【リクエスト】~IF_Desire~「ダークヒーローのタッグが幼児退行させられて何もかも奪われるまで」

  五年前、最強のダークヒーローが再び姿を消した。

  「今日で五年か……」

  特別任務遂行課。特務課、通称ダークヒーロー課と呼ばれる、ヒーロー協会本部の案内に存在しない階にある、薄暗く煙草の煙の薫る課の部屋で、俺の対面のソファに座る、紺色の翼にくすんだ黄色の嘴の大鷲鳥人、[[rb:青鷲>あおわし]][[rb:十紀>とうき]]、インフィニティ・ガンズがぼやく。俺と違い飛行可能なために身長は180㎝ありながら細身だが、俺達の年齢が今年で52ともなれば、むしろあの体型を維持出来ることに尊敬さえ出来る状態だ。

  「あの野郎、なんでやられてやがんだ……」

  そう愚痴る俺は、[[rb:赤獅子>あかじし]][[rb:豪火>ごうか]]、ダーク・ブレイズ。ダークヒーローと呼ばれるヒーローの一人だ。名の通り獅子獣人で、オレンジ色の鬣を持ち、自分で言うのもなんだがこの歳では相当ガタイの良い方だろう。今となっちゃ圧はあるだけあった方がいいとさえ思っているが、腹が出るのは癪だからガタイ方面で鍛え続けている。酒タバコを止めれば努力以上の事はしなくて済んでそうだが、そうもいかない。

  盛大に煙を吐き出してから、残った煙草を俺のディザイアで燃やして、カスになったものを灰皿に捨てる。煙草はいつもの事だが、五年前からまた増えてしまった。原因は、十年前、ダークヒーロー課に復帰した伝説的ダークヒーロー、ダーク・トレイターが、その五年後、再び姿を消したからだ。インフェンティル・リグレッショナーというヴィランを追っていた事件が、その存在を確認された最後の事件だった。

  俺達は勿論、トレイターのガキがいるという支部の連中も、ずっと彼のヴィランを探していた。しかし、リグレッショナーの痕跡は見付からず、大々的な捜査は断念されることになった。元々そのヴィランによる事件は全国各地で起こっていたため、移動した可能性が高いから、ということだ。それで、今は被害者の特徴である、記憶のない子供の方を探す方にシフトしている。

  それでも成果はない。ここ五年で見付かった被害者は二人だけで、どちらもトレイターにも先に被害に遭っていたチェイン・チェイサーとも違う、虎獣人と竜人だった。

  「こちら特別任務遂行課。……何? 本当か? 分かった。すぐに向かう」

  「どうした」

  「インフェンティル・リグレッショナーの被害者が首都で見付かったそうだ」

  「何!?」

  ガンズに連絡が入り、珍しく驚いていたから何かと思えば、随分タイミングのいい案件だ。本来は俺達の管轄ではないが、トレイターの件があったからこそ連絡が来たのだろう。

  「被害者への聴取は、相変わらず記憶がないということで出来ないが、発見場所は教えて貰えるそうだ。捜索を行い、発見したならば『可能な限り捕獲せよ』ということだ」

  「へぇ……運が良ければ、な」

  この『可能な限り捕獲せよ』は、俺達にとっては『抹殺も辞さない』の意だ。被害者が被害者なだけあってディザイアの抹消を行いたいのが本音だろうが、そうも言っていられない相手にはそういう指令が下る。

  「[[rb:変身>トランスフォーム]]、ダーク・ブレイズ」

  「[[rb:変身>トランスフォーム]]、インフィニティ・ガンズ」

  出動するべく、俺達はヒーローとして変身する。一瞬白い光に包まれて、すぐにその光は晴れて、ヒーロースーツ姿へと変身した。俺は黒をベースに白い炎の意匠が施されたボディスーツに、赤いレンズのバイザー型のマスク。到底ヒーローには見えないと言われる、ダークヒーローの風貌だ。

  ガンズのヒーロースーツは白黒迷彩模様のボディスーツに、目元を覆うゴーグルタイプのジャミングマスクだ。こちらも違う意味でヒーローに見えないタイプだ。俺と並ぶのもあって、ダークヒーローの絵面であることには変わりない。

  すぐに教えられた現場に向かい、周辺の調査を開始する。とはいえ俺達にその力はないから、現場にいる捜査員に話を聞くところからだ。

  現場は首都中心の高層ビル街より少し外れ、マンションの立ち並ぶ住宅地の一角だ。人自体は多いものの、見付かった時間が午前十時なのもあって、ほとんどが外出中で目撃証言に乏しい。とはいえ、首都には無数の監視カメラが仕掛けられている。

  「こいつは……」

  そこに、銀の鬣の獅子獣人が映っていた。眼鏡にジャミング判定があって、顔認証まで通ってはいないが、状況からして銀髪の獅子獣人という特徴は、少なくとも職質するだけの理由にある。

  監視カメラの映像を、最後に途絶える場所まで追跡させると、アングラな通りの小さな倉庫に入ったところで途絶えた。相手がディザイア能力者だと推定している以上、警察に任せるわけにはいかない。

  現場に向かいながら持ち主を確認しておいたが、個人主で持ち主との連絡は付かなかった。もしやと思ったが、今朝見付かった子供と同じ猫獣人だ。

  倉庫に辿り着き、すぐにシャッターをこじ開ける。何か罠があろうと、踏み潰すまでだ。音の対策は簡易的にやっておいたから、速攻仕留める。

  「動くな」

  ガンズは流れ作業の警告をする。麻酔銃とはいえライフルを構えながらそんなことを言っても、あの指令が出ている時点で発見次第発砲する気満々だ。万が一間違っていても、ダークヒーローを免罪符に誤魔化す。それが俺達のやり方だ。

  突入してみたものの、パッと見ではただ段ボールの積まれた倉庫で、人の姿はない。奥に隠れているのか? 不意打ちに気を付けながら、しかし迅速に荷物の積まれている奥へと入り込む。

  「観念し……ろ……」

  しかし、そこには誰もいなかった。物は散らかっていたものの、人が隠れられそうなのはそれこそ段ボールくらいのものだ。様々な工具と一緒に子供の玩具が散らかっている。ボール、積み木、ぬいぐるみ、玩具の家。

  「仕方ねぇ、ヴィジョ……!」

  生体反応を探すべく、コマンドを宣言しようとしたその時、急に何かが絡み付いてきて、猛烈な勢いで引っ張られた。馬鹿な、何処から……!?

