~Hero_Desire~番外編「黒に堕ちる」

  俺の名前は[[rb:青鷲>あおわし]][[rb:十紀>とうき]]。黒に近い紺色の羽を持つ大鷲鳥人だ。身長188cm。二十二歳。職業ヒーローだ。十年前であれば鼻で笑われていただろう職業であるが、今ではれっきとした公務員となっている職種である。

  

  今、大きな問題に直面していた。バディであるブレイジング・ブレイブこと、[[rb:赤獅子>あかじし]][[rb:豪火>ごうか]]が突如として消息不明となったのだ。本人の携帯電話は消息不明になる直後にヒーロースーツを装着したようで、衣服と一緒に残っていた。当然ヒーロースーツ付属のデバイスにも連絡を行ったものの、通信は繋がらなかった。

  

  ブレイジング・ブレイブが最後に変身を行い、GPSの信号が突如として途絶えた公園へと調査しに来ている。戦闘痕などを探したが、ブレイブの付けたであろう炎による僅かな焦げ以外、手掛かりになりそうなものは見付からなかった。

  

  「少なくとも、ここで戦闘があったのは間違いないが……」

  

  恐らく考えられる可能性は一つ。ブレイブは何者かによって連れ去られたという可能性だ。何者かというのはこの場合、十中八九悪の組織ということになるだろうか。

  

  ブレイブはまだ他者から個人を個人として認識することを阻害する、認識ジャミングマスクが存在していなかった頃からヒーローとして活動していたため、世間にその素顔を知られているヒーローだ。夜遅くに見回りをしていた豪火を狙うことは、そんなに難しいことではない。それを狙わせた、というのは恐らく豪火の性格からすればないだろうが、結果として悪の組織の方から仕掛けてきたのだろう。

  

  問題は、応援も呼ぶことが出来ないままに連れ去られてしまったことか。さすがに最悪のケースは想定したくないが……。

  

  「……一応、そこの池も調べておいてくれ」

  

  一緒に調査のために来ていた警察の鑑識に、俺は公園の中にある小さな池を指してそう依頼する。連れ去られたと仮定していたが、殺された可能性も十分にある。悪の組織にとってヒーローは唯一にして最大の障害だ。その排除のために闇討ちをした、という可能性は十分にあるだろう。

  

  しかしそれはすぐに杞憂だと分かり、ホッと胸を撫で下ろすことになった。いくらなんでも、あのブレイジング・ブレイブがそんなあっけない最期を迎えたとは思えなかったが、確認しないわけにはいかなかった。あらゆる可能性を考えて冷静に行動する。それが俺の役割なんだから。

  

  結局、この公園で突然豪火の痕跡が消えたことしか分からなかった。それが分かったことで得られた情報は、敵が出現にも撤退にも痕跡を残さない方法を使っていることと、あまり喜ばしくないものだ。ディザイアか、未来技術か。いずれにしても通常の方法で追跡が困難であるということが分かってしまい、鑑識は撤退することとなった。

  

  「……ゴウカ……」

  

  俺は一人で公園に残り、ぼんやりとしていた。今でも、少しだけ信じている自分がいる。豪火が何食わぬ顔をして戻って来ることを。連れ去られた先で大暴れして、無茶苦茶ながら悪の組織を壊滅させて戻って来ることを。飛ばされた場所が遠くて戻って来るのに時間が掛かっているだけだと……。

  

  ブレイジング・ブレイブは、子供の頃は俺の尊敬の対象だった。自分と同い年だというのに、ヒーローとして日夜ヴィランと戦い多くの人を救うその姿に、憧れを抱かなかった小学生はいなかったことだろう。俺もその一人だった。けれど、憧れは憧れでしかないはずだった。俺にはディザイアがなかったから。その力に届く願いもなかったから。そのはずだったんだ。

  

  高校三年の夏、俺はディザイアに覚醒した。百貨店に現れたヴィランに襲われている人を助けようとして、敵を打ち倒すための武器を求めた。その願いが届き、俺の手に銃が握られていた。

  

  最初の戦いは、それはそれは酷いものだった。認識ジャミングマスクもないのにハンドガンから物は試しにとマシンガンやらショットガン、ロケットランチャーなどとにかく火器を呼び出して使うもんだから、どっちがヴィランか分からないような状態だった。

  

  しかし、所詮覚醒したばかりの素人では制圧など出来ず、逆に殺され掛けてしまった。そんな状況で助けてくれたのは、ブレイジング・ブレイブに他ならない。荒っぽいながらもしっかりとヴィランを打ち倒すあの姿は、今でも忘れられない。

  

  その時、俺はヒーローになろうと決めた。よくある話といえばよくある話だろう。どうせ高校を卒業してもなんとなくで大学に行くつもりだったから、それまでの受験勉強を放り捨ててヒーロー採用試験のための勉強をすることに対してはなんら抵抗はなかった。ブレイジング・ブレイブのように誰かを救えるヒーローになりたい。そして願わくば、もう一度ブレイジング・ブレイブに会って、あの頃のお礼を言いたい。

  

  そう思っていたら、案外すぐ再会することとなった。それも、同期の同僚としての再会。しかもバディとして組むというのだ。信じられなかった。あのブレイジング・ブレイブが、目の前にいて、あんなにも……幻滅することになろうとは……。確かにブレイジング・ブレイブは強かった。強かったが、あまりにも向こう見ずで、最初の任務から何度も何度もフォローする羽目になったのだ。

  

  すぐにヒーロー協会に抗議したが、協会としては俺がイライラするのはある意味当然だということだ。暴走しがちのブレイブのストッパーとして組まされたのだと、その時初めて知ることとなった。一歩引いた場所から、ブレイブをフォローしてやってくれと。

  

  しかしその暴走も、正義感からくる早急な解決のためのものだと分かれば、そこまでイラつくようなものではなくなった。熱すぎる正義感と熱意を後ろからサポートするのも悪くないと思えたきた。言い合うことはあるにしても、互いに高め合える存在だと認識している。

  

  一人物思いに耽っているうちに、夏の長い日が沈みかけ、空が赤みを帯びている。いつまでもここで待っていても、豪火がここへ来るなんてことはない。来るならとっくに来ている。いつでも出動できるとはいえ、仮にも公務員がいつまでも仕事をサボっているわけにはいかないな……煙草も切れたし、そろそろ戻るか……。

  

  「おうおう、こんなところでサボりかよ」

  

  座っていたベンチから立ち上がり公園から出ようとしたその時、いきなりそう声を掛けられる。一瞬性質の悪い連中に絡まれたかと思ったが、すぐに聞き慣れた声だと分かりバッと振り返る。

  

  「ゴウ……カ……?」

  

  振り向きその顔を見た時、確かにそれが豪火だと分かったが、明らかにその様子はおかしかった。首から下の全てが真っ黒なボディスーツに覆われていたのだ。ヒーロースーツ以上に密着性が強いようで、全身の筋肉は勿論、陰茎の形がハッキリと浮かび上がっている。まるで、悪の組織【ザ・ブラック】の戦闘員のようだ。

  

  「おいおい、いきなりだな?」

  

  「今まで何処で何をしていた」

  

  俺はすぐにハンドガンを作り出してからそれを豪火へと向ける。いや、確かに豪火の姿をしているが、まだ豪火本人だと断定するのさえ早い。偽物の可能性もゼロではないだろう。

  

  「再会の挨拶にしちゃあ、随分なもの言いじゃねぇか」

  

  「答えろ、何処で何をしていた」

  

  「問答無用ってか?知りたきゃ教えて……やるよ!」

  

  刹那、黒煙にも似た黒い炎が豪火の足元から噴き出して、俺に向けて飛び掛ってくる。凄まじい質量の弾丸と化した豪火の前では、ハンドガン程度の武器は無意味だと判断して、俺は可能な限り引き付けた上で空中へと飛び上がる。

  

  「っちぃ……!」

  

  いつも以上に速度を付けて飛び出したせいだろう、足でブレーキを掛けた地面が焼け焦げていく距離がいつもよりずっと長い。そのうちに出来るだけ上空に飛び上がり、安全を確保する。

  

  「[[rb:変身>トランスフォーム]]、インフィニティ・ガンズ!」

  

