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誰もいない暗いオフィスで二時間ほど残業し、俺は虎縞しっぽを引きずりながら家路を辿った。
この築浅のモダンな分譲マンションは、二十八歳まで汗水垂らして働いて買った俺の城だ。賃貸のボロアパートに家賃を払い続けるのはもったいないし、俺の職場である大手出版社は転勤もないから、愛着のあるこの土地から動くつもりもない。それに2LDKを持っていれば誰かと付き合うことになってもそのまま迎え入れることが出来る。だからあとは買うなら早いほうがいいと思ってすぐに不動産屋に連絡したのだ。とはいえせっかくいいマンションを持っていながら休日は寝てるか遊びに行くかだし、平日は深夜しかいないんだけど。
「ただいまー」
「いっちゃん、おかえり」
居室からしろくまの勘太の声がする。ヒマなときならいつもドアを開けて顔を見せてくれるから、今日はデザインの仕事がたんまり舞い込んできたのだろう。
くたびれたスーツを脱ぎながらダイニングを通るとごはんが用意してある。俺が部屋着に着替えると勘太も部屋から出て伸びをした。
「ごはんにしようか」
ふたりでぼーっとテレビを眺めながら飯を食う。平日の夜なんてこんなもんだ。「今日何があった?」ってそりゃ仕事してたし、それは勘太だってそうだろうし、報告するような特別面白いことは何もない。せいぜいテレビをかすがいにして「このタレント誰だっけ?」「次何見る?」とかいった味気ない会話を少し交わすだけだ。そんな俺を尻目に勘太はテレビを見て無邪気に笑っている。
食事が終わると勘太は「あっ」と何か思い出したかのように冷蔵庫に向かった。ふたりにしてはかなり大きなケーキが出てくる。
「な、なんだ急に」
「ふふ、やっぱり忘れてたでしょ。同棲三周年記念」
ああ、もうそんなに経ったのか。勘太は嬉しそうにケーキを切っては微笑む。いや、そもそも勘太はいつも微笑んでいたと思うけど、最近俺がはっきり勘太の顔を見ることをしなかっただけなのかも知れない。
「付き合い始めたときは楽しかったね」「遊園地行ったよね」「あのときくれたプレゼント嬉しかったよ」「引っ越してきたときワクワクしたね」
————今は?
勘太と付き合い始めたのは二十七のときだ。あの時は休みの度にいろんなところに行ったし、お互いの家に行ってたくさん話をして、散々エッチもしたりしてた。休日にしか会えないから電車の時間にはすごく別れが惜しくて、駅の柱の陰で何十分も抱き合ってたこともある。そして帰ったらメッセージアプリで「次はどうしようか」なんて言ったり、今日は何食べるのなんてどうでもいいことを言い合ったり、……いや、内容はどうでもよかったんだろう。きっと勘太と話せるだけでも嬉しかったんだ。
二十八でマンションを買うときには勘太もついてきた。勘太はパンフレットを開いて外観から設備からシャワーヘッドの写真まで、目を輝かせて穴が空くほど見ていた。俺が眠くなるような重要事項説明を聞くときにもうんうんと嬉しそうにうなずいていた。何がそんなに嬉しかったんだと訊くと、これからここで俺と遊べることとか俺の夢が叶ったことか、とにかくあらゆることをまるで自分のことのように喜んでくれた。
そのときに同棲の話をすることはなかったけど、もう付き合って一年経っていたし、お互い大人だし、そろそろ一緒になる頃合いかなあとは思っていた。きっと勘太もそうだったのだと思う。あくまでマンションは俺の家なのだから勘太のほうから一緒に暮らそうとは言いにくいわけで、俺はガラでもなく照れながら一緒に住もうと伝えた。勘太は涙をこぼしながらうなずいていた。
