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イケメン狼獣人がぽっちゃり少年を娶るはなし。【16】

  スティケート先生との授業の日。よろしくお願いします、と挨拶をしてから、机に用意していた本を開く。

  そのいつも通りの流れの前に。勉強机に向かう俺の隣に、いつも通りに座る先生が。…珍しく、授業以外のことを、最初に口にした。

  「リジットと貴方が婚姻してから、そろそろ1年ですね」

  「あ、はい。そうです!」

  先生の言葉に。壁に貼ってあるカレンダーを見遣りながら頷く。大きな一枚の羊皮紙に、12か月分の日付が全て載っているこのカレンダーは、軍で支給された専用のものだ。

  俺とリジットさんは、去年の8月に婚姻した。今日はもう5月も末だから、あと約2か月。ほんとにもうすぐ婚姻して1年だ。…早いなあ、って、そんなことを思いながら、顔の緩む俺に。

  「フラフィー。ひとつ、確認しておきたいことがあります」

  「?はい」

  真剣な顔をした先生が、俺に身体ごと向き直って、俺を見遣った。…なんだろう?知らず、俺も畏まりながら、先生の顔を見つめた。

  「貴方は、…リジットとの子を望んでいるのでしょうか?」

  …言われた言葉は、一瞬何を聞かれたのか分からなくて。頭の中で繰り返して、…言葉に詰まる。何をどう答えたらいいか、分からなかった。だって。…だって、俺は男だし。リジットさんも男性で、だから子どもなんて。…望んだって、俺が授かれるわけなんてない。

  言葉も出せないまま、ただ、先生の顔を見つめる俺に。…失礼、と先生が、困ったように表情を緩めた。

  「いきなりこんなことを聞かれても、貴方には意味が分かりませんよね」

  「あの、…ええと」

  俺を気遣うような言葉にも、曖昧な返事しかできない。そんな俺に、先生が。…柔らかい表情のまま、けれどまた真剣な眼で、俺を見遣った。

  「…貴方にいつ話そうかと、リジットとも相談していたのですが。もうじき婚姻して1年になりますし、貴方とリジットは婚約時代から変わらず仲睦まじく、貴方自身も『妻』として過ごす日々にも慣れたころだと判断しました」

  「は、はい」

  先生の言葉の意味が、また掴めない。何をだろう?先生とリジットさんが、俺に話そうとしていたこと?予想もできなくて、心臓がばくばくと鳴った。先生の眼が真剣だから、余計に。

  「私たち、獣人の成り立ちは前にも勉強しましたが、もう一度おさらいしましょうか」

  話の矛先が、いきなり変わって面食らった。あれ、今日は歴史の話?動揺しながらも、はい、と頷いた。でも、今日の授業は歴史じゃないから本を用意してないことに気づいて、慌てて立ち上がって。そんな俺を、先生が制して、また椅子に座らされた。…そのまま、俺の両手を、包むように先生が握る。

  「この大陸に伝わる神話としては、遥か昔に、動物と人間が交わって生まれたとされております。ここまでは、以前、歴史として軽く話しましたね」

  「はい」

  それは、少なくともこの国に伝わる神話として、一番古いとされている話だ。神話、だから本当にあったものじゃないかもしれない。けれど、現に獣人は存在している。だから、最古の歴史、として、皆勉強するし、そういうものだと考えられていた。

  「動物と人間が愛し合い、どうしても子を授かりたくて、呪法をつかったんだとか。昔は人間を孕ませられる獣がいたんだとか。その成り立ちには諸説ありますが、これはある一定の部分では、事実です」

  

  先生の、俺の手を握る手に、力がこもった。俺はまだ、先生の話の意図が、掴めない。ただ、目を丸く開いて、先生の言葉を聞く、俺に。

  「獣人は、人間に対しては、男女問わず子を成すことが出来るのです」

  先生が。言い聞かせるように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。…頭に入った言葉に、思考が止まって。ただ、息を止めて、先生を見つめた。そんな俺に、先生が、モノクルの奥の眼を少し細めて。また、ゆっくりと口を開く。

