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第68話

  今日はなんだか、ハンデットの様子がおかしい。

  「それでさー」

  いつものように。くっつくように寄り添って、ベッドに並んで座って。隣にいるハンデットに話を続けながら、何気なくその手を取った。

  軍人さんは、外出する時も軍服を着なくちゃいけないらしいけど、別にうちではそんな格好をしなくたっていいから。今のハンデットの格好は、軍服を脱いだシャツ一枚。そのシャツも腕まくりをするように、肘の辺りまで袖を捲っている。…俺は、ハンデットのこの格好が、密かに凄く好きだった。純粋に格好良いし、それに、…こんなハンデットの姿を見られるのは、きっと俺だけだって知ってるから。

  因みに脱いだ軍服は、ハンガーで俺の部屋の壁に掛けてあるんだけど。…それを見るだけで、なんだか嬉しい。ああ、今俺の部屋にハンデットがいるんだな!って、その軍服を見るだけでも、そう想えるから。

  そんなことを想いながら、取った彼の腕に、自然と自分の腕を絡めて。そのまま、ふかふかの獣毛をなぞるように撫ぜた。こうしてて隣り合って座っている時は、つい、その腕の獣毛を撫ぜるように触ってしまう。…だって、ハンデットの獣毛はふかふかの艶々で、触ってて気持ち好いんだよ!

  ハンデットは、いつも休みの日には俺の家に来てくれて。最初は、父ちゃんや母ちゃんたちと、一階の店の方でクロケットを食べながら一緒に話す。お客さんが来たら俺は接客に回るんだけど、そんな時も、最近はハンデットも一緒に店を回してくれたりして。ハンデットの姿を見たお客さんに、『えっ、軍人さんが婿に来たの?』って驚かれて、母ちゃんが『そーなんだよー!格好良いだろ?ハンデットちゃんって言うんだよ』って、お客さんたちにハンデットのことを紹介してくれるのも、もう慣れた光景だ。…最早、うちの常連さんで、ハンデットのことを知らないひとはいないんじゃないだろうか。

  そんな風にして、店で過ごした後で。俺の部屋に来て、今度は二人で過ごす。と言っても、店の二階の更に上の、屋根裏部屋を改装した俺の部屋は狭いから、椅子を置ける場所なんてなくて。天井も低いし、だから背の高いハンデットは、立ってるのも大変だと思う。それもあって、俺のベッドに並んで座って話をするのが、この部屋での過ごし方だ。それはハンデットが初めて俺の部屋に来てくれてから今まで、ずっと変わってなくて、それが当たり前になってて。…だけど。

  

  「…ああ」

  今日のハンデットは、俺がそうやってハンデットにくっついて座っていると。…徐々に遠ざかっていってる気が、する。さっきまでは、隙間がないくらいにくっついていたと思うのに、いつの間にか俺たちの間には隙間が空いていて。あれ?って思って、もう一度くっつくと、いつの間にかまた、間が空いている。その繰り返しだ。

  それを現すように。ベッドの中心にいたはずの俺たちは、今やベッドの端まで移動していた。ハンデットが壁に寄り掛かるような体勢で、俺に枕を差し出してくる。どうやら、枕を踏みそうになってしまって、慌てて手に取ったみたいだ。別に、踏んだってよかったのに。…じゃなくて!

  「ハンデット?どうかした?」

  差し出された枕を思わず受け取って、そのまま抱っこするように抱えながら。壁に寄り掛かるハンデットを見上げるように、下から覗き込む。けれど、ハンデットの視線は何処か気まずそうに、俺から逸らされていて。…

  「何か怒ってる?俺、なにかした?」

  合わない目線に不安になって。そう口にしながら、頭の中で記憶を掘り返した。ハンデットにプロポーズしてもらったのは、少し前のことだ。二人で馬に乗って少し遠出したところで、結婚しようって言ってもらえて。それがすごく嬉しくって、勿論それを喜んで受けたのも、まだまだ記憶に新しい。何度も想い返しては、その嬉しさとハンデットの格好良さに、ベッドの上を転がってしまうことも度々あって。時にはベッドから落ちるほど転げてしまって、父ちゃんに怒られたこともある。

  その後には、伴侶の同伴可、っていうパーティーにも、婚約者として誘ってもらえたし。皆の前で、その、キスまでしてもらって。一気に、俺がハンデットの婚約者って知ってもらえたことも、恥ずかしかったけど、すごく嬉しかった。

