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イケメン狼獣人がぽっちゃり少年を娶るはなし。【9】

  リジットさんが。珍しく、少しまとまったお休みを貰えたので。一泊二日の予定で、早朝から。馬車に乗って、少し遠くの避寒地まで出発した。

  「楽しみだねぇ!どんなところに行くの?」

  「ああ、長閑で此処より幾分か暖かくて、いいところだ」

  近くに街もあって活気もあるし、少し歩くだけでも楽しいと思うぞ。そんな風に話してくれるリジットさんを見上げながら、俺も笑って頷く。

  今俺たちが乗っている馬車は、二人掛けの席が向かい合わせになっているもので、結構広い。大人4人が余裕で座れるくらい。

  本当は、こういう時は相向かいで座るものかもしれないけれど。それよりも、俺はリジットさんにくっついていたかったから、隣に座らせてもらった。だって3時間くらい掛かるんだもの!その間、向かいに座ってずっと彼の顔を見ているのもいいかな、ってちょっと思ったけど、やっぱり隣のが魅力的じゃないか!

  いつも、リジットさんが王城に向かうのに使っているのは、窓部分がが開いている馬車だけど。今回は、それよりも大きい馬車だ。ちゃんと窓に硝子の填まっているもので、窓部分が結構大きくて、カーテンが備え付けられているような、貴族も良く乗っている馬車。うちにもあったから、見覚えだけはある。俺は、あんまり乗ったことないけど。中には、昼間でも、カーテンを閉めて乗るひともいる。お忍びとか、日差し避けとか。

  でも、今は朝だし、別に忍んでいるわけでもないし、観光に行くわけだし。普通にカーテンを開けて、一緒に外の風景を見ながらのんびりと過ごす。そんなに速くない馬車は、がらがらと車輪の音を立てながら、長閑に進む。

  凭れてもいいぞ、ってリジットさんが言ってくれたので、遠慮なくその肩に顔を寄せさせてもらった。別に眠いわけでも疲れてるわけでもない。ただ、彼とくっついていたいだけだ。

  少し寒いかも、と、馬車のなかから外套を着込んだけれど、窓から差す陽の光で、存外になかは暖かい。早々に外套を脱いで、前の座席に置いた。少し薄着になったおかげで、身を寄せると更に彼のふかふかの獣毛や、あたたかい体温を感じられて、それだけで気持ちが満たされる。

  1時間ほども走っただろうか。陽の光が少し傾いてきたことで、なんとなく時間が知れる。けれど窓の外を見るよりも、俺の旦那さまをつい見てしまって、窓の外の風景が良く分からない。今は、少し市街地を走っているのだろうか。外から聴こえる街の声は、ざわざわと賑やかだ。

  それを聞きながら、座っても少し高い、彼の顔を凭れたまま見つめる。…ああ、ほんとに格好いいなあ。自然と緩んでしまう顔もそのままに、彼を見遣っていると。俺の視線に気づいたのか、…いやこれは気付くよね。リジットさんが、俺を見て、優しく眼を細めてくれた。鋭くて綺麗な琥珀色の四白眼が、透明な陽の光を受けて、更に輝く。それに、思わず見惚れてしまいながら、俺も彼に笑い返した。

  そんなに俺の手に、彼の手が触れる。重ねられた手を、俺から繋いで、ふかふかと心地好い綺麗な黒色の毛並みを指で撫ぜた。肉球も好きだけど、爪の生え際?っていうのかな、そこを触らせてもらうのも、すごく好きだ。でも、もしかしたら痛いかな、って思うから、彼にいいよって言ってもらわないと触らないけど。

  そんなことを思いながら、彼の手を撫ぜて、繋ぐ。手を取って、肉球を頬に当てさせてもらったりもして、一人でにやける。そんな風に、リジットさんは、眼を細めたまま、その手を暫く俺の好きにさせてくれていたけど。

  …ふ、と、彼のもう片方の手が伸びた。その手が、タッセルを外して、馬車のカーテンを閉める。俺の方のカーテンも、その腕を伸ばして、器用に閉めた。

  少し厚手のカーテンは、閉めてしまうと、陽の光すら遮ってしまう。薄暗くなった馬車のなかは、狭い密室だ。閉め切られた窓の向こうから、車輪の音と、街中の賑やかな声が響いてくる。

  「リジットさん?」

  

