AdAd
  
第13話 3人目の魔法少女

  意識がゆっくりと戻っていく。だが、その感覚はどこか湿っていて、冷たい。

  エリスは、うっすらと開けた瞳で自分の手を見る。いや、手ではない――カエルの前脚だった。

  「……また、カエル……」

  小さな体にため息をつくような気持ちで辺りを見渡す。そして、思わずその瞳が見開かれる。

  目の前には――人間の姿に戻されたナギがいた。

  白と黒のボーダー柄の囚人服に身を包み、無機質な壁の前に立たされている。

  「ナギ……!」

  パシャリ、パシャリ――

  シャッター音が響く。撮影していたのは、他でもないメイカだった。冷たく無機質な表情で、ナギのマグショットを淡々と撮り続ける。

  [uploadedimage:21513666]

  そして――

  「さあ、始めましょうか」

  メイカが指を弾くと、紫色に輝く魔法のリングがナギの首・両手首・足首に次々と装着される。

  次の瞬間、リングからドロリとした黒い液体が流れ出し、ナギの身体を覆っていく。

  「やだ……! やめてっ……!」

  しかし叫びも虚しく、艶のあるラバースーツが形成されていき、右胸には魔法陣とQRコードが刻まれた。

  [uploadedimage:21513670]

  「ふふ……あなたも“向こう側”へようこそ」

  リングから放たれる紫の閃光。ナギの体が一気に縮み、小さなカエルの姿に変わっていく。

  「ゲコゲコ……!?」

  黄色がかったカエルの肌に、短いボブヘア。

  顔の特徴と髪型を残したまま、ナギは完全に魔法カエルとなった。

  [uploadedimage:21513798]

  メイカがバブルを発生させ、その中にナギを閉じ込める。

  すでに捕らえられていたエリスと並び、二匹のカエルとなった魔法少女が泡の中で揺れていた。

  「フフフ……ついに捕まえたわね、魔法少女たち」

  メイカの口元に、ほくそ笑むような満足の笑みが浮かぶ。

  「今回のリングは特別製よ。私の魔力が続く限り、あなたたちは永遠にカエルのまま――」

  そう言うと、メイカは部屋の奥を指差す。

  「とくに、あなたのリングは特別仕様なのよ、星宮エリス。力の源は――あれ!」

  エリスが目を凝らすと、そこには、祭壇に飾られたラグビーボールほどの大きさの紫色の結晶があった。

  それが、あの「土の結晶」――大魔王から授かったという恐ろしい魔力の源だった。

  メイカは勝ち誇ったように言う。

  「この結晶からエナジーを吸い出して、私はさらに強くなるの。あなたたちの力も利用させてもらうわ」

  くるりと踵を返し、メイカは去っていった。

  [uploadedimage:21513676]

  静まり返った部屋。

  土の結晶を挟んで二匹のカエルは、バブル越しにお互いを見つめ合う。

  「ゲロゲロ……(どうしよう……)」

  「ゲコゲコ……(このままじゃ……)」

  絶望が二人の瞳ににじむ。

  (……エリス! 聞こえる?)

  その時、エリスの頭の中に声が響いた。本物のエリスの声だ。

  「残念だけど……今のあなたじゃ、私の力は引き出せない。結界が強すぎるわ」

  悔しそうな口調。それでもすぐに、静かな提案が返ってくる。

  「でも、クロベエとの通信なら――なんとか、できるかもしれない」

  (……お願い。クロベエたちに伝えて)

  そして――

  エリスの小さな身体に、微かな光が灯る。

  

  ◇ ◇ ◇

  その頃――

  クロベエとウインズは、ユキの元に現れていた。

  「あなたたち……誰?」

  クロベエは答えようとしたが、その赤い瞳が光り出し、空間に映像が投影される。

  そこに映ったのは、バブルに包まれた二匹のカエル、そして紫色に光る「土の結晶」。

  「……エリスちゃん……ナギちゃん……!」

  静かに、でも確かに、ユキの心が揺れた。

  そして、目に宿るのは、決意の炎だった。

  「私が……助ける。あの二人を……!」

  まっすぐクロベエを見据え、ユキは尋ねた。

  「私も、魔法少女になれるの?」

  クロベエは微笑んで頷く。

  「ああ、君にはその資格がある。ただし――君だけのマスコットが必要だ」

  「モチーフは……カッパがいい」

  その答えに、クロベエは再び光の粒となり、ユキの胸元へと吸い込まれていく。

  眩い光とともに――

  現れたのは、小さな緑色の河童のマスコット。

  「君の相棒、ナヴィールだ」

  そう告げられ、ユキは大きく息を吸う。

  「変身……! スターライト・インプリズム――!」

  青の光に包まれ、氷のように美しく、知性を感じさせる姿へと変身していく。

  [uploadedimage:21513698]

  「揺るがぬ知性、透きとおる意志――スターライト・シーファ!」

  [uploadedimage:21513700]

  その声が、夜の静寂に響き渡った――。

AdAd