~Hero_Desire~番外編「二人だけの秘密」
僕の名前は[[rb:常木>つねぎ]][[rb:雫輝>しずき]]。N市市立第三中学校、二年生。こげ茶色の毛皮に首元から腹、尻尾の裏、手足の裏側が白毛の狐獣人だ。身長は最近になって前から二番目になった。けど身長が伸びたわけではないので、未だに小学生に間違われることもしばしばある。
そんな僕だけど、実はディザイアという超能力を使って、同じくディザイアを使い悪事を働くヴィランと戦う、或いは災害時などに人々を救助活動をする、少年ヒーローだ。基本的には後者をメインに活動するのが少年ヒーローだけど、時としてヴィランと戦うこともある。
「んー……」
朝。いつものように自然と目が覚める……んだけど、どうにも嫌な感触がある。下半身に当たる、冷たい感触。確認したくないけど、そのままには絶対に出来ない感触。
「うー……」
掛け布団を捲って、ごわごわしたパジャマのズボンを脱いで中身を確認する。そこにはパンツの代わりに、中学二年生の子が着けてるのはおかしい、紙おむつが着けられている。前面がおしっこで黄色く汚れた紙おむつが。
「また……」
これで何日目だろう……悪の組織【インゼクション】が壊滅してからもう二週間は経ってるというのに、未だ夜尿症が治らないままだ。トラウマの元であるヴィラン、ダーク・トレイター……厳密にはそのダーク・トレイターの身体を奪っていたチェンジリング・パラサイトというヴィランだけど……は捕まったというのに、それでも夜尿症は治まらなかった。
「はぁ……」
溜め息を吐きつつも、僕は掛け布団を完全に避けてからおむつを外して、ツンとした臭いと一緒にレモン色に汚れた自分の股間周りが目に入り、もう一度溜め息を吐いてしまう。自分がこの年で一人暮らしなことが、唯一の救いかな。誰かに見られようものなら本気で首を吊りたくなる。
「んっ……」
すぐにディザイアを発動させて、おしっこで汚れた毛の周辺に水球を呼び出してから、流れを作り出して尿だけ取り払う。これが僕のディザイアで、水を呼び出して自由に操る力だ。呼び出した水に様々な性質を加えることが出来て、今は水に流れと、汚れだけ混ざりやすい性質を加えている。
冷たい水がちんちんに当たって、思わず声が出てしまう。所謂朝勃ちというやつなのか、小さな僕のちんちんは自己主張のために精一杯勃起している。そのせいもあってか、水流に当てられて変な気分になる。
少ししない内に、処理は終わる。慣れたくないことだけど、連日こんな状態でもう慣れてしまった。透明な水球が薄黄色に汚れていくのを見ると、朝から気持ちが沈んでしまう。こんな朝からお風呂に入らなくて済むのは幸い……なのかなぁ……。
ゲンナリしながら、その原因がありありと残る紙おむつを、新聞紙に包んでゴミ箱に入れて、朝食の準備をする。僕の住む、ヴィラン被害者の集合住宅に住んでるのは皆両親共にいない子ばかりなので、アパートの一階にあるカフェで朝食が振舞われている。昼は学校給食、夜は各自での用意で、一応自炊が推奨されている。両親も頼れる親戚もいないからここにいる以上、今からある程度自活できるようにするためだそうだ。僕も推奨されている通り、晩御飯は自炊している。
顔を洗って歯磨きをしてから、パジャマを制服に着替えて部屋から出る。僕の部屋はこのアパートの三階になる。N県内どころか他県に住んでいた子も皆集められているため、アパート自体はそこそこ大きい。とは言っても、全部屋埋まってるわけではないんだけど。建物は六階あり、一階は小さなスーパーとドラッグストア、それからさっき説明したカフェがある。
今日は金曜日。明日学校はお休みだけど、何をしようか。少年ヒーローとして活動してる身なのもあって、何時でも出動できるよう部活動には入っていないから、思いの外暇だ。折角だし、[[rb:猛秀>たけひで]]君と一緒に遊びに行くのもいいかもしれない。バリバリのインドア派だから、外には遊びに出ないかな?僕も外で遊ぶとなるとあまり分かんないし、うちでゲームするのもいいかもしれない。
色々考えながら朝食のフレンチトーストを食べて、そのまま学校へと向かう。今日も一日平和でありますように。
---[newpage]
昼休み。何故かお馴染みになってしまいつつある屋上。さすがにいつもいつも入り口の上に登ると、いい加減外から見られかねないということで、入り口の上に登るのは無しになった。給水塔や排気口、ソーラーパネルなどが無造作に設置されてる屋上は床面積が狭いけれど、何もここで遊ぼうというわけではないのだから、ちょっと座れるスペースがあれば十分だ。
「シズキ君、今朝も浮かない顔してたね」
ずいっと僕の前に、茶と黒と白の三毛の猫獣人の幼い顔が迫ってくる。彼が猛秀君こと、[[rb:三宅>みやけ]][[rb:猛秀>たけひで]]君だ。幼いとは言ったけど、僕と同じ中学二年生で、つい最近まで不登校……というより、悪の組織にいて行方不明だった。僕よりほんのちょっと背が低いので、背の順で一番前になっているくらいだ。容姿の幼さについては、僕も人のことは言えないけど。
「え?そ、そうかな……」
「うん。ひょっとしなくても、今朝もしたんじゃないの?」
「……うん」
元々他人に興味のなかった猛秀君に気付かれるくらいには、落ち込んでたみたいだ。原因を知ってるのは猛秀君くらいだからというのもあるだろうけどね。
「ちゃんと検査した方がいいんじゃない?」
「けど、お医者さんの話だと、身体には異常ないって話だからなぁ……」
