熊瀬鍼灸院の日常

  1

  「なあ、今度おっちゃんと遊ばへんか?」

  ぎっくり腰で来院したうつ伏せの患者に、大腰筋を狙って5寸の鍼を左右4本入れた後、俺は耳元で囁く。

  患者は24歳の猪獣人。普段は印刷工として働いていて、趣味でラグビーをやっているらしい。

  いいガタイをしているが、おぼこい癖に芋っぽい顔で若い女の子には受けない顔だ。

  こっち界隈なら引く手数多だろうが。

  「むっちゃ気持ちええことしたるでぇ。おっちゃんは身も心もとろけるようにするの得意なんや」

  俺が太い指をいやらしく動かして見せると、彼はごくりと唾を飲み込んだ。

  以前、ヘテロだと言っていたが、こっちの世界に興味がないわけではないようだ。

  現に、俺の誘いに興奮している。

  「坊主は寝てるだけでええ。あとは俺が天国に連れってたるさかい」

  若い女に相手にもされないだろうし、風俗なんて行くような奴ではない。多分、童貞なのだろう。俺の誘いで顔が赤くなっている。

  痛いはずの腰をもじもじと動かして顔をしかめているところを見ると、どうも勃起したチンコのやり場に困っているのようだ。

  「せ、せんせぃ……」

  どことなしに潤んだ瞳で、俺を見上げる猪獣人。

  「気持ちええでぇ。どうせ一人でしこしこマス掻いてるんやろ。せんずりも悪ぅないが、やっぱり誰かと体を重ねるのはええもんやで。俺に全部任せとき。そしたら……」

  「そしたら、何なんですか?」

  施術台と施術台を区切るカーテンの向こうから、険のある声が聞こえてくる。

  厳つい顔の、若い虎獣人の声。

  「いや、かず。あの……ははは」

  俺は、ごまかすように笑った。

  「ちゃ、ちゃうねん。な、これはな……」

  虎島和幸。

  この子は、俺の家に下宿している大学生だ。

  誰よりも大事な俺の最愛の人は、青筋を立ててこちらを睨みつけている。

  「これが最後なのに……」

  「さ、最後? 最後ってなんや」

  聞き捨てならない言葉に、俺は問い返す。

  気が付けば、かずは俺の見慣れない黒いスーツに着替えていた。そして、手には大きなカバンを。

  今日は大学に行くのと違うんか?

  「なんや、その格好は……」

  「わし、実家に帰らせていただきます」

  はぁ?

  「ちょ、なんやなんや。何を言い出すんや!」

  俺は慌てる。

  「突然そんなこと……」

  「突然?」

  虎獣人は俺を睨みつける。

  「そ、そんなこと急に言われても、俺かて心の準備が。大体、何が不満なんや。こ、これはただの冗談なんやで。それに昨日かて、あんなにあんあん啼かしたったやないか。かずかて、俺のチンポ入れられて、とろとろの顔しとったで。もっとチューしてとか、ゆうさんもっと奥まで入れてって、何回も甘えてねだったやないか!」

  「……」

  その言葉に、かずの形相が鬼のように変わる。

  何も言わずにきびすを返すと、ガラス戸をぴしゃりと閉め、立ち去っていく。

  「ちょ、ちょっとまて! かず!」

  慌てて追いかけようとする俺の白衣を猪獣人がぐいと、掴む。

  「な、なにをするんや!」

  「先生、行ったら駄目です。ちゃんと治療してもらわんと!」

  「いや、でも、かずが……」

  治療どころやない。俺の一生がかかっとるんや。

  「今日は夜から合コンがあるんですよ! 絶対動けるようにしてもらわんと困るんです!」

  「いや、でも……」

  合コンとかずとどっちが大事やと思ってるんや!