  そんな嬉しくて、幸せな記憶は直ぐに思い出せるけれど。…そこから喧嘩とか、言い合いとかはした覚えがない。ずっと仲良くしてたと思うし、俺はハンデットと居られてずっと幸せだったんだけど。

  そんな疑問と不安が、顔に出ていたんだろうか。俺は気持ちがすぐ顔に出る、って、父ちゃんからも母ちゃんからも、ハンデットからだってよく言われていた。『だから安心する』、って優しくその金色の鋭い眼を細めながら、いつも頭を撫ぜてくれるハンデットは。今も、俺の顔を見て、俺の気持ちを察してくれたらしい。

  「あー!ああ、違えよ、別に怒ってねえ!」

  慌てたような大声が、部屋に響いた。わたわたと大きく手を振って、その手を俺へと差し伸べて。…けれど、その手は俺に触れる前に、躊躇うように握られて、下ろされてしまう。…怒ってないって言ったのに。いつもは、俺の頭を乱暴に、でも優しい手つきで撫ぜてくれる大きな手。それが、俺に触れないままで下ろされてしまったことに、無性に哀しくなって、思わず俯いた。なんだか泣きそうになるのを堪えて、わざと頬を膨らませて見せる。ハンデットは、…俺が泣いちゃうと、きっと言いたいことを我慢してしまうだろうから。それよりも、こうして分かりやすく拗ねて見せたほうが、安心して思っていたことを言ってくれる。そのくらい知ってるんだ、だって俺はハンデットのこと世界で一番大好きだから。

  それでも、俺の目が潤んでいるのだけは隠せてないんだろう。ハンデットが困り切った顔で、あー、とかうー、とか喉奥で頻りに唸る声が、部屋に響く。それから、がりがりと音を立てて頭を掻いて、俯き加減で口を開いた。

  「…だから、その」

  「うん」

  ぼそぼそとした声で、そこまで言って、また黙る。…どれだけ言いづらいことなんだろう。全身が強張りそうになりながら、ハンデットを見つめて相槌を打った。…心臓が、何だか痛い。覚悟を決めたように、ハンデットが顔を上げて、俺を見た。ただでさえ鋭い金色の眼が、射るように俺を見つめる。心臓が波打つ俺の前で、彼が大きく、口を開いて。

  「お、お前が傍にいるとだな!その…さ、触りたくなるんだよ!」

  

  黒色の獣毛すら、赤く染めそうな勢いで。ハンデットが怒鳴るような大声で、俺に言う。思ってもなかったその言葉に、涙も引っ込むくらいに内心で驚いて。ぽかん、て思わず目を丸くしながら、ハンデットを見つめた。…え、え、そんなこと?拍子抜けして、全身から力が抜けた。

  「な、なんだよもー!びっくりした!そんなの、俺に触りたかったら幾らでも触ればいいじゃん!何で今更、遠慮なんてするのさ!」

  安心の反動で、俺まで大声になってしまいながら、ハンデットの手を取って自分の頬に当てる。獣毛と同じ黒色をした肉球は、それでも思いの外すべすべとしていて、弾力がある。彼の手に頬を押し当てるようにして、その少しひんやりとして柔らかい感触を楽しんでいると、…ハンデットが絶句したように、俺を見ているのが分かった。いつもは鋭い、クリソベリルのような色をした眼をまん丸くして、俺を凝視している様に、俺もハンデットを見つめ返してしまう。

  「え。え、どうかした?」

  「…お前、意味が分かってて言ってるのか?いや分かってねえな、絶対」

  口にした疑問に自己完結しながら、ハンデットが大きくため息を吐いた。…ええ、俺何か悪いこと言った?触りたいなら触ればいいのにって言っただけじゃん!

  「え、意味なんて分かってるってば!ハンデットが俺に触りたいんでしょ?どこだって触っていいよ、ハンデットに触られて嫌なとこなんてないもん」

  そう言って、抱えていた枕を脇に置いてから、どうぞ!とばかりに大きく腕を開く。呆気にとられたようにぽかん、といつもは鋭い眼を丸く見開いたハンデットが、またも深いため息を吐いた。…ええ、なんで!?

