兄弟竜虐恋

  一

  本庁前には人があふれている。竜人がやはり一番多いが、彼らの緑色の鱗に混ざって狼人や虎人の灰色や縞模様の毛皮、鳥類の羽毛まで見えた。[[rb:連合 > アライアンス]]の統治するほぼ全種族が街に出ているようにも見える。

  今日は年に二度ある式典の日だった。各星系を統治する[[rb:連合 > アライアンス]]の長が表に出るこの日ばかりは武官も文官も官僚たちは全員勢ぞろいで、本庁に顔を出す。そして本庁前の広場で、各種族の首長たちが集まって、彼らと共に平定を祝うのだ。清酒、紹興酒、ワイン、宇宙酒、その他もろもろの酒を酌み交わして。

  平定……ね、と[[rb:元 > ユァン]]=ガンター・[[rb: 子墨 > ズームォ]]は全身を覆う[[rb:胶 > ゴム]]質の素材でできた[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]の下で笑った。

  その平定の下に、どれだけの権力勾配や不均衡があるかを見ないふりをして、表向きの平和は保たれているか、ということを子墨はよく分かっている。

  彼は本庁を囲むように立ち並ぶ高層ビル群の一角、その屋上に立っている。二本の足の他、尻尾を支えにして、まるで三脚のような姿勢。簡易光学迷彩機能によって彼の姿は肉眼では薄い靄そのものにしか見えない。彼が身じろぎするたびに、靄が揺らめいたが、それだけだ。

  「……暑いな」

  [[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]は通気性というものを度外視しているので、日光にさらされている子墨は、まるでサウナに入っているような気持ちになる。行き場のない汗が蒸れて、[[rb:胶 > ゴム]]の甘い香りがむっと立つ。

  頭部も[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]で全て覆っている。だから、自分の汗臭さも[[rb:胶 > ゴム]]の匂いも余さず鼻腔を犯していた。

  通信が入る。

  「こちら[[rb:白俊熙 > バイジュンシー]]。位置に着いた。アリーナ席、見えてるー?」

  少年のように張りのある声だ。

  [[rb:白 > バイ]]=クライン・ [[rb: 俊熙 > ジュンシー]]。

  潜入と暗殺のプロ。

  子墨は予定座標――あるビルに目を向ける。見えてる、と聞くわりには、何も見えない。窓には忙しなく人の動くオフィスが見えるだけだ。

  「[[rb:好的 > ハオダ]]。何も見えていない」

  「素晴らしい技術! それじゃあ仕事を始めよう」

  瞬間、子墨の視線の先のオフィス内部で、閃光が迸った。

  目つぶし。

  「[[rb: 杀 > シャ]]」

  と呪詛を放つ道士のように、息を漏らす音が聞こえる。

  人影がはるか先の窓の中で倒れていくのが見える。

  それはほぼ一瞬の出来事だった。

  すぐに部屋内の動きが止まり、

  「ほぼ殲滅」

  と声が聞こえる。

  「ほぼ?」

  聞き返すと、わざと甘えたように、

  「屋上に一人走ってる。[[rb:把兄 > にいさん]]の分。久々にやってみせて?」

  「真面目に仕事をしてくれ……」

  言いながら、子墨は屋上に視線を向ける。

  曲げた左腕に、右腕を乗せるようにして屋上に指先を伸ばすと、展開した。手の平が縦に割れて、手首が裏返り、銃口が露わになる。

  視界に銃口の照準器が現れる。

  [[rb: 軍用義肢 > アサルト・プロステート]]。

  [[rb:連合 > アライアンス]]が目下開発中の、武装義肢である。

  子墨が担当するのは、撃ち漏らしの排除であった。

  ちょうど、背広を着た大柄な竜人が屋上に現れたところだ。

  ひどく狼狽した様子で、何事かを怒鳴っている。しかし子墨がそれを聞くことはない。

  彼に視線を向けたまま、子墨は尻尾と両足に力を込めて、引き金を引いた。無音瞬間的に真空フィールドを発生させて銃声をかき消す、遠距離暗殺に特化した仕様。しかしすさまじい反動。三脚の身体が受け止めるが、腕が肩の付け根から吹き飛ぶような痛みにはまだ慣れない。

  「ぐ……っ」

  一瞬して、竜人の頭蓋が弾けたのが見えた。

  通信。

  「大当たり! 首なし死体のできあがりー! 最高、かっけーっ!」

  とはしゃいだ声だ。

  屋上の入り口を見ると、先ほどまではいなかった人影がある。

  非常に小柄で、ナイフらしき武装を持っている。

  子墨と同じように、頭の先から爪先までを[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]で密閉しているから表情は一切分からない。だが、一対多の密室戦闘を無傷でこなしたようで、動きにはけがをしたようなそぶりはない。

  俊熙である。

  彼はぴょんぴょんと跳ねながら、全方位に手を振っていた。あちらからではこちらが確認できないのだろう。子墨が一瞬だけ光学迷彩を切ると、すぐにこちらめがけて手を振ってくる。放熱中の右手を振り返してやって、迷彩を付けなおす。満足したのか、向こうもすぐに光学迷彩を入れて姿を消した。

  「この後は[[rb:掃除屋 > ライニグング]]に任せて帰宅になる。大人しくしておけ」

  「は~い」

  「式典が始まるからちゃんと見とけよ。お偉いさんの顔くらい覚えとけ」

  [[rb:掃除屋 > ライニグング]]というのは、こういった仕事の後始末をする者たちだ。子墨や俊熙の行う仕事が白日の下にさらされないのは、彼らの功績である。

  言いながら、会場に目を向けると、官僚たちが集まり始めていた。

  子墨は文官の中からすぐに自分の主を見つけ出した。

  老年の竜人で、淡い紫の官僚服に、深い紫の外套を恰幅の良い身体に纏っている。留め具にはアメジストの装飾が揺れている。撫でつけた短い白いたてがみや、よく磨かれた角が落ち着いた光沢を放っていた。

  [[rb: 楊 > ヤン]]=スミス・[[rb: 浩然 > ハオラン]]だ。丸々としていても、それがなぜか貫禄として成立する稀有な男である。

  隣にはすらりとした長身に、白い髪と髭を伸ばした竜人が厳しい面持ちで立っている。浩然よりも下位の、淡い赤の官僚服に、蘇芳の外套を纏っている。

  事務局副長にして、[[rb: 星間記録 > ログ]]の 管理者、[[rb: 黄 > ホアン]]=クラーク・ [[rb: 建 > チェン]]だ。

  宇宙統治を行う[[rb:連合 > アライアンス]]文官、事務局のツートップ。

  「ほら、仕事仲間の黄建もいるぞ」

  「こっちが一方的に知ってるだけじゃん。あの人は策定と命令だけど、こっちは実働だもの」

  声が言う。

  「あ、やっぱり、武官の方にもあいつが来てる」

  嫌悪が漏れている。

  俊熙の嫌悪の先は、[[rb: 呂 > ルゥ]]=ビースドルフ・[[rb:安幾良 > あきら]]だ。下級武官の鎧に、儀礼用のマントを纏っている。見るたびに感心するほどの巨体で、見つけるのには苦労しない。

  やっぱりも何も、彼の監視も仕事である。

  黄=クラークたちは、よほど熱愛しているようで、熱愛しているからこそ呂=ビースドルフも監視対象になってしまっている。黄=クラークが独身でいたならば、あるいは二人の関係が真摯さに欠けていたならば、監視対象は星間記録の管理者だけだったのだろうけれど。

  子墨の基本の業務は、二人の監視及び、有事の際の暗殺である。[[rb: 星間記録 > ログ]]の管理者である黄=クラークは、楊=スミスの裏稼業に関わっているため、何かあれば消すしかない。そしてその寵愛を受ける呂=ビースドルフも同様である。

  「黄建と呂安幾良、やるならどっちに行く?」

  「二人同時は無理だけど、単体ならどっちでも」

  ただ、と声は続く。

  「黄=クラークとはやりたくない」

  「へえ?」

  「あの人、視線の動きが変だ。絶えず何かを警戒しているし、何かあったときにどのように逃げるか、できれば恋人を助けるにはどうすべきかっていうのをずっと考えてるみたいな目の動きをしてる……。奇襲ができない。最善を取ることを諦めて、ノータイムで次善の策をすぐに打てる相手が一番怖い」

  「正解」

  と子墨は言った。

  「はぁ? 正解って?」

  「これで老人だし戦闘経験がないってんで、黄建を殺しやすいっていう奴じゃなくてよかったよ」

  「くだんねー、意味なしテストだよ。言っとくけど、こっちの仕事は俺の方が先輩だから。いくら[[rb:把兄 > にいさん]]でも不敬だぜ。逆に俺を[[rb:把兄 > にいさん]]って呼んでくれてもいいんだぜ?」

  子墨は鼻で笑った。

  「お前はずっと俺の[[rb:把弟 > おとうと]]だよ」

  やがて迎えの車が来る。目立たないモダンスタイルの車で、陸と短時間の飛行が可能なタイプ。

  子墨は回収され、殺戮現場に残っていた人影との通信も切れた。

  後部座席に座ると、運転手が一礼して、

  「失礼します」

  と子墨の首に触れた。[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]の視界補助が落ちて、ほとんど視界がなくなる。先程まであれだけ自由に動かせていた[[rb: 軍用義肢 > アサルト・プロステート]]も急激に重くなる。マスクの呼吸制御が始まって開口部が閉じられ、鼻の部分に空いた呼吸穴だけが息の要になる。

