込むと、もう一度背後からギュッと抱きしめ、そして後頭部に顔を埋めながらまた寝息を立て始める。

  どうやら今度こそ本当に眠ってしまったようだ。翔は獣郎太の丸太のように太く毛深い腕を抱きしめると目を閉じた。流石に獣郎太ほどでは無いが疲れてしまっていたようで、そのまま意識が遠くなっていく。

  時刻は深夜1時。聞こえてくるのはお互いの心臓の音くらい。

  そのうちそれに、2人の寝息が合わさって部屋の中に静かに響き渡っていく。

  互いの体温、それを直に感じながら、幸せに包まれて。

  ーーーー

  その後、大学を卒業した2人は、自らの夢の通り、その目的を果たした。

  獣郎太は日本ラグビー界の期待のホープとして、翔はそんな彼を影から支える者として。

  いつしか獣郎太は、海外のプロチームから異例のスカウトを受けた。

  勿論それを快諾した彼は、その後海外でも目覚しい活躍をし、日本人として全世界にその名前を轟かせる事となる。これは、ラグビー弱小国と言われる日本において、多大なる貢献であったことは、言うまでもないだろう。

  そしてそんな彼を影で支えた、一切メディアに登場せず、ただ獣郎太の証言から噂だけが広がった、彼の恋人の存在。

  しばらくしてから、海外で挙式を上げた獣郎太の報道に、全世界が驚愕したのはお察しの通り。

  世間で話題になったのも当然、大きく取り上げられた新聞の1面記事には、獣郎太!一般人男性との同性愛結婚!との事。

  ついでに、白いスーツに身を包んだ、2人の日本人が、幸せそうな笑顔でその記事を彩った。

  同時に執筆されるのは、彼らのこれまでの生い立ちや絆。それを読めば、誰しもが声を合わせて納得し、この報道に対しての世間の印象は、重ね重ね良いものとなった。

  彼のファンには、きっと同性愛者もいただろう。もしくは、単純に獣郎太に惚れた女性も沢山いたはずだ。

  そんな者達の羨望という感情を一心に受けて祝福され。

  その後、彼らは末永く、幸せに暮らしたとさ。

  おしまい

  [newpage]

  夏の小話

  「なぁ、お前今年は実家帰るのか?」

  「ん?お前はどうすんだ?」

  「お前が帰るなら帰ろうかなって・・・」

  「んー・・・」

  夏休みに入り、付き合い初めて約1ヶ月になろうとする2人は、今年の休みの予定を話し合っていた。

  毎年夏は追い込みの季節、とまで言われる部活動でも2週間程度の休みは貰える。その期間で実家に帰ったり、各々好きな事をしたりと、個人でやりたい事をする時間が設けられるのだ。と言っても部活動も夜遅くまでぶっ通しというわけでは無いので、遠出しないのであればある程度好きに予定を組むことは可能だ。問題はその全く予定のない2週間、実家に帰るかどうか、それを確認しているのだろう。

  翔は特に部活動に専念しているわけでは無いので、二ヶ月間程の休日をどう過ごすかは自由である。ただ、1人実家に帰るのも何だか心許ないし、ならば獣郎太の予定に合わせようと、こうして提案したのである。

  「別に帰ってもなぁ。正月にでも顔出せばいいだろ。」

  「お前がそういうならそうするか。」

  「何だよ煮えくらねぇなぁ。帰りたいなら帰ってもいいんだぞ?」

  「俺は別に帰りたいと思ってないぞ。家に帰ったら帰ったで色々うるさいしな。お前と一緒にいた方が気が楽だ。」

  「へー、なんだよ。だったら俺と一緒に居たいって素直に言えばいいじゃねぇか。」

  「うるさいぞ・・・っ!今勉強してんだから触るな!」

  「そう言うなって〜!うりうり」

  「やっ!・・・やめっ!」

  未だ素直になりきれない相手の背後から、そっと手を差し伸ばしてシャツを捲っていく。

  耳元で低く悪戯に呟きながら、片方は胸へ、片方はジャージのズボンの中へと滑り込ませて行くと、獣郎太のゴツゴツとした岩のような指先が相手の胸の突起をクリクリと弄り始める。