  「何故、そんなことが出来るのか。それは定かではありません。神話の世界を継げば、愛の奇跡か呪法でしょう。現実的に考えるならば、この世界での獣人の数は、全人間に対して二割から三割。その為、獣人同士ではどうしてもそこまで数が増えない。だから、種の保存の為に、自分たちよりも遥かに多い種族である人間を相手としても繁殖できるようになったのだという説が、獣人の間では、濃厚です。」

  俺の知らない話が、先生の口から紡がれる。先生の話を、頭の中で咀嚼するので精いっぱいの俺に。先生が、俺の手を包んでいた手で、俺の頭を労わるように撫ぜてくれる。

  「この話は、この国でも王族や王城に赴く貴族であれば知っている話なのですが、それ以外の人間にはあまり広まってはおりませんね。そもそも、獣人と触れ合う機会がありませんから。…だから、貴方が知らないのも当然の話です」

  その言葉に、少しだけ笑って、頷いた。彼の子どもが、俺に産めるかもしれない。じわじわと、その可能性に、頭が追い付く。…本当に?本当に、俺が?驚愕だろうか、期待だろうか、微かに震え始める手を、また、先生が強く握ってくれた。その手を、弱いながらも握り返すと。眼の奥を細めてくれた先生が、言葉を続ける。

  「我々獣人の、性的な体液…所謂精液や愛液ですね。そういったものを相手に摂取させると、少しずつですが、相手の身体を造り替えることが可能なのです。そもそも獣人と人間は異種ですからね。異性間でも、獣人の子を身籠るために、身体の造り替えは多少必要になります。その延長、とでもいうべきでしょうか。男性同士なら、相手に子宮と卵巣を。女性同士なら、相手に陰茎と精巣を。勿論、獣人側の身体を造り替えることも可能ですが、今は省略しますね。貴方とリジットなら、貴方が『妻』なのですから」

  最後の言葉に、思わず赤面した。この場合の、先生の言う『妻』っていうのは、その…愛し合うときに彼を受け入れる側、ってことだろう。それを、俺はとても嬉しいことだと思っているけれど。…改めて言われれると、なんていうか、…すごく、照れる。

  真っ赤になった俺を、目の前にいる先生は勿論分かっているんだろう。少しだけ笑いながら、更に先生が言葉を紡ぐ。

  「相手の身体を造り替える場合。まずは、自分の体液を、相手に馴染ませる必要があります。馴染ませるとは、相手に摂取させる、つまり自分の精を相手に注ぐ行為ですね。もともと、獣人は相手を自分のものとしたい欲求や、自分だけのものとしたい欲望が強い生き物です。名をつければ、支配欲とも征服欲とも独占欲とも、…恋慕や愛情、とも言えるでしょうか。それは、肉食獣であるほど強いと言われております。…勿論、本人の性質によるところも大きいのですが」

  『リジットは、人一倍その欲が強いようですね』、と、そこで先生が楽しそうに笑う。それにますます熱くなった顔が、勝手に緩んで崩れた。…先生から見ても、リジットさんはそう見えるのかな?俺を、彼のものにしたいって、そう、想ってくれてるって。そう思うと、嬉しさで、心臓の鼓動が跳ねる。

  無意識に浮かんでしまう笑顔を、引き締めようと葛藤する俺に。先生も、また一つ笑ってから、言葉を続けた。

  「ですから、子を成したい本能ではなく、自分のものとしたい欲求として、獣人は番となった人間に、精を注ぎます。その欲が強ければ強いほど、精を注ぐ頻度が多くなる。それが結果として、相手の身体に自分の精を馴染ませることへと繋がります。…要は、相手を愛し、欲することが、子を成すことへと繋がるのですね」

  先生の言葉が、耳に響く。…そうか。そうか、そうやって、…獣人の番になった人間は、子どもを産めるようになるのか。そうやって、たくさん愛されるから、…男でも、子どもを産めるようになるのか。そう思うと、何故だか泣きそうになった。先生の手があったかくて、彼の手に包まれた俺の手も、熱いくらいにあったかくなる。

