⑫信仰心とその理由

  ドサッ。

  最後尾を歩いていたシュタルクが雪の中に崩れ落ちた。

  「シュタルク! 大丈夫!?」

  「シュタルク様、起きてください。寝たら死にますよ。」

  「……遭難しちゃったね。」

  北側諸国デッケ地方。先が見えないほどの吹雪が、山を覆いつくす。

  吐く息が白く散ってすぐに凍り、体温がどんどん奪われていく。

  「とりあえず、シュタルクは私が運ぶね。……意外と重い、何が詰まってるんだよ」

  狼の姿で背中にシュタルクを乗せ、アルタは雪をかき分ける。

  「この先に山小屋があったはず……」

  「それ、何十年前の記憶ですか……」

  フリーレンの言葉を信じて進むと、やがて吹雪の向こうに小さな影が見えた。

  古びた登山者用の山小屋だった。

  「先客が居るようだね。まあ、しょうがないか。」

  そう言ってフリーレンが扉を開けた。

  ────

  「武道僧のクラフトだ。よろしくな。」

  「よろしくです。」

  「よろしくお願いします。」

  暖炉に火をつけながら、各自が名を名乗り、凍えて目を覚まさないシュタルクをどうするか話し出す。

  結局、クラフトがシュタルクと同衾し、人肌で体温を上げることになった。

  アルタは床が抜けない程度に体を大きくし、フリーレンとフェルンと一緒に毛皮の暖かさで凌ぐ。

  ガバッ

  「うわぁ!!なんだこのおっさん!?」

  しばらくして、シュタルクが目を覚ます。

  「なんだとはなんだ。せっかく俺の肉体で温めてやってたのに。」

  「いやおかしいだろ!普通、俺の方にアルタの毛皮をくれるだろ!!」

  ふとシュタルクがクラフトの体に目をやる。

  「おっさん、良い身体してんな…いや、そういう意味じゃなく。

  その鍛え抜かれた筋肉……おっさんめちゃくちゃ強いだろ。」

  「ふっ、昔の話さ。もう誰も覚えちゃいない。」

  「そうだろフリーレン」と服を着ながら続ける。

  どこか寂しげに理解者を探すように。

  ────

  冬の寒さも落ち着き、日の光が降り積もった雪を少しづつとかす。

  アルタは、小動物が蓄えた木の実を拝借するために山を歩いていた。

  「せっかく集めたのに、食べずに忘れちゃうなんてもったいないなぁ」

  木の実が入った袋を抱えて山小屋に帰っていると、クラフトとフリーレンが話しているのが見えた。

  「やっほ!たくさん集めてきたよ!」

  袋を掲げて自慢するアルタにクラフトが返す

  「おう、お疲れ。…せっかくだから、アルタにも聞こうかな。」

  「ん?何の話?」

  クラフトがフリーレンに目配せをして続ける。

  「アルタは、女神さまを信じるか?」

  「え、急に僧侶っぽい質問~」

  アルタは少し考えて答えた。

  「ん~、女神さまは、今すぐこの空腹や寒さをどうにかしてくれたりしないでしょ?

  帰ったら料理作ってくれるし、暖炉の火もつけてくれるフェルンの方が信頼できる!!」

  「はっはは!若いな…だがいい答えだ。」

  「若いというか、幼いくらいでしょ」

  エルフ2人が呆れたように笑う。

  「頑張ってるフェルンは天国で女神さまに褒めてもらうべきだな」

  「そうだね。…さて、確かにお腹も減ってきたし、そろそろ帰ろっか」

  「うん!」

  アルタは大きく返事をして、木の実の入った袋を切り株に置き忘れて歩きだした。