  「…お前なあ…俺がどんだけ頑張って我慢してると…」

  「え、我慢?なにを?」

  そのまま、頭を抱えるようにして項垂れるハンデットに、抱き着くようにして覗き込めば。少しだけ眼を眇めたハンデットの、鋭い眼差しと目が合う。その眼が一瞬、…俺を捕らえるみたいに輝いて、心臓が大きく跳ねた。あ、って息だけの声が、喉から漏れる。

  ハンデットの手が、俺に伸びた。さっきは、自分から手に取って、頬に押し当ててたハンデットの指先。思いの外滑らかで、弾力のある肉球が、今度は俺の頬をなぞるように滑る。跳ねた心臓が、そのままどきどきと、全身に大きく鼓動を響かせていくのを感じる。

  俺の頬を包むように、彼の大きな手が頬に当てられた。もう片方の腕は、俺の身体に回っている。黒豹獣人のハンデットは、俺よりも身長も高ければ足も腕も長い。俺は横に肉付きがいいけれど、…そんな俺の身体も、彼の片腕の中にすっぽりと収まってしまう。いつもは、包み込むように俺を抱きしめてくれる彼の腕は、…今は押さえつけるように強かった。身動きすら取れないほどに抱き込まれて、心臓が爆ぜそうに高鳴っていく。…こんなに力強く抱きこまなくたって、逃げないのに。熱に浮かされるように熱くなっていく思考で、そんなことを想った。

  ハンデットの顔が近づいて、目を閉じようか開けたままにしようか少しだけ悩んだ。だって、俺のハンデットは世界一格好良い。…こんなことを言うと、フラフィーに『リジットさんの方が格好良い!』って言われて、ついどっちが格好良いかで言い合いになったりもするんだけど。どっちも譲らないからなあ、俺たち。でも、だって俺にとっては、ハンデットが世界一格好いいんだよ。俺にとって、世界一で、唯一のひと。

  唇が重なって、…間髪入れずに彼の舌が入ってきた。捩じ込むように入ってきたその舌に、少しだけ驚く。その、舌を絡めるようなキスも、今までだって勿論したことあるけど。…こんな風に、性急に舌を入れられることなんて、今までなかった。ざらりとした感触の舌が俺の舌に絡んで、強く吸われる。ぢゅ、って濡れた音が部屋に響いて、耳を打った。これだけで、頭の芯が蕩けていくみたいだ。

  キスをしたまま、ハンデットの手が、服の中に入ってくる。…あ、って想った。弾力のある肉球で、なぞるように膚に触れられると、それだけで背筋がぞくぞくする。…俺に触りたいって言ってたハンデットのの言葉が、脳裏を過ぎった。それが、どういう意味だったのか、漸く悟る。理解る。ハンデットが俺にとって初めての恋で、恋人なんだから、勿論こういうことをするのは彼が初めてだ。でも、流石にこの行為が何なのか、それくらいは知ってる。

  …ああ、そうか。ハンデットは、俺とこういうことをしたい、って想ってくれてたんだな。

  全身が心臓になったみたいに、どきどき響いて身体中が熱い。俺の身体を、膚を、確かめるようにハンデットの手が撫ぜていく。重なった唇も、絡んだ舌もそのままで、…こんなに長いキスをしたことなんて、初めてだった。その相手がハンデットだって言うことが、何よりも嬉しい。俺の初めては、恋も、恋人も、キスも、…それからこういうことも。全部、全部が彼なんだから。

  頭や背中に、ベッドが沈む感触で目を開けた。少しだけ目が潤んでいることに、そこで気づく。ぼやける視界のなかで、…ハンデットの顔が、間近にあった。今まで見たことないような、余裕のなさそうに切羽詰まった表情。その眼のなかに、…捕食にも似た支配欲が、透けて見えるようで。ぞくぞく、って背筋が震えた。これは、勿論恐怖なんかじゃない。これは、…きっと興奮だ。

  彼の手が、俺の胸に這う。そのまま握るように指が乳肉に沈んで、乱暴に揉みしだかれる。いつもは獣毛に隠れている爪が、出てきてしまったのだろうか。彼の指が肉に沈むたびに、ちくちくとした微かな痛みが胸に走った。…それすらも、彼が俺に興奮してくれていることを知らせてくれているようで、こころが蕩ける。

  息が上がって、声が漏れそうになって。でも、頭の片隅で、ここが家だということを思い出して、慌てて指を噛んだ。こうでもしてないと、あっという間に此処が何処かすら忘れて、声が出てしまいそうだったから。

  幾らこの部屋が屋根裏で、父ちゃんと母ちゃんがいるのか一階だとしても、…俺の声は大きいらしいし。万が一にでも声が聞こえてしまったら、流石に恥ずかしくて二人の顔を見られない。

  

