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「はぁ……今日は、平和そう」
日曜の昼下がり。強い日差しが照りつける市民プールの入り口で、エリスは眩しそうに目を細めた。
今日はナギとユキの3人で、軽く泳いで汗を流そうという約束だった。
制服姿で集合した3人は、受付を済ませて更衣室へと向かう。
「エリスちゃん、スクール水着なの? 真面目だね~」
ユキがほんわかと笑うと、ナギが「わたしも!」と手を挙げた。
「だって、これ指定でしょ? 意外と泳ぎやすいんだよ、これ」
「えっ、私だけ恥ずかしいじゃん……!」
顔を赤くしながら、エリスは手にしたタオルで髪を押さえた。
*
プールサイドは賑わっていた。子どもたちの笑い声、風に揺れるパラソル。
3人はシャワーを浴び、準備運動をしてから軽く泳ぎ始めた。
「ねえ、今日はのんびりしようね。バトルとか抜きで……」
エリスがそう呟いた、そのときだった。
プールの水面が、一部、黒く濁った。
「え……? 水……?」
ぼこぼこと音を立てて、水中から何かが浮かび上がる。
赤黒くて、吸盤があり、無数の脚がうねる。
「う、うそでしょ!? タコ……!? 人型の……」
それは、明らかにただの海洋生物ではなかった。
全身がぬるりと濡れた皮膚に包まれた、巨大なタコのような怪人――「ザ・オクト」。
そのすぐ後ろに、フードを深くかぶった長身の青年が立っていた。
風のように静かな声で呟く。
「力の片鱗を見せてみろ、ザ・オクト。あくまで“観察”だ――暴れていいぞ」
「ハハハ、任せろセレス様……!」
「逃げて!!」
エリスが叫んだ瞬間、ザ・オクトの腕から黒い墨が発射された。
「きゃっ!?」
「っく、目が……!」
ユキとナギに墨が直撃したその瞬間、彼女たちの身体がふわりと浮かび上がり――
次の瞬間、全長50センチほどの赤いタコへと変化していた。
だが、髪型はそれぞれのまま。顔立ちも、どこかそのままだ。
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「ナギ!? ユキ!? なにこれ……!」
エリスはパニックになりながらも、物陰へ走り込んだ。
(今、変身するしかない……!)
手を胸元に当てる。
「スターライト、インプリズム――!」
[uploadedimage:21507956]
光が迸り、黒髪が淡いピンクへと染まりながら風に舞う。
白を基調とした衣装に包まれ、胸元には水色のリボン、背中のリボンは風に揺れていた。
スターライト・パステル、参上。
「タコなんかに、負けてたまるもんですか!」
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戦いは激しかった。
ザ・オクトは墨で視界を奪い、吸盤つきの触手を自在に操る。
だが、スターライト・パステルも負けてはいない。
彼女は光を操り、まばゆい閃光で墨を拡散させると、水中に飛び込んだ。
(カエルになったときの感覚……水中での動き、わかる!)
水流を利用して素早く間合いを詰め、両手に集めた光の球を敵の胴に叩き込む。
「これで、終わりっ!」
眩い閃光が走り、ザ・オクトの身体が爆ぜるように崩れ、そして――霧のように消えた。
「……契約はここまでか」
遠くから、セレスの声が微かに響いた。
タコにされていたユキとナギも、ゆっくりと人間の姿に戻っていった。
「う、うわ……体が……」
「わたし、今……なんだったの……?」
パステルは何も言わず、物陰へと戻る。
光が舞い、制服姿のエリスが戻ってきた。
「エリスちゃん……どこに行ってたの?」
「ちょっと、水、飲んじゃってて……ごめんね」
にこっと笑ってごまかすと、ナギがぼやいた。
「……あたし、タコになった夢を見た気がするんだけど……」
*
夕暮れの帰り道。制服に着替えた3人がプールをあとにする。
その少し後ろで、クロベエがエリスの肩にぴょんと乗った。
「タコ、か……ふむ。あの姿……」
エリスが振り返ると、クロベエはすでに地面に跳ね降りて、黙って前を向いていた。
*
プールの裏手、誰にも気づかれない位置でセレスが静かに立っていた。
フードを深くかぶり、口元に笑みを浮かべている。
「なるほど……これが“スターライト・パステル”か」
その声は風のようにかすかに響いて、すぐに消えた。
――次回へつづく。
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