  注意深く意識をするが、やはり苦しく、子墨は息を漏らした。

  「ふ……っ、ふうう……っ」

  運転手の手が丁重さを失わないまま、子墨の腕を後ろに回し、硬い輪を手首に回す。手錠だ。子墨は身体を固くするが、抵抗せず、鍵がかけられる音を静かに聞く。そしてすぐに彼の丸太のような太腿にも鉄製の枷がはめられた。

  後ろ手に拘束され、膝を閉じた状態で子墨は固定される。

  子墨の反乱防止である。

  この拘束で子墨の心臓は跳ねる。

  ドアが閉じる。車が走り出す。

  車内は静寂で、通信もない。

  蒸し暑く甘い拘束の中、子墨は身じろぎする。

  じわ、と子墨の秘所が熱を持ち始めてきたのだ。

  「……むぐ……」

  どことも知れず、まるで奴隷か何かのように運び出されていく。

  腰の据わりがいいところを探して、膝をすり合わせるようにすると、[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]の下で縦割が擦れて、じわりと濡れるのが分かった。それは汗ではなかった。

  「っふ……」

  各種の機能が落ちた[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]は鬱陶しく重い被覆でしかない。先程までの軽快な動作補助はなくなり、子墨は暑く息苦しい暗闇の中で、目的地に着くのを待った。[newpage]

  二

  子墨には血の繋がらない弟がいる。ついさっきまで一緒に仕事をしていた少年竜人だ。主な仕事は潜入と暗殺。

  彼は遺伝子コーディネイトを行われた子供だった。世代的には呂安幾良の次にあたる試験管ベビー。行われた操作は、身体成長の制御である。軽く細く小さく、彼の身体は幼いまま時が止まり、大人になった。

  通常は遺伝子コーディネイトを受けた子供も、他の子供と一緒に[[rb:人口調整機関 > ヴァイゼンハオス]]で育つはずだが、潜入・暗殺という用途の特殊さから、隔離状態で育ったという。

  呂安幾良への嫌悪は、子墨からも理解できる。

  そして彼は楊=スミスの私兵の一人として人生をスタートさせたのだった。

  なぜ文官である彼の私兵になったのだろう? と子墨は思わずにはいられないが、誰かに聞くわけにもいかない。おそらく、出生の計画からして、楊=スミスが関わっているのだろう。

  だから俊熙には友人はいない。兄弟もいない。正式な養育者も分からない。

  ただ一人楊=スミスだけが家族であり主だった。

  子墨が家族に加わったのはほんの数年前である。

  ◇

  「到着しました」

  とドアが開く。

  外気が[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]越しに撫でるもどかしい感覚に子墨は身体を震わせる。

  不自由な拘束のままで、何とか車を降りる。足裏が柔らかな感覚からすると、土の地面だ。おそらく郊外の別宅。充満する[[rb:胶 > ゴム]]の匂いにまぎれて、草の匂いがした。

  「立てますか」

  「う……うむ」

  立てはするが、太腿を拘束されているせいで満足に歩けない。膝だけで、よちよちと歩くしかない。

  運転手に肩を支えられて歩ていると、声がかけられる。

  「や。遅かったね、[[rb:把兄 > にいさん]]」

  「は……早かったな」

  開口部が閉じられているために、マスクの伸縮性が許すだけしか口を開けることができない。子墨の声がくぐもっている。

  声をかけたのは俊熙だ。立地のためか早く着いたらしい。

  子墨の視界では彼がいまどのような格好をしているのか分からない。[[rb:把弟 > おとうと]]に今の惨めな拘束を見られていることに、子墨の身体がかあっと熱くなる。縦割がひくつく。

  少年竜人は子墨の頬に無遠慮に手を当てた。

  「んんっ」

  「機能ロストに物理拘束? もうそういう時期じゃないでしょ。楊浩然に俺から言ってあげようか」

  「だ、……だめだ、俺が裏切ろうと思えば、あの方は失脚するから」

  「忠犬ぶりすげー」

  ぱしん、と音が弾けた。

  「くうっ!」

  装甲の隙間、尻の付け根をはたかれて子墨は高い声を上げる。欲情の響きで湿った声だった。

  反射的に前かがみになり、きゅっと両脚をくっつけて、もじもじとやってしまう。

  「あのさあ、運転手さんの前で感じないでくんない? これこそスキャンダルだと思うんだけど」

  「う、……す、すまない……」

  慌てて上体を持ち上げる。

  運転手はいつの間にか肩を離していた。

  「私はこれで失礼します」

  「はい、[[rb:把兄 > にいさん]]をありがとうございました」

  数秒して、車が走り去る。

  これでどことも知れない場所に、[[rb:把弟 > おとうと]]と二人で残されたことになる。

  [[rb:把弟 > おとうと]]に腕を支えられて、再び、不自由な視界に動きでよちよちと歩き始める。手の感じからして、俊熙もまた[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]を脱いでいないようだ。

  「ん……っふ……」

  身体が[[rb:胶 > ゴム]]の中で蒸されている。汗で生地が鱗に張り付いて動きにくい。首元からは絶え間なく自身の匂いが立ち昇ってくる。汗と、皮脂と、[[rb:胶 > ゴム]]の匂い。

  「次、段差」

  「む……」

  言われて、高く足を上げて段差を登ると、俊熙が扉を開けた。

  重い音がして、屋内に入る。

  扉が閉じ、錠が落ちるかちゃりという音がした。

  「頭下げて」

  言われるまま頭を下げる。立ったまま身体をくの字に折った姿勢。

  拘束はそのままだし、後ろ手に手錠がかけられているから、それなりにきついが従わざるを得ない。

  「うんうん、ありがとう」

  俊熙は言って、子墨の角を撫でた。

  「ふうぅっ……」

  神経が通った敏感な箇所で、しかも昂っているからいつもよりも感じてしまう。俊熙の細い指がつるつると[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]越しに撫でていくのは、脚ががくがく震えるほどに気持ちがいい。

  「装備、外すぞ」

  がらら、と身体から外装が乱暴に外れる。

  尻尾や四肢の[[rb: 軍用義肢 > アサルト・プロステート]]に取り付けられていた装甲が、音を立てて落ちる。腕の装甲も問題なく落ちた。

  [[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]のぴったりとしたボディスーツ一枚だけになる。

  一気に体が軽くなる。

  解放感と、肌寒さが[[rb:胶 > ゴム]]を撫でていく。

  「ああ……っ!」

  ざわざわとした感覚が尻尾から首までを走る。

  鱗にぴったりとくっついて、身体全体の輪郭が露わになった格好だ。

  「ふふん、今日はお疲れさまでした。[[rb:把兄 > にいさん]]」

  角を生温かいものがぬるりと滑る。

  舌だ。

  敏感な器官をにゅるにゅると弄ばれる。舌で舐められ、聞こえるように音を立てて[[rb:亲 >キス]]される。穏やかな快感で、皮膜の下で子墨はぎゅっと目を閉じた。

  これは労いではない。

  作戦を終えた後、俊熙はいつも攻撃性を持て余す。戦闘用に調整された精神が、日常に戻るためにはいくつもの手順を踏まなくてはならなかった。

  ずっと昔は無理やり薬で高揚を鎮め、副作用で無気力になったり、高揚に任せて部屋中めちゃくちゃにしていた。

  他人に向けるために整備された高揚を、俊熙は別の形で出力させて飼いならさなくてはならなかった。

  そして今のところ、俊熙の攻撃性を子墨が受け止めることで、彼は静かな眠りを手にしていた。

  俊熙が攻撃性を子墨に向けるとき、始まり方はいつだって甘い。

  「[[rb:把兄 > にいさん]]、膝をついて、壁に頭を付けて?」

  疑問形のアクセントを付けながら、有無を言わせず俊熙は子墨に壁を向かせる。

  子墨は膝をついて、恐る恐る壁に額を付ける。膝が硬い床に当たるが、仕方がない。これで俊熙と子墨の頭の高さが揃った。

  後ろから、子墨は[[rb:把弟 > おとうと]]に抱き締められる。

  「っ……」

  先程からの拘束もあって、感じてしまう。

  じゅん、と秘所が蠢いた。ぴったりと[[rb:胶 > ゴム]]が張り付いているようになっているせいで、むしろ縦割が強調されているのだ。

  「抱き締められて感じてるな?」

  と俊熙が囁く。

  子墨の反応を聞かずに、彼は指で割れ目をなぞった。

  「ひあっ! ああっ! あっ!」

  充血して膨らんだスリットをゆっくりと指が往復する。

  ずっと腿を擦り合わせるもどかしい刺激しか得られなかったので、声を殺すこともできない。

  快感で腰を引くが、

  「逃げんなって」

  「あっ、あう……っ!」

  膝で押し出されるように戻される。

  指にスリットが押し付けられて、子墨はびくびくと身体を跳ねさせる。

  もう少しで絶頂できる、そう思ったとき、俊熙は手を離した。

  「うぅ……っ!」

  「まだだめ」

  俊熙は優しく、船形にした手を割れ目に被せる。

  刺激を与えないようにしている強さではあるが、手の柔らかな圧迫や、触れ合った[[rb:胶 > ゴム]]の感触で子墨は感じてしまう。

  「はううっ……!」

  「作戦始まってから、今までトイレ行ってないよな?」

  「え……?」

  「ここでしろ」

  命じる声は冷淡だが、確かに熱情がある。

  「こ、ここでって……このまま?」

  「そうだ。いやならいいんだぜ。このまま終わったって」

  「う……」

  まだ子墨は絶頂を迎えていないし、俊熙の攻撃性だって収まっていない。

  覆面の下で、子墨は唇を噛んだ。

  「わ、分かった……」

  「ん、いい子だな」

  縦割に手を添えられたまま、尿意を導くために子墨は目を閉じた。

  作戦行動中はトイレに行けないために、[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]の股間には排泄用のパッドが取り付けられている。だから尿をしたところで装備的に問題はない。

  また、通常、排泄は常識の枷が強力に取り付けられており、トイレではないというだけで無意識にストッパーをかけてしまう。しかし訓練には[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]を付けている状態で小用を足すという過程があり、ある程度ではあるが子墨からそのストッパーは取り去られている。

  しかし、俊熙に手を添えられたまま……!?

