十月⑨_濡れ身の帰路

  リョウは夕暮れの町をいそいそと歩いた。

  お漏らししたおむつはふっくらと膨らんでいて、体操服の外からでも不自然に大きなお尻が見える。

  ありがたいことに、通学路に他の生徒の影は無い。

  なるべく人気の少ない電車を見繕って、家までの歩みを進める。

  グシュ……グシュ……

  おむつのせいで、がに股にされて歩きづらい。

  おしっこはほとんど吸水部が吸い込んだらしく、うっすら湿っている感じがするくらいで、不快感はそこまでない。

  人目を避けながら電車に飛び乗った。

  カタンコトン……

  普段とは違うホーム、違う車両。人のあまり使わない鈍行を選び、数駅くらいなら歩けば、ほとんど人目につかずに帰れるだろう。

  グシュ……

  下半身はふっくらと膨らみ、明らかに不自然だ。

  「くっそ……」

  唇を尖らせ、可能な限り頭の中から、自分の格好を追い出そうとした。

  リョウはドア横に立ち、窓の外を流れる景色を眺めていた。

  車窓から見える秋の陽射しは柔らかく、木々の葉っぱを照らしている。

  ブォ……

  トンネルに入ると景色は暗転し、暗い窓ガラスに大きく膨らんだお尻のリョウが映し出される。

  グシュ……

  恥ずかしさに見をよじらせると、股の間で濡れたおむつが音を鳴らした。

  顔を赤らめて渋々と両足を広げる。情けない、がに股のポーズだ。

  リョウは肩を縮ませ、黙って目的地への到着を待った。

  「あの人、おしりでかくね?」とか言ったような甲高い声が時折耳に入る。

  人気の無い車内、たまたま乗り合わせた学校帰りの子供たちが、遠巻きにクスクスと笑っているみたいだ。

  俯きながら、耳まで真っ赤になる。

  グシュ……グシュ……

  身じろぎすると下腹部から聞こえるおむつの音と、遠巻きに聞こえるクスクス笑いが頭の中で何度もこだまする。

  頭の中は真っ白で、目尻に涙が浮かぶ。

  ガタンゴトン……

  線路を走る音が、やたらと大きく響いた。

  眉をひそめ、方を丸め、立ち尽くしたまま電車の揺れに身を任せた。

  プシューッ

  ドアが開くと同時に、生ぬるい風が体を包む。

  普段使っている駅より一つ手前の駅だ。

  家までの距離は普段の駅と大差ないが、急行列車が止まらないぶん、人通りが少ない。

  「……み、見られてねえよな」

  人通りが少ない分、まばらな人影が余計に目立っている気がする。

  ホームに降り立つと、ひんやりとした空気が頬を撫でる。

  ブルッ……

  濡れたままの下半身を思い出して、少し身震いした。

  ギュ……

  思わずスボンの股間を握りしめる。

  人気の無いコンクリートの駅のホームで、立ち尽くしているほうが目立ってしまう。

  「ううっ……」

  方を丸めたまま、足を進める。

  グシュ……グシュ……

  脚はがに股に広げ、大きなおしりを左右に振りながら歩く。

  濡れたおむつが気になるが、汗ばんだ体に吹く風は爽やかで心地よい。

  俯いたまま改札を抜け、家までのに向かって真っ直ぐに歩く。

  ザシッ……ザシッ……

  舗装されたアスファルトの道なのに、泥沼を這いずるみたいに脚が重たい。

  なんとかお尻を隠そうと、体操服の裾を引っ張ってみるが、ふっくらと膨らんだハーフパンツは嫌でも視界に入ってくる。

  「くそっ……」

  恥ずかしさと情けなさで、呼吸が荒くなる。

  こんな姿を知り合いに見られたらと思うと、思わず身をよじらせる。

  グシュ……

  湿った音が鳴る。

  がに股のまま、服の裾をぎゅっと握りしめ、身を縮ませて歩く。

  膝の感覚がふわふわして、下腹部がきゅっとする。

  心臓の音がバクバクとうるさい。

  「うう……」

  俯き顔で地面だけを見て、人影の少ない住宅街の道を歩いていく。

  「リョウくーんっ」

  ポンッと背中を叩かれ、口からひゅっと息が出た。

  「ひゃっ……あぅ……」

  名前を知ってるような人に見られてしまった。

  頭がパニックになって、膝ががくがくと震えだす。

  口をパクパクさせ、しどろもどろになって言葉を探すが、何も思いつかない。

  「遅かったですね。追いついてしまいましたよ」

  制服に着替えたユウタが、ニヤニヤ顔で視界に入ってきた。

  「あ……ふ……」

  心臓はバクバクなっているが、その顔にどこか安心感を覚えてしまった。

  思わず、下半身の力が緩む。

  グシュ……

  慌てて握った手を下腹部に伸ばすと、湿った音が聞こえた。

  「わざわざ鈍行で帰ったんですねー。」

  ニヤニヤ顔のまま、手が股間に伸びる。

  「おいっ……」

  リョウは顔を赤らめて、睨みつける。

  「帰り道でお漏らししてませんかー?」

  グシュ……グシュ……

  恥ずかしく濡れた衣擦れ音が、静かな住宅街に流れる。