以前、夜尿症になる切っ掛けになった事件の後に通っていた泌尿器科でも、紹介状を書いて貰って行った、ヒーロー協会の総合病院でも、身体に異常はないと言われている。膀胱なりなんなりの異常のせいであればよかったんだけど、下された診断は精神的なものだということだけだった。
「よし、じゃあ僕が診てあげるよ」
「え?」
猛秀君は少し考えてから、そう提案してくる。普通であればただの悪ふざけ以外の何ものでもないけど、猛秀君に限ればそうではない。つい最近まで悪の組織の科学者であった猛秀君であれば、全く無理ということもない。
「おねしょしてる時にどんな夢見てるのかとか、精神的な状態がどうなってるのかとか、調べてみようよ」
「おねしょしてる時って……僕が夜寝る時に?」
「勿論。明日休みじゃない?だから、シズキ君の部屋に泊まり行けば問題ないよね?」
シレッとそう提案してくる猛秀君。確かにアパートに誰かを泊めちゃいけない規則はないはずだから、そこは問題ないだろうけど……。
「僕はいいけど、タケヒデ君は、というより、タケヒデ君の両親は許可してくれるかな?ずっと行方不明だったから、心配しそうだけど」
「ううん、引き篭もりだったことになってるんだよ?友達の家に泊まりに行くなんて言ったら、嬉し過ぎて卒倒しちゃうことはあっても、ダメなんて言わないよ」
そういえばそうだった。猛秀君は悪の組織にいる間、両親に催眠を掛けて『部屋から出てこない』と思い込ませていたんだ。そんな引き篭もりの息子が家に泊まりに行くほど仲のいい友達が出来たっていうのは、喜ばしいことか。
「じゃあ、ちゃんと許可取ってからなら……」
「決まりだね!」
「いや、ちゃんと許可取りなよ?」
「大丈夫だよ、一旦着替えとか取りに家に戻るから、その時に話すって」
半ば食い気味に言って来たもんだから、許可無く外泊するつもりだったんじゃないかとちょっと心配になった。仮に許可取れなかったとしても、無断で外泊するつもりなんじゃないかって不安もある。
「そういやシズキ君、実力テスト返って来たけどどうだった?」
「え?うーん、そこそこかなぁ。夏休み明け前は色々有り過ぎて、テスト勉強ろくに出来なかったから」
本当に色々あった。たった五日間の出来事だったなんて、とてもじゃないけど思えないくらい、いろんなことがあった。悪の組織に捕まってヴィランになったり、ヴィランとしてヒーローと戦ったり、ヒーローとヴィランで共闘して、巨大な悪の組織を打ち倒したり……とにかく色々あり過ぎた。
「そういうタケヒデ君は?」
「ふふん、数学と理科は満点だったよ!」
胸を逸らしてふんすと鼻を鳴らして、これでもかっていうドヤ顔を決める。いっそ清々しいくらいの自慢で、ムカつくどころかちょっと可愛いと思ってしまった。
「おおっ、さすがだね」
「でしょでしょー、もっと褒めていいんだよ?」
「うんうんすごいすごいー」
棒読み気味にそう言いながら、僕は猛秀君の両頬をワチャワチャ撫で回す。猛秀君の毛は柔らかくてふわふわしていて、一度頭を撫でてからというものの、触り心地がよくてつい何かと撫で回したくなるんだ。本人は撫でられてご満悦の様子なのでウィンウィンの関係、でいいのかなこれ。
「んにゅー……シズキくぅん……」
「んわっ……!」
僕が撫でる手を止めると、何か酔っ払ってるかのように猛秀君が僕に抱き着いて来て、僕の頬に頬擦りをしてくる。別に悪い気はしないけど、いくら人が滅多に来ない屋上だからってこんなこと……。
キーンコーンカーンコーン
「っと、昼休み、もう終わりかぁ」
「そ、そうだね……」
「?どうしたの?」
猛秀君はなんともない顔をして、気が気でなくて顔を逸らしてしまった僕の顔を覗き込んでくる。猛秀君には恥ずかしいとかそういう感情はないのかな……。
「な、なんでもないよ……早く行こっか」
「うん?うん。放課後忘れないでね?」
「分かってるよ」
なんとか平生を取り戻して、僕らは屋上を後にした。大丈夫、大丈夫。猛秀君にはそんなつもりはない。ないんだよね……?
---[newpage]
放課後。猛秀君の家に寄ってから、僕の部屋へと向かった。猛秀君のお母さんは本当に快諾してくれて、ご丁寧に菓子折りを渡されてしまった。断ろうと思ったんだけど、なんか舞い上がってるようで、断れる雰囲気ではなかった。
「まぁいいよ。お菓子だから二人で食べちゃおう」
「そうしよっか」
二人分になるからと帰りにアパートの一階のスーパーに寄って晩御飯の材料を買ってから部屋に戻る。そういえば部屋に誰かを招くのなんて、初めてかな。少年ヒーローの先輩である[[rb:青龍>せいりゅう]]先輩や[[rb:虎谷>とらや]]先輩の部屋には行ったことあるけど、二人が僕の部屋に来たことはない。
「へぇ、ここがシズキ君の部屋かぁ」
部屋にはベッドとその隣にパソコンを横に配置してある勉強机。反対側にテレビと本棚。テレビの前にはいくつかのゲーム機が接続されたまま置いてある。本棚の横には部屋の備え付けのクローゼットがあって、服とかはそこに入れてある。部屋の真ん中に小さなちゃぶ台が置いてあって、いつもそこでご飯を食べている。
「綺麗に整頓されてるねぇ」
「気を抜くとすぐ汚れちゃうんだよ。だからゴミは残さず捨ててるんだ」
「そっか、自分で掃除しないといけないんだもんね」
言いながら猛秀君は本棚の本を眺めていた。あるのは殆ど漫画本か、或いは小説くらいだけど、猛秀君の興味を引くようなものあったかな?
