他の誰かじゃない、この腕で

  「……なぁ、宇佐見。ひとつだけ、聞いてもいいか?」

  激しい夜が過ぎ、翌朝......

  勝那の腕に包まれたまま、宇佐見はそっと頷いた。

  「……昨日言ってた、その、昔の相手……まだ、忘れられてないのか?」

  「……え?」

  「いや、ちげぇ……っ。こんな醜いとこ見せるはずじゃ…っ…」

  勝那の声が、ぐしゃぐしゃに揺れていた。

  「オレ……キスも、セックスも、昨日が初めてでさ。

  なのに、お前は……その……経験あるって聞いて、なんか、頭ん中ぐるぐるしちまって……」

  宇佐見は、少しだけ目を見開き、そして――くすっと微笑んだ。

  「……かつなさん、もしかして……ヤキモチ?」

  「っ……ちが……っ、いや、ちがわねぇけどっ!!」

  ばつが悪そうに目を背ける勝那。

  だが、その指先は正直だった。

  そっと宇佐見の髪を撫でて、背中を抱き寄せ、身体を包み込むように――

  自分のぬくもりを刻みつけるように、離さなかった。

  「……オレ、ほんとは、優しくしたいだけなんだよ」

  「うん……知ってる」

  「けど……心のどっかで、“他の誰かのこと思い出してんのかも”って……思っちまったら、

  なんか、こう……たまんねぇんだ……っ」

  宇佐見は、何も言わずに唇を寄せた。

  小さな唇が、勝那の大きな唇に触れる。

  「じゃあさ、かつなさん?

  ボクの身体……かつなさんが、上書きしてよ」

  「……え?」

  「昔の誰かに触れられたところ、全部。

  かつなさんの手で、口で……それから、...その...お、おちんちん...で。

  いまのボクに残ってる記憶、全部、優しく溶かして……かつなさんだけのものにして」

  「……宇佐見……」

  勝那の胸の奥で、何かが溶ける音がした。

  世界でたった一人の愛する人が、こんなにもまっすぐに、自分を望んでくれている。

  自分の未熟さを、このごつごつした肉体を、醜い感情さえも抱きしめてくれている。

  だからこそ――絶対に、痛くなんてしない。

  「あぁ……わかった。

  優しく……でも、絶対、逃がさねぇくらいに、ゆっくり深く抱いて、奥まで刻み込んでやる」

  「うん……♡」

  そうして、勝那の指が、宇佐見の太腿の間をなぞる。

  ぴく、とウサ耳が揺れた。

  「ここ……昨日より、気持ちよさそうだな」

  「だって……かつなさんに触れられてるんだもん……♡ 感じちゃう……♡」

  勝那は、そっと足を開かせる。

  まるで壊れ物を扱うように、腰に手を回し、優しく引き寄せて――

  自身の肉槍を、ゆっくりとあてがった。

  「……入れるぞ」

  「うん……奥で、ちゃんと受け止めるから……♡」

  ゆっくり、ゆっくりと。

  愛を注ぐように、勝那の肉槍が、宇佐見の奥へと沈んでいく。

  「んぅっ……♡ んっ……すっごく、深い……♡」

  「痛くないか……?」

  「ん……♡ だいじょうぶ……♡ かつなさんは……優しいから……♡」

  そう囁かれた瞬間、勝那の胸がぎゅう、と苦しくなる。

  もっと触れたい。

  もっと感じさせたい。

  宇佐見の記憶から、“他の誰か”なんて全て消えてしまうくらいに。

  「……もっと、好きって伝える」

  そう言って、勝那は動き始めた。

  ゆっくりと、けれど確実に奥まで届くように、宇佐見を抱き締めながら。

  「んっ♡ あぁっ、やぁ……っ♡ 奥、あたってる……♡ きもちいい…♡ 上手だよ、かつなさんっ…♡」

  「もっと、かわいい声、きかせてくれ……おまえの声、オレ、大好きだから……」

  宇佐見は涙を浮かべながら、笑った。

  「……ボクも……かつなさんに、抱かれてる今が……一番幸せ……♡」

  朝は静かに、長く――

  二人の時間だけが、甘く、とろけるように続いていた。