  彼の手のなかで、俺の乳肉が捏ね回されて、ふにゅふにゅと形を変えた。力の加減が分からないみたいに、握りつぶすみたいに強く掴まれて、柔らかい肉が伸ばされる。その手や指の肉球で、俺の乳首が圧し潰されて、乳肉のなかに埋まっては圧し出される。それほど大きくない筈の乳首が、膨らむように勃ちあがっているのを感じて、顔が熱くなった。ころころと、彼の手のひらで転がされる感触が、堪らない。

  「んん…、んっ♡」

  今まで知らなかった感覚に、腰が浮くのが分かった。声を出さないように噛んでいた筈の指は、…いつの間にか、気持ち好いのを堪える為に変わっていた。でも、幾ら嚙んでも全然気持ち好いのは逃がせなくて、胸を揉まれているだけなのに、おちんちんがどんどん硬くなっていく。辺りに響く、弾むような息遣いは俺なのか、…それともハンデットなのか。ハンデットだったらいいな、って、蕩ける思考の隅でそんなことを想った。

  胸に回っているハンデットの手の片方が、膚をなぞりながら下へと滑った。おへその上をなぞってから、履いてるブリーチズのボタンを、彼の手が器用に外す。あ、と喉奥で、声にならない音が漏れた。そのまま、下着ごとブリーチズが脱がされて、ベッドの下に落とされる。恥ずかしさで、反射的に閉じそうになった足を、…彼の手に押さえられた。すっかり勃ちあがってしまったおちんちんに、ハンデットの視線が注がれるのを感じて、…それだけでおちんちんがびくん、って震えてしまう。

  

  「あ、や…だ、だめ…♡」

  口から指を剥がすように離して、出した声はほとんど嬌声だった。だめ、なんて嘘だ。本当は全然だめじゃない。それどころか、彼の視線まで気持ち好い。見られてるだけで、射精しそうになるくらい、頭の芯がとろとろに蕩けていた。

  ハンデットの手が、俺に伸びた。そのまま緩く握りこまれて、それだけで俺のおちんちんがまた。大きく震える。ハンデットに逢う前に、興味本位で自分でしたことも、…そりゃ、何回かはあるけど。ハンデットに逢ってからは、逆にしたことない。ハンデットと一緒にいるだけで幸せで、それだけで何と言うか、俺の性欲は満たされてたみたいだった。だから、こんな風に頭のなかまでとろとろになるくらい気持ち好くなったことなんて、初めてだ。だからどうしたらいいのか分からなくて、でもハンデットに触って貰えるのが嬉しくて、俺の腰が勝手に揺れる。

  もう、胸を揉みしだかれていた時点で、気持ち好いのが既に限界だったらしい俺のおちんちんは。ハンデットの手で握られて、そのまま擦られただけで、呆気なく射精してしまった。びゅる、って精液を噴き出す鈴口に、ハンデットの鋭い爪が入り込んで、くじられる。噴き出る精液を堰き止めるみたいに、ハンデットの爪が鈴口をぐりぐりと捏ねて。その爪先が、軽く抜かれてはまた入り込む。それが、腰が抜けるくらい気持ち好くて、目の前が白くちかちかした。そのまま、入り込んでいた爪を一気に引き抜かれてしまって、堰き止められていた精液が、全身に響くくらいの勢いでびゅるびゅると噴き出した。

  「………っ!♡♡」

  腰を仰け反らせて、口に含んだままの指を噛み締めながら、声にならない嬌声を喉奥で上げた。全身が溶けるみたいに熱くて、目を瞑ってるの開いてるのかもよく分からない。大きく息を吐きながら、仰け反らせていた背中をベッドに沈ませた。指を噛んでた口も緩んでるのか、勝手に指が口から外れた。頭のなかがとろとろで、気持ち好さの余韻で頭がぼーっとしてしまう。

  

  そんな俺に、ハンデットの顔が近づいてきた。労わるように頭を撫ぜられて、自然と目が細まっていく。指が外れた口に、彼の口が重なった。触れるだけのキスはいつも通りに優しくて、それだけでまた、こころが蕩けた。

  ちゅ、ちゅって啄むみたいなキスを繰り返されて、幸せな気持ちで彼の背に腕を回した。甘えるように、彼の腰にも足が回って。そんな俺の頭をまた、彼の大きな手のひらが撫ぜてくれる。