「それじゃ、晩御飯作るから待ってて」
「え、手伝うよ?」
「いいいから、ね?」
僕は立ち上がろうとする猛秀君の肩を掴んで、強引に座らせる。お客様だから、とかそんな理由じゃない。悪の組織【デスペルタル】にいた時、猛秀君が袋麺を焦がすというとんでもないことをしていたのを僕は確かに覚えている。料理したことない、とかいう次元じゃない。あれは全く知識はないけど何の根拠もなく出来ると思ってるタイプだ。
猛秀君は不服そうながらも、大人しくしていてくれるようだ。そんなに時間の掛かるものじゃないから許して欲しい。
色々端折って、夕飯が出来た。
「わぁ、オムライス!これシズキ君が作ったんだよね?すごいすごい!」
猛秀君は手を叩いて喜んでくれる。今日はかなり綺麗に出来たし、それに猛秀君がお世辞なんて言うとは思えないから素直に嬉しい。
「それじゃ」
「「いただきます!」」
二人で手を合わせてから、出来立ての半熟オムライスを食べ始める。ハヤシライスにしようかと思ったけど、時間が掛かると思ってケチャップにしておいた。
「んんっ!ほいひい!」
猛秀君はまだ噛み切らない間に喋り出して、ちょっと零れそうになってる。意外と食べ汚いんだなぁ、猛秀君。
「んもう、汚いよ?」
「んっ、だって美味しいんだもん!母さんの料理より全然美味しいよ」
まさかここまで褒められるなんて思わなかったから照れるなぁ。けど……。
「そ、それはさすがに言い過ぎじゃない?」
「そうでもないよ?母さん、たまに塩と砂糖間違えるくらいには料理下手だし」
「そ、そうなんだ……」
それと比べられてもなぁ、と思うのは失礼だけど、それと同時に、なんか猛秀君が料理ダメそうなのにも納得してしまった。
「あ、今僕が料理下手なのも遺伝なのかなって思ったでしょ」
「ええ?!い、いや……ちょっと思ったけど……」
あまりにもピンポイントで、声が裏返ってしまう。いや、まさか猛秀君が考えを察するとは。
「んもう、ラーメン焦がしたのはちょーっと目を離してたからだもん」
「いや、水が少なかったし、水のまま出汁入れちゃってるしで、もっと問題が……」
「そんな……そこまで見てたのになんで止めてくれなかったの?!」
何故だかオーバーリアクションな猛秀君。あんまりわざとらしくないけど、理由忘れてるのかな?
「あの時の僕が言うと思う?」
「……それもそうだよね」
僕が悪の組織【デスペルタル】にいた時、僕は心を完全に閉ざしていた。ただ強さが欲しくて、周囲に興味が一切湧かなかった。それでも記憶自体はしっかりと残ってて、何が起こったかはハッキリ覚えている。
「あれ結局どうしたんだっけ」
「えーっと、こんなの食べられないって捨てたよ。確かその後カップ麺食べてたかな」
記憶を遡って、猛秀君の疑問に答える。案外覚えてるもんだなぁ……あの時の気持ちは分からないけど、ただただ記憶には残ってる感じだ。
「シズキ君、ウォーターフォールだったときのこと覚えてるんだね」
「うん、記憶だけはあるんだ。あの時何考えてたかとかは全然思い出せないけど」
「ふんふん……」
猛秀君はオムライスを口に運んで、もぐもぐしながらも何か考えている様子だった。何を考えてるのかな?
「何考えてるの?」
「シズキ君のトラウマについて考えててね。トレイターが原因じゃないかもしれなかったら、別の何かも考えないとかなぁって思ってね」
「別の何か……」
トラウマになるようなこと……自体は夏休み前に色々あった。いずれも倒してるから脅威は排除してるとはいえ、悪の組織【インゼクション】との戦いは、嫌いな虫、しかも僕らより遥かに巨大なのを相手にするだけでも辛かった。夢に出そうだなって思ったほどだ。けど、そういえばそんな夢を見た覚えは無いなぁ……トレイターの時はしばらく夢に出たくらい怖かったのに。
「あれ、むしろここ最近夢見てないような気がするなぁ……」
「夢?全然見てないの?」
「うん……記憶にないや」
見てても忘れてるだけなのかも知れないけど、夢を見た覚えが無い。それなのにおねしょしてるんだよなぁ……起きた時に全部忘れてる、のかな?
「ふんふん、じゃあ、そっちも調べてみることにするよ。ごちそうさま」
いつの間にか猛秀君のお皿は綺麗になっていた。僕も後一口で食べ終えられる量だったので、スプーンで全部すくって、一口で食べ終える。
「ごちそうさま」
僕はお皿とスプーン、空になったマグカップを持ってキッチンへと出る。猛秀君も自分の分を持って着いて来てくれる。
それから夏場だから先にお風呂に入って、寝る時間まで二人でゲームしたり雑談したりして時間を過ごす。猛秀君と対戦ゲームをやってみたけど、これがまぁ強いのなんの。割とやり込んでるゲームだったらしいけど、あんな動き生で見ることになろうとは。
---[newpage]
色々あって二十三時三十分。ちゃぶ台を退けてからそこに布団を敷いて、いよいよ寝る時間になってしまう。
「えっと、その……おむつ、穿いて来るね……」
「ん?いいじゃない、ここでしちゃえば」
「えっ?!」
ただですら言うのも恥ずかしいことだったのに、余計に恥ずかしくなりそうなことを猛秀君に提案されてしまう。いや、確かに猛秀君は既に僕がおむつしてることは知ってるけど、やっぱり直で見られるのは恥ずかしい。
「は、恥ずかしいよ……」
「んもう、おむつにおねしょもおもらしも見てるんだから今更だよ」
「そ、それはそうだけどさ……だからこそ、これ以上タケヒデ君に恥ずかしいとこ見られたくないっていうか……」
猛秀君には、猛秀君がまだ悪の科学者、ドクター・パラノイアだった時におむつ着けられたり、おもらしさせられたり、色々辱められてるから今更と言えば今更なんだけど、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。
「しょうがないなぁ。折角僕がおむつしてあげようと思ったのに」
「やめてよ!」
僕は紙おむつをクローゼットの奥から一つ取り出して、部屋からお風呂場に入る。一応閉められる扉はあるけど、鍵はない。もし猛秀君が開けたら丸見えになる。
猛秀君がいつ来てもおかしくないと思いながら、そわそわしつつパジャマのズボンを脱ぐ。それから下着の白いブリーフも脱いで、紙おむつを穿く。前側をテープで止めるタイプのもので、後ろは尻尾の真下に来るようになっている。股下にギャザー部分を通して、前側を手で押さえる。空いた手でテープを片方ずつ引っ張ってきてから前面にペタリと貼り付けていく。これ、立ちながらはちょっと難しかったなぁ……いつもはベッドの上で座ってやるから、すっかり忘れてた。
