十月③_保健室ラプソディ

  ユウタに手を引かれて校舎へと戻る。

  グラウンドが体育祭の熱気で湧く反面、校舎内はひんやりとしていた。

  「さ、おむつを替えてあげますからねー」

  そういってリョウが促された先は保健室だった。

  「へっ……」

  ガララ……

  戸を開けると静かな保健室が目に入る。

  広さのわりに人は少なく、目に見える範囲でも数人程度。窓はあけ放たれ、涼しい秋風がカーテンを揺らしている。

  「さ、おむつはこっちですね」

  「なっ……んで……」

  呆けた口を開けるリョウを尻目に、ユウタはパタパタと中に入った。

  「ほら、おむつ替えてあげますから、入ってください」

  「まてまて、ふざけんな」

  大声を上げると、中にいた数名の生徒がこっちを見た。

  「どうしたんですか?」

  ユウタがそう言って、中へと促す。

  「な、なんで……」

  思わず小声になって聞き返す。

  「ここにおむつを置いてあるからですよ」

  「ちょっ、声。でかい……」

  リョウの顔がさっと青くなる。

  幸いにも、他の生徒たちは思い思いの作業に戻っていた。

  「さ、こっちです」

  ユウタに手を引かれ、中へ誘導された。

  「う、噓だろ……」

  渋々とそのあとに従う。

  誰も気づかないでくれ……。

  今穿いている体操服は、お尻が不自然に膨らんだうえ、股間のあたりがうっすら湿っている。

  「ユウタ先輩、どこ行ってたんですか」

  保健委員らしい少年が、ユウタに話しかけてきた。

  どうやらユウタの後輩らしい。

  「クラスの二人三脚ですよー」

  ユウタがにこやかに答える。

  いつものニヤニヤ笑いから、不純物をこれでもかと取り除いたような爽やかな笑顔だ。

  「そっちの方は? 急病ですか?」

  「違うけど、早く脱がせないとかぶれちゃうからね」

  ユウタはニヤニヤして返すが、保健委員は何のことか分からず首を傾げた。

  「熱中症ですか?」

  「違うけど体調が悪いみたい。ベッド使わせて」

  「分かりました。奥のほう使ってくださいね」

  「ありがとー」

  ユウタがにこやかに返すと、少年はパタパタと忙しそうに去っていった。

  「さ、行きますよ」

  「うぅ、マジかよ……」

  リョウは手を引かれながら、人が出入りする保健室を歩く。

  グシュ……

  お尻にはおしっこを吸ってふっくらと膨らんだおむつが垂れさがっている。

  「ほーら」

  「ちっ」

  背中を丸めて首を下げ、肩を怒らせたポーズを作った。こうして恰好をつけると、不良らしさがにじみ出てくる。

  ユウタの後に続き、渋々と中に入る。

  時折目があった相手はキッと睨み返せば伏し目がちに去っていった。

  幸い、リョウの体操服には誰も気づかなかったようだ。

  シャーッ

  ベッドにつくと、ユウタがニヤニヤとした笑みを浮かべながらカーテンを閉めた。

  「ほら、ごろーんして」

  「こ、こんなところで……」

  薄いカーテンのすぐ後ろには、他の生徒たちが出入りしているのだ。

  「おや、もっと大きな声で言ってほしいですか?」

  ユウタがニヤニヤ顔で覗き込んでくる。

  「ぐぅ……」

  キュッと唇を結び、ベッドに上る。

  ポンポンと、お尻を叩かれる。

  少しだけ躊躇したが、ゆっくりと足を開く。

  両手は頭の横まで持ち上げる。股は内側まで見えるくらいに開いた。

  まるで獣が降伏を示すかのような、いつものおむつ替えポーズだ。

  「さ、脱ぎ脱ぎしますよー」

  「……ん」

  ユウタが体操服のズボンに手をかける。

  スルッ

  手際よく抜き去られ、濡れて膨らんだおむつがあらわになった。

