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イケメン狼獣人がぽっちゃり少年を娶るはなし。【59-ハロウィン2話】

  今日は。みんなで待ちに待った、ハロウィン当日だ。

  「おかーさん、おれ、にあう?」

  「うん、良く似合ってるよ」

  子どもたちのベッドが3つ並んだ、子ども部屋で。白色の布を被った手を大きく広げて。穴を開けたところから、可愛らしい円い眼を覗かせて、そう問いかけてくる、俺たちの可愛い息子に。その頭に、黒くて根元に橙のりぼんを巻いた三角帽子を被せてあげながら、大きく頷く。

  

  10月31日、のもうすぐ夕暮れになる時刻。ハロウィンと休日が丁度重なってくれた今日は、ロバストの学校もお休みで。子どもたち3人は、朝から嬉しそうにはしゃぎっぱなしだ。

  朝から、最後のランタンづくりだ!とばかりに、かぼちゃをくり抜いて、ランタンをみんなで作って。それが終わったのが、ついさっきのこと。もう既に、大小様々な大きさのランタンはたくさん作って、お屋敷中に飾ってあるんだけど。『まだ作る!あそこにもここにも飾るの!』って、子どもたちの力説で、追加でランタンを作ったんだ。もう、ランタンがない部屋がないってくらいに、本当にお屋敷中に飾ったから。夜に、そのランタン全部に火を灯したら、きっと壮観だろう。その幻想的な様を思い浮かべて、俺まで楽しみで胸が高鳴る。

  みんなで仮装をして、ハロウィンのパーティーをするのは夜、リジットさんが帰ってきてからなんだけど。そんなリジットさんを、仮装した衣装で、みんなでお出迎えするっていうのが、ハロウィンの夜のお約束だ。だから今からみんなで仮装をして、リジットさんが帰ってくるのを楽しみに待ちわびる。

  …本当は、ハロウィンとリジットさんのお休みの日が重なったら一番いいんだけど。リジットさんのお休みの日は、休日も関係がないし。だから今まで、一度もハロウィンと重なったことがない。いつか、朝からリジットさんと子どもたちとみんなで、ハロウィンを過ごせたらいいなあ。そんなことを思いながら、アレクに被せた帽子の角度を調整して。最後に、布の上からその頭を軽く撫ぜた。

  「やったー!おれ、ジーニャに見せてくる!にいちゃんもはやくきてね!みんなでおかしもらいにいくんだよ!」

  言うが早いか、アレクが腕を振り回しながらドアへと駆けて行く。既にジーニャは、ロバストと色違いでお揃いの、薄桃色の布を頭からかぶって。黒色に桃色のりぼんを巻いた魔女帽子を頭に乗せて、準備万端だ。今は、メイドさんに抱っこしてもらって、ご機嫌だろう。

  アレクの勢いと腕の振り回しで、ふわふわと踊る白色の布は、本当にゴーストみたいだ。幽霊がみんな、こんなに可愛かったら怖くないのにな、なんて、そんなことを思いながら。布をはためかせて、ぶんぶんと尻尾を揺らしながら部屋を出ていくアレクを、目を細めて見送る。それから、アレクに合わせて屈んでいた身体を伸ばして、部屋の済を見遣った。

  「ロバストも、おかあさんが手伝うよ。みんなで、お菓子貰いに行くんでしょ?」

  そう言って、部屋の隅で、マントと格闘している長男に向かって手招きをした。もう、洋服は一人で着られるロバストは、今日の衣装も自分で着る!って頑張ってるんだけど。黒色のトラウザーに開襟シャツまでは、順調に着られたロバストも、初めて見るようなジャボタイとマントは、どう着けたらいいのか分からないみたいで。口を少しだけ不満そうに尖らせながらも、俺の手招きに素直に俺のほうへとマントとジャボタイを抱えて近づいてくる。そんなロバストに、思わず口元が緩んでしまって。手を伸ばして、ぎゅう、と抱っこしながら傍に寄せた。

  「わあ!もーおかあさん、おれもう子どもじゃないよ!」

  まだ甲高く、けれどしっかりとした声が、咎めるように俺に言う。ますます口を尖らせて、眼を三角にする可愛い長男に、ごめんごめん、って謝りながらも更に口が緩んだ。『おとうさんみたいに格好良くなる!』と宣言しているこの長男は、俺が『可愛い』って思ってるなんて知ったら、更に頬を膨らませるんだろうけど。そんな姿を想像しながら、その頭を撫ぜて、手に持ったジャボタイとマントを受け取る。少し機嫌が直ったのか、漸くロバストが尖らせていた口を収めて、俺の前に直立した。…うん、ちゃんと着られてる。