すぐ近くに猛秀君がいるという変な緊張感はあったものの、無事おむつも穿けて、パジャマのズボンを穿き直す。外から見ても下腹部だけ盛り上がっていて、何かおかしいのはすぐに分かってしまう。
おむつ穿いてるのはバレてても、この姿を見られるのはそれはそれで恥ずかしいなぁ。けど、いつまでもここでこうしてるわけにもいかないから、早く戻るとしよう。っと、その前に喉渇いたから、一杯だけ水飲んでおこうっと。
「おまたせ……」
僕が部屋に戻ると、猛秀君は何処から持ってきたのか、長方形の箱のような機械を弄っていた。その機械の側面からは先に吸盤のついたコードがいくつも延びている。パッと見では何の機械なのか全然分からない。
「わぁ、ごわごわしてるね」
「は、恥ずかしいんだから止めてよ……」
猛秀君が僕の姿を見て、おむつを穿いている下腹部を触ってきたので、さすがに恥ずかしくてその手を振り払う。
「二人きりなんだから気にしなくたっていいのにさ」
「おむつしてることを気にしなくなったら、色々ダメだよ……」
おねしょしてることが当たり前になっちゃいけない。僕ももう十四歳なんだ。今のところ大した問題じゃないかもしれないけど、三年生になれば修学旅行もある。そうなっておむつを穿いて寝るなんて、恥ずかし過ぎて出来るわけない。おねしょなんてもっとまずい。
「そ、それはともかく、それって何の機械なの?」
「ああこれ?無意識下の思考を映像化する機械……まぁ要するに夢を映像化する機械ってところかな」
「へぇ……見てる夢が分かるって凄いね……」
そんなの、今の技術で可能なんだろうか。猛秀君のディザイアによって作られたものは現代の技術なんて軽く凌駕してしまう、未来技術と呼ばれているものだから常識に当てはまるものではないんだろうけど。
「シズキ君がおねしょしてる時にどんな夢見てるかさえ分かれば、解決に近付くだろうからね」
「夢、見てないんだけどなぁ」
「それは覚えてないんだよ。大抵は目を覚ませば忘れちゃうものだから、見てないと思ってるのは覚えてないってだけなんだよ」
猛秀君がそう解説してくれる。うーん、よっぽど怖い夢を見ていて、記憶から消してるって可能性もあるのかな。それを紐解くのはちょっと怖いけど、トラウマを取り除かない限りおねしょが治らないのならやらないと。
「じゃ、シズキ君、ベッドに横になって」
言われた通り、僕のベッドに横になろうとして、動きを止める。
「あれ、でも僕がベッドで寝たら、タケヒデ君布団で寝ることになっちゃうか」
「ん?いいよいいよ。どうせ機械見てるからあんまり寝ないと思うし」
「え……寝ないって……」
「いいじゃん、明日休みだし。夜更かししたって平気平気」
シレッとそう猛秀君は言うものの、さすがに僕は寝るのに猛秀君だけ起きてっていうのは申し訳なくなる。
「けど、僕の問題なのに、タケヒデ君だけ起きてもらうなんて、なんだか悪いよ……」
「んー、じゃあカメラも仕掛けておいて、寝てる間のタケヒデ君の様子も撮影しておこうかな。それなら徹夜しなくていいし」
「それなら……あ、でも、タケヒデ君がベッドでも……」
「それじゃダメだよ。環境が変わると正確な調査が出来なくなっちゃう」
そう言われて、ぐいぐいベッドに押されてしまう。調査に対して口出しても、猛秀君はこういうことに対しては絶対に譲らないだろうから、ここは諦めることにした。
「じゃあちょっと失礼してっと」
ベッドの下から例の機械のコードを伸ばして、僕の頭に吸盤を付けていく。額と頂点、左右のこめかみに付けられる。ちょっと違和感あるけど、気になって寝れないってことはないかな……?
「後はカメラか。アクセスアポート、ナイトヴィジョンカメラ。コード:パラノイアステート」
猛秀君がスマートフォンに向けてそう宣言すると、猛秀君の手にカメラが現れる。どっから持ってきてるのかと思ったら、テレポートさせて来てたんだ……こんな簡単にテレポートさせられるものなのかな。
「そんな簡単に転送させられるんだ……」
「簡単そうに見えてるだろうけど、そうでもないんだよ?僕の秘密ラボにあるテレポート用ロッカーに入ってるもの限定だからね」
「事前に転送装置に入れてあるってこと?」
「そういうこと」
なるほど、それだと持って来れるものは限られてるわけだ。それなのに暗視カメラとかよくあったなぁ……。
「これをこうしてっと……うん、電気消していいよ」
「うん」
猛秀君が三脚にカメラを設置したのを確認してから、僕は枕元にある電灯のリモコンを使って、部屋の明かりを消す。明かりは徐々に消えていき、あっという間に真っ暗になる。忘れないようにクーラーも消しておく。
「それじゃ、お休み、タケヒデ君」
「うん、お休み、シズキ君」
僕は掛け布団をお腹周りに掛けて、目を閉じる。夏場は暑いから、布団はお腹を冷やさないように掛けるだけだ。毛皮のある獣人の場合は布団を掛けない人も結構いるんだとか。
暑くて寝るのに時間掛かるかな……でも、あんまりごそごそしてたら猛秀君も寝れないだろうし、何も考えないようにして寝よう。寝よう……。
ああ、おねしょ、してないといいけど……猛秀君に、また見られちゃう……。そう、思うと……。
僕はあっさりと、意識を手放してまどろみの中へと落ちて行った。
---[newpage]
「んっ……」
朝。いつものように自然と目が覚める。んだけど、今日は違和感がいつもと全然違う。
「ん……?えっ?」
まず感じたのは手の違和感。どういうわけかバンザイしてるように両手が上がってたから、下げようとしたんだけど動かない。代わりにガチャリと鎖が鳴る音がする。
「えっ?タケヒデ君?」
「やぁ、おはようシズキ君」
すぐに自由に動く首を回して猛秀君の姿を探す。猛秀君は僕のすぐ横にいたんだけど、その姿は昨日のパジャマ姿でなければ私服でもなく、ぶかぶかの白衣姿だった。ただ、どうにも浮かない表情をしている。心なしか眠そうにも見えるけど、もしかしてあれから起きてたのかな。って、それはいい。
「こ、これ、タケヒデ君が?」
「うん、暴れられても困るからね」
暴れる……?何、言ってるんだろう……?