  不思議に思って、彼を見上げる。薄暗い中で、彼の琥珀色の眼だけがまた、輝いた。その眼が細められて、俺を見る。…いつもの、優しく細めてくれる笑い方とは違う、捕食者の笑み。

  …その笑顔に、背筋が震えた。勿論恐怖じゃなくて、…多分、期待だ。獣欲を透かして笑う、彼の笑み。この笑い方を見るだけで、俺は、身体が疼いて堪らなくなってしまう。

  …でも。この笑い方は、俺は今まで、夜とか、そうでなくても建物のなかでしか見たことが無い。こんな、朝の、しかも馬車のなかなんて。…え、まさか、ここで?

  多分、俺は今、目を円くした間抜けな顔で、彼を見遣ってしまっているだろう。そんな俺に、彼が薄く笑って。その、手が伸びた。

  「んっ」

  服の上から乳首を摘ままれて、思わず声を上げてしまう。けれど、外から聴こえる街の声と、がらがらと響く車輪の音に、慌てて声を飲み込んだ。

  「り、リジットさんっ!?」

  あわあわとした声で呼んだ彼の名前は、上擦って高い。え、やっぱりここでするの!?や、嫌だなんて全然思ってないけど、え、でも、ここ馬車だよ!?

  「あまり声を出すと、聞こえてしまうぞ」

  

  愉しそうな声で、彼が俺に囁く。シャツのボタンが外されて、直に乳首を摘ままれた。声を上げそうになって、咄嗟に両手で口を覆う。

  「っ♡」

  

  一度、手で口を塞いでしまうと、もうその手が離せなくなった。リジットさんの手が、俺の胸を這って、厚い胸脂肪を揉み込む。ざらざらと硬い肉球に押し潰されて、早くも乳首が痼ってきたのを感じた。

  勃ちあがってきた両の乳首を、爪先で摘ままれる。そのまま、ゆっくりと乳首に爪が食い込んで、身体が跳ねた。上がりそうになる嬌声を、口を塞いだまま唇を噛んで、必死に抑える。乳首への刺激で、俺のお尻の孔から腸壁まで、じんじんと疼いてくる。

  早くも蕩けだしてしまった俺が分かったのか。リジットさんが、俺の身体を持ち上げて、向きは同じまま、彼の上に乗せられた。俺の背に、彼のあたたかさを感じる。…同時に、俺のお尻の下に、硬くなり始めている彼のものも感じて、身体に火が付いたように熱くなった。

  

  片手で俺の乳首を弄りながら、もう片手が俺の下の着衣も脱がしていく。最初から抵抗なんて欠片もする気のない俺は、されるがままだ。ずるり、と両の足から、下着ごとズボンが脱がされて俺の下肢は裸になる。

  ふ、と、俺の乳首からも、彼の手が離れた。そのまま、彼の両手が、俺の足に伸びて。…ぐい、と俺の足が、大きく開かれる。薄暗いと言っても、カーテンを閉めただけの、朝の馬車内で。

  「っ!ん、ゃぁっ」

  自分のあまりの卑猥さに、脳が沸騰した。耐え切れなかった嬌声が、押さえた掌すら越えて、馬車に小さく響く。全身が一気に熱く火照って、汗すら浮いた。

  俺の目に、靴下も靴もそのままで、でもそれ以外は何も着けていない下肢が映る。ぷにぷにと厚いお腹の肉が、ふるふると波打つ様子も。その下で、柔らかいままの俺自身が、それでも恥ずかしそうに震えてる様も。

  弄られていた乳首は、完全に勃起していた。目の端に、焼けていない胸脂肪と、その上で真っ赤に充血して勃っている乳首が映って、その淫猥さに眩暈がした。見えないところで、俺のお尻の孔が、ぐじゅぐじゅと蕩けて開閉していた。

  もし、何かの拍子に、このカーテンが開いてしまったら。こんな恥ずかしい姿を、周りのひとに見られてしまう。そう思うだけで、心臓が破裂しそうにどくどくと高鳴る。

  リジットさんの指が、俺のお尻の孔に触れた。鈍く伸びた爪で、こじ開けるでもなく、擽られる。けれどそれだけで、蕩けて疼く俺の孔は、物欲しげに開いてしまう。くぱりと開いた俺のそこに、リジ