  「外には漏れてないみたい。良かったねー」

  「ふん……」

  「じゃあ、おむつの準備するから、ちょっと待っててねー」

  シャ……

  ニヤニヤ顔でユウタはカーテンの外へ去った。

  「うう……」

  リョウは律儀におむつ替えのポーズのまま、帰りを待った。

  視線を下げると下半身は濡れたおむつしか着けてない。しかも内ももまで見えるくらい、脚が大きく開かれている。

  薄手のカーテンが初秋のカラッとした風でフワリと浮かぶ。

  パタパタ……

  人通りは少ないものの、保健室にはまだ数人の足音が響く。

  カーテンがゆらりと揺れる。

  「ふぐぅ……」

  自分の姿を思い出して、心臓がバクバクと高鳴り始める。

  くっそ……、こんな格好見られたら……

  目尻に涙が滲み始める。火照った顔で、唇を噛む。

  少し遠くで、ユウタの談笑が聞こえる。

  「あうう……」

  白く清潔な保健室の天井が、リノリウム床の反射を受けてキラキラと光る。

  足音とともに揺らめく光は、薄布を隔てたすぐ隣に、生徒たちが出入りしていることを知らせていた。

  「ユウタ……」

  思わず声が出てしまった。

  おむつ替えポーズで寝かされたまま、なかなか戻ってくる気配がない。

  リョウはお漏らしおむつ丸出しのまま、ベッドに放置されてしまった。

  グシュ……グシュ……

  身じろぎすると、濡れたおむつの感触が伝わる。

  それでも体は律儀に、手は顔の横、両足は大きく股を開いていた。

  恥ずかしいとは思いながらも、ユウタに指示された姿勢には抗えない気持ちがあった。

  「ユウタ先輩、けが人です!」

  先ほどの少年の声が、薄いカーテンの向こう側から聞こえる。

  声色はいくらか慌てているようだ。

  「はいはーい。」

  場慣れしたした様子でユウタの朗らかな声が返る。

  それからパタパタと慌ただしい足音が増えた。

  そこそこのけが人が出たらしく、カーテンの外がざわめいている。

  ユウタ含めた保健委員が、慌ただしく指示を飛ばす声が聞こえる。

  パタパタ……パタパタ……

  リョウを隔てるカーテンも、人の動きに合わせて慌ただしく揺れる。

  ドテッ

  どんくさい音を立てながら、何かにけつまづいた音が保健室に響いた。

  シャッ……

  その拍子、引っ張られるように、カーテンが大きく開かれた。

  「んんっ!!」

  リョウは声にならない叫び声をあげた。開かれたカーテンの外側には、大勢の生徒たちが行き来している。

  「あいててー、ごめんねー」

  大柄で背の高い少年が、人当たりのよさそうな顔で周囲に謝っている。

  「大丈夫ですか? これ以上のけが人は困りますよ」

  ユウタ消毒液と包帯片手に、背の高い少年をとがめる。

  「えへー、ごめんごめんー」

  リョウが寝るすぐ目の前で、転んだ少年はポリポリと頭を掻いた。

  「ふぅっ……ふ……」

  リョウは荒い呼吸を無理やり押さえつける。

  心臓が飛び跳ねて口から出そうだ。

  幸いにも保健室にいる生徒たちは、銘々それぞれの仕事に忙しく、誰もリョウの姿に気づいていない様子だった。

  それでも、開かれたカーテンの先、リョウはおむつ丸出しのままなのだ。

  慌ただしく動く室内と、今の恰好の恥ずかしさで目が回ってきた。

  目に入るあたり、5,6人はいるだろう生徒たちの前で、おむつ丸出しの姿を開かれてしまったのだ。

  「すみません。そのベッド、使ってるんですー」

  ユウタが余裕な様子で、とがめる。

  「はいはーい。失礼しましたー」

  少年は、のそのそと立ち上がる。

  周囲よりも一回り背が高く、人当たりの良さそうな顔をしているが、たしかに少しどんくさそうな見た目だ。