二十九になると気持ちが安定してきたというか。同棲を始めてすぐこそ休日どころか帰宅後にもすぐサルのようにヤりまくっていたものだけど、十分な時間一緒にいて信頼を重ねていって、必ずしもそういうことをしていなくてもお互いの気持ちが離れることはないと思えるようになった。一緒にいるだけで気持ちはつながっているのだ、こういうのが愛情ってヤツなのかなと特に不満もなかったし、ずっと勘太のことは大切に思っていた。
三十になるとふたりとも同棲生活に慣れた。良く言えば「空気みたいな関係」、良くない言い方をすれば「ありがたみが薄れている」ような気がした。今までは特別だと思っていたのが当たり前になってしまった。以前は百点だったラインが今はあって当然と思ってしまう。もちろん幸せなのは幸せだ。勘太はいいヤツだし、家事分担しているし、家に誰かいてくれるから寂しくもない。でもそれすら当たり前のことになってしまったように思える。
そして三十一の今だ。三十のときの感覚が今のままスライドして、関係はより希薄さを増してきているような感じがする。相変わらず文句はないし、俺たちは上手くやってるし、勘太はいいやつだ。でももうそれが当たり前になりきっている。
人間はすぐに慣れてしまうから、一度上がってしまった水準を昔に戻すのは難しい。昔はボロアパートに一人暮らしでロクなものを食べずに家事も自分でやって、誰も居らず寂しい思いをするのが普通だった。でも今当たり前だと思っているこの環境から再びそこに戻ったとしたら、あまりの辛さに絶望するだろう。
幸せな生活や贅沢に慣れてしまっているのだと理屈では分かっている。でも感情や感覚はそんなに簡単に制御できるものではない。勘太の懐が深いから辛うじて空気のような関係でやっていけているけど、もし勘太と激しくぶつかって揉めてしまうようなことがあったら二人の関係が壊れてしまうかも知れない。
それどころか下手をしたら俺は二人の関係が壊れてしまうことにあまり恐れすら感じていないのかも知れない。もう勘太がいることが普通だと麻痺している。いるのが当たり前どころかいなくなっても今の生活が続いていくんじゃないかとさえ錯覚している。冷静に考えたらそんなワケないんだけど、そもそもそんなことが頭に浮かび上がってくるのが俺の現状なのだ。
世の中の倦怠期のパートナーは「ちゃんとしている」ことが当たり前になっていて、相手の「ダメな部分」ばかりが目に付くようになってしまうのだろう。それにムカつくヤツのムカつく言動は余計にムカつくから、一旦「コイツといるのは息苦しい」と思ってしまうとなおさら悪いところが目立つのだ。そうなればあとはもう関係の悪化は止まらない。ふたりの仲はいがみ合うところまでいってしまうだろう。
そう、何度も言うけど勘太は本当にいいヤツだ。でも今の平穏な生活は勘太の懐が深くて俺を見限っていないから成立している。あるいは俺が勘太といることに”たまたま”不快感を感じないから成立している。でもふたりの人間がいて、あと十年や二十年なんのすれ違いもないなんてことはありえない。俺たちはいつ切れるとも知れない細い糸の上を綱渡りしながら生活しているのだ。
今日は勘太に同僚と飲みに行くから遅くなるよと言ってある。そして居酒屋の隣の席には同僚の柴犬、柴井がいる。コイツは頭が回るので同僚の間ではご意見番のようになっている。本人は迷惑そうだけど。それに兄弟がいっぱいいるから人付き合いやら同居生活やらの悩みに的確なアドバイスをくれる。
「ふーん、贅沢な悩みだな。でもお前が考えてる通りなんじゃないの。トマトスライス食っていい?」
柴井は俺のおごりなのをいいことに酒とつまみをガツガツ食べる。それはまあいいんだけど、いつも的確なアドバイスをくれる柴井にしては渋い答えだ。
「世の中とんでもない数のカップルが昔から居たわけだろ? そんで昔から名言とかアドバイス、ようはノウハウってやつを大量に残してる。みんな頭では分かってる。それなのに別れるヤツは後を絶たない。なんでだと思う?」
「さあ……」