  「そして、精が充分馴染むと、相手の身体は子を成せるようにと準備を始めます。それが、身体の造り替わりです。自分の身体を『雌』として、体内に子宮と卵巣、卵管を生成します。その間にも、相手の精を欲します。精を注がれるほどに、体内の造り替わりも早くなります。大体、精が馴染むまでに早くて1年。それから、体内が造り替わるまでに、早くて半年ほどでしょうか。勿論、精の摂取の頻度が少なければ二年でも三年でもかかりますし、中に精を注がなければ、例え精が馴染んでも、体内の造り替わりまではありません」

  先生の声が、…少し硬くなった。俺を見遣る先生の顔も、少しだけ強張っている。まるで、緊張でもしているように。ぎゅう、と痛いくらいに、先生が俺の手を握って。

  「貴方の身体は、リジットの精が充分に馴染んできております。ですが、まだ、体内の造り替わりまでは行われていません。けれど、このままなら、婚姻1周年を迎えるこの夏…いえ、早ければその前、来月にでも準備が始まるでしょう。そうすれば、今年中には、貴方は彼の子を成せる身体になります」け

  そこまで言って。先生が、一度、口を閉ざした。今年中には、彼の子を。…その一言が、俺の中で、福音のように響く。一つ息を吸って、先生が、口を開いた。

  「…貴方は、それを望みますか?」

  そんなの、考えるまでもなかった。先生の問いかけを理解する前に、口から言葉が飛び出す。

  「っはい!俺、リジットさんの子ども、欲しいです!俺が彼の子を産みたいです…っ!」

  

  勢いよく出てきた言葉は、俺の本音で、本心だった。彼の子どもが欲しい。俺が彼の子どもを身籠れるなら、そうなりたい。俺が、彼の子どもを産んで。リジットさんと俺と、生まれた子どもと。…みんなで、家族になりたい。彼と、家族を築きたい。

  俺の言葉が、部屋に響いて。それを聞いた先生の眼が、にっこりと細められる。嬉しそうに、それでいて、俺の答えなんて分かっていたみたいに、満足そうな表情。

  「貴方なら、そう言うと、…言ってくれると信じていましたよ」

  先生の大きな手が、俺の頭を撫ぜて。それから、ぎゅう、と、先生の広い胸に、抱き締められる。

  「ここまであの子を愛してくれて、有難う御座います」

  囁くように言う、先生の言葉は。何処か、優しく滲んで聴こえて。…先生のその声に、俺の視界も、少しだけ潤んで、滲んだ。

  ぎゅう、とまた一つ、強く抱き締められてから。身体を離されて、また、椅子に座らされる。ぱん、と、雰囲気を切り替えるように、先生が大きく手を叩いて。それから、大きく頷いた。

  「さて!そうとなれば、今後の授業には、身体の造り替わりと妊娠・出産のカリキュラムも入れますね!」

  言いながら、先生がいそいそと、大きめの本を取り出した。表紙には、半分裸で半分は臓器の描かれた人間と獣人が描かれている。まだ真新しく見えるその本をぱらぱらと開いた先生の手が、それを俺と先生の間に置いた。

  …こんな本を用意していてくれたっていうことは、やっぱり、俺がリジットさんの子どもを欲しいと思ってるって、そう信じてくれてたんだろうな。さっき、先生が言ってくれたことをこころで繰り返して、気持ちがあったかくなる。顔が緩みそうになるのを抑えながら、真面目な顔で、はい、ってその本に向き直った。そんな、俺に。

  

  