  「ガンズッ……!」

  ガンズの方を見れば、目に痛いくらいのカラフルなテープのようなものがガンズの両手両足に絡み付き、引っ張られている。

  身体がガンズにぶつかる、と思う前に、目に見える景色が大きく変わる。先程の段ボールだらけの倉庫とは全然違う、様々な絵の描かれたパステルカラーの大きなタイルが床壁天井を覆う空間だ。キッズコーナーの床が全面に敷かれているような場所で、妙にカラフルなジャングルジムや滑り台やシーソー、名前も分からないような遊具も散見される。

  「パパ、わりゅいといた!」

  声の先を見ると、あどけない顔をした犬獣人、目元から頬辺りが茶毛で他が黒い、シェパード獣人のガキがいる。青い上下一体のロンパースを着ていて、口にはおしゃぶりをしていてそのまま喋っていたようだ。

  「そうだね、思ったより早く来ちゃったね」

  そしてもう一人、犬のキャラクターの描かれたエプロンをした、灰毛に銀髪の獅子獣人の姿があった。ジャミングマスクがない状態なおかげで、確証が持てる。持ててしまう。インフェンティル・リグレッショナー。その正体であると言われていた、とある地方銀行の御曹司である、[[rb:獅子代>ししよ]][[rb:明護>めいご]]だ。行方を晦まして既に三十年近く経っているというのに、その容姿は変わらないばかりか、資料よりも少々若返ってさえ見える。

  「燃やす……?!」

  見付けたならば遠慮は要らないとディザイアを発動させようとしたが、紙テープは燃えない。なんでディザイアが発動しない?!

  「くっ……!」

  「あぶなーい!」

  身体に紙テープを巻き付かせられながらも、ガンズは持っていた麻酔銃を構えたが、横から別の、赤いロンパース着たガキが現れて、ガンズのライフルを何かで叩いて、そしてライフルを破壊しやがった。犬にさえ見えるが恐らく狼獣人のガキが持っているのは……ピコハン?

  「ク、ソがぁ!」

  ディザイアが使えなくとも、紙テープなら力で無理矢理引き千切ってしまえばいい。強引に右手を動かして左腕に絡みつく紙テープを引っ張り千切り、すぐディザイアを発動させる。これで他も燃やして……!?

  「はぁ?!」

  左手から炎を放ったはずだった。なのに、そこから出て来たのは、ただの眩しいだけの光だった。黒炎であるどころか、白い眩しい光。

  「このリトルスペースに、火なんて危ないものを持ち込まれては困るよ」

  リグレッショナーの発言からして、このみょうちくりんな世界を作っているのがこのヴィランなのは間違いない。どういうことだ。催眠能力と退行能力を持ってるくせに、異次元を作るような力まで持ってるってのか?

  ガラガラガラガラ

  何時の間にか手に握られていた、円筒状のガラガラを鳴らして来やがる。報告にあった催眠か。突入前に対策として耳栓をしていたからほとんど聞こえはしないが、それでも僅かに場違いな眠気が襲い掛かってくる。

  「あれ、これの対策はされてるんだ。仕方ないね」

  紙テープがなおも絡み付いてくるが、眠気はこれ以上来ない。なんとかこの危機を脱して、リグレッショナーをぶっ飛ばすなり、癪だが離脱しなくては。

  「[[rb:脱出>エスケープ]]!」

  先に撤退の判断を下したのはガンズだった。しかし、予想通りと言うべきか、コマンドは効かず、何も起こらない。通信も途絶えているのがバイザーに映るエラー画面で分かる。

  「逃がすと面倒だね。ゲツくん」

  「うん!」

  また別の、黄色いロンパースを着た黒い狼獣人のガキが姿を現したかと思えば、その足元から何か黒いものが飛び出し、俺達の顔に、耳に伸びて来る。こいつ、耳栓を取るつもりか!

  「寄るんじゃね!」

  何処からか来る紙テープと黒い何かから逃れられるように腕を振る。たかだか紙テープだってのに、束になられると硬すぎて振り切れねぇ。

  「グッ……!」

  ガラガラガラガラ

  気付けばガラガラの音が耳に入り、体の力が抜けていく。有り得ない眠気と同時に襲い掛かり、抵抗力を奪っていきやがる。クソッ……こんな、ところで……。

  ---[newpage]

  「んっ……」

  重い眠気が未だ残ったままのような、そんな状態で目を覚ます。まず腕が動くか確認したが、しっかり拘束されているようで動かない。首を動かして右手の方を見ると、ロープか何かで縛られているようだ。

  「んん……」

  正面から小さな呻き声が聞こえてそちらを見ると、全身見えるような状態でガンズが拘束されていた。どうやったのかヒーロースーツが脱がされ裸にされていて、青黒い羽が覆う身体が見える。となれば全裸に……?