  同時に皮に包まれたペニスの先端をクチュクチュと軽く皮コキしてやると、すぐに声が甘いものへと変わり果てていった。

  「胸、感じるようになったなぁ」

  「ふあっ、ん、お前がっ、毎日、いじっ、るから、ふぅぅーっ」

  「初めに興味持ったのはお前じゃねぇか。乳首そんなに気持ちいいのか?って聞くから折角開発してやったんだろ。恩に着ろよな。」

  「やっ!も、もうだめっ・・・い、いっく・・・っはぇ・・・?」

  「おいおい、もうちっと楽しませてくれよ。」

  乳首とペニスをどう弄り回せば相手がもっとも気持ちいいのか。それをこの1ヶ月で散々知り尽くした獣郎太は、もはや相手がイこうとするタイミングでそれを中断するなど造作もない事だ。

  突然昂りを押さえつけられたまま中断された快楽に気の抜けた声を出しながらも、してやったようにニカッと笑う獣郎太に、こちらは苦虫を噛み潰したような表情をする事しか出来ない。

  椅子から姫抱きで無理やり連れ出され、ベットへと下ろされて、そのままかぶりつかれるようにキスをされると、同時にシャツとズボンを脱がされ、あっという間にあられもない姿を晒す羽目となる。

  獣郎太も堪えきれないとばかりにシャツを脱ぎさり、同時にズボンもベットの外へと乱雑に放り投げると、既にテントを作ったトランクスの先端には大きな染みが浮かび上がっており、彼の性欲のつよさがとても良く伺えた。

  「あのさ・・・」

  「ん・・・?なんだ?改まって」

  「・・・いつもは俺たち、お互い手とか、お前は俺の太腿でヌキ合って終わるだろ?」

  「そうだな・・・」

  「それって味気無くないか?」

  「は?」

  唐突に相手が呟いた言葉。つまりは、お互い向き合って、裸にもなって、キスまでして。

  けれどその後、大抵太腿に腰振って終わったり、手で抜いたり、唯一手を付けているのは乳首くらいで、sexのレパートリーが少ないと、そういう意味だろう。

  「で、でもよ・・・何したらいいか分かんねぇし・・・尻は怖ぇんだろ?」

  「まぁ、でもAVとか見るとさ、色々やってるだろ?・・・それで俺、ちょっと調べて見て・・・」

  確かにAV等を見ると、それはそれは色々な事を思い付いてやっていたりする。

  例えば様々な体位で突いたり、何度も手だけでイカせたり。

  けれどそれは女相手でできる事であって、男同士となると、互いに知識は殆ど無い。唯一思い浮かべるのは尻を使った性交であるが、それは相手の事を考慮して遠慮しており、もはや言い出せない空気が出来上がっていて、同様にフェラも、その延長線上で獣郎太からは提案出来ずにいた。

  「ち、ちょっとお前、仰向けになれ」

  「お、俺がか?な、何するんだよ」

  「いいから!」

  「お・・・おぅ・・・」

  突然仰向けになれと言われて困惑する獣郎太を他所に、相手も相手で何やらとても緊張しているようだった。

  言われた通り仰向けにベットへと寝そべると、意を決したように、相手が背を低くする。

  「う、動くなよ?」

  「っお、おまっ!?」

  何が行われるのだろうかと内心ハラハラしていた獣郎太。そんな獣郎太に一言呟いた相手が顔を近付けていったのは、獣郎太のペットポトルと同じくらい大きなペニスだった。

  まさかと思って声を出そうとした瞬間、舌を出して、皮に半分包まれた勃起の先端を遠慮がちにパクリと舐められる。今までとは全く違う快感に声を失っている獣郎太を尻目に、相手の行為はどんどん大胆になっていった。