  「行くなら、僕を治してからにしてください!」

  「もう、おい、かず! 行ったらあかん、かずぅ!」

  2

  「で、嫁に逃げられたと?」

  あくる日。鍼灸院で、いつもの常連である、狐獣人の狐塚と猿獣人の猿坂が笑っていた。

  「いや、別に逃げられたわけやない。実家に帰っただけや……」

  俺は力なく呟く。

  結局、昨日あの後連絡がないまま、かずはうちへは帰ってこなかった。

  「世間では、それを逃げたって言うんやないか」

  狐のじいさんは開院したころからの付き合いだ。毎日通ってくるから、昔付き合っていた奴の事からかずのことまで、身内のように知られている。

  「好きな相手やったら、大事にせなあかんで。大体、将来有望な若者をセックスで誑し込んで自分の家まで引っ張り込んでるんやから、責任取らなあかんやろ」

  人聞きの悪いことを言う猿坂を、俺は睨みつける。

  こいつも暇なのか、毎日のようにうちに治療に通ってくるおっさんだ。

  「そうやそうや。自分みたいなおっさん相手に、だれがわざわざこんな辺鄙なとこまでついてきてくれんねん」

  「……」

  「それが、好き好き言うてる癖に他の男にちょっかいかけるやなんて。かず君も今までよう辛抱しとったなぁ。わしの女房やったら、わしがそんなとこちょっとでも見せたら、フライパンで頭かち割ろうとすんで」

  狐塚はぶるぶると体を震わせてみせる。

  「違うねん。ちょっと嫉妬する顔が見たかっただけなんや……」

  嫉妬してくれるかずの顔はかわいくて、その顔を見ると、心が奮い立つんや!

  あいつのためやったら、俺は何発でも出せる!

  「俺はいつだってかず一筋やで。ほんまや。夜だって、毎晩ちゃんと満足させとるで」

  俺は指折り数える。

  「昨日かて、メスイキで8回と、射精は2回させとる。俺かて、5回は中出ししとるで。愛してる証拠や」

  朝の4時を過ぎとったからそれでやめにしたけど、かず相手やったら、まだまだなんぼでもいけるんや!

  もう10発はいける。

  「……それが原因ちゃうんかい」

  狐塚のじいさんは、呆れたように言う。

  「携帯に電話はかけたんか?」

  「それが、何度かけても返事はなしでなぁ……」

  「もう、愛想つかされたんやろうなぁ」

  猿坂のその言葉に、不意に不安がよぎる。

  「ど、どないしょ……」

  すがるようなその眼つきに、2人の獣人は呆れたような顔を見せる。

  「そりゃ、迎えに行くしかないんちゃうか、かず君の実家に」

  「……まじか」

  俺は絶望のあまり、天を仰ぐ。

  「あそこの親父さん、むっちゃ怖いねん。プロレスラーやで」

  「へえ。そりゃ、初耳やなあ」

  「獣王ビッグライガーって知ってるか?」

  「おお、知っとる知っとる。めっさ有名やんか! テレビにもよう出とるし。今度サインもらってきてぇな」

  猿坂が興奮して、無茶を言ってくる。

  「あほか。そんな気軽な仲やないんや」

  あいつをうちに下宿させるようお願いしに行く時、どんだけ怖かったか。

  体つきは俺と似たようなもんやけど、職業柄か威圧感が半端なかった。

  「別にかず君と付き合ってます、とか言うたわけやないんやろ?」

  「当り前や!」

  俺は震えながら言う。

  「そんなん言うたら今頃殺されてるわ。あの頃、俺はあいつの学校で教師をしてたんやぞ。それで息子に手を出したとか知られたら、社会的に抹殺されるわ」

  いや、現実的に抹殺されそうやけど。

  なんせあの親父のキャッチコピーは『熊殺し』、なんやからな。

  うちの息子をお願いしますと、威圧感ばりばりの癖に妙に丁寧な態度は、まるでやくざのようで小便ちびりそうになった。

  というか、よう考えたら、なんでうちに住まわすのに、俺から挨拶行かなあかんねん。

  「そうやってこんな田舎まで連れ込んで、浮気してるやなんて知られたら、まあどつかれるやろうなぁ」

  「……どつかれるのなんてどうでもええねん。……俺、かずを傷つけたかと思うと……」

  俺の独白に、2人は呆れた顔をする。

  「あいつに会った頃、俺遊びまわってたからなぁ。今はあいつ以外とするつもりなんて全然ないし、ああやって粉かけるのも、嫉妬してくれるかずのかわええ顔を見たいがためなんや。あいつもそれはわかってくれてると思ってたんやけど……」

  「そりゃ、虫のええ話やで」

  狐のじいさんが俺を諭す。

  「長い付き合いのあった犬司君ならいざ知らず、付き合いの浅い、しかも若いかず君が、そんな自分の姿見て不安覚えたってしょうがないやろ。ただでさえ、こっちに引っ越してきてアウェーなんやで」

