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今日も暑いね、猛暑だよ! 蝉がジーワジーワ鳴いているよ。少しでも涼しげな気分になろうと申し訳程度に百均の風鈴を吊してみたけど、けだるくてそんなものちっとも耳に入らない。温度計は四十度を超えている。カーテンを閉めたら少しはマシになるかと思ったけど、うちのカーテンはケチってホームセンターで買った安物だから光があり得ないほど透過する。こんなことなら遮光カーテンにしておくべきだった。
最近のマンションなら冷気や暖気がすぐに家に入ってこないくらいには断熱がしっかりしているのだろうけど、貧乏学生のぼくとしてはできるだけ家賃をお安く済ませたいものだから、この木造築三十年の四畳半アパートに住んでいるワケだけど、やっぱり古いだけのことはあるね。夏暑く冬寒い。壁を触ってみると、夏はやけどしそうに熱いし、冬は手が凍り付きそうなほど冷たい。チクショウ! 四万七千円の家賃につられて入居したけど、ちょっとバイトでもしてもう少しいいところにするべきだったよ! まあバイトめんどくさいし多分引っ越してもやらないと思うけど。
物件のことを今さら嘆いてもはじまらない。なぜぼくがこんな焦熱地獄でアスファルトでのたうちまわるミミズのようにあえいでいるのかというと、エアコンが壊れたのだ。うだる暑さの中、大学から帰宅してやっと涼めるとばかりにトリプルアクセルを決めながらエアコンのスイッチを入れた。ピ、と軽やかな音が鳴る。ぼくは少し昼寝することにして、せんべい布団に横たわった。……おかしい。しばらくまどろんでいたのに暑さで目が覚めた。シーツは背中の汗でびしょびしょになっている。エアコンを見ると、謎のメッセージが出ている。E04。ああ、これはたぶんエラーコードかなにかですね。え、っていうことはぼくずっとこの気温の中で過ごさなきゃいけないってこと? ジーザス!
寒いところが大好きなしろくまのぼくとしては、こんなところにいたら死んでしまう。急いで電気屋さんに電話した。するとこの時期エアコンの取り付けや修理で忙しいらしく、来られるのは夕方〜夜にかけてらしい。夕方ってことは最速で四時とかってことだよね。今三時過ぎだ。電気屋さんが来るまでクーラーの効いたどこかへ避難しようかと思ったけど、空き時間が中途半端だからどのみちしばらくは家から離れられそうにない。すると古めかしい音の呼び鈴がビーと鳴り、同級生のヒグマ、紅一が入ってきた。
紅一は笑顔で入ってきたかと思うと、部屋に入るや否や、まるでくさい屁で充満した部屋に閉じ込められたかのように顔を歪めた。ねえねえ、それってちょっと失礼じゃない? いやまあ気持ちは分かるけど。あとさっきすこし屁をこいたのでそれかもしれない。
「なんだこれ……エアコンは?」
「こわれたんだよ」
「ええっ、じゃあ図書館とか行こうぜ」
「データとアプリケーションがデスクトップに入ってるんだよ。それに今から行ったらエアコンの修理時間に間に合わないよ。紅一だけでも行ってこれば?」
「ゼミに蒼太しか知り合いがいないから教えてもらおうって来たんじゃないか。直るまで待ってるよ」
これからどうするかという問題はとりあえず棚上げして、まずは紅一の買ってきたラムネアイスバーを食べることにした。個包装された棒状のスティックを取り出す。するときっと本来はきれいな円柱状なのであろうアイスは、一旦溶けて自らの冷気でまた固まったらしく、包装の形にべっちょりと固まっていた。
ぼくらは三本ずつラムネアイスバーを食べたけど、一向にすずしくならない。考えてみたらぼくはしろくまだし、紅一は少し小さいとはいえヒグマだし、ふたりとも二百キロ三百キロ級の体格なのだからラムネごときで冷えるわけがないのだ。せめて一人ひとはこずつ食べるべきだった。
「なんか買ってきたら食べるだろ? 冷たいもん大量に備蓄しとこうぜ」
喜び勇んでコンビニに向かう紅一を制止する。なにかイヤな予感がする。ぼくは九千八百円で買った、ギリギリ冷凍機能がついている冷蔵庫を開けた。冷蔵庫からは外気温と変わらない空気がむわぁと出てくる。これじゃ沢山買ってきても入れたそばからぬるくなるよ! 仕方ないので冷蔵庫は諦め、ダメ元で冷凍庫を覗く。冷蔵庫はパワー不足でも、冷凍庫にジュースなどを入れればギリギリ冷たくなるかも知れない。冷凍庫を開ける。そこには涼しい風が——あることはあるのだけど、ものすごく弱い。よく見たら製氷皿にはタプタプと水が溜まっている。ガッデム! これじゃアイスとか買ってきても全部溶けてしまうよ!