  ットさんの指が潜り込んだ。

  「――っ!」

  靴のなかで、ぎゅう、と爪先が丸まる。既に畝っている俺の腸壁は、ずぷずぷと埋め込まれる彼の指を、大喜びで迎えた。艶やかな彼の獣毛が、はしたない俺の腸液で濡れそぼっていくのを感じて、恥ずかしくなった。

  ごめんなさい、って謝りたくても、口が開けない。じゅぷじゅぷと音を立てながら、指先の肉球で柔らかいだろう腸壁を削げ擦られると、それだけで身体が震えて、絶頂に達してしまった。ぎゅうぅ、と、俺の腸壁が勝手に彼の指を締め付けては扱いてしまう。お尻の孔のところで、腸液が泡立ってるのが分かる。

  

  口を塞いでいる所為で、呼吸も覚束ない。気持ち好いのと息苦しいのとで、視界が潤んだ。身体を震わせながら、肩で大きく息をしている俺の首筋を、彼の長い舌が慈しむように舐め上げた。それだけで、また、背が震えてしまう。

  にゅぽん、と濡れた音を立てて、指が抜かれた。とろとろと腸液が零れては、お尻を伝う。潤んだ目から涙が落ちるけど、それを拭う余裕もない。

  …そんな俺の顔に、彼の手が触れた。優しく後ろを向くように促されて、後ろにいる彼を見遣る。優しく眼を細めた彼と目が合って、口を覆っていた手を外された。そのまま重ねるだけのキスをされた。頬を伝った涙も、優しく舐め取られて、頭を撫ぜられる。そんな彼の優しさが嬉しくて、顔がほころんだ。そんな俺に、彼も笑ってくれて。それから。

  狭い馬車に、衣擦れの音が微かに響いて。熱い塊が、ぽかりと拡がった俺のお尻の孔に触れる。…彼のおちんちんだって、それだけで分かった。

  すり、と拡がった孔に、彼の先端が擦り付けられる。荒い息が俺の首筋に掛かって、悦びに胸が震えた。彼が、俺に興奮してくれてる証拠。

  また、俺の足に、彼の腕が回る。俺の身体が少しだけ持ち上げられて、…彼のおちんちんの先端が、くぷりと俺のなかに潜り込んだ。

  足を支えられたまま、ゆっくりと下ろされて。ずぶぶ、と、俺の腸壁を押し広げるように、彼のものが挿入ってくる。もう、俺は声を押さえることに必死だ。唇を噛み締めるだけじゃ足りなくて、また、慌てて口を覆う。

  最後は、足から手を離された。彼の上に、一気に腰が落ちて、根元まで彼のものを飲み込んでしまう。ずん、って重い衝撃が、お尻の孔から腸壁の奥まで響く。リジットさんの陰茎が、いつもよりも深くまで挿入ってきて、その先端が俺の結腸の先にキスをする。

  「~~~~っ♡♡」

  それだけで、また呆気なくイってしまった。声を上げて、彼の名前を呼びたいのを、喉奥で必死に押さえる。その分、気持ち好いのが発散できなくて、おなかのなかに溜まっていく。声が出せないのが、こんなにつらいなんて思わなかった。

  きゅうきゅうと、いつもよりも強く彼のものを締め付けてしまって、それでまた俺の方が気持ちよくなってしまう。襞の一枚一枚が、嬉しそうに蠢いて、彼に吸い付いているのを自分で感じる。リジットさんの熱い息が首筋にかかって、また一つ、彼のものが俺のなかで大きくなった。ただでさえ、彼のかたちに拡がってる俺のなかが、大きくなる彼の陰茎に合わせて一段と拡がる。大きすぎて、俺のお尻の孔が拡がりすぎて薄くなるくらい。彼が動かなくても、馬車の振動だけで、いつもよりも拡がって敏感になっている俺のなかが擦られて、あっという間に絶頂に打ち上げられる。

  「っん、んんんっ」

  勝手に腰が揺れるけど、気持ち好すぎて止まってしまう。出せない声の代わりに、蕩けた目からぼろぼろと涙が零れてくる。いっぱいイきたい。たくさん突いて欲しい。でも、ここで思う様突いてもらったら、声が我慢できない。