  「うるせえな……そんなわけねーだろ」

  唇を尖らせて言い返すが、下半身は半分腰が抜けて、膝ががくがくいっている。

  「良い子、良い子、じゃあ、おうちまで頑張りましょう」

  ユウタがニヤニヤ顔で手を伸ばしてくる。

  「……ん」

  一瞬たじろいだ後、渋々とユウタの手を握る。

  なんで、こんな子供みてーなこと……

  「おうちはすぐそそこですよー。しーしー、がまん、がまん」

  ユウタに手を引かれながら、不意に尿意が込み上げてきた。

  「あ……」

  膝から力が抜け、その場にへたり込むように、ユウタによりかかる。

  「どうしました? ほら、歩きますよー」

  ユウタの顔が覗き込んでくる。

  「あっと……その……」

  思わず声が上ずる。パクパクと喘いだ唇からなんとか言葉を探すが、頭が真っ白だ。

  「ほら、歩きますよー。しーしーはおうちで」

  「ふあっ……」

  グシュッ……グシュッ……

  ユウタに引っ張られながら、無理やりに歩かされる。

  おむつのせいで足はがに股に開かれたまま、そのうえ尿意で力が入らない。

  腰を引けた格好でペタペタと歩き、なんとも情けない歩き方だつた。

  「しーしーがまんてきるかなー?」

  「うぁ……その……」

  ジワッ……

  「おうちまで、しーしーがまん……しーしーがまん……」

  この惨状を知ってか知らずか、ユウタにぐいぐいと手を引っ張られる。

  「あぅっ、ううっ……」

  ハーフパンツの股間をぎゅっと握りしめ、がに股のままついていく。

  おむつがもこもこと盛り上がり、脚が全然閉じられない。

  ポタ……ポタ……

  次第におしっこが溢れている感触が伝わってきた。

  「あの家の工事、いつ終わるんですかねー?」

  涼しい顔をしたユウタに手を引かれる。

  「ふっ……ふっ……」

  リョウは息を切らせながら、必死に脚を動かし、前に進む。

  シュウウ……

  おもらしは止まる様子も無く、おむつにおしっこを流しながら歩かされている。

  「うっ……」

  ハーフパンツは遠くからでも分かるくらいに濡れが広がり、伝って垂れた液体で太腿はびしょ濡れだ。

  リョウは恥ずかしさでいっぱいだった。

  「リョウくん……?」

  「うあ……」

  涙で滲んだ視界の中で、ユウタがこっちを見ている。

  シュウウウ……

  おむつの中には、温かい感触が広がっていく。

  「あー、がまんできませんでしたねー」

  ユウタは足が足を止めて向き直る。そして、いつものニヤニヤ顔で頭をなでられた。

  「うう……」

  目を伏せながら、必死に運動服の裾を引っ張る。

  それでも、がに股に開かれた足、ふっくらと膨らんだハーフパンツは、どうやっても不自然に目立ってしまう。

  「んー? おもらししちゃったら、ちゃんと言えるんですよねー?」

  「う……」

  「リョウくんは良い子ですからねー」

  「うう……」

  「ほら、ちゃんと言えたら、おうちでご褒美あげますよ」

  「……」

  人通りの少ない住宅街の路地で、二人で手を繋いだまま立ち止まってしまう。

  ポタッ……ポタッ……

  おしっこは止まったものの、おしりはふっくらと膨れ上がり、太ももから幾筋の水滴が垂れている。

  小風がなびき、太ももがひんやりと冷たい。

  「なんて言うんでしたっけ……?」

  「あ……その……」

  恥ずかしさと情けなさで頭がくらくらしてきた。

  「んー?」

  「お……おしっこ……しちゃ、った……」

  季節外れの蝉の声にかき消されそうな音で、やっと言葉を絞り出した。

  「よく言えましたねー」

  ユウタが満足そうにニヤリと笑う

  くしゃりとまた頭を撫でられた。

  「うう……」

  目尻の涙が、また一層広がっていく。

  「おうちまですぐそこですから、このまま急いで帰りましょうか」

  ユウタにぐいと手を引っ張られる。

  「あ……」

  ユウタは足早に歩みを進める。

  リョウもその後に続くが、濡れたおむつのまま歩かされ、ふっくらとした股間は足が閉じない。

  グシュッ……グシュッ……

  仕方なくがに股のまま、お尻を左右に振って小走りになってついていく。

  濡れた衣擦れ音と、大きなお尻をふるふる振りながら走る姿は、なんとも滑稽だ。

  目尻に涙を浮かべながら、ユウタの背中を追いかけた。

  「帰ったら、まずはお風呂ですかねー」

  心地よい秋風に吹かれながらも、小走りながらうっすら汗ばむ季節だ。

  「ん……」

  リョウは生返事をしながら、体操服の裾を引っ張りながらよちよちと走る。

  がに股とおむつのせいで、お尻が大きく揺れる。

  裾から垂れたおしっこのせいで、足元がすーすーする。

  リョウは恥ずかしさで真っ白になった頭のまま、ユウタに連れられるままなんとか家路についた。