戦闘に集中できない。こんなこと前代未聞だ。
心臓の鼓動は未だ落ち着かず、熱の余韻は肌に残っていた。
ルパは、ホテルの一室の中で、汗ばんだ手で、ベッドシーツを握りながら座っていた。
「……ねえ、あのさ」
「ん?」
漂泊者は隣に腰を下ろして、ルパの髪に指を滑らせている。
「さっきの戦い、あたし……なんか変だったでしょ。ごめん…集中できてなかったっていうか……」
「……うん。珍しく、私の顔ばっかり見てた」
ルパはぴくっと跳ねた。
「ちょ、言うなよ!? ああもう……だって、相棒がかっこよすぎるのが悪いんだ!」
「ふふ」
笑った声が近い。肩が触れ合うほどの距離で、漂泊者はルパの目を見つめてくる。
「でも、私も変だったよ」
「……え?」
「ルパの動き。鋭いのに、どこか甘くて。仲間として戦ってたのに…追いかけたくなるような……欲しくなるような、そんな感じ」
「……そ、それって……」
「好きってこと」
耳まで真っ赤に染まったルパが、何も言えず固まっている。
「ねえ、ルパ」
「……な、なに」
「今夜……いい?」
鼓膜が震えた。小さな問いかけは、灯火よりも熱く、喉の奥まで焼きついた。
「…………うん」
やっとの思いで頷くと、漂泊者の手がそっと頬に添えられた。
そのまま唇が、額に、頬に、耳に──やがて口づけは、そっと唇に重なる。
「んっ……ん……っ」
軽く触れるだけだったはずが、ルパの身体はビクリと跳ねる。
キスが深くなるたびに、熱が全身を駆け巡っていった。
「すご……なんか、すごい……」
「感じやすいんだね、ルパ」
「ち、違っ、あいぼうが……えっちだから……っ」
頬を真っ赤に染めて、ルパは抗議するが、その言葉さえ甘く震えていた。
漂泊者の手が、ルパの身体を這う。
指先が腹部を撫で、鎖骨の下に触れた瞬間──ルパは小さく声を漏らした。
「っ……くぅ、そこ……やば……」
「ここ、弱い?」
「ばか……そういうの……聞くなよ……っ」
言葉とは裏腹に、身体は素直だった。
背中が反り、手がシーツを掴む。
「……かわいい」
「かわいくない……っ、ばか……あいぼぉっ……」
「じゃあ、……ルパの、いちばん感じるところ、教えて。
ルパがかわいいってこと…わからせてあげる」
「~~っ!」
その瞬間、ルパは目を見開いて、真っ赤になったまま唇を噛んだ。
「……いじわる……」
「でも、嫌じゃないよね?」
答えは、もうキスで塞がれた。
その夜、何度も熱が交わり、名を呼び合った。
指先が、吐息が、熱と震えを追いかけるたびに、二人の距離は何重にも溶けていった。
「……あいぼっ…っ…、もっとぉ……」
ルパが、かすれた声で囁いたとき、漂泊者はそっと唇を彼女の胸元に落とした。
「うん……」
熱はまだ終わらない。
心も、身体も、すべて溶かしあうように──夜が深くなるほど、二人の時間は濃くなっていった。
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朝、微かに鳥の声が聞こえる。
ルパは布団の中で目を覚ました。身体のあちこちが、ほんのり痺れるように熱い。
隣では、漂泊者が静かに眠っていた。穏やかな表情で。
「……ほんと、好きすぎて困る……」
ルパはそっと唇を寄せて、漂泊者のまつげにキスを落とした。
「おはよう。あたしの、いちばん強くて、いちばん優しい人」
返事はまだない。けれど──
その唇の端が、少しだけ、嬉しそうに緩んだのを、ルパは見逃さなかった。