  「すごいねロバスト、ボタンの掛け間違いもないし、綺麗に着られてるよ!さすが、お兄ちゃんだね」

  目を細めて、そうロバストに言うと、その顔が輝かんばかりにきらめいた。自然と胸を張るように経ち方が変わって、リジットさんそっくりの琥珀色の眼が、嬉しそうに細められる。

  「とうぜんだよ!おれはもうおとなだから、このくらいできるんだよ」

  自信に満ちた口調で言われて、思わず顔に笑みが零れた。子どもじゃない、からもう大人、にまで話が飛んでいるのが、可愛らしい。最近は、特に弟妹に対しては、本当に大人っぽくしっかりとして、『クールなお兄ちゃん』と言う印象が強いロバストだけれども。こんな時は、昔のやんちゃで可愛い一面を覗かせてくれる。勿論、どっちのロバストも、俺は大好きだ。

  シャツの襟にジャボタイを巻いて、後ろをボタンで留める。…そうか、俺もジャボタイなんて作るの初めてで。作るのに必死で、教えてもらった作り方通りに作っちゃったけど。こんな風に、後ろ手で留めなきゃいけないボタンなんて、留めにくいに決まってるよね。しかもこの子はまだ子どもなんだし。…ああ、失敗したなあ。この子が一人で着たがるのは、分かってたのに。来年は、もっと一人で着やすいような留め方にしよう。留めるボタンを前側につけるとか、出来ないかな?そんなことを反省して逡巡しながら、リジットさんとお揃いの布で作ったマントへと手を伸ばす。

  ロバストは、初めて着けるジャボタイのフリルが気になるようで、人差し指の爪先で、ちょいちょいとフリルをつついていた。…そんなところも年相応に子どもっぽくて、やっぱり可愛い。本当に、学校へ通うようになってから、この子は頑張って大人っぽくしてるからなあ。もっと、こんな風に無邪気でやんちゃなロバストを見せてくれてもいいのになあ。こんなロバストも可愛いし格好良いし、全然いいのになあ。

  そんなことを思いながら、マントを後ろからふわりと掛けて、前で結ぶためのりぼんをロバストの肩へと垂らす。リジットさんは、マントを留めるためにアンティークチェーンと発条の留め具を使ったけれど、ロバストは、マントを前でりぼん結びをする形にした。だって、そのほうがロバストに似合って、可愛いじゃないか!ロバストはこれからどんどん格好良くなって、背も高くなるだろうし、更にリジットさんに似て素敵なひとになっていくだろう。そうしたら、格好良い格好は良く似合うだろうけれども、こんな風に、りぼん結びをするマントは着なくなるかもしれない。…いや、寧ろリジットさんだって、りぼん結びとかすごく似合うんじゃないかな?すごく格好良いひとが、ピンポイントで可愛いものを取り入れたら、それは逆にすごく素敵になるのでは?あー、そうか!それでも良かったかも!そうだ、来年はリジットさんのマントをりぼん結びにして、ロバストのマントをアンティークチェーンで留める形にしようかな?そんなことを考えていたら、思考が止まらなくなってしまう。

  「おかあさん?どうしたの?」

  そんな俺に、ロバストの不思議そうな声が掛かって、我に返った。…ああ、危ない危ない。今年のハロウィンもこれからなのに、もう来年の衣装に没頭してしまうところだった!頭のなかで首を振りながら、ロバストのマントへと向き直る。…あ、後ろ向きだと、前をりぼんに結べない。

  「ごめんね、ロバストの、来年の衣装についてちょっと考えちゃった」

  「えー、もう?おかあさんてば、気が早いなあ」

  そう話しながら、ロバストへと向き合う体勢へと移動する。俺の言葉に、ロバストが苦笑するように笑って、そう返してきた。ちょっとだけ大人びた口調と、リジットさんによく似た笑い方。そんな俺たちの長男に、俺も笑い返して、マントの繋ぎを綺麗なりぼんに結ぶ。この部分も、表が黒で裏地が赤だ。そのコントラストが鮮やかに映えるように、一度結んだりぼんを指先で微調整する。…うん、出来た!