  「ん、じゅる、くちゅ、ジュルル、んふ、むは」

  「ぅぁぁぁ・・・ゃ、ゃべぇよ・・・き、気持ち、ぃっーー」

  惚けたように口を開けて頬を赤くし、瞼が痙攣する。亀頭全体を柔らかい肉が蕩けるように包み込み、同時に熱い舌がナメクジのようにゆっくりと雁や裏筋を舐めまわした。

  それは未だ童貞である獣郎太にとって未経験の快感。初めてのフェラを相手にやってもらえるとは思っておらず、興奮が高まっていった。

  「んじゅ、ちゅる、くちゅ、ん、むは、はぁ、」

  「あ、あ、すげっ、な、なんだこれ、か、かける、すげーーっ!」

  半分も飲み込めないペニスであるが、少しでも全体的に気持ちよくなってほしいと、口を離して根元からアイスをしゃぶる様に舐め上げる。

  同時に獣郎太の力の抜けた毛深い太腿をガバリと広げ、精子を今にも吐き出さんと脈動する鶏卵程の陰嚢へも舌を這わせた。尻から太腿のラインを優しく撫で、舌先でゆっくりとなぞるように皺を伸ばす。片手はペニスの根元を擦れ立て、膝を曲げた獣郎太は、足全体をガクガクと震わせていた。

  もう一度その昂りのままペニスへと食らいつけば、必死に耐えていた射精がスグそこに迫ってしまう。

  下半身を見れば、蒸気した瞳でこちらを見上げる相手の姿。

  我慢など出来るはずも無かった。

  「あ"っだ、駄目だ翔っ!い、イクッ!も、もうイッチまうから口っーーはなっーーっん"ん"っ!」

  イク瞬間、どうにか自らのペニスに食らいつく相手を外そうと腕を伸ばしたが、その掌に指を絡ませられ、抵抗しようにも出来なかった。

  口だけでグポグポと音を立てて激しく吸引する相手にもはや限界が訪れ、顔をぐんと上げて腰を突き出す。

  「んぶっ!ジュルルルルっ、んぐ、んぐ、んぶ、ん」

  「あ"〜〜っ!あ"〜〜〜っ!」

  喉の奥から掠れた声を出す獣郎太。

  翔はただ吐き出される精子を零すまいと必死に飲み込み、苦くて喉に絡みつく粘液に吐き出しそうになるも、生理的な涙を流しながらそれを飲み干していった。

  ペニスの根元の筋肉が水を通すホースのように脈動している。それは何度も何度も精子を送り出し、まるで永遠とも思えるほどの射精が行われ続けた。

  数十秒の射精が終わり、やっと全てを飲み込んでも、まだ相手は口を離さなかった。根本から指を使って、尿道に残った精子を搾り出し、そして吸い付く。ジュルルルルと音を立てて吸われる度に腰を痙攣させる獣郎太は、言葉では言い表せない猛烈な多幸感に包まれていた。

  「・・・はぁ・・・はぁ・・・やべ・・・」

  「どうだ?初めてのフェラ。」

  「気持ちよすぎだ・・・」

  「まだまだいけるよな?」

  獣郎太の反応に満足したのか、少々ご機嫌な表情で顔を見上げてくる相手。そんな相手に艶めかしくそう問われると、鼻の下を伸ばし、何故だか今以上に期待に胸が踊ってしまった。正直気持ちいいという次元を越え、まだ身体にその余韻が残っている。奉仕される喜びとでも言うのだろうか、とにかく、出したばかりだと言うのに獣郎太のペニスはまたギンとそそり立ち、興奮に萎えることを知らないようにも見えた。

  「ま、まだなんかしてくれんのか・・・?」

  「ふふ・・・実はな、結構時間掛かったけどさ。」

  「っ!?」

  そう言って相手が取り出したのは、タオルケットとボトルに入ったローション。何をするつもりなのかと、思わずベットの上に胡座を掻き、背筋をスっと伸ばして期待に胸を踊らせる。相手は獣郎太の目の前まで来るとローションを少量手に取り、そしてそれをあろう事か自らの尻穴に塗りたくり始める。

