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イケメン狼獣人がぽっちゃり少年を娶るはなし。【19】

  雷は、大の苦手だけど。…あの日から、少しだけ、好きになった。

  雨音が聴こえた気がして。閉めたカーテンの隙間から、外の様子を伺い見た。…真っ暗な中にも、空が真っ黒な雲に覆われて、夜以上に暗いのが見て取れる。ぽつんぽつんと小さな雨粒が窓を打って。それから、あっという間に大粒の雨に変わった。…ああ、これは雷が来るかもしれない。

  さっきよりも更にカーテンをぴったりと閉めてから、ベッドの中に避難する。布団をかぶって、リジットさんの枕もその中に引っ張り込む。それを抱きしめるように円くなって、布団に包まった。こうすると、外の音が大分遮断される。ふかふかの枕に顔を押し当てると、彼の匂いが全身に回るようで、安心して目を閉じた。

  今日は、リジットさんは少し帰りが遅いんだって、今朝言っていた。だから、先に夕食をとってくれ、とも。思い出したその言葉に、布団の中で少しだけ口を尖らせた。

  「…少し遅いくらいだったら、全然待つのにな」

  心の中で呟いたはずの言葉が、音となって布団に漏れる。俺としては、先に食べててくれ、よりも、待っててくれ、って言って欲しい。勿論、それが、リジットさんが俺を気遣ってくれての言葉だって、知ってるけど。でも。…やっぱり、彼も、俺と一緒にご飯を食べたいんだ、って、そう思って欲しい。思ってくれているなら、そう言って欲しい。その方が、俺は、何倍も嬉しい。

  だから、みんなには先にご飯を食べてもらったけど。俺は彼を待って、まだご飯を食べていない。…リジットさんが帰ってきたら、怒られるかな。でも、リジットさんと一緒じゃないと、ご飯もあんまり美味しくないし。俺のつくったものを、リジットさんが美味しい、って食べてくれるのを見るのが、俺の何よりの幸せだし。…そう、正直に言ったら、リジットさんも笑ってくれるかな。いや、寧ろ、リジットさんも待っててって言ってよ、ってそれも正直に言ってしまおうか。そんなことを思いながら、丸まったまま、枕に更に頬を寄せた。

  布団越しにも、雨音が更に強まったのが、微かに、だけど確かに聞こえて。…リジットさんは大丈夫だろうか、って、ぎゅうと枕を抱きしめた。今から帰ってきたら、この雨が直撃だ。もしかしたら、雷が途中で鳴り出すかもしれないし。…そしたら、この雨が止むまで、王城の方で待ってるかもしれない。その方がいいな、だって危なくないし、リジットさんも濡れないし。

  そう考えているうちにも、ごろごろと空が鳴り出した。…ああ、やっぱり来ちゃったか。これから更に鳴り出すだろう雷に備えて、枕を身体で挟みながら耳を押さえる。…それから、抱き着くように、もう一度、枕に顔を埋めた。

  雷が来ないうちに、…あの日のことを、脳裏に浮かべる。布団にもぐるよりも、効果のある、俺の雷撃退方法。思い出すだけで雷も怖くなくなる、俺の幸福な想い出。…大嫌いだった、今でも大の苦手な雷が。それでも、少しだけ好きになった、あの日のこと。

  あの日も、酷い雷だった。

  まだ、リジットさんと婚約してひと月も経っていなかった頃だと思う。逢うのも片手で足りるほどの回数で、…俺がちゃんと、彼の顔を見ることも出来なかった頃。

  リジットさんがあんまりにも格好良いものだから、逢うだけで緊張してしまって。彼を見るだけで、いつも真っ赤になってしまうのが恥ずかしくて。そんな俺を見られるもの居た堪れなくて、ほとんど俯いてばかりだった。

  最初は、お互いのことをゆっくり話して知っていこう、って、リジットさんがそう言ってくれて。お休みごとに、俺の家まで来てくれていたのに、話すどころか顔を見ることもままならなくて。…そんな自分が情けなかった、そんな頃。