  「はい、出来上がり!すごく格好良いよ、鏡で見て来てごらん!」

  目の前の、小さな黒狼の吸血鬼の出来栄えに満足して。その頭を撫ぜながら、ロバストにそう促す。そんな俺に、照れたように眼を細めながら、ロバストが口角を上げた。そうすると、口の端から可愛い犬歯が覗いて、ますます吸血鬼みたいだ。

  「うん、ありがとうおかあさん!」

  そう言うや否や、マントをふわりと翻して、ロバストが部屋から駆け出ていく。リジットさんでも全身が映るほどに大きな姿見は、俺たちの寝室と、あとはエントランスにあるものの2つ。俺たちの寝室にある姿見は、リジットさんが、俺と婚姻してから置いたというもので。エントランスにあるものは、このお屋敷を建てた時から備え付けてあるものだそうだ。最終的に身支度を確認するのはエントランスだから、そこに姿見を設置するお屋敷は多い。うちもそうだったし。

  だから、ロバストはエントランスへと向かったんだろう。俺たちの寝室に黙って入ることは、あの子たちはしないし。きっと、そこで自分の格好を確認してから、遊びながら待ってるだろうジーニャやアレクと合流して、お屋敷のみんなに『トリックオアトリート』を唱えて回るんだろう。それを見越して、メイドさんたちや、門番さんや庭師さん馬丁さんたちも、あの子たち用のお菓子を用意してくれている。みんなで、お菓子を可愛らしく包装してくれていた姿を想い出して、またも顔に笑みが零れた。きっと、あと1時間もすれば、あの子たちの小さな腕には抱えきれないほどに、お菓子が溢れるだろう。

  「じゃあ、次は俺かなー」

  そうなると、今度は自分の着替えだ。気合を入れる為にひとつ、大きな伸びをしながら、衣装のしまってある俺たちの寝室へと移動する。

  今年のハロウィンも、俺の衣装は魔女。けれど、毎年それだと代わり映えがない気がして、せめてもと色を変えている。…まあ、それは毎年体型が変わっているのも一因なんだけど。特に胸とおなか。特に胸は、もうジーニャもおっぱいを飲まなくなったのに、未だに母乳が止まらない。その母乳が溜まるからか、胸も大きくなったままだ。もう女性用の、…そういう下着を着けないと、恥ずかしいかもしれない。そのくらいには、俺の胸は大きくなっていた。それは、…母乳が溜まってると言う理由だけじゃない、かもしれないけれど。

  俺の胸を、リジットさんが優しく撫ぜて、ぎゅう、って搾ってくれる感触が、胸と頭に鮮明に過ぎって。たったそれだけで、乳首にじわりと母乳が滲むのが分かった。俺の子宮も、きゅう、って疼いて、あったかくなる。そんな自分に、一人で真っ赤になって、ぶんぶんと大きく頭を振った。って言うか、まだ明るいうちから何を考えてるんだ、俺!

  

  熱くなってしまった身体を誤魔化すように、大股で歩いてワードローブへ向かう。そのまま、しまってあったワードローブから衣装を取り出した。この国で魔女と言えば紺色か紫だけれども、その色は今までのハロウィンで使用済みだ。だから、…今年の色は、ジーニャとお揃いの、黒と桃色を基調にしてみたんだけど。取り出した魔女帽子と丈の短いワンピース、それとドロワーズをベッドの上に並べて、…今更ながらに不安になる。だ、大丈夫かな!?こんな可愛い色のものを俺が着て、おかしくないかな!?いや、一応黒も入ってるし、こういうパステルカラーとか暖色は魔女の服で使ったことがないし、黒とも相性がいいから好いかな、って思って、やってみたんだけど。それでも、やっぱり桃色は俺が着るには可愛すぎるのではないだろうか。…いや、確実に可愛すぎる!

  一応、リジットさんには俺が桃色を考えてることは相談した。その時は、彼は眼を細めて、『ああ、とても好いと思うぞ。あの格好は、毎年お前によく似合っていたが、その色なら、更にお前によく映えるだろう』って嬉しそうに言ってくれたけど。でもリジットさんはすごく優しいからなあ。あと、…俺にすごく甘いから。彼の、俺を見てくれる甘くて優しい眼を想い出して、またもおなかの奥が焦れるように疼いた。…ああ、今日はどうしたんだろう?ハロウィンだから?