  「はぁ……?」

  しかし、俺の予測は大きく外れ、股間は露出しておらず、しかしパンツやズボンを穿かされているわけではなく、どういうわけかおむつを穿かされていたのだ。子供の穿くような、白地に犬のキャラクターの描かれたような奴だ。

  「ブレイズ……?」

  目を開けたガンズの表情が、おかしな物を見る目に変わる。この状況でガンズに対してだけではないとは思ったが、やはりと言うべきか俺もおむつをされているようだ。股間周りに違和感があるとは思ったが、よりにもよっておむつとは。

  「おや、もう起きてしまったんだね」

  声のする方を見れば、銀鬣の獅子獣人、インフェンティル・リグレッショナーが立っていた。狭い部屋の唯一の入り口から入って来たようで、この部屋もさっきの広い部屋と同じくパステルカラーのタイルに埋め尽くされている。

  「テメェ! ふざけたことしやがって!」

  「随分と口が悪いねぇ。しっかり教育しなくちゃね」

  ろくでもない言葉を発するクソヴィランだが、こいつの思い通りにさせれば言葉通りになるのは明白だ。俺達が戻らないことで他のヒーローが察知してくれればいい。もっとも、時間を稼ぎたいが、狂人を丸め込めるとは思えないのが問題だが。

  不意に、尿意があることに気付く。寝起きなのだからある意味当然のものではあるが、今は、非常にまずい。我慢出来ない程ではないにせよ、こんな年になって失禁は洒落にならない。

  「さて、まだ出してないならまずは一回しておこうね」

  ガラガラガラガラ

  また、ガラガラの音を響かせてくる。今度は最初から耳栓がなく、頭がボーッとしてしまい、眠気から思考が鈍る。身体の力が抜けて、何も出来ない。クソッ、こいつ、何を……!?

  「いっ……!」

  ガッと歯を食い縛り、なんとか意志を保ち下腹部に意識を集中する。おむつを穿かせてこんなことをやってくる時点で、漏らしていいはずがない。

  ガラガラガラガラ

  だが、音を防げない以上、ただ意志だけでディザイアに抗うにも限度があった。

  「ぐぅ……!」

  先に限界を迎えたのは、ガンズの方だった。僅かに嘴が開き、ベッドの上でもそう見ない呆けた目をしている。そして、ガンズに着けられているおむつが黄色く染まっていく。

  「うっ……」

  そして、俺も我慢出来ずに小が僅かに零れ、そこから歯止めが効かずに全て放出し始めてしまう。一瞬だけ我慢し続けた解放感を味わった後、すぐに相方に見られている羞恥と、ヴィランの前で失禁している事実に顔から火が出そうになる。そんな羞恥などお構いなく、おむつは濡れて猛烈な不快感が股間を包む。

  「くっ……」

  「いっぱい出したね~。ほら、ちゃんと見て上げなよ」

  ガラガラガラガラガラ

  「なっ……!」

  せめてガンズの痴態を見ないようにと目を閉じていたにも関わらず、むしろ目をかっぴらいてガンズの姿を見てしまう。ガンズもまたその目を見開いて俺の姿を見ていて、羞恥が込み上げてくる。

  「クソ野郎が……!」

  「本当に口が悪い子だ。少し、お仕置きが必要みたいだね」

  躊躇なく俺達に近付き、俺のおむつを外してくる。ムワッと尿の臭いがこちらにまで立ち上って来やがった。いや、それより何か猛烈な違和感が……!?

  「なんだぁ!?」

  自分の身体を見降ろして、違和感の正体を見てしまい思わず声が出てしまった。俺のチンポが、見えないようなガキの小さなモノになってしまっている。ただの羞恥行為だとは思っていなかったが、こんな行為でガキにしてやがんのか?!

  「ブレ……イズ……」

  「み、見るな!」

  ガンズはなんとか目を逸らそうとしているようだが、俺と同じく無理矢理見せられているようで、俺のみっともないものになってしまったチンポをガン見している。

  怒りと羞恥に震える俺の事などお構いなしに、今度はガンズのおむつを外す。当然と言えば当然だが、ガンズの股間に露出した男性器はない。見慣れたスリットで、少し安心感がある。中は無事ではない可能性が高いが。

  「そうか、鳥人は女の子みたいになってるんだね」

  「! や、止めろ……!」

  「下種野郎が! その汚ねぇ手を放しやがれ!」

  あろうことか、リグレッショナーはガンズのスリットに指を入れて中を確認していやがる。カスのヴィランなのは分かり切っていたが、ここまで露骨なことをしてくるとは。

  「綺麗にして上げなくちゃ、風邪を引いてしまうよ」

  「くぅ……」

  指を入れていたのかと思えば、小さなハンカチサイズのタオルをスリットに突っ込んでいたようで、それでスリットの中を拭いていたようだ。だからと言って、侮辱行為を正当化出来るものではない。

  「ほら、君の可愛いおちんちんも拭いて上げるね」

  「なっ、止めろ!」

  今度は俺の股間をタオルで拭いてくる。性的な刺激を与える意図は微塵もなく、本当に尿を拭くための行為。テメェで漏らさせたくせに、どういう了見だ。

  「変態ヴィランが、何がしてぇんだよ!」

  「何と言われると、穢れた大人への救済だよ」

  「救済だぁ?」

  「ふざけた事を。人の未来を奪い取っておいて、何が救済だ」

  ガンズから怒りを感じる。狂人タイプのヴィランにまともに言葉が届くとは思えないし、ましてやまともな理屈があるとは思えないが、よりにもよって救済と来たもんだ。

  「救済さ。穢れた大人になってしまった君達の中の汚れを、老いも記憶も、溶かして洗い流すんだ」

  どうせダメなタイプだとは分かっていたが、こりゃ本当にどうしようもない奴だ。自分が何をしているのか理解していて、それを完全に正義だと信じている。俺達が殺して来たタイプのヴィランにも、多くいたタイプだ。