  右手のグローブの甲に手を当てて、変身コマンドを宣言する。一瞬白光に包まれ、着崩れたカッターシャツとスラックスがヒーロースーツへと置き換わる。青系の迷彩柄の全身を覆うボディスーツに、ゴーグル型のジャミングマスクをかけている。見掛けからして武装などがあってもいいものだが、その武装を生み出すことこそ、俺のディザイアなのだから。

  

  「こちらインフィニティ・ガンズ!S市自然公園にてヴィランと交戦、すぐに……!」

  

  「うぜぇことしてんじゃねぇ!」

  

  すぐに右手をデバイスに当てて協会へと連絡を入れるも、豪火は全て言う前にこちらへと黒い炎を放ちながら飛び上がってくる。止む終えず手を離してから、ハンドガンを放り捨ててからマシンガンを作り出して応戦する。

  

  「効かねぇんだよ!」

  

  銃弾が届く前に、黒い炎が豪火の身体を包み込む。あいつの言う通り、マシンガンの弾でさえも力を全開にした豪火には届かない。弾丸が飛び交おうがお構い無しに、あいつは炎の弾丸と化して俺を消し炭にしようと突っ込んでくる。

  

  強引にマシンガンを上に向けて、空中では抑え切れない反動を駆使して軌道をずらして、豪火の突進から逃れる。纏う炎が羽先を掠り、熱波に気圧され空中でバランスが崩れる。

  

  「もらったぁ!」

  

  豪火が俺の真上から、炎で向きを制御して身体を反転させ、落下しつつある俺に向けて狙いを定める。このまま加速した拳が叩き込まれて地面に激突しようものなら、身体に穴が開くか内蔵がやられるか、或いは焼け死ぬか。いずれにしても待っているのは敗北だ。

  

  「させるか……!」

  

  それを避けるためには、リスクを背負う必要がある。作り出す銃はロケットランチャー。銃なんて生易しいものではないだろうが、俺が銃と認識していればなんだって作り出せる。

  

  ズドゴォンッ!

  

  突っ込んできていた豪火に直撃して、凄まじい爆発と噴煙、轟音に熱波、それから地面に叩き付けられた痛みが一斉に襲い掛かる。デバイスの防音効果など意味を成さないほどの爆発音で頭が痛くなりそうだ。

  

  意識が飛びかけたものの、豪火からの追撃はさすがになかった。いくら炎のディザイアがあっても、あれの爆撃をまともに受けきれるはず……。

  

  「ぐあっ!」

  

  「あんなもんで防げると思ってたかぁ?」

  

  爆炎の中から豪火が飛び出だしてきて、すぐに馬乗りになり首をその太い右腕で押さえ込まれ、マウントを取られてしまう。倒せるとまでは思っていなかったにしても、時間稼ぎにすらならないとは……。

  

  「ぐっ……目を、覚ませ……ブレイジング・ブレイブ……!」

  

  「目を覚ませだぁ?はんっ、俺は目を覚ましたんだよ!」

  

  豪火の首を絞める腕に力が入り、息苦しくなってくる。クソッ、一体豪火に何があったっていうんだ……。

  

  「それに、ブレイジング・ブレイブなんて古臭いヒーローの名前は捨てたんだよ!今の俺は【ザ・ブラック】のヴィラン、ブラック・ブレイズだ!」

  

  大声でそう宣言する豪火の表情は、今まで見たことのない歪んだ愉悦を体現していた。もはや、あの正義に燃えていたヒーローの姿など、見る影もなくなっていた。

  

  「へっ、丁度ギャラリーも到着したみたいだな」

  

  命の危機に豪火の言葉以外ほとんど周りの音が聞こえていなかったが、応援が到着しているようで豪火に向けて警告を発している。

  

  「このままテメェもあいつらも消し炭にしてやってもいいけど、テメェにもあいつらにも、たっぷり絶望してもらわねぇとなんねぇからなぁ」

  

  「うがあああああああ!」

  

  首を絞めている豪火の手から黒い炎が上がり、俺の首を、頭を焼く。炎は一瞬で収まるも、酸欠しそうになり息が荒げる。

  

  「この町のヒーローはこれでゼロだ!この町を【ザ・ブラック】が支配するのを震えて待っていやがれ!」

  

  言葉と共に背中に当たる硬い感触が消える。一緒に妙な浮遊感がある。何処かへ落ちているようだ。

  

  すぐに浮遊感は収まり地面に激突する。何処かへ転送された、と考えるのが妥当か。暗さもあり周囲を確認する余裕さえないが、ともかく目の前の豪火をなんとかしなくては……。

  

  「ガハッ……!」

  

  豪火の拳が腹に突き刺さり、目の前が明滅する。ダメだ、もう、意識を保てな……い……。

  

  「おやすみだ、ガンズ」

  

  ---[newpage]

  

  「おらぁ、起きろ!」

  

  パシィンッ!

  

  豪火の怒声と尻へと痛みで目を覚ますことになった。

  

  身体がろくに動かせない。腕と首が何かに拘束されているようで、冷たい感触がする。両手が頭の横に並べられるように拘束されているようだ。足を開いた状態で尻を突き出させられているようで、何もしていなくても少し腰が痛む。妙な感覚がある。所謂晒し台というものだろう。

  

  「よう、いい夢は見れたか?」

  

  その言葉と共に、煙草の煙を顔に吹きかけられる。いくら喫煙しているとはいえ、副流煙を吐き掛けられれば堪らず咽てしまう。どうやら豪火の口から吐かれたらしい。身体が資本だから煙草なんて吸わないと言っていた、あの豪火の口から。

  

  「……最悪な寝覚めだ」

  

  頭の羽毛を掴んで無理矢理上を向かせられて、ぎらぎらした豪火の目が俺の顔を覗き込んで来る。正義のヒーローとは程遠い、欲望に飢えたケダモノの目。あの豪火をあっさりとこんなヴィランにしてしまうような力が、【ザ・ブラック】にはあるというのか……。

  

  「ハッ、これからもっと最悪になるぜ?いや、最高か?」

  

  豪火が手を離すと、無理矢理上を向かせられていた頭がガクンと下がる。視線が下がると、必然的に豪火のはしたなく勃起した股間が視界に入る。

  

  「まずは……その硬ってぇ嘴じゃ気持ちよくなんねぇからな」

  

  近くのテーブルの上から何かを手に取り豪火が戻って来る。その何かは黒いゴムバンドに大きな輪の着いたものだった。一種の開口具……なのか?

  

  「おら、口開けろ」

  

  その想像と豪火の言動に嫌な予感しかせず、硬く口を閉ざす。強引に開こうとはしてくるだろうが、わざわざ口を開いて待ってやる義理なんてありはしない。

  

  ドガッ

  

  「ぐふぅっ……!」

  

  俺が口を閉ざしていると、豪火は嘴を強引に開くことはせずに、代わりに俺の腹を思いっきり蹴り上げる。身構えていても重い蹴りに、思わず息が零れる。

  

  「とっとと口開けっつてんだ!」

  

  「うぐっ、うげぇ……」

  

  立て続けに二度、腹部を蹴り上げられたせいで、胃の内容物を吐瀉してしまう。開かれた口に指を突っ込まれて、強引に口を開かせられる。頭を振って拒絶しようにも、殆ど頭は動かせず、抵抗することも出来ないままリングギャグを装着される。

  

  「んっ、んーっ!」

  

  吐いたばかりだというのに、口を目いっぱい開かせられるリングの存在に、凄まじい嗚咽感を抱く。しかしこれからのことを考えれば、これでもまだ生易しいことだろうか。

  

  「そんじゃ、まずは上の口で楽しませてもらうとするか!」

  

  最悪な宣言と共に、ラバーに覆われ黒一色の立派ながらはしたない性器が目の前に突き付けられる。また頭の羽毛を掴まれ、強引に開かれた口の中に巨根が捻じ込まれる。

  

  「んっー!」

  

  「おー、久しぶりだな、この柔らかい感じ」

  

  口の中にゴム質のなんとも言えない味と、小便臭い臭いと味が広がり、圧倒的存在感を持つ性器のせいで今すぐにもまた吐きそうな嗚咽感に襲われる。しかしまともに身体どころか首も動かせない状況では、やられたい放題やられるしかない。

  

  「おい、舌の一つでも絡めて、俺を満足させろよな!」

  