  あの日も、両親が張り切って準備をしていたサロンにリジットさんをお通しして。お昼過ぎから夕刻まで、ずっと俺と一緒にいてくれたのに。…俺ときたら、ほとんど顔も上げられなくて。ずっと顔が熱くて喉がからからで、ろくに話せもしないでお茶ばっかり飲んでた。

  勿論、今みたいにソファにくっついて座る、なんてこと、出来るはずもなくて。大きめのティーテーブルに向かい合って座った、リジットさんの。その端正な顔を、俯いたままちらりと上目で見遣っては、すぐに目を伏せるっていうのを繰り返してばかりだった。

  …それでも、いつ、俺が彼の顔を盗み見ても。リジットさんは、ずっと、優しい眼で、俺を見ていてくれていたから。…それだけで、俺は胸が苦しくなって、呼吸もおぼつかなかったのを、覚えている。

  結局、何を話したんだろうか。…俺からは、何も話していない気もする。話したいことも、聞きたいことだってたくさんあるのに、全然口が回らなくて。結局、上手に話せなくて、リジットさんが軍についてお話をしてくれているのを、ただ聞いていたんだっただろうか。

  ただ、夕暮れ近くなって、ただでさえ暗くなってきた空に、厚い雲がかかって。雨が降りそうですね、と漸く言えたことだけは、覚えてる。その言葉に、優しい眼でリジットさんが頷いてくれて。もしかしたら雷がくるかもな、って、彼がそう続けてくれたことも。

  『雨が来る前に、お暇しよう』

  そう言って、リジットさんが立ち上がった。…それが、少し寂しかったけれど。話すどころか顔すら見られない俺が、引き留めるなんておこがましいから。…せめて、最後くらいはちゃんと、顔を見てご挨拶しようと、俺も慌てて立ち上がる。

  リジットさんが来るときに乗ってきた馬車は、お屋敷に帰ってもらっていたから。帰りは、俺の家から馬車を出すことを申し出ていた。だから、馬車の準備もお願いしないと。そんなことを思いながら、ドアを開けようとそちらに向かって。

  

  …前触れもなく、何かが落ちるような音が、あたりに響いた。どぉんっ、て、地鳴りすらするくらいに、空から地にまで響く音。

  『うわぁっ!』

  思わずしゃがみこんでしまった俺の背で、まだカーテンを閉めていない窓から、空が眩く光った。雷だ、って思うが早いか、耳を塞ぐ。

  その一瞬だけは、部屋にリジットさんがいるのも忘れて、しゃがんだまんま円くなった。本当は、ベッドのなかに逃げ込みたい。でも、この部屋がサロンだということだけは覚えていたから、ただ、その場で蹲る。それに追い打ちをかけるように、雷鳴が二度三度と轟いた。

  小さい頃から、そうだった。別に何かあったわけじゃないのに、俺は雷がすごく苦手で。でも、ほんの幼児だった頃はまだしも、5歳も過ぎた頃には、俺は両親から何の期待も興味も示されなくなっていたから。それこそ、7つの時に、侯爵さまに、…言い方が悪いけれど目をつけられていなかったら。俺はきっと、何の教養も身につけさせてはもらえなかったんじゃないだろうか。そう思うほどには、俺は、彼らの眼中にも入っていなかった。両親が俺に施してくれた数々の習い事も教育も、侯爵さまに『嫁入り』するためのものだったから。両親にとって俺は、侯爵さまに嫁入りすると決まったことで、漸く存在価値を見出されたのだろう。

  …だから、そんな俺が、雷が怖い、なんて泣きついても。両親には、相手にもしてもらえなかった。メイドさんたちはたくさんいても、俺についていてくれるひとはいなかったし。だから、ひとりでなんとか対処することを覚えたんだ。…ひとりでやり過ごすことを、覚えざるを得なかった。雷だけじゃない、悪夢を見ても、何が怖くても寂しくても、ずっと。