ぼくは冷蔵庫の惨状を話すと、紅一は膝から崩れ落ちた。まてまて、冷凍庫で凍らせることはできないけど、辛うじて冷やすことはできるんだ。ぼくはそれを告げると、溶けないものを買ってくるよと、紅一は一目散にコンビニに向かった。
さて、とはいっても冷たい食べ物は一時しのぎにすぎない。電気屋さんが来るまでどうしようか。そうだ、行水しよう。これなら体の中まで冷えるね! ぼくはお風呂場に水を張りはじめた。
そうこうしている内に紅一が帰ってきた。ザーという音を聞いて、行水か、いいなと賛同した。買ってきたペットボトルやゼリーやところてんなどをぬるい冷凍庫に入れると、ふたりとも全裸になって風呂場に直行した。まず紅一が湯船に入る。ぼくはシャワーを冷水にして浴びる。
「あー最高だなあ……電気屋さんがくるまでコレでいいんじゃね?」
「そうだねえ。何時に来るのか幅があるけど。夜来たらふやけるよ」
しばらくとりとめのない話をしていると、今度はぼくが湯船に入る番だ。……ええと、この風呂は四畳半についているふろとはいえ、くまサイズだからそれなりに大きくできている。だからといって、大型の熊がふたりも入れるように出来てるわけではない。紅一と入れ替わると、でっぷりとした腹がこすれあう。
「え、えと、太ったかも、な。ハハハ」
紅一はどこか挙動不審になって洗い場のシャワーにあたりはじめた。そしてついでに体も洗っておくかなどといって体と尻の穴と前に突いた棒を洗い始めた。そうだね、デリケートなところはきれいにしておかないとね。なにか紅一がチラチラ見ているようだけど、ぼくにも洗えってことかな? やれやれ、仕方ないな。
また湯船のへりをまたいで洗い場と湯船を入れ替わる。腹がこすれ合う。……ん? なにか紅一のTINTINがぼくのそれに当たる。なぜ軽く勃起しているのだろうか、このくまは。とにかくぼくは気づかなかったことにして、洗い場に行って体を洗う。紅一に倣って、棒と穴を丹念に洗った。それを見た紅一はなんだか上気していて、さっきからやけに静かだ。いつもだったら憎まれ口のひとつでも叩こうものなのに、まるで借りてきたくまだ。暑すぎてどこか悪いのだろうか。上がったら訊いてみよう。
「あ、ええと……耳の中洗うの忘れたからもう一回変わってくれよ」
なんだ、ただの行水なのにきれい好きだなあ。紅一ってもっと大雑把だと思っていたけど。まあ人は見かけによらないものだ。おふろだけはしっかり入っているのかもしれない。あるいはなかなかのわきがだとか。
また湯船のへりで交代する。みたび腹がこすれて……なんだこれ。TINTINが触れるとかいうレベルじゃない。ぼくの豊満な腹を突き上げている。さっきはただの生理現象でなんとなく勃ってしまったのかと思ったけど、今度は完全に興奮してますね。紅一は腹をこすりつけながら、いつもと違って少し優柔不断な顔つきをしていたけど、覚悟を決めたようにぼくの目を見て言った。
「好きだ」
彼氏ができた。
紅一が股間をもちあげたまま全裸で涼もうぜなどと言っているけど、パンツくらいはかせろというとシュンとした。だってこれ以上紅一が興奮して無理矢理手籠めにされたら、つながっているところを電気屋さんに見られるかもしれないじゃないか。「ちょっとくらい触ってもいいだろ」「クーラー直ったらしようか」「今日泊まってもいいだろ?」やる気まんまんじゃねえか! あたしの体が目当てなのね!
