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イケメン狼獣人がぽっちゃり少年を娶るはなし。【59-ハロウィン1話】
もうすぐ、ハロウィンだ。
「おかーさん!ことしもはろえんする?」
俺の、膝の上で。大人しく獣毛を梳かれているアレクが、俺を振り向くように首を伸ばしながら、そう問いかけてきた。はろえん、とはハロウィンのことだ。もう大分おしゃべりが上手になったアレクだけれども、そういう言葉はまだ上手に言えないその口調に、思わず顔が緩んでしまう。
リジットさんや、子どもたちのグルーミングは、俺の日課だ。リジットさんと婚姻した時から、これだけは、俺が絶対させてもらいたくて、ずっと任せてもらっている。子どもたちが生まれる前は、リジットさんのグルーミングは朝と夜の2回、やらせてもらってたけど。今はリジットさんは夜、ロバストは朝、アレクは昼間、と言うスケジュールだ。…本当は、リジットさんのグルーミングも今まで通りに朝と夜、やらせてもらいたかったんだけど。ロバストも学校に入ったし、、お前も忙しいだろう、って、リジットさんは夜だけになった。…少し寂しい。
特に今は、そろそろ夏毛から冬毛に代わる頃だから、いつもよりもさらに丁寧に獣毛に櫛を入れる。リジットさんや子どもたちの獣毛は、いつもふかふかで手触りが堪らなく好くて、俺はこのグルーミングの時間が堪らなく大好きだ。特に、ふわふわの夏毛から、もこもこの冬毛に代わるこの季節は、俺にとっては楽しみで仕方がない、至福の時期だったりする。
リジットさんは、『この時期のグルーミングは面倒だろう?自分でやるから、大丈夫だ』って俺を気遣ってくれるんだけど、…寧ろ、どうしてもやりたいのは、俺のほうで。俺がどうしてもさせてもらいたくて、彼にお願いして、やらせてもらってる。だって、こんなに心地好くて、やってる俺のほうが気持よくて、大好きなんだもの!梳かしてる間も、手で撫ぜ梳くだけでもふわふわで気持ち好いし、抜けた獣毛がブラシに掬われてごっそり取れるのも達成感があるし。何より、綺麗に梳かして、いつもよりも更にふわふわのふかふかになったリジットさんに抱き着いて、その獣毛に身体を沈める心地好さと言ったら!どんなものでも、例え最高級の毛布だとしたって、あの心地よさには敵わないだろう。彼の腕のなかに抱きしめられて、そのふかふかの獣毛に包まれるだけで、…俺は身体中からこころまで幸せで満たされて、あっという間に眠くなる。…ああ、と言うことは、そろそろ起きるのが更につらくなる時期にもなるんだなあ。本当に、リジットさんの腕のなかは、気持ち好くて、心地が好すぎて、…そこから離れたくなくなるんだもの。特に冬の朝みたいな、寒さが厳しい時は、更に。
そんなことを想いながら、アレクの獣毛に、丁寧に櫛を入れる。まだ幼いからだろうか、アレクの獣毛はリジットさんに比べると幾分かふわふわと柔らかい。ロバストは、獣毛も大分大人に近づいて、しっかりとした手触りになってきたんだけれど。勿論俺は、どっちの獣毛も大好きだ。ブラシに絡んだふわふわの獣毛を手に取って、丁寧に横に置いた布の上に置く。…これは、後でぬいぐるみにするんだ。換毛期で抜け替わる獣毛は、その量も半端なくたくさんあるから。こうやって、丁寧に集めて置いて、こっそりとぬいぐるみにしているんだ。こうやって、みんなの獣毛でつくったものは、他のぬいぐるみ以上に、リジットさんや、子どもたちにそっくりなぬいぐるみになってくれるから。それが嬉しくて、換毛期のたびに、みんなのぬいぐるみをつくって、大切に取って置いてある。…流石に、みんなにそれが分かったら、引かれるかな?って。このぬいぐるみは、俺だけの秘の宝物なんだけど。…いや、でもきっとアステールなら分かってくれるに違いない!今度見せてみよう!