  だから。この時も、咄嗟に出たのは、いつもの行動だった。ひとりで蹲って、耳を塞いでやり過ごす。雷が去るまで、ずっと。怖い気持ちがなくなるまで。不安な感情が消えるまで。…寂しくなくなるまで。それが当たり前だったから。俺には、それしか出来なかったから。

  そんな、俺の。…目の前に、手が差し伸べられた。驚いて、耳を塞ぐ手も緩んだけれど、…その時は、雷なんて耳に入らなかった。そのまま、恐る恐る、俯いていた顔を上げた、俺の。…視界に入ってきたのは、俺を心配そうに見遣る、彼の綺麗な琥珀色の四白眼だった。…きっと、正式に婚約してから、彼の眼を真っ直ぐに見られたのは、あれが初めてだった。初めて逢った日、彼に恋に落ちたあの日と同じように、俺を真っ直ぐに見てくれる、鋭くて、けれど優しくて綺麗な彼の眼差し。

  『…大丈夫か?』

  眼と同じに、心配そうな声。それと一緒に、その手が俺の頬を撫ぜてくれた。少し硬い肉球の感触が、擽ったかったのを覚えている。その指が、まるで宝物を扱うみたいに、とても優しい手つきで俺に触れてくれたことも。

  

  その、指に感触に、灯がともるみたいに顔が熱くなりながらも。…けれど彼から目が離せなくて、ぽかん、と、間抜けな顔で彼を見上げてしまっただろう俺に。気づくように、彼が綺麗な琥珀色の眼を軽く眇めた。それから。

  『…そうか。お前は、雷が苦手なのだな』

  少し低くて硬質の。だけど指先と同じに優しい声色で、リジットさんがそう言って。…そのあとで、彼の両腕が、俺に降りてきた。そのまま、俺を包むように抱き締められて、そのまま抱えられる。…もう、声も出ないくらいに驚いた。

  今みたいに、その身体に抱き着くことも。逆に振り解くなんてことも、とても出来ずに。ただ、耳を押さえたまま全身硬直してる俺に。全く構わないような足取りで、リジットさんが、俺を抱きかかえたまま、サロンに鎮座しているソファに歩み寄る。何の戸惑いもなくそこに腰かけると、俺を彼の膝の上に下ろして。…耳を押さえたまま固まっている俺の指を、そこから離して、優しく繋いでくれた。

  『もう大丈夫だ。これからは俺がいる、ひとりで怖がらなくていい』

  そう言って。俺の頭を撫ぜてくれて、ぎゅうっと抱き締めてくれた。心臓の音がどきどきとうるさくて、全身が脈打つようで、もう外で雷が鳴っているのすら分からない。あんなに苦手だったのに、リジットさんに抱き締めてもらっているだけで、音も何も気にならなくなっていた。ただ、俺の身体に回る彼の腕の感触だけに、俺の全神経は向かっていて。服の上からでも伝わるような、彼のあたたかい体温が沁み込むみたいに心地好くて、でも恥ずかしくて。彼に腕を回すなんてことも、とてもできずに。ただ彼の腕の中で、硬直するように緊張してる、俺に。

  『お前が怖がるもの、全てからお前を護ろう。だから、どうか俺を頼って欲しい。…お前が願うことは、全て、俺が叶えるから』

  囁くような声が。耳から全身に溶けて、響いた。声を出すよりも先に、視界が滲んで。緊張が解けると同時に、溢れるみたいに涙が零れる。…思えば、誰かに頼ってもいいなんて。そう、誰かに言ってもらえるなんて、初めてだった。護ってくれるって言われたのも、一緒にいてくれるって言われたのも。