  一切躊躇なく豪火は腰を打ち付けてくる。満足させたところで何も解決しないばかりか状況は悪くなる一方だろうが、呼吸さえ阻害されつつあるこの現状を打開するためには止む終えない。

  

  喉の奥まで突き立てられる肉棒になんとか舌を這わせる。不快なことこの上ないゴムの苦みと渋みから不味さだけを抽出したような味がする。それでも忌避感をどうにか押さえ込んで、必死に豪火の性器に舌を絡ませる。

  

  「いいぜぇ、オナホよりは気持ちいいぜ」

  

  ぽたりと開かれた上嘴に生暖かい液体、恐らく唾液が落ちてくる。豪火の表情は見えないものの、快楽に惚けてしまっているのは予測できる。その顔自体は、まるで想像出来ない。そんな余裕もない。

  

  「ふんっ、ふんっ、ふんっ!」

  

  豪火はただただ快楽を貪るケダモノのように、必死に腰を振り続ける。不快感と嗚咽感、そして屈辱感に涙が浮かんでくる。ただのヴィランならまだ良かった。何故、豪火がこんな低俗な存在に成り下がってしまったのか……どうにか、言葉は届かないか……。

  

  「おら、まずは一発くれてやらぁ!」

  

  強く腰を打ちつけたまま喉の奥で肉棒が止まり、そこから熱い精液が食道へと直接注ぎ込まれる。そのまま少し腰を引かれて、わざとらしく口の中に精液を放たれ、ゴムと肉棒の味に加えて、塩辛さと青臭さの混じった独特の臭いと味が口の中を支配していく。

  

  「なぁに零してんだよ!」

  

  「がはっ、ごほっ……」

  

  口を開かされているせいでどう足掻いても飲み込めずにボタボタと床に精液を吐き出していると、理不尽な怒りを腹にぶつけられる。そのまま食道を下り掛けていた精液も逆流して、胃液と共に零れ落ちる。

  

  「なんとか言えよな!」

  

  「んーっ!」

  

  再度理不尽な要求をされながら腹に蹴りを入れられて、なんとか呻き声だけで喋れないようにしたのはお前だろうがと伝えようと声を上げる。

  

  「あん?ああ、そういや口封じてたんだったな」

  

  俺の呻き声に気付いてか、それともわざとなのか、そう言って俺にしていた口轡を外してその辺の床に放り捨てる。嗚咽感は多少軽減されたものの、ただひたすら口内を支配しているゴムと精液の混じる何ともいえない不快感が依然残っている。

  

  「何故、こんなことを……」

  

  「あ?そりゃ気持ちいいからに決まってんだろ?」

  

  自由に言葉を発せるようになって、吐露した想いはあっさり打ち砕かれた。何処までも禁欲的で何処までも自分を追い込んでヒーローとして自分を高めてきた豪火が、今や反動のように下賎な快楽を貪り喰らうヴィランと化してしまったのか……。

  

  「まだまだ収まんねぇから、次行くぞ、次」

  

  そう言って豪火は視界から消えてしまう。後ろを向こうにも首を動かせないからその動きは分からない。ある程度予測は出来てしまうが……。

  

  「い゛っ……!」

  

  腹の中から何かが出て行く感覚に声が出る。腹が重いような違和感はあったが、アナルパールでも詰められているようだ。

  

  「あぐぅ、あがぁ!」

  

  情緒も何もなく、豪火はアナルパールを一気に引き抜いたようで、連続的な排泄感に苛まれる。気絶している内に強引に詰められたのが信じられない痛みと、排出の奇妙な快感が同時に身体を駆け上がっていく。

  

  「さぁて、ちったぁ緩くなってりゃいいな?」

  

  豪火の指が俺の肛門をなぞってくる。排泄以外で使ったことなどないその器官からひりひりと刺激が伝わってくる。ただ触られただけのはずなのに、どうなっている……。

  

  「そら、よっ!」

  

  「ぐあっ、ぐううっ!」

  

  激痛と灼熱が尻穴から身体を貫く。通常であればおそらく入りもせずにただただ痛みばかりがくるはずだったのに、どういうわけか無理矢理ながら豪火の性器は俺の直腸へと侵入していってしまう。

  

  「なんだ、意外とすんなり入っちまったな?アナニーでもしてたのか?」

  

  「そ、そんなわけないだ、あああああ!」

  

  俺が否定する言葉を途中で遮るように、豪火は再び腰を動かし始める。パンパンと腰を打ちつける度に尻肉のぶつかる音が響き、腸液と先走りの水音が嫌に響く。

  

  「あがぁっ、ぐあぁっ!や、止めろ!」

  

  「止めてください、だろぉ?まぁ、ぜってぇ止めねぇけどなぁ!」

  

  拒絶したところで無駄なのは分かっていたが、それさえも豪火は愉しんでいるようだった。もはやタガが外れてしまったというような段階ではない、別のおぞましい力が働いていると考えるべきだろう。しかしディザイアを使おうにもこうして拘束されている限り、俺には呼びかけることしか出来ない。

  

  「あぐっ、あぅっ、ああっ……!」

  

  しかし、痛みと、信じたくない快楽によって言葉を紡ぐ余裕すら与えられない。何故、何故尻穴を突かれてこんなに感じているんだ……。

  

  「なんだよ、言ってる割りにチンポおっ立たせてるじゃねぇか」

  

  「いぎっ……!」

  

  俺の性器を握られたようで、ろくに身体が動かせないのにビクンと跳ね上がる。嘘だ……犯されてるのに本当に勃起しているのか……?気絶していた間にアナルパールを詰められるくらいだ。薬を盛られていてもおかしくはない。ないが、それでも屈辱的なことには変わらない。

  

  「ハッハッ、澄ました顔して、とんだ淫乱野郎だぜぇ!こんなエロい穴してよぉ!」

  

  「んぐっ、ふぅっ、きゅぅっ!」

  

  息荒く豪火が煽ってくるのを聞く余裕さえもうなくなってきた。いつの間にか痛みさえほとんどなくなり、一点に当たった時に来る、狂いそうになるほどの強烈な快感に善がり狂うと共に危機感を覚える。ダメだ、このまま責められたら……!

  

  「ほうら、俺のザーメン腹いっぱいにくれてやらぁ!」

  

  一際強く豪火が腰を打ち付ける。それと共に身体を内側から溶かさん熱が腹に注ぎ込まれる。

  

  「あ、ああぁあぁ!」

  

  それと共に、とうとう俺も限界を迎えてしまい、自らの欲望たる精液を吐き出してしまう。一瞬の快楽は身体の熱とは反比例して冷め切り、代わりに今までの人生で最大の恥辱が頭の中を埋めていく。男に犯されて感じて、あまつさえ触られてすらいないのに射精してしまうなんて……。

  

  消えてしまいたいという思いと、凄まじい疲労感に、視界が暗くなり、俺の意識は途絶えようとしていた。

  

  ---[newpage]

  

  「ブラック・ブレイズとインフィニティ・ガンズの様子はどうだ、ブラック・ホール」

  

  「マスター・ブラック様。ブラック・ブレイズはその欲望をインフィニティ・ガンズへぶつけていますが、このままではガンズが壊れることはあれど、貴方の望みは叶えられないかと」

  

  身体の左右で白毛と黒毛がはっきりと分かれている特徴的な毛色の兎獣人、ブラック・ホールは自らの力で開いた大穴をジッと監視しながら、そうマスター・ブラックと呼んだ鴉鳥人へと報告する。二人とも黒一色のボディスーツに身を包んでいる。

  

  「ふむ、ケダモノの本性を曝け出すのは良い傾向だが、ガンズは壊してしまうにはあまりにも惜しい力の持ち主だ。有象無象に力を与えることの出来る力を望むものなど、そういないのだから」

  

  「いかがいたしますか?一度止めて、貴方様のお力でガンズを堕としてしまいますか?」

  

  「いや、もう少し様子を見るとしよう。今ガンズに我が力を与えたとしても、ブレイズへの憎しみで制御の利かぬ獣が生まれるだけになるやもしれぬ。それでは、ガンズが壊れることとなんら変わらない」

  

  「では、このままブレイズに犯させ続けるので?」

  