「えっ!?」
思わず声が出てしまう。なんか涼しいと思ったら、パジャマが上下脱がされて、おむつしか穿いてなかったんだ。足を開くように両足とも手錠らしきもので拘束されてるし……!
「こ、これどういうこと!?」
堪らず声を荒げてしまう。だって、この状態、おもらししたおむつを丸見えにさせられてる状態だ。いくら猛秀君でも悪ふざけが過ぎる。
「……シズキ君、落ち着いて聞いて欲しいんだ」
「こんな状態で落ち着けないよ!とりあえず拘束解いてよ……!」
猛秀君は僕の懇願には答えず、猛秀君は白衣の懐からタブレットを取り出す。
「昨晩、君のおねしょを観察したよ。その時どんな夢を見てたかとか、その時の脳波の状態、それからシズキ君の表情。そこから導き出されるのは……」
僕はこんな状態にされてることを忘れて、ごくりと生唾を飲む。そんなに深刻なのかな……。
「シズキ君、君はおねしょした時、快楽を感じてる」
「……は……?」
空いた口が塞がらないくらい、僕はポカンとしてしまった。え?何?快楽?
「何、何言ってるの?タケヒデ君」
「僕は真剣だよ。ほら」
タブレットの画面を見せられる。そこには、僕がだらしなく口元を緩めて涎を垂らしながら、気持ち良さそうにしている映像だった。
「これが、シズキ君がおねしょした瞬間の顔だよ」
「う、嘘……」
「シズキ君には信じたくないことだと思うけど、本当なんだ」
猛秀君は僕にタブレットの画面を見せながら、画像をスワイプして次の画像、今度は動画を見せてくる。それは、見覚えのあるものだった。ただ、夢とは違い、ちゃんと現実にあったことのはずのものだけど。
そこには猛秀君らしき人が映っている。らしきというのは、認識ジャミングマスクの効果のあるメガネのせいか、顔がぼやけてるような、そんな風に見えるからだ。他には、実験器具のようなものやモニタなどが並んでいるのがそこから見える。
僕の目線が僕の身体へと下ろされる。黒いボディスーツ。僕の、いや、ストリーム・スフィアのものではない。ストリーム・ウォーターフォールのものでもない。一度切り、あの時だけ着せられていた、名も無きスーツ。その股間部は、パジャマの上から見るおむつのようにこんもりしている。
スーツが光に包まれて消える。そこにはほぼほぼ今の僕と同じ格好になった僕が存在していた。違うとすれば、まだおむつが汚れていないということくらいだ。この後、すぐに汚れることになってしまうんだけど……。
この後は、硬く目を閉じて、必死に見ないようにするはずだったのに、視点は変わらないまま、おむつが汚れていく様が映し出されていた。ぽつりと小さな染みが出来てから、そこからじわじわと股間部が黄色く染まっていく様を、すっごくすっごく恥ずかしいはずなのに、僕は目を逸らせないでいた。
猛秀君、いや、ドクター・パラノイアがわざとらしくおむつの濡れた部分を掴んで、ぐちゃぐちゃと水音を立てる。それからパラノイアの手でおむつを剥がされて、おしっこで汚れた下腹部が目に入る。
「シズキ君、認めたくないだろうけど、これが君の見た夢なんだ」
「なんで……なんで、この時の夢を見て、僕はあんな……」
「……言わなきゃ、ダメ?自分じゃ、認められない?」
画面の中の、心底僕を辱めるのを楽しんでるドクター・パラノイアとは違い、猛秀君の表情は何処か辛そうなものだった。
「認めるって、一体何の……」
「じゃあ、言うよ?シズキ君は……」
言われて、さらに僕はポカンとしてしまう。
「シズキ君は、おもらしに興奮する変態だってことだよ」
「……え?」
以前だったら、僕と猛秀君の関係が、ストリーム・スフィアとドクター・パラノイアのままであれば、僕は喚き散らして違うとハッキリ否定していた。だけど、今の猛秀君の言葉が、とてもではないけど嘘や冗談には思えない。猛秀君が悪ふざけでやるなら、映像のパラノイアのような表情を、声色をしているだろう。
でも……。
「いや、え……?そ、そんな……」
とても、認められるものじゃない。認めたくない。だって、そんなのおかしい。本当にただの変態じゃないか。
「じゃあ、じゃあなに?僕は、おもらしに興奮してるから、ずっとおねしょしてたっていうの?」
「そういうことだよ。そういうことしたいけど恥ずかしいことだって思ってるから、無意識の内にフラストレーションを解消するべくおねしょしてたんだ」
「そ、そんなのおかしいよ!大体、僕おもらしで興奮なんて……」
「って言うと思って、今からそれを証明しようと思うんだ」
今から、証明する……?
