Introduction
2036年、降り止まない雨。宗方陸(むなかた りく)は、恋人のSOSを「傍観」し、死に追いやったという深い罪悪感の中にいた。耳元で繰り返される亡き恋人の最期の声から逃れるように、彼はSNSで見つけた「花丘村移住プログラム」へと縋り付く。
そこで出会ったのは、プログラムの主催者、熊野幸太郎(くまの こうたろう)。村の再生に奔走する幸太郎と共に過ごすうち、陸は彼の内側に自分と同じ「欠落」を感じ、次第に強く惹かれていく。
幸太郎もまた、消えない呪いを抱えていた。
かつて怒りに任せ、大親友に放った「目の前からいなくなれ」という拒絶の言葉。直後、「神隠し」に遭い、行方不明となってしまったのだ。
言えなかった陸と、言い過ぎてしまった幸太郎。
花丘村で、二人の後悔が交錯する。過去に縛られている「観測者」の陸は、幸太郎の傷に触れたとき、自らの足で一歩を踏み出すことを決意するが──。