十一月⑨_古都のおしりぺんぺんは畳の上で

  二人は風呂から上がり、心地よい湯気とともに浴室を後にした。

  パサッ

  ユウタがバスタオルを広げて立つ。

  「さっ」

  「……ん」

  リョウは何を言うでもなく全裸のまま両手を広げる。それを見て丁寧に優しく、相変わらず子供扱いするようにユウタが水滴を取っていく。

  足の間タオルが入り込み、太ももの付け根からお尻まで丹念に水分を拭われた。

  「さ、あんよ開いてください」

  「んっ」

  されるがまま、じっと動かずにいるが、敏感なところに触れられると思わず身をよじった。

  きゅっ

  つまみ上げるように、股関の水滴も拭き取られる。

  それからまた手を引かれ、脱衣場の中へ進む。

  自分の体を拭き取りながら、独り言半分にユウタが口を開く。

  「良いお湯でしたねー」

  「ま、まあな」

  リョウはすっぽんぽんで隣に立たされたまま、ぶっきらぼうに返答する。

  体にはまだ、ふわりと残り香が漂っている。

  「湯冷めしないうちに、早く戻りましょう」

  シュルッ

  ユウタは浴衣に袖を通す。

  シュッ、ギュッ……

  どこで覚えたのか、帯も綺麗な貝ノ口に形を整え、しゃなりと着こなす。リョウはといえば、帯の締め方すら知らない。

  ユウタが楽しそうに浴衣姿をヒラヒラさせて振り返る。

  「どうですか?」

  「まあ、いいんじゃねーの」

  すっぽんぽんにされたまま、ぶっきらぼうに答える。

  湯気に包まれた脱衣所は、ありがたいことに裸でも寒くない。

  「へへっ」

  備え付けの姿見の前で、ユウタが鏡の中の自分に微笑む。

  細身の体に和柄の布地が沿い、布の隙間から細いうなじ、すらりとした足が伸びる。

  フワリ……

  ユウタが鏡の前でくるりと背を向け、帯の結び目を肩越しに見ようと体を捻った時だった。

  ハラッ

  浴衣にの隙間から、ユウタの太もも、足の付け根までが露わになる。

  真っ白で、柔らかそうな腰骨。

  あわや隣の、男にとって大事な部分まで見えてしまいそうだ。

  「お前っ、パンツは?」

  「へっ?」

  すっとぼけた顔でユウタが振り向く。

  「浴衣の下、何も穿いてねーの?」

  「何も穿かない決まりなんじゃないですか?」

  「いやいや、何時代の話だよ。現代は穿くんだっての」

  「えー、そうなんですか?」

  ユウタは気にせず体をひねる。

  また裾が割れて、下着のない下半身がチラチラと見える。

  「いいからパンツ穿けよ。外出たら捕まるぞ」

  「はーい」

  ユウタはいたずらっぽい笑みを浮かべてから、するすると下着に足を通した。

  「さ、リョウくんもおむつですねー」

  「……ん」

  二人の他に誰も居ないこともあって、リョウは素直に従う。

  ふと自分の浴衣姿が頭を過る。

  「俺の浴衣は?」

  サイズは大丈夫だろうか?

  もしかすると裾の隙間から、おむつが見えるんじゃ……

  寝ている間はどうする?