  そんな訓練はない。

  手の中に小用を漏らすことと変わりがないではないか。

  この大事な[[rb:把弟 > おとうと]]に手を添えられたまま、子墨は必死に尿意を呼ぶ。だが、膀胱に溜まった熱を流すことがどうしてもできない。

  数度、子墨は縦割を引くつかせて、狼狽えた声で言った。

  「で、出ない……!」

  「あん?」

  「したいのに、出なくて……」

  「何だ、じゃあ手伝ってやるよ」

  言って、俊熙は空いているもう片方の手を子墨の下腹に当てた。

  まさか、と思った瞬間、俊熙の手が下腹にめり込んだ。

  そしてそれは閾値を超す。

  「あっ……!」

  じょろ……。

  尿が一瞬だけ漏れる。

  反射で筋肉を締めるが、もう抵抗ができない。

  パッドを通じて分かったのか、俊熙が言った。

  「ん、出たな」

  手の平が下腹により深くめり込む。

  温かな波が、すぐに筋肉の塀を乗り越えて溢れた。

  「あっあっ……、あうぅっ……」

  じょろ、じょろ、じょろ……。

  じょろろろろろ……。

  「なんだ、すげー勢いじゃねーか」

  「ふあああ……」

  熱い流れをせき止めようとしても、焦燥を流して弛緩する。

  [[rb:把弟 > おとうと]]の手に漏らすという排尿の、背徳的な快感。

  気の抜けた息とともに、すべて出し切ってしまうまで、膀胱はもう止まらない。

  尿が全て終わるまで、俊熙は手を添えている。

  「うあ……あ、だめだ、汚いから……」

  「ほら、パッドが膨らんできた。これ全部[[rb:把兄 > にいさん]]のションベンだぜ」

  「う、うう……」

  ぶるりと排泄の震えまで[[rb:把弟 > おとうと]]の手の中だ。

  尿を吸って膨らんだパッドを秘所に押し付けられる。その上から揉まれ、熱を持って湿った吸収剤がぐちゅぐちゅと音を立てた。

  情けなさと背徳感で泣きそうになる。

  また秘所から体液が漏れる。

  「ん……ションベンまみれのパッド当てられて感じてんの?」

  「あ……それは……!」

  「じゃ、このままイっちまえ。メスザーメンもションベンも変わらんだろ」

  柔らかな吸収剤越しに、秘所を愛撫される。

  感じるあまり床に着いた膝が揺れる。

  先ほどから寸止めを食らっていたのだ、子墨はすぐに絶頂を迎えそうになる。

  「あ……っ、んああ……っ!」

  そのとき、[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]のマスクの鼻に空いた呼吸口を塞がれた。

  他の機能を落としているから、息を吐くことも吸うこともできない。

  「ふっ!? んんっ! ぐっ! んんーっ!」

  [[rb:呼吸控制 > プレスコントロール]]の壮絶な苦しさ。わずかにマスクが膨らんで、使い終わった空気をマスクの中に捨てることができるが、それで苦しさがマシになるわけではない。

  子墨の浅い、悪あがきのような呼吸で、彼のマスクはわずかに膨らみ、そして吸い付く。

  下半身は変わらず吸収剤でもてあそばれ、顔は呼吸を奪われ、表情さえ隠され、窮屈な拘束の中で、爆発するように子墨は絶頂する。

  「んんんんんっ!! んあっ! ああっ! はあああっ!」

  瞬間、俊熙が手を離した。

  細い呼吸口から息を捨てて、飢えた酸素を求める。頭の中が洗い流されていく清浄感と虚脱、そして射精。快感と解放の混乱の中で子墨は絶頂する。

  途端、ぱちん、と投影機の電源がついた。

  はっとしたように子墨の動きが止まる。

  玄関にホログラムが現れた。

  丸い身体。紫の官僚服に外套。楊=スミスである。

  二人の背後に現れた彼は、額を押さえて、

  「……お前ら、こんなところで盛るな」

  と呆れたように言った。

  「や、――楊浩然!? す、すみません、その……ぎゃあっ!」

  背を向けている状態の子墨は前を向こうとするが、射精もあって前は前で見せられない状態だし、そもそも膝立ちに後ろ手の手錠という状態で、振り向くか振り向かないかの迷いが一瞬で行われ、結局その場に転がってしまった。

  拘束のない俊熙だけがその場に立っている。[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]で全身覆われてはいるが、機能を落としていないので、子墨よりずっと楽そうである。

  不満げに、

  「いいとこだったんだけど」

  と言った俊熙に、浩然が眉をひそめた。

  「ここは玄関だ。共有スペースだ。来てほしくないことをするんだったら自室でやれ。用意してやっただろう。そうしたら私だってこんなタイミングで来やしない」

  「場所の反応だけ取って、映像は通信のときにしか入れないのが良くないと思いまーす」

  「それは恩情だ! どこの部屋に居るか分からなければ困るが、ずっと監視カメラを付けるわけにもいかんだろうが」

  「あ、そのことなんだけど……」

  「何だ? 用があったんだが、先に聞いてやろう」

  くるりと話題を変える俊熙。

  浩然はゆるく尻尾を回した。

  「[[rb:把兄 > にいさん]]の移動中の拘束っていつ解けるの? もういいと思うんだけど」

  「あ……っ!」

  子墨が身じろぎするが、浩然の方が早い。

  「拘束? ……ああ」

  と、一瞬だけ首をかしげ、すぐに、理解した、という顔をした。

  「移動中の視界制御と四肢拘束だろう? あれの希望だ」

  「はぁ?」

  「うう……」

  と横たわったまま、子墨がうなだれた。

  「外すこともできるし、誤作動が怖いなら拘束を薄くすることもできるがどうするか、と聞いた。あれはそのままでいいと言ったんだ。まあ私はお前らがどんな[[rb:趣味 > ヘキ]]だろうと構わんが……」

  俊熙が恐ろしく冷たい目で子墨を見た。

  視界のほとんどない子墨自身も、肌で分かった。

  用が済んだと見た浩然は、資料を取り出して言う。

  「この間の会合で案件があったんだ。狼人星系E837-F39座標の宇宙海賊の殲滅だ。今日はどの部署も仕事をしてないからな。この隙にこっちで恩を売ってしまうことにした」

  「予定日は?」

  「危険度はほぼ最低ランクだから明日か明後日。気温が安定している星だ。まあ夏のピクニック、という認識でいい」

  「分かった。用事はそれだけ?」

  「? ああ、そうだが」

  「こっち混ざる?」

  と俊熙は足先で子墨をつついた。

  浩然は噴き出した。

  「こっちはまだ仕事場なんだ、次は別のときに頼む」

  通信が切れた。

  投影機の電源が切れ、立体映像が消失する。

  気が逸れたらしい俊熙は、

  「はぁ……」

  とため息をつくと、子墨の拘束を解いて、玄関の床に横たわったままの彼にのしかかった。ため息をつきたいのは子墨の方であったが。

  戦士として鍛え切った子墨は俊熙の身体などは重みの内にも入らない。二人で[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]のまま抱き合う。

  「あーあ、ただの趣味かよ。運転手のおっちゃんも、お前の趣味に付き合わされてかわいそー」

  「趣味というか……[[rb: 軍用義肢 > アサルト・プロステート]]の操作がまだ慣れてないんだ」

  「嘘つけよ。あれだけうまく使いやがって」

  「戦闘と日常は違う」

  「でも拘束で感じてちゃあ説得力がないんだよなあ……」

  二人の鱗の間にある二枚の[[rb:胶 > ゴム]]がこすれ合う。濁った音を立てて、内皮の柔らかな部分を刺激する。

  どちらからともなく沈黙がやってくる。二人は抱き合ったまま、マスク越しに唇を当てた。

  俊熙が勃起している。まだ彼は絶頂を迎えていない。割れ目から二本のペニスが顔を出していた。[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]の極度の伸縮性のせいで、まるでコンドームのように、二本それぞれに被さっている。

  「挿入できそうだな」

  「[[rb:把兄 > にいさん]]?」

  子墨は自身の股間のわだかまっている吸収剤をかき分けて、割れ目を掘り出す。

  二本指で吸収剤を開くと、くぱあ……と縦割が浮かび上がる。子墨はもう片方の手を俊熙のペニスに添えて、自分の深いところにそっと導いた。[newpage]

  三

  小型の[[rb:量子宇宙船 > クオンタム]]は、狼人星系E837-F39座標ぴったりに着陸する。星間旅行技術が一般化したとはいえ、本来は宇宙港から手続きを踏まねばならないはずだが、楊=スミスは専用の宇宙港をいくつか所持していたから秘密裏に飛ぶことは容易だった。

  [[rb:量子宇宙船 > クオンタム]]は個人で所有するには費用がかかりすぎる。それにもかかわらず、楊=スミスは権力ゲームへの投資として惜しげもなく金をつぎ込んでいた。おそらくこの案件だって、法外な値段の袖の下をもらっているに違いない。