そんな、もうすぐ変わってしまうだろう、この頃だけの獣毛を、噛みしめるように手でも梳かしながら。わくわくとした顔で、俺を見上げてくる可愛い次男に、俺も笑って見返した。
「うん、もちろんするよー!もうランタン用のかぼちゃも用意したからね、みんなでかぼちゃのランタン作ろうね」
「やったー!おれがいちばん…じゃなくて、ジーニャにいちばんおおきいかぼちゃあげてね?」
俺の言葉に、アレクが大きく両手を上げながら、口角も大きく上げた。口の端から、まだ小さな犬歯が覗くのが可愛くて、それだけで俺の顔も緩んでしまう。その口から飛び出た言葉も可愛くて、俺の顔はますます崩れた。…ああ、アレクもお兄ちゃんなんだなあ。
「ジーニャが一番大きなかぼちゃでいいの?」
「うん!それでね、おれがいっしょにつくってあげるの!おれおにいちゃんだから!」
きらきらと眼を輝かせながら、アレクが膝の腕で大きく腕を振って俺に言う。その言葉に、…獣毛を梳かす手を止めて、ぎゅう、とアレクを抱きしめた。ふわふわの獣毛と、お日様のようになあったかい匂い。…この日だまりのような匂いは、リジットさんやロバストとおんなじだ。あったかくて、安心する、俺の大好きな匂い。…その匂いに、俺の誰よりも大好きな旦那さまの姿を思い浮かべながら、ふわふわのその頭を、梳くように撫ぜた。ねえリジットさん、俺たちの子どもは、やっぱりリジットさんそっくりで、みんな優しくて格好良いよ!
「そっかあ、アレクはえらいね。お兄ちゃんだね!」
「うん!」
俺の言葉に、アレクが満面に笑顔を浮かべて、嬉しそうに頷く。それから、眼をきらきらと輝かせて、言葉を続けた。
「それでね、ジーニャといっしょにごーすとさんするの!」
…言われた言葉に、アレクを抱きしめたまま、一瞬固まった。ごーすと?さん?俺にとっては唐突に出てきた言葉に、頭の中に疑問符が舞い散って、言葉が出てこない。
あれ、ごーすとさんって幽霊のこと?なんで『さん』付け?多分ハロウィンの仮装のことを言ってると思うんだけど、ゴースト?どういうことだろう、幽霊が出てくる本か何かを、見たか、読んだかしたのかな?いやでも絵本ならともかく、アレクはまだ自分で本を読んだりできないから、誰かが読んであげたんだと思うんだけど。…でも、俺は怖い話とかあんまり得意じゃないから、幽霊が出てくるような本は読んであげられないからなあ。もしかして、書庫かなにかに、アレクが可愛いと思うような幽霊が出てくる絵本とかがあったのかな?それをリジットさんやメイドさんが、読んであげたりしたのかな?そんなことが、一瞬で頭をぐるぐると、回っていって。そんな俺に気づかないように、弾んだ声でアレクが更に言葉を続ける。
「にいちゃんはね、かっこいいからくーけつきなんだよ!にいちゃんとおとうさんはいっしょなんだ!」
さっきと変わらず、弾むように明るいアレクの声。その言葉に、今度は間髪入れずに頷いた。分かる!分かるよアレク!って、アレクを抱きしめる腕にも力がこもってしまう。
「そうだよね!おとうさんとおにいちゃんはすっごく格好良いから、吸血鬼が似合うよね!」
ぎゅうぎゅうと、アレクを抱きしめながら、俺も力説する。初めてうちでハロウィンをした時から、リジットさんの仮装は吸血鬼だ。最初の年は、どのくらいまでハロウィンの仮装をしていいのか分からなくて、手触りの良い黒色のマントに赤色の裏地、それをアンティークのチェーンとピンで留めるっていう、シンプルな衣装を用意した。そんな俺に、笑ってそのマントを黒色の軍服の上からを羽織ってくれたリジットさんの姿は、もう堪らなく格好良くって!もうメイドさんたちと一緒に、感嘆の声を上げながら見惚れてしまったことも、昨日のことのように想い出せる。もう、俺の旦那さまは、本当に誰よりも格好良いんだから!