  「そうやそうや。それにあの子は若いのにようやってるやないか。大学通いながら鍼灸院の手伝いまでして。どうせ、たいしてバイト代やってないんやろ」

  「……うう」

  思いのほか客観的な指摘に、俺はうなだれてしまう。

  「釣ってきた魚にエサはやらないって、このことやで。昼間はこき使うだけ使って、夜は満足いくまでオメコの相手させてって、いうたら奴隷みたいなもんやないか。これが師匠と弟子の関係ならまだわかるけど、別にかず君、鍼灸師になるわけやないんやろ」

  「そうみたいやなぁ」

  こっちの道には全然興味ないみたいや。

  鍼を教えてほしかったら、手取り足取り、いろんなことをなんぼでも教えたるんやけどなぁ(ゲヘゲヘ)。

  「ほな、全然メリットないやないか。悪い事言わんから、性根入れ替えて、さっさと迎えに行き! 泣いて土下座したら、まだ許してくれるかもしれへんで!」

  3

  「俺、意外とあかんたれやなあ」

  昼間、あれだけ2人にせっつかれたのに、覚悟を決めて、かずを追いかけることが出来なかった。

  別に、あの親父が怖かったわけやない。

  2人に諭されて、かずの事をないがしろにしていたのかもと気づいてしまったから。

  「あいつは覚悟を決めて、俺のところに来てくれたっちゅうのに」

  『権利なんて、難しいことわかんねえよ! でも、俺はおっさんが好きなんだよ! 別にその人の代わりだっていいんだ。わしはおっさんが振り向いてくれさえすれば、わしの事好きになってくれさえすれば、それでいいんだ……』

  あの時、2度目にかずに手を出すことを躊躇する理由はたくさんあった。

  もちろん、かずの中に犬司を見てしまうことの申し訳なさ。かずは好きだが、どうしても面影から犬司を思い出してしまう。それに亡くなった犬司に対する後ろめたさもあった。犬司に何もしてやれなかったことに対する自分の不甲斐なさ。付き合うとしても、かずとの20歳以上の年の差。