  「そうだな、勿論引き続きブレイズにも望むままに犯させるが、それだけでは足るまい。折角お前が凝らした趣向を無碍にするわけにもいかないしな」

  

  マスター・ブラックはチラリと後ろを一瞥する。その部屋にはマスター・ブラックとブラック・ホール以外にも、四人の獣人がいた。いたとは言っても、皆全裸にされ、両手両足を拘束されて跪かされているのだが。

  

  彼らは先ほどまで、ホールの力によって開かれた穴からブレイズによるガンズの蹂躙行為を見せ付けられていた。ブレイジング・ブレイブというかつてのヒーローが悪の道へと堕ち、今新たにヒーローを悪の道へと誘おうとする、その様を。この町を守る希望が一気に失われようとしている様を。

  

  「さて、この絶望の中で貴様達は希望を見出すことが出来るか?」

  

  マスター・ブラックは拘束されている一人のうち、中肉中背の犬獣人に向けて手を翳し、その力を使い自らの纏うスーツと同じような黒い液状のラバーを呼び出す。ラバーはすぐに犬獣人の元へと這いずるように近付いて、犬獣人へと襲い掛かる。

  

  「なっ、うわああああああああああああ!!」

  

  すぐに犬獣人の身体を黒いラバーが包み込む。それと共に犬獣人に耐え難い負の感情の爆発が襲い掛かる。現状への怒りや過去の苦しみ、この後にされることへの、未来への不安が一斉に流れ込み、その奔流に抗えなかった着用者の精神を崩落させる。

  

  「やはり抗えぬか……所詮はヒーローの腰巾着。己の力で道を切り開くほどの願いを持つことなど適わぬか」

  

  黒いラバーが犬獣人の身体をピッタリと覆うスーツと化していた時には、犬獣人は既に泡を吹いて気を失っていた。マスター・ブラックのディザイアにより、自我を失い廃人と化してしまったのだ

  

  「ならば、我が貴様の道を示してやろう」

  

  マスター・ブラックは翳していた手をグッと握り締める。すると犬獣人を覆っているスーツから頭へと液体ラバーが這い上がり、あっという間に頭も包み込んでしまう。傍目に見ればもはや人なのかマネキンかドールなのかも判別が難しくなってしまう。

  

  「我が前に跪け」

  

  その命令と共に犬獣人はスクッと急に立ち上がり、言われるままにマスター・ブラックの前に跪く。まともに思考することさえ出来なくなっていた犬獣人の頭には、自らの思考の代わりにマスター・ブラックという、絶対的な存在へ服従することの快楽のみが存在していた。

  

  「貴様は今より戦闘員129号だ。我に隷属し、それを快楽とすることをここに宣誓するがいい」

  

  「ハイッ!私、戦闘員129号はマスター・ブラック様の忠実なる奴隷として絶対服従を誓います!」

  

  マスター・ブラックの命令を果たすべく、犬獣人は立ち上がり、右手を上げてそう宣誓する。その言葉は何処か艶を帯びており、その事実を裏付けるように、犬獣人の股間部は身体を包み込むスーツに押し込められながらもしっかりと怒張している。

  

  周囲が騒然とし始める。目の前でかつての仲間が、信じられないほど簡単に絶対服従の奴隷へと変えられるその様は、恐怖を植えつけるには十分過ぎた。

  

  「さて、では……」

  

  「マスター・ブラック様、マスター・ブラック様!」

  

  次の獲物に手を掛けようとしていたその時、部屋の唯一の扉が開かれて、マスター・ブラックと同じような黒いボディスーツを着た、背の低い黒毛の猫獣人が、両手で銃のようなものを持って飛び込んでくる。ボディスーツの胸元には白で六本歯の歯車の意匠がされている。

  

  「あれ、お楽しみ中でした?あ、だったらむしろ丁度いいか!」

  

  「落ち着け。どうした、ブラック・ファクトリー」

  

  まるでそこに捕らえられた者などいないように、マスター・ブラックはブラック・ファクトリーと呼ばれた黒猫獣人に問い掛ける。

  

  「頼まれていた秘密兵器、完成しました!」

  

  「ほう、それならば確かに丁度いい。どれ、成果を見せてみろ」

  

  「はい!」

  

  マスター・ブラックの命令を受けて、ブラック・ファクトリーはキョロキョロと犠牲者を品定めする。目の合った豹獣人へにんまりと笑みを浮かべて、嫌な笑みと一緒に銃口を向ける。

  

  「さぁ、秘密兵器、ブラックガンの実力をとくと見よー!」

  

  「くっ……!」

  

  ブラック・ファクトリーは手に持ったほぼ筒状のバズーカ砲のような銃を豹獣人へと発射する。ボンッという音と共に飛び出したのは、銃弾でもなければロケットでもない、黒いドロドロの液体ラバーの塊だった。

  

  「まずはマスター・ブラック様の力と同じように、スーツ化させるでしょ?」

  

  べちゃりと豹獣人の胸元へと掛かり、それ自体が意志を持つかのうように豹獣人の身体を這い回り、身体の線にピッタリと沿ったスーツへと変化していく。マスター・ブラックのディザイアと同じように。

  

  「うがああああああああああああああ!」

  

  「で、負の感情の爆発が発生する」

  

  ブラック・ファクトリーの説明通り、犬獣人と同じように負の爆発に曝され、すぐに精神が削り取られて自我が崩壊する。そのまま気絶した豹獣人の頭を包み込み、マスター・ブラックの存在を頭に埋め込み忠実な奴隷へと変えていく。

  

  「後はマスターの元へと帰っていくようになってるんだよ!」

  

  その説明通り、黒いラバードールと化した豹獣人はマスター・ブラックの元へと走り、すぐにマスター・ブラックの目の前で跪く。自らに新たなる名が与えられるその瞬間を、股間をいきり立たせて今か今かと待ちわびている。

  

  「貴様の名は戦闘員130号だ。我が導きを受けることを光栄に思うがいい」

  

  「ハイッ!私、戦闘員130号はマスター・ブラック様の忠実なる奴隷として絶対服従を誓います!」

  

  マスター・ブラックの言葉を聞いた途端、それを待っていましたと言わんばかりに勢いよく立ち上がり、奴隷の宣誓を行う。

  

  「ね?ね?凄いでしょ?凄いでしょ?!」

  

  「ああ、これは素晴らしいな」

  

  無邪気な子供がただ褒められたく親に自慢するようにそう言いながら、ブラック・ファクトリーはマスター・ブラックへと擦り寄る。マスターもそれに答え、ファクトリーの頭を優しく撫でる。

  

  「だから、僕ご褒美が欲しいなぁ」

  

  「ほう、何が欲しいか言ってみるがいい」

  

  「それは勿論、マスターの黒くて立派なチンポと精液ですぅ!」

  

  「ふむ、すぐに実用しようと思ったが、向こうも一段落したことだ。先にご褒美をやろう」

  

  「やったぁ!」

  

  ブラック・ファクトリーは子供らしさの欠片もない、色めいて淫猥な雰囲気を漂わせて喜びを言葉にして、マスター・ブラックの股間へと頬ずりする。そんなファクトリーを、マスターは子供に対する親のように慈しみを持って頭をゆっくりと撫でる。

  

  「129号、130号、残りを監視しておけ」

  

  「「ハイッ!」」

  

  忠実な戦闘員と化した犬獣人と豹獣人は右手を上げてそう返事する。それを見やってから、マスター・ブラックと二人の幹部は部屋から出て行く。次なる黒き策謀と、背徳的御褒美のために。

  

  ---[newpage]

  

  身体が重い……意識が朦朧とする……俺は……何をしていたんだ……?