  震える足が、また彼の手で抱えられて、開かれた。べろり、と彼の熱い舌が、俺の首筋を舐めあげる。普段は分からない、彼の舌のざらざらを膚に感じて、それだけで身体が震えた。きゅうっとまた、俺のなかが彼を締め付けて、俺の方が追い詰められる。開かれた足の中心で、垂れたままぷるぷると震えている俺自身が目に入るのが、恥ずかしい。

  俺の様子にだろうか、それとも馬車が狭いからだろうか。リジットさんの動きは、いつもよりも大分ゆっくりだ。ずるずる、と抜け出て、時間をかけて挿入される、彼のおちんちん。そうされると、俺のなかの襞がいつもよりも丁寧に捲られて削げ擦られたり、彼のもののかたちや硬さを一層強く感じてしまって、激しく突かれるよりもある意味、すごく気持ち好い。でも、その分もどかしい。やっぱり、奥までずんずんって突いて欲しい。俺のなかを、勢いよく抉って貫かれたい。

  「んん…っ♡~~~っ」

  そう強請りたくても、今手を解いて口を開いたら、絶対出てくるのは高い嬌声だ。きっと、外まで聞こえるくらいの大きい声を出してしまう。そうしたら、馬車のなかで何をしているか、こんな場所で俺がこんなに気持ちよくなってるのかが、皆にばれてしまう。…そう思うと、心臓は痛いくらいにばくばく鳴るのに、腸壁は嬉しそうに締まってしまう。まるで、ばれるのが嬉しいみたいに。こんなに彼に愛されている俺を、皆に見て欲しいみたいに。現に、皆にばれることを考えただけで、ぎゅう、って俺の腸壁が彼を食い締めて、脳まで蕩けた。イく、って声が、喉奥で上がる。

  声には出さなくても、出せなくても、俺がイってることなんて、彼には全部分かってるだろう。抱えられた足の爪先を、びくびくと震わせる俺に、リジットさんの囁く声が響く。

  「いつもよりも更に感度がいいな。馬車の中だと言うことが、そんなに悦いのか?」

  なら、これから出かけるたびにこうしようか。愉しそうなリジットさんの、艶やかに低い声。それに、慌てて首を振って、否定した。でも、その声だけで、腸壁から全身まで震わせてしまう俺は、多分説得力ゼロだ。

  さっきから、抱えられた足の爪先が、靴のなかで丸まりっぱなしになっている。ゆっくりとした抽挿に、浅い絶頂が止まらない。腸液があとから溢れて、俺のお尻を濡らしていく。…ああ、これじゃきっと、リジットさんの衣服まで汚しちゃってるかもしれない。でも、とろとろと零れていく腸液の止め方も分からない。謝りたくても、声も出せない。

  「ん、んんっ」

  ぬぷぬぷと、ゆっくりリジットさんが腰を揺らす。きっと俺の為にそうしてくれているのに、焦らされてるように感じてしまう自分が恥ずかしい。もっと、いつもみたいに強くしてほしい、っていう気持ちが止められない。でも、自分で腰を動かすと、気持ち好すぎて止まってしまう。

  目が回るくらいに焦らされて、何度もイってるのに満足できない。いっぱい突かれて、たくさん声を上げて、彼の名前を呼びたい。

  酸欠のように、押さえた手の下で、早い呼吸を繰り返す。リジットさんの息も、熱く、荒くなっているのを首筋から背に感じて、それだけで身体が戦慄く。もう、すぐ彼も、俺のなかで達してくれるのだろうか。リジットさんの精液が早くなかに欲しくて、俺の腸壁が一層激しく、彼に吸い付いて扱き上げた。

  「ん~~~っ!ん、んぅっ♡」

  ぐ、と奥までリジットさんのおちんちんが推し進められて、深いところで射精が始まる。びゅるびゅるっ、て勢いよく、彼の熱い精液が俺のなかに噴出されて、熱く畝る腸壁に、彼の精液が叩き付けられる。曲がりくねった腸の奥までそれが届いて、漸く深く絶頂出来た。喉の奥で、高くて細い声が、切れ間なく漏れ出る。

  彼の奔流を受け止めながら、喉奥で込み上げる嬌声を必死で飲み込む。多幸感が頭からつま先まで溢れ出てしまって、きっといつも以上に俺の顔はだらしなくなってるだろう。彼に背を向けている体勢でよかった、って初めて思った。本当は、彼の顔を見ながらぎゅってしてもらうのが大好きだから。