  「まず、体内が造り替わることに不安もあるかと思いますが、大丈夫です。私に経験はないので言い切ることはできませんが、子宮が生成されるときに痛み等は無いというのが定説となっております。妊娠が可能となると、最初に母乳が分泌されます。いつ、身体の造り替えが完了し、子どもが身籠れるようになったのかは、母乳が出るようになったかで判断してください。また、子宮が出来るのは、直腸の奥。ここをご覧ください、結腸へと繋がる、蛇行した部分ですね。この折れた部分の奥に、子宮と卵巣、そして腸と子宮を分かつ弁が出来ます。この絵のこの部分、子宮弁というものですね。陰茎を強く押し込まない限り、その弁が開くことはありません。従って、排泄物が子宮の方へ行くことはあり得ません為、ご安心ください。また、身体が精に馴染み、造り替えられるにつれ、腸液の分泌が著しくなります。もう貴方も腸液の分泌が激しくなっている頃でしょうから、お判りでしょうか?実はこの腸液に、腸内の浄化機能が付加されております。ですので、腸液によってある程度は清潔が保たれます。また、獣人の出産の際には、胎児は透明で丈夫な膜に、二重三重と包まれて生まれてくる為、生まれ落ちるまではほぼ無菌と捉えて頂いて大丈夫ですよ」

  「は、はい」

  ちょっと待って先生!俺の頭が追い付かない!こころのなかで叫びながら、高速の動きで本に書かれた文字と絵を示していく、先生の指を追った。その指と同じくらいの勢いで、先生が俺に説明をしてくれているも、そのスピードに、俺の頭から話の内容が猛然と過ぎ去ってしまう。

  いつも優雅で、分かりやすく説明をしてくれる先生が、こんなに怒涛の口調で話をする様なんて、初めて見た!なんとか先生の話を理解しようと、先生の指と言葉に、全神経を集中する。

  もしかして、先生のテンションが上がっているのだろうか?俺が、…リジットさんの子どもが欲しいって言ったから?さっきの、俺を抱きしめてくれた腕と、有難うと言ってくれた穏やかな声が思い出されて。必死になりながらも、こころのなかが、またぽわりとあたたかくなる。

  先生の授業のスピードを、必死で追いかけながら。それでもなんとか頷く俺に、先生の指が、ぺらりと次のページをめくる。

  「次に、妊娠とその期間です。ご存じとは思いますが、獣人には発情期がありません。逆に言うと、万年発情期です。これは、人間も同様ですね」

  …先生、言い方!いつもの優美で丁寧な物言いからは想像のつかない言葉に、驚いてしまって脳内で突っ込む。けれど、先生は俺の驚愕にも気づかないように、また一枚、ページをめくった。

  「そして、妊娠から出産までの期間は、人間同士とは違い、二か月から三か月と、大分早いです。大きさも、成人男性の手のひらに載るほどでしょうか。しかし、成長速度は早く、半年もあれば人

  間の一歳児ほどになります。もう歩いたり、早ければ単語を発したり出来る時期ですね」

  とりあえず、先生の言葉にこくこくと頷く。丁度、壁に掛けられた時計がぼーんと三回、時を打って。それが聴こえたらしい先生が、本を閉じながら俺を見遣った。

  「ここまでで、何かご質問はありますか?」

  「…いえ、多分ないです…」

  もう、説明が怒涛すぎて、多分半分も内容が入っていない。追いつけない申し訳なさに、自然と眉を下げてしまいながら、曖昧に答える俺に。先生が、はっとしたように目と口を開いた。

  「も、申し訳ありませんフラフィー!私としたことが、つい興奮してしまいました!」

  先生には珍しく、狼狽えたように困りながら、俺に頭を下げる。そんな先生に、俺も慌てて首を横に振った。

  「ぜ、全然です!先生、また詳しく教えてくださいね!」

  言いながら、机に置かれたままの本を掴んで、先生の前に差し出す。ずしりと重い、真新しい本。…きっと、先生が俺の為に、用意してくれた本。

  そんな俺と本を、先生の眼が、交互に見遣って。…その眼が、柔らかく細められる。差し出された手は、本ではなく、俺へ伸びて。

  「…貴方が、リジットの子を欲してくれることが。こんなに嬉しいとは。自分でも思っておりませんでしたよ」

  言いながら、また、俺の頭を撫ぜてくれる、大きな手のひら。

  先生の、いつも通りの穏やかな声が。それでも、弾むように嬉しそうな口調で、部屋に響いた。

  *******************************

  「リジットさん!俺、リジットさんの赤ちゃん産めるって!リジットさんの子ども、俺が身籠れるって!知らなかった、今日初めて聞いたよ!」

  その日の夜。リジットさんと2人で寝室に入った瞬間に、そう言いながら勢いよくリジットさんに抱き着く。…流石に、みんなの前で言うのは少し恥ずかしかったから、2人きりになるのを待ってたんだ!

