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第15話 ミカの正体

  戦いを終えた私たちは、カエルの姿になったメイカを、ナギの家の広いリビングにある大きな水槽へと移した。

  透明なガラスの向こう――

  そこでは、紫色に変色したカエルが、悲痛な鳴き声を上げて泣き叫んでいた。

  かつて四天王として威風を放っていた姿は、もうどこにもなかった。

  「ゲロゲロ……ゲロゲロゲロ……!」

  「うーん、泣いてるみたいだけど……何を言ってるのか、さっぱりだね」

  ナギが困ったように水槽を覗き込む。

  [uploadedimage:21518357]

  私はふと、彼女がカエルになったことで、その魔力――とくに“土の力”を吸収できるのではないかと考え、能力を試してみた。

  だが、なぜか何の反応もない。

  「おかしいな……今までは、怪人の魔力を吸収できたのに……」

  首をかしげる私に、クロベエが胸元からひょこっと顔を出し、淡々とした声で言った。

  「それは、その“土の力”が、魔法少女としてのものだからだよ」

  「えっ!?」

  私もナギも、ユキも、そしてウインズやナヴィールまでもが目を見開く。

  「魔法少女……?」

  ナギが信じられないという顔でクロベエを見つめた。

  クロベエは赤い瞳を光らせながら、ゆっくりと語り出す。

  「メイカは、元々は普通の人間だった。そして、かつては魔法少女としての力を持っていた。

  だが、大魔王に操られ、強化された“変身能力”を与えられたんだ。

  いまの姿や怪人を生み出す能力は大魔王の力によるものだけど、“土の力”の根源は、彼女が魔法少女だった頃のもの。

  だから、エリス。君が吸収できるのは“怪人化した存在”の魔力だけ。魔法少女としての根源的な魔力は、吸収できない」

  ……まさか、敵だった四天王の一人が、元は魔法少女だったなんて――

  私は言葉を失っていた。

  「でも……人間の姿に戻す方法は、ないの?」

  ユキが、哀れな目で水槽のカエルを見つめながら呟いた。

  「方法は、ひとつだけある」

  クロベエが私をじっと見つめて言った。

  「エリス、君が彼女の魔力を吸収し続けながら、“人間の姿に戻れ”と強く念ずるんだ。

  魔力の源を断ちながら、同時に形態変化の魔法を上書きする。

  ただし、失敗すれば――君の魔力に反動が返ってくる可能性もある」

  一瞬、私は迷った。

  だが、水槽の中で泣き続けるカエルのメイカを見て、心を決める。

  「……わかった。やってみるよ」

  私は手をかざし、能力を発動。

  水槽の中から、カエルのメイカをふわりと浮かび上がらせ、空中で静止させた。

  「戻れ……人間の姿に」

  私は強く念じながら、魔力の吸収を開始する。

  するとメイカの身体が水色の光に包まれ――

  次の瞬間、その光がパッと弾けた。

  現れたのは――

  艶のある黒いラバースーツに身を包まれ、首・手首・足首にパステル水色の魔法リングを帯びた、月島ミカだった。

  [uploadedimage:21518363]

  右胸には、水色の魔法紋様が浮かんでいる。

  「……ミカ……」

  彼女は宙に浮いたまま虚ろな目をしていた。意識はまだ戻っていないようだ。

  私は彼女の足元に落ちていたスマートフォンを拾い、顔認証を試す。

  ロックは、あっさりと解除された。

  中を確認すると、フォルダには信じがたい写真が大量に保存されていた――

  囚人服を着せられた人々。黒いラバースーツに拘束された姿。

  そして――カエルに変えられた人々の姿まで。

  その中には、私とナギの姿までもが、はっきりと写っていた。

  「……これ、どういうことだよ……ミカ……!」

  私は震える手でスマホを握りしめる。だが、ミカは沈黙を守る。

  その瞳は、以前学校で見たときと同じ、どこか遠くを見るような虚ろな光を湛えていた。

  「ッ……!」

  私は意を決して、再び能力を使い、彼女を再び紫色のカエルへと戻し、水槽へ戻した。

  リングをつけたままのカエルは、水槽の底でじっと動かなくなった。

  そのときだった。

  ミカのスマートフォンの画面に、突如として怪しい紋章が浮かび上がる。

  それは、大魔王のものと思われるものだった。

  すぐに暗転し、画面には「Welcome」の文字。

  その直後、スマホは完全に初期化されてしまった。

  [uploadedimage:21518371]

  「これは……」

  クロベエが、冷静に解説する。

  「“大魔王のMDM”だね。

  企業や学校で使われてるモバイル端末管理システムさ。

  紛失時には位置情報取得や端末ロック、初期化ができて、情報漏洩を防ぐやつ。

  つまり……このスマホを使ってたってことは、もう君たちの情報は、大魔王側に漏れてるってことになる」

  クロベエは静かに水槽の中のカエル――ミカを見つめた。

  [uploadedimage:21518379]

  その胸の奥――うっすらと光るコアを。

  「――力が、欲しいか?」

  その瞬間、ミカの体内のコアが、まるで応えるように微かに光を放った。

  クロベエは満足げに目を細め、静かに、そして力強く言った。

  「さあ、行こうか。魔法少女協会へ」

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