  「クズが、お前のやっていることは人殺しとなんら変わらん。お前の言う穢れた大人の中でも、最悪な部類の輩のやってるようなことだろうが」

  「じゃなきゃ、調教した奴らを自分の世界で飼い殺しにして侍らせて、悦に浸る性犯罪者だな」

  それでも言わない理由がない。俺達はお行儀のいいヒーローなんかじゃない。ろくでもないヴィランなら再起不能にしようが殺そうが止めるのが、俺達ダークヒーローであることを誓ったヒーローの生き様だ。暴言だろうがなんだろうが、使えるものは使ってヴィランを攻撃する。それでほんの少しでも心が揺らげばチャンスを生み出せるってもんだ。

  「どうやら身体だけじゃなく、お口も教育しなくちゃいけないみたいだね」

  「ハッ、出来るもんならやってみんっ!」

  いきなり口に何かが入り込む。噛み締めようとしても柔らかく噛み切れず、吐き出そうとしても吐き出せない。

  「おしゃぶり……?」

  「んんっ!!」

  ガンズの呟きで、俺の口に何を突っ込まれた理解して、また侮辱行為かと怒りが漏れる。ただのおしゃぶりならすぐに吐き出してしまえただろうが、これもディザイア産なのか吐き出せないし言葉が出ない。

  「君にだけは不公平だね。そうだなぁ、ここがこうだし、特別なおむつをしてあげようね~」

  そう言うリグレッショナーの手に握られたのは、全体がピンク色のおむつだった。股間のところに大きなハートマークがあり、周囲にもハートマークが散りばめられている。ガキのおむつの知識なんてありはしないが、あんなもん女児でも付けないだろ。そういうプレイ用じゃないか?

  「んんっ、んんくっ、んんんむっ、んんっ!」

  侮辱すんのもいい加減にしろ! と吠えようとしても、おしゃぶりに遮られてちゃんと声が出ない。クソッ、俺に対する侮辱も腹立つが、相方であるガンズに対する侮蔑行為の方が許せねぇ。いくらベッドの上で喘いでいたって、あいつは雌ではない。

  当然のように、俺にもおむつをしてくる。両手両足を縛られていて、抵抗しようもなく真新しいおむつを着けられてしまう。こんなおっさんが着けるにはあまりにもガキの物のおむつをされて屈辱だが、おむつの屈辱さでいえば目の前のピンクハートのおむつを着けられたガンズの方がキツい。

  「それじゃあ、おねんねしようね~」

  ガラガラガラガラ

  「ぐっ……」

  「んっ……」

  また、頭がぼんやりとする。クソッ、こんな不快極まりない音で、眠くなってなんか……。

  ---[newpage]

  瞼が重い。どうやらまた無理矢理眠らされていたようだ。

  「うっ……!」

  しかし微睡む間もなく、急激な尿意で意識がハッキリする。対面にいるブレイズも同じ目に遭っているようで、顔を赤面させ、少しでも尿意に抵抗しようと、拘束されてまともに動かせない足をどうにか閉じようとしている。

  「んんっ……!」

  こちらを、こちらの下腹部を見て、おしゃぶりで口を塞がれながらも悔しさと怒りを滲ませるブレイズ。何故かと一瞬考え、昨日付けられた女児でも付けないようなピンクのおむつの事を思い出してしまった。ブレイズのしている子供向けのおむつも酷いものだが、侮辱的なのはこちらの方が上だろう。

  ガラガラガラガラ

  「ぐっ……あっ……」

  忌まわしいガラガラの音に意識が混濁すると共に、俺は限界を迎え放尿してしまう。スリットを通り放たれる尿は不可解な快感をもたらし、どういう訳か当然訪れるはずの不快感を上回る快感に、危機感を覚えながらも抗う術はなかった。

  「んん……ん……んぅ……」

  なんとか我慢しようとしていたガンズも限界を迎え、おしゃぶりの端から涎を垂らし、白いおむつがいっそわざとらしく黄色く染まっていく。

  恥辱に僅かながらも涙を浮かべる姿も珍しく驚きなのだが、何より目の前でその老いが確かに消えていくのが見えてしまった事に驚愕してしまった。筋力的衰えはあまり感じさせないブレイズだったが、顔は獅子として積み重ねた年齢による威圧感が、若者は言い過ぎにせよ三十代程度の、まだギリギリ若いと言えていた頃のものになってしまったのだ。

  「いっぱい出せたね〜」

  小さな子供を褒めて言い聞かせるような口調でそう言って来るインフェンティル・リグレッショナー。そこに嫌味や悪意を感じさせないのが、狂人の証だ。

  「まずはおむつを替えようね~」

  「んんん!」

  なんら躊躇なく、ブレイズの今しがた尿で汚れ切ったおむつを外し、情けないことになっているブレイズの性器を晒す。ブレイズのモノは平均より大きい方だったというのに、今や小学生に見紛う大きさだ。

  「綺麗にしようね~」

  「んんっ!」

  外したおむつを丸めてから、眠る前と同じように、濡れタオルで丁寧にブレイズの股間周りを拭いていく。やっていること自体は丁寧だが、両手両足を開いて拘束して宙吊り状態な時点で、行為の丁寧さなど些末に思える。

  なんとか暴れようとするブレイズだが、その僅かな抵抗も虚しくしっかり尿で汚れた股間周りを綺麗にされ、そのまま新しいおむつをされてしまう。相も変わらず知らない犬のキャラクターの描かれた、子供用のそれだ。