  それでも、かずは泣きながら言ってくれた。

  若さに任せたまっすぐな気持ちで。

  それはおっさんの癖に勇気の出ない俺の気持ちを後押ししてくれて。

  「あの後、青姦したんやなぁ……」

  ……あの時のかずもかわいかった。

  そのことを思い出すと、股間がムクムクともちあがってくる。

  ……こんな時まで。

  いや、これは仕方ないんや。

  昨日はショックで抜いてないし、何よりかわいいかずの事を思い出してしまったんやから。

  ……あいつの初めてをもらったのも、俺やったんやなぁ。

  4

  あのバーで初めて見たときは、かずの中に犬司の姿を思い浮かべることはなかった。

  実は店に入った時点で結構酔っていたし、犬獣人と虎獣人の違いだってある。

  声をかけたのは、純粋にかわええなぁと思ったからだ。

  厳つい顔をしていたけど毛並みは若かったし、だいぶ年下だろうなぁとは思った(まさか高校生とは思わなかったが)。

  きっと飲み屋なんか行ったことがないんだろう、ガチガチに緊張しているうぶなところもかわいかった。

  おっちゃんが、その気持ちをちょっとほぐしたろか、ってな気持ちで話しかけたのだ。

  酒を飲んでいても、無口な男で、俺の話に頷きはするものの、あまり口を開くことはない。

  それでも、俺のことが嫌じゃないのはよくわかった。

  仏頂面で、無愛想で……でも、ちゃんと俺の言葉を聞いてくれる。

  そこで初めて、『犬司に似てるなぁ』とぼんやり思ったのだ。

  そう思うと、矢も盾もたまらなかった。

  つい、いつもの調子で誘ってしまったのだ。

  『おっちゃんと、遊ばへんか』、と。

  『舌出せ、舌』。

  ちょっと老けて見えるが、あの厳つい顔と体ならいくらでも遊び相手はいるだろうに、俺が口づけを迫ると、かずは子犬のように体を震わせていた。

  ……こいつ、男とキスするのも、初めてなんやな。

  酔った勢いで誘ったものの、正直なところ、高校生と聞かされて最後まで手を出すのはまずいと思っていた。

  ちょっとキスして、手でしごいて出してやって、『もうちょい大人になったら、相手したるからな』、これで終わらせればいいと思っていた。

  なのに、そのうるんだ目を見たら、俺は手を止めることが出来なかった。

  唇を重ねると、怯えていた様子から一転、やけになったように俺の唇にむしゃぶりついてくる。

  そんな必死にがっつくさまもかわいかった。

  ……俺を求めてくれているんや。

  そんな気持ちに、なぜか心が満たされる気がした。

  俺はただ、こいつの初めてを全部奪ってやりたい、と思った。

  『……今日は初めてやからな』

  かずの体に舌を這わせた後、俺はその股間に目をやる。

  チンコ自体は、体相応のデカいサイズだ。

  根元は太く、猫科特有の棘がついている。

  どちらかと言うと先細りしているそのチンコは、勃起しているのに亀頭は半分、皮に覆われていた。

  竿は手淫のせいか、うっすら色づいていたが、皮から覗く先端部分は薄桃色のままだった。

  皮オナばかりなのか、自分ではほとんど触れたこともないのだろう。

  もちろん、他人に触られたこともないはずだ。

  興奮しているせいか、しとどにあふれた先走りで、金玉の辺りまでぐちゃぐちゃに濡れていた。

  ……これが俺のものになるんや。

  そう思うと、頭がおかしくなりそうだった。

  『なかなかええサイズやな。形もええし。ほな、さっそくいただこうか』

  その太い根元をぐい、と掴むと、竿の半ばから亀頭へと、べろりと舐めあがる。

  「……!」

  顔をくしゃくしゃにして耐える表情が、俺の心をそそる。

  『気持ちええか? 坊主のその表情、たまらんなぁ』

  俺はぱくりと、口で咥えると、舌先を尖らせる。

  皮から顔を覗かせる未発達の亀頭を、優しく撫でてやる。

  かずはビクン、と体を震わせる。

  塩っ辛い先走りが、どうしようもなくうまい。

  口の粘膜を動かしながら、その若いエキスを飲み込むと、その度に厳つい体が震える。

  ……たまらんなぁ。

  俺は舌先を動かすと、少しずつ包皮の中に差し入れ、ゆっくりゆっくりと皮を剥いていく。

  同時に、大事に守られた亀頭を優しく磨くように撫でていく。

  こんな感触は体験したことないのだろう。

  『……!』

  つるん、と皮が剥け、雁首が露わになった瞬間。

  かずの押し殺した悲鳴が聞こえる。

  ……亀頭も鍛えんと、すぐイッてもうてタチなんか出来へんで。

  もちろん、タチなんかさせるつもりはないけどな。

  ……にゃんこみたいに、あんあん啼かせたる。

  俺は大人の余裕でにやりと笑うと、唇を尖らせて敏感な雁を柔らかく包み込む。

  ぬちゅり。

  真っ赤に熟した亀頭は、唇を焼くほど熱く、かずがどれだけその中に閉じ込められた熱を吐き出したいのかがわかった。

  ……飲んでやりたい。

  こいつの子種をあますことなく飲んでやりたい。

  そんなこと思ったのは初めてだった。

  その激情にかられ、俺は今までとは違う激しい動きをかずに与える。

  搾り取るかのように口の中をぐちゅぐちゅとうねらせ、舌先で亀頭を舐め回す。

  『お、おっさん、はなし……』

  ……放すわけないやろ!

  『いぐぅぅ!』

  びしゃっ、びしゃっ!