「まずは、僕がこのおもらしおむつを交換してあげるよ」
「えっ!?ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
猛秀君の姿が僕の目の前から消える。慌てて視線で追い駆ければ、本当に猛秀君は僕の下腹部の方へと移動していた。僕がいくら拒絶しようにも、手足は動かせないし、ディザイアもどういうわけか使えない。場所が自宅ということ以外、僕が捕まった時と、あの映像と状況がほとんど一致している。
「あーあ、派手にやっちゃってるなぁ。ねぇシズキ君、どうして晩にトイレ行ったはずなのに、こんなにビッシャビシャなのかな?」
股間部を触って、ぐちゃぐちゃとわざとらしく音を立てる猛秀君。もう、状況がそのままあの時と同じだ。顔が熱くなるくらい恥ずかしい。恥ずかしくて目を閉じてるはずなのに、薄目を開けて猛秀君が僕のおむつを弄ってるのを見てしまう。猛秀君がおむつを弄って立てる水音に、変な気持ちになっていく。
「まさか、おねしょしたくないのにトイレ行った後に何か飲んでたりしないよね?おむつ穿きに行った時とか、水飲んでたりしないよねぇ?」
「そ、それは……!」
確かに昨日の晩、おむつを穿いてから戻る時に水を飲んでいた。猛秀君が言うように、おねしょしたくないのに水を飲んでるのはおかしい。じゃあ、ホントに僕は……。
おしっこで濡れてて蒸れたおむつが解放されて、下半身がクーラーの冷たい風に晒される。急に身体が冷えたような気がして、ぶるっと震えてしまう。
「見てよ、こんな状態なのにおちんちんはこんなに元気だよ?」
「そ、それは、ただの朝勃ちで……」
「ホント?そうやって言い訳して、事実から目を逸らして来たんじゃないの?」
うっ……昨日の朝も、その前も、おねしょの処理する時はいつも朝勃ちしていた。認めたくない。自分がこんなことに興奮してしまう変態だなんて……だけど、それを示す符号がどんどん出て来てしまう。今も恥ずかしくて仕方ないのに、それでも嫌なはずなのに、猛秀君を強く拒絶出来ない。
猛秀君は濡れタオルで僕の汚れた股間周りを拭いていく。なんとか抵抗しようと足を狭めようとしても、力が入らない。目を背けようとしていても、ついついそっちを見てしまう。
「見てよシズキ君、おしっこ吸い過ぎて零れちゃってるよ?」
おしっこに濡れたおむつを引っ張り出されて、僕の顔に近付けられる。むわっとおしっこの臭いが鼻に飛び込んでくる。そのまま鼻先に、おしっこでびしゃびしゃになってる吸水材部分を押し当てられる。
「や、止めてよ!」
僕は頭を振って、おむつを当てられるのを拒絶する。鼻に当たる生温い湿り気と強烈な臭いに、不快感と一緒に、頭がくらくらしてきそうな危機感を覚えたからだ。ダメだ、そんなことあっちゃいけないのに……だけど、僕、おしっこの臭いに興奮してるの……?
「ふーん?そう言ってる割りに、こことかこことか、興奮してるように見えるけどなぁ」
そう言って猛秀君はおむつを引っ込めてから、僕のおちんちんとお尻の穴を指で軽く撫でる。ビクンと身体が跳ね上がるような感覚がして、僕はなんとか抵抗の意志を示そうと尻尾を捲り上げて股間部を隠そうとする。
「可愛いなぁ、シズキ君。ここまで来ても、まだ恥ずかしがってるなんて。いや、この恥ずかしいのに興奮してるのかな?」
僕にとんでもないことを告げてきた時の真剣な表情とは打って変わって、猛秀君はすっかりかつての悪の組織の研究員の顔になってる。世間的には洗脳されてたとして処理したことだけど、そういう方面では洗脳されてなかったわけだから、これもまた猛秀君の一面ということになる。
---[newpage]
「さてと、シズキ君、ここからが本番だよ。何をするかは、分かってるよね?」
満面の笑みなはずなのに、何処か邪悪ささえ思わせるのは、手に持ってる白いもののせいだ。おむつ。夜尿症の治療で貰ってたものじゃない。いつぞや穿かされておもらしさせられた、キツネのキャラクターの描かれた赤ちゃん向けのおむつだ。
「な、なんでそれなの?!」
「証明するって言ったでしょ?より変態チックな方がいいと思ったら、やっぱりこれだと思ってね」
猛秀君は楽しそうにおむつを広げる。これ、本当は猛秀君の方が色々サディスティックなフラストレーションが溜まってて、僕を使って発散しようとしてない?
「ほら、いつまでもそうしてたらおむつできないでしょ?」
「きゃぅんっ!わ、分かったから放して!」
捲し上げていた尻尾を、猛秀君が思いっきり掴むと、僕の背筋をぞわぞわと何かが走るような感覚に襲われる。ダメ、これは頭がおかしくなっちゃいそう……。
「ふふふっ、やっと素直になる気になったかな?」
「し、尻尾触られるよりは、マシってだけだよ……」
「どうだかなぁ?」
猛秀君のクスクスと笑う声が聞こえる。やっぱり楽しんでない?体よく調教されようとしてない?僕。けど、夢の中の映像とかは捏造出来ても、僕をおねしょさせるための工作なんて出来ないよなぁ……今日だけならともかく、いつもは一緒にいたわけじゃないし。
お尻を上げさせられて、すぐに尻尾の下におむつの後ろ部分を滑り込ませる。後は前にテープと前部分を持ってきて、すぐにテープが止められる。あっという間に可愛いお子様おむつを穿かされてしまった。
「さて、ただおむつ替えして恥ずかしがってるだけなら、そりゃそうだよね。興奮してるのはちょっと変態入ってるけど、それだけじゃ露出癖かもしれない」
そう言って、猛秀君は一旦僕から離れてベッドを降りて、スマホを取り出す。まさか撮影される!?って思ったけど、そんなことはなく、何かを転送してくるみたいだ。手に現れたのは、試験管に入った、黄色い液体だった。それこそまるで、おしっこみたいな色だ。
「ここに取り出したりますは、見るからに怪しいお薬だよ。さてここで問題です。この薬は何の薬でしょうか?」
「え?薬って……まさか……」
猛秀君は、僕がおもらしに快感を覚える変態であることを証明すると言った。で、今おむつを変えられた。恥ずかしいおむつを穿かせて恥ずかしがらせるためになんかじゃない。もっとずっと、恥ずかしいことのために。
「そう、飲めばすぐにでもおもらししちゃうこと間違いなしの、強力利尿剤。前に飲ませた時もあっという間に陥落したあれだよ」
やっぱり!そりゃ証明するならおもらしさせるのが一番だろうけど、けどさぁ!