  恥ずかしいのだろう。入口を見せないよう前から股の間に手を差し込んで弄り始めた相手の顔は、恥辱と照れに赤く染まってい

  た。

  一方、それを食い入るように見つめる獣郎太の細い瞳は開ききって充血し、鼻穴は何度もヒクヒクと蠢いて開いていた。

  胡座を掻いた股の間でそそり立つのは、まだそこまで使い込まれていない大きな勃起、それは何度もビクビクと元気よくしゃくり上げると、先端からドロリと大粒の蜜を垂らし、無様に糸を作っている。

  ふと、慣らしている相手の様子が気になって問いかけた。

  「な、なぁ・・・?」

  「・・・ちょっとまて・・・も、ちょっと・・・く、慣らさないと、お前のは大きすぎるから・・・っ!」

  「あ、いや、あのよ・・・・・・お、俺がその・・・さ、触ってみても・・・いいか?なんて・・・」

  「へ、へぇ!?」

  獣郎太の提案に、アナルをひたすら慣らしていた相手の表情が真っ赤に染まり驚愕する。明らかに動揺しているようで、手は止まり、口は半開きで何度も瞬きを繰り返していた。

  別に別段変な事を聞いた訳では無いだろう。むしろ相手のアナルにはそれ相応の興味があるし、弄って見たいと思うのは自然な事だった。

  少し身を乗り出すようにしてゴクリと息を飲むと、相手は慌てたように瞳を揺らす。

  「な、ななな何言ってんだっ!だ、第一、腸内洗浄したとは言え、排泄口だぞ!?汚いと思わないのか!?」

  「そんなの・・・今からチンコ入れるってのに気にしてるわけ無ぇだろ!そ、それに、お前のケツ穴なら、端っから汚ねぇなんて思ってねぇよ・・・!」

  「っ・・・!?」

  正直獣郎太にそんな提案をされるとは想定外だった。流石に洗っているとはいえ他人の尻穴に触りたい等と言い出すなんてありえないと思い込んでいたので、心の整理というものがついていない。

  ともすれば、興奮した面持ちでありながら、真剣味を帯びた相手の視線に射抜かれるように見つめられると、翔は言葉を失ってい息を飲む。

  元々獣郎太の提案に対してのみ、言い寄られると断れない自分にとって、もはやいくら悩もうと答えは決まっているも同然だった。

  「わ、分かったけど・・・や、優しくな?お、俺が調べた方法教えるから、そ、その通りやれよ?」

  「お、おうよ!!」

  鼻から蒸気でも噴出するのではないかと言うほど息を吐きながら呟いた獣郎太に、気恥ずかしさから視線を逸らして腰を落としていく。

  仰向けになって寝そべると、股を開いて自らの恥ずかしい部分を全て晒してしまっている状態になり、今にも顔を覆いたい気分だ。しかし数秒息を吐くと、意を決して腕を取り去る、するとこちらにも伝わってくるほど獣郎太の興奮したような感嘆の声が聞こえて、尚更気恥ずかしさが襲い掛かってきた。

  「ま、まずはローションを多めに手に取って」

  「おう・・・」

  「しっかりと指に慣らしたら、尻穴の周りをマッサージする見たいに優しく撫でる・・・」

  「こ、こうか?」

  「ん、そ、そんな、か、感じだっ・・・」

  獣郎太の毛むくじゃらで太い指が、相手の未熟な肛門の周りをクルクルと指先で優しくなぞる。括約筋がヒクヒクと震えているのが直に指先に伝わり、口を一文字のように噤んでふるふると快感に耐える相手の姿が良く見えた。

  強ばって動かない相手を配慮して、空いた掌に指を絡ませてやる。その瞬間安心感からかフッと全身の力が抜け、肛門も指を受け入れようとあからさまに脱力し始めた。

  「次は・・・入れていいのか?」

  「・・・・・・い、1本だけっーーひっ!」

  言葉を放てそうにない相手にこちらから質問してリードしてやると、目をぎゅっと閉じて耐える相手が首を縦にゆっくりと振った。なんとか声を出そうとした相手に食い付き気味で指をアナルへと挿入し始めると、まるでそれを拒否するかのように括約筋が引き締まるが、ローションのお陰かそんな抵抗も無意味のまま、徐々に指が飲み込まれていく感覚がする。