  かずは肉棒を躍らせながら、思いきり俺の口の中に若い雄汁を吐き出した。

  喉に打ち付けられるその衝撃の強さに、俺は目を丸くしたが、そのままじゅるじゅると飲み込む。

  喉に絡みつくそれは青臭く、口一杯にかずの匂いが染みつくようだった。

  視線を上にあげると、すまなさそうな顔をする虎獣人がいる。

  『おうおう、若いからえらい青臭いのぉ』

  『ご、ごめん……』

  『何言うとるんや、こんな新鮮な雄汁ごちそうしてもろうて。こっちがお礼を言わなあかんぐらいや』

  俺は笑って見せた。

  『若いんやからまだまだイケるやろ。次は、わしの番やぞ』

  『う、うん』

  俺はかずの顔を掴んで、そっと股間へと近づける。

  かずは一瞬息を飲んでそれを見つめると、大きく口をかけてそれを受け入れた。

  どうしたらいいのかわからないのだろう。

  ぴちゃり。

  おずおずと舌先を伸ばし、亀頭に触れさせるのがわかる。

  ……あかん。

  あまりの興奮に、それだけで発射してしまいそうなのを俺は必死に堪える。

  俺のやり方を真似ただけの拙い動き。

  舌を動かし、先走りを啜り、口の中を動かす。

  正直歯が当たって痛い時もあるが、それがまた、うぶさを感じさせ、俺の心を揺さぶった。

  俺は優しくかずの頭撫でる。

  『ほら、初めてしゃぶる男のちんぽはどうや? うまいか?』

  からかうように言うと、不貞腐れたように若い虎獣人は呟く。

  『こんなの、うまいわけないだろ』

  『そうか?』

  俺はにやにやしながら指摘する。

  『尻尾が嬉しそうに動いとるで』

  『!』

  図星を突かれて固まったかずは、俺を睨みつける。

  俺はそれを余裕でスルーし、ずるりと腰を引き抜いた。

  『まあええわ。そのうち、恥ずかしがるどころか、自分から欲しがってにゃんにゃんねだるようにしたるからな』

  『あ……』

  名残惜しそうなその声に、俺の心はたまらなく燃え上がる。

  ……こいつを俺のもんにしてやりたい。

  俺はかずの体をうつ伏せにさせる。

  そして緊張でひくついているその尻をベロリとねぶった。

  『おっさん!』

  すがるように鳴く虎獣人。

  ……大丈夫や、俺がついとる。

  『心配せんでもええ。ちゃんと濡らしてほぐしてから、ずっぽり入れたるからな』

  枕元のローションを手に取り、その尻にぶちまけた。

  その感触に、いっそう緊張したのだろう。ふさふさの尻尾が、ぴいんと細くなる。

  『力抜いとくんやで』

  尻尾を軽く上に押し上げ、ぬらぬらと光る人差し指をぐじゅり、と押し込む。

  強い抵抗感を感じながら、俺は傷つけないようにゆっくりと差し込んでいく。

  『よしよし、ええ感じや。柔こうて適度に締め付けて……高校生の処女ケツかぁ。たまらんなぁ』

  思わずゲスいセリフが漏れてしまう。

  くちゅくちゅと動かし、その若尻の菊穴を拡張しながら、俺はその内壁の襞を探る。

  どこがかずのいいところなのか、どこを押せば反応してくれるのか。

  2本、3本と指を増やし、バラバラに動かすと、少しずつその答えがわかってくる。

  『そろそろやな』

  十分ほぐれたとは言えないが、これ以上は俺が我慢できなかった。

  『ほな、かわええ猫ちゃんの初めてをいただこうやないか。……心配せんでもええで。ちゃんと気持ちよくしたるから』

  茶化すように言ってみせるが、俺の興奮は最高潮で、声に震えを見せないことで必死だった。

  なぜだろう。

  まるで犬司で童貞喪失したときぐらい、その時俺は緊張していた。

