十一月⑲_HEY! TAXI!!

  クシュッ……クシュッ……

  新しいおむつをつけられ、リョウたちは劇場のトイレを後にした。

  人通りの少ない廊下を歩くとは言え、大きなおむつを左右に揺らして歩く姿はどうやっても目立つし滑稽だ。

  「うぅ……くそ、なんでこんな……」

  リョウは真っ赤な顔でうつむいたまま、ユウタに手を引かれて歩いた。

  「シャツが濡れちゃいますから、持ち上げておいてくださいね」

  ぐいっ

  もう片方の手を持ち上げられ、シャツの裾をへそまで上げた。

  「……ん」

  恥ずかしいおむつが、さらに丸出しにされる。

  「さ、行きますよー」

  リョウは恥ずかしくて泣き出しそうな顔で廊下を歩く。

  もじもじと腰が引けるが、おむつのがに股歩きのせいで中途半端に不格好な歩きになってしまう。

  道行く従業員の視線が気になり、真っ赤になった顔を隠すようにうつむく。

  すれ違う大人たちから、クスクスとほほえましい笑い声が聞こえる。

  劇場を出るときになると、「本日はありがとうございました」と礼儀正しい挨拶で別れを告げられた。

  誰も気に留めてない様子だが、リョウは真っ赤で唇を眉をひそめる。

  ユウタとノッポは愛想よく返事を返し、劇場を後にした。

  サア……

  玄関を出ると、涼しい秋風が体を通り抜けた。

  「あ、う……」

  慌てて自分の姿を隠そうとする。

  眼下には大きなおむつと、そこから突き出した自分の足だ。年頃の筋肉質な体にいつものスニーカーが、なんともアンバランスに見える。

  「待たせちゃってますね。行きましょう」

  玄関からすぐ目の前に一台のタクシーが止まっている。

  距離だけならたった数十mそこらのはずだが、ズボンもないおむつ丸出しの姿では、さすがに足がすくむ。

  一歩足を踏み出そうとした途端、ひんやりとした風がお尻を撫でる。

  「うう……」

  こんな格好で、これから外を歩くのだ。

  ぐいっ……

  ユウタに腕を引かれる。

  唇を尖らせながらも、体は促されるままに従ってしまう。

  クシュッ……クシュッ……

  ユウタはわざとらしくゆっくりと歩いた。

  劇場に車を横づけし、ゆるやかに歩く姿は、まるでスター俳優のような扱いだが、リョウの顔は真っ赤に染まっている。

  歩くことを意識してしまうと、今度はどうしてもおむつの揺れが気になってしまう。

  「ほーら、自分であんよ、できますよねー」

  「くっそ……」

  クシュッ……

  リョウの歩調に合わせておむつが揺れる。

  通り過ぎる秋風は次第に冬の顔を見せ始め、背中を撫でるように冷たい風が通り抜けた。

  ぎゅっ……

  思わずユウタにつかまれている手を強く握りしめ返してしまう。

  「おむつ丸出しだと、ちょっと寒かったですかね。急ぎましょう」

  クシュクシュッ……

  大きなお尻を突き出し、左右に振るように歩く姿はあまりにも滑稽だ。

  後ろ姿でもわかりそうなほど真っ赤な顔を浮かべ、リョウはやっとタクシーまでたどり着いた。

  「ここの旅館までお願いします」

  ユウタはスマホを片手に運転手に指示を出す。

  タクシーの運転手は一瞬だけ怪訝な顔を見せたものの、スマホ片手にユウタが旅館の場所言い終えたころには、何ら変わりない客のようにリョウたちを扱った。

  「そっちつめてー」

  後部座席に3人の少年が乗り込む。

  リョウは真ん中に座らされ、左右にユウタとノッポが座る。

  フロントガラスから正面の位置で、スモークガラスの後部座席とは違い、外側から一番よく見えてしまう席だ。

  ブロロロ……

  静かに車が走り出した。

  「あんまり足を閉じてると、中でかぶれちゃいますよー」

  そう言ってユウタが手を伸ばし、リョウの両足を広げた。

  「お、おいっ」

  「シャツも、まくっておきますねー」

  ユウタがシャツを持ち上げ、裾がおむつのへそあたりまで持ち上げられる。

  どこから見てもおむつが丸見えになった恰好だ。

  「お……ぃ……」

  言い返そうにも言葉が出てこない。

  そんなリョウをわき目にユウタ文庫本を広げて、悠々と読み始めた。中高生向けのジュブナイル小説のようだが、ユウタは資料文献のように時折眉をしかめながら読み解いている。