  

  「おい起きろ肉便器!マスター・ブラック様の前だぞ!」

  

  「ぐふっ……!」

  

  突然腹に蹴りを入れられたようで、嫌な痛みと共に意識が覚醒していく。そうだ、俺は【ザ・ブラック】の魔の手に堕ちてしまった豪火に負けて、敵のアジトに捕らわれたんだった……。

  

  腕に痛みがある。背中には冷たい壁の感触があり、壁から腕を吊るし上げられているようだ。状況から薄汚い牢獄を連想したが、周囲はリノリウムのタイルで覆われた殺風景な部屋だ。

  

  眼前には俺の腹を蹴っただろう豪火が立っている。俺を捕らえた時と変わらず黒いボディスーツを纏っている。その後ろに漆黒のボディスーツを着た、これまた真っ黒な羽を持つ鴉鳥人と、豪火やその鴉鳥人よりも背の低い、胸元に歯車の意匠のある黒いボディスーツを着た黒猫獣人。それから頭まで黒いラバーマスクに覆われて種族の判別すら困難な戦闘員が二人と……見覚えのある、熊獣人と狐獣人。ヒーロー協会の職員が二人、裸で跪かされていた。

  

  「気分はどうだね、インフィニティ・ガンズ」

  

  鴉鳥人の男が一歩前へと出て来て、俺のことを見下ろしてそう問い掛けてくる。勝ち誇った様子でもなければ嫌味や皮肉の篭もったものでもない、淡々とした口調に、逆に薄気味悪いものを感じた。

  

  「お前は……何者だ……」

  

  「我はマスター・ブラック。【ザ・ブラック】を率いる、世界を黒く染める者だ」

  

  俺の問い掛けに、堂々と名乗りを上げるように答える鴉鳥人、マスター・ブラック。こいつが、【ザ・ブラック】のボス……豪火や黒猫とは違いまるで戦闘員のように黒一色のスーツだが、それこそが黒を掲げた組織の統率者に相応しい姿とでもいうのだろうか。

  

  「青鷲十紀よ。我が下僕となれ。さすればそこの二人を解放してやろう」

  

  マスター・ブラックは職員の二人を指してそう脅迫してくる。二人も助けなくてはならないが、俺が【ザ・ブラック】に従ったところで解放される保証はない。それどころか、今の豪火の様子からすればどんな洗脳をされるか分かったものではないのだ。

  

  「断る」

  

  「ふむ、薄情なものだな。では……ブラック・ブレイズ」

  

  「おう、分かってるぜぇ」

  

  豪火はそう言って壁に立てかけて置いていた、中折れ式のグレネードランチャーのように砲身の太い銃のようなものを手に取り、熊獣人の方へとそれを向ける。

  

  「なっ、止めろ、ゴウカ!」

  

  「何言ってんだ、お前が切り捨てたんだぜ?ガンズよぉ」

  

  俺の方を向いてそう皮肉をぶつけて来ると共に、躊躇なく引き金を引く。発砲音や爆音の代わりに、べちゃりと何か粘土の高い液体が硬いものにぶつかったような音がする。見れば、銃身から放たれたのは鉛玉でもなければグレネード弾でもない、黒い半液状のものだった。

  

  「い、嫌だ、嫌だあぁぁぁああ!」

  

  熊獣人は半狂乱状態で黒い何かから逃れようともがくも、手足が拘束されてまともに動けない。黒い液状のそれはまるで意志を持つように独りでに動きだし、熊獣人の身体を包み込んでいく。それは全身を覆っていき、まるで戦闘員やマスター・ブラックの着ているボディスーツのような形状へと変わっていく。

  

  「あがががががががががっ!」

  

  スーツをなんとか脱ごうと必死にもがいているが、何か恐ろしいを目の前にして気が狂ってしまったように叫び声を上げて、そのまま白目を向いて気絶してしまった。何が、何が起こっているんだ……?

  

  「十分に時間を与えてやったというのに……いや、その間に覚醒できなかったようでは当然の結果か」

  

  気絶した熊獣人の顔をそのまま身体を覆う黒いそれが這い上がっていき、待機している戦闘員達と同じように完全に全てが包まれてしまう。口も目も耳も、全てが黒いラバーに覆われ、そこには無機質な物が落ちているようにしか見えなくなってしまう。だが、そこには確かに人が中にいて、今も苦しんでいる……はずだった。

  

  急にラバーに完全に覆われた熊獣人が立ち上がり、マスター・ブラックの前へと機械的な動きで歩いて行くと、そのまま目の前で跪いたのだ。

  

  「貴様はこの瞬間から戦闘員131号となった。その快楽と忠誠の意志を言葉で示すがいい」

  

  「ハイッ!私、戦闘員131号はマスター・ブラック様の忠実なる奴隷として絶対服従を誓います!」

  

  熊獣人が立ち上がり右手を挙げ、そう大声で宣誓する。なんだ、なんなんだこれは……こんな、こんな簡単に戦闘員を増やしているというのか……?この力で、豪火もあんな風にヴィランにされたと……?

  

  「さてと、このまま目の前で堕ちる様を見せ付けるのも悪くはないが、切り捨てた者が堕ちる様だけでは、心を壊すことは出来ないようだな」

  

  マスター・ブラックは俺の前へしゃがみ込み、俺の瞳を覗き込んでそう言ってくる。十分ショッキングな光景だったが、有り得る可能性ではあったことだ。そう割り切るにはあまりにも絶望的な状況ではあるが……それでも、それでもこれがディザイアの力なのであれば、そのディザイアさえ消し去ることが出来れば、洗脳された一般人は救えるのだ。

  

  「強く意志を持つがいい。さもなくば、貴様は戦闘員132号となるぞ?」

  

  目の前に手が翳されたと思えば、そこから先ほどと同じような黒い液状のラバーがドロリと零れ落ちてくる。これが……マスター・ブラックのディザイアなのか?身体を覆うラバースーツが波打っていないところを見れば、ラバースーツの機能ではないだろう。

  

  「あぐっ……!」

  

  ゴム質が身体を包み込む。まだ着せられていたヒーロースーツの尻の部分からヒーロースーツの内側へと入り込んできて、全身を這い上がり羽毛の奥の皮膚にまで到達せんばかりの密着度だ。尻どころか尻穴にまで侵入してくるし、股間を強く締め付けられる感触に、変な声が出そうになる。

  

  しかし、そんなものに気を取られていられなくなるほど、大きな声が頭に響く。

  

  『このスーツの力で一般人やゴウカを支配したのであれば、俺もこのままでは危ない。だが、ディザイアが使えないばかりか身体に力が入らない。戦闘員にされるわけにはいかないというのに……』

  

  これは……不安?俺の不安が増幅させられているのか?

  

  『本部からの応援はまだか。町を守るヒーローがいない今、【ザ・ブラック】も他のヴィランも暴れ放題だというのに……最前線ではないとはいえ、補給路にもなる要所をたった二人で守れなど、無理があるんだ』

  

  不満、怒り……このスーツは、俺の負の感情を増幅させているのか。だとしたら……。

  

  『ゴウカ、だから言ったんだ。いつもヒーローで疲れないのかって。ヒーローで有り続けなんてしたから、あんなに反動が強くなってしまったんだ。俺の警告をしっかり聞いていれば、あんなことにはならなかったはずだ』

  

  そうだ。俺はともかく、豪火は、おそらく自分の心の闇を認められなかった。受け入れられなかった。その反動で、自らの理想の対極とも言える存在へと変えられてしまったんだ……。

  

  「どうした、まさかもう堕ちたのか?」

  

  俺が黙っていたからだろうか、マスター・ブラックがそう言葉を投げ掛けてくる。口を利くことはできるが、いっそのこと堕ちたフリをして、隙を伺うか?しかし、まだ戦闘員にされてしまうような何かはない。負の感情の爆発だけでは強制的に忠誠を誓わせられることへの説明が付かない。

  

  「あっ……ああっ……」

  

  後は壊れた演技が出来るかどうかか。適当に小さく呻き声を上げてみるが、果たして騙し通せるか?