  震える腕に力を入れてチンコを掴むと、それを待ち望んだ若尻にあてがう。

  『ちゃんと力抜いとくんやで。心配せんでもええ。ちゃんと坊主に天国味わせたる』

  ローションで滑ってしまわないように、しっかり固定すると、少しずつこじ開けていく。

  ずるり。ずるり。

  緊張しているかずをこれ以上怖がらせないように、俺は時間をかけ、時には動きを止めながら少しずつ少しずつ押し進んでいく。

  俺の肉棒が少しずつかずの熱に包まれていく。

  ……ああ。

  やっと一つになれた。

  ぬちゃり、と俺の股間とかずの尻が重なる。

  『ちゃんと奥まで入ったで』

  さすがに初めてでこれを受け入れたのだ。

  俺は腰を動かさず、痛みに強張ったままの体に何度もキスを落としながら子供にするように頭を撫でる。

  かずはそれを目を細めて受け入れる。

  少しずつ、ほんの少しずつ若尻がほぐれていく。

  俺の肉棒の形に馴染んでいるのだ。

  ……俺のものになっていっているんだ。

  そしてついに。

  くちゅり。

  かずのケツから、濡れた音がした。

  『動かしても大丈夫そうやな』

  ずるり、ずるり。

  ……くそ、気持ちええ。

  『坊主の中、気持ちいいで。おっちゃんのチンポ、優しく包んどる』

  暴発しそうなほどの昂ぶりを悟られていないだろうか。

  あくまで余裕を見せるように、俺は言う。

  『なんや、きゅんきゅん締め付けてきたで。恥ずかしいんか?』

  『……』

  『大丈夫や。俺とやったら恥ずかしいことないで。いっぱい乱れてええんや。……坊主の恥ずかしいとこ全部見せてや。おっちゃんと一緒に気持ちよくなろ』

  ……こいつと一緒に気持ちよくなりたい。

  ……今までのような独りよがりのセックスじゃなく、2人で感じたいんや。

  『うん』

  素直に頷くかずは、たまらなくかわいかった。

  俺ははやる気持ちを抑えながら、少しでも感じてもらえるように腰を動かす。

  さきほどたっぷり探った指の動きで、おおよその肉襞の様子はわかっている。

  かずの表情に少しずつ喜色が感じられる。

  俺は嬉しくなって、思わず呟く。

  『気持ちええか』

  かずはこくりと頷いた。

  『そうかそうか』

  もう、辛抱できそうもなかった。

  『ほんまにかわええなぁ。わしも辛抱たまらんようになってきた』

  俺は前立腺を強く刺激できるように狙って腰を動かす。

  『ああ!』

  『ここやな、ここがええんやな』

  喘ぎ声をあげる虎獣人。

  俺はそこを執拗に擦り続ける。

  『おっさん、わし……』

  追いつめられたような声を出すかずに俺は思わず笑みを浮かべる。

  『大丈夫や、そのまま力抜いとき。天国いかせたるから』

  ずちゅり、ずちゅり、ずちゅり、ずちゅり。

  何度も、何度も、執拗に、執拗に。

  俺は無心でその動きを繰り返す。

  頭も金玉も爆発してしまいそうだったが、その気持ちを押し殺して、ただただ腰を振る。

  かずに気持ちよくなってもらうために。

  不意に、かずが叫ぶ。

  『おっさん、なんか来る!』

  『ええで、そのままメスイキしてしまえ!』

  ぐじゅりっ!

  貫けとばかりに、かずの前立腺を押しつぶす。

  『イグぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!』

  野獣のような咆哮が、部屋中に響き渡る。

  すでに俺のための形になっていた肉襞が、強く俺の子種をねだるようにぎゅるぎゅると締め付ける。

  ……あかん!