  何も言えないまま、ただぼろぼろと泣いているだけの、俺に。その頭をまた、リジットさんが撫ぜてくれて。…その優しい感触に背を押されるように、精いっぱい口を開いた。

  『だ、だきついてもいいですかっ』

  それでも、その時俺が言えた言葉は、それだけで。けれど、そんな俺の言葉にも、リジットさんは。その琥珀色の眼をまた、優しく細めて俺を見てくれて。

  『勿論だ』

  そう言って。俺をまた、ぎゅう、と強く抱き締めてくれた、から。俺も、ずっと固まっていたままの手を、漸く彼の背に回して。それから、しがみつくように、力を込めて、抱き着いた。

  誰かに抱き着くなんて、初めてだったから。力の加減も分らなくて、痛かったかもしれない。けれど、リジットさんは、そんな俺の頭や背を、ただ、優しく撫ぜてくれて。

  『許可など、取る必要もない。お前は、俺にしたいことをしてくれていい。この身も心も、全てはお前のものなのだから』

  そう、優しい声で、また俺に囁いてくれるものだから。俺も、彼の言葉に何度も、何度も頷きながら。『俺もです』、って、大きな声に彼に伝えて。…彼にしがみついたまま、また泣いた。

  

  もう、雷が鳴っているかどうかすらも、何も気にならなくて。ただ、彼にぎゅう、と抱き着きながら。…幸せだ、って、強く想った。

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  布団に潜り込んで、幸福な思い出に浸っているうちに、うとうととしてしまっていたらしい。まだ強い雨音と、それとは違う廊下の喧騒に、ふ、と意識が浮上した。

  雷は鳴ったのだろうか、それとも今日は来なかったのだろうか。やっぱり、リジットさんのことを考えてると、雷も気にならなくなるなあ。そんなことを、まだ眠っている頭でぼんやりと考えながら、もぞもぞと布団から顔を出す。枕を抱きしめながら、何故だか騒がしいドア向こうの廊下へ、寝ぼけた目を向けた。いつもは静かな廊下に、力強い足音が響くのが聴こえて。

  「フラフィー!」

  ばたん、と大きな音を立てて、ドアが開く。声と一緒に部屋に飛び込んできた俺の旦那さまの姿は、…全身、ずぶ濡れだった。黒色の軍服からも、艶やかでふかふかの毛並みからも、水滴が滴り落ちるくらいに。それこそバケツの水でも被ったのかってくらいに、ずぶ濡れで。

  「えっ!?りじ、リジットさんどうしたの!?なんでそんな濡れてるの、早く拭かないとっ」

  そんなリジットさんの姿に、一瞬で、残っていた眠気も一気に吹き飛んだ。あわあわしながら、布団を跳ねのけてベッドから飛び降りる。ていうか、これは湯浴みをしたほうが!お湯って沸いてるよね?浴槽にお湯を張ってもらうようお願い、いや俺がした方が早いか!いろいろなことをいっぺんに頭に巡らせながら、彼のもとに駆け寄って。…そのまま、ぎゅう、と抱き締められる。雨の匂いが、俺の鼻先を掠めた。…ああ、この濡れ様は、雨の所為か、って、遅まきながら悟る。彼と密着している俺の身体も、少しずつ濡れていっては、彼の体温であたためられる。

  「大丈夫だったか!?すまなかった、怖かっただろう」

  心配そうな声が、耳に響いて、それから溶けた。濡れた彼の軍服に顔を摺り寄せて、その背に腕を回す。ぽたぽたと彼から落ちてくる水粒すら心地好くて、いとおしかった。

  「…もしかして、雷が鳴ったから?俺が怖がってるんじゃないかって思ってくれたの?」

  「そうだ。…お前がまた、ひとりで蹲っているんじゃないと気が気ではなくてな。居ても立っても居られなくなって、走って帰ってきた。流石に、この天気で馬車は馬も怖がるからな」

  だから、そんなにずぶ濡れなのか。小さく笑ったつもりが、嗚咽になりそうで。滲んだ視界を隠すように、更に彼の胸に顔を押し付けた。俺の頭を、彼の手が撫ぜてくれる。湿る髪に、彼の手のぬくもりが更にあたたかく沁み込んでいく。それが心地好くて、目を細めれば。目に溜まった水粒が、彼の濡れた軍服と混ざって染みた。