  

  「ケッ、ザマァねぇな、ガンズ」

  

  「ふむ……」

  

  おそらく豪火は騙せた。が、そんなものは基準にならない。あいつは人より幾分騙されやすい。ヴィラン相手に何処まで通じるか。このマスター・ブラックという男が本物のカリスマなのか、ただ力を揮い周りの人々を奴隷に変えることで王を気取っているだけなのか。それに掛かっている。

  

  「ブレイズ、ガンズの手枷を外せ」

  

  「おう」

  

  来た。ディザイアは今尚使えない。恐らく手枷か……いや、外しても問題ないと考えているところからすると、このラバースーツを着せられてなお、首を冷徹に押さえ込む首輪らしきものがディザイアを封じているのだろう。隙を見て首輪を外せば、この場を鎮圧することも可能になるはず。問題は豪火以外の戦闘能力だが、それを考慮している場合でもない。

  

  「立て」

  

  マスター・ブラックに言われた通り、俺はゆっくりと立ち上がる。本当は先の戦闘員のようにスクッと立ち上がった方が怪しまれないと思ったのだが、疲労感がそれを許さなかった。

  

  「ブレイズ、ブラックガンを渡してやれ」

  

  「ああ、ほらよ」

  

  立ち上がった俺に、先ほど撃ったそれを豪火が押し付けてくる。ここは受け取れと言われるまでは取らない方がいいだろう。命令外のことをすれば一気に疑われる。依然ディザイアが発動出来ない以上、今はまだ下手な動きは出来ない。

  

  「受け取れ」

  

  マスター・ブラックの命令を受けてから、俺はブラックガンといわれた銃、グレネードランチャーを銃に分類していいかは疑問が残るが、その銃を受け取る。次の命令は恐らく、この銃で残った狐獣人を撃てというのだろう。

  

  「では、そのブラックガンを使い、貴様の手であの狐獣人を、新たな我が奴隷にしてやるがいい」

  

  やはりそう来たか。ならば、この場合狙うは戦闘能力のあることが確定しているブレイズか。ブレイズの目を封じるためにブラックガンを振り向き様に撃ち、どうにか逃走するか首輪を壊してディザイアを発動させることに賭ける。

  

  右手でグリップを握り、左手を銃身に添える。引き金には指を掛けずに、ゆっくりと銃を狐獣人に向ける。後は振り向いて豪火の頭を狙って……?

  

  「……っ?!」

  

  「どうした、自分の身体が動かないのがそんなに不思議か?ガンズよ」

  

  マスター・ブラックのその言葉を聞いたとき、全ての算段が見透かされていたことに気付かされた。騙し切れるかどうかなんて薄い賭けだったが、こうもあっさり看破されるとは……。

  

  「策は悪くなかった。よもや心が壊れるばかりか平然と策を弄して我を欺こうなどするものが現れるとは、思いがけない収穫だ」

  

  身体が動かせない。まるで自分の身体が自分のものではなくなってしまったような錯覚に陥る。引き金から離していた指が勝手に動き出し、引き金へと触れる。触れてしまう。

  

  「あっ、あっ……」

  

  狐獣人は先ほどの光景を思い出してだろう、目に涙を浮かべている。このまま自分も戦闘員にされてしまった熊獣人とと同じように、マスター・ブラックの奴隷にされてしまうと、想像してしまったのだろう。

  

  「負の、感情に呑まれるな……これも自分の一部だと、受け入れれば……負の感情に負けは、しない……」

  

  なんとか、なんとか出来得る限りの抵抗手段を狐獣人に伝える。そう言われてなんとかなるものではないかもしれないが、僅かな可能性を託すしか、今の俺には出来なかった。

  

  カチリッ

  

  勝手に動いた指が引き金を引き切る。殺すためではない。それよりもずっと、最悪なことをさせられるための引き金。銃口から液状ラバーの球が飛び出して、狐獣人を襲う。手足を拘束されてまともに動けない狐獣人は逃げることも叶わず、黒いラバー液に呑み込まれる。

  

  ---[newpage]

  

  「い、嫌、あぎっ、あばあああああああああああ!」

  

  ラバーはすぐに狐獣人の全身を包む黒いピッチリとしたラバースーツへと形状を変える。狐獣人は、気絶……していない?まだ微かに呻き声が聞こえている。

  

  「うっ……い、やだ……あんなのに……されるくらい、なら……!」

  

  黒いラバーに覆われているはずの身体から、仄かな白い光が放たれる。これはまさか……!

  

  「素晴らしい、確固たる意志を持ち、力に覚醒したか!」

  

  ディザイアの覚醒。元々ディザイア能力者だったわけではない以上、それ以外には考えられない。ぶつけられた黒い意志の奔流に逆らい切れば、必然的に願いの力に目覚めることになる。だが、これなら……!

  

  「いっそ、潰してやる……!」

  

  「その力を我に捧げよ!」

  

  狐獣人がマスター・ブラックに手を伸ばそうとしたが、それより早く身体を覆っているスーツから頭を覆う黒いラバーが飛び出して、口へ、鼻へ、耳へ、ありとあらゆる部位へと入り込み、戦闘員達と同じように種族の判別すら難しい、黒一色の存在へと変えられてしまう。こんな状況で他人任せというのはヒーローとして情けないことだが、今は洗脳に負けないことを祈るしかない。

  

  「耐えろ、耐えてくれ……!」

  

  身体は動かせないものの、言葉は何とか発せる。俺の呼びかけが何処まで意味を為すか分からないが、それでもこうする他ない。必死に身体を動かそうとすると同時にディザイアを発動させようとするが、それも適わない以上、信じる他ないんだ。

  

  「……っ!!!」

  

  スーツを掴んでもがいているものの、声すら出せなくされているのか、表情のない顔で苦しんでいるばかりだ。やがてそれすらも止まり、不自然なまでに完全な静止状態となってしまう。

  

  「そろそろか。立ち上がれ」

  

  しばらくの間、奇妙な沈黙が続き、ジッと様子を見ていたマスター・ブラックがそう狐獣人に命令する。祈るような気持ちでありながらも、なんとか身体が動かないか、ディザイアが発動させられないか試行を続ける。

  

  狐獣人は、ゆっくりと立ち上がった。先ほどの戦闘員のように機械的な動きではなく、何処か気だるさのある動きだ。まだ、分からない。完全に洗脳されてはいないのか……?

  

  「こちらに来て、我に跪け」

  

  マスター・ブラックの命令に、何処か抵抗を持っているようにぎこちなく歩いて行き、ゆっくりと跪く。無理矢理行動はさせられているものの、やはりまだ、マスター・ブラックによる洗脳に抗っている。

  

  「何故抗う必要がある?その力を新たなる世界の秩序のために揮うことに、何の抵抗があるのだ」

  

  「そいつの言葉を聞くな!願いを持ち続けんぐっ……!」

  

  なんとか呼びかけようと叫んでいると、マスター・ブラックがこちらに手を翳してくる。すると口の中に、スーツから這い上がってきた液状のラバーが飛び込んできた。口を動かすことも、喉から声を発することも出来なくなる。呼吸さえ苦しくなるが、それは今問題ではない。

  

  「お前は我が従者として世界を共に手に入れるのだ。願い持たぬ者達を導く、選ばれし者なのだ。従いこそすれど、抗う必要など何処にもないのだぞ」

  

  マスター・ブラックは跪く狐獣人の頭を撫でながら、そう闇へと誘う言葉を

  

  「……っ!」

  

  そんな甘い言葉を信じてはいけない!結局そいつはお前を下僕にしようとしているだけだ!まだディザイアが縛られてないお前なら、この状況を打開し得るんだ!そう叫ぼうとしても、声を出すことさえ出来ない。無力だ、あまりにも無力だ……。

  

  「さぁ、お前の口で自らの忠義を示すのだ」

  

  マスター・ブラックがそう命じると、狐獣人の頭から黒いラバーがドロリと溶けるように剥がれ落ちていく。ポタポタと床に落ちたラバーは、再度狐獣人の身体に吸い込まれるように吸収される。

  

  「私は……私はマスター・ブラック様に忠誠を誓い、貴方様の為に力を揮うことを誓います……!」

  

  狐獣人は顔を上げて、恍惚の表情でそう宣誓する。祈りは届かなかった。嫌でも分かってしまう。あの表情は、演技で出来るものではない。それにここからでは見辛いが、他の戦闘員や豪火のように、性器がいきり立っているのが見えている。

  

  「よろしい。ではお前の力を見せてみよ」

  

  「ハイッ!」

  

  待っていましたといわんばかりにサッと立ち上がり、右手を上げて大声で返事をする。それから俺の方へと向き、両手を俺に向けて翳してくる。何をしてくるんだ……!?