  一瞬のうちに様々な思考が脳裏をよぎった。

  「え?」

  ユウタからの返答は互いに予想外のものだった。

  「俺の服、だっていつも……」

  しどろもどろに言い返しながら、次第に顔が赤くなる。

  「ここは自分の家じゃないんですよ?」

  「あ、あ……あれ……」

  ユウタへの甘えっぷりと、自分の情けなさに頬が熱くなる。

  普段なら着替えも全てユウタに任せきりになってしまっていて、それが当たり前に思っている自分が恥ずかしくなる。

  「じゃあ、俺の服……」

  「おむつくらい穿かせてあげますよ。帰り道にお漏らししたら大変ですし」

  ユウタはニヤニヤと笑う。

  良い機会だとばかりに、この状況を楽しんでいるようだ。

  「ふ、ふざけんなっ」

  声をあげて、あわてて股関を隠す。

  いまさらになって、急に恥ずかしくなってきた。

  「そんなこと言ったって、忘れてきたのはリョウくんですよ」

  「そ、そうだけどもよ……」

  「あらあら、いやいやする子はお仕置きですよ?」

  「いやっ……で、でも」

  リョウは鏡に映った自分の姿を見る。何も身に着けていない、すっぽんぽんのままだ。

  そこにおむつだけ穿かされた、おむつ一丁の姿で部屋まで歩かされるなんて、考えただけでも顔が熱くなる。

  「リョウくん?」

  「うぅ……」

  すっぽんぽんで股関を手で隠したままうずくまる。

  何か考えがないかと思い巡らすが、混乱した頭では何も浮かんで来ない。

  ポンポン……

  ユウタに軽くお尻を叩かれる。ひっと思わず体が縮こまった。

  「貸し切りにも時間制限がありますからね。いやいや言ってるとお仕置きですよ」

  ユウタに体をぐいと引っ張られ、上体を倒される。

  股間を抑えていたせいで、お尻を大きく突き出す恰好になる。

  「あ、いやっ……」

  パンッ

  軽く叩く音と共に、おしりからじんじんとした痛みが伝わる。

  「お仕置きですから、もっとお尻を出してください」

  「あうっ……」

  リョウぎゅっと目をつぶって、腰をかがんでお尻を突き出した。

  パンッパンッ……

  再度お尻を叩かれる。痛みより恥ずかしさのほうが強い。

  パンッ……パンッ……

  「十五回くらいにしておきましょう……数えてますか?」

  「ごっ……五回っ」

  いつもの調子でお尻を叩かれた回数も、思わず自分で数えてしまっている。

  「せっかく畳がありますから、こっちでやりましょう」

  奥の畳床に、ユウタはしゅっと正座した。

  「ぅ……」

  その正面に横向きに、リョウは腹這いにうずくまる。ほとんど床に寝そべる形になって、股間にざらついた畳の感触が伝わる。

  ポンポン……

  無言でお尻を軽く叩かれる。

  「うぅ……」

  リョウはおずおずと、膝だちにお尻を持ち上げた。

  「もっとお尻を出してください」

  ぐいぐいとユウタにポーズを促される。

  四つん這いになって、腕を曲げ、お尻を付き出したポーズで床に寝そべる。

  両手も床に付いて、まるで土下座のままお尻を持ち上げたような格好のようだ。

  畳の香りがほんのりと漂う。

  「ここも」

  太ももの間をぺしぺしと叩かれる。

  「……んん」

  促されるまま、両足を更に広げる。

  大股に開かれた股関部に、見慣れたおちんちんがぷるんと揺れる。

  「あと十回ですよ」

  パァンッ

  言うが早いか、鋭い平手打ちがお尻に刺さった。

  痛みに思わず体が仰け反り、おちんちんがびくんと跳ねた。

  「ろ、六ッ」

  顔を真っ赤にしながら、リョウは回数を読み上げた。

  視界がゆがみ、畳の床が涙で滲んでくる。

  パンッ……パンッ……パンッ……

  付き出したお尻に、続けざまに何度も平手打ちが飛んで来る。

  「七、八、九……」

  リョウのお尻はふるふると震え、みるみる赤みが増していく。

  痛みと、それ以上の羞恥心で、リョウの視界は涙で揺れていた。

  パンッ