  熱くて、肉が蠢いている感覚がよくわかった。ゴクリと唾を飲み込んで、接合部分を見つめる目がギンギンと充血する。ローション用に用意した筈のタオルが、もはや獣郎太の絶え間ない我慢汁に濡れてしまっていて、その役割を果たしていない。

  おもむろに指先を動かして中を掻いてみる。相手は歯を食いしばって異物感に耐えており、言葉を放つこと自体忘れているようだ。

  ハァハァと息を乱しながら、クチュクチュと拡張を続ける。指一本だけでは勿論足りないので、2本、せめて3本入るほどまでしっかり解さなければペニスの挿入は不可能に思えた。

  獣郎太自体の指が太いので3本でも相手にとったらキツいだろうが、残念ながらペニスはその一回り太く、倍の長さがある。ペットポトルの様とはよく言ったもので、同じラクビーの仲間内でも獣郎太のペニスは有名だった。

  ここに来てステータスだと思っていた巨根が、こんなに恨めしいとは思ったこともない。冷静に考えると、女性でも獣郎太のペニスを見たら戦慄して挿入を諦めるだろう。男同士ならば自慢できる逸物でも、実際行為に及ぶ際には男として約立たずとは皮肉な話である。

  「あっ・・・!?」

  「っん!?ど、どうかしたか?」

  「や、・・・そ、そこ・・・た、多分前立せ・・・っ・・・金玉の裏辺りが、い、一応気持ちいいとこ・・・らしい?」

  「ど、どこだ、こ、ここか?」

  「んあっ!?」

  唐突に掠れた声を出した相手。まさかどこか痛かっただろうかと一旦指を止めると、どうやらそれは勘違いで、むしろ荒く息を吐く相手の良いところを刺激したらしい。もっとも本人自体まだ不確定な感覚だったらしく、疑問形であるが、言われた通り金玉の裏辺りを意識して関節を曲げ、指の腹で撫でるように刺激すると、ビクンと震えた相手の肛門が、きゅんと指先を締め付けた。どうやら上手くいったらしい。ともすれば考える事は一つ、そこが気持ちいいのなら、重点的に刺激してやりたくなるのが恋人というものだ。

  「あっ、あっ、あっ、やっ、な、なんか、へ、変だ!ち、チンコがビリビリってっ!?」

  「き、気持ちいいのかっ?」

  「き、気持ちいいっ・・・かもっ!」

  曖昧な返答なのは、相手自身、まだアナルからの快感に慣れていないという事と、今下半身を巡るこの感覚が快感なのか、それが分からないからだろう。

  しかし、シーツをぎゅっと握り締め、刺激するたび甘い声を出すその姿は、それを快感だと感じている証拠にも思えた。

  そろそろ良いかと指を2本に増やしてみる。突然増えた質量にビクリと震えて目を見開いた相手は、どこか虚空を見つめ、そしてすぐ様また目を瞑り、喉の奥から掠れた声を吐き出した。

  「あ、や、無理っ・・・へ、変になるっ!こ、怖いっ・・・じゅうろっ・・・!」

  「大丈夫だ。ゆっくり息吐いて力抜け。な?」

  仰向けになる相手の側に、自分も横向きで寝そべってやり、そっと腕枕して掌に指を絡ませる。相手は目尻から涙を流しながら獣郎太の首に腕を回し、言われた通り震えながらも息を吐き出して力を抜いていった。

  それを確認すると、そのまま唇に柔らかくキスを落として、優しく前立腺をマッサージし始める。また力が入ってしまわないようにゆっくりと、あまり強く刺激しないように。

  

  次第に穴は拡がっていき、ついに3本目の指が飲み込まれていく。お互い早く結ばれたいとは思っていたが、しかしここで焦ってしまえば、このセックスの行く末が最悪な結末になる事は簡単に理解出来ていた。