だから、そんなリジットさんに見合うように、俺も吸血鬼の衣装をもっと格好良くしたくて。その結果、彼の格好は年々グレードアップしている。だって、俺が衣装を頑張って格好良くしたら、ただでさえ世界一格好良いリジットさんがもっと、もっと格好良くなるじゃないか!
とは言っても、俺が、怖い話はやっぱり得意じゃないから、俺が見られるのは吸血鬼の挿絵だけなんだけど。それでも、どうやら歴代の近衛兵長様のなかには、そういう怖いものがお好きな方もいたようで。書庫で試しに資料を探してみたところ、吸血鬼の本だけでも、何冊か見つかった。それを見ると、マントの下は燕尾服や、ベストにジャボタイのような格好が多いようで、それを毎年、参考にさせてもらっている。とは言っても、流石に燕尾服を自分で作るのは、俺の技量的にまだ無理なので、作るのはベストとジャボタイだ。でも、ジャボタイにマントと言うリジットさんもすごく格好良くて、俺は毎年彼に見惚れてはうっとりしてしまう。だって、本当に格好良いんだよ!いつか、燕尾服な吸血鬼のリジットさんも見てみたいなあ!なんて、そんなことを密かに想っている。…その為にも、精進しなくては!
ああでも、去年のリジットさんも本当に格好良かった、なんて、その姿を想い出してうっとりしてしまう俺に。弾む声で、アレクがまた、言葉を続けた。
「それでね、おかーさんはまじょなの!おれも、あのぼーしとおそろいがいい!」
その言葉に、思わず目を円くしてから、そのまま細めた。あの帽子、っていうのは魔女帽子のことだろう。紺色で、つば広で、帽子のてっぺんが尖っていて。その三角の根元に、橙色のりぼんが結わいてある魔女帽子。そうか、アレクの絵には確かにゴーストさんが三角の帽子を被っていたものね。
「うん、じゃあアレクとジーニャとおかあさんが、お揃いの帽子だね」
笑ったまま、アレクの頭をもう一度撫ぜる。俺の言葉に、アレクが今日一番の笑顔を浮かべて、大きく頷いた。そのまま、膝の上で、器用にくるり、と向きを変える。
「うん!あのね、おかあさんのまじょはいちばんかわいいんだよ!おれ、おかーさんだいすき!」
俺と、向き合う体勢で。今日一番の笑顔のまま、アレクが弾んだ声で、真っ直ぐに俺に言った。そのまま、ぎゅう、と俺に抱き着いてくる、小さくてふわふわの身体に。俺も、またぎゅうぎゅうと抱きしめながら、『ありがと』、と、『おかあさんもアレク大好きだよ』、っていう言葉を、何度も、何度も繰り返した。
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「だからね、今年はリジットさんとロバストが吸血鬼だよ」
子どもたちも寝静まった、夜の寝室で。今日も、寝室のベッドの上で、彼のグルーミングをさせてもらいながら、昼間の出来事を彼に話す。勿論、今日の話題のメインはハロウィンの話だ。
この寝室では、俺たち2人きりの時間。彼の獣毛を梳かしながら、そう彼に言う。俺の言葉に、前を向いたまま可笑しそうにリジットさんが笑った。ブラシを掛けると、ふわふわの夏毛がブラシに絡んで、もこもこの冬毛が顔を覗かせる。そのまま抱き着きたくなる衝動をなんとか抑えながら、丁寧に梳った。そんな俺の手に、リジットさんが擽ったそうに、それでも気持ちよさそうに身動ぎする。そんなリジットさんの様子に、彼の獣毛を梳く俺の手にも、一層力がこもった。
「今年は吸血鬼が2人か」
「そうだよ!アレクもね、お兄ちゃんとおとうさんは格好良いから吸血鬼、って!やっぱりアレクも分かってるよね!俺もそう思う!」