  ああ、幸せだな。そんなことを、淡い桃色に満たされた頭で想う。そんな俺の、…おちんちんを、また、彼の手が緩く握った。驚いて、蕩けていた目を丸く目を見開いてしまう。

  「えっ!?」

  思わずあげた声は、軽く引っ繰り返っていた。そんな俺に、ハンデットがその緑と金色の重なり合う眼を細めて、薄く笑う。口端から覗く犬歯が、光を反射して小さく輝いた。…その笑顔に、背筋がまた、続々ってふるえる。彼の手のなかで、さっき射精したばかりのおちんちんが、また大きくなっていくのが分かった。

  

  まだ、さっきの俺の精液が残ってるままの手で、にゅるにゅると勢いよく扱かれる。さっきとは違う滑った感触に、腰が震えながら、また大きく浮いた。甲高い声を上げそうになってしまって、慌てて指を、口に押し込む。

  

  ハンデットから、かちゃかちゃと金属がぶつかり合うような音が小さく聴こえた。なんだろう、って疑問が頭の隅を掠めるけど。ハンデットの手で擦られてるおちんちんが気持ち好すぎて、頭がついていかない。もう、声を出さないように指を噛んでるだけで精いっぱいだ。

  一瞬、ハンデットの手がおちんちんから離れて。…灼けるような熱を持った硬い何かが、手の代わりに俺に触れる。その熱さと硬さに、思わず感出た指を離してしてしまって、甲高い声が喉奥から漏れた。

  「ひぇっ!?」

  跳ねるように、身体を起こしかけて。…その硬すぎる熱いものと一緒に、また俺のおちんちんがハンデットの手に握られて、腰が砕けた。今までよりも荒い手つきで、ハンデットの手が俺と、その熱いものを一緒に擦りあげる。まるで灼熱の棒のようなそれが、俺のおちんちんに擦れて、手だけの時よりも更に、もっと気持ち好い。俺の先端からは、まるで射精してるのかってくらいの先走りの液が溢れるように零れ出ていて、ハンデットの手のなかでぐしゅぐしゅといやらしい音を立てていた。

  「ん~っ♡んっ、んぅ…っ♡」

  なんとか指を口に戻して、声を立てないようにまた噛み締める。彼ので一緒に擦られて、俺のおちんちんよりも遥かに巨きなその灼けた棒も、びくびくと脈打っているのが、当たっているおちんちんから伝わってきた。まるで血管みたいな筋が、幾つも浮いてるのも感じる。それが俺のおちんちんと擦れて、ごりごり削られるようで、知らず腰が浮き上がる。さっきも一回射精したのに、もう、またイっちゃう。

  「ひゃ、ひゃんでっと、いく…っ♡またびゅるびゅるしちゃうようっ♡」

  指を咥えながら、切れ切れの声で彼に射精が近いことを伝える。気持ち好すぎて舌が回らない言葉は、我ながら、小さな子どもよりも幼く響いた。ハンデットが、手を動かしたまま、俺を覗き込むように目を合わせる。その息は荒くて、クリソベリルのように綺麗な色をした彼の眼も、今はきつく細められている。興奮したように開く口から覗く犬歯が、唾液で一瞬輝いた。

  「…ああ、俺、もだ…っ!」

  俺と同じに、切れ切れの言葉。上ずったて掠れた声色は、切羽詰まっているようで。…その声が響かせた言葉に、蕩けた目を瞬かせる。…俺も?一瞬引っかかったけど、とろとろに蕩けている思考じゃ、その意味なんて掴めるはずがない。彼の手の動きが一層速く、激しくなって、先端をまた、鋭い爪でくじられた。ただでさえイきそうだったのに、そんなことをされて堪えられるわけがない。

  「~~~~っ!♡♡」

  折り曲げた膝から、つま先までが大きく震えて。びゅる、って勢いよく精液が鈴口から噴き出す感触に、背筋が震える。同時に、…俺のおちんちんに押し付けられてる、灼熱の硬い棒も、筋を増やしながらびくっと震えた。びゅう、と熱い液体が、ハンデットの手を伝って俺のおちんちんまで降り注ぐ。…その感触に、あ、とその熱く硬いものがなんなのか、漸く分かった。

  これは、ハンデットのおちんちんだ。

  思い至った瞬間、喉奥から一際高い嬌声が上がって、更に強く指を噛んだ。その巨きさに比例するように、俺よりも長い射精が続いていく。ハンデットの手のなかで、彼と俺の精液が混ざり合って、ぐちゅぐちゅと更にいやらしい音を立てていくのが堪らない。