  金は技術に変わり、技術は金に変わり、その輪廻の中で、楊=スミスは着実に水面下での権力を強めている。

  一体何が彼をそこまで突き動かすのだろう、と子墨は思った。事務局長としての仕事をただこなすだけでも、高級官僚の莫大な収入がある。それに加え、自分たちのような私兵を所有し、[[rb:量子宇宙船 > クオンタム]]まで引っ張り出して[[rb:連合 > アライアンス]]の処理からこぼれ落ちる案件を取る。

  裏の仕事をやることで何を求めているのだろう。どれだけ金を稼ぎ、酒池肉林に身をうずめても、何が足りないのだろう。

  主の楊=スミスが慈善事業でこのような裏稼業を行っているわけではないだろう。

  子墨は文官ではない。だから楊=スミスに黄=クラークと、官僚たちが上層部で行っている権力ゲームの仔細は分からない。だが、[[rb:連合 > アライアンス]]だけが権力を持つ状況がまずいということだけは分かる。それは子墨の四肢が、あるいは俊熙の心身がそれを示している。

  [[rb:連合 > アライアンス]]は確かに宇宙を平定した。それは間違いない。それは祝おう。だが、その巨人が何気なく踏み出した一歩の下で、虫や草花は踏みつぶされ折られていることは祝えない。

  権力を一枚岩にしないこと。

  オルタネイティブな場が常にあること。

  そういう点で、楊=スミスという汚職官僚を、子墨は強く信頼している。

  子墨が今五体満足――尻尾も含めれば六体――でいられるのも、楊=スミスのためである。

  [[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]の締め付けや、外装の重み、マスクのわずかな息苦しさを感じるとき、自身のあらゆる感覚は楊=スミスがいなければ存在しなかったと子墨はいつも思う。

  あの地獄から、楊=スミスは連れ出してくれた。

  子墨はもうそれだけでいいのだ。

  「準備はできたか」

  「うん」

  近接戦闘用に強化外骨格を纏った[[rb: 軍用義肢 > アサルト・プロステート]]を、黒く光沢を帯びる[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]で覆った子墨。全機能をオンにしているから息苦しくも重くもない。いっそ全裸でいるよりも快適だ。腰には最低限の荷物だけを入れたポーチを付けている。

  対して、俊熙は[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]に、より小さなポーチを太腿に巻き付けている。見て分かる武装は、小ぶりな[[rb:電磁振動 > パルス]]ナイフだけだ。角の先から頭の先まで、子墨と同じく真っ黒。細くしなやかな身体の曲線が隠すことなく晒されている。

  「ずいぶん軽装だな」

  「俺の仕事はこっちだもん」

  マスクの下で、俊熙は笑いながら立てた親指を、逆手のナイフのように首に当てて引く。[[rb:胶 > ゴム]]に包まれた華奢で長い首を、親指が走る。

  宇宙海賊の本拠地は惑星座標4-23。惑星座標は子墨の頭に入っている。この地点からどれだけ進めばいいか、目をつぶっていても分かる。

  二人は[[rb:量子宇宙船 > クオンタム]]を降り、銀色の船体にも光学迷彩をかける。

  そのまま進んでいく。街を避けて、森と山を越える。船内で済ませた補給が尽きる前、水分も栄養も足りた万全な状態で二人は、その座標にたどり着く。

  森の中の開けた位置に、おそらく打ち捨てられたペンションかホテルが並んでいる。そのうちの一棟には、明らかに人が住んでいる形跡があった。規模も小さい。哨戒もいない。なんて雑な仕事。

  楊=スミスの言う通り、まるでピクニックに行くかのような気軽さで、これから仕事を行うことになる。

  「光学迷彩はずっと入れろよ」

  当然だ、という風に俊熙はうなずき、続きを彼が言う。

  「通信も入れない。俺の迷彩は普通よりずっと強いから、うまくやって」

  俊熙は迷彩を入れる。潜入用に調整された高度光学迷彩は、小柄で細い身体をあっという間に森に溶け込ませてしまう。植物や土、背景の建物と見分けがつかないほど。

  それに合わせて子墨も明細を付ける。こちらは近接装備との兼ね合いで簡易的なものだ。よくよく目を凝らせば靄のようにうっすらと姿が見えてしまう。だが、子墨の仕事は潜入ではない。

  「[[rb: 杀 > シャ]]」

  と小さく、俊熙が息を漏らすような音を発した。

  それは彼の儀式だ。

  殺戮の高揚に身を投げていくときの、彼の精神を守るための儀式。

  この音を以て、俊熙は殺戮機械に変わる。

  もう俊熙の姿は見えない。

  量子航行中に決めた手筈通りに仕事を進める。

  この仕事について、四肢を思うように動かし、風が頬を撫でて、激しい音と光がつんざく場を、むしろ彼は愛していた。それはあの地獄にはなかったものだったからだ。

  どんな地獄も、子墨の知っている地獄に比べたらマシだ。

  [[rb:連合 > アライアンス]]の仕事だった。武官だったころ、宇宙生物の駆除業務で、子墨は四肢と尻尾を異星生物に食われたのだった。ただ胴体だけで帰ってきて、莫大な手当てによる延命だけを得られた。

  天井。窓。空。それで子墨の人生は囲われて終わるはずだった。清潔なシーツに埋もれて、戦場を何度も思い返した。

  名誉の中で、退屈に侵されて狂うまで、子墨はただ生存していた。

  その中で、

  お、こんなところに獣がいるじゃないか。

  そう言って楊=スミスはにんまりと笑った。

  その楊=スミスのの笑みを、子墨は忘れることがないだろう。

  ただ生きて、在る、それだけの地獄から連れ出してくれた恩人。

  楊=スミスは子墨を買った。そして[[rb:連合 > アライアンス]]の開発していた[[rb: 軍用義肢 > アサルト・プロステート]]の実験台になった。高い能力を持った武官が、リハビリを終えて再度前線に復帰するための技術を、彼らは求めていた。おそらく、[[rb:連合 > アライアンス]]が倫理的に足踏みしていたのを、楊=スミスが先んじたのだろう。

  神経の接続、筋肉の設計、皮膚感覚の電気的再現――多くの生体実験を行った。神経信号が接続する瞬間の激痛、[[rb: 神経接続具 > アダプタ]]の齎す免疫反応の悪寒、自分の制御を離れる自身の肉体。右腕を上げようとすれば左足がねじれ、右足を上げようとすれば尻尾が揺れる、神経情報の分解と再統合。

  そしてかろうじて実用に堪える[[rb: 軍用義肢 > アサルト・プロステート]]シリーズが取り付けられたときのリハビリで、その事故は起きたのだった。

  小型銃と簡易的な近接武装を施した[[rb: 軍用義肢 > アサルト・プロステート]]を用いた戦闘訓練で、子墨は四肢の制御を失ったことがある。

  楊=スミスの支援する研究所で行われた、アンドロイドとの組み手だ。久々の戦闘訓練で、子墨は心が躍っていた。踊りすぎていた。人工筋肉の拳はアンドロイドをあっという間に制圧する。しかし、四肢が止まらなかった。アンドロイドを鉄塊にするまでその暴力は止まらなかった。

  自分の四肢が、自分の意志を離れていく気味の悪さ。それどころか、子墨があの地獄にいたときにずっと抱えていた破壊衝動を晴らすようなあの暴力。止めてくれ、と子墨は叫んだ。しかし四肢は誰にも止められなかった。

  [[rb: 軍用義肢 > アサルト・プロステート]]は人工的な四肢に神経情報を繋ぐことで動く。ここまでは通常の[[rb: 生体義肢 > サイバネ・プロステート]]と変わらない。しかし、武力を持つために別のセキュリティを落とし込んでいる。

  [[rb:脳紋認証 > プレインプリント]]だ。

  子墨の脳の動きのある特定のパターンを登録する最上級のセキュリティ。しかしどのようなセキュリティにも穴がある。脳波のパターンを読み込まなくてはクリアされないということは、精神状態に大きく左右される。

  四肢は壁を殴り、床を蹴り、子墨の意志を離れて暴力の限りを尽くした。やがて武力制圧が始まる。

  粉砕骨折、器官切断、設備破壊が行われた。詳しい光景を子墨は忘れている――否、忘れているわけではない、思い出そうとすると記憶に靄がかかるのだ。注入された鎮静剤と、精神的外傷と混乱による健忘。

  [[rb: 軍用義肢 > アサルト・プロステート]]の事故として処理され、子墨は不問になった。また、そもそもほとんど違法の実験だったため、楊=スミスが握りつぶして記録もほとんど残っていないだろう。

  しかし一つだけ、子墨は覚えている。

  まざまざと思い出せる。

  あの惨劇は、病室で願っていた俺そのものだったのだ。

  殴りたくて蹴りたくて壊したくてたまらなかった、獣そのものだったのだ。

  だから子墨は、拘束をされていると強く安心する。誰かに生命を握られると力を抜くことができる。自分を獣ではなく、人に繋ぎとめる拘束を求めていた。

  縛られている間は、少なくとも自分の身体が暴発したりしないのだと思うことができる。

  指がただ動く、腕がただ動く、足が、膝が、尻尾が、ただ自分の意志で動くということの幸福と恐怖を子墨は知っている。

  沈思のまま、子墨は制圧しながら建物内を進んでいく。光学迷彩で視認されにくい子墨は、構成員との出会い頭に頸椎を外すだけで摘んでいく。首を押さえ、指で骨と神経と血管をねじり取るように外す。それだけで人は死ぬのである。

  先に潜入した俊熙は連絡や補給を断つために別行動になっているが、それでも二人組というのは心強い。こちらも[[rb:把弟 > おとうと]]が動きやすいように大暴れしておこう。大暴れというには地味だが仕方がない。