  ぺこり

  少年が一瞬こちらを見て頭を下げる。

  心臓がどきりと大きく跳ねる。

  この恰好……見られて、なんて言われるか……

  一瞬にして頭の中に様々な思いが飛び交い、じっとりと冷や汗が流れる。

  視界の下、大股開きに見せつけているお腹が、こわばって固くなる。

  「ありっ?」

  少年はリョウを見とがめることもなく、視線を上に向けた。

  ギギッ

  転んだ拍子にカーテンレールが外れ、カーテンの動きが悪くなっていた。

  「あらら、壊れちゃいましたー?」

  ユウタはいつものニヤニヤ顔で、様子を見にやってくる。

  「んー、ずれてるだけっぽいよー」

  少年はひょいと背伸びするだけで、カーテンレールに手をかけた。

  カチッ……カコン……

  外れたレールが、元の位置に戻る。

  「仕事を増やすなら、出て行ってもらいますからねー」

  ユウタの慇懃さがいつもより横柄だ、背の高い少年とは知り合いらしい。

  「はいはーい。ごめんってばー」

  ユウタに一瞥して、少年はのそのそと去っていく。

  「ふふっ、良い子にして待ってくれてるんですねー」

  ユウタがニヤケ顔でこちらを見る。

  背中のカーテンは開けたままだ。

  「あうっ……う、うん……」

  頭が真っ白になって、言葉が出ない。

  すぐ近くに、何人もの生徒たちが往来している様子が見える。

  「すみません。忙しくなっちゃったんで、もうちょっとだけ待っててくださいねー」

  「うう……うっうん」

  降伏を示す獣ようなポーズのまま、コクコクと頭を縦に振る。

  情けない恰好だが、いまはそんなことを考えられなかった。

  「待っている間、お漏らししたくなったら、そこにしーしーしていいですからね」

  「……うん」

  リョウは自分の下腹部を見て、唇を尖らせながら頷く。

  荒い呼吸音とともに、お腹が大きく上下に揺れている。

  「じゃあ、いい子にしててくださいねー」

  ……シャッ

  ユウタは振り返り、カーテンを閉じて去っていた。

  薄布一枚とはいえ、やっと人前から解放された。

  「はあっ……はあっ……ふうっ……」

  大きく息をつく。

  安堵とともに、体から力が抜けていく。

  チョロ……

  「あ……」

  気づけば、おちんちんにじんわりと温かい感触があった。

  こ、こんなところで……

  リョウは大股を開いたポーズのまま、顔を真っ赤にしてこわばった。

  チョロ……チョロ……

  気の抜けた拍子のせいか、おしっこが漏れてしまった。

  我慢しようにもまるで力が入らない。腹筋をふるふると震わせながらも、徐々に力が抜けていく。

  ショロロ……

  静かにくぐもった音が、股間から流れてきた。

  はーはーと肩で息をして、耳鳴りがするような心臓を押さえつける。

  こ、こんなところで……

  薄いカーテンのすぐ隣からは、未だにパタパタと往来の足音が聞こえる。

  ふわりと風が通り抜け、カーテンが揺れる音が響く。

  リョウはその内側で、大股開きのおむつ替えポーズのまま、おしっこを漏らした。

  グシュ……

  濡れそぼったおむつが、一層重さを増した。

  「うっ、うぅ……」

  真っ白の頭をぐったりと枕に預ける。降参を示すかのように大きく開いた股間で、またくぐもった恥ずかしい水音が流れていく。

  視線を落とすと、おむつ丸出しの下半身が目に入る。

  パタパタ……パタパタ……

  その奥のカーテンの先、外の往来は、まだ絶える気配がない。

  リョウはまだ当分の間、この恰好のまま過ごさなくてはならないらしい。

  グシュ……グシュ……

  身じろぎすると、濡れて膨らんだおむつがずっしりと重たい。