  『ハロウィンの夜も、期待してもいいな?』

  彼が、囁くように言った言葉が、息遣いも鮮やかに、耳元に過ぎる、…きっと、俺のほうが、今日の夜に期待してるんだ。今夜のことを想う思うだけで、…乳首が硬く尖ってしまって、じわりと母乳を滲ませてしまうほど。子宮がとろ火で蕩かせられるように熱くなって、きゅんきゅんと、焦がれるように跳ねてしまうほどに。それを意識すると、きゅう、ってお尻の奥まで締まってしまって、それだけで、全身が甘く痺れる。…ああ、これ以上は本当に駄目だ。このままだと、一人なのに止まれなくなってしまう。それは嫌だ、やっぱり…そういうことは、リジットさんとしたい。彼にいっぱい愛して欲しい。たくさん俺に触って欲しいし、俺も彼に触りたい。一緒に気持ち好くなって、とろとろになるまで彼でいっぱいにして欲しい。そんなことを思ってしまうと、更に身体が反応してしまって。慌てて、その場にうずくまって、そのまま寝転がった。

  落ち着かせるように、小さく丸まりながら、大きく深呼吸を繰り返す。冷たい空気に、身体が落ち着いてくれるように。暫くそうしていると、漸く身体が収まってくれたようで。最後に大きく息を吐きながら、ゆっくりと起き上がった。未だに乳首は尖ってしまったままで、なるべく刺激しないように、ゆっくりと服を脱ぐ。…とりあ得ず、着替えよう。

  ベッドに置いたままの衣装は、何度見ても可愛らしい。この仮装は子どもたちと、特にリジットさんのお気に入りだ。本当は、今年は違う格好にしようかとも、一瞬思ったんだけれど。リジットさんが、この格好を好きだと言ってくれるから。だから、俺の格好は毎年この衣装だ。…だって、俺が世界一大好きな旦那さまが好きだって言ってくれるなら、これにするしかないじゃないか!俺だって、ハロウィンにリジットさんにしてもらう仮装は、吸血鬼が絶対に好いし!

  

  リジットさんの吸血鬼は、今年もすごく格好良いんだろうな。その姿を想うだけで、心臓が、甘やかに高鳴る。尖ったままの乳首がぴりりと疼いて、またも慌てて頭を冷やすように振った。…駄目だ、今は彼のことを考えるだけで、身体が疼いてしまう!

  頭も身体も衣装に集中しながら、ワンピースを頭から着た。丈は短いけれどふんわりとした衣装は、女の子用の衣装だからだろうか、胸周りに少し余裕がある。…おなかに余裕はないけど。けれど、乳首が少し裏地に当たって、乳首がくすぐったくて、更に硬くなってしまった。…どうしよう、これじゃ服の上からでも乳首が分かっちゃうかもしれない!

  慌てながら、何かないだろうか、と辺りを探して、ガーゼを見つける。…これを乳首に当てて、周りを膏薬で塗り固めたら、少しはましだろうか?そんなことを思いついて、ガーゼを何枚か乳首に当てて、周りに膏薬を塗った。そのまま手を離しても、無事に落ちない。そのことにほっとして、両の乳首にガーゼを当てて、膏薬を塗った。…うん、これなら少しは大丈夫かな。

  なんとかなりそうなことに、安堵の息を吐きながら、ワンピースを下まで下ろした。やっぱり、胸に裏地が当たるけれど、ガーゼで隠れて乳首はくすぐったくならない。見た目にも、ワンピースに乳首が浮き出たりはしてなくて、更にほっと息を吐きながら、ドロワーズを履いた。あとは、太腿半ばくらいまでくる靴下を履いて、頭に魔女帽子を被れば完成だ。帽子は黒で巻いてあるりぼんが桃色。ワンピースが桃色基調で、袖や裾のフリルが黒。ドロワーズが桃色で、靴下が黒。…本当に、このカラーリングは、俺が着ても大丈夫なのだろうか!?再度、そんな不安に襲われながら、寝室に置いてある鏡で全身を見遣った。…どうしよう、似合ってるのかどうか自分だと分からない!