  様々な部屋をのぞき、見つけ次第頸椎を外す。一度見つかって殴られたが、それも心地よかった。痛みを恐れない者は最も戦いにくい相手の一つだ。殴った側がむしろひるんで、その隙に摘んだ。

  ホテルの最深部、会食などに使われていたであろう広間にたどり着く。大柄な狼人が向き合うように立っている。青みのかかった灰色の毛並みで、上半身裸だ。下半身には作業着らしき分厚い生地のズボンを穿いている。

  「宇宙警察か?」

  子墨は答えずに、相手を観察する。

  四肢が、粗末な衣服とは不釣り合いなほどに高度なサイボーグ手術を受けていた。[[rb: 軍用義肢 > アサルト・プロステート]]程ではないが、それでも[[rb:連合 > アライアンス]]の統括外にこのような高度な技術があることは問題だろう。声も、酒焼けとかよりも神経の後遺症かもしれない。

  それで、なるほど、と合点がいく。

  この技術が外に漏らさぬように全員殺せということらしい。

  いいだろう。

  親玉はそれなりにできる奴のようなので、光学迷彩は切る。

  相対する。

  体格はそこまで違いがない。

  「お前も手術を受けたのか?」

  やはり子墨は答えない。

  だらりと脱力したようにただ立っている。

  狼が指を広げる。視界の隅で、何かが光った。

  一歩下がる。

  空気を切る軽い音。

  先ほどまで子墨が立っていた箇所に、光が走って、絨毯が裂けた。

  光学迷彩の応用の飛び道具?

  いや、違う。

  子墨は反射的に思い浮かんだ予想を切り捨てる。

  それにしては軽すぎる。

  軽く、見えず、しかし光る。

  金属製の何か。

  右へ一歩。絨毯が裂ける。

  それで分かった。

  「鋼糸か」

  細かい糸が、狼に操られているらしい。

  「目がいいんだな、お前」

  たん、と鋼糸が肩に刺さる。マスキングされた痛覚がじわりと広がる。

  子墨は痛覚のマスキングを切る。

  すさまじい刺突の痛みが走る。

  続いて、膝と肩と肘に鋼糸が刺さる。

  関節を取られた。

  瞬間、身体が振り回される。朽ちかけたテーブルを蹴散らしながら床を転がり、壁に激突する。

  装甲と、瞬間的に硬化した[[rb:基礎外装 > オルタスキン]]が守ってはくれるが、それでも痛みがないわけじゃない。

  普通に痛い。

  痛いな。

  「痛いな――」

  これも、あの安全な地獄にはなかった。

  子墨はにっこりと笑った。しかし狼には見えていない。

  「愚策だ」

  小さく呟く。

  狼は言う。

  「宇宙警察なら上に[[rb:連合 > アライアンス]]がいるんだろう? 俺の名前を出せば……」

  取引を持ちかけようとした狼に、子墨は横たわったまま軽く手を振った。

  「ああ、いい、いい」

  「は?」

  「そういうのしねえから、俺は」

  立ち上がる。

  鋼糸の食い込んだ関節が叫ぶ。

  痛い痛い痛い。

  痛くて痛くて痛くて――泣きそうになる。

  泣きそうになるくらい――気持ちいい。

  秘所が濡れた。

  傷口から伸びる鋼糸を掴む。

  引く。

  「お、――おい、何しやがる! 離せっ!」

  ずるり、と鋼糸が射出されているらしい指を張るようにして、狼が踏ん張る。

  二人の重さは拮抗している。

  鋼糸を掴んだ[[rb: 軍用義肢 > アサルト・プロステート]]の指に糸が深く食い込む。

  骨まで達している。

  しかし血は流れない。

  それが子墨はひどく不満である。

  だって、じゃあこの痛みは俺の痛みじゃないみたいではないか。

  「くそっ!」

  狼が毒づいて、残りの鋼糸が走る。

  肩が削れた。腿が削れた。前腕が削れた。

  [[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]が裂けて、鱗の下の人工筋肉まで露わになる。

  でもどれも子墨の身体には届かない。

  血は流れない。

  子墨は糸を掴んだまま、とんとんと自分の胸を指した。

  「狙うならここだ、三下」

  「狂人が……っ!」

  狼が鋼糸を振りかざした瞬間、彼の四肢が落ちた。

  鈍い音を立てて、首の付いた胴体と四肢の五つの肉塊が地面に散らばる。

  振り上げた鋼糸が散らばって、空中にきらきらと光りながら無力に広がった。

  「は……、なにを、」

  きょとんとした顔で、地面に落ちた狼が言う。

  そこには光学迷彩を切った俊熙が立っていた。

  血まみれである。

  上機嫌に死の相対をしていたときにはすでに、俊熙は彼の後ろにいたのである。

  黒くなまめかしい[[rb: 基礎外装 > オルタスキン]]に包まれ、血を纏った[[rb:把弟 > おとうと]]を見る度に、子墨はいつも目を奪われた。

  彼は狼の胸に足を置いて、吐き捨てるように言う。

  「これでゲームセット。一対一で正々堂々やるわけないだろ。違法手術で手足のほかに脳でも取られてたんじゃねーか?」

  「かっ……、あぐっ!」

  ぐりぐりと靴をひねり、狼を苛む俊熙。攻撃性が昂っているのだ。狼は肩から先、股関節から先のない、芋虫のような姿で呻いている。

  「悪いけど、お前はすぐには殺さない。殺すまでが仕事だけど――まあ、この後の仕事に繋げるためのサービスってわけ。[[rb:把兄 > にいさん]]、立てるよな」

  「あ、……ああ」

  「つーか痛覚切れよ。何で戦闘中にムラムラしてんの? 神経疑うわ」

  「こ、これは、つい」

  俊熙が噴き出した。

  「ついって! しかたねー[[rb:把兄 > にいさん]]! ほら、この負け犬持って。俺はこっち持つから」

  俊熙は狼から足をどけて、散らばった四肢を拾う。身体の空いた狼を抱えあげる。流石に軽々とは持てない。

  「は、離せ……!」

  逃げようとするが、[[rb: 神経接続具 > アダプタ]]がついているきりの、手足のない胴体では這うこともできない。うごうごと蠢動するだけだ。

  「ちょっと大人しくしろ」

  「っ!」

  子墨は頭の毛皮を掴み、頬を張った。激しい音が弾ける。

  痛みよりも、恐怖と衝撃で相手の意欲を削るのだ。

  狼の瞳の光が折れたのを見た子墨は、ポーチから黒いベルトを取り出す。

  「すぐに殺さないから、舌を噛んで自殺ってのも封じないとな」

  黒いベルトを広げる。棒状のマウスピースが中心にあり、ベルトはその両端から複雑な形に広がる。

  まずマウスピースを噛ませる。一瞬抵抗しそうなそぶりを見せたが、大人しく従ってくれる。別に抵抗されても殴ればいいだけなのだが、面倒がないのはいいことだ。

  次に後頭部にベルトを回して止める。そして残っているベルトで、口吻をまとめるのだ。開閉の動作を奪い、言葉を封じる。

  「っふ……む、うぅ……」

  抱き上げると、屈辱なのか狼が呻いた。半端に開いた唇の端から、唾液がこぼれて子墨の肩を濡らした。[newpage]

  四

  [[rb:量子宇宙船 > クオンタム]]に戻ると、緊張と疲労で意識を失った狼を保管庫の[[rb:平面牢 > フラットコフィン]]に収監する。

  最低限の処置だけして、四角に組んだ骨組みを覆うように張られている二枚の[[rb:胶 > ゴム]]製フィルムの中に入れる。穴から頭だけを出した状態で、フィルム内の空気を抜く。黒い平面にぴったりと狼の輪郭が浮かぶ。管理用の首輪を巻いて、首から入る空気を遮断して、拘束が完了する。

  これで狼は二枚の[[rb:胶 > ゴム]]に挟まれて密閉され、完全に拘束されたことになる。

  民間に降りている遊び用の器具――子墨の文化圏では[[rb:真空床 > バキュームベッド]]という名で流通している――では、首の隙間から空気が入るので脱出できるが、こちらは完全な密封を実現しているのでどれだけ暴れても、外から解除しない限りは抜けられない。

  宇宙航行は空間も資源も限られている。その中で効率的に罪人を保管するための拘束方法だ。航行中に何かあればこのまま見捨てられることになる、文字通りの[[rb: 平面の棺 > フラットコフィン]]。

  そして子墨たちは作業を終えると、自身のメンテナンスに移る。

  はずだったのだが。

  [[rb:量子宇宙船 > クオンタム]]の寝室で、四肢と尻尾を外した子墨をベッドに置いた俊熙は、自分の[[rb:基礎外装 > オルタスキン]]も脱がず、枕元に腰かけている。子墨の[[rb:基礎外装 > オルタスキン]]はところどころ裂けていたが、四肢を外すときに一緒に切り取ってしまった。黒い繭のような格好で、子墨はマスクも外さずにいる[[rb:把弟 > おとうと]]を見上げている。

  タオルケットをかけるとか、自分の身体を洗いに行くとか、そういった動作に移らず、ただ見下ろされている。表情がよく分からないが、不満げに見える。

  「……お、おい……?」

  耐え切れず声をかけると、彼は答えずに子墨の[[rb:基礎外装 > オルタスキン]]に覆われた右肩からのぞく金属の端子、[[rb:神経接続具 > アダプタ]]に唇を付ける。