  最後の一滴まで出し終わったのか。ハンデットが、俺に覆い被さるみたいに身体を落とした。俺も、震える口から指を離して。そのまま腕を彼に回して、ふかふかの獣毛に顔を埋める。甘えるように、俺の足もハンデットの身体に回った。裸の脹脛に触れる獣毛の感触が、心地好い。

  荒い息を整えるように、暫くそうしていた後で。ハンデットが、緩く身体を起しながら、また俺を覗き込む。少しだけ余裕の戻って、笑うように細められた金緑色の眼が俺を映して。そのまま触れるだけのキスをされた。

  ハンデットの手が、握りこんでいた俺たちのおちんちんから離れた。彼と俺の精液でべたべたになった手を、ハンデットがそのままスラックスで拭おうとするから。慌ててタオルを渡そうと身体を起こしかけると、『寝てろ』とハンデットに片手で制された。そのまま、彼がベッドから起き上がって、ハンガーに掛けていた軍服から器用にハンカチを取り出す。その様を、言われた通りベッドに転がりながら、見惚れるように見遣った。…ああ、やっぱり俺の恋人は世界一格好良いなあ!

  手のひらをハンカチで丁寧に拭ってから、ハンデットがこっちへと足を向けた。ベッドの端に座ろうとする彼の腕を、引っ張って上へ乗るように促す。金緑色の眼を、少しだけ見張るように大きくしてから。その眼を優しく細めた彼が、俺の促す通りにベッドの上に来てくれて。寝転がる彼の身体に、ぴったりとくっついて、背中に腕を回した。さっきみたいに、ふかふかの獣毛に顔を埋めて目を閉じる。あったかくて、気持ち好い。

  そんな俺を、片手で抱き締めてくれながら、もう片手で頭を撫ぜてくれる。その感触も心地好くて、猫のように喉を鳴らしながら、彼の獣毛に頬を寄せた。

  「その、なんだ…大丈夫だったか?」

  「…うん、大丈夫。ていうか、その…あの、す、っごくきもちよかったよ!」

  耳を擽るみたいな優しい声が、嬉しいけど気恥ずかしくて。獣毛に顔を埋めたまま、口に出した声は、期せずして大きくなった。それに、ハンデットが笑うみたいな、照れるみたいな音で、ひとつ笑って。

  「そ、そうか…いや、そんならよかった」

  「え、俺だけ!?ハンデットはどうだったの!?」

  返ってきた言葉に、思わず獣毛から顔を上げて、彼を見遣る。間近の距離で、ハンデットが狼狽えたように視線を彷徨わせた。…ああ、これは今、凄く照れてる。その黒色の獣毛すら、赤く染まって見えるような様の彼に、それでも真面目な顔で見つめてみせれば。うろうろと視線を彷徨わせた後で、彼が覚悟を決めたように口を開いた。

  「そんなの、俺だってその、…凄えき、気持ち好かったに決まってんだろ!あと、その…」

  「あと?」

  語頭を上ずらせてのぶっきらぼうな大声。それから、今度は真剣な眼差しで、俺を真っ直ぐに見つめて。

  「お前が、凄え可愛かった。」

  そう言って、ハンデットが俺を、ぎゅう、って抱き込むように抱き締める。…い、いきなりそう言うことを真面目な声で言ってくるのは、ずるいと思う!さっきのハンデットに負けないくらい、真っ赤になっているだろう俺は、彼の言葉にただ頷くしか出来なくて。そんな、俺に。

  「…なあ。その、さ。近いうちに、…この続きをしても、いいか」

  …さっきと同じに、甘く響いて、でも何処までも誠実な声。そんな声色で、ハンデットが囁くように、俺に言う。それは問いかけのようで、…まるで、断言のような。俺のこたえを、もう知ってるみたいな、そんな言葉で。だから俺も、ハンデットの背中に回した腕で、ぎゅう、と彼を抱き締め返しながら。

  「いいに決まってるじゃん!…いつでも、いいよ」

  そう、素直な気持ちを。きっと、ハンデットも分かってるだろう言葉を、真っ直ぐに彼に告げた。高く、大きく高鳴る心臓は、落ち着く気配もない身体に跳ねっぱなしで。爆ぜるみたいに熱い頬を隠すように、また、彼の獣毛に顔を埋めれば。…同じくらいに跳ねているだろう心臓の音が、彼からも伝わってくる。

  そのまま。お互い、真っ赤になって黙ったまま。ぎゅう、って強く抱き締め合って、ただ、お互いの心臓を音を、聴いていた。

  (近いうち、っていつだろう?いつなのかな?俺は、…さっきも言ったけど、いつでも、いいよ)

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