ドサッ。
最後尾を歩いていたシュタルクが雪の中に崩れ落ちた。
「シュタルク! 大丈夫!?」
「シュタルク様、起きてください。寝たら死にますよ。」
「……遭難しちゃったね。」
北側諸国デッケ地方。先が見えないほどの吹雪が、山を覆いつくす。
吐く息が白く散ってすぐに凍り、体温がどんどん奪われていく。
「とりあえず、シュタルクは私が運ぶね。……意外と重い、何が詰まってるんだよ」
狼の姿で背中にシュタルクを乗せ、アルタは雪をかき分ける。
「この先に山小屋があったはず……」
「それ、何十年前の記憶ですか……」
フリーレンの言葉を信じて進むと、やがて吹雪の向こうに小さな影が見えた。
古びた登山者用の山小屋だった。
「先客が居るようだね。まあ、しょうがないか。」
そう言ってフリーレンが扉を開けた。
────
「武道僧のクラフトだ。よろしくな。」
「よろしくです。」
「よろしくお願いします。」
暖炉に火をつけながら、各自が名を名乗り、凍えて目を覚まさないシュタルクをどうするか話し出す。
結局、クラフトがシュタルクと同衾し、人肌で体温を上げることになった。
アルタは床が抜けない程度に体を大きくし、フリーレンとフェルンと一緒に毛皮の暖かさで凌ぐ。
ガバッ
「うわぁ!!なんだこのおっさん!?」
しばらくして、シュタルクが目を覚ます。
「なんだとはなんだ。せっかく俺の肉体で温めてやってたのに。」
「いやおかしいだろ!普通、俺の方にアルタの毛皮をくれるだろ!!」
ふとシュタルクがクラフトの体に目をやる。
「おっさん、良い身体してんな…いや、そういう意味じゃなく。
その鍛え抜かれた筋肉……おっさんめちゃくちゃ強いだろ。」
「ふっ、昔の話さ。もう誰も覚えちゃいない。」
「そうだろフリーレン」と服を着ながら続ける。
どこか寂しげに理解者を探すように。
────
冬の寒さも落ち着き、日の光が降り積もった雪を少しづつとかす。
アルタは、小動物が蓄えた木の実を拝借するために山を歩いていた。
「せっかく集めたのに、食べずに忘れちゃうなんてもったいないなぁ」
木の実が入った袋を抱えて山小屋に帰っていると、クラフトとフリーレンが話しているのが見えた。
「やっほ!たくさん集めてきたよ!」
袋を掲げて自慢するアルタにクラフトが返す
「おう、お疲れ。…せっかくだから、アルタにも聞こうかな。」
「ん?何の話?」
クラフトがフリーレンに目配せをして続ける。
「アルタは、女神さまを信じるか?」
「え、急に僧侶っぽい質問~」
アルタは少し考えて答えた。
「ん~、女神さまは、今すぐこの空腹や寒さをどうにかしてくれたりしないでしょ?
帰ったら料理作ってくれるし、暖炉の火もつけてくれるフェルンの方が信頼できる!!」
「はっはは!若いな…だがいい答えだ。」
「若いというか、幼いくらいでしょ」
エルフ2人が呆れたように笑う。
「頑張ってるフェルンは天国で女神さまに褒めてもらうべきだな」
「そうだね。…さて、確かにお腹も減ってきたし、そろそろ帰ろっか」
「うん!」
アルタは大きく返事をして、木の実の入った袋を切り株に置き忘れて歩きだした。