  

  「……っ!!」

  

  呻き声を上げることすら出来なかったが、胴体全体が締め付けられ、足が地面から離れる。これは、念動力か?!ディザイアとしてはある程度メジャーな力ではあるが、実際に受けるのは初めてだ。力が見えもしない上に遠距離で対応も難しいのは凶悪な力だ。身体が動かせないために対応出来ないこともあるが、まともに戦っても辛い相手だ。

  

  「なるほど、念動力か。いいぞ、下ろせ」

  

  マスター・ブラックがそう命令すると、念動力による力が切れて、床へと落下する。身体がまともに動かせずに受身が取れず、立ち上がることも出来なくなる。

  

  「そうだな……では、お前に与える新たな名はブラック・サイキックだ」

  

  「ありがとうございます!ブラック・サイキック、確かに御拝命させていただきました!」

  

  最早ブラック・サイキックとなってしまった狐獣人は跪いて頭を下げる。新たなるヴィランの誕生に、何も出来ない無力感を噛み締めるしかない。なんとか本部へとこの場所が伝わっていればいいんだが……。

  

  「ブラック・ブレイズよ、ブラック・サイキックにディザイアの力の使い方を教えてやれ」

  

  「あ?なんで俺が……」

  

  「我が配下の中で、最も戦闘能力のあるお前が指導することが適切だと判断したからだ。問題はあるまい」

  

  「……へいへい、分かりましたよ。おい、ご指名だ。とっとと来い」

  

  不満そうにしながらも、豪火はマスター・ブラックの命令に従い、サイキックを連れて部屋から出て行く。あれだけ荒れてしまっているというのに、マスターの言葉には従っているのが、マスター・ブラックのその力の強大さ、おぞましさを現している。

  

  「どうだ、自らの手でヴィランを作り上げた感想は」

  

  俺の耳元でそう囁くマスター・ブラック。それと共にサイキックに締め上げられた時に落とした銃を再び手に握らされる。

  

  「その引き金を引いて、何もかもを奪い去る、素晴らしい銃だろう?」

  

  マスター・ブラックは俺の銃を持たされている手を握りながら、耳元で悪意の篭もった言葉を囁く。何もかもを奪い去る……そういう意味では人を殺すための武器に値するものだ。武器に……。

  

  「貴様にも、その素晴らしさを知って貰わなくてはならない」

  

  口だけを塞いでいたラバーが後頭部を這い上がり、耳の中に入り込んで行き、頭を覆っていく。上嘴も完全にラバーが包み込み、鼻の中にまでラバーが入り込む。目までもラバーが覆い、視界が闇に包まれる。

  

  マスター・ブラック様を讃えよ!

  マスター・ブラック様に忠誠を誓え!

  マスター・ブラック様へ全てを捧げよ!

  マスター・ブラック様の為に力を揮え!

  マスター・ブラック様にその身を捧げよ!

  マスター・ブラック様の為に命を捧げよ!

  マスター・ブラック様に魂を捧げよ!

  マスター・ブラック様を愛するのだ!

  マスター・ブラック様の理想を為すために!

  マスター・ブラック様に従うことこそ至上の快楽だ!

  マスター・ブラック様万歳!

  マスター・ブラック様は全てを与えてくださる!

  マスター・ブラック様の恩寵に報いるのだ!

  マスター・ブラック様の御心のままに、世界を黒く染め上げるのだ!

  

  押し寄せる、マスター・ブラックという存在を絶対的なものへと書き換えてくる思考を汚染する念波。こんなものを延々と聞かされてしまえば、自我の崩壊した廃人など一瞬で忠実な下僕へと変えられて当然だろう。俺とて、冷静に受け止められるものではない。

  

  なんとか、なんとかマスター・ブラックの存在を振り払う。目の前にいる悪の存在は、確かに絶対的な存在だ。だが、それは絶対悪であって、崇敬の対象などでは決してない。そして、神や悪魔と違い、所詮は人だ。人である限り、この手は届くのだ。

  

  今こそチャンスなのではないか。恐らくこれがマスター・ブラックの切り札でもあるのだ。この洗脳に抗い切れば、体力が回復し次第強引に身体を動かして、首輪を破壊して逃げ切れる。最悪、黒のスーツの中に覆い隠されてしまったヒーロースーツのデバイスを使いヒーロー協会へ、ひいては本部へと連絡だって取れる。マスター・ブラックさえ倒せれば、皆元に戻せる。豪火だって元に戻る。

  

  ---[newpage]

  

  「クックックッ、クハハハハッ!素晴らしい、素晴らしいぞインフィニティ・ガンズ!」

  

  突然、マスター・ブラックが高笑いが響き始める。視界を黒に染められ、マスターの表情を窺い知る事は出来ないが、何がおかしいというのだろうか。俺の身体の感覚は殆どない。何かをしたということはないはずだ。

  

  「我が力を以ってして気を失いすらしないとは、貴様の意志は素晴らしい限りだ!ああ、本当に素晴らしい限りだ!」

  

  言葉とは裏腹に怒りを感じている……わけではないようだ。全く嬉しくないはずの賛辞だが、頭の中でマスター・ブラックを絶対の存在だとする声がガンガン響いているせいで、大きな賞賛だと思ってしまうことに危うさを覚える。

  

  「ならばこのマスター・ブラック、我が最大限の力を以ってしてお前を堕とそうではないか!」

  

  空気の振るえを感じ取らんばかりの言圧と、その不穏過ぎる内容に戦慄が走る。この正気を保つことさえ苦労する、思考を染め上げる洗脳の波が全力ではないなんて……。

  

  「跪け」

  

  マスター・ブラックに命令されて、すぐに身体が動き膝を折り、両膝を床に着ける。心ではなんとか抵抗しているが、身体は完全に自分のものではなくなってしまっているように、意志に反して身体が動いてしまう。

  

  「咥えろ」

  

  咥えろ……咥えろ?

  

  後頭部を掴まれグッと引き寄せられたかと思えば、柔らかくも硬いものが嘴の先に当たる。俺の意志など無視して、命令された通り口を開き、その硬い棒状のものを咥える。

  

  ゴムと男性器の臭いと味が口に広がる。その瞬間、頭にビリリと直接電流が流れたような感覚に襲われる。つい最近豪火に同じことをされた時の不快感など一切なく、自らの意志で舐めたくなるような、信じられない快楽と多幸感が頭を支配する。

  

  「舐めたいか?」

  

  すぐに舐めろと命令されると思っていたが、次のマスター・ブラックの言葉は焦らす問いだった。性器を咥え込んで口いっぱいに埋め尽くされているこの状況では答えることなど適わない。早く舐めたいという考えたくない思考が頭を支配して、焦らされる感覚と、更に行為を進めてしまうことへの恐怖の感覚がせめぎ合う。

  

  「クックックッ、ではお前に身体の自由を返してやろう。好きにするがいい」

  

  その言葉と共に、今までピクリとも自分の意志で動かすことの出来なかった身体に、感覚が戻って来る。気だるさこそ残っているものの、頭を引いてマスター・ブラックの性器を吐き出すことも、それこそ立ち上がって逃げ出すことも出来るだろう。

  

  なのに、なのに身体が動かない。動かしたくない。今すぐ性器を舐めたい。しゃぶりたい。穢いはずのそれが尊くて愛おしくて堪らないものに思えて、欲しくて欲しくて堪らない。ダメだと僅かな理性が警鐘を鳴らしても、放すことが出来ない。

  

  恐る恐る、マスター・ブラックの男性器へと舌を伸ばす。ただ触れただけで、脳髄が痺れるような刺激が頭を駆け巡る。煙草や酒や自慰行為なんかの比ではない、凄まじい快楽と多幸感。薬物でもやっているような気持ちになって来たところで、理性が瓦解していく。

  

  「ふぅ……いいぞ……我が精を欲するならば求めるがいい」

  

  マスター・ブラックの肉棒へと舌を這わせ、欲望を貪る。丁寧に舐め回し、嘴で挟んでしまわないようにしながらもしっかりと吸い付いて、肉棒から溢れ出る先走りを飲み込んでいく。塩辛くとても美味しいと言えるものではないはずのそれが、今や甘い蜜のように、或いは砂漠の中で渇き切った喉を潤す、オアシスの水のように感じる。

  

  くちゅっくちゅっ

  

  淫猥な水音とマスター・ブラックの息遣いだけが耳に入る。視野は完全に闇に覆われているために、音と臭いと味しかない。その全てがマスター・ブラックの存在に、肉棒に染め上げられていく。

  

  「なかなか、上手ではないか……では、望み通り我が精をくれてやろう……!」

  

  口の中のマスター・ブラックの肉棒が鼓動すると、熱い精液が解き放たれる。至福の味が口の中に広がり、快楽物質が頭の中を満たす。真っ暗で何も見えないはずなのに、視界が真っ白に染まる。

  

  マスター・ブラック様万歳!