  神経を食まれているような、強い痺れに似た痛みが走った。

  「っぎっ!」

  隠すことができずさらけ出されている秘所が、ひくん、と切なげに収縮した。痛覚さえ甘やかで、漏れた愛液が排泄用パッドに染み込んでいく。

  俊熙は唇を離すと、子墨に身体を乗せる。

  「あのさあ、ああいうことやめてほしいんだけど」

  「あ……ああいうこと?」

  「お前は痛くて楽しいかもしんないけど、俺は楽しくない」

  「だ、だが、そういう手筈だっただろ」

  基本は光学迷彩を付ける。

  迷彩を付けていてもある程度手こずりそうな相手には、子墨は迷彩を切って一対一に持ち込む。そして俊熙はそれを見つけ次第奇襲をかけること。

  俊熙が手こずる場合は、その場からの脱出を基本とする。

  しかし、俊熙は舌を鳴らした。

  「手筈なだけだ。お前はただ痛くされたかっただけじゃねーの」

  「それは……あぅっ」

  俊熙が角を食んだ。刺激のせいで言葉を飲み込んでしまう。

  「お前の身体をいたぶっていいのは俺だけって、ちゃんと分かってもらわねえと」

  「ぐっ!」

  こつん、と俊熙の爪が[[rb:神経接続具 > アダプタ]]をつつく。敏感な神経回路が刺激されて痛みが走る。

  「ほら[[rb:把兄 > にいさん]]、首上げて?」

  言われるまま首を上げる。[[rb:基礎外装 > オルタスキン]]のいくつかの機能が落とされた。筋力補正がなくなり、身体全体が重くなる。視界や呼吸は無事だが、彼の目の前に黒い塊が押し付けられる。

  バイザーのような長方形のレンズが付いた、[[rb:胶 > ゴム]]の塊だ。

  「[[rb:防毒面具 > ガスマスク]]……か?」

  「[[rb:对 > ドゥイ]]」

  頷いて、俊熙は[[rb:防毒面具 > ガスマスク]]を裏返す。吸気口のフィルターからは[[rb:胶 > ゴム]]のチューブが伸びている。また、マウスピースもついている。明らかに実用品ではない。特殊嗜癖向けの一般流通品だ。

  裏側に伸びていくチューブを、呼吸口から直に鼻腔に入れられる。

  「危ねーから暴れんなよ」

  「っ! んっ、ふぐ……、んん……!」

  空気にしか触れることのない鼻腔の奥の粘膜を、[[rb:胶 > ゴム]]のチューブに踏み荒らされる。つんとした神経性の痛み。ない腕を動かそうとして肩が跳ねる。マスクの下の子墨の目が涙を帯び始める。

  それを覗いている俊熙が、にやりと笑ったのが[[rb:基礎外装 > オルタスキン]]越しでも子墨には分かった。

  そして、だから彼の雄溝がまた蠢動した。

  「っくぅ……!」

  チューブが全て入る。鼻先に[[rb:防毒面具 > ガスマスク]]が触れる。

  次はマウスピースだ、と自然に思った子墨は命じられてもいないのに、口を開けてしまう。竜人の口吻に合わせて奥行きの長いマウスピースだ。全てくわえると、口吻の半分ほどが埋まる。

  「ん……」

  子墨の前面を覆い、後頭部は数本のベルトで密着される。

  呼吸口にチューブが繋がっているため、苦しくはあるが、まだ外気を取り込める安心感が残っている。

  拘束感を確かめるように、マウスピースをむぐむぐとやってみていると、俊熙は呼吸口の隣にある穴にポンプを差し込んだ。

  しゅこ、しゅこ、と彼の手が空気を送り込むと、子墨がくわえているマウスピースが膨らみ始める。

  「んぐっ! あうぅ……っ!」

  口内いっぱいにマウスピースが膨らむ。丸めてある牙は破損させる心配はとりあえずないはず、と子墨は言葉を奪われた興奮の中で、場違いに冷静な判断をした。

  気管を[[rb:胶 > ゴム]]の甘く苦しく淫らな匂いが占拠する。何しろ鼻腔まで[[rb:胶 > ゴム]]が通っているのだ。

  俊熙に頭を抱き締められる。優しい感触に溶けそうになっていると、頭の後ろでちゃりちゃりと軽い金属音がした。

  [[rb:防毒面具 > ガスマスク]]の留め具に錠が下ろされたのだ。

  俊熙は子墨の身体から降りる。

  これで拘束は終わりか、と彼は一瞬だけ拍子抜けしたが、

  「んんっ?」

  俊熙は[[rb:基礎外装 > オルタスキン]]の股間部を開けた。

  性器が露わにされて、子墨は声を上げるが、止めてくれるわけもない。

  「はは、やっぱ感じてんな。[[rb:把兄 > にいさん]]って前から[[rb:受虐狂者 > マゾヒスト]]だったのか?」

  聞かれても呻くだけで答えられない。

  助かった、と思ったのもつかの間、鈍い痛みが雄溝に広がった。

  「まだ動くなよ、怪我しても知らないからな」

  何かがスリットに入ってくるのだ。痛みに程近い違和感が、つるつると体内に侵入する。本当に怪我をしてしまいそうで、子墨は身体を硬くした。

  そして下腹の中で何かが膨らみ始める。腸でもなく、もちろんスリットの内部でもない。膀胱だ。

  思った瞬間、抗いようなく、温かいものが尿道を流れ始めた。

  「んっ!? あうっ!」

  じょろろろろろ……。

  先日の玄関の焼き直しのようだが、これは自分の意志を介さない。[[rb:導尿管 > カテーテル]]による強制的な排泄だった。

  「んん……、ふうう……」

  管を通った尿は、彼の横たわるベッドの下に置かれた瓶にこぼれていく。ここまでの強行軍で溜まっていたのだろう、瓶はすでに三分の一ほど溜まっていた。

  「よく出たな。偉い偉い」

  まるでトイレトレーニング中の子供をあやすような猫撫で声の俊熙に頭を撫でられる。屈辱と快感で子墨の精神がほぼ無理矢理にとろかされてしまう。スリットからとろとろと粘液がこぼれる。

  彼は長いゴムホースを取り出し、[[rb:防毒面具 > ガスマスク]]の吸気口に繋げると、先端を尿の溜まる瓶に繋げられる。空気を吸うと、重たく、ごぼぼぼ、と低く泡が弾ける音がして、[[rb:胶 > ゴム]]と尿の匂いを帯びた空気が流れ込む。呼吸器が二つの匂いに犯されていく。

  尿臭を嗅がされて震えている子墨のバイザーを、俊熙は操作する。バイザーはベッドで悶えている子墨の映像を映し出した。

  頭上からの映像だ。

  [[rb:胶 > ゴム]]の繭のような子墨の股間から、[[rb:導尿管 > カテーテル]]が伸び、瓶に向かう。瓶は尿の流れる管と、外気を取り込む管、そして[[rb:防毒面具 > ガスマスク]]の三又につながっている。

  子墨が息を吸えば、外気を取り込む管から吸気が取り入れられ、尿に浸かった先から気泡になる。その尿臭の染み込んだ空気を吸うことになる。

  俊熙は、更に流線形をした器具を、これ見よがしに取り出して見せてくる。[[rb:肛門塞 > アナルプラグ]]だ。潤滑液を纏って鈍い光沢がある。

  にゅるにゅるとぬめる先端が弄ぶようにスリットを浅く刺激する。しかしすぐに抜かれてしまう。

  浅く入れられ、すぐに抜かれるというもどかしい刺激。

  「うう……ふうっ、んんん……っ」

  快感を逃そうとするが、手足がないので身体をうねらせるしかない。そして、精一杯の動作も、三人称の映像として、惨めな自分の姿を見せられてしまう。

  「あう……、おお……っ! いえへ……っ!」

  もう入れて、と言おうとしたが、言葉にならない。

  しかし伝わったのかどうか、俊熙はそっと子墨の頭を撫でると、ゆっくりと[[rb:肛門塞 > アナルプラグ]]をスリットに沈めた。

  「おおっ! んおおおーっ! おおーっ!」

  みちみちと肉を広げて侵入してくる、硬い器具に子墨が声を上げて軽く絶頂した。

  しかし全て入ると、再び[[rb:基礎外装 > オルタスキン]]が閉じられて、逃げ場がなくなってしまう。

  下半身の開口部からは二本のコードが伸びているのが子墨にも見えた。。

  一本は[[rb:導尿管 > カテーテル]]のチューブだが、二本目はなんだ?

