俺は、全てを傍観していた。何かの物語を遠巻きに見つめる【[[rb:観測者 > よわむし]]】なのだと言い聞かせて。
当たり障りの無いように。
自分に飛び火しないように。
関係ない。何も知らない。
そうすることで自分を守った。それが俺の精一杯の処世術だった。
──最後に聞いた恋人の電話越しの声。
前兆はいくらでもあったはずだった。現に、彼は前々から俺に相談を何度も持ちかけてきていた。その度に当たり障りの無い返答をしていた。
本当はこうしたら良いんじゃないかという考えはあったけど、それでも俺は観測者として振る舞った。
結果、彼の悩みは解決しないだけでなく悪化していく一方を辿った。けれども、俺は何も気の利いた声を掛けられなかった。
今になって思う。気の利いた言葉じゃなくても、自分の想いを話していれば何かが違ったのかもしれないと。
とある大雨の日突然かかってきた一通の着信。どうしたのだろうかと心配で電話を取った。端末から聞こえた無機質な雨音。そして、その合間から微かに聞こえた──陸、ごめん──という一言。
その言葉を最後に彼は──亡くなった
──大洪水を起こした川に飛び込み、そのまま溺れてしまった──風の噂でそう聞いた。
それ以来、雨が降る度その記憶が胸を締め付ける。いや、それだけじゃない。自分を責める彼の声がずっと聞こえてしまう。これは呪いなのだ。この先消えることは無いのだろう。
今日もしつこい雨が降っている。梅雨だから仕方のないことなのだろうが、とても苦しい。
気を紛らわそうとSNSを開いてみる。幸せな生活をしているように見える人、見知らぬ誰かに罵詈雑言を飛ばしている人、趣味を全開に好きを発信するインフルエンサー......
そんな情報の集積を流して見ていると、とある投稿が目に入った。
「地方移住プログラム、参加者募集」そう書かれた投稿は、日頃から仲良くしているクマゴンさんの投稿だった。
俺は直ぐに詳細を確認した。内容は、彼の故郷である花丘村にて空き家に入居し、村の活性化に携わるという物だった。
いつもなら気になっても何もしない俺だが、今日は何故か行動力があった。
「クマゴンさんこんにちは。この内容に興味があるのですが、お話伺えますか?」
そうコメントを残し、SNSを閉じた。