  「君も、おむつを替えようね~」

  ブレイズが終われば、当然俺の方に順番が回ってくる。おむつが開かれ、尿の濃い臭いが立ち上って来て鼻を突き、思わず眉を顰める。自分の出したものだというのに、酷いものだ。

  おむつを取った後、やたらとピンクのハートが目立つおむつをわざとらしく広げて見せて来た。正面の大きなハートが汚れて黄色く染まっているのが見え、あからさまな侮辱目的なのが伺える。

  「んんんー!」

  「お腹空いてるのかな~? もうちょっと待っててね~」

  ブレイズが何か、確実に暴言を言おうとしているのを、赤子相手にあやすように言いながら、俺の股間周りを濡れタオルで拭いてくる。

  「くっ……」

  股間周りは勿論、スリットの中にまで濡れタオルを捻じ込まれ、思わず声が出てしまう。ペニスは勃起してもスリットから出ないような大きさになってしまっているが、確かにそこにあるしそもそもスリット自体が敏感なのだ。

  「中も綺麗にしないとだから、我慢してね~」

  ここまで来ると意図的な性的攻撃かと思ってしまう。相手は所詮ヴィランだ。自らの手で尊厳を奪い、自らの手でその尊厳を僅かに回復させる。そんな洗脳行為に

  絆される云われは一欠片もない。意志を強く持ち、少しでも時間を稼ぐ。あわよくば逃げ出す。敗北したヒーローに出来ることなど、そんな醜い足掻きだけだ。

  「さ、新しいおむつだよ~」

  わざとらしくこれから着けるおむつを広げて見せ付けてくる。やはり先に着けられたものと同じような、ピンクでハートのあしらわれたおむつだ。おむつでなければ完全に性的な用途でしかないだろうものだろう。ブレイズとの扱いの差があるため、性的な意味合いとは別のベクトルのようだが。

  「んんー!」

  「ふざけた真似を……」

  ブレイズは口を塞がれながらも激怒し、俺も僅かながらに言葉で抵抗するも、リグレッショナーはそんな抵抗に取り合わず、当然のように俺におむつを着けてくる。

  「それじゃあ、ご飯の時間だよ~」

  この状況でご飯などと言われて、何を出して来るのやら。扱いからすれば、離乳食でも出してくるのか?

  「んん!?」

  「そう来たか……」

  リグレッショナーの両手に一つずつ、哺乳瓶が握られていた。中に白い液体、恐らくミルクが入っているのが見える。まさか、食事と呼べるようなものですらないとは……捕らえていた者達はもう少し年齢層が高そうな状態だったが、いまいち嗜好が読めない。

  「君はおしゃぶりを取らなくちゃだから、先に君に……ふむ、これでいいのかな?」

  どうやら鳥人相手に哺乳瓶で授乳させられるか考えていたようだ。ごく幼ければ嘴の存在も誤差ではあるが、多少退行させられたとはいえ成人男性の鳥人の嘴は確実に邪魔になる。

  ガラガラガラガラ

  口を開かなければ妨害出来るだろうと思っていたものの、すぐにガラガラを鳴らされてしまう。眠気だけと思っていたが、ただ頭がボーッとして、まともに動けない……。

  「んっ……」

  何かが口の中に入ってくる。何もしなくとも、温かく強烈に甘いものが舌に降り掛かり、頭がクラクラする。久しくこんな甘味を感じることが無かったのもあるが、頭痛のするレベルの甘さで、茫然としていた頭がそれで目を覚ましてしまうほどだ。

  とはいえ既にほとんど飲んでしまった後のようで、腹に液体が溜まっている感覚がある。リグレッショナーの手にある哺乳瓶の一つは、しっかりと空になっていた。

  「ちゃんと飲ませられて良かったよ。それじゃ、君もご飯にしようね~」

  俺への給仕が終われば、今度はブレイズの番だ。経口摂取させる必要がある以上、ブレイズを黙らせているおしゃぶりを取る必要がある。今口が開ければ、ブレイズは当然……。

  「っはぁ! お前、舐めるんじゃねぇぞ! バーカバーカんん!」

  「まだまだお口をいい子にしないといけないみたいだね~」

  すぐ罵倒したのだが、どうも様子がおかしい。ブレイズがあんな子供染みた罵倒をするとは思えないが……。

  ガラガラガラガラ

  ブレイズの口に哺乳瓶を突っ込み、またガラガラを鳴らす。ある程度の催眠効果があるのか、ブレイズは虚ろな目で哺乳瓶からミルクを吸い出して、喉を鳴らして飲んでいる。俺も、それをぼんやりと眺めることしか出来ない。

  「ちゃんと飲めたね~、いい子いい子」

  「ん……って、何ゲロ甘飲ませてやがんんっ!」

  「でも、お口はまだまだ悪い子だね。そうだなぁ、ちゃんと反省して貰おうね」

  そう言い、既に捨てるために丸めていたはずの、俺に着けられていたおむつを開くリグレッショナー。反省と言っていたが、汚れたおむつで何をするつもりだ?