  疑問に思うのもつかの間、[[rb:肛門塞 > アナルプラグ]]が震え始めた。

  「んぅっ!? んんんっ!」

  微弱な振動だ。これで絶頂はできない。

  しかし、充血したスリットを追い詰めるにはこれで足りる。

  「狼の方の処置をしてくる」

  と俊熙が言って、頭から手を離す。

  額には、鍵が光っていた。[[rb:防毒面具 > ガスマスク]]の錠を閉じた鍵だろう。

  「その鍵、落としたらお仕置きだから」

  「ふうぅっ!?」

  四肢のない子墨を置いて、俊熙は部屋を出ていく。

  狼の処置がいつ終わるかは分からない。

  子墨は一人で、いつ終わるとも分からないまま、尿を垂れ流しにし、その臭いを[[rb:胶 > ゴム]]と一緒に嗅がされ、微弱に振動する[[rb:肛門塞 > アナルプラグ]]に犯されたまま待つことになる。

  視界いっぱいに、惨めな自分の状態の映像が流れている。それを見ていると、じゅん、と秘所がひくついて、[[rb:肛門塞 > アナルプラグ]]を締め付けた。[newpage]

  五

  あっぶねー、あのままやってたらぶっ殺すとこだったかも。

  と俊熙は思った。

  子墨はあまりに何でも許してくれるし、悦んでくれるものだから、俊熙もやめどきを見失ってしまう。極度の痛みさえ快楽に変えてしまうあの[[rb:把兄 > にいさん]]だったら、きっと死の瞬間にだって射精するだろう。

  でもそうしたら一緒に死ねない。[[rb:把兄弟 > きょうだい]]になったのだから、一緒に終わりたいではないか。

  まるでオブジェのディスプレイのように立てかけられた[[rb:平面牢 > フラットコフィン]]に、狼は閉じられている。

  その前に俊熙は椅子に腰かけて、先ほどまでの熱を残した声で、

  「お前は家族っている?」

  と聞いた。

  狼は意識が戻っているが、俯いたまま答えない。

  もとより俊熙は答えを気にしていなかった。

  「俺はね、主人が一人と、[[rb:把兄 > にいさん]]が一人。結構大変なんだぜ」

  [[rb:平面牢 > フラットコフィン]]から伸びる一本の管から液体が流れていく。[[rb:導尿管 > カテーテル]]で膀胱から尿が流れていくのだ。その度に、ぶるりと小さく狼の身体が震えた。大便が漏れるのを防ぐために[[rb:肛門塞 > アナルプラグ]]も入れているから、性的な感度が上がっているのだ。

  「アイスブレイクはいつでも必要だぜ。俺ってけっこう内気だから、けっこうどきどきしてるんだ。でもこれでちょっと打ち解けられたかも」

  一人で勝手に質問して、自分で答えて何がアイスブレイクだ、と俯いたままの狼は思ったが何も言わなかった。

  [[rb:導尿管 > カテーテル]]で排泄を見られているのも言い知れぬ恥だったし、[[rb:平面牢 > フラットコフィン]]に閉じ込められていれば何もできない。

  俊熙が立ち上がった。恐怖で狼がびくっと震えた。

  脚がない相手だと、小柄な俊熙でも相手の顔を見下ろすことができる。小柄な俊熙はこの瞬間がたまらなく好きだった。

  「拠点を一通り見させてもらった。でもお前の手術ができそうな設備はないな。なあ、技術提供者がいるんだろ」

  狼は答えない。

  そうでなくては。

  俊熙は高揚する。

  狼の頬を張った。

  手の平が頬を打つ音が薄暗い保管室に響く。

  「っ!」

  [[rb:平面牢 > フラットコフィン]]が揺れる。強化された強靭な[[rb:胶 > ゴム]]はこれくらいではびくともしない。

  もう一度張った。

  間髪入れずにビンタを繰り返す。

  やがて狼はうなだれたまま動かなくなる。

  「技術提供者は?」

  しかし狼は答えない。

  答えたくない、のではなく答えることができない、という仮説を俊熙が考えた。脳外科や薬学的に記憶を混濁させたり、暗示をかけて心理的ストッパーをかけたり。

  それであれば俊熙のやるべき仕事の域を越えていた。

  「……犯罪者の扱いは法律で決まっているはずだ。これはいいのか?」

  狼が顔を上げた。彼の生理的な涙の浮かんだ瞳に、俊熙の[[rb:基礎外装 > オルタスキン]]に包まれた無表情な顔が映る。

  言う気がないなら、カリスマのある人間。

  言えない仕組みがあるなら、それだけの背景がある人間ということになる。

  それだけ絞れればもういい。そもそも仕事は殺戮であって、情報の吸出しではない。これは楊=スミスへのサービスだ。

  寒きを悪まざるに非ず、官を侵すの害は寒きよりも甚だし。この故事を思い返すほどの教養は俊熙にはない。実際を言うと、楊=スミスへの親切心が四割、それを言い訳にして拷問をしたい、というのが六割ほどである。

  どちらにしろ、四肢があるからこの男の情報など要らないかも。

  そう思ったときに、俊熙の中で欲情が爆ぜた。

  狼が目を逸らした。先程まで自分を無感動に見下ろしていた、黒い[[rb:胶 > ゴム]]に覆われた顔が、急ににんまりと笑ったように見えたからだ。

  そして狼は自害を即決した。舌を長く伸ばし、渾身の力で噛み千切ろうとした。

  しかし遅かった。

  「っんぐ……!?」

  彼の口が大きく開いた瞬間、玉が彼の口吻に差し込まれた。

  硬い[[rb:胶 > ゴム]]の輪だ。

  [[rb:口塞 > ギャグ]]が彼の口にはめられ、自害を封じられる。

  「ほら、やっぱ躊躇いなく次善の策を取れる奴は強い」

  言いながら、俊熙は[[rb:口塞 > ギャグ]]から垂れ下がっている[[rb:胶 > ゴム]]を伸ばした。

  それは[[rb:口塞 > ギャグ]]を備えたマスクだ。

  狼は首を振り乱して抵抗するが、特に意味を持たない。

  「んんっ……ふううっ……!」

  そのマスクは狼人の男にはちょうどよく、ぴったりと彼の頭を覆う。これで[[rb:平面牢 > フラットコフィン]]と合わせて、狼は全身を[[rb:胶 > ゴム]]で包まれたことになる。視界もなく、言葉も奪われて、男は少しの間、無駄な抵抗をするように蠢いていた。

  「んふっ! ふううっ! ふっ……おふっ……!」

  呼吸は[[rb:口塞 > ギャグ]]に空いた穴と繋がっているチューブだ。俊熙から見ると、ちょうど口の部分から中指ほどの長さの管が伸びているのが見える。

  「お前はミスをした。つまり言いたくないか、言えないだけの理由がある、それだけの力がある奴がお前の背景にいるということを、自害によって示してしまった。カリスマでも地位でも暴力でもなんでもいいが、暗示や、薬物じゃないことだけは確かだな。それだけ絞れたから、お前からはもういい」

  「っふぅっ! うぐうぅ……!」

  狼は自害の瞬間を逃した。

  自分で自分を殺すとき、そのための瞬間がある。そしてその瞬間を逃せば自害はできない。あの瞬間を逃した狼は、先ほどのようなあの自死への決断が鈍ってしまっていた。たとえ状況が許しても、狼はもう自害を試みられなかっただろう。

  もっとも、手足もなく、口を塞がれ、一センチに満たない太さのチューブに呼吸を頼っている時点で、自害などはもうできないのだが。

  俊熙はチューブを摘まんで、呼吸を止めた。

  「ううっ! ふううっ! ううーっ!」

  落とされた手足で無意味に暴れようと、[[rb:平面牢 > フラットコフィン]]の中で虫のように狼が蠢く。どれだけ暴れてもチューブを摘まんだ指には影響がない。なにしろ可動域より長いのだ、限界まで左右に振ったところで、俊熙は指を動かす必要がない。

  「ふおおっ! ふぐぅぅっ!」

  「おっと」

  ぱっと手を離す。

  狼人は、チューブから空気を吸おうと必死に喘ぐ。

  「あふぅっ! ふうぅっ!」

  「技術提供者は?」

  「ふうっ! ふううっ! ふうっ!」

  「無視すんなって」

  チューブを再度つまむ。

  酸欠の度に脳細胞が枯死していく妄想に俊熙は囚われている。

  むしろ彼はこんなところで音を上げてくれるなよ、とすら思っている。情報は言おうがどうしようがどうでもいい、何なら言わないでくれた方が拷問が続けられる、とさえ感じていた。

  呼吸を開放する。

  「おふっ! ふごおっ! はふ……、はふ……っ」

  「技術提供者は?」

  首を逸らされる。

  俊熙は口笛を吹きたくなる。

  「じゃあいいや――死んでくれ」

  チューブを結んだ。

  これで狼は空気を遮断される。

  「ううぐうっ!? ふううぅっ!」

  首を振ってももう無意味だ。ぶるんぶるんとチューブが揺れるが、空気を通すことはない。

  続けて、[[rb:導尿管 > カテーテル]]と[[rb:肛門塞 > アナルプラグ]]の細工を起動する。カテーテルが外れないよう、亀頭を囲むように付けられたデバイスが震え始め、雄門は器具のピストン運動が始める。そして、首輪に備えられている罰則用の電撃を起動。ランダムなタイミングで打つようにする。

  「がううっ!? はぐっ! ふうぅっ!」

  狼の意思はまったく関係なく、完全な窒息と拘束の中で、無理矢理に与えられる快楽と、不定期にもたらされる痛みに彼は耐えるしかない。

  「ふうぐううぅぅっ!? うう、ううっ! ううーっ!」

  俊熙は椅子に腰かけ直す。

  そして彼が無茶苦茶に暴れるのを眺める。どれだけ動いても、[[rb:平面牢 > フラットコフィン]]のフィルムがたわんで、ぎしぎしと官能的な音を奏でるだけである。

  「ううーっ! うぐっ、ふっ、ふううっ!」

  叫びが、[[rb:胶 > ゴム]]を隔ててくぐもっている。

  前立腺を刺激され、亀頭には振動を与えられ、彼は限界を迎えてしまう。

  どくん、どくん、どくどく……。

  黒い[[rb:胶 > ゴム]]の中に射精して身体を震わせた。

  しかし刺激は止まない。求めていない快楽に窒息が襲い掛かる。

  「ふうううっ! おぐうううっ! ふおおおぅぅぅ……っ!」

  言葉にならない叫びが、少しずつ弱まっていくのを俊熙は聞いている。彼の股間は硬くなった二本のペニスがそそり立っている。少しでも触れれば射精してしまいそうだ。

  やがて狼の動きが大人しくなっていく。

  叫びは薄まり、ピストンの動作音だけが残される。

  狼が絶命するまで、その目の前で俊熙はうっとりと見ていた。[newpage]