「考えるばっかでそれをなんとかしようとしないからだよ。お前に足りないのは行動」
「でも勘太がどうしたいのか、俺をどう思ってるかは俺にはどうしようも」
「なんで相手に求めてんだよ。お前らに必要なのは対話。すり合わせ。確認。当然お前からいくんだよ」
食うだけ食うと好き勝手小言を言って柴井はごっそさんと帰っていった。俺はもう少し考えたかったのでいきつけのゲイバーに行くことにした。
「ええ? 勘太ちゃん超いい子じゃない。……実はエッチ下手なの?」
「いやそういうのでなくて」
ママと下世話な話をしていると熊が入ってきた。熊は一瞬ドアの前で立ち止まるとヒュウと口笛を吹いてから俺の隣に座った。ははあ、よさそうなのを物色しようとしてるんだな。熊はウィスキーのキープボトルを出すと俺に話しかけてきた。
「お兄さん、かわいいね。なんていうの? 俺は賢助」
「一(はじめ)だけど」
「へえ。おっとグラスもうひとつちょうだい。——かんぱーい」
ゲイバーは交流するとこだから周りのお客さんと交流するのは至って健全な遊び方だ。俺は普段通りに賢助と乾杯した。賢助はどこか笑い方が勘太と似ている。ちょっといたずらっぽく笑うと、賢助は俺のひざに手を置いてきた。……まあ、かわいいねなんて声をかけてきたくらいだから最低でも連絡先、普通ならヤリモクだろう。
「ちょっと、その子は彼氏いるよ」
「え、いいじゃんエッチくらい」
「その子は彼氏と仲良くする相談に来たの。浮気するわけないよ」
「ええ? その人より気持ち良くさせてあげるよ?」
……勘太より? あいつの前でするみたいに、安心して本当に全部さらけ出せるほど俺を気持ち良くできるって?
「俺、優しいから。エスコートしてあげるよ」
勘太は……四年間ずっと俺に寄り添ってくれてた優しいヤツだ。勘太は……勘太は……
「……それだけか?」
「え? まあ、一杯ならおごってもいいよ」
「遠慮しとくよ」
「……チッ」
賢助は舌打ちすると俺をにらみながら乱暴に金を払って帰っていった。
「ごめんねえ、アイツナンパ師なんだけど、あんなふうにガラが悪くて困ってんだけどね。実際何かするワケじゃないから出禁にもできなくて。断ってくれてよかったよ」
ふうん。少々不愉快だったけど俺は二十分ほど飲んでチェックした。
ビルを出て駅へ向かう途中、路地裏のほうから強い力で引きずり込まれた。一発ぶん殴られるとアスファルトに転がる。上を見ると賢助がさっきの笑顔とは裏腹に俺を睨みつけていた。
「おっさん、恥かかせやがって」
「……ぷっ」
もういいか。
「思い通りにならないと殴るガキの相手しなくてよかったよ」
んだと、と二発ぶん殴られる。あまり痛くなかった。まあこういうヤツは大して強くないもんだ。
「勘太より、だと? 自分本位で性欲丸出しのサルが語ってんじゃねえよ」
あごにひざがヒットする。
「なんだよ、性欲発散できなかった腹いせか? そこにハッテン場あるからオナニーしてこいよ」
俺が折れないのを見て、貧弱な拳が二、三発俺の顔を殴り、腹の虫が治まらないのかこのどうしようもないバカは二発ほどケリを入れ、つばを吐き捨てて帰っていった。
さて、と……気絶くらいするかと思ったけど大したことなかったな……ってもボコボコに打撲してるし血も出てる。とりあえず大通りに出……くそ、脚にひび入ってやがる。体を引きずってなんとか大通りに出るときゃあなどという叫び声が上がる。遠巻きに俺を見下ろす歩行者。……まあこんなもんだろう。歓楽街は治安が悪いし、それにこんな歓楽街で遊んでるときに厄介事に巻き込まれたくないだろう。通報したら警察に朝まで拘束されるだろうし。俺だって逆の立場だったら通報するか分からない。自分で通報したいところだがポケットをまさぐってもスマホがない。路地裏に落としてきたんだろう。あー……大した怪我じゃなくても放置はマズそうだな。
「いっちゃん!」