  「…そんなの、リジットさんが風邪ひいちゃうよ、だめだよ。俺は大丈夫だよ、リジットさんのこと考えてたら怖くなかったんだ」

  それでも、彼の方が心配で。彼の軍服に額を擦り寄せながら、そう返す。確かに、雷が怖くて布団にはもぐってたけど、…それでも、リジットさんとの想い出に浸ってたら、全然怖くなかったし。

  けれど、俺の言葉には説得力がなかったのだろうか。頬を撫ぜられて、笑いながら少しだけ顔を上げれば。…困ったように笑うリジットさんと、眼が合った。

  「…その言葉は嬉しいが。怖くて、ベッドにもぐっていたんだろう?無理をするな。…俺を頼って欲しいと、言っただろう」

  そのまま返された言葉に。ぐ、と喉奥で少しだけ唸ってから、…最後の言葉で、顔が緩んだ。リジットさんも、あの日のことを覚えていてくれてるのか、って嬉しくなる。さっきまで浸っていた、あの日の想い出。

  「…覚えててくれたの?」

  彼を見上げながら問いかけると。リジットさんも、眼を優しく細めて、また、俺の頬を撫ぜてくれた。今度は手の甲で撫ぜられて、濡れた獣毛が俺の頬を擽る。

  「当たり前だろう。お前と過ごした日のことを、俺が忘れるわけもない。…それが、あんなに心許なさそうな姿であれば、猶更な」

  眼と同じに優しい声が、そう俺に告げる。それから。

  「…お前に、もうあんな姿をさせるものか。お前が怖がるものなど、俺が全て蹴散らしてやろう。…だから、もっと俺を頼ってくれ」

  いいな、って。指の腹で俺を頬をなぞりながら、真摯な眼が俺を見つめる。…心臓が、ぎゅうって掴まれたみたいに苦しくて。けれど甘くて、なんだか泣き出しそうになった。…こんな気持ちも、リジットさんに逢ってから、初めて知った。リジットさんは、俺に、初めてのことをたくさんくれる。初めて逢った時から、今だって、きっと。

  ただ、ぶんぶんと何度もうなずいてから、俺も真っ直ぐに彼を見つめ返す。彼の、綺麗な琥珀色の四白眼に、俺が映っている。…それだけで、こころが蕩けそうになるくらいに、幸せになった。

  「ありがとう、リジットさん」

  そう言って、背伸びをした。それだけで、俺が何をしたいのか分かってくれたんだろう。彼が、俺に合わせるように屈んでくれて。さっきよりも低い位置に来た彼の肩に、俺も手を乗せる。

  そのまま、彼の唇に触れると、雨と水の味がして。それが申し訳ないのに、何故だかすごく、嬉しくて。彼にぎゅう、と抱き着きながら、小さく笑った。

  そのあと。ずぶ濡れのリジットさんを、浴室へと強制連行して。それから、俺も着替えてご飯を一緒に食べた。

  リジットさんには、まだ食べてなかったのか、って少しだけ怒られたけど。でも、俺はリジットさんと一緒に食べたい、って。だから、リジットさんも、先に食べてじゃなくて、待っててって言って、って。そう、俺も主張したら。…リジットさんも、笑いながらそうだな、って。分かった、って頷いて、俺の頭を撫ぜてくれたから。

  これからは、リジットさんが遅くなっても、待ってていいんだ、って。リジットさんと一緒にご飯を食べられる、って。それだけで、俺は大満足だった。

  いつの間にか、雨は大分小降りになって。遠くで、ちかちかと雷が星のように光っているのを見遣りながら。

  …やっぱり、雷は苦手だけど。リジットさんが、こうやって、俺を抱きしめてくれるから。

  ほんの少しだけだけど、…雷もいいな、なんて。そんなことを思ってしまったのは、俺だけの秘密だ。

  

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