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家に着くと、俺はすぐに風呂場へ直行した。熱いシャワーを浴びながら、今日一日の出来事を反芻する。
男だった自分が、AIで作り出したエリスの体になり、そして魔法少女として戦った。
あまりにも非現実的で、まるで長い夢を見ているかのようだ。
湯船に浸かり、滑らかな肌に触れる。この体が、本当に自分のものになったのだと、改めて実感する。
風呂から上がると、部屋のベッドに、あの黒いウサギのぬいぐるみ、クロベエがちょこんと座っていた。
普段はただのぬいぐるみであるはずのクロベエが、赤い瞳を瞬かせながら話しかけてきた。
俺はピンク色の、ごく一般的な部屋着に着替えていた。
「だから言っただろう、油断するなって。まったく、見ていてヒヤヒヤしたよ、パステル」
クロベエの声には、どこか呆れたような響きがあった。俺はバツが悪くて視線を逸らす。
「ご、ごめん……まさか、あんな攻撃を受けるなんて思わなくて……」
「まあいいさ。でも、今日のことはいい教訓になっただろう?」
クロベエはそう言うと、いつもの無表情に戻った。
俺は意を決して、今日、戦っている最中に聞こえたあの声について尋ねてみた。
「なあ、クロベエ……戦闘中に、私の中から、別の声が聞こえたんだけど……あれって、何だったんだ?」
クロベエは少しだけ瞳を細めた。
「あれはね、キミの中に眠っている、本当のエリスの声だよ。訳あって、今は完全に目覚めることができないでいる」
「本当の……エリス……?」
頭が混乱する。俺はAIでエリスを作り出したはずだ。それが、本当に存在しているというのか?
「そう。キミとの契約は、本当のエリスとの契約でもあるんだ。だから、これからも少しずつキミの意思と、本物のエリスの意思が混ざることになるだろう」
呆然とした俺に、クロベエは続ける。
「そして、今回の戦いで、キミは面白い能力を手に入れたね」
「能力……?」
「相手から受けた攻撃を、自分のものにできる能力さ。たとえば、ザ・ケロから受けたケロトランスビーム。あれを使えるようになってる」
「えっ、じゃあ……」
「そう。カエル化ビームだ。さらに、あの魔法の拘束テープ(紫)も、“自分の能力”として再現できるようになってる。ただし、テープの色はパステルカラーの水色に変わってるけどね」
驚きに目を見開いた。あれは敵の技だったはずなのに、自分のものにできたのか。
「でも注意が必要だよ。相手が強すぎると効かない。ザ・ケロのときみたいに、弱っていないと効果が薄い」
それでも、新しい能力の獲得は嬉しかった。
「ありがとう、クロベエ!」
「フン。これは元々、本物のエリスが持っていた力の一部だからね」
その言葉は、まるでどこか遠くで、ツンデレなエリスが小さく笑っているかのように響いた。
「ところで……自分自身にも使えるの?」
「できるよ。自分をカエルに変えたり、水色の魔法の拘束テープをはめたり、魔法刻印スーツを着ることも可能だ。もちろん、元に戻るのも自由」
「マジか!じゃあ……試してみようかな」
俺は早速、自分の力を使ってみた。
まずは、自らの意思で魔法刻印スーツを具現化。黒のエナメル質で、身体にぴったりとフィットし、首・手首・足首には水色の魔法の拘束テープが現れる。
紋章やQRコードは、もうどこにもなかった。
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「……すごい、完璧にイメージ通り!」
次に、カエル化ビームを自分に照射。淡い緑色の光に包まれ、体がみるみる縮んでいく――
そして、手のひらサイズのカエルになった。顔と髪型はそのまま、しかし体は完全にカエル。
黒いエナメル質のスーツも、パステルカラーの水色に変色し、水色のテープだけがそのまま残っていた。
「ゲロゲロ……(本当にカエルになっちゃった……)」
俺はベッドの上をぴょんぴょんと跳ね、遠くで見つめるクロベエと目が合った。
「……ふっ、楽しそうでなによりだよ」
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やがて、再び人間の姿に戻り、俺は満足げに息をついた。
この力なら、きっと――まだ何かできるはずだ。
一方その頃、闇の組織の本拠地では……
巨大な玉座に座る大魔王が、怒りの声を響かせていた。玉座の前にひざまずいているのは、傷だらけの姿になったメイカ。
スターライト・パステルの砲撃で負傷し、腕には包帯が巻かれている。
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「バッカモーン!拠点の一つ、土の地下牢からせっかく捕えた人間と魔法少女を失うとは!それでも我が四天王の一角か!」
メイカは顔を青ざめさせていた。
「申し訳ございません、大魔王様……」
傍らでは、他の四天王たちがクスクスと笑っている。
「ククク……奴は四天王の中でも最弱……」
「拠点の一つを失うとは、四天王の面汚しよ」
大魔王は再び怒声をあげた。
「次の失敗は許されん。よいな、土の四天王、メイカよ!」
メイカは震える声で応えた。
「ははーっ……次こそは必ず!」
その場を足早に去っていくメイカ。
「マオちゃん。次はミーがいっていいかな?」
軽やかで風を感じさせる声。そう言ったのは、風の四天王・セレスだった。
この「マオちゃん」という呼び名を使うのは、四天王の中でもセレスだけである。
「……よかろう。相変わらず軽いな、セレス」
「へへっ、ありがと、マオちゃん♪」
大魔王は不機嫌そうにため息をつき、セレスは飄々とした笑みを浮かべ、闇の中へと消えていった。
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