  開いたおむつの内側を、ブレイズの方へと向ける。俺の尿をたっぷり吸って黄色く汚れたそれを、ゆっくりとブレイズに近付けていく。

  「んー!」

  そして、あろうことかリグレッショナーはその汚れたおむつを、そのままブレイズの顔面へと押し当てた。いくら日常的に性行為をしている間柄とはいえ、濃縮された尿を直に嗅がされるのは忌避感しかない。

  「お友達のおしっこおむつをしっかり嗅いで、反省しようね~」

  ブレイズは一際暴れようとしているものの、抵抗虚しくおむつの股下が鼻に来るように顔面におむつを当てられ、そのまま後ろでテープを止められて固定されたようだ。少し頭を振れば取れそうなものだが、抵抗しても取れる気配はない。

  「君も連帯責任だよ」

  今度はブレイズのしていたおむつを開き、俺の方へと向けて来た。そこまで黄色いかというくらい黄色く汚れたおむつは、いくらブレイズの出した物とはいえ、男性器を向けられるのとは比ではない程の忌避感がある。

  「止めろ……!」

  首を退いても逃れられるはずもなく、まず嘴が湿り気に触れ、そして視界が黄色に覆われる。不快な湿度と濃縮された尿のツンとした臭いが鼻を抜け、しっかりと拷問になっていた。濃過ぎていっそ僅かにしか感じられないブレイズの臭いが、却って拷問に使われているという事実が精神に来る。

  「さてと、ちゃんと反省してね~」

  ガラガラガラガラ

  また、ガラガラの音がする。耳障りなのに、妙な眠気を生み出すガラガラの音。しかし、眠気はあるが眠れない。むしろ雑念を払われ、目の前の湿り気と臭いだけに集中させらてしまい、ただただ不快に襲われる。

  「んー! んんー!!」

  「んっ……!」

  ブレイズも俺も、責め苦から逃れようと呻きながらも首を動かしているようだが、テープで付いているだけのはずのおむつが取れる気配がない。こんなものでもディザイアの産物だから、そう容易く取れないとはいえ、ふざけているとしか思えない。

  「……?」

  なんだ、何か、知らない光景がちらつく。これは……俺の姿? 何気なく、街を歩いている俺の姿が見える。そんな光景が何度もチラつく。どういうことだ。まるで、ブレイズの目から見た俺じゃないか。

  まさか、記憶とでもいうのか? あいつの言葉からすれば、老いと記憶を洗い流すということだから、有り得ないことではないか。

  失われている記憶がないかを自分の記憶を辿る。特別欠落しているような感覚はないが、ここ最近のどうでもいい記憶を思い出せない。まだ二度目だからこれで済んでいると考えていいだろう。だとすれば、記憶を奪われないように、ディザイアを軸に耐えなくては。

  ガラガラガラガラ

  また、あのガラガラの、音、が……まずい、力が、入らない……。

  意識が遠のく。こんな状況なのに、瞼が……上がら……ない……。

  ---[newpage]

  臭い。こんな臭いが寝起きに降り掛かってくるなんて最悪だ。

  なのに、いつもよりずっと寝覚めがいい。こんな寝覚めがいいのは、若い頃以来だ。そう思った時、今俺達が置かれている状況を思い出した。

  「んんー!」

  未だに口が利けない状態で、しかも目の前がもはや黄色から茶色になりつつあるような、おむつの内側と来た。相変わらず首を振って暴れてもおむつは取れやしない。

  「おはよう、二人共。少しは反省してくれたかな」

  「んんー!」

  顔からおむつが取られて、視界が開かれる。何が反省だ。独りよがりの虐待を、ただそう称しているだけだろうが。そう声を出そうにも、ふざけたおしゃぶりのせいで喋れない。

  自分の身体……よりも先に、ガンズの状態が目に入る。ここに突入した時とは明確に違い、俺達が出会った頃くらい、十代後半くらいまで年齢が下がっている。最早懐かしさを覚えるが、確実に危機が迫っていることと同義だ。体型も違うはずなのだが、侮辱的なハートがどういうわけか黄色く染まっているおむつが変わらず着いている。ディザイアだからと言えばそれまでだ。

  「まずはおむつを替えようね~」

  昨日なのかも分からない、寝る前と同じように着けられているおむつを開かれる。ずっとおむつを嗅がされていたせいか、昨日みたいに立ち上ってくる臭いを感じなかった。

  「んんー!」

  声でも行動でも抵抗出来ない。おむつを取られて股間を濡れタオルで拭かれて、また新品のおむつをされる。何度やられても屈辱的だし慣れたくなんかない所業だ。

  ガンズの方も同じように手早くおむつを外され、わざとらしくスリットの中までしっかり拭いていやがる。小さくなったチンポを拭かれてもなんとも思わなかったが、ガンズの顔からして感じているようだ。そして、またあの恥ずかしいピンクのハート模様のおむつを着けられる。

  何を思ったか、あいつは両方の丸めたおむつの臭いを嗅いで、自分から嗅いだくせに渋い表情をしやがる。そもそも何をしてるんだ? 顔面におむつを当てられたときに、僅かに見たガンズの記憶があったのからして、俺達の記憶を見てるのか……?

  「……ヒーローは、癒されなくちゃいけない存在だと思ってたけど、君達は随分好き勝手暴れ回ってきたみたいだね」

  「んんー!」

  「勝手な事を言うな。お前のようなヴィランがいる以上、手段を選んでいられないことが出て来るんだ」

  俺の言いたいことをガンズが代弁してくれる。ディザイアが使えるなら今すぐにでも焼き払ってしまうべき、ゴミクズのヴィランだと良く分かった。

  「君もお口が悪い子だね~。あ、さすがに少しは良くなったんじゃないかな?」

  思い出したかのように、俺のおしゃぶりを取ってくるリグレッショナー。よし、今度こそ文句言ってやる。さっさと放しやがれ!

