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第9話 真夏の決戦! タコ怪人ザ・オクト

  「はぁ……今日は、平和そう」

  日曜の昼下がり。強い日差しが照りつける市民プールの入り口で、エリスは眩しそうに目を細めた。

  今日はナギとユキの3人で、軽く泳いで汗を流そうという約束だった。

  制服姿で集合した3人は、受付を済ませて更衣室へと向かう。

  

  「エリスちゃん、スクール水着なの? 真面目だね~」

  ユキがほんわかと笑うと、ナギが「わたしも!」と手を挙げた。

  「だって、これ指定でしょ? 意外と泳ぎやすいんだよ、これ」

  「えっ、私だけ恥ずかしいじゃん……!」

  顔を赤くしながら、エリスは手にしたタオルで髪を押さえた。

  

  *

  

  プールサイドは賑わっていた。子どもたちの笑い声、風に揺れるパラソル。

  3人はシャワーを浴び、準備運動をしてから軽く泳ぎ始めた。

  「ねえ、今日はのんびりしようね。バトルとか抜きで……」

  エリスがそう呟いた、そのときだった。

  

  プールの水面が、一部、黒く濁った。

  「え……? 水……?」

  

  ぼこぼこと音を立てて、水中から何かが浮かび上がる。

  赤黒くて、吸盤があり、無数の脚がうねる。

  「う、うそでしょ!? タコ……!? 人型の……」

  

  それは、明らかにただの海洋生物ではなかった。

  全身がぬるりと濡れた皮膚に包まれた、巨大なタコのような怪人――「ザ・オクト」。

  そのすぐ後ろに、フードを深くかぶった長身の青年が立っていた。

  風のように静かな声で呟く。

  

  「力の片鱗を見せてみろ、ザ・オクト。あくまで“観察”だ――暴れていいぞ」

  

  「ハハハ、任せろセレス様……!」

  

  「逃げて!!」

  エリスが叫んだ瞬間、ザ・オクトの腕から黒い墨が発射された。

  

  「きゃっ!?」

  「っく、目が……!」

  

  ユキとナギに墨が直撃したその瞬間、彼女たちの身体がふわりと浮かび上がり――

  次の瞬間、全長50センチほどの赤いタコへと変化していた。

  だが、髪型はそれぞれのまま。顔立ちも、どこかそのままだ。

  [uploadedimage:21508022]

  「ナギ!? ユキ!? なにこれ……!」

  

  エリスはパニックになりながらも、物陰へ走り込んだ。

  (今、変身するしかない……!)

  

  手を胸元に当てる。

  

  「スターライト、インプリズム――!」

  [uploadedimage:21507956]

  光が迸り、黒髪が淡いピンクへと染まりながら風に舞う。

  白を基調とした衣装に包まれ、胸元には水色のリボン、背中のリボンは風に揺れていた。

  スターライト・パステル、参上。

  「タコなんかに、負けてたまるもんですか!」

  [uploadedimage:21507967]

  戦いは激しかった。

  ザ・オクトは墨で視界を奪い、吸盤つきの触手を自在に操る。

  だが、スターライト・パステルも負けてはいない。

  彼女は光を操り、まばゆい閃光で墨を拡散させると、水中に飛び込んだ。

  (カエルになったときの感覚……水中での動き、わかる!)

  

  水流を利用して素早く間合いを詰め、両手に集めた光の球を敵の胴に叩き込む。

  

  「これで、終わりっ!」

  

  眩い閃光が走り、ザ・オクトの身体が爆ぜるように崩れ、そして――霧のように消えた。

  

  「……契約はここまでか」

  遠くから、セレスの声が微かに響いた。

  

  タコにされていたユキとナギも、ゆっくりと人間の姿に戻っていった。

  「う、うわ……体が……」

  「わたし、今……なんだったの……?」

  

  パステルは何も言わず、物陰へと戻る。

  光が舞い、制服姿のエリスが戻ってきた。

  

  「エリスちゃん……どこに行ってたの?」

  「ちょっと、水、飲んじゃってて……ごめんね」

  にこっと笑ってごまかすと、ナギがぼやいた。

  

  「……あたし、タコになった夢を見た気がするんだけど……」

  

  *

  

  夕暮れの帰り道。制服に着替えた3人がプールをあとにする。

  その少し後ろで、クロベエがエリスの肩にぴょんと乗った。

  

  「タコ、か……ふむ。あの姿……」

  

  エリスが振り返ると、クロベエはすでに地面に跳ね降りて、黙って前を向いていた。

  

  *

  

  プールの裏手、誰にも気づかれない位置でセレスが静かに立っていた。

  フードを深くかぶり、口元に笑みを浮かべている。

  

  「なるほど……これが“スターライト・パステル”か」

  

  その声は風のようにかすかに響いて、すぐに消えた。

  

  ――次回へつづく。

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