なんで勘太がいるんだ? 同僚と飲むとしか言ってないハズだ。とにかく勘太は警察に連絡すると、コンビニで水を買ってきてくれた。路地裏のスマホを取ってくれというと、戻ってきたときには涙を流していた。思っていたより俺の血が飛び散っていたみたいだ。
「なんでここにいるんだ……?」
「あとで話すよ!」
「……俺も、話したいことが、あるんだ」
「あとで聞くよ! 話さなくていいよ!」
「いいんだ……ごめん、ありがとう」
やがて救急車が到着して応急処置が済むと、いつのまにか気分が落ちついたのか意識が遠ざかっていった。
勘太は俺が寝て処置されている間ずっとついているつもりだったけど、命に別状もないし大けがでもないから今日は帰りなさいと促されて帰ったようだ。もっとも一睡もできなかったらしいけど。
「いっちゃん! 具合はどう?」
あわてて病室に駆け込んできた勘太は両手に荷物を持っていた。それらを床に下ろすと、着替えと、タオルと、ティッシュと、充電器と、水とお茶と、ゲーム機と、あと本と、タブレットと……などとつぶやきながら棚や引き出しにものを入れていく。
他に何か出来ることはないかとあたふたする勘太に大丈夫だよというと、ようやく胸をなで下ろして椅子に座った。
勘太は俺が最近どうもおかしくて、なにか悩みがあるんじゃないかと気づいていた。普通悩みがあれば俺は勘太に相談する。しなかったということは、俺の悩みは勘太に関することだというわけだ。だから勘太は俺が柴井に相談しに行ったのだろうと思って連絡してみたけど、柴井にもう帰ったと言われてから何時間経っても俺は帰ってこなかった。それで昔二人で遊びに来ていた頃のいきつけにいるのではとあそこに来たのだ。
つまり勘太は俺が勘太に対する悩みを抱えているともう知っているのだ。どうしたもんかな、ってもう正直に言うしかないか。柴井も言ってたよな、いろんな先達のノウハウがあっても別れる人が絶えないのは行動に移さないからだって。確かにドラマじゃすれ違いが軋轢を生むし、話をしないことが誤解を生んだりする。対話がお互いの誤解やすれ違いをすり合わせて妥協点を見つける唯一の手段なのだろう。柴井にしてはアドバイスが単調だったのはそれしか言えなかったということだ。俺はもう十分に考えていたけど行動が足りなかったのだ。ただ勘太に言ったら現状が壊れてしまいそうで、現状維持を選んで対話を恐れてしまっていたんだ。
実際のところ現状は関係が悪いワケじゃない。ただ将来どうなるか不安なだけだ。だったら不穏なことを話してしまってヘタに関係を悪化させるよりはと現状維持を選んでしまう。水面下では腐り始めている水を、上澄みだけきれいに保たれていればそれでいいと見ないフリをしている。でもそんなのはいつか腐りきってしまう。ずっとずっと健全な関係を続けるんだったらアクションが必要なんて、バカみたいに単純な結論だ。
さらに考える。勘太はどう思っているのだろう。俺と同じように考えているのなら、勘太だってそろそろマンネリ感を覚えているはずだ。そういうのが生じるペースも程度も人それぞれではあると思うけど。でも昨日の勘太は俺の帰りが遅いなんて理由だけでわざわざ柴井に電話して、歓楽街まで俺を探しに来て、見つけた俺を見て狼狽して、路地裏の血を見て涙を流していた。その後も付き添おうとしてくれたり、今だって何か出来ることはないかと必死になってくれている。
さすがにもし勘太が倒れて流血してたら俺だって焦るだろうさ。だけど飲みの帰りが遅いからってどこにいるかも分からないところを探しに行ったり、病院に来てからあれだけ献身的になったりできるのかな。やるかな。ああ、わかんねえな。実際にそんな非日常的になったことないもんな。
少なくとも勘太は、俺が勘太にするよりもずっと俺のことを大事にしてくれてる。なんでそんなにできるんだろう。今でも大事だという気持ちを褪せさせずに持ち続けているんだろうか。どうやって?