  どく、どく。

  辛抱に辛抱を重ねたというのに、俺の鈴口からだらだらと雄汁が漏れ出すのがわかった。

  『くそ、ちょっと漏れてもうた。かなんなぁ、えらい締め付けよるさかい。こない早う出てしまうとは、坊主のここは名器やな』

  俺はごまかすように言う。

  『このままやと不完全燃焼やな。……もういっぺんやろか。このまま掘り倒して、わしのんを体に覚えさせたる』

  『……うん』

  5

  「くそ!」

  真っ白に濡れたシーツを見ながら、俺はため息をつく。

  あの夜のことを思い出したら、知らず知らずのうちに右手がチンコをしごいていたのだ。

  もう何か月も前の出来事なのに。

  「しょうがないわなぁ。……むちゃむちゃかわえかったんやから」

  あの時、俺は思ったんだ。

  『こいつと一緒なら……』

  その無愛想な顔も、いかつい見た目よりもうぶなその体も全部、自分のものにしてしまいたいと思っていた。

  ……もう一度、やり直せるかもしれない。

  なぜかそんなことを、無心に俺に抱かれて眠るかずの顔を見ながら、俺は思ったんだ。

  でも、あの朝。

  あの笑顔を見せられた時、俺は自分がわからなくなってしまった。

  ぎこちないあの笑顔。

  いつも、犬司がみせてくれた、俺だけの笑顔。

  俺はこの若虎が好きなんじゃないのかもしれない。

  ただ、犬司の面影をこいつに求めているだけなのかもしれない。

  それは……。

  それはあまりにも残酷じゃないか。

  自分にとっても、かずにとっても。

  そして、犬司にとっても。

  その考えに俺は恐怖して……。

  かずを突き放すことしかできなかった。

  でも、あいつは反発しながらも俺に近づいてくれて。

  俺も覚悟を決めたんだ。

  たとえ、犬司の面影を感じていたとしても、俺はかずが好きだ。

  こいつと一緒に、もう一度人生をやり直したい。

  そうだ。

  その時に俺は覚悟を決めたはずじゃなかったのか。

  すべてを投げうったって、かずと一緒に生きていきたいって。

  6

  「はあ」

  俺は本日休診の札を鍼灸院の入り口にかける。

  ガラス戸には、目の下に隈が出来て、ちょっと頬のこけた自分の顔が映っている。

  「あかんなぁ」

  あの後、不安な気持ちと、かずのかわいさを思い出してチンコをいじっていたら朝まで寝られず抜いてしまったのだ。金玉がすっからかんになるまで。

  「さすがに疲れたわ」

  何十発出しただろう。

  もう、汁の一滴も出ないだろう。

  自分の性欲の強さにうんざりする。

  『……それが原因ちゃうんかい』

  狐塚のじいさんの声が頭をよぎる。

  毎晩、かずと朝方までやっとったのも、あかんかったんかなぁ。

  ……仕方ないやないか。あんなにかわええ声でねだられたら。

  でもまあ、ちょっと疲れた顔しとったしな。

  ……よし。

  俺は覚悟を決めてスーツに着替える。

  これからかずの実家まで行って、許しを請うのだ。

  必要なら、親父さんに、息子さんをくださいと土下座をしてでも。

  必死の覚悟で俺はガラス戸に鍵をかけた。

  と。

  「ゆうさん、なんでそんな格好してるの?」

  「そりゃ、かずを迎えに行こうと……へ?」

  俺は思わず間抜けな返事をしてしまう。

  なぜなら、そこにかずが立っていたから。

  仏頂面で、無愛想ないかつい虎獣人。

  俺の最愛の人。

  「なんで……」

  「なんでって。2日で帰ってくるって言ったでしょ。なんでゆうさんが迎えに来る必要があるんだよ」

  「……」

  そんな俺を見て、かずはため息をつく。

  「やっぱり、ちゃんと聞いてなかっただろ。じいちゃんの法事があるから、2泊3日で実家に帰るって、1週間前に言ったはずだけど」

  「……」

  覚えてない。

  「だろうと思った。エッチの前だからがっついてたし、そんな気はしてたんだけど」

  だから、スーツなんか着てたのか。

  だけど。

  「だって、だって最後って」

  あんな格好で、意味深なことを言うから……。

  「ゆうさんに2日も会えないから、『最後』ぐらいは気持ちよく送り出してほしかったのに。わしの話聞いてないし、他の男に粉かけてるし……」

  「そうか」

  「ゆうさんがモテるの知ってるし、セックスもうまいから他の男にとられたらどうしようって不安もあるし」

  ……ああもう。

  「かわええ」

  「え?」

  俺はかずを抱きしめる。

  「俺のかずは、なんでこんなにかわええんやろ」

  思わず涙が滲むのを、ごまかすようにかずの頬にこすりつける。

  「なあ、かず」

  「何?」

  「もう辛抱たまらん。今からやろか」

  「はぁ? 鍼灸院どうすんだよ」

  「今日は閉めることにしとったんや」

  「なんでだよ」

  「ええねんええねん。俺、かずがおれへん間ずっと悶々として一発も出してへんのや」

  俺の誠実なセリフを、かずは胡散臭そうな顔で返す。

  「いや、ゆうさんにそんな我慢できないだろ。性欲魔人なんだから」

  「ひどい事言うなぁ。そんなことないで、わしかて我慢できるんや」

  明後日の方を向きながら、それでも俺はかずの手を取って股間に触れさせる。

  「むっちゃ溜まってるんやで。ほれ」

  期待通り、そこは臨戦態勢のまま、いきり勃っていた。

  金玉もフル稼働して、ザーメン拵えてるのがわかる。

  ……ああ。

  自分の性欲の強さが誇らしい。

  「こ、こんな朝から……」

  「そんなこと言って、ほんまはかずも嬉しいんやないか?」

  「……」

  「向こうで遊んでないか、俺がちゃんと検査したるからな」

  「……うん」

  こくりと頷く虎獣人。

  「もう、かわええなぁ。かずにやりたくて、いっぱい溜まってるんやで。全部、中に出したるからな」