  「僕達をおうちに帰してよ……?!」

  自分の口から、出るはずのない言葉が出て来た。なんだ?! どうなってやがる! 前の時点で少しおかしいとは思っていたが、今回は本当に有り得ない。

  「ブレイズ……?」

  「違っ、僕は、僕なんて言ってな……もう! なんで?!」

  無意識なんてもんじゃない、出る言葉が勝手に置き換わってるようなレベルで、ガキみたいな言葉が出て来る。『僕』なんて、産まれてこの方言ったことないのに。

  「強めに使ったから、効き目が大きかったみたいだね。じゃあ、ご飯にしようか」

  「要らない!」

  何を言ってもガキみたいな言葉にしかならない。抵抗の意志が示せるだけまだ意識は正常寄りだが、これじゃあ思考に及ぶのも時間の問題だ。

  「ダメだよ~、このミルクは、君達をいい子にするためのものなんだから。ちゃんと飲もうね~」

  ガラガラガラガラ

  「ううっ……」

  クソッ、またあのガラガラかよ。多少は抗おうと出来たのに、もう……。

  口に哺乳瓶の口が入る。ちゅぱちゅぱしゃぶると、凄く甘いミルクが口の中を満たして、それを零れないように飲み下していく。不思議と、美味しいと感じている。甘いもの、好きじゃなかったのに……。

  「はい、ちゃんと飲めて偉いね~」

  いつの間にか、ガンズにまでミルクを飲ませていたようだ。あの催眠ガラガラの影響が確実に大きくなっている。

  「!!」

  急に尿意が込み上げてくる。さっき飲んだばかりだってのに、もう出るのか?! 我慢しなくては……!

  そう思った瞬間、ちょびっと小便が出てしまい、そこから一気におしっこが漏れてしまう。ああ、気持ちいい……温かくって、何もかも、出てってく……ぽやぽやして、お股がびしゃびしゃになってく……。

  「あっ……!」

  何か、熱いものがおちんちんを駆け上がって来て、おしっこじゃないのがおむつの中にピュッと出ちゃう。気持ち良くって、色んなものが、僕の中から抜けていった。

  「……あれ? 十紀君……?」

  もうおしっこが出なくなって、何かがおかしいと思った。確かに、僕の前に吊るされてる、ハートのいっぱい描いてある女の子みたいなおむつをしている十紀君が、チビッ子みたいになってて、青黒い羽は青みが増して、ピシッと整ってた羽はふわふわになってる。

  「豪火、鬣が……」

  「え?」

  鬣? あれ、そういえば、なんだか首の周りがスッキリしてるような。それどころか、頭の上の方も変な気がする。

  「ふふふっ、随分可愛くなったね~」

  そう言って、獅子のお兄さんが大きな鏡を僕と十紀君の間に置く。そこに映ってた僕は、オレンジ色の鬣、っていうには少ない、ちょろっと頭の上に生えてるくらいで、これがなかったら女の子みたいに見えちゃう。鬣だけじゃない。身体全体が小さくって、お腹がぽっこりしてて、まるで赤ちゃんみたいだ。

  「何これ……ホントに僕なの?」

  「そうだよ~、それが君だよ~」

  「でも、僕は……」

  「鏡に映ってるんだから、それが君なんだよ~」

  僕は……僕は……? あれ、思い出せない。何を? 何を、思い出せないの? 僕の姿……十紀の姿……でも、だって、僕と十紀は……あれ?

  「折角だし、仲良しの印を覚えようか」

  両手がゆっくり下がって、床に着く前に止まった。床が見えて俯せの状態になって浮いてるみたいだ。そして、僕の下に十紀君が仰向けに寝かされる。『仲良しの印』ってなんだろう。

  「え?」

  おしっこで黄色くなった十紀君のおむつが、ゆっくりと近付いている。いや、僕がそっちに近付いてるんだけど……え? このままじゃ、顔におむつが当たって……!

  「んえっ!」

  「んんっ!」

  本当にピンクのおむつに顔が沈み込んでしまう。おしっこの臭いと変な臭いが一緒に来て、頭がクラクラする。おむつはちょっと湿ってて、顔を放したいんだけど、手と足は宙吊りのままだから、そこから動けない。

  僕のお股にも硬いものが当たってる。これは、十紀君の嘴? 十紀君も、僕のおむつを嗅がされてるみたい。

  「うんうん、それが仲良しの印だよ」

  これが、仲良しの印……? これで、僕と十紀は仲良しなの……? 気持ち悪い感じもあるけど、変な気持ちにもなってる。もっとちゃんと嗅いだ方がいいのかな?

  しっかり臭いを嗅いでも、やっぱりおしっこの臭いだ。臭い。臭い。これで、仲良くなれるのかな。分かんないや。

  「そろそろいいかな。じゃあ、おむつ替えるね~」

  また持ち上げられて、今度は床にペタンと座らされる。初めて触ったけど、ここの床、すごく柔らかいや。

  おむつが開かれて、濡れタオルで綺麗に拭かれて、新しいおむつをしてくれる。十紀君も同じようにおむつを替えて貰って、ピンクのおむつが新しいおむつになった。

  「……ふぅん、そうかぁ……」

  獅子のお兄さんは僕達の古いおもらしおむつの臭いを嗅いで、何か良くない顔をしていた。どうしたんだろう。僕達のおむつ、そんなに汚かったかな。

  「それじゃあ、お休み、二人共」

  ガラガラガラガラ

  その音を聞くと、頭がぐわんってして、そのまま床にコロンと倒れてしまった。十紀も、横になって、目を閉じている。

  眠い……寝ちゃおう……。

  「……ふむ、これが、二人の本質か……暴力的で、とてもリトルスペースに、ハンくんのお友達には相応しくない」

  最後に出した二人のおむつから記憶を読み取り、インフェンティル・リグレッショナーは一人呟き、床に転がる二人のヒーローだった子達を見降ろす。

  「いじめっ子は、リトルスペースに居てはならないんだ」

  ---[newpage]

  「……? 君達、何処の子だい?」

  その日、二人の少年らしき子が警察官に保護された。まだ鬣がちょろっと生えているだけの獅子獣人と、まだ青と言っても差し支えない、青黒い羽毛の大鷲鳥人。身に着けていたのはおむつだけで、親兄弟はおろか、自分が何処から来たのかさえ、分からない状態であった。