  長く濃厚なキスをして誤魔化しているが、もはやペニスが痛いくらいに勃起し刺激を求めている。獣郎太は何度も頭の中で我慢我慢我慢と念仏のように呟いていた。

  「じゅうろっ・・・も、いいよ・・・」

  「はぁ・・・はぁ・・・」

  「そろそろ・・・大丈夫・・・」

  「い、いいのか?」

  相手は切なげに揺れる瞳を向けながらコクリと小さく頷いた。待ちに待った時間の訪れに、獣郎太はゴクリと喉を慣らしてい身体を起こす。

  見れば、その股の間でギンギンにそそり立つペニスがいつもより大きく感じるのは気のせいか。その根元を軽く擦りたてながら相手の下半身でひざ立ちすると、あまりの緊張に、ドクンドクンと心臓が張り裂けそうになるのを堪えられなかった。

  「ゆ、ゆっくりな?」

  「わ、わかってる。」

  股を開き、自らの尻臀を両手で開いて見せる相手。その姿があまりにも欲情的過ぎて、実際今にも襲いかかってしまいそうだ。

  しかしそれを理性でなんとか抑制し、その巨根にローションを塗りたくってアナルの入り口にピトリとくっつければ。

  「う、あぁあああっ、ふぐぅ!」

  「だ、大丈夫か?!」

  「だい、じょうぶ、だからっ・・・そのままっ」

  正直張り裂けそうな痛さが肛門から襲ってくる。それと同時に熱すぎるペニスがまるで焼きごてのようで、本当にこれを全て中に収めることが出来るのか心の中は不安しかない。

  しかし、繋がりたい気持ちを捨てきれる訳もなく、出来る限り平静を装って掠れた声を出した。深呼吸して、全身の力を抜いていく。

  「い、いくぞ・・・」

  「ぐっ・・・ふぅぅぅっ!」

  獣郎太が腰を突き出す。徐々にペニスが埋没していく感覚が確かにある。獣郎太は出来るだけローションを切らさないようにペニスへと上から垂らし、そして無理そうならば一旦腰を離し、そしてまた突き出し始める。それを繰り返した。

  その甲斐あってか、明らかに目に見えて埋没し始める亀頭。最も太く大きい亀頭の半分が入ると、全て入り切るまであともう少しだ。

  ローションの力もあって、途中まで挿入してしまえば、あとは滑りの力でゆっくりと、だが確実にペニスが飲み込まれていく。

  「んはぁぁっ!」

  「おっ、ふ!」

  そして亀頭で最も張り出した雁の部分が飲み込まれると、あとはズルズルと、吸い込まれるようにペニスが中へと入っていく。

  指では届く事が無かった、まだ未開拓の部分まで、ゆっくりと、締りの強い肉を押し広げ、そして獣郎太のペニスの形に吸い付く。その感覚に思わず腰を浮かして叫んだ相手、きゅんと魔羅全体に腸壁が密着し、肉壁のつぶつぶが亀頭の1番気持ちいい所をコリコリと刺激する。それは所謂カズノコ天井と言うものだろうか。兎にも角にも、今まで体験した事が無いような強すぎる快感に、獣郎太は唇を尖らせて惚けた様に目を細めていた。

  「すげっ・・・こ、こんなのっ、すぐイッチまうっ!か、かけるっ、そんな締め付けんな!」

  「はっ、はっ、はっ、む、っりぃっ!はふっ、は、くあっ」

  あまりにも強い締め付けと吸い付きに、今にも射精してしまいそうになって、まだ半分も挿入していないのにそれを中断する。どうやら相手は息を吐くのに精一杯で、力を抜くなんて事に気を回してられないらしい。

  獣郎太も獣郎太で、深く息を吐いて一度射精感を弱めようと努力する。ただでさえ腸壁が蠢いているのに、今ほんの少しでも自ら腰を動かしたら、先程のフェラ以上に精子を吐き出してしまいそうだ。