「な、なんでそこまでしなきゃいけないの?!」
「だって、実際にやってみないと分からないじゃない。それとも認めちゃう?おもらしで気持ちよくなっちゃう変態だって」
「そ、それは……」
認めたくない。認めたくないけど、証明されてしまったらそれは同じことだ。それだったら曖昧にしてしまいたい。そうかもしれないで、猛秀君の悪質ないたずらの可能性もあるままにしておきたい。
「シズキ君、このまま認めずに目を背けても、おねしょを重ねちゃうことになっちゃうよ?」
「で、でも……認めても同じじゃない……?」
「そうでもないよ。ちゃんとおもらしプレイして満足すれば、おねしょでフラストレーションを解消する必要なくなるからね。オナニーしないと夢精しちゃうのと同じだよ」
猛秀君が言わんとすることも分からないわけではない。例えは下世話にしても、分かりやすい例えではある。なんか納得は出来ることなんだけど、性欲と同列に考えたくない部分がある。
「というわけだから、さぁ!」
グイグイと口元に薬入り試験管を押し当てられる。なんか仄かにアンモニアっぽい臭いがするのは気のせい?
「うぅっ……わ、分かったよ……」
意を決して、僕は少し口を開く。待ってましたと言わんばかりに猛秀君は試験管を口に当てて中身を飲ませてくる。
「うえぇ……何これ……変な臭いするんだけど」
「なるべくおしっこの臭いに近くしてみたんだ」
「なんで?!」
「んー、嫌がらせ?しょうがないね、ヴィランだった時に作った薬なんだから」
嫌がらせなの?!って思ったけど、なんか説明に納得してしまった。そうだよね、悪の科学者がわざわざ美味しい薬なんて作るわけないもんね……。ていうかこれ飲んで僕、目覚まさなかったの。
「ちなみにどれくらいで……?!」
「全部飲んだらあっという間だよ」
本当に急激な尿意が襲い掛かる。おちんちんの中をおしっこが駆け上がってくるような感覚に、なんとかお腹に力を入れて抗う。
「あれ?おもらしするために飲んだのに、何で我慢しちゃってるの?」
「だ、だって、そうは言っても恥ずかしいって!」
なんとか我慢しようと踏ん張ってはみるものの、すぐに頭が真っ白になってきて、目から火が飛び出しそうな感覚に見舞われる。
「我慢しなくていいの。ほら、出しちゃいなよ」
猛秀君が僕の側に寄り添ってきて、おむつを撫でながら耳元でそう囁く。まさに悪魔の囁きだ。
あ、もうダメ……。
「あっ……」
一分も我慢出来ずに、僕の膀胱は決壊した。ちんちんから温かいものが流れ出していく解放感の直後、その快感に近い感覚をあっさりと恥ずかしさで塗り潰すように、じんわりと股間に嫌な温もりが広がっていく。温もりと湿り気が僕の股間に広がっていくのと共に、おむつの表面がわざとらしく黄色に染まって行く。
「ああっ……」
その光景を、猛秀君がじっと観察している。友達に、とんでもなく恥ずかしい姿を見られている。頭に血が昇って、顔が真っ赤になるのを感じる。涙が目に浮かぶ。恥ずかしい。恥ずかしくて堪らない。今すぐここから消えてしまいたい。そんな感情と共に、背筋がぞくぞくする。悪寒、とは何か違う。何、これ……。
「あらら、ちょっといきなりやり過ぎたかな」
猛秀君はティッシュを一掴み取って、僕の目元を拭いてくれる。泣いちゃった……のかな。もうなんだか色んな感情がせめぎ合って頭の中がぐちゃぐちゃになりそう。
「でも、涎垂らしちゃうくらい気持ちよかったのかな?」
「ふぇ?」
指摘されて、だらしなく開いた口の端から涎が垂れてたのに気付く。こんなになるまで放心してたってことなのかな。気持ちよくは……よくは……。
「……怖いよね。嫌だよね、普通じゃないことは」
猛秀君が僕に押し倒すように覆い被さってくる。何で?とも、おむつに当たって汚いよとか、そんなこと言えなくなった。
「タ、タケヒデ君?!」
急に猛秀君が白衣を脱ぎ始めたからだ。白衣を脱いだその下は、服でもなければ裸でもなくて、真っ黒で光沢を放つ、全身を覆うボディスーツだ。
「けど、いいじゃない、普通じゃなくたって。僕だって、こういうピッチリしたスーツに興奮するような変態だよ。ほら、今もこんなになっちゃってる」
猛秀君はそう言って、僕の前で膝立ちして、その股間を目の前に見せ付けてくる。猛秀君の股間はもっこりしてるどころか、ラバーに完全に覆われた小さなちんちんは隆起して、頑張って自己主張をしている。
「変態なことは悪いことじゃないよ。別にみんなに知られたわけでも、みんなに教えろなんて言うわけじゃない。秘密の一つや二つくらい、誰にでもあるってだけだよ」
「秘密……」
まだ、猛秀君以外の誰かに知られたわけじゃない。そうだ。こんなに恥ずかしい秘密、誰にも知られたくない。知られなければいいだけ。
「……タケヒデ君」
「なぁに?」
「おむつ、替えて……」
猛烈な恥ずかしさを感じながらも、僕は猛秀君に恥ずかしいお願いをする。半ば自棄になって言ったものの、言ってすぐに後悔が出て来てしまう。ただおむつを替えて欲しいと言う以上に恥ずかしいことになっていることを、この異常な状況のせいで忘れていたからだ。
「ふふふっ、やっとその気になってくれたね」
「あっ、や、やっぱりちょっとだけ待って……!」
「だーめ」
止めるのも虚しく、すぐに猛秀君は僕のおむつのテープを剥がして、おむつを開いてしまう。まだおしっこを出したばかりで、最初におむつを開いた時よりもさらに強いアンモニア臭がする。さっきと違ってびしょ濡れのままで、そこまでお腹の毛が黄色く染まってるようなことはなかった。