  ノッポのほうは呆けた顔で、窓の外を眺めていた。

  車は市街地に入り、眼前の広いフロントガラスに、整った街並みと人込みが流れていく。

  「街の雰囲気が、なんかおしゃれー」

  ノッポは車の窓を開けて、外を見まわしている。

  「ちょ、ちょっと……」

  開け放たれた窓からは、リョウの姿も外から丸見えになる。おむつを隠したい気でいっぱいだが、ユウタに指示された格好を崩したくもない。

  覗き込めばすぐに見える場所で、おむつ丸出しのまま、リョウは顔を赤くした。

  「大丈夫だと思いますが、お漏らししたらすぐに言ってくださいね」

  運転手にも聞こえるくらいの声量で、ユウタがわざとらしく言った。

  「うう……」

  交差点に差し掛かり、車はゆっくりと動きを止めた。

  カッチ……カッチ……

  ウィンカーの音が、静かな車内に響く。

  視線を上げると、大きな交差点に往来する人々の姿が見える。

  彼らに向けて、リョウは大股開きに股間を突き出すポーズをさせられていた。

  「お漏らししてないか、チェックしますねー」

  「あっ、うっ……」

  ぐいっ

  ユウタに促されるままシャツの裾を持ち上げ、お腹どころか乳首まで見える高さにまくり上げられる。

  ポーズだけなら、犬の芸のちんちんみたいな格好だ。

  「あ……あう……」

  車の中とはいえ、リョウの座席は外から丸見えだった。

  道行く人たちは時折こちらを見ては、たまに手を振る人もいる。

  「ぅ……」

  狭い車内に隠れる場所もなくリョウはただ俯きながら、通行人の視線を受け止めた。

  秋空の風が、おなかにひんやりと冷たい。

  クシュ……

  ユウタが軽くおむつを握る。

  「……ん。大丈夫みたいですねー」

  ブロロロ……

  車はゆっくりと動き出し、また街の中を走り出した。

  「おー。綺麗な家ー」

  ノッポが隣で、ぼんやりと口を開けたまま移り変わる景色を楽しんでいた。リョウは恥ずかしさに縮こまり、ただ顔を真っ赤にしながらうつむくだけだ。

  クシュッ……クシュッ……

  おむつに包まれた股間にユウタの手のひらが這わされる。

  「おむつ一枚だと少し寒いですかねー」

  ニヤニヤ顔をしながら、運転手に言って少しだけ暖房を強めてもらった。

  ふーふーと呼吸とともに上下するお腹の毛が、温風に揺られてさわさわと揺れる。

  「ほとんとおトイレできなかったんで、ちょっと不安ですねー」

  そういって、ユウタが太ももの付け根に沿って指先を這わせてくる。

  「ふぅっ……」

  恥ずかしさとくすぐったさから足を閉じようとするが、またぺちんと太ももを軽く叩かれた。

  ぐいっ

  テープ部分を引っ張られ、中を覗き込まれる。

  ふっくらとした吸水部に、小さなおちんちんがいつものように包まれている。周囲に湿った様子はない。

  「あう……」

  リョウはさらに顔を染め、また顔を伏せる。

  ユウタさらにゴムを引っ張って、内側の様子を丸見えにする。ユウタだけじゃなく、車の外からもおちんちんが見えてしまうんじゃないかと思うくらいだ。

  「うっ……うっ……」

  股間に暖房のあたたかな風が流れ込んでくる。

  視線を逸らすとフロントガラス超しに、鮮やかな秋空が通り過ぎていく。まるで屋外でおむつを開かれているみたいだ。

  「うん。いいですよ」

  ユウタが手を離すと、ぺちんっ……といってゴム紐が戻った。

  「旅館まで、どれくらいー?」

  「そんなに遠くないですよ。もう少しです」