  相手の表情もキツいようだし、なんとかお互い誤魔化すように、手を握り締め、そっと身体を撫でて時間を潰す。

  「キツいか・・・?」

  「はっ、ちょっと、動くとっ、キツい。・・・お前のチンコ・・・無駄にデカすぎるんだよっ!」

  「む、無駄は余計だっつぅの!・・・・・・でも、半分も入ったな・・・ここまでくりゃ」

  「ちょ、っちょっと待てっ!ま、まだ半分なのかっ!?」

  「えっ!?お、おう・・・」

  「・・・・・・・・・俺、死ぬかも・・・」

  獣郎太が半分も、と呟いた所で、相手が目を見開き焦ったように言葉を吐いた。どうやら既に全て入っていると思っていたらしい。それを肯定すると、絶句したように唖然とし、そして虚空を見つめながら諦めたかのように呟いた。

  「い、いや!半分も入ったんだから残りも大丈夫だって・・・」

  「うう・・・こんなのが出たり入ったりしたら、俺の腹は突き破られるぞ・・・」

  「きょ、極力優しくするって・・・」

  「・・・信用出来ない。」

  額から汗を流し、神に祈るような表情で眉を潜める相手。腹を撫でてみれば、獣郎太の魔羅の形が僅かに浮き出ていて、改めてその大きさを実感させられる。動いては居ないがとてつもなく熱く、そして硬い質量。入れるのはまだ可能かもしれない。しかしこれが動き出したらと思うと不安しかなかった。

  「いけるか?」

  「うん・・・っ」

  しかしそれでも、獣郎太と身も心も繋がってみたい。どんなに不安でも、お互いが掌を絡め合えば、それだけで心が強くなる気がして、そのまま挿入を再開することにした。

  少し慣れてきたのか、今回は上手く力を抜くことが出来ている。奥へ奥へと進んでいくに連れて、やはり腹の中を満たす異物感に掠れた声を出すものの、それも束の間。いつの間にか全てのペニスが中に入ってしまうと、獣郎太は密着した腰に相手の手を誘導して、しっかりとペニスが根元まで入ったことを知らせた。

  「あ"っ・・・!」

  「全部入ったな。」

  ドクンドクンと、自分とは違う心臓の鼓動を下半身から感じる。確かにそこにある質量。自分とは違う体温。熱くて、火傷しそうだけれど、それと比例した多幸感が全身を支配する。やっと完全に繋がる事が出来た。それがとても嬉しくて。

  額から汗を流しながら、獣郎太はニッカリと歯を見せて笑った。男臭くもあり、人を安心させるカッコイイ笑顔でもあった。

  握られた手が解放されると、自分の下腹部に触れてみる。まるで赤ん坊が腹の中に宿っているような感覚だった。

  「な、なんか変な気分だ・・・」

  「ん?」

  「あんなでかいの・・・マジで入ったんだな・・・」

  「おう。ほれ。わかるか?」

  「あひゃあっ!?」

  「お?」

  「ひ、い、いきなり、う、動くからっ!」

  感慨深く呟く相手に、少しの戯れのつもりで腰を左右に振ってみると、瞬間、相手が顎をしゃくり上げてビクンと震え、素っ頓狂な声を出した。

  それは明らかに今までの苦しげな声とは違っていて、どちらかと言えばそう、まるで感じている時の声にも思えた。

  焦りながら言葉を放ち、何とか誤魔化そうとする相手、それに少し意地の悪い、悪戯を思いついた子供のようなニヤけ顔を見せた獣郎太は、もう一度、今度は意図的に腰を左右に振ってみる。

  「んひゃぁっ!?」

  「なんだ?コイツがいいのか?」

  「ちっ、ちがくてっーーおほぉっ!」

  どうやら直腸の一番奥、所謂S字結腸を擦られるのが堪らないらしい。亀頭の先端ですり潰すように腰を動かしてみると、面白い程に身体が跳ねて腸壁が締め付けるものだから、とても塩梅が良く見える。ペニス全体で中を拡げるので拡張のついでにもなって獣郎太は何度もそれを繰り返した。