「あはっ、これはちょっと言い逃れできないんじゃないかな?」
「うぅ……」
ただですら恥ずかしいことになってるけど、僕の小さなちんちんが、まだ、いや、また勃起していたんだ。さっき漏らしたから勃ったままだったなんて言い訳は出来ない。物凄く恥ずかしいのに、僕は確かに感じてるんだ。
「これで、本当におねしょしなくなるのかな……」
「僕の見立てが正しければ大丈夫だよ。ただ、おむつしてると漏らしていいって、無意識に漏らしちゃう方に傾くかもしれないから、今日はおむつ無しにしてみようね」
猛秀君は僕の股間周りをタオルで拭きながらそう解説してくれる。不安はあるけど、猛秀君を信じるしかない。またおねしょしないかって不安はあるけど、今日はちゃんとトイレ行った後に水を飲まないように意識しておこう。それだけでも違うと思いたい。
「シズキ君、心配しないでね。僕はシズキ君が変態でも、友達だからさ」
「タケヒデ君……」
両手両足の拘束を解除しながら、猛秀君はそう言ってくれる。それはいいけど、友達に対してこんな拘束してたって事実はどうなんだろうとは思うけど、今はそんなことも些細なことに思える。これでドン引きされようものなら立ち直れる気がしない。
「タケヒデ君、今日のことは……」
「分かってる、絶対に誰にも言わない。
二人だけの秘密だよ」
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深夜。雫輝君が寝静まった頃。
「もしもし」
『なんだよ、っつうか、どうやって連絡してきてんだよ』
「ユッキーに頼んで、友達のためだからって電話させてもらったんだ」
『友達のため、ねぇ?んで、なんだよ今更』
「シズキ君……ストリームに掛けた催眠。あれってまだ、解けてないよね?」
『ん?非情なる心なら、あいつ自力で……』
「違う違う、そっちじゃないよ」
『そっちじゃない?どれだよ』
「ほら、最初に連れてきた時に掛けてた方」
『最初に?あー……なんだよ』
「もう、おねしょだよ、おねしょ」
『ああ、そんなのも掛けてたな。寝てる間に漏らすようにってやつか。解いた記憶はねぇけど、何か?まだ漏らしてんのか?』
「まっ、そんなところ。解けててもいいと思ってたんだけど、おねしょを再発してるみたいでね。一応、なんとか出来ないかと思ったから電話にしたんだ」
『なるほどな……近くにいるのか?』
「うん。隣の部屋でグッスリ寝てる。ちょっと待ってね、今シズキ君のところに行くから」
僕はキッチンから雫輝君のいる部屋に入り、雫輝君の寝てるベッドにそっと近付く。
「いいよ」
『へいへい。『起きなさい』。これでいいんだろ?』
電話越しに催眠の解除ワードが宣言される。雫輝君が目を覚ます様子はないけど、目を硬く瞑っているから、もしかしたら起きるかも知れない。
「ありがと。それじゃ起きちゃいそうだから切るね」
『おう』
僕はすぐに通話を切る。それとほぼ同時に、雫輝君が薄目を開き、僕の方を見る。
「タケヒデ君……?」
「シズキ君、どうしたの?シズキ君もトイレ?」
「うん?あ……うん、トイレ行きたい」
ごそごそと雫輝君はベッドから起き上がり、僕の横を抜けてふらふらとキッチンの方へと出て行く。多分、さっきの電話は聞かれてないはず。
おねしょするような催眠が掛かってたことは、僕だけの秘密だ。あそこまでやったのに、今更思い出して催眠を解除したなんて言えない。
けど、雫輝君がおもらしで興奮する変態かどうかは、別の問題だ。このままそんな欲求が消えてしまえば、ただの杞憂になる。だけど、もし何処かで再発するようなことがあれば、その時は真に雫輝君が変態であることが証明される。
ディザイア能力者は大抵変態であるという、イグノーベル賞ものの研究もあるくらいには、ディザイア能力者には変態が多い。ウェイカー様は露出狂だし、ヒュプノスは言わずもがな催眠全般。ガントレットは筋金入りのドM。ボーダーだってビッチだし、チェイサーも性的な意味でのドSだって話だ。かく言う僕もラバースーツのようなスーツに対して、着たり、或いは着ているのを見るのでも興奮を覚える。
類例はいくらでもある。それらを考えたら、雫輝君が変態性癖を持っていても、なんらおかしくない。おもらしに興奮するというのは少しな特殊な性癖だけど、全然有り得ることだ。
果たして雫輝君の性癖なのか、それとも恥ずかしさが刺激になって興奮してしまっただけなのか。或いはもっと別の性癖なのか。これからも雫輝君の観察を怠らないようにしないといけない。
「んっ……まだ起きてるの?」
雫輝君がトイレから戻ってきて、ベッドに戻りながらそう聞いてくる。
「狭いから、踏まれちゃうかもって」
「それもそっか。ごめんね、待たせちゃって」
「いいよいいよ、僕が泊まりに来てるんだから、それくらいで文句言ったりしないって」
「そう?」
寝起きだったからか特に追及せずに、雫輝君はそのままベッドに潜り込む。今なら添い寝しても拒否されないかな?って思うけど、さすがに今日は止めておこう。
「お休み、タケヒデ君……」
「お休み、シズキ君」
雫輝君が目を閉じてすやすやと寝息を立て始めたのを確認してから、僕は雫輝君の額に口付けをしてから、布団に戻る。
雫輝君、君はいつ認めてくれるのかな。自分のことも、僕の想いも、いつ……。
意識がまどろみに消えていく。僕はそのまま朝まで眠りに就いた。