  六

  ごぼごぼごぼ……。

  ぶぶぶぶぶ……。

  ごぼごぼごぼ……

  絶え間なく響く呼吸の泡の音と、微細な振動音が、子墨の聴覚を優しく犯している。自分の尿の臭いが染み込んだ空気を吸う。嫌悪と恍惚が精神に編み込まれていく。

  それにしても暑い。どれ程時間が経ったのか分からないが、子墨の身体を覆う[[rb:基礎外装 > オルタスキン]]の中は蒸れてぐちょぐちょになっている。息を吸うたびに自分の体臭まで飛び込んでくるのだ。

  「んむ……ふうう……っ」

  ごぼごぼごぼ……。

  蒸し暑さと悪臭の中でじっと待っている。視界は責められ続けている自分しかなく、目を閉じるか、自らの淫らで惨めな姿を見ているしかない。

  身じろぎ一つすれば、額に乗っている鍵は落ちてしまうだろう。

  俊熙のいうお仕置き――お仕置きは受けたくないと言えば嘘になるが、落とすなと言われれば落としたくない。お仕置きをされたいのと同じくらい、落とさないように耐えたい。

  そしてドアが開く。

  「お待たせ、[[rb:把兄 > にいさん]]。いい子にしてた?」

  「んん……っ」

  「お、まだ鍵乗ってるな。偉い偉い」

  「ふぅ……うううっ」

  褒められた。嬉しい。

  悪臭と快楽で単純化された思考。

  しかし、いきなりディスプレイの映像が切り替わった。

  「待たせたな二人とも。なんだ、もう始めてるのか、好き者どもめ」

  「うううぅっ!?」

  自分の映像が右半分に移り、左半分に、革製の椅子に深く腰掛けた楊=スミスが映った。いつもの紫色をした官僚服だ。しかし、長い裾は乱暴にはだけられ、隙間から太いペニスが露出していた。

  見られていた? いつから? どこまで?

  突然のことに動揺して身体を震わせてしまう。

  まずい、と思った瞬間、ちゃりん、と額の鍵が落ちた。

  さあっと血の気が引く。俊熙が言う。

  「落とすなっつっただろ」

  恐ろしく冷たい声だった。

  ぺしぺしと頬を軽く打たれる。

  「うぐ……っ」

  モニター越しに、楊=スミスがにやにやと笑いながら、

  「何だ元子墨、粗相したのか」

  「んむ……んんっ」

  顔を反らしても、モニターとカメラだから意味がない。楊=スミスに痴態を見られたくなくても、隠すすべなどどこにもなかった。

  そう思った瞬間、きゅうっと秘所が[[rb:肛門塞 > アナルプラグ]]を締め付けた。

  「はうぅっ!」

  俊熙は鍵を回収すると、[[rb:防毒面具 > ガスマスク]]と瓶の接続を外した。久方ぶりの新鮮な空気を吸い込むが、すぐに新しく器具が取り付けられる。ゴムの袋だ。[[rb:呼吸袋> リブレスマスク]]。呼気を再度吸入させる器具。

  子墨は吐いた空気を再度吸うしかなくなる。酸素の少なく、体温で蒸した空気が、肺と[[rb:呼吸袋> リブレスマスク]]の間で循環する。

  尿臭こそ薄まったものの、苦しさは変わらない。むしろひどくなっている。袋の中の酸素は呼吸を重ねる度にどんどん減少していっているのだ。

  息苦しさはどんどん加速していく。[[rb:呼吸袋> リブレスマスク]] に入りきらなかった空気が逆流し、[[rb:防毒面具 > ガスマスク]]を収縮させている。

  「うぅ……。ふっ、ぅぐ……」

  苦しい。

  もしまだ四肢があれば、指先が痺れていただろう。

  もじもじと身体を揺らしながら酸欠に耐える子墨の雄溝に食い込んだ[[rb:肛門塞 > アナルプラグ]]と、尿を吐き出している[[rb:導尿管 > カテーテル]]に俊熙は指をかけた。

  「ううっ、ぐうぅ! ひううぅっ!」

  粘液を引いて滑るように、硬い[[rb:胶 > ゴム]] と、導尿のチューブが引き出された。

  スリットや尿道が引き出されるような、異様な快感に子墨が声を上げる。

  抜かれた跡地では、肉色の穴がむき出しになり、ぱくぱくと切なそうに収縮する。

  俊熙が溝穴を広げ、ディスプレイに映す。

  「[[rb:把兄 > にいさん]]のスリット、ふっくらして柔らかいぞ。いやらしいメス穴だな。楊浩然に見てもらえ?」

  「おああっ……はふっ! ふうぅっ!」

  「雄マンコをこんなにおっぴろげて、はしたない男だ」

  嘲るように着色された楊=スミスの声。彼はにたにたと下卑た笑いを浮かべて、太いペニスを扱いている。

  それに反応してひくひくと雌穴が欲しがってしまう。

  「なんだ、私に馬鹿にされて感じているのか、メス蜥蜴め。[[rb:受虐狂者 > マゾヒスト]]もずいぶん堂に入っているもんだ」

  恩人の嘲笑が子墨の脳を犯す。

  緩やかに重くなっていく酸欠に、これ前にないほどの羞恥が子墨を絶頂に押し上げた。

  「おふ……っ! おお、あおあっ! おおあおあうぅっ!」

  [[rb:楊浩然 > ヤンハオラン]]の名前を不明瞭に連呼する。誰にも届かない。でもそれでいい。

  楊浩然。

  手足を再びくれた人。

  もう一度人生をくれた人。

  雄孔が収縮する。

  快感の波がやってくる。

  「あおおおおっ!! ほおおぉぉっ!!」

  子墨は絶叫する。

  穴が蠢動し、ぴゅっと潮が水鉄砲のように噴き出して、子墨のマスクを汚した。

  「ふー……、ふううっ……」

  「なんだ、見られただけで絶頂したのか? まったくいやらしい男だな、ええ? ほら、私もお前の[[rb:把弟 > あいぼう]]もまだ終わってないぞ」

  「う、ううっ」

  雌の絶頂だ。まだ子墨には余裕が残っている。

  じりじりと尻をずらすようにして、割れ目を[[rb:把弟 > おとうと]]に向ける。

  「あい……っ、あい、ふ、ふい……!」

  [[rb: 白俊熙 > バイジュンシー]]の名前を呼ぶ。こちらは伝わったのか、俊熙に角を食まれる。

  「んん……」

  「楊浩然ばっかり見てるから、忘れられてるかと思った」

  「ううっ! ふううっ!」

  「はは、何言ってんのかわかんねー」

  言いながら、俊熙は子墨を抱えあげた。

  四肢も尻尾もないとはいえ、それなりに重いはずだが、[[rb:基礎外装 > オルタスキン]]の補助もあり、本人も貧弱ではないようだ。

  そのまま持ち上げられ、俊熙に後ろから貫かれる。

  背面座位の崩れたような姿勢。子墨のディスプレイからは、四肢のない自分が下から貫かれているのがよく見えた。

  「ああっ! ひああっ!」

  「[[rb:把兄 > にいさん]]、気持ちいい……!」

  俊熙の小ぶりだが二本ある雄が、子墨の溝に収まる。二本の男根に肉孔をかき分けられる圧迫感と痛み。そして壮絶な快感。そこはもう雌の穴になっている。

  腰でのピストンに、角を食まれる。

  「ふうぅっ……!」

  自分の後ろで、俊熙が吸気口の弁を閉じたのがディスプレイから見えた。

  瞬間、薄くても吸えていた空気が断たれる。

  「ふううっ!? うぐぅっ!? んんんっ!」

  「ああ……締まる……」

  暴れる子墨を下から抱きしめて、巨大な肉孔のように突き入れられる。

  性器は[[rb:把弟 > おとうと]]に貫かれ、視線では主人に犯されている。

  雌にされながら、主人の嘲笑に苛まれ、酸欠が子墨を追い詰めていく。

  「んんんんっ!! んんーっ! んんんーっ!」

  俊熙の腕に包まれて昏倒に近い絶頂の波が来る。

  びくびくと震えながら、俊熙はまだ意識を手放せない。

  苦しみと愛情の逃れられない板挟みの中で、被虐の喜びが膨れ上がる。

  「ぐっ……」

  楊浩然が射精する。使い込まれた太い男根から、粘性の強い精液がぼとぼとと溢れるのがディスプレイに見える。

  「んんんーっ! んぐっ! んぐううっ!」

  酸欠。

  窒息。

  しゃにむに暴れるが、付け根の筋肉が蠢くだけだ。

  「うううっ……!」

  雌穴の一番奥に俊熙のペニスが突き入れられる。

  肉壁に包まれた雄が、びゅるるるっと激しく脈動して射精した。その熱を感じながら、マスクの下で子墨は頬をほころばせた。

  ◇

  四肢と宇宙海賊の亡骸を持ち帰って、二人は楊=スミスが用意したあの家に再び帰投することになる。

  [[rb:連合 > アライアンス]]の技術流出は珍しいことではない――楊=スミスが暗躍するように技術班が小遣い稼ぎや権力ゲームに参加して、技術がばら撒かれていることだって十分に考えられる。

  この先の話は子墨たちの手を離れる。

  彼の関心は目下の生活である。量子飛行を終えて帰ったあと、[[rb:軍用義肢 > アサルト・プロステート]]の替えが届くまでの間、子墨は俊熙の全面的な介護のもと過ごすことになる。

  楊=スミスとの通信を切り、あらゆる情事の後始末を終えて、二人は全裸のままベッドにもぐりこむ。[[rb:把弟 > おとうと]]の抱き枕になりながら、子墨は唇を舐めた。帰ってからの生活を考えて、彼の秘所はまた、とくん、とうずいた。