言いながら、テンションが上がってしまうのが自分でも分かった。思わず持っていたブラシを力いっぱい握りしめて、力説してしまう。だって、俺の旦那さまは世界一格好良いんだもの!ロバストも、5歳にして既に格好良くて、でもまだまだ可愛いし、きっと吸血鬼の格好がよく似合う。去年までは、子どもたちはみんな顔のついたかぼちゃの帽子を被せて、色違いの裾の長い上着にかぼちゃパンツ、というジャックランタンの仮装をさせていたから。ハロウィンのこどもたちはすごく可愛い、と言う印象だったけれど。今年は、今までとはまた違うハロウィンになるのかな、って今からすごく楽しみだ。…あ、そうだ。
「でね、アレクとジーニャがゴーストさんがいいんだって」
ふかふか、からもこもこへと替わっっていく冬毛を手で梳きながら、アレクの希望も彼に伝える。そうすると、不思議そうな空気が一瞬漂って。
「…ゴーストさん?」
顔でも不思議そうな顔をして、リジットさんが俺を振り返った。…だよねえ、俺もそんな反応になったよ。ああ、でもそうすると、リジットさんがそんな幽霊の出てくる本を読んであげたとかじゃないのか。じゃあメイドさんかな?そんなことを思いながら、リジットさんの顔を覗き込み返して、彼に笑う。
「うん。何かね、白くて可愛い幽霊の格好がしたいみたい。なんだろ、シーツを被って眼をくりぬくような、簡単な仮装でいいみたいなんだけど。そんな、可愛い幽霊が出てくる絵本でも読んだのかな?」
あの後で、アレクにどんなゴーストさんが好いの?って聞いたら、絵まで描いて説明してくれた。白色の紙に、鉛筆で描いてくれたその絵を見ると、円いおたまじゃくしのようなものに、楕円形の目がある、可愛いもので。その頭だろう部分に、三角形の…多分帽子が乗っている。こんな幽霊ばっかりなら、俺も全然怖くないんだけどな。そんなこともリジットさんに話しながら、グルーミングを続ける。
「アレクが描いてくれた絵も、後で見せるね」
「それは楽しみだ」
俺の言葉に、リジットさんが嬉しそうに、眼を細めて俺を見てくれる。それが嬉しくて、俺の顔も、自然に緩んだ。彼の獣毛を梳く手にも、ますます熱がこもる。でも何度も丁寧に梳るリジットさんの背の獣毛は、もうすっかり抜けた夏毛も取れたようだった。ブラシを掛けても、もうその繊維に獣毛がつくことはない。…ちょっと残念。でも、まだ背中のブラッシングが終わっただけだし!まだ換毛期だって終わってないから、また明日には獣毛が抜け替わるだろうし!そしたら、また背中にもブラシを掛けさせてもらおう。
そんなことを楽しみに思いながら、尚も丁寧に彼の獣毛を梳く。すっかり綺麗になった彼の獣毛は、いつも以上に艶々ふかふかとして、撫ぜている俺のほうが心地好いくらいだ。…またもその背に抱き着きたくなって、その衝動を必死に抑える。
「…で、お前は今年も、魔女の格好をするのだろう?」
「え?あっ、うん!そう、俺はまた魔女だよ!アレクも、あの大きな魔女帽子が好きみたいでね、…俺のこと可愛いって」
彼の背から、その腕へと手を伸ばして、ブラシを通す。ブラシの繊維がふかふかの獣毛に沈む感触に目を細めながら、そう言葉を続けた。あの時のアレクを想い出して、少し照れてしまう。でも、すごく嬉しくって、胸があったかい。
