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ベスティアに平和が戻った翌日。
町には以前にも増して活気が戻り、人々の笑顔があふれていた。
そんな朝、運営からのお知らせが届く。
空に淡い光の文字が浮かび上がる。
『期間限定イベント開催!』
『納涼花火大会イベント』
『開催場所:イベント特設会場』
『参加者には限定ファンドレを配布します』
「イベントだ!」
リュミエが目を輝かせる。
「戦いが終わったと思ったら、今度はお祭りなんて。」
ユリシアも思わず笑みをこぼした。
直後、二人の身体が優しい光に包まれる。
装備が淡く輝き、姿が変わっていく。
「わぁ……」
ユリシアは思わず声を漏らした。
いつものハイプリースト装備ではない。
涼しげな浴衣を思わせるファンドレ。
帯や髪飾りも夏祭り仕様になっている。
「似合ってる。」
リュミエが素直に言う。
「そ、そう?」
少し照れながら微笑むユリシア。
リュミエもまた、浴衣風にアレンジされた騎士用ファンドレへと変わっていた。
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「普段と雰囲気が違うね。」
「期間限定らしいわ。」
二人は顔を見合わせ、祭りの賑わう中央広場へ向かった。
◆
広場には色鮮やかな屋台が立ち並び、多くの冒険者や住民で賑わっていた。
焼き串の香ばしい匂い。
甘い果実飴。
子どもたちの笑い声。
「すごい人だね。」
「イベントは皆楽しみにしていたのね。」
その時だった。
「リュミエさん!」
元気な声が飛んでくる。
振り向くと、レント、ショータ、カノの3人が駆け寄ってきた。
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「おー! 3人とも浴衣じゃん!」
「似合ってる!」
「限定ファンドレって聞いて急いで来ちゃった!」
3人はいつもの調子で大はしゃぎしている。
「みんなも楽しんでるみたいね。」
「もちろん!」
ショータが射的の屋台を指差した。
「勝負しようぜ!」
◆
射的では景品を狙って歓声が上がる。
「やった!」
レントが小さなぬいぐるみを手に笑う。
一方のショータは狙いが外れ続け、周囲を笑わせていた。
「なんで当たらないんだー!」
カノは器用に景品を射抜き、得意げに胸を張る。
「ふふっ。」
ユリシアも思わず笑う。
続いて金魚すくい。
リュミエは真剣な表情で挑むものの、あっという間に紙が破れてしまう。
「あ……。」
「下手ね。」
ユリシアが小さく笑う。
「そっちは?」
「見てて。」
そう言って器用に一匹すくい上げる。
「すごい!」
「これくらい簡単よ。」
夏祭りの穏やかな時間が流れていく。
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◆
日が沈み始める頃。
人々は自然と広場の中央へ集まり始めた。
「もうすぐ始まるみたい。」
空を見上げるユリシア。
やがて。
ヒュゥゥ……
夜空へ一筋の光が昇る。
ドォン――
色鮮やかな大輪の花火が夜空いっぱいに咲いた。
「きれい……」
思わずユリシアが息を呑む。
その横でリュミエも夜空を見上げていた。
「こういうイベントも悪くないな。」
「ええ。」
二人はしばらく何も話さず、花火を眺め続けた。
夜空を彩る光。
人々の歓声。
平和になったベスティアだからこそ迎えられた夏祭りだった。
◆
花火も終盤を迎え、人混みも少し落ち着き始める。
その時、いつの間にかセラが2人の隣に立っていた。
「楽しめた?」
「セラ!」
「あなたも来てたのね。」
少女は静かに頷く。
「ええ。」
しばらく三人で花火を眺める。
静かな時間が流れる。
ふと、ユリシアが口を開いた。
「ねえ、セラ。」
「あなたって、これからもずっと私たちを案内してくれるの?」
セラは答えなかった。
一拍。
ほんの少しだけ夜空を見上げる。
そして静かに微笑んだ。
「……さあ、どうかしらね。」
いつものような即答ではなかった。
「案内役なんて、いつまで続くか分からないものよ。」
そう言って笑う。
けれど、その笑顔はどこかぎこちなかった。
「なんだ。」
リュミエが苦笑する。
「辞めちゃうのかと思った。」
セラはもう一度だけ笑う。
「……さあ、どうかしらね。」
同じ言葉。
同じ笑顔。
しかし、その表情にはどこか寂しさが滲んでいるようにも見えた。
「変なの。」
ユリシアは首を傾げたが、それ以上は深く考えなかった。
やがて最後の花火が夜空に咲く。
ドォォン――
大輪の光がベスティアの空を照らした。
人々の歓声が夜空へ響く。
セラも静かに花火を見上げていた。
その横顔は、どこか儚く見えた。
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◆
祭りが終わり、人々は名残惜しそうに家路につく。
「明日はいよいよ出発ね。」
「次はプエリタか。」
二人は夜風を感じながら歩き出す。
平和なベスティアを後にして。
新たな冒険が、もうすぐ始まろうとしていた。
――第8話 了
第9話 8/11(火・祝)公開予定
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