勘太は俺が何を悩んでいるのかを問い詰めるようなことはしなかった。普通自分が悩みの原因なのだろうと勘づいていたら、自分にどこか悪いところがあったのか問い詰めたりするものだろう。でも勘太は俺の気持ちが落ちついて自分から口を開くまで静かに待っているようだった。
「————勘太は、その、倦怠期で俺への気持ちが薄れたりはしてないのか?」
勘太はポカンと口を開ける。え、なんで?
「そんなことで悩んでたの? あのねえ、燃え上がるような期間はすぐ冷めるなんて大人なんだからわかるでしょう。そういうスキスキ状態じゃなくなったことがイコールぼくに冷めちゃったってことだとか考えてるの!? 呆れた」
勘太はじっとりした目で俺を見てくる。え? 俺は結構深刻に悩んだのになあ。
「じゃ、じゃあさ。勘太はどうなんだ? イチャイチャしてたときから今まで、気持ちは変化していったよな。悪い意味で俺を空気みたいに感じてしまったりしないのか?」
勘太はため息をつくと、荷物からナシを取り出して果物ナイフで器用にくるくると剥きだした。
「ぼくの場合はその燃えるような恋愛が落ちつくに従って、いっちゃんは家族の一員って感じが代わりに強まっていったからさ。ほら、おかあさんに飽きる人なんていないでしょう? 大事なペットに飽きるなんてことないでしょう?」
勘太はナシを切って小皿にのせて俺に出してくれた。
「いっちゃんはぼくがいなくなったらどう思うの?」
「……………………」
「言って」
「…………その、空気みたいすぎて実際そうなったときどう思うかわからないんだよ」
「実感がないんだね。ぼく三日くらい実家に帰ろうか?」
「あ、でも」
俺は賢助————ヤンキーに絡まれたときのことを思い出した。ナンパされてうわべだけの紳士面を見たとき「勘太よりも?」とずっと思い続けたことを思い出した。実感がないのは申し訳ないがその通りだ。でも「お前に勘太より俺の何が分かるんだ」ということだけは思えた。
「……はは。思い出した。少なくとも、俺がどれだけ勘太に大事にされてるか」
「うん」
「……まだ実感ないけど……いざ離れたら引き裂かれるように辛いんだろうな」
「……うん」
「ごめん」
「バカ」
俺はこれまでを恋愛の延長で考えていたから、そういう刺激がなくなったことに焦りや不安を感じていたんだろう。でも勘太は違った。刺激じゃなく俺と一緒にいることで安らぎを感じてくれていたんだ。
「ぼくらもっと話し合うべきだったねえ」
勘太を家族の一員と意識するようにしはじめたけど、そんなに早く気持ちが切り替わるものでもない。俺たちの何かが特別に変わったわけじゃない。でも向かっていた方向が少しずつズレていることを修正できた。
「まっすぐ進んでるつもりでもさ、ほんの少しでもズレていたら遠くまで進んだときにものすごくズレちゃうじゃない」
「ああ」
「このまま進んでたら、ぼくら上手くいってるようで取り返しの付かないことになってたかも知れない」
「……かもな」
「……でもね、だからこそいっちゃんがぼくのことしっかり考えてくれててよかった」
勘太は泣きだした。そうだよな、俺が勘太に抱いてた心配事も、俺が言い出すことも、ひょっとしたらなにかよくない結果になるかも知れないことも、全部我慢しててくれてたんだよな。
まだ問題が消えたわけじゃないし、消えたとしてもようやく「第一関門突破」にすぎない。第二、第三とあって、どこまでいけるかなんて誰にも分からない。でも第一関門が突破できたら次の関門をうまくやりすごすヒントも手に入ると思うのだ。だから先のことはそれほど心配していない。
勘太がしばらくして泣き止んだ後久しぶりに安心した顔を見て、ああやっぱりこいつといることを放棄しなくてよかったんだろうな、これからそれをもっと強く感じられるようになっていくよと思えた。
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Peel the pear. →
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最近アウトプット過多なので、常にネタは募集しています。
そうでなくても自分の脳内だけでなく人の感性でネタをもらうと幅広いアイデアがもらえるので……
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