  身体が跳ねるのも止められなくて、イってるのがいつも以上に丸分かりで、恥ずかしくなる。彼の精液を零さないように、今まで以上に俺のなかがきつく締まった。

  

  射精が終わっても、彼のものは大きくて硬いままだ。俺も、深くイったのに、身体の高ぶりが全然治まらない。寧ろ、さっきよりも腸壁が蠢いて、もっともっとと彼を扱いてしまう。リジットさんの指が俺の乳首を弾いて、更に彼のものを食い締めてしまう。

  イってるのに、ずっと我慢してるような状態。目どころか、脳までぐるぐるしてきたとき、…馬車の速度がゆっくりになった。それをリジットさんも感じたんだろう。彼の手が、俺の姿を曝さないように、ほんの少しだけカーテンを開けた。漏れ出る陽の光が、ぼやけている目に眩しい。

  「もうすぐ着くぞ」

  馬車の窓から外を見遣って、リジットさんが俺にそう告げる。そんな言葉すら、うまく咀嚼できない俺の髪を、彼の指が優しく撫ぜてくれた。それだけで身体を震わせてしまう俺のなかから、彼のものがゆっくりと抜かれる。それを嫌がるように、彼のものを追って、俺の腸壁の襞が蠢いた。とろりとリジットさんの精液まで零れそうになって、慌ててお尻の孔を締める。たったそれだけでも、焦らされたようになっている俺の身体は、イきそうになってしまった。

  脳まで蕩けている俺に代わって、彼が、俺の乱れた服を直してくれる。脱力しているのに縮こまっている足に、下着とズボンを履かされた。そのまま、開かれたシャツのボタンも留めてくれる。閉じられた胸の乳首にシャツが当たって、また、足先が丸まった。少しは自分でやらなきゃ、と思うのに、口を押さえたままの手がうまく動いてくれない。

  漸く、なんとか口から手を引き離して。開いた口は、長いこと押さえつけていた所為か、うまく動かなかった。

  「ご、ごめんなひゃい…」

  回らない口で、それでもなんとかそう口にする。優しく眼を細めたリジットさんが、また俺の髪を撫ぜてくれて。その後で、多分涙でぐしゃぐしゃになってるだろう俺の顔を、丁寧に拭ってくれる。

  がこん、と軽い衝撃と共に、馬車が止まった。彼が外套を着て、多分汚してしまっただろう下半身を隠す。それから、俺の顔を隠すように、頭から外套をかけてくれて、そのまま抱えられた。重いでしょ、大丈夫だよ、自分で歩けるよ。彼に伝えたい言葉が幾つも頭を過ぎる。けれど、…そう伝えたくても、きっと足が動かない。今だって、彼の精液を零さないように締め付けている腸壁からお尻の孔が、じんじんと疼いて仕方ないのに。この状態で歩くなんて、きっと無理だ。

  ごめんね、ってもう一度謝りながら、彼の首に、腕を回した。何を謝ることがある、って、彼の優しい声が、頭に掛けられた外套越しに聞こえた。慈しむように俺の背を撫ぜてくれる手が、あたたかくて心地好い。

  そのまま馬車を降りるのを、振動で感じる。出迎えてくれたらしい旅荘のご主人らしきひとが、どうなさったんですか?と驚いた声をあげるのが聞こえる。申し訳なさで、いたたまれなくなった。

  「どうやら長い時間馬車に乗って、酔ってしまったようだ」

  「大丈夫ですか?早くお部屋でお休みください。直ぐにご案内いたします」

  リジットさんの説明に、本気で心配してくれている旅荘のご主人の言葉が痛い。…ごめんなさい、そんな心配してもらうようなことじゃないんです。俺が、その、えっちでいやらしいだけなんです!もう、申し訳なくて顔も上げられない俺を、外套の上からリジットさんが撫ぜてくれた。

  本当に、ご主人はすぐに部屋に案内してくれて。馬丁さんとご主人が、荷物も一緒に持ってきてくれた。…本当にごめんなさい。被された外套の下で、リジットさんの肩に顔を埋めながら、罪悪感に打ちひしがれる。

  どうぞごゆっくり、って声と共に、ドアの締まる音が聴こえた。そのまま、歩く振動を数歩分感じてから、ベッドの上に降ろされる。のろのろと、掛けてもらっていた外套を下ろすと、彼がドアに歩み寄るのが目に入った。がちゃん、と音がして、鍵が締まる。振り返ったリジットさんが、外套を下ろした俺に、眼を眇めるように笑いながら、またベッドの方に戻ってきた。