そのとき電話が鳴動する。電気屋さんだ。三十分ほどで着くらしい。今四時半だから五時頃ということか。そのことを紅一に告げると、「三十分でできることをやろうぜ」などと股間を膨らませて迫ってきた。ぼくは「今するともっと暑くなるからやめようね」などと諭したけど、考えて見たらこれ、クーラーが直ったらシてもいいよと言っているようなものじゃないか。キスくらいしてあげてもいいかなと思ったけど、エロの起爆剤にしかならないからやめておこう。
ビーと玄関のチャイムがなると、この暑いというのに密着してくるくまをどけて、最低限ズボンだけはいて玄関に出た。外には脚立を持ったおじちゃんが立っている。どうぞとも言っていないのにズカズカ入ってきたおじちゃんは、脚立に登ってエアコンの電源を入れた。電源は入るのだがすぐ切れてしまう。
「ふんふん……コレは部品変えないとダメだね。明日の朝でもいい?」
「え……よくないけどそれしかないんですよね……」
ぼくはガックリ肩を落とす。だってレポート作成用のデータは移せばいいけど、計算用アプリケーションは学術用にしか使わない高価なものだから、ノートには入っていないのだ。
「俺も家のデスクにならアプリケーション入ってるぞ」
この状況でエロくまの家にいったら確実に「分析終わった? つぎは蒼太の分析してもいい?」とかおっさんみたいなことを言ってくるに違いない。付き合い立てのカポーなんてサルのようにやりまくりじゃないですか、大抵の場合。
しかし背に腹は代えられない。紅一の家にデータを持っていけばレポートもできるし、エアコンもついている。問題はぼくのシリアナがピンチということくらいだろうか。でも選択肢がないので泣く泣く今日は紅一の部屋におじゃますることにした。
というわけでレポートが出来たし、夜もゆっくり寝られた。あとは午前のうちに電気屋さんがくるのを待つだけだ。ちなみにぼくのシリアナがどうなったかは訊かないでほしい。
ほどなくして電気屋さんが到着し、エアコンの室内機を外してなにやら大きな部品を取り替え、すぐに冷気が出てきた。よくわからないけど管が破損していたようだ。ガスも満タンだから前よりよく冷えるよといって、電気屋さんは帰っていった。
「すずしくなったな。……ねえ蒼太、エッチしようよ」
「ハァ、言うと思ったよ。ケツ出してそこに寝転びな」
足腰立たなくなるまでブチ犯してやった。そう、ぼくのシリアナは無事でした。というかまさか大雑把でガキ大将みたいな紅一がドM変態受けだとは思わなかった。セックスの相性がよくてなによりです。
情事の後、風呂場で洗いながらねっとりとキスをしていると突然バン! という音がした。なんだろう。体を洗って外に出ると、冷凍庫から白い冷気がもくもくと出ていた。昨日冷凍庫を冷蔵庫代わりにしてペットボトルなどを入れていたから、部屋の気温が正常に戻った今、冷凍庫のペットボトルが破裂したのだ。もうこのポンコツ冷蔵庫買い換えようかな。
というわけでもうエアコンは正常に稼働しているのだけど、ぼくと紅一はお互いの家を行き来してレポートをやったりしてでへへへへへ。デブの彼氏が欲しかったらエアコンをたたき壊して一緒に行水をするといいかも知れない。壊れたこととできなかったことの責任は負いません。
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