  マスター・ブラック様万歳!

  マスター・ブラック様万歳!

  マスター・ブラック様万歳!

  マスター・ブラック様万歳!

  

  反芻し続けるマスター・ブラックを絶対的な存在とする思考を受け入れ始めてきた。得も言えない快楽の前に、全てがどうでも良くなってくる。

  

  口内に放たれたマスター・ブラックの精を、余す事無く飲み干して、まだ残っているだろうと尿道から吸い出すべく、肉棒へと吸い付く。欲しい、もっと欲しい。ただ飲み込んでいるだけでこんなにも壊れそうな快楽を得られるなんて……。

  

  「放せ」

  

  マスター・ブラックから、今の俺にはあまりにも残酷な命令が下さる。放したくないものの、命令とあれば放す他なく、口を大きく開いてからゆっくりと離れる。

  

  「まだまだ、欲しいのだろう?」

  

  その言葉に、ビクリと身体が震える。思いを見透かされたことなどどうでもよくて、またあの快楽を味わうことが出来ると思うだけで感情が昂ぶり興奮してしまったんだ。

  

  「何が欲しいのか、自分の口で言うがいい」

  

  下嘴を掴み上げられ、上を向かせられる。顔も目も見えないものの、マスター・ブラックが俺の目を覗き込んでいるのがなんとなく分かった。呻き声すら上げられなかったはずだったが、マスターに促された途端に喉が解放されて声が出そうだ。

  

  「貴方のチンポと精液です……」

  

  恥じらいも躊躇もなく、ストレートに答える。恥ずかしさは快楽への欲求に比べればあまりにも瑣末で、放り捨てることに未練も何もなかった。

  

  「クックックッ、いいだろう。では四つん這いになれ」

  

  マスター・ブラックに言われるがままに、俺はそのまま床へと両手を突く。今だ光が目に届かないためにマスターの姿は見えないが、俺の後ろへと動いているのが気配で分かる。後ろ……後ろ?精液を飲ませてもらえるんじゃないのか?

  

  「そうら、お望みの我がマラを受け止めるがいい!」

  

  ズブッ!

  

  「んひぃ!」

  

  尻穴をチンポで一気に貫かれて、脳がオーバーヒートを起こしそうなほどの快楽が身体を貫いていく。薬物的多幸感とは違う、もっと直接的な性快楽に、あっさり射精してしまう。

  

  「挿入しただけで射精するとは、お前は随分と淫乱なのだな!」

  

  「ああんっ!」

  

  射精したことなどお構い無しに、マスター・ブラックは腰を振り始めた。パンパンとラバーに覆われた身体通しがぶつかる度に、チンポが身体を貫き言い知れぬ快楽に嬌声が零れる。

  

  「あっ、あんっ、あひぃっ!」

  

  一度腰を打ちつけられるだけで、また射精してしまいそうなほどの快楽が全身を駆け巡り、絶え間なく喘ぎ声が零れ出てしまう。気持ち良過ぎて我慢なんてしようとも思えない。

  

  「んくぅぅ!あぅ、また……!」

  

  「全く、堪え性の無い奴だな。我の精をその身に孕むまで我慢しろ」

  

  「いぎぃっ!」

  

  我慢しろとマスターが言った途端、俺のチンポの根元が物理的に締め上げられて、出そうだった精子が塞き止められてしまう。精が快楽の頂点と共に解放されるはずだったというのにそれを止められて、絶頂のまま更なる快楽が押し寄せてくる。

  

  「いあっ、いぐぅっ!ダメ、あがぁ!イかせてください!おねがっ、おねっ……!」

  

  「ダメだ」

  

  喘ぎながらも必死に懇願するも、マスターに無慈悲にも却下されてしまう。とっくに快楽の波に溺れ狂気の淵にいるというのに、このままでは気が狂ってしまう。

  

  パンッパンッ

  

  「あ゛あ゛っ!あぎっ、ああっ!」

  

  「ぐっ、そろそろくれてやろう。しっかり受け止めるのだぞ!」

  

  マスターのチンポが最奥まで到達して、そのまま熱い熱い精液が注ぎ込まれる。

  

  「ああああああ!!!」

  

  それと共に俺のチンポを締め付ける感覚がなくなり、解放されたチンポから一度目よりもずっと大量の精液を床へとばら撒く。頭が真っ白になって、気だるさが最頂点になり、命令を無視してその場に崩れ落ちてしまう。その勢いでマスターのチンポも俺の尻から抜ける。

  

  俺のチンポから飛び出した精液と一緒に、いろんなものが抜け落ちる。今までの記憶や倫理観が欠落していく。一瞬だけ危険に思ったものの、すぐにどうでも良くなっていった。

  

  射精を終えてもなお、興奮は収まらなかった。腹の中から身体を電流のように駆け巡る快楽に、嘴が開いたままになり唾液が零れ落ちていく。

  

  不思議だ。射精後の余韻とは違う、絶えない快楽と人生で感じたことのなかった幸福感に包まれ、このまま死んでも悔いはないとさえ感じてしまう。

  

  ---[newpage]

  

  「青鷲十紀よ。お前は何者だ?」

  

  マスターの問いと共に、頭を覆うラバーがボタリボタリと溶け落ちていく。

  

  何者なのか?ずっと頭の中で聞こえていた、マスターを讃え崇める言葉は消えた。消えた途端に不安になってくる。

  

  俺は何者なんだ?考えれば考えるほど頭が痛くなってくる。もう、何も考えたくない。考えることを止めてしまいたい。

  

  「考える必要などないのだ。お前が今思っていることを、そのまま口にすればいい」

  

  「思ってること……」

  

  考える必要ない。考えなくていい。考えない。考えないで快楽を貪る者……それに相応しい言葉は……。

  

  「俺は……奴隷です。卑しき性奴隷です……」

  

  「クックックッ、そうかそうか。ならば、これからは我がお前を導いてやろう」

  

  マスター・ブラック様が、しゃがみ込んで俺の頭を撫でてくださる。ああ、なんて幸せなんだ……マスター・ブラック様がこうして俺に触れてくださるだけで、こんなにも幸せになれるなら、他の何もいらないか……。

  

  俺の身体を持ち上げて、近くの壁へと凭れ掛けさせてくださる。

  

  「お前の名前はブラック・ガンズだ」

  

  「ブラック・ガンズ……」

  

  マスター・ブラック様の何処までも真っ黒な目が俺の瞳を覗き込む。ああ、なんて俺は幸せ者なんだ……。

  

  「ありがとうございます!」

  

  ブラック・ガンズ。俺はブラック・ガンズ。マスター・ブラック様から頂いた、俺の名前。

  

  「ブラック・ガンズよ。お前にはこの素晴らしい銃を与えよう」

  

  「銃……」

  

  そこら辺に転がっていた、黒い銃を俺の手に握らせてくださる。これは……マスター・ブラック様の力で生み出されたものが、ラバースーツへと変形する球が射出される銃だ。

  

  「お前には、この銃を作り出して欲しいのだ」

  

  「この銃を……?」

  

  「そうだ。量産が難しい代物だが、お前になら出来る。いや、お前にしか出来ないことだ」

  

  俺にしか出来ない……。マスター・ブラック様が俺をこんなにも頼ってくれる。俺を、俺だけを。

  

  「分かりました、俺、やります……!」

  

  すぐに一つ、左手の中に銃を作り出す。片手で撃つには大きなものだが、寸分違わぬものが出来ればそれでいい。

  

  「そうか、さすがは我が下僕だ」

  

  そう言って俺の頭を撫でてくれるマスター・ブラック様。ああ、そんなことをされると、また興奮してしまう。もう収まることもないのではないかと言うほどにチンポはいきり立っているというのに。

  

  「では、しばらく休むがいい。目を覚ました後に、しっかりと働いてもらおう」

  

  「ハイッ……!」

  

  休めといわれて、既に限界も限界だった俺の意識はすぐに闇へと溶けて行った。ああ、明日からが楽しみ……だ……。