  これは似合ってるんだろうか。…誰かに見てもらおうか、いやでもこのお屋敷のみんなは優しいひとたちばかりだから、きっと誰に見せても『よくお似合いですよ!』って褒めてくれるに違いない。どうしよう、リジットさんが見ても、そう思ってくれるかな?引かれないかな?心臓がどきどきと脈打つけれど、これは期待よりも、不安とか、はらはらしているときの鳴り方だ。ドロワーズを上げても下げても、帽子の角度を調整しても、そもそも問題は色合いだから、どうにもならない。それでも、鏡の前で、暫く衣装と格闘していると、こんこん、とドアがノックされた。

  「は、はあい!」

  慌てて帽子を被り直して、迷走してワンピースの丈くらいまでたくし上げてしまっていたドロワーズの長さも、最初に戻す。俺の返事を受けて、かちゃり、と静かにドアが開いた。その向こうで、メイドさんが綺麗

  お辞儀をしながら、俺に告げてくれる。

  「奥さま、旦那さまがお帰りになりました」

  その言葉に、驚いて時計を見遣った。え、まだ夕方だよ!?そんなに早く帰ってきてくれたの!?嬉しくて、はい!って返事をするや否や、俺の足は駆けだしていた。そんな俺に、笑いながら頭を上げるメイドさんの顔は、見るからに痛そうな大きな傷と、継ぎ接ぎの膚で。そんなメイドさんの『仮装』にも、笑顔がこみ上げてしまう。ああ、リジットさんが早く帰ってきてくれた!

  階段近くまで来ると、エントランスからは子どもたちのはしゃぐ声が聞こえて。俺も、それに混ざるべく、階段をぱたぱたと駆け降りる。子どもたちと一緒にお出迎えをしてくれていたメイドさんたちは、みんなお揃いのゾンビの仮装だ。…みんな、お化粧が年々上手になっていて、今年は更にパワーアップしている。これはハロウィンの仮装と分かっていても、そんなメイドさんたちが並んでいる様はある意味壮観で、一瞬びっくりしてしてしまう。

  「リジットさん!おかえりなさい!」

  帽子を押さえながら、俺も、彼へと駆け寄った。子どもたちを抱っこしていたリジットさんが、俺を見て、…驚いたように一瞬、眼を見張る。リジットさんのその顔に、心臓が、不安な感じにどくん、ってひとつ、跳ねて。けれどその直ぐあとに、その不安も霧散する。

  だって、…俺を見たリジットさんが、眼を見張ったそのあとで。嬉しそうに笑み崩れて、優しい眼で、俺を、見つめてくれたから。

  

  その、俺の大好きな優しい眼に。ほっとして、更に彼の傍に駆け寄る。そんな俺に、リジットさんも、抱っこしていたジーニャをメイドさんへと預けて、俺に手を伸ばしてくれた。手袋を外した手のひらの、ざらりとした肉球が、俺の頬に触れて、沈む。…それだけで、まるで痺れたように、背筋が甘く震えた。ガーゼの下で、ただでさえ尖っている乳首が、きゅう、っと更に固く痼る。

  「今年も可愛らしいな。良く似合ってるぞ、フラフィー」

  俺の頬を、なぞるように撫ぜながら。みんなの前でそう言われて、俺の全身に、一気に熱が広がる。特に、触れられてる頬に熱が集まって、燃えるように熱い。きっと俺の顔は、誰が見ても分かるほどに、真っ赤だろう。

  「あ、ありがとう…その、おかしくない?」

  「おかしいなどあるものか。桃色は初めてだな、愛らしいお前によく合う色だ。…堪らなく可愛らしい」

  最後の言葉は、顔を寄せて囁かれた。まるで内緒話のように、俺にしか聴こえない声は。…きっと俺しか知らない、彼の、艶やかに甘い、低い声で。その声が、俺の、…胎内にまで重く、甘く響いた。彼の言葉ひとつで、俺の身体は、蕩けるように熱くなってしまう。ただでさえ、俺の身体は、…今夜への期待でいっぱいなのに。そんな風に、甘い声でそんなことを囁かれたら。…俺が我慢できなくなっちゃうよ!

  「あ、り、リジットさんの衣装もあるよ!早く着替えて、パーティーにしよう?」

  きゅう、と疼く胎内を宥めるように、密かにおなかを撫ぜた。それを誤魔化すように、口に出した言葉は、最初の一言から噛んでしまう。まるで、…俺のこころが分かっているかのように、リジットさんが、俺に笑って頷く。その眼の奥が、…まるで、俺を捕えるように、瞳が開いて、真っ黒で。俺を捕食するかのようなその笑顔に、…身体の奥から、ぐずぐずに蕩けてしまうのが、自分で分かった。

  (ああ、早く、…はやく、俺をリジットさんでいっぱいにしてください!)

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