  ぎし、とベッドを軋ませながら、彼もその上に乗る。外套を脱いで、放るように床に投げた。…いつもなら決してしない、その荒い仕草に、心臓が高鳴る。

  彼の顔が近づいて、視界がぼやけるぎりぎりくらいの至近距離まで、寄せられる。肩に手が置かれて、そのまま緩く、倒された。高鳴る心臓が、こめかみまで響いて痛いくらいだ。

  「もう、声を出してもいいぞ」

  さっきまでの俺の思考を知ってるように、リジットさんが眼を細めて笑った。優しいなかにも、…獣欲の透けて見える、捕食者の笑み。見るだけで身体が蕩けてしまうような、俺の大好きな笑い方。

  声を返す前に、その口が、今度は彼の唇で塞がれる。ぬるり、と彼の舌が挿入ってきて、俺の舌を絡め取った。そのキスに、気持ちを持っていかれている間に、いつの間にか、俺の上半身は裸にされていた。

  

  唇が離れて、今度は剥ぎ取られるように、下着ごとズボンを抜き取られる。そのまま、うつ伏せにされて、腰だけを高く上げさせられた。上半身がベッドに着いて、俺の重さで胸ごと乳首が潰れる。厚くて柔らかい肉とさらりと冷たいシーツに乳首が埋もれて、くにゅくにゅと転がった。それだけで、軽く絶頂に達してしまったようで、目の前が白くなる。締めていたお尻の孔も、腸壁から蠢いて、とろとろと腸液ごとリジットさんの精液を零してしまう。さっきまで、割と長いこと彼のものを咥え込んでいた俺の孔は、今やとろとろに蕩けて拡がっていた。

  

  静かな部屋に、衣擦れの音が微かに響くのを、蕩けた頭でぼんやりと聴く。彼が服を脱ぐ音だろうか。そう思うだけで、期待に弾けてしまいそうだ。

  俺の背に、彼の気配。あ、と声を漏らすと同時に、物欲しげに拡がる俺の孔に、彼のものが擦り付けられた。もう制御の利かない俺の腰が、それを早く飲み込もうと勝手に動く。

  そんな俺に、低く笑う声が聴こえて、彼が俺に覆いかぶさる。背中からお尻まで、彼の艶やかでふかふかの獣毛に包まれるのが、くすぐったくて心地好い。獣毛が膚に擦れるだけで、気持ち好くて堪らなくなる。

  「…お前の声が聴けなくて、俺も寂しかった」

  いつもよりも、低くて甘い声が、俺の耳に溶ける。こう、言うときにしか聞けない、艶っぽくて濡れた声。その声を聞くだけで、腰が砕けそうになるような。今も、声だけで戦慄いてしまう腰の、その奥で。くにゅくにゅと焦らすように、俺の孔を彼の陰茎の先端が擦り続けていて、それだけで浅くイってしまっていた。

  「我慢しているお前も堪らなく可愛かったが、矢張り声が聴きたいな」

  濡れた鼻先が耳を掠めて、甘い声が、熱い息と一緒に耳で溶ける。さっきから、痛いくらいに鳴る心臓が、更に鼓動を速めた。ただでさえ蕩けた脳が、沸騰しそうに熱くなってる。そんな気がする。

  

  「…だから、いつもの可愛い声で、俺の名を呼んでくれ」

  そう。囁かれると同時に、…こすり付けられていただけの陰茎が、勢いよく俺のなかに突き込まれる。その一突きだけで、一気に深い絶頂が、俺を襲った。頭のなかが真っ白になって、息が一瞬出来なくなる。

  「あ――っ!りじ、りじっとひゃんっ♡リジットひゃん、イく、イくぅっ!」

  彼に言われたとおりに、リジットさんの名前を嬌声で叫んだ。ぎゅう、っと爪先から足が丸まって、全身が硬直と弛緩を繰り返す。頭から全身まで、溢れる多幸感に包まれて、幸せに息が詰まった。頭のなかが蕩けっぱなしで、視界すらぼやけていた。だらしなくはみ出た舌で、下のシーツを舐めてしまう。

  