  二人はすぐに保護されることになった。最初は首都のヴィラン事件被害者孤児院へと送られた。見た目は幼児とは言えない年齢なのだが、二人共どうしてもトイレが上手くできず、おむつをしなくてはならない状態だった。

  しかし、すぐに二人共、ヒーロー協会総合病院へと引き取られることになった。正式に被ディザイア影響者として認定されたこともあったのだが、何より種族的な特徴、そしてDNA鑑定の結果から、行方不明であったヒーロー、ダーク・ブレイズ、インフィニティ・ガンズの二名であると判明したためだ。

  病院に移されすぐの事。

  「ヤダ! トウくんと一緒にいる!」

  「ゴウくんと一緒がいい」

  二人がそう駄々をこねて、本来であれば個別に行われるディザイア治療を、同室で行うこととなった。自分の本名さえ覚えていない二人であったが、自分と相棒の、過去誰一人当人達が呼んでいたのを聞いたことのないあだ名だけは認識していた。

  病院施設であるため、おむつに関して困ることはなかった。しかし、日に何度もおむつにおねしょおもらしをし、どれだけトイレトレーニングをしても治らない。たとえ尿意が無い時からおまるに跨らせていても、おむつ以外におしっこを出せなかったため、一旦おむつ以外に小便をさせるのは諦めることになった。

  「えーい!」

  記憶を失い幼児退行してしまったにも関わらず、二人はディザイアを使うことが出来た。しかし、ダーク・ブレイズはその炎の力の面影はなく、明るい光を球状、或いは単なる光として放つ力と化していた。当たり前のように遊びで十紀に、或いは診察している医者に対してディザイアを使うため、むしろ力が劣化していたのが幸いだったと言える。

  「バーンッ、バーンッ」

  インフィニティ・ガンズのディザイアも劣化しており、呼び出される銃がスポンジの弾を飛ばす物となっていた。こちらも豪火との遊びにも医者にも平気で使うため、危険な凶器のままでなくて、医療従事者達にとっては僥倖であった。

  しかし、ディザイアが無害化したという事実は同時に、ダーク・ブレイズとインフィニティ・ガンズの、ヒーローとしての死を意味していた。もはやディザイアと呼ぶにはあまりにも力として弱く、仮に記憶が戻ったとしても身長が著しく低く身体がお腹のポッコリ出た幼児体型のままで戦えるとは考え難いだろう。

  更に、彼らはまともな食事を受け付けなかった。離乳食は辛うじて食べられるのだが、当人達には非常に苦しいもののようで、ミルク以外まともに受け付けない状態なのだ。仕方なしに必要な栄養を混ぜたミルクを飲ませて対処しているが、これでは成長も危うい。

  「先生……おむつの検査をしていたのですが……」

  「……これはまた……」

  だというのに、ある日のおむつから、精液の成分が確認された。幾度もヴィランによる洗脳の後遺症を診て来た医師にとっては、嫌な馴染みのあるもので辟易することとなったものだ。変態ヴィラン達は得てして被害者を自らの性の捌け口とする。そして、被害者自身の性さえも歪ませて、ヴィランに迎合させるのだ。

  「トウくん!」

  医師のいない時を見計らい、ゴウくんこと豪火は、ベッドで横になっているトウくんこと十紀の顔面に、おもらしおむつを履いたまま跨り、その臭いを嗅がせるようなことをしている。それだけでも十分異常ではあるのだが、トウくんも抵抗せずそれを受け入れ、ゴウくんはというとトウくんのおもらしおむつに自ら顔を突っ込み、シックスナインの体勢で汚れたおむつの臭いを嗅ぎ合うという奇行を行っているのだ。

  そこにたまたま居合わせた看護師に、ゴウくんとトウくんは口を揃えてその奇行の事を、さも当然の事のように『仲良しの印』だと言うのだ。見ようによってはイジメにさえ取れるその行為を、だ。

  衛生面で悪影響があるからと看護師は止めるように言って聞かせたが、二人は『仲良しの印』を止めることはなかった。その場では反省しているような素振りをするのだが、同じように『仲良しの印』を行い、また同じように注意されて反省するのだ。状態を確認したあるヒーロー協会の研究者により、彼らは覚えていないのではなく、忘れている、ということが判明した。

  そのことが発覚したのは、ヒーロー協会の病院に入り既にディザイアの影響から離れ一週間経っていた時の事だった。その現象がディザイアによる治療の効力さえ流し出し、ヒーロー達を元に戻すことを阻んでいることも同時に発覚し、治療に対する見直しが行われる事となった。

  大人達が頭を抱えていても、当人達には関係のない事だと言わんばかりに、毎日閉ざされた病室ではしゃぎまわり二人で遊び、当直の看護師や医者に痛みのないディザイアでの攻撃、もといイタズラを仕掛ける日々を送っている。治療の結果は芳しくないが、続けなくては元に戻ることはない。

  「んっ……トウくん……」

  「ゴウ……くん……」

  今日もまた、彼らは大人達が去ったのを見計らって、替えたばかりのおむつにおしっこを漏らして、『仲良しの印』を繰り返す。ただお互いの尿の臭いを嗅ぎ合うその行為が、歪められ貶められた今の二人にとって、本来出すらしないだろう身体でありながら、僅かな吐精を行ってしまう性行為同然の行為なのだ。記憶もなく歯止めの利かない幼い精神では、純然たる快楽に抗う事など、元より出来ないのである。

  彼らがその姿を、尊厳を取り戻せる日が来るのか。それは最早誰にも分からない。