  ノッポはまた窓の景色に目を戻し、ユウタも文庫本を開いた。

  その間で、リョウは俯き顔でシャツの裾を、無言でぎゅっと握る。

  「ん……」

  フロントガラスから照り付ける太陽に、体がじんわりと温まる。窓から入る秋風はさわさわと、リョウの心もとない太ももを撫でて通り過ぎていく。

  リョウは耳まで真っ赤にして、俯いたまま縮こまった。

  それでもユウタに言われた通りに、足を広げて裾を持ち上げる。ぷっくり膨らんだおむつ姿が、車の外から丸見えなことは変わらない。

  ブロロロ……

  車がゆっくり走り、街並みが流れていく。

  ユウタの言うもう少しの距離が、リョウには遠い目的地のように感じられた。

  「み、見るなよぉ……」

  交差点に止まるたび、道行く人々と目が合ってしまう。

  誰もがちらりと見てただ通り過ぎるだけの様子であっても、リョウだけは唇を尖らせて目を伏せる。

  クシュッ……クシュッ……

  手持ち無沙汰に身じろぎするが、大きなおむつが静かに衣擦れ音を返すだけだ。

  お腹と肩がふるふると震えていたのは、秋風の寒さのせいでは無かった。

  キィ……

  目的地の旅館に到着し、車がゆっくりと止まる。

  「さ、つきましたよー」

  ユウタが先に降り、そのままリョウを連れ出した。

  リョウはおむつ姿で車から降りて、もじもじと歩き出す。シャツの裾を引っ張りながらも、大きなおむつはどうやっても隠せない。両足もがに股に開いたままだ。

  幸いなことに通行人の姿は見えない。

  「うう……」

  「どうしました? 僕たちの旅館ですよ」

  「あぅ……」

  リョウの顔が真っ赤に染まっていく。

  はーはーと肩で息をして、そのたびにお腹が上下する。

  視線を落とすとふっくらとしたおむつに、添えられたようにいつものスニーカーが見える。

  「あんよ、できますよねー」

  「……んっ」

  ユウタに促され、渋々と足を進める。

  クシュ……クシュ……

  駐車場から玄関まで歩くほんの数mほどの距離が、途方もなく遠くに感じた。秋空に浮かぶ太陽に、熱く火照った顔をじりじりと照らされ続ける。

  ノッポはそんな二人の後ろを、のんびりとついてきていた。

  「ふぅ……」

  旅館の玄関に入り込むと、やっと人心地ついた気がした。

  それでも大股開きでおむつを晒した格好に変わりはなかったが、屋外に晒されていないだけ、いくらかましな気分だ。

  「さてと……」

  ユウタはフロントに向かって何かを言いながら、内線で話を進めている。

  その隣で、手持ち無沙汰にリョウは立ち尽くしていた。

  「ユウタに任せたら大丈夫だよー」

  ノッポもとなりでうろつきながら、ソファーの背もたれに腰かけたりしていた。

  人気の無いロビーに、リョウはおむつ丸出しのままだ。

  クシュ……クシュ……

  なんとなく義務感を感じて、また両足を開く。

  恥ずかしくて仕方ないのだが、閉じておくとユウタに怒られてしまう気がする。

  パタパタ……

  フロントの奥には、何人かの大人が忙しそうに行き来している。

  おむつ姿を大勢の人に見られているような気がして、リョウの顔がまた真っ赤に染まる。

  「うぅ」

  内股に閉じたり開いたりと、リョウは落ち着かない様子で自分の足元を眺めていた。

  他の同級生にも見られてしまうかもしれない状況で、すぐにでも部屋に戻りたいのだが、リョウはおむつ丸見えのまま、ユウタが戻ってくることを待つことしかできなかった。