  抱き着く俺の頬を、優しく撫ぜてくれてから、ぎゅ、と抱き締められる。そのまま、優しい声が上から降ってきた。

  「…スティケートに聞いたのか」

  「うん!今日、先生から授業を受けたよ!…このままいけば、俺が、今年中にはリジットさんの子どもを産めるようになるって!」

  嬉しくて、満面笑顔になってしまう。そんな俺に、今度は笑う気配がして。

  「…お前は、俺の子が欲しいと。そう、想ってくれるのか?」

  「そんなの、当たり前だよ!俺、リジットさんの子どもが欲しい!」

  彼の言葉に。リジットさんを見上げながら、勢い込んでそう言うと。俺の彼が、嬉しそうな、…どこか眩しそうな顔で、優しく笑う。

  「そうか。…そうか」

  「リジットさんは?その、…俺との子ども、欲しい?」

  そのまま。噛み締めるように、頷くリジットさんに、また顔が緩んでしまって。…それから、彼の胸に顔を埋ずめて、今度は俺が問いかける。返事の前に、彼の腕が、俺を強く抱き締めてくれて。

  

  「勿論だ。…そうだな、出来れば俺よりも、お前に似た子がいいな」

  腕と同じくらいに、力強い返答。そのあとで続けられた言葉に、思わず彼を見上げてしまう。えー!

  「だめだよ、俺よりもリジットさんに似た子の方がいいに決まってるよ!絶対格好良いし、優しいし、凛々しいし!」

  彼そっくりの、小さな黒狼の子どもを思い浮かべて、顔がにやける。絶対可愛い!でもって格好良い!知らず、じたばたと彼の腕のなかでのたくってしまう俺に。何処か不満そうに小さく鼻を鳴らす音が、上から聞こえた。

  「…俺に似た子どもだと、俺が子に嫉妬するかもしれないだろう。却下だ」

  そのまま、まるで投げるように言う彼の言葉が続けて聞こえて。拗ねてるようにも見える言葉に、思わず笑ってしまう。

  「なんでやきもちやくの。リジットさんと、俺の子なのに」

  「…お前を、俺が独占できなくなるだろう?例え子どもでも許しがたい」

  「えー」

  ますます拗ねたような声色が、愛おしくて。ますます笑ってしまいながら、背伸びをして、彼の頬に両手を伸ばす。俺の様子に気づいてくれたリジットさんが、高い背を屈めるようにして、俺に視線を近づけてくれた。

  そんな彼に、また、満面で笑顔を浮かべて。…そのまま、彼に触れるだけのキスをした。彼の尻尾が勢い良く揺れて、俺の足を優しく撫ぜるのが心地好い。

  「そんな心配しなくても、俺にはリジットさんが世界一だよ!」

  唇を離しても、額は寄せたままで。そう言ってから、ぎゅう、と力いっぱい抱き着けば。…そのまま、彼の腕に抱き上げられる。俺の目線よりも下に見える彼の顔が、愉しそうに笑った。

  「…その言葉、本当だな?」

  「勿論だよ!大好きなリジットさんの子どもだから、俺は欲しいんだもの。俺にとって、リジットさんは誰よりも大好きなひとだよ!」

  彼の言葉に、大きく頷きながら。リジットさんの頭を抱えるように、ぎゅう、と抱き締める。そのまま、ベッドまで連れて行ってもらう途中で。彼の尻尾が嬉しそうに、満足そうに大きく揺れているのが、上からでも見て取れて。

  

  それに、俺もまた、満面で笑いながら。ぴんと立つその耳に、音を立ててキスをした。

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