  「ほれほれ。」

  「うあぁっ!やだ、っ、これっ!からだ、ぞくぞくってっ!」

  身体を襲う未知の感覚に、自らの身体を抱き締めるようにする相手。ふと、それを見た獣郎太は、そんな相手の腕を強引に引き寄せると、対面座位の態勢へと体位を変える。そうすることによって何かに縋り付きたくてしょうが無い相手が獣郎太へと抱き着き、いつもは素直じゃない相手の可愛らしい部分を堪能することが出来た。

  「そろそろっ・・・動かすぞっ?」

  「まっ!ひぃぃっ!」

  腰を左右に動かした事によって、どうやら相手のアナルもそこそこ解れてきたようだ。一言耳元で呟いてやりながら、相手の柔らかい尻をがっしりとその大きな手のひらで掴むと、そのまま持ち上げるように相手の腰を動かし、ゆっくりとペニスを引き抜こうとする。

  身体から抜けていく異物感と、痺れるように股間へと内側から響く謎の感覚に全身が怖ばり、思わず気の抜けた声を発ししてしまう。ギュッと締め付けられるペニスが心地よく、そして腸内のネットリとした熱さが吸い付いついてきて、獣郎太もすぐ様余裕を失っていった。

  「すげっ・・・なんだこりゃっ・・・っ!気持ちよすぎだ!」

  「んぁぁっ、は、は、苦しっ、へんになるっ!」

  男の尻穴とはここまで気持ちいいものなのだろうか。いや、それはきっと気持ちの問題もあるかもしれない。好きな相手とだから興奮が高まり、こうして強く快感を得られるのだろう。

  二人は、そのまま倒れるようにすると、お互い正常位で向き合う形となった。

  息を荒く吐きながら腰だけを動かし、1度限界まで抜き去ったペニスをまた挿入していく。肉壁が亀頭に押し広げられグニグニと開拓されていく感覚がペニス越しに感じられ、それがまた強い快感を生み出してたまらない気持ちになった。

  「ケツっ・・・拡がってっ・・・!」

  「は、は、また、抜くぞ?」

  「んぉぉぉっ!!」

  ゴリゴリと雁が腸壁を抉っていく。気を抜けば意識を失ってしまいそうな快感が下半身から響いてくる。しっかりと解したお陰か痛みはまったく無く、いつの間にか違和感は明確な快楽に成り代わって、脳から溢れた快楽物質が身体全体に染み渡っていった。

  次第に腰の動きも早くなり、互いに求め合う声も強くなる。

  「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ!じゅうろっ!」

  「かけるっ、かけるっ、かけるぅ!も、イッチまうぅ!!」

  「んああああああ!!!」

  「がああああああ!!!」

  二人揃って絶頂に歯を食いしばり、ドクドクと下半身では熱いマグマが体内を犯していく。今確かに2人は繋がっていて、今確かに2人は一つになった。そんな感覚が全身を支配していく。

  奥の奥、精子を一滴も零すまいと腰を深く押し付けて射精する獣郎太。

  尻穴を締め付け、根元からしっかりと一滴残らず搾り取ろうとする翔。

  射精は数十秒にも及び、翔のペニスからも少量の精子がトロリと垂れていた。

  今まで人知れず慣らすために弄っていたお陰か、それともこれも、相手と繋がれた興奮によるものなのだろうか。

  「はぁ・・・はぁ・・・」

  「んあ・・・あ・・・」

  やっと全てを出し終え、微睡みに震える瞳がお互い交差し合う。何を言うでもなく、獣郎太は口を近づけ、相手は静かに唇を開けた。

  まだ下半身の熱は収まりきっていない。当然の如く、この興奮はまだ冷めることを知らない。

  「もっかい・・・いいか?」

  「・・・・・・・・・」

  キスが終わり、息を乱しながら呟いた獣郎太に、相手はただ無言のまま頷いた。

  身体はとてもキツい。しかしそれ以上に相手ともっと繋がりたい。

  ゆっくりと腰を動かした獣郎太に、また静かな喘ぎか部屋に響き始める。

  営みはまだ始まったばかりだ。

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