俺の格好は、最初の年からずっと年変わらず、魔女帽子。その下は、少し長めで裾にフリルのついたワンピースと、下半身にはかぼちゃパンツ。…というか、これはドロワーズと言うものらしい。一応下着なんだけど、…俺が、肉付きがよくてふとましすぎる所為で、いつもワンピースの丈が上がってしまうから。俺が着ると、ワンピースがその意味をなくして、ドロワーズがほとんど丸見えになってしまう。だから、本当は上に着るワンピースをもっと、俺が着ても丈が長くいられるようなワンピースに替えるとかしたほうがいいかな、とか。そもそも俺は男だから、魔女の仮装だと言ってもワンピースとかじゃないほうがいいのかな、って自分でも思ったりするんだけど。
…でも、メイドさんや、子どもたちが、これがいい!って選んでくれるのが、丈の短いワンピースで。…何より、俺の誰よりも大好きな、リジットさんが。そんな格好を俺を見て、嬉しそうに笑ってくれるから。優しく眼を細めて、俺を愛おしそうに見てくれる、俺の大好きな顔で。『よく似合ってる』、って。『お前は、本当に愛らしいな』、って、その眼と同じに、優しい声で言ってくれるから。…『お前のその格好が、堪らない』って、蕩けそうに甘い、低い声でそう言って。俺を抱きしめてくれるから。…俺は、毎年この格好を喜んで、着てしまう。その『夜』を期待して、身体を熱くしてしまう。
今も、毎年の、ハロウィンの『夜』 のことを思い浮かべてしまって。それだけで、俺の身体に、じんわりと熱が灯った。頬も、指先までじわじわと熱くなって、手の中のブラシを更に強く握りしめてしまう。そんな、俺に、…リジットさんが、身体ごと、顔を向けた。俺と向かい合う格好になった彼が、…優しい眼で、俺の顔を覗き込む。その指が、俺の頬に当てられて、ゆっくりと沈んだ。彼のそんな行為だけで、俺の心臓が、…何かを期待するみたいに、大きく波打つ。
「矢張り、アレクも俺に似ているな。お前のあの格好を、俺も堪らなく好いているぞ。どんな格好のお前もこの上なく愛らしいが、ハロウィンの仮装も格別だな。お前のあの姿が見られることが、俺にとってはハロウィンの一番の楽しみなんだ」
いつもよりも饒舌で、熱のこもったリジットさんの言葉。それが擽ったくて、でもすごく嬉しくて。彼の手に、俺の手を重ねながら、照れも混ざった笑顔が自然と顔に浮かんだ。顔に浮かべた。
そんな俺に、『勿論、皆で行うハロウィンのパーティーも楽しみだがな』、って。悪戯っぽく笑って、リジットさんが俺に、顔を寄せる。ちゅ、って音を立ててキスをしてから、目を見つめて笑い合った。
「俺も、リジットさんの吸血鬼の仮装、毎年すっごく楽しみだよ!リジットさんは本当に、世界一格好良いから、あの格好も最高に格好良くて、俺、大好きなんだ」
今年も俺、頑張って格好良い衣装用意するからね!楽しみにしててね!そう、彼の目を見つめたまま、宣言するようにそう言うと。『それは楽しみだな』、って、リジットさんもまた、優しく眼を細めてくれる。
ねえ、リジットさん。…その笑顔だけで、俺は何よりも頑張れるんだよ。そんなことを、幸せが満ちていくこころで、想いながら。今度は俺から、彼へと顔を寄せて。その口に、自分の唇を重ねた。
目を閉じた、その奥に。みんなで仮装をして、笑い合う光景が、色濃く映って。…その光景を現実にするために。みんなで、楽しくて、幸せなハロウィンを今年も送るためにも。ハロウィンの準備、頑張るぞ!って。大きく決意しながら、彼の背に、腕を回した。
そんな俺に。リジットさんが、耳元で。…『ハロウィンの夜も、期待してもいいな?』。なんて。おなかの奥にまで響くような、低くて甘い声で、囁くものだから。
俺は、真っ赤になりながらも、彼にしがみつくように抱き着くことで、肯定の返事を、返した。
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