  「十っ」

  「あとちょっとですねー」

  スリスリ……

  ユウタに優しくお尻をさすられる。

  まるで下半身が熱を帯びたみたいで、開いた股がすーすーと冷たい。

  パンッ……

  「じ、十一」

  「お着替え忘れちゃうなんて、リョウくんもすっかり赤ちゃんになっちゃいましたねー」

  ユウタが嬉しそうに囁いてくる。尻にはユウタの手が置かれたままだ。

  「ぅ……」

  リョウは唇を尖らせて押し黙った。

  パンッ……

  「十二……」

  「家ではおむつもお着替えも、ぜーんぶ僕の仕事ですからねー」

  言い返すことも出来ず、涙がじわりと滲む。

  パンッ……

  「十三」

  「大丈夫ですよー。浴衣もちゃんと着せてあげますからねー」

  「うっうるぜっ、自分でやるっ」

  強く言い返そうと思ったが、涙で声が上擦ってしまう。

  「はいはい。まあ、たまには良いですよー」

  スリスリとまたお尻を撫でられる。

  「うう……くっそ……」

  あからさまに子供扱いされているが、思えば家での扱いもほとんど子供のようだった。

  パンッ……

  「十四ッ」

  「リョウくんのお世話は、ちゃーんと僕がやってあげますからねー」

  「うっせ……っ」

  パァンッ……

  「……十五ッ」

  ひときわ大きな音を立てて、最後のお尻ペンペンが終わった。

  「さ、ちゃんと言うこと聞けますよねー」

  「うう……うん」

  じんじんと痛むお尻を高く突き上げながら、リョウな唇を尖らせた。

  大人らしさが微塵も感じられない格好をさせられ、悔しさが滲み出てきた。

  「子供に言い聞かせるにはお仕置きが一番早いんですよ」

  「こ、子供じゃ……ねえ……」

  「じゃあ、おむつを使わなかったら、大人扱いに戻してあげますよー」

  「うう……っ」

  ぺたん

  立ち上がって畳の上に座らされると、ユウタはロッカーからそそくさと次の準備を取り出した。

  「さ、おむつ穿いて本館に戻りますよ」

  「あうぅ……」

  おむつ以外に、リョウが着れるものが何も無い。

  これから、させられることを考えるだけで顔が赤くなる。

  「あんまり時間が無いですから、手早くしますねー」

  「……」

  ユウタに促され、リョウは仰向けに向きを変える。

  叩かれたばかりのお尻が畳にのっかり、ヒリヒリと少し痛い。

  「じっとしてて、良い子ですねー」

  カサカサ……

  腰をあげたリョウの真下に、大きなおむつが広げられる。リョウは無言で腰を下ろし、促されるままにおむつに身を包まれていく。

  クシュッ……

  「……ん」

  ほんのり温かい畳の感触が、ふんわりとしたおむつの肌触りに変わる。

  吸収量が多いタイプらしく、モコモコしている感じがいつもより強い。

  「じっとしててくださいねー」

  ポンポン……

  前と後ろに、ベビーパウダーが叩かれ、おちんちんがぷるぷると揺れた。

  リョウはしかめっ面で顔を反らす。

  「おちんちん、ないないしますよー」

  カサカサ……

  おむつが閉じられ、下半身がふっくらとした感触に包まれる。決して認めたく無いが、どこか安心してしまう自分がいる。

  ピッ……ピッ……

  手際よくテープが止められ、おむつが形作られた。もこもこした吸水部に動きを妨げられ、無理矢理がに股にさせられる。

  「さ、本館に戻りますよ」

  ユウタはロッカーからリュックと手荷物をまとめると、リョウの手を引っ張った。

  「ほ、ほんとに……この格好で……?」

  おずおずと立ち上がりながら、リョウは弱弱しくユウタを見つめ返す。

  「リョウくん」

  ユウタがじっと詰め寄ってくる。その顔には、いつもの有無を言わせない様子が滲み出ていた。

  「う……ん……」

  瞳の半ばまで涙を滲ませて、リョウはその手を取った。

  リョウはおむつ一丁ですっぽんぽんのままだ。

  このままユウタに手を引かれ、外に出て旅館まで歩くことになる。