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第8話 クロベエとの反省会

  家に着くと、俺はすぐに風呂場へ直行した。熱いシャワーを浴びながら、今日一日の出来事を反芻する。

  男だった自分が、AIで作り出したエリスの体になり、そして魔法少女として戦った。

  あまりにも非現実的で、まるで長い夢を見ているかのようだ。

  湯船に浸かり、滑らかな肌に触れる。この体が、本当に自分のものになったのだと、改めて実感する。

  風呂から上がると、部屋のベッドに、あの黒いウサギのぬいぐるみ、クロベエがちょこんと座っていた。

  普段はただのぬいぐるみであるはずのクロベエが、赤い瞳を瞬かせながら話しかけてきた。

  俺はピンク色の、ごく一般的な部屋着に着替えていた。

  「だから言っただろう、油断するなって。まったく、見ていてヒヤヒヤしたよ、パステル」

  クロベエの声には、どこか呆れたような響きがあった。俺はバツが悪くて視線を逸らす。

  「ご、ごめん……まさか、あんな攻撃を受けるなんて思わなくて……」

  「まあいいさ。でも、今日のことはいい教訓になっただろう?」

  クロベエはそう言うと、いつもの無表情に戻った。

  俺は意を決して、今日、戦っている最中に聞こえたあの声について尋ねてみた。

  「なあ、クロベエ……戦闘中に、私の中から、別の声が聞こえたんだけど……あれって、何だったんだ?」

  クロベエは少しだけ瞳を細めた。

  「あれはね、キミの中に眠っている、本当のエリスの声だよ。訳あって、今は完全に目覚めることができないでいる」

  「本当の……エリス……?」

  頭が混乱する。俺はAIでエリスを作り出したはずだ。それが、本当に存在しているというのか?

  「そう。キミとの契約は、本当のエリスとの契約でもあるんだ。だから、これからも少しずつキミの意思と、本物のエリスの意思が混ざることになるだろう」

  呆然とした俺に、クロベエは続ける。

  「そして、今回の戦いで、キミは面白い能力を手に入れたね」

  「能力……?」

  「相手から受けた攻撃を、自分のものにできる能力さ。たとえば、ザ・ケロから受けたケロトランスビーム。あれを使えるようになってる」

  「えっ、じゃあ……」

  「そう。カエル化ビームだ。さらに、あの魔法の拘束テープ(紫)も、“自分の能力”として再現できるようになってる。ただし、テープの色はパステルカラーの水色に変わってるけどね」

  驚きに目を見開いた。あれは敵の技だったはずなのに、自分のものにできたのか。

  「でも注意が必要だよ。相手が強すぎると効かない。ザ・ケロのときみたいに、弱っていないと効果が薄い」

  それでも、新しい能力の獲得は嬉しかった。

  「ありがとう、クロベエ!」

  「フン。これは元々、本物のエリスが持っていた力の一部だからね」

  その言葉は、まるでどこか遠くで、ツンデレなエリスが小さく笑っているかのように響いた。

  「ところで……自分自身にも使えるの?」

  「できるよ。自分をカエルに変えたり、水色の魔法の拘束テープをはめたり、魔法刻印スーツを着ることも可能だ。もちろん、元に戻るのも自由」

  「マジか!じゃあ……試してみようかな」

  俺は早速、自分の力を使ってみた。

  まずは、自らの意思で魔法刻印スーツを具現化。黒のエナメル質で、身体にぴったりとフィットし、首・手首・足首には水色の魔法の拘束テープが現れる。

  紋章やQRコードは、もうどこにもなかった。

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  「……すごい、完璧にイメージ通り!」

  次に、カエル化ビームを自分に照射。淡い緑色の光に包まれ、体がみるみる縮んでいく――

  そして、手のひらサイズのカエルになった。顔と髪型はそのまま、しかし体は完全にカエル。

  黒いエナメル質のスーツも、パステルカラーの水色に変色し、水色のテープだけがそのまま残っていた。

  「ゲロゲロ……(本当にカエルになっちゃった……)」

  俺はベッドの上をぴょんぴょんと跳ね、遠くで見つめるクロベエと目が合った。

  「……ふっ、楽しそうでなによりだよ」

  [uploadedimage:21502333]

  やがて、再び人間の姿に戻り、俺は満足げに息をついた。

  この力なら、きっと――まだ何かできるはずだ。

  一方その頃、闇の組織の本拠地では……

  巨大な玉座に座る大魔王が、怒りの声を響かせていた。玉座の前にひざまずいているのは、傷だらけの姿になったメイカ。

  スターライト・パステルの砲撃で負傷し、腕には包帯が巻かれている。

  [uploadedimage:21502340]

  「バッカモーン!拠点の一つ、土の地下牢からせっかく捕えた人間と魔法少女を失うとは!それでも我が四天王の一角か!」

  メイカは顔を青ざめさせていた。

  「申し訳ございません、大魔王様……」

  傍らでは、他の四天王たちがクスクスと笑っている。

  「ククク……奴は四天王の中でも最弱……」

  「拠点の一つを失うとは、四天王の面汚しよ」

  大魔王は再び怒声をあげた。

  「次の失敗は許されん。よいな、土の四天王、メイカよ!」

  メイカは震える声で応えた。

  「ははーっ……次こそは必ず!」

  その場を足早に去っていくメイカ。

  「マオちゃん。次はミーがいっていいかな?」

  軽やかで風を感じさせる声。そう言ったのは、風の四天王・セレスだった。

  この「マオちゃん」という呼び名を使うのは、四天王の中でもセレスだけである。

  「……よかろう。相変わらず軽いな、セレス」

  「へへっ、ありがと、マオちゃん♪」

  大魔王は不機嫌そうにため息をつき、セレスは飄々とした笑みを浮かべ、闇の中へと消えていった。

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