  俺の声からも、様子からも、リジットさんのものをきゅうきゅうと一段と強く締め付けては扱くように蠢く俺の腸壁からも、俺が一際深い絶頂に達したのなんて丸分かりだ。

  けれど、イきっぱなしで降りられない俺に、きっと気付いているのに、リジットさんの腰が動き始める。馬車のなかでずっとして欲しいと願っていた、激しい抽挿。彼と俺の肉が当たって、濡れた音が響くくらいの勢いで。彼の陰茎が俺の腸壁に突き込まれては、襞を毛羽立てて引き抜かれる。

  

  「やらぁっ!まって、まって俺イってるっ、まらイ、って…っくぅ…!」

  絶頂の先に、また絶頂が上塗りされて、イくのが終わらない。さっきと違って声をいっぱい上げているのに、身体のなかで気持ち好いのが渦を巻いて溜まっていく。もし、今止まってもらっても、暫く俺はイきっぱなしになるんじゃないか。そう心配になるくらい、ずっと気持ち好い。気持ち好いのが止まらない。

  彼の手が腰から伸びて、厚い胸肉とシーツの間で転がっている乳首へと潜り込んだ。鈍く伸びている爪で乳首を摘ままれて、電流みたいに快感が走る。ざらざらとした肉球で、思う様胸を揉まれて。敏感になりすぎている膚と、赤く充血して勃ちあがりきった乳首が、硬い肉球に擦れて潰れる。激しい抽挿も相まって、ぎゅう、っと彼のものを食い締めながら、また絶頂を迎えた。

  「リジットひゃん、っ、おれ、またイき、ま…っ♡」

  シーツに頭を擦りつけながら、彼に絶頂を告げる。もう、俺の全身も、腸壁も、びくびくと震えっぱなしだ。熱い汗が酷くて、茹ってしまってしまいそうになる。後ろから覆い被さられて、抱きしめられる体勢は、彼に包まれているみたいですごく心地好い。幸せに蕩けてしまっている思考はぐずぐずで、ほとんど停止状態だ。

  彼の律動に合わせて、俺の腰が勝手に動く。振動で、肺まで突かれるように、勝手に上がる声は甲高かった。馬車のなかの分を取り返すように、嬌声が止められない。ああ、明日は声が枯れてるかもしれない。ぐずぐずに蕩けた頭の片隅で、なんとなくそんなことを思った。

  一際強く、俺の奥の奥まで突かれる。曲がってるはずの結腸の先が、矯正されて真っ直ぐになるような感覚。柔らかい肉をずりゅずりゅと抉るように擦られて、そのままずん、って貫かれた。そのまま腰が押さえられて、びゅるるっ、て今日2回目の奔流が、俺のなかに注ぎ込まれる。

  

  「っあ―――っ!あ、きてるっ♡りじっとひゃんのせーえきっ、なかにっ♡うぅんっ」

  その熱さに、おなかの奥まであったかくなる。全身ががくがく震えて、自分の力じゃ体勢を維持できない。リジットさんに貫かれてる腸壁と、彼が支えてくれている腰だけが高く上がって、それ以外にはもう力が入らない。それなのに、きゅうきゅうと俺のなかだけは、彼のものを締め付けて、蠢いていた。頭のてっぺんから爪先まで、多幸感が満ちて、思考が微睡んでいく。

  

  幸せだ、って思いながら、目を閉じかけて。…ずぷり、と再開された抽挿に、微睡んだ意識が覚醒する。

  「ひゃあぁっ!?りじ、りじっとひゃんっ!?」

  がくがくと震えながらも、後ろを振り返った。薄く笑ったリジットさんが、愉しそうにその耳を揺らしている。小さく上がった口角の、その隙間から、牙が覗いているのが見えた。

  …ああ、と濡れた息が、口から漏れる。ただでさえぐずぐずに蕩けた思考が、更に溶ける。彼に、俺の全部を明け渡したくて、貪られたくて、堪らない。

  「もっと、してくらさい…♡」

  回らなくなった口で、伝う唾液と一緒に、彼にねだる。身体は限界に近かったけど、こころが彼を求めて止まらなかった。

  俺の言葉に、リジットさんが満足そうに頷いて。更に腰を押し進めながら、後ろから、俺をぎゅっと抱き締めてくれる。

  彼が、背中に覆い被さるあたたかい感触を、全身で感じながら。幸せだ、ってまた、強く想った。

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